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2023/01/28

垂直円網を完成直後に改めて張り直すワキグロサツマノミダマシ♀(蜘蛛)

 

2022年8月下旬・午後15:10〜15:23頃・晴れ 



ワキグロサツマノミダマシ♀(Neoscona melloteei)の造網作業を腹面から動画撮影した私は、背面の写真も撮ろうと用水路を渡って対岸へ行きました。 
驚いたことに、この間になぜかワキグロサツマノミダマシ♀はせっかく作ったばかりの網を張り直し始めました。 
造網性クモのそのような行動を今まで見たことがありません。 
網に下手に近づいた私がうっかり周囲の枠糸を切ってしまったという自覚はないのですが、最初の網の出来栄えが気に入らなかったのかな? 
破網の行動を見逃してしまったのが残念です。(網を壊しながら糸を食べてしまうのはあっという間なのでしょう。) 

今度は背面から造巣行動を動画で記録します。 
夏空を背景としたすっきり抜けたアングルなので、今回はカメラの自動焦点AFにお任せできます。 
せっかく腹背が美しい緑色なのに、逆光でクモの体のシルエットしか映りません。 
肝心のクモの糸や網がほとんど見えなくなりました。 
特に足場糸、縦糸が全く見えないのが致命的です。 
歩脚の動かし方で作業内容を想像するしかありません。 
放射状の縦糸は切らずに前回張った縦糸をそのまま再利用していました。 (再造網が早く終わったのは、そのためでしょう。)

網を張り直す際も一時的な足場糸をかけ直してから横糸を張るはずですが、この点が逆光でよく分かりませんでした。 
網を取り壊すついでに足場糸を張ったのだとすれば、無駄がなくて効率的です。
私が慌てて動画撮影を始めたときには既に粘着性のある横糸を張っていました。 
腹側から見て右回り(時計回り)で内側に向かって螺旋状に横糸を張っています。 
円網の外側の枠糸に雨の水滴が多数付着しています。
改めて横糸を張り終えると、中央部のこしきを丸く食い破りました。 
これも前回と同じ手順です。 
完成した垂直円網に下向きで占座し、網を歩脚で引き締めました。 
アングルを変更して横から狙うと、腹背の緑色および脇黒がよく見えるようになりました。 
ときどき網を歩脚で引き締めています。 

作り直した垂直円網のこしきから地面までの高さは約165cmでした。 
背後はスギ林(平地の防風林)で、網の下には用水路(幅140cm)が流れています。 
地面から深さ90cmに流水面があります。 
雨上がりのせいか、結構激しい流れでした。 
夕方から水路の上に集まる蚊柱や夜の林縁を飛ぶ蛾などを狙ってワキグロサツマノミダマシ♀はここに造網したのでしょう。

2023/01/14

ワキグロサツマノミダマシ♀(蜘蛛)が垂直円網を張る一部始終

 

2022年8月下旬・午後14:40〜15:08・晴れ 

平地を流れる用水路の上で緑色のクモが垂直円網を張り始めました。 
クモの正体は初見のワキグロサツマノミダマシ♀(Neoscona melloteei)と後に判明します。 
本種が未だ明るい時刻に造網を始めたのは異例です。 
よほど空腹だったのかな? 
現場は田畑を囲む防風林(スギ林)と農道との間です(林縁)。 
垂直円網の縦糸を放射状に張っている途中から撮影開始。 
三脚を持参していなかったので、手持ちカメラで愚直に長撮りします。 
どうせ三脚のセッティングに手間取っているうちに造網がどんどん進行してしまいますから、手持ちカメラで撮影するのが一番です。 
クモは終始、腹面をこちらに向けています。 
強い日射しを浴びて白飛び気味になったこともあり、腹背の美しい緑色がよく見えません。 

動画の冒頭で、放射状の縦糸は既に18本張られていました。 
縦糸を伝って下から登ってきたクモが甑に戻ると、中心から外側に向かって左回り(クモの腹面から見て半時計回り)の螺旋状に糸を張りました。 
これは未だ足場糸ではなく、甑の補強でした。 
再び縦糸を追加しながら下降し、放射状の縦糸は計19本になりました。 
クモの動きが早過ぎて、下に伸ばした縦糸の端をどこに固定したのか追い切れません。 
枠糸の上部はスギの枝葉に固定してあるようです。 
網の中心に戻ったワキグロサツマノミダマシ♀は、また甑を補強してから縦糸を追加し、最終的に縦糸は計20本になりました。 

いよいよ次は足場糸を張り始めます。 
中心から外側の枠糸に向かって左回り(半時計回り)の螺旋状に非粘着性の足場糸を粗く張って行きます。 
網の外側になると足場糸の間隔が広くなり歩脚を伸ばしても届かないので、周囲の糸を伝って少し遠回りしながら張り進める必要があります。 

円網の下部(外周)に到達すると反転し、今度は逆の右回り(時計回り)で糸を張り始めました。 粘着性のある横糸に切り替えたようです。 
不要になった足場糸を歩脚で切りながら、横糸を等間隔に密に張っていきます。 
足場糸を切った跡には縦糸との交点が白く残ります。 

ここまでは教科書通りの見事な造網行動だったのですが、横糸張りの途中で方向転換し、左回りに(半時計回りに)横糸を張ることがありました。 
円網の下部で隣同士の横糸が交差したり重なったりしています。 
その施工ミス(雑になった部分)を修正するためにクモは方向転換したのかな? 
網全体の張力を均等化して形を整えるために横糸を補強したのかもしれません。 
再び右回りに(時計回りに)戻り、横糸張りを続けます。 

円網の中心部に近づくと、縦糸が放射状に残っていたこしきの中央部を丸く食い破りました。 
甑でワキグロサツマノミダマシ♀は下向きに占座し、垂直円網の完成です。 
甑付近に粘着性の横糸は張られておらず、スカスカのままでした。 
高速で飛来した獲物がこしき付近にぶつかって壊してしまうと、円網の構造上、網全体が台無しになってしまいます。 
そのために、獲物が円網の中心部を素通りできるように予め開けてあるのでしょう。 

こしきに占座したクモは何度も歩脚で周囲の糸を引き締めています。 
垂直円網全体の糸の張力のバランスを確かめたり、糸に伝わる振動を最適に感知できるように調節しているのでしょう。 

造網終了後に撮影アングルを変更し、横から狙うと「脇黒」がよく分かります。 
そよ風に揺れる円網の横糸が美しく、惚れ惚れします。 

クモ生理生態事典 2019』サイトでワキグロサツマノミダマシの造網習性について調べると、
・昼間は葉裏にひそみ,夕方から垂直円網を張る〔東海84〕. 
・夕方5時頃から活動を始め,草間に垂直円網を張り,中心で獲物がかかるのを待つ. 網を張る時間は20~30分でオニグモ類の中では最も早い. ほとんどの個体は網を早朝に取り壊して葉蔭に戻るが,張ったままの個体もときにみられる. 
・こしき糸と足場糸は不連続の場合と連続の場合があった〔新海明K111〕.

造網するクモの野外撮影で苦労するのはピント合わせです。 
今回は網中央のこしきにピントを合わせたら素早くMF固定焦点に切り替えました。 
これまでの経験上、AF自動焦点では必ず途中でクモを見失ってしまうからです。 
撮影中は私自身が前後に動いてピントを微調節したつもりだったのに爪が甘く、動画を見直すと残念ながらややピンぼけですね…。 
夏の強い直射日光が照りつける中で、カメラ背面の小さな液晶画面を見ながら撮影しても、白飛び気味の被写体が合焦しているかどうか、はっきり見えなかったのです。 
ファインダーを覗きながら撮影したくても、メーカー(Panasonic)のコスト削減による改悪でファインダー内の画角が小さくなり使いにくくなってしまいました。
そういうときは、昔のカメラマンのように頭から黒い布を被ればバックモニターの視認性が上がるのかもしれません。

2023/01/09

ニホンイノシシによる泥汚れ?(2)獣道の下草

 

2022年8月下旬・午後14:00〜15:00頃・くもり 


里山で下草の生い茂るの林道を歩くと、あちこちに泥汚れが付着していて、それが白く乾いていました。 
草だけでなく、幼木の枝葉、落枝などにも白い泥汚れが点々と残っているのです。 
手の爪でこそげ落としてみると(@1:54〜) 、鳥の糞が葉に落ちたのではなく、泥が白く乾いたものと分かります。

土砂降りの大雨による泥の跳ね返りではあり得ない高さ(私の膝下ぐらい)まで白く汚れていました。
雨の跳ね返りなら、葉の裏面が汚れているはずです。 

林業や登山客の車が通り、わだちから泥水を跳ね上げたという可能性も考えました。 
しかし林道入り口を塞いでいる巨大な倒木が放置されているせいで、車は通れないはずです。 
また、林道上には雨水が溜まった轍はありません。 

ニホンイノシシSus scrofa leucomystax)は泥浴びが大好きです。 
ヌタ場で転げ回った直後に林道を通過すると、泥まみれになった体から泥水が滴り落ちたり、下草と体が擦れて泥汚れが移ったりするのでしょう。 
まるで誰かがバケツ一杯の白ペンキを盛大にぶちまけたような地点もありました。 
獣道で立ち止まったイノシシが身震いして、泥を振り落とした(撒き散らした)のだろうと想像しました。 
もしかして、イノシシは縄張り内を意図的に泥でマーキングしながら歩いているのでしょうか? 
何頭のイノシシが往来した結果なのか、気になります。 
トレイルカメラを設置したら証拠映像が撮れるかな? 
熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』によれば、
イノシシのケモノ道は、腰をかがんで探すようなケモノ道とは違い、(中略)踏み分けられた道になる。近くに泥場があり、ケモノ道周辺に生えた植物の下のほうに泥がついていたら、イノシシ道と考えて間違いないだろう。(p82より引用)

泥汚れが付いた植物の名前を映像から分かる限り列挙してみました。 
現場は東北地方日本海側の多雪地帯で、ブナ帯よりも標高が低いミズナラ帯です。
この辺りの植生(植物相・フローラ)が大体分かるはずです。
葉の食痕は草食獣によるものではなく、虫食い穴だと思います。 

幼木:クロモジ、エゾユズリハ?、キイチゴ類?、コナラ、ミズナラ、クロモジ、ハウチワカエデ、ガマズミ?(葉が対生)、イヌツゲ(常緑、葉が互生)、タニウツギ、ウリハダカエデ、リョウブ、イロハカエデ、スギなど 
下草:笹類、オカトラノオ(実がなっている)、イネ科の草、キンミズヒキ、トリアシショウマ、アザミ類、ススキ、オオバコ、ミゾソバなど 
蔓植物:ミツバアケビ、フジなど 
羊歯:シシガシラなど 

笹やシダ植物について勉強不足なのはさておき、羽状複葉で対生の葉(鋸歯なしの全縁)がついた幼木の名前が分かりません。(@0:55、4:55、5:33、6:15、7:02〜) 
フィールドでよく見かける植物なので、この機会にどなたか教えてもらえると助かります。 
イヌザンショウ?(互生なので除外)、ハゼノキ?(東北地方の雪国には分布しないはず)。
もしかすると幼木ではなくて草本なのかな? 
蔓植物のフジの葉ですかね?

林道上に点々と残る泥汚れを辿ると、ヌタ場らしい水溜りに辿り着きます。(@5:00〜) 
真夏で水溜りの水が干上がりかけていて、ただの泥濘に見えます。 
ここの泥に有蹄類(カモシカまたはイノシシ)の足跡が残っているのをよく見かけます。 
その横の法面(斜面)を少し登るとカラマツの大木がそびえ立ち(@5:50〜)、その幹の根元付近にもイノシシが泥汚れを擦り付けた跡が残っていました。(前回の記事参照) 

白い泥汚れのついたミゾソバの群落でスジアカハシリグモ♀(Dolomedes silvicola)を見つけました。(@6:30〜)
茶色の赤味が強い個体です。 
カメラのレンズを正面から近づけると、歩脚を振り上げて威嚇してきました。 
よく見ると、右の歩脚が2本、左が3本しかありません。(8本足のうち3本の欠損) 
天敵に襲われた際に自切して逃げ延びたのでしょう。 
周囲の植物に白い糸を粗く張り巡らしてあります。 
ミゾソバ下部の葉裏に丸くて白っぽい卵嚢らしき物体がちらっと見えました。
しかし残念ながら、撮影中の私は卵嚢の存在に気づきませんでした。 
目の前で指を振り立てると、スジアカハシリグモ♀は葉裏に避難しました。 
卵嚢をガードしていたのかもしれません。




ミゾソバ
タニウツギ+ウリハダカエデ幼木
リョウブ幼木
クロモジ幼木
スギ幼木+落枝
トリアシショウマ?
イヌツゲ幼木
ミツバアケビ

2022/12/05

水辺でシロカネグモ?を捕食吸汁するスジアカハシリグモ♀(蜘蛛)

 

2022年8月上旬・午後15:00頃・晴れ 

山中の池から流れ出る水路が林道を横切る地点に生えたミゾソバの葉の上にスジアカハシリグモ♀(Dolomedes silvicola)が乗っていました。 
触肢の形状から♀と分かります。 
(ただし、体長を採寸していませんし外雌器を確認できていませんから、幼体の可能性もあります。)
餌食となったクモの腹部に牙を突き立てて体液を吸汁しています(体外消化)。 
獲物は既にクシャクシャに丸められた上に黒ずんでいてよく分かりませんが、腹背に白い縦筋が見えることから、水辺に水平円網を張るシロカネグモの仲間(アシナガグモ科)ではないかと思います。 
待ち伏せで獲物を狩る徘徊性クモが一体どうやって造網性クモを捕食できたのでしょうか? 
狩りの瞬間を見逃したのが残念です。 
脱皮中に襲われたのかな? 
ミゾソバの葉をよく見ると、葉から葉へ白い糸が張り巡らされています。 
スジアカハシリグモの住居に繋がっているのか、あるいは獲物となったシロカネグモ?の水平円網の枠糸かもしれません。 

動きに乏しいと動画ブログのネタになりません。 
私がそっと指を近づけると、スジアカハシリグモ♀は獲物を咥えたままミゾソバの葉裏に回り込んで逃げました。 
もう一度クモを葉表に来させようと、葉裏側に指を差し入れたら、うっかり獲物を弾き飛ばしてしまいました。 
カメラのバックモニターを見ながらだったので、遠近感の目測を誤りました。 
ミゾソバの葉表に来てくれたスジアカハシリグモ♀は空荷です。 
食事中に邪魔をして、すまんすまん。
実は近くにもう1匹別個体のスジアカハシリグモ♀を見つけました。

2022/11/16

大雨で増水した夜の川に懸垂下降を試みるクモ(蜘蛛)【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年8月上旬・午前00:10頃・ 雨上がり

停滞する線状降水帯がもたらした集中豪雨で、川が一気に増水しました。 
コンクリートブロックで覆われた護岸がすっかり水没しています。 

雨が一時止んだ深夜に、画面の上からツーっと糸を引きながら小さな造網性(?)クモが降りて来ました。 
河畔林の樹上に潜んで雨宿りしていたのでしょう。 
しおり糸にぶら下がったまま空中でしばらく静止したということは、無風のようです。 
やがて、意を決したように更に懸垂下降しました。 
そのまま激流に入水してしまうのではないか…と無謀な挑戦が心配になります。
しかし水面に触れたのか、慌てたように引き糸を登り返しました。
クモの種類は多様で水面を走って獲物を狩る者や水中で暮らす者もいますが、普通の造網性クモは水面を避けるようです。 


クモはたとえ昼間でも目がほとんど見えませんから、振動覚(風の動き)で周囲の状況を察知するしかありません。 
それでも水害の異変を感じて、安全な場所へ避難しようと試みたのでしょう。 
トレイルカメラをくくりつけていたニセアカシアの木は川岸の水際に立っていたのに、今回の増水でも流出や倒伏を免れました。
 
関連記事 ▶ 2022年8月3日〜4日:集中豪雨による最上川上流域の水位変化【100倍速・トレイルカメラ暗視映像】



※ クモは変温動物ですから本来はトレイルカメラで動体検知できないはずです。

激しい水流や揺れる枝葉などで誤作動した結果、たまたま撮れた映像です。 



【追記】

芥川龍之介の書いた有名な短編小説『蜘蛛の糸』で、お釈迦様はクモの糸を極楽から地獄に向かって垂らしました。

糸を吐いたクモがどうなったか、小説を読み返しても全く記述されていません。

実物のクモは自らがしおり糸の先端にぶら下がり、体重を利用して懸垂下降します。

クモの糸だけをどんどん下に降ろすということは不可能です。(風を利用してクモの糸を吹き流すことは可能ですけど、それなら極楽から地獄に向かって強風が吹いていないといけません。)

また、懸垂下降で地獄の血の池まで来たクモは、着水前に水面を怖がって引き返してしまうはずです。

その前にカンダタは素早く腕を伸ばしてクモの糸を掴まないと助かりません。

小説のオチでは、クモの糸にすがって極楽へ登る途中でクモの糸が切れてしまい、他の罪人もろとも地獄に再び落ちてしまいました。

このとき、糸の下端にぶら下がって居たクモも巻き添えを食って地獄の血の池に(真っ先に)落ちた訳ですから、お釈迦様は罪のないクモを見殺しにしたことになります。

以上、腐朽の文学作品に対して野暮な生物学的つっこみを入れてみました。

2022/09/22

カバキコマチグモ(蜘蛛)♀♂ペアが同衾する葉巻住居を開けてみると…

 

2022年7月上旬・午後14:35頃・晴れ 

川裏の土手に生えたヨシの葉が四面体の形(三角)に巻かれていました。 
この特徴的な葉巻を少しほどいてみたら、中にはカバキコマチグモCheiracanthium japonicum)の♀♂ペアが潜んでいました。
(カバキコマチグモは)イネ科の植物を折り曲げて住居を作る。ふだんの住居は植物を三角形に折りたたんだ形であるが、♀が産卵用につくる住居はちまき状である。(馬場友希、谷川明男『クモハンドブック』p84より引用)
開封前の葉巻住居の状態も写真か動画で記録しておくべきでしたね。 
開封動画を撮ろうとしたのですが、カメラを構えると両手が使えなくなるので諦めました。 
強力な毒と大きな大顎を持つカバキコマチグモの住居を不器用な片手で開封するのは危険です。 

カバキコマチグモ♂が「何事か」と暴かれた三角葉巻の外に出て来て、周囲の偵察を始めました。 
触肢の先が膨らんでいることから、♂成体です。 
今回の♂個体は黄色いので、同属近縁種のヤマトコマチグモは除外できます。 
住居内には♀が潜んでいました。 

クモに手を噛まれないように注意しながら、ヨシの葉巻を更に開いてみました。 
異変を感じた♂は葉巻の上を走り回り、隣のヨシの葉へ避難してしまいました。 
その一方で♀は葉巻住居に隠れたままです。 
しばらくすると、♂も葉巻住居に戻りました。 

おそらく♂成体は亜成体の♀が脱皮するのを待っているのでしょう。 
その間、ライバルの♂に♀を奪われないように交接前ガードしているのです。 (配偶者ガード)

※ 近くを通りかかった選挙カーの騒音がやかましいので、動画の音声を消しました。 

カバキコマチグモは身近な蜘蛛で、面白い習性が色々とあります。 
飼育下で撮影してみたいテーマがいくつも残っているのですが、今季も忙しくて余力がありません。 
葉巻住居を採集せずにその場に残して帰りました。 
このぐらいの隙間ならカバキコマチグモはじきに糸で綴って葉巻住居を修繕し、再び籠城するはずです。 

後日現場を再訪したら、土手一帯が草刈りされていて、葉巻住居のついたヨシも無くなっていました。 
やはり、思いついたら躊躇せずに採集すべきですね。

2022/08/30

夜の泉に飛来するコウモリは岸のザトウムシを捕食するか?【トレイルカメラ:暗視映像】

 

 2022年6月下旬
前回の記事:▶ 複数で飛びながら泉の水を飲む夜行性コウモリ【暗視映像:トレイルカメラ】

山中の泉を監視するトレイルカメラ(無人センサーカメラ)のレンズに覆い被さるように、歩脚の長いクモが居座っています。 
カメラに対してあまりにも近過ぎるので種類を見分けることは無理そうです。
その場で歩脚の屈伸運動を繰り返していますから、造網性クモや徘徊性クモではなくザトウムシの一種だと思います。 
これまでこの水場の岸辺を夜に徘徊するザトウムシが何度かトレイルカメラに写っています。
ザトウムシの動きにトレイルカメラのセンサーがいちいち反応して誤作動してしまうので、迷惑千万な話です。 
夜の照明設備にクモ類がよく集まるのは、獲物となる虫が光に誘引されて(走光性)狩りの成功率が上がるからです。
しかし、このトレイルカメラの機種は赤外線を照射するだけですから、虫は集まらないはずです。
水場に飛来する夜行性コウモリ(種名不詳)の動画撮影を繰り返すトレイルカメラは発熱するので、ザトウムシはその暖かさに惹かれて来たのでしょうか? 

水場の岸に居座るこのザトウムシをコウモリが捕食するのではないか?と期待しました。 
しかし、夜通し飛来するコウモリはなぜか捕食を試みようとしません。 
池の上を飛び回るガガンボ類も格好の獲物であるはずですが、コウモリは狩ろうとしません。(動画に撮れてないだけ?) 
コウモリの超音波エコロケーションの性能は、私が思っているよりも低くて、ザトウムシの存在を感知できないのかな? 
コウモリが狙っているのは、もう少し大きな夜蛾なのでしょうか? 
蚊柱のように密集した集団に飛び込んで獲物を狩るのかな? 
それともコウモリがこの水場に来る目的は、獲物の捕食ではなく飲み水なのかもしれません。 
ザトウムシの屈伸運動は、コウモリに見つかりにくくするための対捕食者戦略だったりして…?
もしかすると、コウモリはザトウムシの存在に気づいていても、硬いカメラに激突するのを恐れて捕食しないのかな?

シーン1:6/26・午前1:19・気温19℃ 
 ザトウムシは歩脚を曲げて身繕いする動きもしました(歩脚の跗節を口で舐めた?)。 

シーン2:6/26・午後23:17・気温23℃ (@0:26〜) 
2時間後も同様のシーンが撮れていました。
ザトウムシの 頭胸部は全く写っていません。 
その場で歩脚をゆっくりリズミカルに動かしています。 

ザトウムシが歩脚の屈伸運動を止めると、監視カメラが起動しなくなりました。 

2022/06/21

イオウイロハシリグモ(蜘蛛)は雪面のアキアカネ♀を捕食するか?

 

2021年12月上旬・午後12:35頃・晴れ
前回の記事:▶  
ガガンボを捕食する雪国のイオウイロハシリグモ(蜘蛛) 
食後に雪面を走り回るイオウイロハシリグモ(蜘蛛) 
初冬に雪面から飛んでも着陸に失敗して暴れるアキアカネ♀♂【HD動画&ハイスピード動画】

雪面で日光浴したり飛んだりしているアキアカネSympetrum frequens)を同定するために1匹を捕獲しました。 
赤トンボの撮影の合間に同じ場所(残雪に覆われた草地の土手)で、イオウイロハシリグモDolomedes sulfureus)の狩りと雪上徘徊シーンも撮影しました。 
せっかく捕まえたアキアカネ♀を利用して、フィールドでクモへの給餌実験を試してみました。 
ついさっきガガンボを捕食した時には、いきなり噛みついただけで糸で獲物を梱包しませんでした。
トンボというもっと大きな獲物を捕食する際には、イオウイロハシリグモは糸で梱包するでしょうか?
飛んで逃げないように、トンボの翅を半分毟り取りました。 
雪原を元気に徘徊するイオウイロハシリグモの前に生き餌を置いて、成り行きを見守りました。 
しかしクモはトンボの存在に気づかなかったようで、手前に開いた穴(草の根際)に隠れてしまいました。 
雪が溶けて顔を出したパッチ状の草から草へとイオウイロハシリグモは好んで渡り歩いているのです。 
草の根際の穴は隠れ家にもなりますし、冷たい雪面よりも少し気温が高いのでしょう。 
一方、身の危険を感じて擬死(死んだふり)しているのか、雪上のトンボは全く動きません。 
トンボが身動きしないことにはクモに気づいてもらえないので、私は拾った草の葉の先でトンボをしつこくつついてみました。 
ようやくイオウイロハシリグモが雪の穴から外に出て来ました。 
慎重に前進したクモがトンボの腹部に足を掛けて触れたのに、獲物に噛みつこうとはしませんでした。 
クモに背後から触れられたトンボが羽ばたいて暴れたら、クモはびっくりして逃げてしまいました。 
獲物として狩るには大型で手強いと判断したのでしょうか? 
つい先程ガガンボを丸ごと1匹捕食したばかりなので、おそらく食欲が無くなり狩りの衝動も失われたのでしょう。 
一方、飛べないアキアカネ♀は雪面を歩いてクモから離れました。 

最後にクモの体長を採寸しようと白いプラスチック定規を横に置いたら、警戒して穴の中に逃げられ見失いました。 
この個体は右の第2および第3歩脚が根元から欠損した亜成体なので、採集して飼育すれば脱皮後に再生肢を見れたかもしれません。

2022/06/12

食後に雪面を走り回るイオウイロハシリグモ(蜘蛛)

前回の記事:▶ ガガンボを捕食する雪国のイオウイロハシリグモ(蜘蛛)
2021年12月上旬・午後12:30頃・晴れ 

食後のイオウイロハシリグモDolomedes sulfureus)亜成体はクローバーの葉の上に乗って休んでいました。 
横から口元を見ても獲物はもう見えません。 
クモの食事は体外消化で固形物を飲み込むことはありません。 
食べ残したガガンボの残渣があるはずなのに、それを捨てるシーンを見届けられませんでした。 
食後の身繕いも見ていません。 

のんびり日光浴しているクモのすぐ目の前の枯草で微小な虫(トビムシの仲間?)が徘徊しています。
しかし、満腹したクモは飛びかかって狩ろうとしません。 

やがてクモが草の茂みの中をウロウロと徘徊し始めました。 
草の下に潜り込む際に腹部の下面がちらっと見えたのですが、外雌器の有無は確認できませんでした。 
触肢は♀タイプで、時期的におそらく亜成体だと思います。 
黒光りする大顎(牙)が目立ちます。 

遂にイオウイロハシリグモは残雪の上を走り出しました。 
残雪から露出したパッチ状の草地を渡り歩いています。 
草の根際に開いた穴に潜り込んだり雪面にまた出てきたりと、活発に徘徊しています。 
右の第2および第3歩脚が根元から欠損した6本脚の個体でも歩行に支障はありません。 

※ 基本的に映像素材を時系列順に並べただけですが、最後のシーン(@1:38〜)だけは一番始めに(獲物を捕食する前に)この個体を見つけたときの様子です。ついでに追加しておきました。 


2022/06/10

ガガンボを捕食する雪国のイオウイロハシリグモ(蜘蛛)

 

2021年12月上旬・午後12:15頃・晴れ 

山麓を流れる用水路(※)沿いの土手にうっすらと雪が積もりました。 
※ 暗渠でしかも、この時期は水が流れていません。
未だ根雪になる前なので、ところどころ緑の草が雪に埋もれずに顔を出しています。 
パッチ状の草の上でイオウイロハシリグモDolomedes sulfureus)が日光浴していました。 
右の第2および第3歩脚が根元から欠損した個体で、おそらく亜成体と思われます。 

イオウイロハシリグモの目の前に大型のガガンボの一種が飛来し、まるで吸い寄せられるようにクモの近くの雪上に着陸しました。 
まずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。 
その後に等倍速でリプレイ。 
このガガンボの種類を見分けられる方がいらっしゃいましたら、教えて頂けると助かります。 

ガガンボは翅を畳むと、草の葉をよじ登り始めました。 
その振動を感知したイオウイロハシリグモは、獲物に素早く駆け寄ってあっさり捕獲に成功しました。 
これは待ち伏せ型の狩りと言えるでしょうか。
電光石火の早業をまずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。 
その後に等倍速でリプレイ。 
12年前も昔にイオウイロハシリグモを飼育したことがあるのですけど、当時も狩りの瞬間は観察できておらず、今回が初見です。 
クモは触肢と第1脚で獲物を素早く押さえ込んでいます。 
ガガンボの細長い腹部に噛みついて毒液を注入し、吸汁を始めたようです。 
今回の狩りでは、腹端の糸疣から絹糸を出して獲物を簀巻きにすることはありませんでした。

ガガンボの長い翅が邪魔で持て余しています。 
クモはガガンボの翅を食事中に噛み切って捨てるかと思いきや、クシャクシャに丸めながら吸汁を続けました。 

後半は撮影アングルを少し変更しました。 
イオウイロハシリグモの大顎と触肢がかすかに動いているものの、背側から見下ろすアングルでは小さく丸めた獲物の状態がよく見えません。 

クモは越冬する前に、凍結防止のため絶食して胃腸を空っぽにするはずです。 
雪が積もる時期になっても未だ食欲があるとは意外でした。 
長い冬越しに備えて、獲物をたくさん食べて脂肪を蓄えているのでしょう。 

食餌中もクモは太陽に対して正対し、直射日光をしっかり背中に受けています。 
周囲は残雪ですから、日光浴で体温を上げているのでしょう。 
クモの体温が上がれば消化活動も活発になるはずです。
撮影直後に気温や雪面の温度を測ったのですが、その値を記した野帳を紛失してしまいました…。 



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