2021/01/24

モンスズメバチの巣が駆除された後の樹洞内に生き残った生物は?【暗視映像】

 

八重桜の樹洞に営巣するモンスズメバチ:#13

▼前回の記事 
樹洞内の巣が壊れても居残るモンスズメバチ♀♂と居候ゴキブリの群れ【暗視映像】

 

2020年9月下旬・午前1:20頃・くもり 

8日ぶりの定点観察に来てヤエザクラ(八重桜)の樹洞内を赤外線の暗視カメラで覗いてみると、モンスズメバチVespa crabro)の巣盤がほぼ完全に破壊され無くなっていました。 
モンスズメバチの成虫は♀も♂も1匹も見つかりませんでした。
やはり誰かに蜂の巣を駆除されてしまったようです。 
秋になってコロニーの解散が近づき、ワーカー♀による防衛力が衰えた途端に居候のヤマトゴキブリPeriplaneta japonica)などが巣盤や外皮を一気に食害したのかもしれない…という可能性も無くはありません。 
しかし、樹洞の底にモンスズメバチ巣の外皮の破片が散乱していたことから、物理的に巣を破壊・駆除されたと確信しました。 
実は私が定点観察に通っていた期間中、営巣木の周囲に立入禁止のロープが張り巡らされて注意喚起の張り紙もしてありました。 
黄色と黒の縞模様で危険を示すロープ(ベイツ型擬態)と注意書きが前回見に来たときには撤去されていました。
その寛大な対応は今どき珍しい神対応だと私は高く評価していたのですが、やはり誰かハチ嫌い(ハチ恐怖症)のヒトが一人でも強いクレームを入れると、残念ながら駆除せざるを得ないのでしょう。 

モンスズメバチの巣が駆除されても、樹洞内に隠れ住む昆虫が全滅した訳ではありませんでした。 
ハチの巣駆除にはおそらく殺虫剤を使用したはずです。 
(殺虫剤を使わないでモンスズメバチだけ駆除したのだとすれば、難易度が高い方法なので大したものです。) 
使用した殺虫剤に対して抵抗性を獲得しているのか、多数のヤマトゴキブリと1匹のゲジは樹洞内でしぶとく生き残っていました。 
それとも駆除後に新たに樹洞内に侵入したゴキブリ集団なのかな? 
殺虫剤が樹洞内に残留しているはずです。 

今回新たに樹洞内で見つけた昆虫として、おそらくカラスヨトウAmphipyra livida corvina)の仲間と思われる中型の黒い蛾も1頭潜んでいました。 
侵入したカメラに警戒して、樹洞内を走り回ったり少し飛び回ったりしています。 
蛾の複眼がカメラの照明(赤外線または白色光)を反射して見えます。 
文献検索でヒットしたPDFを斜め読みしてみると、
小蛾類も複数種が,夏季にはヤガ科のカラスヨトウ類も認められる. (亀澤洋. "甲虫の生息場所としての 「乾燥した樹洞」 について." さやばねニューシリーズ 11 (2013): 4-14.より引用)
との記述がありました。 

実は私も忘れかけていたのですが、こんな面白い体験を記録しています。
▼関連記事(6年前の撮影) 
夜モンスズメバチの巣に忍び寄るシロスジカラスヨトウ(蛾)【暗視映像】
しかし、今回見つけた蛾の映像をスロー再生しても翅表に白帯は見えませんでした。 

鈴木知之『朽ち木にあつまる虫ハンドブック』によると、
チョウ目の多くの種は、朽ち木や朽ち木に発生したキノコを利用する。(p76より引用)
しかし、カラスヨトウなど見た目が似た蛾は掲載されていませんでした。 
 

次に、森上信夫『樹液に集まる昆虫ハンドブック』を紐解いてカラスヨトウを調べると、
夏眠と呼ばれる活動休止期間がある、盛夏には一時姿を消す。(p25より引用)
 
八重桜の樹洞内でカラスヨトウ(の仲間)が夏眠していたのかもしれません。 

樹洞内の画面左には、マイマイガLymantria dispar japonica)の蛹が吊り下げられていました。 
危険なスズメバチが居なくなったので、可視光の照明を点灯しても大丈夫です。 
蛹の本体は焦げ茶色で、薄茶色の剛毛が疎らに生えていました。 
マイマイガの幼虫は広食性で、食草・食樹リストにサクラが含まれています。 
5年前には現場のすぐ近くのヤエザクラ(八重桜)の木でマイマイガ幼虫を撮影しています。

▼関連記事(5年前の撮影:ほぼ同じ場所) 
桜の葉の中で繭を紡ぐマイマイガ幼虫(蛾)

ゴキブリやカラスヨトウ(蛾)など夜行性の昆虫は白色光を嫌って物陰にどんどん逃げてしまい、じっくり撮影できませんでした。 
(蜂の巣が駆除されたことに落胆して、動画撮影が雑になってしまいました。) 

撮影直後に外気温を測定すると、営巣木の周囲は17.7℃、湿度80%でした。 

シリーズ完。 
モンスズメバチ新女王の羽化を見届けることができず、残念無念です。 
スズメバチの巣の定点観察はいつも不本意な形で強制終了してしまうために生態の解明が遅々として進まず、フラストレーションが溜まります。 
それでもモンスズメバチの巣を定点観察するのはこれで2例目となり、新しい発見とささやかな喜びが得られました。

池でジュンサイの茎に単独で産卵するヤンマ♀と近くで警護する♂【トンボの名前を教えて】

 

2020年9月下旬・午前11:15頃・晴れ 

山中の沼の水面付近で、おそらくヤンマ科の一種と思われる数匹のトンボが激しく飛び回っていました。 
1/5倍速のスローモーションでまずはご覧ください。 
その後に等倍速でリプレイ。 
ジュンサイの楕円形の浮葉が並ぶ水面の上空を♀が単独でホバリング(停空飛行)しています。 
水面に打水産卵するのではなく、腹部をだらんと垂らしながら低く飛んで、腹端で水面の産卵適地を探っているようです。 
やがてヤンマ♀は水面下に伸びるジュンサイの細い茎に着陸し、茎の組織内に卵を産み始めました。 
産卵中は翅の羽ばたきを止めました。 

その間、産卵する♀の近くで♂が警護のためホバリングしていました(配偶者ガード、交尾後ガード)。 
ライバル♂が♀に近づくと追い払います。 

配偶者の♂が少し離れた隙にまた別のライバル♂が飛来して、産卵中の♀を素早く抱えて飛び上がりました。 
これも1/5倍速のスローモーションでまずはご覧ください。 
♂は儀式的な求愛行動もなく、強引に♀を連れ去ろうとしたものの、うっかり空中で♀を離してしまいました。(♀による交尾拒否?) 

誘拐未遂を逃れた♀はジュンサイの葉に舞い戻り、産卵行動を再開しようとしましたが、結局はすぐに飛び去りました。 
♂に邪魔(ハラスメント)されない静かな産卵場所を探して移動したようです。 
水面から飛び立つ瞬間に自らの羽ばたきで水飛沫が上がったのが印象的です。 

映像からこのトンボの名前が分かる方がいらっしゃいましたら、教えて下さい。 
日差しが強く水面からの照り返しも眩しくて、私にはトンボの特徴がよく見えませんでした。 
しっかり横を向いてくれなかったのも不運でした。 
馴染みのあるギンヤンマではなさそうです。 
私がもう少し粘って同定用の良い写真が撮れれば良かったのですけど、先を急がないといけない用事があったので、長居できませんでした。 
次回は、ヤンマの恋の三角関係をハイスピード動画で撮るのも面白そうです。
ヤンマsp♀@池:ジュンサイ茎+産卵
ヤンマsp♀@池+♂@警護ホバリングvsライバル♂
ヤンマsp♀@池:ジュンサイ茎+産卵+♂@交尾未遂

2021/01/23

ヒメキンギョソウに訪花するも吸蜜できないエントツドロバチ♀

 

2020年9月下旬・午前9:40頃・晴れ
▼前回の記事 
エントツドロバチ♀が庭で朝の化粧と日光浴
民家の庭先の花壇で朝の日光浴と身繕いを済ませたエントツドロバチ♀(別名オオカバフスジドロバチ;Orancistrocerus drewseni)が、黄色いヒメキンギョソウ(リナリア)の花に飛来しました。 
しかし花の上をウロウロと徘徊するだけで、吸蜜できていないようです。 
リナリアは未だ比較的珍しい外来植物(園芸植物)なので、在来種のエントツドロバチは複雑な花の構造や蜜腺の位置が分からないのかもしれません。 
薄いレモン色の花弁に蜜標(濃い黄色:オレンジ色)が用意されているのに、花筒の入り口が分からないのは不思議です。 
「エントツドロバチ♀はじきに業を煮やして、ヒメキンギョソウの花の後ろにある細長い距を外から噛み破って穿孔盗蜜するに違いない!」と期待しつつ私は動画に撮り続けたのですけど、予想が外れました。 
盗蜜を編み出して攻略するほどの頭脳が無いようです。 
一方、知能が高くて舌の長いミツバチはリナリアの花の攻略法を突き止め、正当訪花で吸蜜できていました。
▼関連記事 
ヒメキンギョソウ(リナリア)の花で採餌するセイヨウミツバチ♀
有能なミツバチ♀と比べて、エントツドロバチ♀はいかにも愚鈍な印象を受けました。 
訪花吸蜜モードではなく、獲物となるイモムシを探索中(狩りモード)なのかな?

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