2018/04/10

煮干しを食べるチャコウラナメクジ 【10倍速映像】



2016年10月下旬・午前00:33〜00:56

飼育しているチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)がカタツムリを襲った事件をきっかけに、ナメクジの生育にはタンパク質が必要らしいと知りました。


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チャコウラナメクジに襲われ泡を吹くヒダリマキマイマイ 【10倍速映像】

タンパク質を補給するために試しに数匹の煮干しを小皿に入れて給餌してみます。
ダシを取るための食品ですが、若干の食塩が添加されていることが気になります。
ナメクジを含めたペットに与えるときは健康のために減塩加工された煮干しの方が良いのかも知れません。


すると早速、チャコウラナメクジは初めての餌を喜んで食べ始めました。
微速度撮影で記録してみたので、10倍速の早回し映像をご覧下さい。
しばらくすると満足したのか、チャコウラナメクジは小皿の上でUターンして立ち去りました。
死んだ魚の乾燥肉を食べただけでなく、煮干しの小骨に含まれるカルシウムを喜んで摂取していたのかもしれません。

タンパク質の餌を与えたので、これでチャコウラナメクジが同居しているヒダリマキマイマイを襲うことはなくなるでしょうか?

宇高寛子、田中寛『ナメクジ:おもしろ生態とかしこい防ぎ方』という本を読むと、ナメクジを飼育するための餌として次のように書かれていました。

容器の底には湿らせたペーパータオルを敷き、エサとしてニンジンとコオロギ用人工飼料(魚粉を固めたもの。金魚のエサに似ている)をナメクジと一緒にいれた。(中略)数日に一度、エサや容器は新しいものと交換した。(p35より引用)

一方、同じ容器で同居させているヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)も同じ小皿に登ってきたものの煮干しには口をつけずに引き返しました。
近くに置いてあったリンゴの皮に気を取られたのかな?
あるいは、近くに天敵の(以前自分を襲った)チャコウラナメクジが居ることに気づいて、慌てて逃げ出したのかもしれません。



ユビナガコウモリ♂?:昼塒で寝起きからの飛び立ち【暗視映像】



2017年9月中旬・午後17:39(日の入り時刻は午後17:43)@山形県

ボックスカルバートのトンネルを更に探検すると、洞内を飛び回っている個体が映像の冒頭で画面を横切ります。
低い天井(高さ約170cm)にもう一頭見つけました。
この個体nも単独で天井から片足(右足)でぶら下がっています。
そっと近づくと私に気づいて顔がこちらを向きました。

横顔は、つぶらな瞳が可愛らしい。
耳の形など顔の特徴がなんとなくユビナガコウモリMiniopterus fuliginosus)かな?と思うものの、素人の当てずっぽうで自信がありません。
もし間違っていたらご指摘願います。

折り畳んだ翼から突き出て見えるのは前肢の第一指(親指)です。
なにしろコウモリの観察は初めてなので、こういう基本的なことから勉強です。


長い指の骨は、うちわの骨のような役割をして翼の膜を支えている。ただし、親指だけは翼の前に突き出している。 (『身近で観察するコウモリの世界―町を飛ぶ不思議な野生動物 (子供の科学★サイエンスブックス)』 p26より引用)
ユビナガコウモリの名前の由来は親指ではなく、前肢の第3指(中指)の第2指骨が著しく長いそうです。(この映像で確認できるのか?)

赤外線の暗視動画を撮りながら私がゆっくりコウモリの腹面に回り込むと、腹部に細長い突起物が見えました。
これは♂の陰茎なのでしょう。
『コウモリ識別ハンドブック 改訂版』によると、雌雄の見分け方は

♂の陰茎(ペニス)には陰茎骨があり、常に体外に出ているので幼獣や亜成獣であっても季節を問わず、雌雄の判別は容易である。(p9より引用)

最後は翼を広げて飛び立つ瞬間を1/10倍速のスローモーションでリプレイ。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


2018/04/09

イチジクの未熟果を舐める謎の黒い蝿 【名前を教えて】



2017年9月上旬

平地の民家の庭に植栽されたイチジク(無花果)の木に未熟な果実がなっていて、そこから早くも甘い匂いが辺りに漂っていました。

このイチジクの匂いに誘われたのか、黒くて小さな見慣れないハエが1匹、イチジクの青い実の表面を頻りに舐めていました。
その合間に、手足を擦り合わせて身繕い。

最後は少し飛んでイチジクの葉に止まり直しました。

同定のため接写よりも採集を優先したら失敗し、残念ながら飛んで逃げられてしまいました。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。




イチジクと共生して授粉を助けるイチジクコバチの話は蜂好きの教養として知っていました。
しかし日本ではイチジクコバチは生息しておらず、

日本で栽培されているイチジクはほとんどが果実肥大に日本に分布しないイチジクコバチによる受粉を必要としない単為結果性品種である。(wikipediaより引用)



コバチ以外でイチジクの授粉に関与する微小のハエはいなかったっけかな?とうろ覚えの私は気になり、念の為に動画で記録してみたのでした。


私にはこのハエが所属する科も見分けられないので、邪道ですがとりあえず周辺情報からインターネット検索に頼ります。
大森直樹『一年中楽しめるコンテナ果樹の育て方』という栽培マニュアル本の内容がヒットしました。

ヨーロッパではドライフルーツに向く、大玉のスミルナ種といわれる系統の品種が主に栽培されています。この系統の品種はすべて、雄花の授粉がされないと結実しません。雄花の咲く品種群をカプリ系といいますが、この花粉をもったイチジクの受粉のために生きているといっても過言ではないのが、ブラストファーガという極小のハエ。ミルナ種のお尻の小さな穴から侵入し、受粉が行われます。ハエは、一度中に入ったら外には飛び立てず、すぐに死んでしまいます。
このハエはほとんど人の目には見えない大きさなので、食べてもわかりません。また、ドライにする過程で自然殺虫殺菌されているので、体への害はありません。
残念ながら日本国内にこのハエは存在せず、果実を実らせることは不可能です。(p92より引用)

ところが更に調べてみると呆れたことに、ブラストファーガなる昆虫はハエではなく、イチジクコバチ類Blastophaga spp.)の属名でした。
つまり、この書籍の記述は昆虫学的に不正確であることが分かりました。


「イチジク 黒いハエ」のキーワードで検索し直してみると、「イチジク属植物とイチジクコバチの共生関係を脅かすハエ類」と題した生物学者による興味深い読み物がヒットしました。
沖縄で野生のイヌビワ(イチジク属の植物)の実を調べた結果、

タマバエに寄生される花嚢は種子も作れなければコバチも育ちません。クロツヤバエに寄生される花嚢はコバチが食べられてしまいます。

同じ研究グループによって「イチジクコバチを専食するクロツヤバエがイチジクに与える影響」という研究成果も学会で報告されているようです。

日本生態学会大会講演要旨集 巻:58th ページ:457 発行年:2011年03月08日
残念ながらこの要旨の内容は一般に公開されておらず、未読です。


タマバエは明らかに動画の個体と形態が異なるので除外しました。

クロツヤバエに注目して、もう少し深堀りしてみます。
素人目にはクロツヤバエ類のずんぐりむっくりした体型は、私の動画に登場する個体と似ているような気がします。
しかし私が見た個体は体色が黒いものの、黒光りしているという印象はありませんでした。
曇っていたので光沢(つや)が無かったのですかね?
前述のように、私が出歩くフィールドにイチジクコバチは生息していないはずなので、それを専門に捕食寄生するクロツヤバエも居ないはずです。
ただし、クロツヤバエ科には何種類もいるそうなので、未だ望みはありそうです。


「知られざる双翅目のために」というサイトによると、

クロツヤバエ科(LONCHAEIDAE)は、世界に9属約520種を擁する比較的小さな分類群。幼虫が果実を食害するため、害虫としても扱われる。
日本では2013年時点で7種が記録されているが、まだ数種類の未記載種や未記録種が残っていると推定される。
wikipediaによれば、
(クロツヤバエ科の)幼虫の大部分は植食性で、葉に食害をもたらすことが知られているが、腐食性、捕食性などの種も知られている。
一方、英語版wikipediaを参照すると更に気になる記述がありました。
The black fig-fly Silba adipata McAlpine is a pest of figs.
しかし、イチジクの害虫として知られるこの学名(Silba adipata)のハエは(今のところ)日本に分布していないようです。

私が見た個体はクロツヤバエの一種ではないか?と思ったのは素人の勝手な妄想・願望でしかありません。
もし写真や動画からこのハエの名前が分かる方がいらっしゃいましたら(科だけでも)、ぜひご教示願います。
ここまで長々と書いてきても結局、私が見たハエはクロツヤバエ科ではなかったというオチかも知れません。
たとえ関係なくても、この機会に調べものしたら面白く勉強になったので、ブログに書き残しておきます。

もしこのハエが私の予想通りクロツヤバエ科でしかも♀なら、もう少し粘って観察すればイチジクの未熟果に産卵したかもしれませんね。

また、このイチジクの木がもし自分の庭に植えられたものなら、実を収穫してハエの幼虫(ウジ虫)が中に居ないかどうか調べてみたいところです。
市販されているイチジクの果実を口にする機会も滅多にありませんが、ハエの幼虫が潜んでいたという記憶はありません。

ウジ虫が中から食害したイチジクの果実は腐ったように変色するらしく、普通はヒトが食べる前に廃棄処分されてしまうのでしょう。


【追記】
調べ物でいつもお世話になっている「みんなで作る双翅目図鑑」サイトの画像一括閲覧ページ を眺めていたら、とてもよく似たハエの写真を見つけました。
Lauxanioideaシマバエ上科,Lauxaniidaeシマバエ科Minettia sp.  画像提供 Mbc様

シマバエ科という分類群は初耳です。
シマバエ科Lauxaniidaeは腐敗植物質、鳥の巣の汚物で繁殖する他、生きた植物に寄生するものも知られる。(wikipediaより引用)

『マグローヒル科学技術用語大辞典 第3版』によれば、
シマバエ科 Lauxaniidae無脊動 双翅目,環縫亜目,無弁亜区の昆虫の一科.幼虫は葉肉に穿孔する.
Minettia属については英語版wikipediaを参照。
謎のハエが今回イチジクに来ていたのは偶然なのか、それとも何か深い関係があるのか、興味深いところです。
幼虫はイチジクの葉で育つリーフマイナーなのでしょうか?




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