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2018/04/14

ガードレールの枯れ蔓に初期巣を作るキアシナガバチ創設女王



2016年5月上旬・午前8:48〜9:01

平地の池に近いガードレールを前の年に覆い尽くしたクズの蔓が枯れたまま残っていました。
そこにキアシナガバチPolistes rothneyi)の創設女王が営巣していました。
巣盤の外縁部に新しい巣材(天然パルプ)を大顎で薄く引き伸ばしながら付け足して育房を増設しています。
ガードレールの南東面に営巣していたのは、やはり日当たり良好な物件を作っているのでしょう。

巣材を使い切って一仕事を終えると、女王様は巣盤の天井部に登り身繕い。
少し休んだだけでもう巣から飛び立ち、次の巣材を集めに出かけました。

しばらくすると、女王蜂が巣材集めから帰巣しました。
巣材をどこで採取してきたのかは不明です。
黒っぽいパルプの団子を噛みほぐすと、前回とは違う育房をせっせとこしらえています。
ガードレールに絡み合ったクズの蔓が邪魔で、思うように撮影アングルを確保できず、苦労しました。
育房内に産卵済みだと思われますが、その写真も撮れませんでした。
(こういうときは手鏡があれば便利なのですけど、あいにく持っていませんでした。)


このガードレールには他にも別の種類のアシナガバチ創設女王が営巣していました。(コアシナガバチフタモンアシナガバチ



キアシナガバチ創設女王@初期巣:ガードレール枯蔓+育房増設
キアシナガバチ創設女王@初期巣:ガードレール枯蔓+育房増設
キアシナガバチ創設女王@初期巣:ガードレール枯蔓+育房増設
キアシナガバチ創設女王@初期巣:ガードレール枯蔓+休息
キアシナガバチ初期巣:ガードレール枯蔓
キアシナガバチ初期巣:ガードレール枯蔓・全景
キアシナガバチ初期巣:ガードレール枯蔓・全景

2018/04/12

小枝が噛み切れず奮闘するコガタスズメバチ♀



枯木に営巣したコガタスズメバチの定点観察#10


前回の記事→#9
2016年7月下旬・午前7:37〜7:43

4日ぶりの定点観察。
コガタスズメバチVespa analis insularis)の巣の手前にある枯木(樹種不明)の細い小枝の先端に1匹のワーカー♀が長時間かじりついていました。
巣材集めのために樹皮を剥いでいるのでしょうか?
しかし横から見てもコガタスズメバチ♀の口元に巣材のペレット(団子)はありませんでした。
どうやら、小枝を噛み切ろうとして苦労しているようです。
枯れた小枝の先端には冬芽があります。
蜂は自分の体長とほぼおなじぐらいの長さに小枝の先を切り取ろうと奮闘しています。

その間も他のワーカー♀が忙しなく飛び回り、巣に出入りしています。

それにしても、枯れているのに驚くほど強靭でしなやかな小枝ですね。
コガタスズメバチ♀が鋭い大顎でいくら噛んでも噛み切れません。
小枝に切れ目を入れて折り曲げるのが精一杯で、諦めた蜂は飛び去りました。
巣に戻るかと思いきや、外役に飛び去りました。

このことからも、巣材集めではなかった(巣材集めに失敗した)ことが分かります。

何とも理解に苦しむ奇妙な行動でした。
もし仮に小枝が噛み切れたとして、一体何がしたかったのでしょう?
(1)ヒトがスルメを食べるように小枝を更にじっくり噛みほぐして巣材のパルプにするつもりなら、手間をかけ過ぎだと思います。

(もっと手軽に近くの木の幹から樹皮を剥いでくれば済む話です。)
スズメバチの巣材集めは学習を要しない生得的な本能行動だと思うのですけど、羽化後に初めて外役に出かけたワーカー♀が初体験の巣材集めに苦戦しているのでしょうか?
(2)巣に出入りする飛行経路から目障りな障害物を少しずつ取り除いて整備しているのかもしれません。
それなら小枝をもっと根元から断ち切るべきでしょう。
(3)あるいは、スズメバチの天敵となり得る(?)造網性クモが巣の近くで網を張れないように、足場になりそうな枝を除去したいのかな?

つづく→#11:雨が降っても造巣を続けるコガタスズメバチ♀





2018/04/07

ガードレールの枯れ蔓に初期巣を作るコアシナガバチ創設女王



2016年5月上旬

平地の池に近いガードレールにクズの蔓が絡みついたまま枯れていました。
そこにコアシナガバチPolistes snelleni)の創設女王が営巣していました。
ガードレールの南東面に営巣していたのは、やはり日当たり良好な物件を作っているのでしょう。
巣材集めから戻った直後らしく、口元に小さな巣材(パルプ)の団子を抱えています。
その巣材を使って育房の増設を始めました。

造巣作業を終え、巣盤の下面に止まって休んでいるところをマクロレンズで接写しました。
枯れた蔓が藪のように絡み合って私の接近を阻んでいるため、撮影アングルを確保するのに苦労します。
しつこいパパラッチの存在に苛立ったのか、女王蜂は巣盤の天井部に登るとこちらを睨み、半開きの翅を少し震わせて警戒姿勢になりました。
初期巣を下から覗き込むと、育房内に白い卵が見えました。

このガードレールには他にも別の種類のアシナガバチが営巣していました。(映像公開予定:キアシナガバチフタモンアシナガバチ

巣の目印としてガードレールにビニールテープを貼って帰りました。
しかしその後、私は忙しくなり、定点観察にはろくに通えませんでした。(続編は無し)
初夏になると辺りの雑草が恐るべき勢いで繁茂してガードレールを覆い尽くしたり、人手によって一気に草刈りされたりしました。
女王蜂は営巣環境の悪化を嫌って逃去してしまったようです。



2018/04/05

コガタスズメバチ♀の帰巣と出巣【HD動画&ハイスピード動画】



枯木に営巣したコガタスズメバチの定点観察#8



前回の記事→#7


2016年7月下旬・午後17:39〜17:50

3日ぶりの定点観察で夕方に様子を見に来ました。
コガタスズメバチVespa analis insularis
巣に出入りするワーカー♀の羽ばたきを240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。(@0:16〜1:43)
外役に出る個体は巣口から門衛を押しのけるようにして外に出ると、外皮上を少し下に歩いて降りてから飛び立ちます。
黒っぽい巣材を持って帰巣した個体は巣口のすぐ近くに着地して、門衛の誰何すいかを受けるとすぐ巣内に入りました。

映像の後半は通常のリアルタイムのHD動画に戻して、造巣行動を記録しました。
2匹のワーカー♀が別々の場所で外皮を増築しています。
巣材を使い切ると、巣内に戻りました。

外皮に白い巣材を使わなくなったようで、巣の全体の印象が変わりました。
白い縞模様(鱗模様)が薄れてきています。

つづく→#9



2018/03/30

コガタスズメバチの巣が育ち家屋の外壁に癒着



枯木に営巣したコガタスズメバチの定点観察#7

前回の記事→#6


2016年7月下旬・午後17:35

夕刻に4日ぶりの定点観察に行くと、コガタスズメバチVespa analis insularis)の巣の形状に大きな変化がありました。
ほぼ球状の巣はこれまで、軒下に立てかけられた枯れ枝の先端付近から吊り下げられるように作られていました。
ワーカー♀が日々せっせと外皮を増築した結果、家屋の板壁にも外皮がしっかり固定されるようになりました。
これで巣全体がより頑丈になり、これから更に大きく重くなっても安定して支えられるでしょう。
予めこのような計画を立てたり相談したり設計図を元に外皮を増築した訳でもないのに、複数の外役ワーカー♀が各自の思惑で外皮を付け足していくだけで自然と理に適った建造物が出来上がるというのは驚異的です。

この日も外皮の上部でワーカー♀が外皮を増築していました。
巣口の奥で内役ワーカーの活動が見えます。
新たにもう一匹が帰巣しました。(@0:11)

つづく→#8


口元に黒っぽい巣材(パルプ)を咥えている。
口元に黒っぽい巣材(パルプ)を咥えている。
内役ワーカー♀
コガタスズメバチ巣の外皮と板壁の接着面

2018/03/19

垂直円網を張るコガネグモダマシ(蜘蛛) 【10倍速映像】



2016年9月下旬・午後17:11〜17:28 (日の入り時刻は17:33)

湿地帯に近いススキの原で夕方になるとコガネグモダマシLarinia argiopiformis)があちこちで造網を始めます。
10倍速の早回し映像でご覧ください。
慌てて三脚を立てて撮り始めた時はもう縦糸張りの後半でした。
まず放射状に縦糸を張り、網の中心部から外側に向かって螺旋状に(反時計回りに)足場糸を張り、最後に粘着性の横糸を密に張り巡らせます。
横糸張りの初めに何度か回る向きを変えたのは、枠糸にしっかり固定、補強するためでしょう。
横糸張りの後半は時計回りで安定しました。
網が完成すると中央のこしき)で下向きに占座しました。

風が吹くとススキの穂が激しくなびくために、AFではすぐにピントが合わなくなります。
仕方がないので、枠糸を固定してある左のススキの茎に焦点を固定して長撮りしました。
全体的にピンぼけなのは、そのためです。

▼関連記事
コガネグモダマシ♀の造網:足場糸と横糸張り(15倍速映像) @2011年10月中旬
コガネグモダマシ♀の造網(横糸張り:4倍速映像) @2009年10月中旬

コガネグモダマシが網を張る過程の一部始終を動画で記録したくて頑張っています。

この季節になる度に何度かトライしているネタなのですが、なかなか自分でも満足の行く生態動画が撮れません。
今回も残念ながら逆光で、クモの糸や網はほとんど見えませんでした。
クモの動きから造網プロセスを想像してもらう他ありません。
縦糸張りの過程が少しだけでも撮れたのがささやかな収穫(前進)です。
どうしてもこの時期は魅力的な被写体が他にも色々とあるために、浮気症の私はすぐに目移りしてしまいます。

じっくり腰を据えて取り組まないといけませんね。
夕方で無風になる日を待つのも大変なので、やはり飼育下で網を張らせるのが近道かもしれません。




↑【おまけの動画】
長撮りしたオリジナルの動画(早回し加工する前)をブログ限定で公開しておきます。


コガネグモダマシ(蜘蛛)@垂直円網
画像処理で無理やり垂直円網を可視化

2018/03/13

花粉で汚れたコガタスズメバチ♀の帰巣



枯木に営巣したコガタスズメバチの定点観察#5

前回の記事→#4

2016年7月中旬・午前7:35頃

前回から2日後の定点観察も朝から見に行きました。
黒っぽい巣材を咥えたコガタスズメバチVespa analis insularis)のワーカー♀が巣から外に出てきて、巣口の左上に作りかけている外皮ポケットを増設し始めました。
噛みほぐしたパルプの巣材を引き伸ばしながら付け足しています。
新たに追加した部分の外皮は濡れているため黒っぽく見えます。
巣材を使い切る前に、新たな増築箇所を探して外皮をウロウロと徘徊し始めました。

スズメバチはこのようにポケット状の外皮を次々に重ねていくので、断熱効果に優れた軽い巣がみるみる大きく成長していきます。
それと同時に内部からは外皮を削って拡張し、その巣材を再利用して巣盤や育房を作るのだそうです。
ワーカー♀各自が色の異なる巣材を使うために、外皮の表面には鱗のような美しい模様が現れます。

次に帰巣したワーカー♀の胸背が黄色い花粉で汚れていました。(@1:06)
個体識別のマーキングにもなっていて、シリーズ#1から登場する個体です。
何の花粉なのか知りたいところですが、未だ突き止められないでいます。(追記:ノウゼンカズラか?
帰巣時に口元が見えなかったため、何を搬入したのか(巣材か獲物の肉団子か?)不明です。
巣材を集めてきた個体はなぜか常に一度巣内に戻ってから外皮の増築に従事します。

つづく→#6






【追記:おまけの動画】
翌日の巣の様子のスナップショットです。
とりたてて面白い映像ではありませんが、外皮の変化・成長を記録するために、ブログ限定で公開しておきます。




2018/03/08

巣材のスギ樹脂を集めるオオハキリバチ♀



2017年8月下旬・午後15:47〜16:06

平地の用水路沿いに民家の防風林と思われる小さなスギ(杉)林がありました。
そこに一匹のオオハキリバチ♀(Megachile sculpturalis)が飛来しました。
幹に止まると、自然に滴り落ちているオレンジ色の樹脂を頑丈な大顎で削り取って採取しています。
新鮮な樹脂の塊を抱えて飛び去ったのですが、巣の場所は突き止められませんでした。

本種はハキリバチ科なのに切り取った葉ではなく樹脂を巣材として巣穴に詰め込むので、オオハキリバチという和名はやや誤解を招くかもしれません。
一方、英語名は営巣習性を反映して「giant resin bee (樹脂を巣材とする大型の蜂)」と呼ばれていて分かりやすいですね。

和名もオオヤニバチと改名しては如何でしょう?

オオハキリバチの造巣習性からすると、何度も巣材の樹脂を採取しに来るはずだと予想しました。

▼関連記事
オオハキリバチの造巣1
オオハキリバチの造巣2
オオハキリバチによる巣穴の閉鎖:1樹脂

その場でしばらく待つと案の定、同一個体と思われる蜂が戻って来てくれました。

胸背に微小なゴミ(木屑?)が白点のように付着しているので、同一個体で間違いないでしょう。
幹のあちこちからオレンジ色の樹脂が滲み出しているため、厳密に同じ地点から連続して採取するという訳ではありませんでした。
粘り気の強い樹脂を大量に扱ってもオオハキリバチの体表にあまり付着しないのは、何か特別な仕組みがありそうです。(油分を分泌している?)
同じ杉の木に繰り返し通って来てくれたおかげで、巣材集めの行動を背面だけでなく側面からも動画で記録することができました。
ちなみに、計5回撮れた動画の撮影開始時刻は、15:47、15:51、15:53、16:01、16:05でした。
数分間隔で同じ杉の木にせっせと通いに来ていることが分かります。(他の被写体に気を取られて、オオハキリバチ♀の飛来を見逃したことがあったかもしれません。)

最後(5回目)に飛来したオオハキリバチ♀は、杉の幹に数回着陸したものの、巣材を集めずに飛び去りました。
巣穴を大量の樹脂で閉鎖する工程が完了したのかな?と想像しました。
その後はしばらく待っても戻って来ませんでした。

オオハキリバチ♀の営巣行動を7年前に定点観察していますが、巣材集めだけ見たことがありませんでした。

長年の懸案だったミッシング・リンクの現場に遭遇できて、この夏一番に嬉しかったです。
私にとって輝かしい午後のひとときで、忘れ難い日になりました。

毎回オオハキリバチ♀が私の目の届く高さで巣材集めをしていたのは、とても助かりました。
長年探し求めても巣材集めの現場に出くわさないということは、おそらく針葉樹のもっと高い上部から樹脂(松脂?)を採取しているのだろうと半ば諦めていました。
今回の蜂が通っていた杉の木は明るい林縁に生育し農道に面した木でした。(暗いスギ林の中央部に生えた木ではなかった。)
探す際の目の付け所が一旦分かれば、次回からは巣材集めを目にする機会が増えるかもしれません。
生息密度の高いところで探し回るのが鍵でしょう。

このスギ林のすぐ近くにはハチミツソウの群落が咲き乱れていて、オオハキリバチの♀も♂も多数訪花していました。
労働寄生種ハラアカヤドリハキリバチもハチミツソウに訪花していた点も、寄主オオハキリバチの生息密度が高いことを物語っています。


オオハキリバチ♀@巣材集め:スギ樹脂
オオハキリバチ♀@巣材集め:スギ樹脂
オオハキリバチ♀@巣材集め:スギ樹脂
オオハキリバチ♀@巣材集め:スギ樹脂

スギ幹
スギ枝葉
スギ枝葉

2018/03/03

コガタスズメバチの巣:朝の活動



枯木に営巣したコガタスズメバチの定点観察#4

前回の記事→#3

2016年7月中旬・午前7:18

3日ぶりの定点観察。
朝からコガタスズメバチVespa analis insularis)のワーカー♀が飛んで巣に出入りしたり、口元に巣材を咥えた個体が外皮をウロウロしたりしています。
少しずつ大きくなった巣の外皮にマーブル模様が入って美しいですね。
白い部分の巣材はどこから調達した樹皮のパルプなのか、気になります。

つづく→#5





2018/02/27

巣の外皮を増築するコガタスズメバチ♀



枯木に営巣したコガタスズメバチの定点観察#3



▼前回の記事→#2

2016年7月上旬・正午前後

3日ぶりの定点観察。
枯れ枝の先端近くに作られた巣でコガタスズメバチVespa analis insularis)のワーカー♀が巣口の下の外皮ポケットを増築していました。
外で巣材を集めてきた個体はなぜか帰巣するといつも巣内に一旦入ります。
すぐに外皮の増築を始めれば良いのにと、いつも不思議です。
女王蜂に帰巣の挨拶をするのか、幼虫との栄養交換で空腹を満たすのか、巣内で巣材のパルプをじっくり噛みほぐすのか、考えても分かりません。
いつか巣内を直接に観察して突き止めたいものです。
しばらくすると巣材を咥えたワーカー♀が巣内から出てきて外皮上を歩き回ります。
増築が必要な場所を決めると、2匹が並んで作業を始めました。

途中で一匹が場所を変え、外皮の上部(裏側)も増築するようになりました。

その間に、胸背が黄色い花粉で汚れた個体が巣に出入りしています。
このワーカー♀黄は前回#1も居たので、個体識別できて好都合です。
自分で身繕いしても胸背の汚れは前脚で掻き落とすことができず、ワーカー♀同士で相互身繕いする習性も無いのでしょう。
このワーカー♀黄は造巣作業には従事せずに、幼虫のための獲物を狩る専門の係なのかもしれません。
ただし私が見ている限りでは、いつも手ぶらで帰巣していました。

撮影中、近所で誰かが草刈機を使って除草作業をしています。
凄まじい騒音ですが、コガタスズメバチのコロニーは別に苛立っている素振りはありませんでした。


つづく→#4


左の個体は巣材のパルプ団子を咥えている。
コガタスズメバチ♀2匹で外皮の増築
胸背が黄色い花粉で汚れているコガタスズメバチ♀個体が帰巣
前回より巣の外皮が全体的に少し大きくなっています。



2018/02/25

巣からゴミ捨てに出るコガタスズメバチ♀



枯木に営巣したコガタスズメバチの定点観察#2

▼前回の記事→#1

2016年7月上旬

コガタスズメバチVespa analis insularis)コロニーの活動を動画で記録していると、ちょっと面白いシーンが撮れていました。

外役に飛び出すワーカー♀が珍しく大顎に何か白い物体を咥えていました。(@0:35)
出巣のついでにゴミを捨てに行くのでしょう。
謎の白い物体は何でしょうか?
幼虫の死骸には見えませんし、成虫が羽化した後の育房から白い繭キャップを千切り取った破片ではないかと想像しています。

つづく→#3:巣の外皮を増築するコガタスズメバチ



2018/02/23

枯木に作られたコガタスズメバチの巣を見つけた!



枯木に営巣したコガタスズメバチの定点観察#1


2016年7月上旬

枝打ちした枯れ枝を建物の軒下の外壁に何本か無造作に立てかけてあり、一本の先端にコガタスズメバチVespa analis insularis)が営巣しているのを見つけました。
外皮の形状が徳利型ではなくて球形なので、もう初期巣ではなく既にワーカー♀が何匹も羽化済みのようです。
コガタスズメバチの巣口が球状の外皮の横に開いているのは初見で、珍しく思いました。
(普通は下向きに巣口が作られているはずです。)
もしかすると、蜂にとっては重力の向きが基準なのではなく、巣の土台となる枯れ木に対しては下向きに開口しているという認識なのかな?

巣口の奥の育房には白い繭が見え、内役のワーカー♀(または創設女王)が巣内で活動しています。

外役から続々と帰巣するワーカー♀の一匹の胸背が花の花粉で黄色く染まっていました。
獲物や巣材を搬入したのか空荷だったのか、背側から撮るアングルではよく見えませんでした。

しばらくすると大顎に黒っぽい巣材(樹皮を小さな団子状に噛みほぐしたパルプ)を咥えたワーカー♀(胸背はきれい)が巣内から外皮に出てきました。
外被を歩いて回り、増設箇所を検討しています。
後半は撮影アングルを変更して、巣を横から撮ってみました。
最後に、胸背が黄色い花粉で汚れた例の個体が巣外に飛び出して行きました。

今回の映像には巣口を中から守る門衛が写っていませんね。

つづく→#2:巣からゴミ捨てに出るコガタスズメバチ♀



2018/01/11

肉団子や巣材を巣に搬入するチャイロスズメバチ♀【ハイスピード動画】



2016年9月下旬
▼前回の記事
チャイロスズメバチの巣を新たに発見


神社の破風板(南側)の裏に営巣したチャイロスズメバチVespa dybowskii)のワーカー♀の出入りを240-fpsのハイスピード動画で記録してみました。
長撮りした素材から、帰巣時に何かを搬入したシーンをまとめてみました。
営巣地が高所なので、何を運んで来たのか映像ではしっかり突き止められないこともあります。

シーン1:(0:00〜0:30)

緑色の葉のような謎の物体をヒラヒラさせながら持ち帰りました。
イモムシなどの獲物をそのまま搬入したのですかね? 
以前、チャイロスズメバチ♀がカマキリを狩ったときは肉団子を作らずに持ち帰ったのを観察しています。

▼関連記事
オオカマキリを狩るチャイロスズメバチ♀


シーン2:(0:30〜0:50)

二番目に帰巣した個体♀が黄緑色の肉団子を搬入。



シーン3:(0:50〜1:14)

緑色の肉団子を搬入。



シーン4:(1:14〜1:31)

黒っぽい肉団子?を搬入。
団子から虫の脚のようなものが突き出ている。
巣材の樹皮かもしれない。



シーン5:(1:31〜2:04)

画面の上端で着地した個体が黄緑色の肉団子を咥えていた。
破風板を歩いて巣口に向かう。



シーン6:(2:04〜3:44)

♀αが白っぽい肉団子を搬入。
破風板に居た別個体♀βが迎撃に飛び立ち(スクランブル発進)、帰巣する個体♀α(+肉団子)と空中で衝突した。
門衛βが外敵と誤認したのだろうか?
♀αが帰巣をやり直している間に、更に別個体♀γが黒っぽい団子(巣材?)を咥えて帰巣。
その後も続々と帰巣する個体は空荷のようでした。


肉団子を持ち帰っても破風板でたむろしている多数の門衛?が獲物の分配を求めて殺到することはありませんでした。
したがって、コロニーはさほど飢えていないのでしょう(食糧事情は満ち足りている)。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

つづく→チャイロスズメバチの巣に近づく謎の寄生?ハエ【ハイスピード動画】


2017/07/20

電柱に巣を作るハシボソガラス♀♂【10倍速映像:野鳥】



2017年4月中旬・午後14:44~15:51
▼前回の記事
電柱の天辺に小枝を組み合わせて巣を作るハシボソガラス♀♂(野鳥)

電信柱の最上部に営巣を始めたハシボソガラスCorvus corone)の♀♂番(つがい)による造巣を微速度撮影で1時間以上記録してみました。
カメラを嫌って営巣を止めてしまうのが一番心配でした。
巣に出入りする親鳥を警戒させないように、私はなるべく巣の方向を見ないように心がけました。
素知らぬ顔でわざと巣の逆を向いて座り、ときどき手鏡で背後のカメラの液晶モニタをチェックしました。
すると後半はカラスの番がわざわざ私が眺めている方角の電柱に止まり直し、偵察に来たのが可笑しかったです。
私が長々と一体何を見ているのか、気になってたまらなくなったのでしょう。
少し離れた電柱や電線に2羽が並んで止まり、こちらを見張っているときもありました。

10倍速の早回し速度を御覧ください。
親鳥の♀♂番が協力して、巣材の小枝を一本ずつ搬入しました。
映像の中で巣材を搬入したのは、@0:12(単独)、@1:22(♀♂)、@3:03(♀♂)、@4:01(単独)、@4:33(♀♂)、@5:27(単独)の計9回です。
手ぶら(空荷)で帰巣することはありませんでした。
もし私が撮影していなければ、もっと伸び伸びと(頻繁に)造巣活動を行ったかもしれません。
カラスを性別を外見で見分けられないのが残念です。
単独で帰巣するのではなく、番が相次いで帰巣することが多い印象を受けました。
夫婦で同じ場所から巣材を集めてくるのですかね?

これは個人的な仮説ですけど、細かい造巣作業は♀の担当なのだとすれば、♀が不在時は♂が♀の帰りを待っているのかもしれません。
一緒に帰巣すれば♂は♀に巣材を渡してすぐ出かけられるので、無駄なタイムロスが無くなるでしょう。

巣から飛び立つまで結構長い時間、巣の横の電線に止まっていることがありました。
疲れて休んでいるのか、それとも私を油断なく監視しているのかな?

一から作り始めて何日目の巣なのでしょう?(この巣を見つけたのは2日前)
一番初めの作り始めに電柱の天辺に乗せた小枝が風で飛ばされたりしないように、どうやって固定したのか、知りたいところです。
このような丸見え状態でも平気で営巣するのは、ハシボソガラスの特徴なのだそうです。

電柱は約10メートルの高さの支柱にアーム(横棒)がついている構造で、まったく隠蔽物のない環境である。したがって、隠蔽にこだわるハシブトガラスの電柱利用は難しいが、隠蔽にこだわらない性質をもっていることで、ハシボソガラスは営巣箇所として、電柱を利用することができるのだろう。(後藤三千代『カラスと人の巣づくり協定』p24-25より引用)

営巣地の電柱の真下に庭木を伐採した枝が積み上げられています。
微速度撮影の後半になると近所の人が現れ、その枝をその場で更に細かくカットし始めました。
その間も、カラスは平気で電柱の天辺にせっせと巣材を運搬し造巣を続けました。
ヒトを個体識別し、カラスに対する敵意の有無をきちんと見分けているとしか考えられません。
見ていた私は、このヒトが親切心でカラスのために巣材を提供しているのか?とさえ思うようになりました。
しかし、インタビューする機会を逃してしまいました。
実は初めカラスは電柱下の豊富な巣材源から小枝を集めていたのですが、私が見ていると警戒して他所から巣材を調達するようになりました。
もし適切な巣材を大量に用意して積み上げておけば、カラスはその近くに営巣してくれるかもしれません。

ここで悲しいお知らせです。
その後も張り切って定点観察に通ったものの、まず親鳥が警戒して私が見ている間は巣に近寄らなくなりました。
私が諦めて帰ろうとすると、親鳥がしばらく後を追いかけてきて、ちゃんと帰ったかどうか確かめようとさえするのです。
今季はあちこちでカラスの営巣観察を集中的に行ったのですが、それで分かったことは、このときの撮影地点があまりにも巣に近過ぎました。
むしろ初日にブラインドも張らず長時間撮れたのが奇跡的でした。
その次は電柱から巣が撤去されてしまい、残念ながらここには二度と再建されませんでした。
電気トラブルを恐れた近隣住民が通報したのか、電力会社が対処したのでしょう。
私が見たところ、この親鳥は電柱の最上部に営巣していて電線とはほとんど干渉しそうにない上に、巣材に針金ハンガーなどは使用していません。
したがって(素人考えでは)、漏電事故は起こりにくいと思うのですが、仕方がありません。
雛が孵ると親鳥は周囲のヒトに対して攻撃的になるので、その意味でもこの巣をそのままにしておくのは危険だったかもしれません。

営巣による停電は、巣の材料として使われる木の枝やハンガーなどの金属類が電線に触れ、漏電するなどして起こる。(同書p9より引用)





【書評】
後藤三千代『カラスと人の巣づくり協定』という新刊本を書店で見つけて衝動買いし、一気に読みました。
我が山形県の北部の鶴岡地区で電柱に営巣するカラスの問題と対策について研究してきた山形大学農学部の先生による著書です。
内容も本格的で充実しており、非常に参考になりました。(こういう本を待っていました。)
私のフィールドは同じ山形県でも南部なので、地域性の違いを伺い知れて興味深く思いました。
カラスについて書かれた本は数あれど、営巣活動(巣作り)に焦点を当て、全く新しいユニークな視点からカラスの生態について教えてくれます。

驚いたのは、本書に書かれた研究アプローチはフィールドでカラスの行動や生態を全く観察していないことです。(割愛しただけかもしれません)
バードウォッチャーの私としてはその点で不満はあるのですが、他の本を読んで補足すればよいのでしょう。(餅は餅屋)
それでも電柱から撤去された多数の巣を鑑識のように緻密に分析するだけでここまで深くストーリーを組み立てられるのか!と驚嘆しました。(巣の遺留物からDNAバーコーディングも駆使しています。)

巣材に使われた小枝の植物種を一本ずつ同定しています。

電柱の営巣対策でも決して情緒に流れされず冷徹に科学的なデータを積み上げて合理的な対策を提案しています。

実際に成果をしっかり上げつつあるので、非常に説得力があります。
カラスが悪者でないことがわかれば、人間の戦う相手は、カラスではなくなる。カラスの営巣生態を無視した、撤去という対策のあり方に問題があったのである。(p121あとがきより引用)


以下は個人的な疑問点。(一度通読しただけなので、私の読み落としや誤解があるかもしれません)

  • DNAバーコーディングで巣を作ったカラスの種類(ハシボソガラスまたはハシブトガラス)を見分けるだけでなく、DNAフィンガープリンティングで親鳥や巣で育った雛の正確な個体識別は可能か?
  • カラスはひとつの縄張りで一つしか巣を作らないという前提で議論を進めているが、大丈夫か? 繁殖に使われない偽巣を作ることがある、という記述を別な本で読んだことがあり、私もそれらしき偽巣の存在を観察しています。(同じ縄張り内でニ巣並行営巣の決定的な証拠映像を撮るのが私の次の目標です。)
  • 撤去したカラスの巣の基盤部から珍虫アカマダラハナムグリの土繭や蛹、幼虫を得たという結果は興味深いのですが、必ずしもカラスの巣でアカマダラハナムグリ♀が産卵・繁殖したとは限らないのでは? 基盤部の巣材となる土壌をカラスが水田から採取してきた際に既にアカマダラハナムグリの卵や幼虫が混入していた可能性は?

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