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2016/05/06

羽化直後のノシメマダラメイガ(蛾)



2015年10月下旬

ノシメマダラメイガの飼育記録#29

生のニンニクだけを餌にしてノシメマダラメイガPlodia interpunctella)が育つか?という実験をしていました。
諦めかけて放置していたら、容器内で遂に羽化したばかりの成虫を1頭見つけました。

繭から抜け出した直後らしく、体液を翅脈に送り込んで翅伸展している途中(後半)でした。
慌てて動画と写真で記録します。
翅がすっかり伸び切ると、その翅を立てて乾かします。
ノシメマダラメイガが翅を閉じている(立てている)姿勢はこれまで一度も見たことがないので、とても珍しく思いました。
male wing gland?
成虫の口吻は退化していますが、口元でときどき開閉しているのは下唇鬚?でしょうか。
腹端を少し持ち上げていて、コーリング姿勢に似ているかもしれません。
しばらくすると閉じた翅を再び広げたのですけど、その瞬間は見逃しました。
羽化に気づいたのが外出の間際だったので、撮影に全然集中できませんでした。
記録として中途半端ですけど、ゼロよりましなので。(完全版が撮れたら差し替えます。)
次に機会があれば羽化の一部始終を微速度撮影でじっくり記録したいものです。

桑原保正『性フェロモン:オスを誘惑する物質の秘密』によると、「ノシメマダラメイガは午後にだらだらと羽化する」らしい。(p148より引用)



さて、この結果からノシメマダラメイガはニンニクだけを食べて卵から成虫まで育つことが分かりました。
大量の産卵数に比べて生存率は極めて低いです。
幼虫が栄養失調で共食いしたかもしれません。(未確認)
一つ不思議なのは、密閉容器内でこれまで全くノシメマダラメイガの交尾行動を観察していないことです。
もしかすると、ニンニク臭が性フェロモンの働きを撹乱する作用が有るのかな?と思ったりしました。

つづく→#30:巣内で休眠越冬するノシメマダラメイガ(蛾)老熟幼虫



2016/02/11

クロシタアオイラガ(蛾)幼虫の繭作り失敗【60倍速映像】



2015年10月中旬

採集してきたクロシタアオイラガParasa sinica)の幼虫に柿の葉を与えても食べてくれず、飼育容器内で落ち着きなくウロウロするばかりです。
ノギスで採寸すると、体長17mm。
『イモムシハンドブック』p56によれば、クロシタアオイラガ終齢幼虫の体長は18mmほど、とのこと。


食欲がないので終齢幼虫が繭を紡ぐ場所を探しているのではないかと思い、いつものように紙箱(ティッシュペーパーの空き箱)に閉じ込めてみました。

60倍速に加工した早回し映像をご覧ください。
照明が眩しくても気にしない様子で箱の中を徘徊しています。
頭部で∞の字を書きながらゆっくり前進しています。
足場となる絹糸を張り巡らしているのでしょう。
紙箱の隅の縁に沿ってシルクロードを敷設しながら前進し続けます。
なかなか営繭場所が定まらないようで、箱の隅に行き着くと引き返します。
立ち止まって休息している間も早回し映像で見ると体全体が脈動しています。
消耗した絹糸腺の回復を待っているのかと初めは思いました。

活動を再開した幼虫はやがて箱の側面と底面に交互に口を付けるようになり、遂に絹糸を紡ぎ始めたようです。
反省点として、背景が灰色のボール紙だと肝心の絹糸がよく見えませんね。
黒く塗っておくべきでした。
ところが場所が気に入らなかったのか、しばらくすると再び移動を始めました。
箱のダンボール紙と絹糸の接着の相性が悪いのかもしれません。
四方を何か物に囲まれた環境なら幼虫も落ち着いて正常に営繭できるのでしょうか?
動画撮影の邪魔になる物はなるべく入れたくないのですが、繭棚のような基質を入れてやるべきかどうか、悩みます。
もし本格的に営繭を始めたら一気呵成に仕上げるはずです。

幼虫がうずくまるように休んでいるときも、早回し映像を見ると、ときどき腕立て伏せするような奇妙な動きをしています。
どうも健康な個体ではないような気がしてきました。
例えば体内寄生による不随意運動や神経症状が疑われます。
あるいは繭作りではなくて、もう一度脱皮するための準備なのか?と思ったりもしました。
謎の病原菌に冒されていた可能性も考えられます。
カラフルな背筋が脈打っているのは、背脈管(昆虫の心臓)の拍動が透けて見えているのかな?

相変わらず探索徘徊と繭の試作と休息を繰り返しています。
ごく短距離なら後退できることが分かりました。
ただし、あまり得意ではなさそう。

またしばらくすると、いつの間にか紙箱の隅で仰向けにひっくり返っていました。
仰向け姿勢で繭を紡いでいる様子もなく、奇妙な蠕動するも起き上がる力が失われています。
前日に見られたような起き上がり運動をする元気がありません。

一縷の望みを込めて、幼虫の周囲にありあわせの物を置いてやり、より狭い空間に閉じ込めてみました。
これまでよりも落ち着いて粗末な繭を作りかけたようにも見えたのですが、やはり正常な営繭運動ではなく、ほとんどの時間は(苦しげに?)休んでいるだけでした。

実はこのようなイラガの営繭異常は見覚えがあります。

▼関連記事
繭を紡ぎ始めたイラガ(蛾)終齢幼虫
イラガ(蛾)幼虫の営繭異常【早回し映像】

諦めてクロシタアオイラガ幼虫を放置していたら、9日後には完全に死んでいました。
蛹化せず幼虫のまま萎んでいました。
白い糞を排泄した跡が横に残っています。
これはイラガの仲間に特有の堅牢な繭を作るために必須のシュウ酸カルシウムを含んだ分泌物(硬化剤)なのでしょう。

今回は営繭の撮影を優先したので、密閉容器に閉じ込めていません。
開放空間のため、たとえ寄生ハエの終齢幼虫(ウジ虫)が寄主脱出しても分かりません。
営繭異常の原因が体内寄生だったかどうか、分からず仕舞いでした。
7年前にイラガの繭を採集したら、蛾ではなく寄生ハエが固い繭から羽化してきました。
このハエは寄主に正常の繭を作らせてから捕食した(殺した)ことになります。

▼関連記事
イラガに寄生するヤドリバエ(イラムシヤドリバエ?)
もし次回イラガを飼育するときは蚕棚やまぶしのような四方をしっかり囲まれた空間に幼虫を閉じ込めて繭を作らせた方がよいかもしれません。



【追記】
カキノキが幼虫による食害を防ぐために毒を葉に貯め込む以外に、成長ホルモン様物質が含まれている可能性も考えられます。
稲垣栄洋 『たたかう植物: 仁義なき生存戦略 』(ちくま新書)によると、
例えばイノコヅチには昆虫の脱皮を促す成長ホルモン様物質が含まれている。(中略)この物質を食べると体内のホルモン系が撹乱を起こし、大して体も大きくならないうちに脱皮を繰り返して早く成虫になってしまう。 (p106-107より)

同様に、イラガ類の幼虫が充分に育っていない内に営繭を始めてしまうようなスイッチを入れる化学物質がカキノキの葉に含まれているとすれば、食害への対抗措置になり得るでしょう。




腹面
背面

2015/12/24

トリノフンダマシ(蜘蛛)幼体は団居を作らない?



2015年9月下旬

トリノフンダマシ♀の定点観察#14


卵嚢から脱出したトリノフンダマシCyrtarachne bufo)幼体は各自が糸を引きながら分散し、後続の個体は綱渡りしています。

出嚢したばかりの幼体は、色形ともに成体とは似ても似つかぬ状態です。
脱出した幼体を接写すると、腹部はオレンジ色がかった褐色系で頭胸部は灰色、腹部腹面は黒っぽいです。
単眼付近は橙色っぽいです。

翌日になっても飼育容器内で幼体は集合せず団居まどいを形成しませんでした。

長時間の微速度撮影してみれば分散の挙動がよく分かったかもしれません。
容器に閉じ込められても共食いしている様子はありませんでした。(私が気づいていないだけ?)
野外の自然状態では直ちにバルーニングで分散するのですかね?(蜘蛛の子を散らす)
何匹の幼体が出嚢したのかカウントすべきなのですが、面倒でやっていません。

※ 冒頭の出嚢シーン(@〜00:30)のみ動画編集時に自動色調補正を施しています。

さて、採集した3つの卵嚢でちょっとした実験をしています。
近縁種オオトリノフンダマシの場合、卵嚢内の幼体は重力に逆らって上に向かい、卵嚢が置かれた向きに応じて上部に脱出口を開けるのだそうです。
今回私も真似をして、採集時の自然状態の向きに対して正立、倒立、横向きと3つの条件でトリノフンダマシの卵嚢を容器内に固定しました。
意外なことに、この記事を書いている現在(12月下旬)も、残る2個の卵嚢から幼体は孵化していません。
このまま室内で越冬するのでしょうか?※
それともオオトリノフンダマシの卵嚢とは異なり、トリノフンダマシでは正立条件以外(倒立、横倒し)では卵嚢内の幼体が脱出できなくなり死んでしまったのでしょうか?
トリノフンダマシとオオトリノフンダマシでは卵嚢の形状が違いますから、実験結果が違っても不思議ではありません。
春まで様子を見守ることにします。

※『クモ生理生態事典 2011
』サイトでトリノフンダマシの項を参照すると、

関東では9月に成体,中旬に産卵,産卵後3週間をして出のう,2令幼体で越冬(椿の葉裏など).(中略)10月24日に出のうした幼体雄は翌年4月18日,5月20日に脱皮.

つづく?



【追記】
本種の幼体を飼育したことは未だありませんが、造網せずに捕虫するらしい。
『クモのはなしI:小さな狩人たちの進化のなぞを探る』第3話 池田博明「似てない親子」p21によると、
 親になると網を持つという例があります。コガネグモ科のトリノフンダマシの仲間がそうです。この仲間は夏の夜に独特な網を張りますが、幼体や♂の網は知られていませんでした。(中略) 幼体は夕方暗くなるころから活動を開始し、ユズの葉のへりに移動してきます。そこで第4脚で葉のへりを、第3脚で葉の表面をおさえ、第1・第2脚を大きく広げて、飛んでくる羽虫を抱き込むようにつかまえるのです。♀の亜成体や♂も同じようにして捕虫します。(中略)コガネグモ科では幼体の時期に網を持たないで捕虫するクモが何種類か知られています。


2015/12/22

卵嚢から孵化するトリノフンダマシ(蜘蛛)幼体



2015年9月下旬

トリノフンダマシ♀の定点観察#13

トリノフンダマシCyrtarachne bufo)幼体の出嚢を今度は微速度撮影ではなくリアルタイムで接写してみました。
卵嚢表面の穴から脱出すると、前の個体が残した糸を伝って綱渡りのように容器内に分散します。
脱出を躊躇う個体も見受けられます。
脱出した幼体を接写すると、腹部はオレンジ色がかった褐色系で頭胸部は灰色、腹部腹面は黒っぽいです。
単眼付近は橙色っぽいです。

つづく→#14:トリノフンダマシ(蜘蛛)幼体は団居を作らない?



2015/12/21

トリノフンダマシ幼体(蜘蛛)の出嚢【微速度撮影】

2015年9月下旬

トリノフンダマシ♀の定点観察#12


桑の葉裏に吊るされたトリノフンダマシCyrtarachne bufo)の卵嚢3個を採集して室内で飼育することにしました。



同属の近縁種オオトリノフンダマシ(Cyrtarachne inaequalis)の場合、紡錘形の卵嚢に出来る脱出孔は必ず重力と反対側に出来ることが実証されているそうです。
(文葉社『クモの巣と網の不思議:多様な網とクモの面白い生活』p131より)。
中の幼体に負の重力走性(走地性)があり、脱出しようと上に向かって同じ位置を噛み付いた結果、開孔するのだそうです。



▼関連記事(2006年の撮影)
オオトリノフンダマシ幼体の出嚢:前編

トリノフンダマシとオオトリノフンダマシは卵嚢の形状が明確に異なります(球形、紡錘形)。
今回、同じ母クモが産んだと思われる卵嚢を3個手に入れたので、私も真似をしてトリノフンダマシの球形の卵嚢で実験してみることにしました。
採集時の自然状態の向きに対して正立、倒立、横向きと3種類の条件で木工用ボンドやリングなどを使って容器内に固定しました。





採集して4日後の晩、幼体の孵化が始まりました。
出嚢したのは密閉容器内に正立して置いた卵嚢です。
つまり、採集時(自然状態)と上下を同じ向きにしておいた卵嚢です。
初めの2個の卵嚢に関しては母クモが産卵した順番が分かりません。

普通に考えれば産卵順に孵化するのでしょう。
真上ではないものの、確かに卵嚢の上部を食い破って穴を開け、幼体が続々と脱出してきます。
大小2個の脱出孔が並んでいます。
大脱走の様子を3時間、微速度撮影してみました。
60倍速の早回し映像でご覧ください。

【おまけの動画】
早回し速度を変えたバージョンを2本、ブログ限定公開します。
眠れない夜にでもご覧下さい。
「羊が1匹、羊が2匹、… zzz」




↑40倍速映像



↑10倍速映像

つづく→#13:卵嚢から孵化するトリノフンダマシ(蜘蛛)幼体




2015/11/26

夜に繭を紡ぐキアシナガバチ老熟幼虫【暗視映像】



2015年8月上旬・深夜1:15および同じ日の夜21:20

キアシナガバチ巣の定点観察@トウカエデ枝#9


キアシナガバチ♀(Polistes rothneyi

赤外線の暗視カメラで撮ると、いつものように多数の蜂が折り重なって寝ています。
巣に産卵しようと夜近づいて来ると言われる寄生蛾に対しても防御力が高そうです。

二股の幹の隙間から狙うと、育房内で老熟幼虫が盛んに動いています。
おそらく繭を紡いで育房に蓋をしているのでしょう。
近くで静止している成虫は触角と脚先で常に幼虫の動く頭部に触れているのに、栄養交換などのアクションを起こさず寝ているようです。
成虫は昼行性ですが、幼虫は昼夜を問わず営繭するのでしょう。

約20時間後に再び様子を見に行くと、老熟幼虫の動きは無くなっていました。
白色LEをD点灯すると、白くて薄い繭キャップが作られていました。
昼間に途中経過を見れなかったのが残念です。
できれば微速度撮影してみたかったのですが、この場所は三脚を設置できないのです。

つづく→#10:夜キアシナガバチの巣に侵入するワラジムシ【暗視映像】



2015/10/08

ニンニク上で繭を紡ぐノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫



2015年7月下旬・室温31℃、湿度61%

ノシメマダラメイガの飼育記録#27

▼前回の記事
飼育容器から脱出を試みるノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫

厨房で採集したノシメマダラメイガPlodia interpunctella)とニンニクを密閉容器に入れて飼育してみたら、幼虫の体がぴったり収まる球根表面の溝のような窪みで繭を紡ぎ始めました。
背景(ニンニクの皮)が白っぽいので絹糸が見えにくいです。
後半からは(@3:35〜
)10倍速の微速度撮影を始めたものの、天井部に絹糸を固定する物が無いので、いつまで経っても繭の上部が安定しません。
この場所は諦めたのか、作りかけの繭の端から出て行ってしまいました。
撮影用の強い照明に慣れていないせいかもしれません。
この飼育容器内はあまりにも清潔で無味乾燥な空間のため、巣材に使えるゴミが周囲に乏しいことも問題のようです。



▼関連記事 
ゴミを綴り繭を紡ぐノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫【微速度撮影】

つづく→#28:産卵行動





2015/08/21

ノシメマダラメイガ(蛾)の羽化【微速度撮影】



ノシメマダラメイガの飼育記録#23

▼前回の記事
ノシメマダラメイガ(蛾)の繭を乗っ取る幼虫【微速度撮影】
2015年7月中旬

兄弟喧嘩で繭から追い出されたノシメマダラメイガPlodia interpunctella)の蛹を採取し、隔離して飼育することにしました。
多数の幼虫がウロウロしている過密環境では落ち着いて羽化できないだろうと思ったからです。
共食いされる心配も少しありました。

3日後、蛹の表面をよく見ると光沢が失われ、細かな皺のようなものができつつあります。
蛹のクチクラ層の下に空気が入ったのでしょうか。
いよいよ羽化が近い予感がしました。
ノシメマダラメイガ関連の文献※によると、羽化直前に蛹は灰色になるらしい。

※桑原保正. "メイガ科昆虫の性フェロモンに関する研究." (1971).
微速度撮影で蛹を監視することにしました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。

蛹はときどき腹部にかすかな蠕動が見られます。
遂に羽化が始まりました。(@8:08)
蛹の前方が割れて成虫が脱出しています。
ところが繭内で固定されていないため、容器内で蛹が激しく動き回ってしまいました。
そのためにスムーズに抜け出せないで、新成虫は羽化殻を引き摺って歩いています。
こんなことなら、瞬間接着剤で蛹を固定しておけば良かったかもしれません。
羽化殻だけでもコレクションしたかったのですが、行方不明になり残念。
成虫が暴れたせいで、下に敷いたティッシュペーパーに鱗粉が付着しています。
逃げられたために性別も分からなくなってしまいました。

ノシメマダラメイガは普通、夜に羽化するらしいのですけど、今回の羽化は真昼でした。
撮影用に照明を常時点灯していたせいで、日周リズムが狂ったのでしょう。
羽化直後の室温は31℃、湿度47%でした。

次に機会があれば、繭からの正常な羽化を観察するつもりです。
これでノシメマダラメイガの生活史を大体ひと通り観察出来ました。

つづく→#24:ニンニクは貯穀害虫ノシメマダラメイガ(蛾)を誘引する?


2015/08/17

ノシメマダラメイガ(蛾)の繭を乗っ取る幼虫【微速度撮影】



ノシメマダラメイガの飼育記録#22

2015年7月上旬

飼育容器の底に作られたノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)の薄い繭の中で蛹の黒化が進んでいます。
この蛹は頭部を上に向けており、体の前半部は黒色になり、腹部は褐色のままです。
24時間以内に羽化しそうです。
羽化する瞬間を記録するつもりで10倍速の微速度撮影で監視・録画していたら、全く予想外の展開になりました。

個体密度などは考慮せずに適当に飼っているため、他の幼虫が絶え間なく徘徊して来て繭内の蛹も落ち着かなそうです。
餌の穀類の下に潜った幼虫がときどき激しい地殻変動を起こしています。
繭の入り口から幼虫が侵入してきて触れたため、蛹が少し回転しました。
このとき蛹が蠕動して威嚇(抗議)したようです。

繭の隙間に幼虫が居座り、上半身だけ外に出して食事しています。
ようやく居候が出て行ってくれたと思いきや、また戻って来ました。(別個体?)
繭の作りが甘くて侵入し放題です。
頭部を幼虫につつかれた蛹は、尾を振って(身を攀じって)必死に抵抗しています。
図らずも蛹の運動能力を見ることが出来ました。
侵入者の幼虫は蛹室を乗っ取ろうとしているのでしょうか?(労働寄生)
本種の幼虫が集めたゴミを糸で綴って念入りに繭を作るのは、共食い防止のためのような気がしてきました。
幼虫が蛹を完全に繭の左端から追いやってしまいました。
繭を乗っ取った幼虫は押麦をかじったり繭内で方向転換したりし
ています。
まさか蛹と幼虫の仁義なき兄弟喧嘩が見れるとは予想外でした。
散々、狼藉を働いた後に幼虫は、意外にも繭から出て行きました。
したがって幼虫には何も悪気はなく(繭を乗っ取るとか労働寄生する意図は無く)、無邪気に勝手気ままに徘徊・摂食していただけのようです。
苦心して作った繭から後輩(弟/妹)に追い出された蛹は無防備な剥き出し状態になってしまいました。
もちろん自力では繭に戻れません。


※ プラスチック容器越しに撮ったやや不鮮明な映像に対して動画編集時に自動色調補正を施してあります。

つづく→#23:成虫の羽化【微速度撮影】



【追記】
小島渉『わたしのカブトムシ研究』に似たような話が書いてありました。

(カブトムシの)幼虫は先にできた蛹室の近くにやってきて、そこで自らも蛹室を作る。このとき、やってきた幼虫は先にできた蛹室と必ず一定の距離を保っており、それを壊してしまうようなことはほとんど起こらないようなのだ。(中略)カブトムシの蛹室の壁は物理的にそれほど頑丈ではないので、ほかの幼虫が土を掘って蛹室を作るときに壊してしまうことが起こるはずである。(p67-68より引用)
幼虫がまさに蛹室の壁に到達しようかというとき、蛹が蛹室の中でぐるぐると服節をまわし回転運動をおこなうのが見えた。幼虫は動くのをやめ、しばらくすると蛹室のそばから少しずつ離れていった。(p68より)
幼虫は決して蛹を食べてしまうようなことはなかった。ただ単に、土の中を動き回って蛹室の近くに来たときに知らず知らずのうちに蛹室を壊してしまうのだと考えられる。(p69より)

腐葉土の中で育つカブトムシの幼虫は、天敵(捕食者)であるモグラの振動を察知するとしばらく動きを止めてやり過ごすらしい。
カブトムシの蛹はモグラの振動を行動擬態することで、同種の幼虫に蛹室を壊されないようにしている、という興味深いストーリーでした。
ノシメマダラメイガの蛹も同様の防衛戦略を発達させていても不思議ではありません。(実際に繭が壊され侵入されそうになったときに、蛹が繭の中で激しく暴れました)
今回はあまりにも高密度で飼い過ぎたせいで、繭内の蛹が繭内で動いてもその音がかき消されてしまったのかもしれません。



2015/08/16

成虫の死骸を解体して巣材とするノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫



ノシメマダラメイガの飼育記録#21

2015年6月下旬

ノシメマダラメイガPlodia interpunctella)成虫が1頭、飼育容器の壁面にへばり付いて死んでいます。
その死骸の傍らに居る幼虫が気になりました。
分散移動の途中にたまたま死骸に遭遇して立ち往生しているのではなく、やけに死骸へ執着しています。
気になって観察していると、死骸を掴んで(噛んで?)保持しながら後退して引き寄せました。
翅を根本から食いちぎろうとしているようです。
もちろん幼虫が生きた成虫を捕食したのではなく、成虫は寿命で死んだのでしょう。
死骸なので共食いや親殺しではありません。
幼虫の餌として与えた穀物やチョコレートだけでは物足りず、屍肉を食べてタンパク質を補給しているのでしょうか?(scavenger)

※ プラスチック容器越しに撮った前半のみ自動色調補正を施してあります。

容器越しの撮影ではまどろっこしいので、容器の蓋を開けて直接接写することにしました。
辺りは死骸の鱗粉が散乱していました。
斜めに見下ろすアングルのため、肝心の幼虫の口元が残念ながらよく見えません。

先日、終齢幼虫が営繭する初めの段階で周囲から様々なゴミを集めては糸で綴って繭を強化する様子を観察しました。
その際に近くにあった成虫の死骸を引き寄せて解体していました。
親のバラバラ死体を巣材に再利用するという猟奇的な習性に震撼しました。

▼関連記事
ゴミを綴り繭を紡ぐノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫【微速度撮影】

今回も似たような行動なのだろうと予測がつきました。
案の定、後日この場所で(おそらく同一個体が)繭を紡ぎました。
幼虫がゴミ資源(死骸)のすぐ近くを選んで営繭することが興味深く思いました。

この繭は中の蛹が透けて見えるので、成虫が羽化するまで観察を続けることにしました。

つづく→#22:蛹と幼虫の兄弟喧嘩




2015/08/12

ノシメマダラメイガ(蛾)の蛹化【微速度撮影】



ノシメマダラメイガの飼育記録#20

2015年7月上旬・室温29℃、51%(蛹化直後)

完成した繭の中でノシメマダラメイガPlodia interpunctella)前蛹が脱皮(蛹化)に備えてみんの状態です。
終齢幼虫のときよりも体長が少し縮んだようです。
蛹化の前兆が分からないので、愚直に動画の長撮り(10倍速の微速度撮影)で監視・記録しました。
前蛹はときどき体を弓なりにして上下させて蠕動しています。
その蠕動が持続的になったと思ったら、いよいよ蛹化が始まりました。
幼虫時代の頭楯が後ろへ(右へ)移動していきます。
プラスチック容器と繭越しの観察なのであまりよく見えません。
脱皮したばかりの蛹の色は真っ白でした。

脱皮を完了しても蛹の蠕動はしばらく続き、抜け殻は腹端に押し込まれました。
結構激しく寝返りを打っています。
これ以降ははもう繭内で方向転換できません。
予想通り、頭部は左向きで確定しました。

営繭を完了し前蛹になってからほぼ24時間後に蛹化しました。
一旦蛹化が始まれば、意外に早く脱皮が進行することが分かりました。
写真のインターバル撮影ではなく、動画による微速度撮影をして正解でした。

※ 透明プラスチックの容器越しに撮ったやや不鮮明な映像に自動色調補正を施してあります。

【おまけの動画】


時間を少し遡って、同一個体の前蛹が蛹化(脱皮)に備えている眠の状態を100倍速の早回し映像でご覧下さい。(ブログ限定公開)
ほとんどの時間は静止していますが、ときどき突発的に蠕動しています。
動画を見直しても、脱皮(蛹化)の前兆はよく分かりませんでした。
繭から前蛹を取り出して直接観察すれば何か予兆が分かったかもしれません。

つづく→#21:成虫の死骸を解体して巣材とするノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫


前蛹
蛹化直後

2015/08/11

ノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫の繭作り【100倍速映像】




ノシメマダラメイガの飼育記録#19


2015年6月下旬〜7月上旬

ノシメマダラメイガPlodia interpunctella)終齢幼虫の繭作りがなかなか終わりません。
私のカメラではジオラマモードで10倍速の微速度撮影動画に記録(3fps)することが出来ます。
3日間にわたり断続的に撮り続けた素材から制作した100倍速の早回し映像をご覧下さい。
写真でインターバル撮影するよりも動きが滑らかな早回し映像になります。
次第に白い繭が厚くなり、中の様子が見えにくくなりました。
完成した繭は他種の繭と比べてとても薄く、どうしてこんなに長時間かかるのか不思議なくらいです。
最終的に幼虫は、頭部を左に向けて静止しました。
羽化に備えた脱出口の隙間を繭に残しています。

※ 透明プラスチックの容器越しに撮ったやや不鮮明な早回し映像に自動色調補正を施してあります。

怒涛の繭作り動画の連作はこれで終わりです。

つづく→#20:ノシメマダラメイガ(蛾)の蛹化【微速度撮影】




2015/08/10

繭を作るノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫のインターバル撮影



ノシメマダラメイガの飼育記録#18

▼前回の記事
ゆっくり糸を紡いで繭を作るノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫
2015年6月下旬

繭を紡ぐノシメマダラメイガPlodia interpunctella)終齢幼虫の進捗状況があまりにも遅いので、30秒間隔でインターバル撮影してみました。
写真のEXIFを元に時刻も焼き込める利点があります。
2日間に渡って撮り続けた計2,574枚の写真を元に制作した早回し映像をご覧下さい。
幼虫は長い休息を挟んで断続的に営繭しています。
繭の中でときどき方向転換しています。

※ 透明プラスチックの容器越しに撮ったやや不鮮明な早回し映像に自動色調補正を施してあります。

つづく→#19:営繭の100倍速映像



2015/08/09

ゆっくり糸を紡いで繭を作るノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫



ノシメマダラメイガの飼育記録#17

▼前回の記事 
自ら排泄した糞も繭に織り込むノシメマダラメイガ(蛾)幼虫
2015年6月下旬〜7月上旬

ゴミ集めを止めたノシメマダラメイガPlodia interpunctella)終齢幼虫は営繭に専念するようになりました。
私がこれまで飼育観察してきた繭を紡ぐ他種の幼虫は頭部を8の字に動かしていました。
それに対してノシメマダラメイガ幼虫は絹糸腺があまり発達していないのか、分かりやすい吐糸行動ではありません。(動きが小さい)
4日間に渡り主に微速度撮影で記録したのですけど(次回に公開)、ときどき通常のリアルタイム動画でも撮影しました。
いかにのんびりした繭作りか、この映像で分かると思います。
たまに繭の中で方向転換して、糸を紡ぐ場所を変えます。

※ 透明プラスチックの容器越しに撮ったやや不鮮明な映像に自動色調補正を施してあります。

つづく→#18:営繭インターバル撮影




2015/08/08

自ら排泄した糞も繭に織り込むノシメマダラメイガ(蛾)幼虫



ノシメマダラメイガの飼育記録#16

2015年6月下旬

▼前回の記事 
ゴミを綴って繭を紡ぐノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫【微速度撮影】
営繭を始めたノシメマダラメイガPlodia interpunctella)終齢幼虫の映像を見直すと、周囲からゴミを集めたり繭を紡いだりしながら糞を排泄していました。


私の記憶では、一般に鱗翅目の幼虫は繭を紡ぎ始める前や前蛹が脱皮(蛹化)する前に(繭の完成後に)脱糞するはずで、不用意に繭内を糞で汚さないようにしています。
この点でノシメマダラメイガ幼虫は例外(珍しい部類?)に属するようです。

シーン1(微速度撮影の10倍速映像):

幼虫は繭の外(右側)に身を乗り出してゴミを集めています。
腹端を左右に振りながら繭の中で脱糞しました。
糞の粒はそのまま絹糸に絡み取られ、他のゴミと一緒に繭を強化する材料に使われました。

シーン2(通常のリアルタイム映像):

だいぶ完成した繭の中で休息している幼虫が腹端だけ動かしています。
排便して繭内になすり付けているようです。

※ 透明プラスチック容器越しに撮ったやや不鮮明な映像に自動色調補正を施してあります。

つづく→#17:ゆっくり糸を紡いで繭を作るノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫


2015/08/07

ゴミを綴り繭を紡ぐノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫【微速度撮影】



ノシメマダラメイガの飼育記録#15

2015年6月下旬

ノシメマダラメイガPlodia interpunctella)終齢幼虫が穀類(ゴマと押麦)の中深くに潜り込んで蠢いています。
円筒形プラスチックの飼育容器(綿棒容器を再利用)の底の縁で今にも繭を作りそうなので、営繭の様子を微速度撮影してみました。
2日間の行動を記録した100倍速の早回し映像をご覧下さい。(実時間では休み休み撮って延べ約23時間!)
これまで色々やってきた微速度撮影ネタでも一番と言って良いぐらい興味深い行動を記録することが出来ました。(大興奮!)
かなりの長編映像ですけど、自信作なので是非ともご覧下さい。
透明プラスチック容器越しに撮ったやや不鮮明な映像に自動色調補正を施してあります。

『繭ハンドブック』p83で予習すると、ノシメマダラメイガの繭は

白色で、極めて薄い。餌や自らの糞を糸で綴って繭を作る。
繭のまわりには餌である米粒や糞がついている。

与えたチョコの食べ過ぎなのか、幼虫は一時期ピンク色でした。
一方、営繭を始めたこの老熟幼虫は濃い黄色でした。
発達した絹糸腺や脂肪体が透けて見えてる色なのかな?

餌の穀類に混じる茶褐色の粒は幼虫の糞やチョコレートの食べ滓と思われます。
幼虫は穀粒を下から持ち上げる力があります。

穀粒同士を絹糸で綴ってから繭室の近くにグイグイと引き寄せようとしています。
糞や細かなゴミの粒子を集めて引き寄せると、繭に編みこんでいます。
繭を補強するためなのか、それとも偽装工作(カモフラージュ)なのでしょうか?
実は周囲から集めたゴミを糸で綴って巣(隠れ家)を作るという同様の行動は若い幼虫のときもやっていました。
作りかけの繭の外に身を大きく乗り出して遠くからもゴミを集めてきています。

自分の絹糸だけでは繭を作れないのでしょうか?
一番驚いたことは、ノシメマダラメイガ成虫の死骸を繭内に引き込んで解体し、巣材に使い始めたことです。(@7:10〜)
死んだ成虫の脚や翅などをバラバラに引きちぎって繭に編みこんでいます。
擬人化して考えるとゴミ屋敷どころか凄惨な猟奇事件の話になりますが、親の死骸も無駄にしないで再利用するとはとても興味深い習性ですね。
必要な巣材(ゴミ)が近くに無ければ自分で作ってしまおうというDIY精神は天晴です。
成虫が寿命で死ぬ度に飼育容器から取り除いてきたのですけど、今後は死骸を残しておいた方が良さそうです。
巣材として使う以外にも、死んだ成虫を幼虫が食べてタンパク源としている可能性もありますね。


透明プラスチック容器の側面に接する部分は巣材を節約しているのは何故でしょうか?
観察しやすいのは助かります。
照明に一日中照らされて眩しいはずなのに、幼虫は気にしないようです。(ゴミを並べて遮光しない)
何か固い物体に幼虫の体が触れていれば安心なのかな?
やはり繭の強度を高めるためにゴミを混ぜて織り込んでいるのだと思います。
固い繭を作らないと穀物倉庫で押し潰されてしまう危険があるのかもしれません。

私がこれまで色々な種類の幼虫を飼育して繭作りを観察してきた中で、これほど時間のかかる(遅い)営繭行動を見たことがありません。
ゴミ集めに手間取ってるだけで、営繭を始めたら早いのかな?

薄い繭の形状が少しずつ明らかになってきました。
幼虫は後退運動も可能で、細長い繭の中で方向転換することも出来ます。
繭の右側の出口はいつの間に塞いだのか、左にしか遠出しなくなりました。

繭の入り口から別個体の幼虫が侵入して来ることがありました。
繭の主が追い払うと、慌てて後退り退散しました。

やがて、重要な巣材となっていた成虫の死骸を別個体の幼虫に横取りされてしまいました。
手が届かない所に持ち去られてしまったようです。
繭を紡ぐ幼虫間で巣材資源を巡る激しい争奪戦があるようです。
営繭中の幼虫は一度繭の外に出て成虫の死骸が手元に無くなったことを確認すると、それ以降は繭に引き篭もり、外でゴミ集めをしなくなりました。
飼育下で適当な巣材(ゴミ)を与えたら、蓑虫の着せ替え実験のようなモザイク状の芸術作品をノシメマダラメイガの繭として創らせることが可能かもしれません。

休憩の合間に繭入り口の押し麦を齧っているように見えます。
絹糸を合成するための栄養補給なのか、それとも澱粉のゴミを自ら作っているのでしょうか?

つづく→#16:自ら排泄した糞も繭に織り込むノシメマダラメイガ(蛾)幼虫



2015/07/27

分散移動を始めたノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫




ノシメマダラメイガの飼育記録#13

▼前回の記事 
チョコの食べ過ぎで桃色になったノシメマダラメイガ(蛾)幼虫

2015年6月中旬

ノシメマダラメイガPlodia interpunctella)の幼虫が育って終齢に達したのか、飼育容器の壁を登る個体が次々と現れました。
容器の垂直壁面(高さ8cm)の上端までやすやすと達し、蓋を開けたままでは脱出してしまいます。
容器の縁から上半身を大きく乗り出しているときに口から吐糸しているのが見えました。
少し滑落しかけましたが、命綱のおかげで無事でした。
プラスチック容器の蓋の裏に張り付いて徘徊している個体もいます。

過密や餌不足のために分散するのか?と初めは心配でした。
しかし、ノシメマダラメイガ用フェロモントラップの商品説明に次の一文を見つけました。

蛹になる前の終令幼虫は広範囲に分散する習性があり幼虫は穿孔能力が強く、食品包材を穿孔し、内部に侵入します。
それなら分散移動中の終齢幼虫を隔離すれば蛹化してくれるのか?と思い、実際に1匹隔離してみたのですが、なぜか上手く繭を紡いでくれませんでした。
そこで構わず密閉容器内で大量飼育を続けることにしました。

※ 映像中盤のプラスチック容器越しに接写したシーンのみ自動色調補正を施しています。

つづく→#14:成虫の飛翔【ハイスピード動画】




2015/07/22

桜の葉の中で繭を紡ぐマイマイガ幼虫(蛾)



2015年6月上旬

公園に植栽されたソメイヨシノ?の大木でマイマイガLymantria dispar japonica)の終齢幼虫が私の胸の辺りの高さの葉を糸で綴って軽く巻き、その中で繭を紡いでいました。
繭内に見える脱皮殻は別個体のものなのか、謎です。
マイマイガの飼育経験はあるものの、野外での営繭シーンは初見でした。

▼関連記事
マイマイガ(蛾)終齢幼虫cの繭作り【50倍速映像】
この公園でマイマイガ幼虫(=ブランコケムシ)が大量発生しており、少し上の葉には別個体の幼虫がいます。



2015/07/08

マイマイガ幼虫を寄主とする寄生蜂の羽化【微速度撮影】



2015年6月上旬・室温23→22℃
▼前回の記事
マイマイガ幼虫(蛾)に寄生したサムライコマユバチの繭塊

雑木林の下草(クヌギの幹に伸びた蔓性植物)にマイマイガLymantria dispar japonica)幼虫と寄生蜂の繭塊を見つけました。
羽化してくる寄生蜂を調べるために、採集して飼育することにしました。
同じ葉の表面と裏面に2組の寄主と繭塊が付いていたので、葉を切り離して別々に隔離しました。
以下の記録では、葉表に居た寄主と繭塊に注目します。



3日後の朝、微小の蜂が羽化していました。
6年前に飼育したときに得られた寄生蜂と似ているかもしれません。(二次寄生蜂かも?)

▼関連記事
マイマイガと二次寄生蜂

寄生蜂が繭から羽化する瞬間を動画に記録するのが一つ目の目標です。
羽化の前兆が不明なので、取り敢えず10秒間隔のインターバル撮影で監視してみることにしました。
すると1匹の寄生蜂が羽化しました。
夜22:02、白い繭の端が開き始めました。
22:03には蜂の黒い頭部が見え始め、次のコマ(10秒後)では既に羽化脱出した寄生蜂が繭から離れた位置に写っていました。
やはり羽化は一瞬なので、インターバル撮影ではなく動画で記録すべきだと分かりました。

引き続き、繭塊を10倍速の動画で夜通し監視・録画しました。
続々と寄生蜂が羽化してきました。
毛虫の下に隠れている繭からも羽化しました。

羽化の予兆は外から見て全く分かりません。

寄主(マイマイガ幼虫)は下半身で繭塊に覆い被さるような姿勢のまま静止しています。
その胸部第2〜3節辺りだけ妙な(不自然な)蠕動が認められました。
まさにその体節の背面および側面に付着している白い米粒のような物はヤドリバエの卵なのかな?
寄主の体内で寄生蜂とはまた異なる寄生者が跳梁跋扈しているようです。
予想通り、後にこの寄主からヤドリバエ終齢幼虫が1匹脱出してきました。(映像なし)
栄養不足だったようで、とても小さな蛆虫でした。(容器内で小さな囲蛹になったものの、成虫は羽化せず。)

▼つづく
マイマイガ(蛾)幼虫の二次寄生蜂(Acrolyta sp.)


2015/07/07

マイマイガ幼虫(蛾)に寄生したサムライコマユバチの繭塊



2015年6月上旬

平地の雑木林でクヌギの幹にマイマイガLymantria dispar japonica)の幼虫が大量に止まっていました。
今年もやはり大発生したようです。
昼間はこのように樹皮に隠れて休み、夜になったら枝に移動して葉を食害するのかもしれません。(実際に夜に観察しに行ったら分かるはずです。)
それとも樹皮に静止している幼虫は、脱皮や営繭する前の眠のステージなのでしょうか?



▼関連記事(前年に同じ場所で撮影)
クヌギの木に群がるマイマイガ(蛾)老熟幼虫

害虫扱いされているマイマイガの強力な天敵として期待されるのが寄生蜂です。
クヌギ樹皮の裂け目の奥に潜む一頭のマイマイガ幼虫の体内からサムライコマユバチの一種(例えばブランコサムライコマユバチ[Protapanteles liparidis])と思われる寄生蜂の幼虫が一斉に脱出して近くに繭塊を紡いだようです。
小さな白い繭が10個集まっていました。
寄主の毛虫は体内を食い荒らされても未だ生きていて、虫の息ながら自発的に少し動きました。
頭部を繭塊に向けていて静止しています。
自由に徘徊したり摂食したりする運動能力は奪われているようです(単に弱っているだけ?)。
捕食寄生されたマイマイガ幼虫がこのまま死ぬまで寄生蜂の繭塊を守るように行動操作されているかどうか、昔から非常に興味があります。
寄生蜂の繭に更に寄生する二次寄生蜂がいるので、もし無防備な繭を守るボディガードとして寄主(マイマイガ幼虫)をマインドコントロールで雇うことができれば有利になります。

▼関連記事(6年前に調べた映像)
マイマイガ幼虫から脱出した寄生蜂の繭
6年ぶりにチャンスが巡ってきたので、調べてみることにしました。
草の茎の先で毛虫をつついてみました。
体に触れると威嚇する(嫌がる)ぐらいの元気は残っていました。
元気な個体なら触られると這って逃げ出すはずですが、そのような運動能力はないようです。
(おそらく体内の筋肉や運動神経が食い荒らされているのでしょう。)
幹を上下するアリが毛虫や繭塊を攻撃してくれないかと期待したのですけど、横を素通りするだけでした。
アリは力関係でマイマイガ幼虫よりも弱く、近寄りたがらないことを示す映像が後日撮れました。(映像はこちら
寄生蜂による行動操作の可能性については、残念ながら今回もはっきりした結論は得られませんでした。

実験のアイデアとして、確かめるべきことは明快です。
  • マイマイガ幼虫を寄生蜂の繭塊から少し離した時に自力で繭塊の傍に戻ってくるかどうか?
  • 寄生蜂の幼虫が脱出した後の寄主を解剖して筋肉や内臓器官の状態を調べる。
  • 寄生蜂の繭塊から寄主のマイマイガ幼虫を除去した場合と残した場合とで、二次寄生を受ける割合がどう変化するか?(素人が想像するに、二次寄生蜂の分布が一様とは限らないので、フィールドではかなり多数のデータを取って統計処理しないといけない気がします。)
  • それならむしろ飼育下で直接的に実験した方が楽かもしれません。(二次寄生蜂♀をどうやって手に入れるか?)



実はこのクヌギの木の下草で、同じく寄生蜂の繭塊に随伴するマイマイガ幼虫を3頭見つけました。
羽化してくる寄生蜂を調べるために、採集して飼育することにしました。
クヌギの樹皮からは採集しにくかったので、映像の個体は見送りました。

つづく→寄生蜂の羽化(微速度撮影)


【追記】
動物行動の映像データベースに「サムライコマユバチに操作されボディーガードとして振る舞うマイマイガ幼虫」と題した動画が公開されています。その説明文を読んでもタイトルのように寄主操作を言い切ってしまって良いのか、個人的には疑問です。私と似たような簡単な実験をしてるのですが、繭塊に覆い被さっている毛虫に直接触れたら嫌がるのは当然です。近くにある寄生蜂の繭塊だけに触れた時にも毛虫が威嚇・防御するかが問題です。

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