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2016/09/27

産卵のため苔に潜るヒダリマキマイマイ【60倍速映像】



2016年6月下旬

飼育中のヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)3匹は何度も交尾を繰り返したので、そろそろ産卵する頃でしょう。


ヒダリマキマイマイを扱った本ではありませんが、『講談社カラーサイエンス6:カタツムリ』p32-35によると、

カタツムリの産卵
 カタツムリは、交尾を終えてから8日間くらいたつと、土にあなをほって産卵をします。
 土のなかは、温度やしめりけがあまりかわらないので、卵が育つには、とてもよい場所なのです。あなのふかさは2センチメートルくらいです。腹足をつかって2時間以上かかってほります。

産卵をするために、やわらかい土を探しています。

野外で適当に採取してきたコケ(種名不詳)を苺のパック容器に何層も敷き詰めて、充分に霧吹きしてやりました。
これを飼育容器に入れてやると、早速ヒダリマキマイマイは苔の中に自分から潜り込み始めました。
60倍速の早回し映像をご覧下さい。
ぐいぐいと意外に力強く潜って行きます。
ヒダリマキマイマイの殻は完全に地中に埋まりました。(苔を入れた苺パックの深さは7cm)
容器の底で方向転換したり動き回っているものの、産卵しているかどうかよく分かりません。

産卵シーンを微速度撮影で記録したかったのですけど、カメラをどのようにセッティングしたらよいのか困りました。
最大の問題として、地中に潜ったカタツムリはどうも撮影用の照明を嫌っている印象です。
(赤外線の暗視カメラなら上手く撮れたかな?)
諦めて放っておくと…。

つづく→ヒダリマキマイマイ産卵直後の卵塊




【おまけの映像】オリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開します。


2016/09/09

シリアゲコバチ♀の探索飛翔【ハイスピード動画】



2016年6月下旬

冬に使う雪囲い用の材木を保管している軒下の資材置き場で寄生蜂のシリアゲコバチ♀(Leucospis japonica)が寄主の巣を探して飛び回っていました。
飛翔シーンを240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
やがて杉の材木に止まって産卵を始めました。
産卵シーンを寄りの絵で撮ろうとしたら逃げられてしまい残念。

▼関連記事:6年前の撮影
シリアゲコバチ♀の産卵:スロー再生


2016/08/03

ヤドリバエの卵を付けたツマジロカメムシ



2016年6月上旬

山間部のガードレール脇に生えたタニウツギの灌木でツマジロカメムシMenida violacea)を見つけました。
葉上を歩き回り今にも飛び立ちそうな予感がしたので、飛翔シーンを撮ろうと粘ってみたものの、空振りに終わりました。

途中でクロオオアリ♀とニアミスしても互いに無関心でした。

背中の小楯板に目立つ白点は寄生者(ヤドリバエ類)に産み付けられた卵だと思われます。

身繕いで落としたくても足が届かない場所にあります。
ヤドリバエの幼虫が孵化して捕食寄生する様子を観察するのも面白そうですが、寄主となったカメムシ成虫を飼育法(餌は?)が分からないことには難しそうです。




2016/08/02

笹の葉裏にクロヒカゲ♀が産卵未遂?



2016年6月上旬

山間部の道端に茂る笹(種名不詳)の群落で夕方(午後16:41)にクロヒカゲ♀(Lethe diana)が飛び回っています。
葉表の縁に止まると、腹端だけを葉裏に押し付けてからすぐに飛び去りました。
これは産卵か?と思い、直後に笹の葉をめくって調べてみました。
ところが、なぜか卵が見つかりませんでした。
クロヒカゲ♀は腹端で探って食草の適否を調べただけで、結局は産卵未遂だったのでしょうか?

インターネット検索で調べたサイト(大阪市とその周辺の蝶)によると、本種は笹の葉裏に白くて丸い卵をひと粒ずつ産むらしい。


蝶が止まった笹の葉裏を調べても卵が見当たらない。
15cm定規を並べて置く




2016/07/03

ルイスアシナガオトシブミ♀bの揺籃作り【10倍速映像】



2016年5月中旬・午後15:32〜17:34
▼前回の記事
ハルニレの葉裏で交尾するルイスアシナガオトシブミ♀♂

里山に生えたハルニレの幼木で若葉を巻いて揺籃を作っているルイスアシナガオトシブミHenicolabus lewisii)♀が数匹いました。
その中の一匹♀bに注目して、微速度撮影で作業の一部始終を記録してみました。
10倍速の早回し映像をご覧ください。
ただし、映像のラスト22秒間のみ5倍速に落としました。(♀が揺籃を切り落とし始め、受け止めて揺籃と♀bを採集するまで)
この日は風が絶え間なく吹く悪条件でしたので、マクロレンズによる接写は早々に断念しました。
山の陰に日が沈み夕方になると風が止んで助かりました。
余談ですが、野外に持ち運べる風除けのための衝立があれば虫を楽に接写できるのになーといつも夢想します。
巨大なテントを立てても良いのでしょうが、被写体が暗くなったり中が暑くなったりと、色々と副作用がありそうです。
大名行列のように助手を何人も引き連れて出かけ、被写体を取り囲むように円陣を組んで長時間立たせるのも現実的ではありませんね。
閑話休題。

ルイスアシナガオトシブミ♀bが加工に適したハルニレ葉の吟味を終え、葉の根本(短い葉柄の少し上)で両裁型の加工を始めました。
残った主脈に傷をつけると葉が垂れ下がりました。
体重を利用しているのでしょう。
次に♀bは垂れ下がった葉の下方に移動しました。
いつの間にか♂が来ていて、作業中の♀の背後からマウントしていました。
交尾器が結合しているのか、それとも交尾後ガードでマウントしているだけなのか、接写しない限り分かりませんね。
♂を背負ったまま♀はハルニレ葉裏の主脈に噛み傷をつけているようです。
動きがあまり無くて退屈ですが、♀は葉が適度に萎れるのを待っているのでしょう。

しばらくすると、別のライバル♂が上から登場しました。(@3:30)
♀をめぐって♂同士が闘争を始めました。
♀はその喧騒から離れて黙々と作業と続けます。
交尾後ガードしていた♂も含めて、♂は2匹とも落下してしまいました。(喧嘩両成敗@3:48)
『オトシブミハンドブック』p26-27によると、

(ルイスアシナガオトシブミの)♀をめぐる♂同士の闘争では、向かい合って長い前脚を振り上げ合ったり、レスリングのように組み合う行動が見られる。
興味深い♂の闘争シーンを微速度撮影ではなくリアルタイムのマクロ動画でじっくり記録したかったです。
残念ながら撮影中はこの闘争シーンに気づきませんでした。
おそらく他の虫のことに気を取られていたのだと思います。

独り残された♀は垂れ下がった葉の主脈を中心に葉裏が表になるように二つ折りにします。
そして葉先から巻き上げ始めました。
この辺りで♀は産卵したはずですが、接写しないと産卵行動の詳細が分かりませんね。

再び♂が飛来して辺りを徘徊し始めました。(@4:57)
揺籃製作中の♀をランダムウォークで探し当てると♂は直ちにマウントしました。(@5:15)
先程争っていた♂の一方が戻って来たのでしょうか。
♂を背負ったまま♀bは葉の巻き上げ作業を続けます。

オトシブミ♀が揺籃を巻く向きを考えて撮影アングルを決めないと、♀が作業する裏側ばかり撮ることになります。
画面に写っているのは、交尾後ガードで♀に付き添いウロウロと徘徊する♂ばかりかもしれません。
しかしフィールドの現場では他の茂みがあったり斜面だったりと諸事情により、三脚を立てて撮影できるアングルに制限があるので仕方がありません。

明らかに産卵が済んだ揺籃作りの後半になっても♂がしつこく交尾後ガードを続けている点が不思議に思いました。
素人目には♂はただ♀の作業を邪魔しているだけのように見えますし(お邪魔虫)、♂の立場で合理的に考えれば次の交尾相手の♀を探しに出かけた方が良さそうな気がします。
ライバル♂から♀を守るだけでなく、労働寄生種のオトシブミ♀に托卵されないように献身的に警護する意味もあるのでしょうか?
葉の巻き上げが完了するとようやく♂が交尾後ガードを止めて♀から離れました。
マウントを解除しても♂はしばらく揺籃上をウロウロ徘徊しています。

完成した揺籃を切り落とす最後の工程を微速度撮影と同時並行で別アングルでも撮影しました。
真下に受け皿を置いて、完成した揺籃を採集します。
揺籃がポトリと落ちる肝心の瞬間がピンぼけになってしまいました。

カメラのバッテリー交換に手間取ったせいです。
『オトシブミハンドブック』p26-27によれば、ルイスアシナガオトシブミの♀は完成した揺籃を切り落とす場合と切り落とさない場合があるらしい。
実際にこのハルニレ幼木で探すと、切り落とされず枝に残ったままの揺籃も見つけました。


3日後の揺籃

採集した揺籃をそのまま容器に入れて室内飼育しているのですけど、この記事を執筆中の現在(7月上旬)も未だに成虫が羽化してきません。
揺籃が乾燥し過ぎないように注意したつもりですが、もっと水気を与えるべきだったかもしれません。
カビの発生が怖くて霧吹きなどはしませんでした。
揺籃を切って中を調べてみるべきか、もう少し静観すべきか、悩みます…。

以下は、採集したルイスアシナガオトシブミ♀bの標本写真です。(掲載予定)


2016/06/06

ヨシの葉に残るオツネントンボの産卵痕



2016年5月上旬


▼前回の記事
♂が離れた後も単独で産卵するオツネントンボ♀

オツネントンボ♀(Sympecma paedisca)の産卵地点となった湿地帯を4日後に再訪してみると、水溜りの水が少し干上がりかけていました。

産卵したヨシの生えた手前の岸辺から水溜りが干上がってる。

2日前に産卵したヨシの葉を探してマクロレンズで接写してみると、粒状の点列が並んでいました。
葉縁に朝露の水滴が光っています。

ミミズ腫れのような刺青のような産卵痕が並んでいます。
強拡大しても残念ながら倍率不足で卵の中はよく見えませんでした。
胚の頭の向きは♀の産卵姿勢に対してどちら向きなのか知りたかったのですけど、やはり本格的な顕微鏡が必要になりそうです。
もしかすると、葉裏から観察した方が見え易いのでしょうか?

孵化のシーンを観察したいので、葉ごと採集して持ち帰り飼育すべきかどうか悩みます。
現場に残しても、このまま雨が降らなければ水溜りが完全に干上がってしまい、孵化したヤゴは生き残れないでしょう。
未経験の私が採取したら植物体を枯らしてしまいそうですが、中の卵も死んでしまうのではないか?という不安があります。
「近畿地方のトンボ雑記」サイトでオツネントンボの孵化を観察した記録を見つけました。
それによると、

最短卵期は11日,平均卵期(半数孵化)は13日でした.


つづく→





2016/05/30

♂が離れた後も単独で産卵するオツネントンボ♀



2016年5月上旬
▼前回の記事
尾繋がりのオツネントンボ♀♂がヨシの葉に産卵開始

オツネントンボ♀(Sympecma paedisca)が産卵中でも♂ががっちり束縛するのは、ライバル♂に寝取られないようにガード(産卵警護)して確実に自分の精子で受精した卵を産んでもらおうという企みなのでしょう。
ところが私が少し目を離した隙に、♂が尾繋がりを解除して飛び立ち、近くの柳の低灌木の方へ飛び去りました。
てっきり♂は尾繋がりで産卵を最後まで見届けると思い込んでいたので、交尾後ガード解除の瞬間を撮り損ねてしまいました。残念無念…。
尾繋がりの状態で♂は後ろで行われている産卵の進展状況を見れないはずです(トンボの複眼の広い視野では真後ろも見えるのか?!)。
産卵を始めてある程度の時間が経過すると♂の交尾後ガードする衝動が減退消失するのでしょう。

交尾後ガードなどと難しい概念を持ち出さなくても♂の離脱を説明できそうです。
♀がヨシの葉の根元から上に登りつつ産卵するので、行き場所が無くなった♂が葉先から追い出されたというか、♀に場所を譲ったのかもしれません。(尾繋がりのまま♂だけ葉裏に回りこむのは無理なのか?)

それとも、空腹になった♂がどうしても我慢できず目の前に飛来した獲物を狩るために♀を残して飛び立った可能性もありますかね?

♂を見失ったものの、しばらくすると近くに生えたススキ枯れ茎に止まっているのを発見。
この状態でも近くで産卵している♀を警護しているという意図はあるのでしょうか?
別個体の♂が縄張りに侵入してきた時の♂の反応を見たかったのですが、そのような展開にはなりませんでした。
今の♀を警護しつつ、あわよくば次の♀が飛来したら交尾したいのかもしれません。

一方、取り残された♀は単独で産卵を続けます。
予備知識がなければ、この静止姿勢の単独♀を見つけても産卵行動とは思わないかもしれません。
♂の付き添いがあっても無くても♀の産卵の様子は特に変わりません。
腹端を葉身から離してしばらく休息してから、また産卵を再開しました。

産卵の完了を待たずに私の方が飽きてしまい、撮影終了。
三脚が無いと長時間の撮影は肉体的に疲れてしまい集中力も限界があります。
産卵地点を定規で測ると地面からの高さ約18cmでした。

wikipediaによると、オツネントンボの

卵の期間は1-2週間ほどで、年に1回の産卵を行う[3]。ヤゴ(幼虫)の期間は1.5-3か月[3]。7-9月にヤゴが羽化して成虫となり、未熟のまま越冬し翌年交尾して、植物の組織内に卵を産み付ける[5][1]。

卵から孵化するまで定点観察してみます。
ヨシの葉が大きく育つにつれて産卵痕の形状も少し変化するかもしれません。

つづく→ヨシの葉に残るオツネントンボの産卵痕

左に見える上に伸びた葉にも産卵痕
オツネントンボ♀@単独産卵@ヨシ葉

オツネントンボ♂@尾繋がり解除直後+ススキ枯れ茎




【おまけの動画】
単独産卵シーンの一部(@2:06〜)を6倍速の早回し映像に加工してみました。
ブログ限定で公開します。
三脚を使っていないので、手ブレはご容赦ください。


2016/05/28

尾繋がりのオツネントンボ♀♂がヨシの葉に産卵開始



2016年5月上旬

▼前回の記事
ヨシの葉に産卵するオツネントンボ♀【接写】

ここで前回から時間を少し遡ります。
夕方に湿地帯の遊歩道を私が歩いていたら、尾繋がりしたオツネントンボSympecma paedisca)の♀♂ペアが驚いて飛び立ち、水溜りの近くに生えたヨシの枯れ茎に止まり直しました。
これからハート型の交尾体勢に入るのかと期待して撮り始めたら、産卵を始めたのでした。

カメラを警戒したのか、茎の反対側に回り込んで隠れました。
こちらもそっと回り込んで隠し撮りします。
♀は水平に伸ばしていた腹部を曲げて腹端で枯れ茎に触れました。
枯れ茎は見るからに固そうで産卵基質として適しているとは思えません。
やがて♀は身繕いを始めました。
後脚で棘状の産卵管を左右から挟み込んで、しごくように掃除しています。

再びタンデムで枯れ茎から飛び立ち、下に生えたばかりのヨシの若葉に止まり直しました。
♀は直ちに産卵姿勢になりました。
♀が歩いて下に降りようとすると、♂も追従します。
またタンデムで飛び立つも、同じ葉に止まり直し、産卵します。
翅の縁紋は♂が濃くて♀が薄いですね。(オツネントンボは常にそうなのかな?)
どうも♀はここが気に入らなかったようで、タンデムで飛び立つと見失ってしまいました。

慌てて追いかけると、水溜りの端っこでなんとか♀♂ペアを見つけることができました。
産卵場所の選定(飛行)は♂が主導権を握っているのかな?
気に入らなければ♀が一瞬先に飛び立つのでしょうか?
それとも♀の不満を感じた♂が阿吽の呼吸で先導するのでしょうか?(♀をグイグイ引っ張っていく亭主関白タイプ?)
タンデム飛行(尾繋がり)の飛び立ちをハイスピード動画で撮れば分かるかもしれません。

ようやく安住の地を見つけ、とあるヨシの葉表で落ち着いて産卵を始めました。(@1:45〜)
オツネントンボの産卵を観察するのは初めてなので、この後はひたすら望遠マクロで長撮りしました。
途中で撮影アングルを何度か変えています。
合間にマクロレンズで接写した産卵映像は前回紹介しました。
背後の湿地帯ではオオヨシキリの鳴き声♪が響き渡ります。
本当は産卵シーンを微速度撮影したかったのですけど、あいにく三脚を持参していませんでした。
葉身に卵を並べていく順番を早回し映像で記録したかったです。

撮影中はトンボに夢中で気づかなかったのですが、後で写真を見直すと、同じヨシの茎についた別の若葉にも似たような(刺青のようなミミズ腫れのような)産卵痕が見えます。
やはり人気のスポットには集中するようです。

♀が産卵中でも♂ががっちり束縛するのは、ライバル♂に寝取られないようにガード(警護)して確実に自分の精子で受精した卵を産んでもらおうという企みなのでしょう。
♂による交尾後ガードはいつまで続くのか?

つづく→♂が離れた後も単独で産卵するオツネントンボ♀






【おまけの動画】
産卵シーンの一部を6倍速の早回し映像に加工してみました(@8:42〜)。
ブログ限定で公開します。
三脚を使っていないので、手ブレはご容赦ください。


2016/05/27

ヨシの葉に産卵するオツネントンボ♀【接写】



2016年5月上旬

尾繋がりしたオツネントンボSympecma paedisca)の♀♂ペアが産卵していました。
場所は、湿地帯の水溜りの岸に生えかけたヨシ(=葦、アシ)の群落です。
そっと近寄りマクロレンズで接写してみると、翅の縁紋がずれていることを確認できたので、ホソミオツネントンボではなくオツネントンボです。

ヨシ若葉の表面に止まった♀の腹端には、焦げ茶色でやや湾曲した棘状の突起があります。
その産卵管をヨシの縦に走る葉脈に沿って葉身の薄い植物組織内に器用に差し込んで、卵を一粒ずつ産み付けています。
産卵管を引き抜くと真横にずれて挿し直すため、産卵痕はほぼ等間隔で横一列に並びます。
葉縁に達すると♀はヨシの葉を少し前進してからまた横へ産み進めます。
その結果、独特のパターンで刺青のような産卵痕が並ぶことになります。
もっと細かく観察すると、♀は腹部を屈曲させΩの体勢で産卵を始めます。
♀は少しずつ腹部を後ろに伸ばしていくため、産卵痕の列は後ろへ後ろへ並びます。
腹部が伸び切ったり腹端が障害物(ヨシの茎)に突き当たったりすると、♀はヨシの葉を少し前進してから改めて産卵を再開します。

♂は産卵する♀の首根っこを掴んだままおとなしく待っています。
尾繋がりの♀♂ペアが左右の足でヨシの葉を抱え込むことで葉身を軽く丸め(凸状に湾曲)、産卵しやすくしているのかもしれません。
一心不乱に産卵する♀の前脚の先が左右ともに欠損している事に気づきました。
本種は「越年蜻蛉」の名前が示すように成虫で越冬することで有名ですから、凍傷で壊死したのかな?

帰ってから手持ちのトンボ関連本や図鑑を調べても、オツネントンボの産卵行動に関する記述は見つかりませんでした。
こんな時期に産卵するということも、植物組織内に産むことも知りませんでした。
ヨシの葉が大きく育つと産卵痕はどのような形状になるのでしょう?
ところで、孵化した幼虫(ヤゴ)はヨシの茎を歩いて降りて下の水溜りに自力で入水するのでしょうか?
ヤゴは鰓呼吸のはずですが、陸上ではどうするのでしょう?
それともヨシの葉裏から孵化してすぐ水溜りに落下するのかな?

つづく→尾繋がりのオツネントンボ♀♂が産卵開始


オツネントンボ♂側面@尾繋がり+産卵中
オツネントンボ♂縁紋@尾繋がり+産卵中
オツネントンボ♀側面@尾繋がり+産卵中。
焦げ茶色の部分に白い毛が生えています。
オツネントンボ♀産卵管@尾繋がり+産卵中@ヨシ葉

2016/05/09

ナガコガネグモ(蜘蛛)の卵嚢



2015年11月上旬

最上川に注ぐ小さな水門の隅にナガコガネグモArgiope bruennichi)の卵嚢を見つけました。
卵嚢の上端が開いているのは正常なのかな?(出嚢後の古い卵嚢である可能性は?)
採寸代わりに右手の人差し指を並べて映し込みます。
卵嚢を周囲に固定する糸には粘着性がありませんでした。

越冬後に採集して飼育下で幼体の出嚢を観察するつもりでしたが、春になったら卵嚢は無くなっていました。
卵は卵嚢内で秋のうちに孵化し、そのまま越冬して、翌春に一回目の脱皮をした後に分散する[4]。(wikipediaより)
一度雪に埋もれて溶けた際に卵嚢も一緒に落ちてしまったのか、あるいは鳥が捕食したのでしょうか?


2016/01/26

寄生蜂コクロオナガトガリヒメバチ♀の産卵および寄主ヒメクモバチとの攻防



2015年10月上旬

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#7


ヒメクモバチ♀b(旧名ヒメベッコウ;おそらくAuplopus carbonarius)が作った泥巣bに招かざる客の到来です。
真っ直ぐに伸びた長い産卵管を有する黒いヒメバチの一種♀が境界標を思わせぶりに徘徊しています。
産卵するチャンスを虎視眈々と窺っている寄生蜂だとしたら、7年前の記憶が鮮明に蘇りました。

▼関連記事(2008年9月下旬撮影)
コクロオナガトガリヒメバチ@ヒメベッコウ泥巣
そのときヒメクモバチ(Auplopus carbonarius)に寄生する蜂として名前を教えてもらったコクロオナガトガリヒメバチ♀(Picardiella tarsalis)の写真(@「日本産ヒメバチ目録」サイト)にそっくりです。

たまたまホスト(寄主)が油断して泥巣を留守にした隙に、寄生蜂が泥巣の下部を触角で探りながら丹念に調べていました。
初めは境界標の側面でマイマイガ幼虫の死骸を調べていたのですが、寄主は鱗翅目ではなく本命はヒメクモバチの泥巣にありました。



「山形県」の刻印(窪み)を利用して泥を詰め込んで作った巣の中で、「形」の字の第6画後半に強い興味を示しています。
ここにヒメクモバチの育房があるようです。

(育房内には母蜂が狩ってきたクモが貯食され、麻酔されたクモの表面に卵が産み付けられているはずです。もしかするとヒメクモバチの幼虫が既に孵化していてクモを食べているところかもしれません。)
寄生蜂♀は腹端を前方に曲げ、産卵管を前に向けると産卵姿勢になりました。
厚く泥塗りされ乾いた巣にこんな華奢な蜂が細い産卵管で突き刺し産卵するとは驚きです。
産卵シーンを背面ではなくできれば側面から撮りたいのですが、私が下手に動くと気配を感じて寄生蜂が逃げてしまいそうで我慢しました。
まさに産卵中に母蜂が空荷で帰宅しました。(@2:20)
境界標の下から登ってきたヒメクモバチ♀bは寄生蜂を見つけても特に激しい攻撃は加えないのが意外でした。
ヒメクモバチ♀が近寄ると寄生蜂が慌てて逃げました。
母蜂は泥巣全体を心配そうに見回ります。
一方、追い払われた寄生蜂は境界標の泥巣がある面の角を曲がった側面に止まっています。
ホスト♀が横を通ると寄生蜂は飛んで逃げるものの、またすぐに舞い戻って来て境界標の天辺の角に静止しました。

マクロレンズを装着して寄生蜂を接写してみました。
しっかり背面を接写するのはアングルが確保できず無理でした。
触角の中央部、腹端、および後脚の先が白色で、残りは全身黒色の蜂です。
泥巣をガードしているホストの顔も接写すると、触角の根本が白く見えました。
寄生蜂の居る上を向いたまま油断なくじっとしています。
(※ マクロレンズで接写したパートのみ動画編集時に自動色調補正を施してあります。)


ほとぼりが冷めると、寄生蜂は境界標の側面から慎重に泥巣へ忍び寄りました。
泥巣上のヒメクモバチ♀bは後ろを向いていて、恐るべき天敵の存在に気づいていません。


「志村〜、後ろ、後ろ〜!!」
ヒメクモバチ♀はなんとなく警戒しているのですが、なぜか寄生蜂とは逆方向へ泥巣を離れてしまいました。
その間に寄生蜂が泥巣の下部に到達し、触角で探っています。
ようやく異変に気づいたヒメクモバチ♀が駆け寄ると、寄生蜂は慌てて飛んで逃げました。
産卵未遂と思われます。
ヒメクモバチ♀は泥巣上で油断なく警戒を続けています。

逃げたと思った寄生蜂はちゃっかり境界標の天辺に居ました。
触角を拭い身繕いしています。
産卵のチャンスを虎視眈々と待っている印象。
急に飛び立つと、境界標の横に生えた灌木(常緑樹)の葉に止まりました。
しばらく休んだり身繕いしてから飛んで境界標へ戻りました。
その間、寄主のヒメクモバチ♀bが警戒して泥巣をガードしています。

7年越しに寄生産卵の決定的瞬間を撮影できて感無量でした。

寄生蜂と寄主が境界標で繰り広げる小競り合いも何度か観察しました。
ヒメクモバチがいくら寄生蜂を追い払っても、しばらくするとまた戻って来ます。
個体識別のマーキングを施していませんが、おそらく同一個体のコクロオナガトガリヒメバチ♀なのでしょう。
ヒメクモバチ♀は天敵の寄生蜂を撃退する有効な対抗手段や防衛戦略を持ち合わせていないようです。
寄生蜂は素早く飛んで逃げてしまうため、殺すこともできません。
もしこの泥巣を採集して蜂の子を飼育すると、果たしてヒメバチが羽化してくるでしょうか?(ヒメクモバチの寄生率を調べる)

母蜂(ヒメクモバチ♀b)がこの日は全く造巣活動せずに泥巣をひたすらガードしていたのは寄生蜂対策だったようです。
息詰まるような神経戦が続き、天敵が心配でおちおち外出できないのでしょう。
もし仮に寄生蜂を採集・除去したらヒメクモバチ♀bは安心して造巣を再開してくれるかな?
それとも別個体の寄生蜂が侵入して来るだけでしょうか?
逆に、泥巣をガードする寄主のヒメクモバチ♀bを除去すれば寄生蜂が産卵する様子をじっくり観察できるかもしれません。
(除去実験は頭をよぎっただけで、今回は自然の成り行きに任せ見守りました。)

つづく→#8:ヒメクモバチは夜どこで寝るのか?【暗視映像】




2016/01/15

イヌタデに産卵するベニシジミ♀



2015年10月上旬

道端にアカマンマ(イヌタデの俗称)の花が咲いています。
イヌタデの群落でベニシジミLycaena phlaeas daimio)を見つけました。
ベニシジミの幼虫はタデ科を食草とするのを思い出しました。
行動を注意深く見ていると、腹端を曲げて根際の茎に擦り付けていました。
私は外見でベニシジミの性別を見分けられないのですが、おそらく産卵中の♀でしょう。
その後は葉表に出てきてしばらく休息も兼ねて日光浴していました。
しばらくすると、再び葉裏に隠れてしまいました。
茂みの奥に潜り込むため、説得力のある決定的な産卵シーンの映像が撮れず、もどかしい思いをしました。

撮影後に卵を探してみればよかったですね。
幼虫越冬らしいので、飼育してみるのも面白そうです。


【追記】
新開孝『虫のしわざ観察ガイド—野山で見つかる食痕・産卵痕・巣』によると、ベニシジミ♀の産卵習性は私が観察した通りでした。
(ベニシジミの)♀は食草の根元に潜り込んで産卵する。(p28より引用)







2015/11/02

トリノフンダマシ(蜘蛛)卵嚢と隠れ家の♀



2015年8月下旬

トリノフンダマシ♀の定点観察#1


農地の用水路脇に生えたヤマグワの灌木でトリノフンダマシCyrtarachne bufo)の卵嚢を早朝の散歩中に見つけました。
球形の卵嚢が2個吊り下げられた近くを探してみると、予想通り桑の葉裏を隠れ家として♀が潜んでいました。
卵を食べる天敵が来たら♀はガードするのでしょうか?
同心円状の水平円網を夜に張るらしいのですが、既に取り壊さています。

この日は朝から台風が接近中で、強風のため撮影できなくなりました。
定点観察に通うことにしました。
台風が去るまでトリノフンダマシが居なくなりませんように!

▼関連記事(7年前!の同時期に撮影)
トリノフンダマシ♀(蜘蛛)と卵嚢


つづく→#2:トリノフンダマシ♀(蜘蛛)の造網準備(枠糸張り?)【暗視映像】


2015/10/14

ノシメマダラメイガ♀(蛾)の産卵



2015年8月上旬

ノシメマダラメイガの飼育記録#28

▼前回の記事
ニンニク上で繭を紡ぐノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫

餌としてニンニク球根を与えた飼育容器底の隅でノシメマダラメイガPlodia interpunctella)終齢幼虫がいつの間にか繭を作り直し、その中で蛹化していました。
薄い繭の表面およびその周囲に多数の卵が産み付けられていることに気づきました。
営繭の際に周囲のゴミを集めたのかと一瞬思ったのですが、卵でした。
ノシメマダラメイガの卵を初めて見ました。
卵塊ではなく白い微小の卵がバラバラに産み付けられています。


容器の下に1mm方眼紙を敷いて採寸

そこで容器内に同居させていた成虫♀の行動に注目して、産卵シーンを撮影してみました。
まずはプラスチック容器越しに接写してから、蓋を外し上から見下ろしながら直接狙いました。
♀は腹端を壁面に擦り付けながら徘徊しています。
あちこちにバラバラに産み付けているようです。
腹端の触覚で繭のような手触りだと落ち着いて産卵する印象を受けました。
産卵基質としてガーゼ等を入れてみたら良いかもしれません。

ところで、幼虫の餌として与えたつもりのニンニク球根に産卵しないのは何故でしょう?
ニンニクの強い匂いで多少は忌避効果があるのでしょうか?
それともニンニクが白っぽいので卵が見えにくいだけかな?



※ 動画編集時に全編、自動色調補正を施してあります。

害虫駆除のサイトでノシメマダラメイガのことを調べると、

・成虫は、幼虫の餌やその周辺に、200個前後の卵を点々と産む。
・夏期においては、卵期は数日、幼虫期は22~45日、蛹期は約1週間で、気温が低下すると各期間が延長される。


また、食品害虫を研究している食総研のサイトによれば、

30℃でふ化幼虫から成虫まで平均で約34日でした(同じ条件で玄米なら約24日)。 この温度での卵の期間は4日ほどですので、卵から成虫までは平均38日になります。

前日に飼育容器に投入した成虫は交尾も確認しているので、受精卵のはずです。
その後は忙しくて、卵から幼虫が孵化する様子を観察できませんでした。
そのまま放置していたら幼虫は全く育たず死んでしまいました。
やはり生のニンニクだけを餌として与えても食べることはできないようです。
いくら栄養満点とは言え、ヒトが食べても強い辛味がありますしね。

孵化直後は無理でも幼虫が少し大きくなればニンニクを食べられるようになるのでしょうか?
別の可能性として、密閉容器ではニンニクの匂いがキツすぎて幼虫が死んだのかもしれません。
蓋の通気性を良くして開放環境で飼ったら育つでしょうか?

貯蔵ニンニクからノシメマダラメイガが発生したというメキシコからの報告(PDFファイル)が飼育下で再現できなかったのも不思議です。
国産ニンニクとメキシコ産では品種や成分が異なるのでしょうか?

Perez-Mendoza, J., and M. Aguilera-Peña. "Development, reproduction, and control of the Indian meal moth, Plodia interpunctella (Hübner)(Lepidoptera: Pyralidae), in stored seed garlic in Mexico." Journal of stored products research 40.4 (2004): 409-421.

ノシメマダラメイガとニンニクを巡る謎の解明は道半ばですけど、今のところ私はノシメマダラメイガ幼虫が生のニンニク球根を食害して育つとは考えていません。
それでもノシメマダラメイガ成虫がなぜニンニク球根に誘引されるのか、不思議で仕方がありません。
ニンニクの山で見つけたノシメマダラメイガ老熟幼虫は、そこで育ったのではなさそうです。
別の貯蔵食品を餌に終齢まで育った幼虫が繭を紡ぐ場所を探して厨房を盛んに徘徊した結果、ニンニクにたまたま辿り着いたのではないかと考えています。

米びつなどに虫除けとして唐辛子やニンニクを入れておく人がいるそうです。
本当にニンニクがノシメマダラメイガに対して忌避効果があるのかどうかもはっきりした結論は得られませんでした。(個人的には懐疑的です)
チョコレートや穀類を与えて大量飼育した容器内にニンニクを追加するとノシメマダラメイガの増殖や成長を抑制できるのか(なんらかの毒性を発揮するのか)、調べることが次の課題です。


今回の産卵シーンを撮影する際に容器内のニンニクの山を不注意でゴロゴロと動かしてしまいました。
そのとき薄い繭が剥がれてしまい、中の蛹も潰れてしまったようです。

やはり本種幼虫が周囲のゴミを集めて繭に織り込むのは、薄い繭を強化するためなのでしょう。(集めるゴミが周囲に無いと脆弱な繭しか作れない


つづく→#29:羽化直後のノシメマダラメイガ(蛾)


2015/09/17

ヤブキリ♀の産卵



2015年7月下旬

草刈りされた山麓の土手でヤブキリ♀(Tettigonia orientalis)が長い真っ直ぐの産卵管を地面のあちこちに突き刺して感触を確かめていました。
腐葉土になる前の枯葉が堆積してフカフカ(スカスカ)の状態です。
ヤブキリは植物の茎に産卵するかと勝手に想像していたので、地中に産卵するとは意外でした。
餌植物の豊富な藪の中ではなく、やや日当たりの良い開けた空き地を選んでいるのも不思議です。
卵が孵化するまでの胚発生を太陽光で早めるためかもしれない、と想像しました。
しかし調べてみるとヤブキリは卵で越冬するらしい。

ようやく産卵適地を見つけると、地中に産卵管を深く差し込んでじっとしています。
産卵中に小さなアリが脚などに這い上がってきそうになると、ピクッと動いて嫌がりました。
ただし産卵管から這い登ってきそうになっても無反応でした。

周囲でときどき聞こえるシリリリリ…♪という鳴き声もヤブキリ♂のようです。


2015/06/11

クロスジギンヤンマ♀の単独産卵



2015年6月上旬

溜池の岸辺でクロスジギンヤンマ♀(Anax nigrofasciatus nigrofasciatus)が産卵していました。
私が気づかずに池の畔を歩いていたら驚いて飛び立つも、場所を変えてすぐ産卵を再開してくれました。

岸辺の水面に浮いた抽水植物の枯れた茎に止まって卵を産み付けています。
ときどき軽く飛び上がり、産卵場所を変えていました。
産卵法に関する図鑑の記述がことごとく的中していて、感嘆しました。

夕方、単独で産卵する。浮遊植物などの水面に近い部分の組織内に産卵。
『ヤマケイポケットガイド18:水辺の昆虫』p97より


♂と尾繋がりしないで♀が単独産卵する種類のトンボがいるという知識はあったものの、実際に見るのはこれが初めてでした。(追記:そんなことはなかった)
辺りを見回しても、産卵中の♀を警護する♂は居ませんでした。

途中からは取り出した三脚にカメラを固定し、じっくり撮らせてもらう余裕がありました。(映像では順番を逆にしてあります。)
この溜池は今年水量が激減し、水質が悪化したので心配です。
同じ場所で以前ギンヤンマ♂♀の連結産卵を観察していますが、クロスジギンヤンマは初見です。





2015/05/29

古池やモリアオガエル飛び込む水の音♪【暗視動画】



2015年5月中旬

▼前回の記事
夜に産卵するモリアオガエルの群れ【暗視動画】

沼の岸辺から水面に張り出しているマユミの枝先にモリアオガエルRhacophorus arboreus)が作っている泡巣aに注目しました。

長靴を履いて岸から夜の沼にゆっくり入水し、卵塊に近づきました。
うっかり枝に触れて揺らしてしまうと、せっかく集まったカエル達が驚いて水に飛び込んでしまいます。
真暗闇でビデオカメラの液晶画面だけを見つめていると、ときどき吸い込まれるようにバランスを崩して水に落ちそうになります。

泡巣の上の枝になぜかのんびり静止して喉をヒクヒクさせている個体が居ます。
泡風呂で混浴している仲間への合流・参加をどうして急がないのか、性別の見分け方を知りたいところです。
その一方で、なぜか泡巣を抜けだして上の枝葉に登り始める個体も居ます。(性別は?)

途中で暗視モードから通常モードに切り替えてみました。
白色LEDの光で間近から急に照らされても、お取り込み中のモリアオガエル達はさほど気にする素振りはありませんでした。

後半、泡巣手前の表面で激しく暴れている個体が気になりました。(@3:35-)
撹拌行動にしては脚が空を切っているなー、と思いつつ見ていると、そのまま自発的に下の水面にポチャンと落下しました。(@3:50)
泡巣の成分として卵と精子だけでなく、放出した尿や粘液を撹拌して作るそうです。
脱水症状になった個体が水入り休憩するのでしょうか?(※追記参照)
それとも産卵を終えた♀から離脱するのでしょうか?

泥濘ぬかるみに長靴を取られ、撮影中の体勢を保つのに苦労しました。
なんとか必死で頑張ったものの、思うように撮影アングルを確保できず不満が残りました。
退屈な休息シーンはカットし、鳴きながら泡巣を足で撹拌する様子だけを撮りました。




この日の夜間撮影にはあまり満足できず、その後も夜な夜な通いました。
なるべくカエルを刺激せずに自然な行動を撮ることにこだわり、増水した沼の中から岸辺の枝を撮る工夫をあれこれ考えました。
ここは泥沼ですから、長靴を履いただけでは入水するとズブズブと沈み、安心して池の中を渡れません。
予算が潤沢にあれば、ゴムボートを持ち込んで池に浮かべたり、防水ウェイダーを買ったりすれば解決するでしょう。
なんとかお金をかけずに済む方法を絞り出します。

まず考えたのは、倒木などを沈めて池の中も歩けるように足場を作ることです。
しかし気になるのは、「モリアオガエルが産卵地点を選定する際に、下に水面(の反射)が見える枝を選ぶ」という話です。
下手に土木工事(というと大袈裟ですけど)をした結果、沼が浅くなってモリアオガエルが卵を産んでくれなくなるのでは本末転倒で意味がありません。
山形県のレッドデータでモリアオガエルは準絶滅危惧種(NT)に指定されているため、生息地を勝手に改変するのは論外です。
撮影後には沼に沈めた足場を引き上げて原状回復する必要があります。

第二案は忍法「水蜘蛛の術」にヒントを得ました。

季節外れですが、冬山で使うスノーシュー(西洋かんじき)を長靴に装着してみました。
これが思いの外うまく行き、岸に近いところなら泥にあまり潜らず池の中を自由に歩き回ることができるようになりました。

足先を見ると、渉禽類は長い趾をもっている。フラミンゴなどは、水かきも発達している。こうした長い趾や水かきがあると、体重が分散されるんで、湿地などのぬかるみでも沈まずにあるくことができる。天然のかんじきを履いているようなものである。(藤田祐樹『ハトはなぜ首を振って歩くのか(岩波科学ライブラリー)』p27-28より引用)


歩いて水底の泥をかき混ぜると、ドブのような匂い(メタンガス?)がしました。
長靴だけを履いて入水したときと比べて、撮影中にバランスを崩して池に転倒する心配も減りました。
これで撮影ポイントに頭を悩ませることはなくなりました。
赤外線投光機を使えば、対岸からでも暗視動画を撮影ができることも確かめました。

こうして私が撮影準備に悪戦苦闘している一方で、結局モリアオガエルの産卵行動を見れたのは初日だけでした。
モリアオガエルの繁殖期はあっさり終わってしまったようです。
しかも沼の水が少し引いて島が現れ、せっかく重いスノーシューや三脚を担いで登った苦労が無駄になりました。
自然を相手にすると一筋縄ではいきませんが、これも来年以降のロケハンだと思うことにします。

つづく



※【追記】
平凡社『日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類』でモリアオガエルについて調べてみると(p46)、
やってきた♀はいったん水中に入り、総排出腔から水を吸い込みそれを膀胱にためる。この水は産卵の際に卵塊をメレンゲ状に泡立てるために使われる。


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