2014/05/30

エゾタンポポとセイヨウタンポポの花蜜を吸うウスバアゲハ♀



2014年5月中旬

河川敷でウスバアゲハ♀(旧名ウスバシロチョウ、Parnassius citrinarius)がタンポポを訪花していました。
個人的に、この組み合わせは初見かもしれません。
腹端に交尾嚢を付けているので、交尾済みの♀ですね。
貪るように花蜜を吸っています。
途中で飛んで隣の花へ移動しました。(エゾタンポポ→セイヨウタンポポ)

捕虫網を持参してなかったのですが、手掴みで難なく捕獲出来ました。
警戒心が無さ過ぎです。
交尾嚢をじっくり撮らせてもらった後は、別のタンポポの花にそっと乗せてやると何事もなかったように吸蜜を再開。


ウスバアゲハ@エゾタンポポ訪花

後でタンポポの総苞を調べると、最初の花は日本固有種のエゾタンポポで2番目の花は外来種のセイヨウタンポポと判明。


エゾタンポポ花
エゾタンポポ総苞(ピンぼけ…)
セイヨウタンポポ総苞

【追記】
保谷彰彦『わたしのタンポポ研究』を読んで、タンポポの雑種の問題について勉強になりました。
クローンで増えることが可能な外来種のセイヨウタンポポが日本全国を席巻しているとばかり思っていたのですが、DNAレベルで精査すると、むしろ現状は在来種との雑種の方が多くなっているらしい。
長い口吻で蜜を吸うチョウは一般に虫媒花の送粉者としてはあまり役に立たない(盗蜜ばかり)のですが、今回の映像はタンポポの雑種を生み出す実例と言えるかもしれません。
しかしエゾタンポポ→セイヨウタンポポの順に訪花したので、花粉が異種間で移動して仮に受粉しても雑種はできないようです。
 日本タンポポばかりの集団の近くに、セイヨウタンポポが生えている様子を想像してみましょう。ハナバチやハナアブの仲間がセイヨウタンポポと日本タンポポの区別なく、蜜を吸うために、花から花へと移っていくでしょう。すると、セイヨウタンポポの花粉が、日本タンポポのめしべに運ばれるということは十分に考えられるのです。(p127より引用)日本タンポポの花粉が、セイヨウタンポポのめしべにくっついても、雑種はできません。p128より引用)



2014/05/29

ヒヨドリ(野鳥)春のさえずり?♪を声紋解析してみる



2014年4月下旬

満開に咲いた桜の近くでヒヨドリHypsipetes amaurotis)が吸蜜の合間に頻りに鳴いています。
お馴染みのけたたましい警戒声の合間に普段は聞かない独特の鳴き方をしています。
これは繁殖期の囀り(縄張り宣言?)なのでしょうか?
シーン1は至近距離の枯木の枝で、シーン2は引き続き少し離れたケヤキの樹上に移動して繰り返し鳴いています。
独特の節を付け、途中で濁ったような声が交じります。
同一個体と思われる(この辺りを縄張りとする)ヒヨドリが日が経つにつれて、このガラガラ声がますます掠れてくる気がしました。
繁殖期のヒヨドリは声帯を潰すまで囀り続けるのですかね?
毎日鳴き声を録音して声変わりを声紋解析したかったのですが、忙しくなって計画倒れになりました。
そもそもヒヨドリを個体識別できず、性別を見分けらないのが問題です。




ヒヨドリのさえずり?を声紋解析してみる

いつものようにオリジナルのMTS動画ファイルから音声をWAVファイルにデコードしてから鳴いている部分を適当に切り出し、スペクトログラムを描いてみました。
私は絶対音感も無ければ鳴き声の聞きなしも苦手なので、声紋解析で視覚的に調べるしかありません。
さえずり?らしき鳴き声は毎回似たような声紋が繰り返されています。

去年もほぼ同時期に同じ調査をやっているのですが、今年は音質改善を狙って外付けマイクを使用しました。
新たな問題として、隠し撮りするブラインドの布とマイクの風防が擦れて耳障りなごわごわしたノイズが混入することがあります。
去年の映像と聴き比べると、同じ鳴き方でも微妙な個性があるようです。
(年をまたいで同一個体である可能性もあります。)
▼関連記事▼
ヒヨドリ(野鳥)の囀りと警戒声♪を声紋解析してみる



さえずり@枯れ枝
警戒声@枯れ枝

さえずり@ケヤキ
さえずり@ケヤキ
さえずり@ケヤキ
さえずり@ケヤキ
さえずり@ケヤキ
さえずり@ケヤキ
さえずり@ケヤキ
さえずり@ケヤキ
さえずり@ケヤキ
さえずり@ケヤキ
さえずり@ケヤキ
さえずり@ケヤキ

足蹴りで喧嘩するヤマトゴキブリ♂♀



2014年5月中旬・室温21℃

ヤマトゴキブリPeriplaneta japonica)成虫♀♂ペアを飼っていると、喧嘩が勃発しました。
長翅の♂は羽化後8日目、短翅の♀は羽化後6日目。

攻撃法は体をやや横向きにして、後脚で横に相手を蹴飛ばします。

ゴキブリの飼育観察を始めて一番興奮しました!
朽木の上に置いた餌のパンを巡る争いでは♀が勝利を収めました(占有行動)。
パンを食べている♀が近づく♂を蹴飛ばしました。
怒った♀がすごい剣幕で♂に駆け寄って追い回すことがあります。
どうやらカカア天下のようです。
ところで♂がパンを食べる様子を見たことがありません。
自分で食べないのになぜパン(食料)の取り合いになるのか謎です。
(ゴキブリは夜行性なので、私が見ていない暗闇では臆病な♂もパンを食べているのかもしれません。)

全体の印象として、♂がちょっかいを出すも、♀は色気より食い気(花より団子)なようです。
隠れ家(朽木の割れ目や窪み)をめぐる争いも目撃しました。(映像なし)
ゴキブリには集合フェロモンを介して集団を作る集合性が有名です。
しかし、成虫同士が近づきすぎると互いに牽制したり喧嘩になるようです。
赤外線を使った暗視カメラがあれば、夜行性ゴキブリの自然な行動をもっと監視・記録できるのになー。



この間、♂が♀に求愛しないのがとても不思議でした。
本で調べてみると羽化しても♀の性成熟に時間がかかり、性フェロモンを未だ分泌していないのでしょう。
本種の♀はなんと単為生殖できるらしいので、交尾しなくても困らないそうです。

『日本動物大百科8昆虫I』によると

ゴキブリ科の♀は成虫になって(およそ10日)から性フェロモンを生産するようになるが、それを♂成虫が受容して配偶行動が始まる。p92
・ゴキブリ目の配偶行動の特徴は、成熟した♂が成熟♀を認知したときに翅上げ行動をとることである。(中略)ヤマトゴキブリなどの♂は♀の発散するにおいフェロモン(セスキテルペン)をまず触角で感知している。翅上げ行動の後、♂は背面の分泌腺から♀を誘う物質を出し、♀は♂の分泌物を舐めながら背面にのり交尾が成立する。p92
交尾の際に♀が♂の上に乗る姿勢は、♀上位と呼ばれ、原始的な交尾姿勢として知られている。p90
・♂の背板腺からは、背板への誘引物質と背板をなめさせる刺激物質が分泌される。p92
・(キョウト)ゴキブリの♂同士が出会うと互いに咬み合ったりして攻撃行動を示す。p90


別の参考サイト:ゴキブリの繁殖


互いに蹴り合う闘争行動に関する記述は見つけられませんでした。
もしかすると新発見?!(※)

求愛交尾行動の観察を楽しみにしていたのですけど、そのうち♂は居心地が悪いと感じたのか飼育容器の蓋にあるスリット状の換気孔から脱走してしまいました。
後日、なんとか再捕獲。
ゴキブリ飼育の脱走防止策についてはまた改めて別の記事を書く予定です。


【追記】
※ 『エソロジカル・エッセイ:無名のものたちの世界III』という古本にヤマトゴキブリの近縁種であるクロゴキブリPeriplaneta fuliginosa)の「間おき集合(spaced-out gregariousness)」について調べた章を見つけました。


p136-137をかいつまんで引用すると、
集合性昆虫といわれながら、行動を一つ一つリストアップしていくと、攻撃行動、防衛行動、牽制行動ばかりが目立ってくる。

・ある場所を占めた個体は、雌雄を問わず、明らかに占有場所の防衛を行う。

・順位制があるようでもあり、ないようでもある。

・主な能動的行動は、触角を他個体のいる方向に伸長し、ドラミングに似たような探りを入れる行動(さぐり)と、より積極的に、方向転換し、相手に対面し、後脚を浮かし、前のめりのようなかっこうで探りを入れる行動(のぞき)である。これらに対し、受動側が無反応という場合は少なく、多くの場合、
(1)能動行為者をいなすような感じで、向きをかえる(回転)か、刺激の少ない方向へ少し移動する(よけ)行動、
(2)体を高く持ち上げ、体を左右にゆすったり(ゆすり)、主に後脚を用いて能動行為者をける(けり)という牽制行動
(3)はじかれたようにとびのく(とびのき)、または一目散に逃走する行動(逃走)のいずれかが観察された。
そしてたいてはこれで終りで、再び静かな「間おき集合」が回復するのである。

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