ラベル 配偶行動 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 配偶行動 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2016/09/30

モンシロチョウの求愛飛翔?【ハイスピード動画】



2016年7月上旬・午後15:57

山麓の林縁でおそらくモンシロチョウPieris rapae)と思われる2頭の蝶が激しく乱舞していました。
求愛飛翔か?と思い、240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
草むらに着陸しかけたものの、交尾には至りません。
再びもつれ合うように飛び立ちました。
最後は諦めたようで、別れました。

モンキチョウの求愛飛翔とは異なり、モンシロチョウは性別を簡単に見分けられないのがネックです。
(可視光ではなく紫外線フィルターで撮ればモンシロチョウの性別判定は簡単なのですけど…。)
追いかけっこのように見えるのでもしかすると、♂同士の縄張り争いかもしれません。

同定用に高画質の写真を撮る前に、見失ってしまいました。
スジグロシロチョウの仲間という可能性もありそうです。
しかし里の畑(家庭菜園)に近いので、モンシロチョウでも不思議ではありません。
蛾の一種だったりして…。

▼関連記事
キアシドクガ?(蛾)の群飛【HD動画&ハイスピード動画】


2016/09/23

ヒダリマキマイマイの交尾【100倍速映像】



2016年6月下旬・午後22:49〜午前2:58

3匹のヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)を一緒に飼育していると少し狭そうです。
夏になると暑くて容器内が蒸れ、蝸牛が弱ってしまいそうな気がしました。
そこで、大き目の飼育容器をホームセンターで新しく買ってきました。
引越しすると餌には全く見向きもせず、霧吹きした壁面を盛んに徘徊しています。

夜に気づいたら2匹が新居の壁面で交尾していました。
慌てて三脚を立て、微速度撮影で記録しました。
恋矢で刺す行動は既に終わっていて残念。

交尾中は互いの位置はほとんど動きません。
野外で観察した一回目の交尾中に激しく動き回っていたのは、やはり何らかの異常事態だったようです。
今回は肝心の交尾器の結合部が見えにくいアングルになってしまいました。

交尾を終えた2匹は別れ際に熱烈な口づけを交わしました。
その場に残った個体は、もう一匹の残した粘液を舐めています。

ちなみに撮影中に測った室温は、午後22:54には25.0℃、湿度56%。
午後23:10に、は室温23.8℃、湿度59%。
日付が変わり午前00:41には、室温22.2℃、湿度66%。

交尾から12日後の7月上旬、容器内の壁面に恋矢が1つ排出されていました。
もう一つの行方が分かりません。



【おまけの動画】
早回し速度を色々と変えた動画をブログ限定で公開します。



↑60倍速映像。




↑10倍速映像。


2016/09/15

モンキチョウ♀♂の求愛飛翔【ハイスピード動画】



2016年6月下旬

山麓で求愛飛翔するモンキチョウColias erate poliographus)♀♂を240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。

黄色の♂は常に白い♀の目の前を飛んで♀の行く手を塞ぐように動いています。
フワフワと羽ばたいて飛ぶ♀の下をくぐり、♀の目の前で上昇する動きを♂は繰り返しています。
♂の方が激しく羽ばたいていることが分かります。

これまでで最も長時間、撮影出来ました。
グルグルと乱舞しながら農道を横断し休耕地へと飛んで行きました。
熱烈に求愛されても♀が着陸してくれないので、交尾には至りませんでした。



【追記】
渡辺守『モンキチョウの交尾行動』によると、
 一頭の♀に数頭の♂が群らがって飛んだり、♀の前を♂がホヴァリングしながら飛翔しているのも求愛飛翔です。交尾する意志がなかった場合、♀は♂を振り切ろうとしますが、♀の行く手をふさぐように♂が飛ぶので、しかたなく♀は草むらに着陸し、翅を拡げて腹部を上げるという、シロチョウ類に特徴的な交尾拒否姿勢を示すことになります。 (『動物たちの気になる行動〈2〉恋愛・コミュニケーション篇』p61より引用)


2016/09/12

キアゲハの求愛飛翔



2016年6月下旬

ムシトリナデシコの咲いた花壇でキアゲハPapilio machaon hippocrates)の吸蜜シーンを撮っていたら、もう一頭が飛来して激しい乱舞を始めました。
結局、交尾には至らず、すぐに別れてしまいました。
性別が見分けられないのですけど、♂の求愛を♀が拒否したのか、あるいは♂同士で誤認求愛したのかもしれません。


【追記】
渡辺守『チョウの生態「学」始末』という本を読んで初めて知ったのですが、キアゲハの♀はチョウにしては珍しく複数♂との多回交尾をせず平均交尾回数は1回なのだそうです。


2016/08/30

ドバト(野鳥)の求愛



2016年6月中旬

公園の鳩に長年給餌するヒトがいるので、ドバト(=カワラバト;Columba livia)の群れはヒトを全く恐れず近寄って来ます。(野鳥として堕落している)
給餌をせず手ぶらで見ている私の近くにも数羽の鳩が集まって来ました。
その中に、求愛行動をしている♂がいました。
鳩胸を強調し膨らませた首を上下して求愛するも、周りの♀は知らん顔で地面の餌を啄んでいます。
求愛中に鳴き声は聞き取れませんでした。

参考サイト:ドバトの行動/観察のポイント@平塚市博物館公式ページ

後半は芝生の端に群がって頻りに突ついています。
私が給餌していると勘違いしたのか、鳩が更に続々と集まってきます。
求愛はもう見られませんでした。



【追記】
藤田祐樹 『ハトはなぜ首を振って歩くのか(岩波科学ライブラリー)』によると、
首を上げ下げしながら足踏みをし、のどを膨らませて胸をはり、尾羽を広げて地面にこすりつけるようにしている。見ていると、別の個体につきまとっているように見える。♂が♀の周りを歩き回って求愛しているのだ。(p4より引用)


2016/08/24

交尾後に恋矢を排出するヒダリマキマイマイ


2016年5月下旬

飼育中のヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)が軟体の右横から白い恋矢を伸ばしているように見えました。
このとき私は未だ勉強不足で、見ても意味が分かりませんでした。
発情した個体がこれから交尾しようと興奮しているのだろうか?と思い、写真を撮っただけでした。
しばらくすると容器の壁面に脱落した恋矢が残されていました。
どうやら数日前に交尾したのを見逃してしまったようです。
交尾相手から刺された恋矢を数日かけて体内から排出したのでしょう。
この排出過程を微速度撮影で記録してみたいのですが、いつも見落としてしまい、なかなか上手くいきません。

容器の天井に脱落した恋矢がもう一個へばりついていました。



ヒダリマキマイマイの交尾【60倍速映像】



2016年6月中旬・室温22.0℃→20.2℃→20.5℃

ヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)が飼育容器の蓋の裏で交尾していたので、慌てて微速度撮影で記録してみました。
60倍速の早回し映像でご覧ください。
窓際の自然光で撮ったので、カーテンが動くとちらちらして見難いですね。
残念ながら、恋矢はとっくに刺し終えた後でした。
前回の交尾とは異なり、今回は交尾器の結合は安定していて、2匹共に静止していました。
互いにほとんど動かないのが前回と大きな違いです。
相性が良かったようです。
2本のペニスが螺旋状に絡み合っています。

交尾が完了すると、初めに上の個体Uのペニス(紫色)が抜け、縮んでいきました。
次に下の個体Lのペニス(白色)が抜け、縮みました。
個体Uが下に向かって移動を始め、その後は脱走して三脚をよじ登りました。
残った個体Lはプラスチック容器の表面に付着した濃い粘液を舐めています。




↑【おまけの動画】
オリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開します。



交尾相手から刺された恋矢を2日後に排出していました。





2016/08/05

コブオトシブミ♀の交尾拒否と脱糞



2016年6月上旬
▼前回の記事
コブオトシブミ♀が揺籃作りに失敗

コブオトシブミ♀(Phymatapoderus latipennis)は作りかけの揺籃(失敗作)を放棄したまま隣のアカソの葉へ移動してしまいました。
相変わらず♂が♀にマウントしたままなので交尾シーンを接写しようと試みたものの、風で葉が揺れるので撮り難くて仕方がありません。
そこで裏技として、カップルが乗ったアカソの葉を慎重にナイフで切り落とし、路上にそっと置きました。
初め♀♂は擬死状態(死んだふり)のようにじっとしていました。
(映像はここから。)
横からじっくり接写すると交尾器を結合していなかったので、♂の行動はライバル♂から配偶者♀を守るための交尾後ガードなのでしょう。
やがて♀が立ち上がり、動き始めました。(@0:14)
マウントしていた♂が慌てて体を左右に揺すったのは、♀に宥めの信号を送ってるのかもしれません。

♀は交尾を嫌がって立ち止まったまま体を激しく揺すり、交尾器を伸ばした♂を振り落とそうとしています。
♂はまるでロデオのように必死で♀にしがみついています(じゃじゃ馬馴らし)。
とても滑稽なシーンで、接写しながら笑いそうになりました。
♀は頭を下げ逆立ちすると後脚で♂を蹴落とそうとするも、脚が届きません。
遂に♀は抗議の脱糞をしました。
細長くて黒っぽい糞を排泄すると、自ら足で払い落としました。
♀は生殖口の直前に排泄口があるようです。

そのうち交尾器の結合が外れてしまいました。
♂は再チャレンジするも、♀がまたポロリと脱糞しました。(@3:39)
♀が向きを変え、背面からのアングルになりました。
そのおかげで、上翅中央付近に一対の瘤があることがよく見えます。
最後、コブオトシブミ♀はアカソの葉先から降りると、しつこい♂を背負ったまま路上を逃げ始めました。

コブオトシブミ♀は交尾相手を選り好み(配偶者選択)しているのでしょうか?

初めに♀がアカソの葉に低く伏せていたのも、交尾に非協力的な拒否行動だったのかもしれません。

私の頭の中では山口百惠がドスの効いた声で歌う「プレイバックPart2」が流れていました。

「気分次第で抱くだけ抱いて女はいつも待ってるなんて 坊や いったい何を教わって来たの 私だって 私だって 疲れるわ」

ところで、オトシブミやチョッキリの♂はどうやって交尾相手の♀を探し当てるのですかね?
♀が性フェロモンを放出しながら揺籃を作るのでしょうか?
それとも♀が揺籃を作り始めると傷つけられたホスト植物から独特の匂いが発せられ、それを頼りに♂が集まるのかな?


コブオトシブミ♀♂の交尾
コブオトシブミ♀の交尾拒否と脱糞

2016/08/04

コブオトシブミ♀が揺籃作りに失敗



2016年6月上旬

山間部の道端に繁茂するアカソの群落でコブオトシブミ♀(Phymatapoderus latipennis)が葉を巻いて揺籃を作っていました。
現場は林縁の日陰で、アカソは葉柄が未だ赤く色づいていませんでした。

作りかけの揺籃を見ると、本で読んだコブオトシブミの特徴通り、葉の根本付近の裁断線は一本の直線状で主脈を切断しています。
裁断線の下の葉は適度に萎れかけ、巻き易くなっています。
ちなみに、コブオトシブミはヒメコブオトシブミと同種にまとめられたらしい。

コブオトシブミを観察するのは初めてなのに、いきなり難しい応用問題に出くわし、混乱しました。
フィールド観察ではよくあることです。
交尾中のコブオトシブミ♀♂と単独のコブオトシブミ個体が同じ揺籃に居たのです。
あぶれたコブオトシブミ♀は隣の葉に移動してしまいました。(@1:00)
(もし、あぶれ個体が♂なら♀を奪い合う喧嘩になるはず)
おまけに明らかに別種のチョッキリ類が同じ揺籃を徘徊していました。
後にドロハマキチョッキリByctiscus puberulus)と判明しますが、初めはもしかして、労働寄生つまり別種の作った揺籃に托卵する種(ヤドカリチョッキリまたはオオメイクビチョッキリ)かと疑い、緊張・興奮しました。
しかし、アカソをホストとする労働寄生種は知られていません。
作りかけの揺籃で異種遭遇しても、なぜか争いにはなりません。
頭をひねって見ていると、途中でドロハマキチョッキリは翅を開いて飛び去りました。(@2:13)
どうやら、ただの通りすがりだったのでしょう。




揺籃上に残ったのは、交尾中のコブオトシブミ♀♂1ペアだけになり、ようやく状況がシンプルになりました。
♀にマウントした♂がときどき体を左右に揺すっています。
揺籃を作りかけた葉裏に♀は静止して、葉脈を噛んでいるように見えます。

途中から揺籃作りを微速度撮影してみました。
10倍速の早回し映像をご覧ください。(@4:14〜)



ところが、コブオトシブミ♀はなぜか作りかけの揺籃を放棄して葉柄を登り、♂を背負ったまま隣のアカソの葉裏へ移動してしまいました。(@5:00)

こんな不細工な状態で揺籃が完成したとは思えません。
巻きかけた葉が戻ってしまいましたし、この揺籃は失敗作ですね。
昆虫の本能行動において「弘法も筆の誤り」というのはあり得ないと思っていたので、とても意外な展開でした。
分からないことばかりで混沌としています。
2匹の♀が同じ葉を材料に同時に揺籃を巻こうとして邪魔し合い、台無しになったのでしょうか?
コブオトシブミ♀やドロハマキチョッキリ♀による揺籃作りの成功例(正常例)の一部始終を観察してみないことには始まりません。

最後に失敗作の揺籃を採取し、その場で開いてみました。
ペリペリと糊を剥がすような感触がありました。
きつく巻いた葉の先に黄色い卵が一つ産み付けられていました。
産卵してから葉を巻き上げる途中で何か工程を失敗してしまったようです。
もし私が揺籃を採集しなくても、こんな不完全な揺籃では孵化した幼虫が正常に育つ可能性は低そうです。


つづく→コブオトシブミ♀の交尾拒否



さて、謎のドロハマキチョッキリはコブオトシブミの揺籃で一体何をしていたのでしょう?
♂が交尾相手の♀を探していたのかな?
それならアカソの群落ではなく、自身のホスト植物(カエデやイタドリなど)で探すべきでしょう。
労働寄生(托卵)の萌芽だとしたら非常に興味深いです。
しかし、たとえドロハマキチョッキリ♀が托卵に成功したとしても孵化した幼虫はイラクサ科の葉巻きをうまく消化したり解毒できず、生き残れないと思われます。
托卵行動が進化するにはまず、幼虫の消化・代謝機能が生理的に寄主転換の前適応する必要があります。

したがって、労働寄生はまず同種内で起こり、次にホスト植物がたまたま共通である別種の間で托卵するよう進化すると思われます。
闖入したドロハマキチョッキリの接写も採集も出来なかったので、性別は不明です。
スナップショット写真をよく見直すと、心眼では前胸下部に鋭い棘状の突起が見えた気がするので、♂かもしれません。
もう一つの特徴として、ドロハマキチョッキリ♂の口吻は長く、触角付着点あたりで湾曲するらしい。(『オトシブミハンドブック』p52より)


2016/07/23

求愛するアオバセセリ♀♂の卍巴飛翔



2016年6月上旬
▼前回の記事
ハルジオンを訪花するアオバセセリの羽ばたき【HD動画&ハイスピード動画】

山間部の道端に咲いたハルジオンアオバセセリChoaspes benjaminii japonica)の訪花シーンを撮っていたらもう一頭が背後から飛来し、熱烈な求愛を始めました。
ホバリング(停空飛翔)しているのが♀で、その周囲をぐるぐると縦に高速回転しているのが♂なのでしょう。
そのまま2頭は上昇し、雑木林の梢に消えました。
アオバセセリが求愛する卍巴飛行を初めて観察して感動しました。
次回はハイスピード動画で撮ってみたいものです。


2016/07/18

アカガネサルハムシ♀♂の交尾



2016年6月上旬

山麓の道端の茂みでアカガネサルハムシAcrothinium gaschkevitchii gaschkevitchii)♀♂が交尾していました。

♀の背後からマウントした♂がときどき体を左右に激しく揺する行動が気になりました。
交尾器の結合部が見えないのが残念。
ライバル♂の精子を掻き出そうとしているのか?と想像しました。(精子競争
それとも挿入角度を調節しているのでしょうか?

ちなみに、交尾中の尻振り行動はナミテントウでも観察したことがあります。
そしてナミテントウの場合では研究の結果、交尾中の♂の体の振動はおそらく精子を送り込む運動であると考えられているそうです。


同時にアカガネサルハムシ♂が長い触角で♀の腹背(肩の辺り)を激しく叩いているのは、求愛行動の一種なのか、♀にじっとしているよう宥めの信号を送っているのかな?
更に♂はときどき後脚も激しく動かしています(側面からも接写したかった…)。
ところが、静止していた♀が♂を背負ったまま歩き出しました。

複数ペアを撮影した後に、1ペアを採集しました。
以下は標本写真。(掲載予定)







2016/07/14

フランスギクの花で交尾するアカスジカメムシ♀♂



2016年6月上旬

郊外の住宅地で道端に咲いたフランスギクの花でアカスジカメムシGraphosoma rubrolineatum)の♀♂ペアが交尾していました。
よりによって萎れかけの花に居るのはフォトジェニックじゃなくて残念ですけど、逆に言えばカメムシが吸汁した結果、花が急速に萎れたのでしょうか?
隣の花にもう一匹居て、こちらはおそらく吸汁中。





2016/07/03

ルイスアシナガオトシブミ♀bの揺籃作り【10倍速映像】



2016年5月中旬・午後15:32〜17:34
▼前回の記事
ハルニレの葉裏で交尾するルイスアシナガオトシブミ♀♂

里山に生えたハルニレの幼木で若葉を巻いて揺籃を作っているルイスアシナガオトシブミHenicolabus lewisii)♀が数匹いました。
その中の一匹♀bに注目して、微速度撮影で作業の一部始終を記録してみました。
10倍速の早回し映像をご覧ください。
ただし、映像のラスト22秒間のみ5倍速に落としました。(♀が揺籃を切り落とし始め、受け止めて揺籃と♀bを採集するまで)
この日は風が絶え間なく吹く悪条件でしたので、マクロレンズによる接写は早々に断念しました。
山の陰に日が沈み夕方になると風が止んで助かりました。
余談ですが、野外に持ち運べる風除けのための衝立があれば虫を楽に接写できるのになーといつも夢想します。
巨大なテントを立てても良いのでしょうが、被写体が暗くなったり中が暑くなったりと、色々と副作用がありそうです。
大名行列のように助手を何人も引き連れて出かけ、被写体を取り囲むように円陣を組んで長時間立たせるのも現実的ではありませんね。
閑話休題。

ルイスアシナガオトシブミ♀bが加工に適したハルニレ葉の吟味を終え、葉の根本(短い葉柄の少し上)で両裁型の加工を始めました。
残った主脈に傷をつけると葉が垂れ下がりました。
体重を利用しているのでしょう。
次に♀bは垂れ下がった葉の下方に移動しました。
いつの間にか♂が来ていて、作業中の♀の背後からマウントしていました。
交尾器が結合しているのか、それとも交尾後ガードでマウントしているだけなのか、接写しない限り分かりませんね。
♂を背負ったまま♀はハルニレ葉裏の主脈に噛み傷をつけているようです。
動きがあまり無くて退屈ですが、♀は葉が適度に萎れるのを待っているのでしょう。

しばらくすると、別のライバル♂が上から登場しました。(@3:30)
♀をめぐって♂同士が闘争を始めました。
♀はその喧騒から離れて黙々と作業と続けます。
交尾後ガードしていた♂も含めて、♂は2匹とも落下してしまいました。(喧嘩両成敗@3:48)
『オトシブミハンドブック』p26-27によると、

(ルイスアシナガオトシブミの)♀をめぐる♂同士の闘争では、向かい合って長い前脚を振り上げ合ったり、レスリングのように組み合う行動が見られる。
興味深い♂の闘争シーンを微速度撮影ではなくリアルタイムのマクロ動画でじっくり記録したかったです。
残念ながら撮影中はこの闘争シーンに気づきませんでした。
おそらく他の虫のことに気を取られていたのだと思います。

独り残された♀は垂れ下がった葉の主脈を中心に葉裏が表になるように二つ折りにします。
そして葉先から巻き上げ始めました。
この辺りで♀は産卵したはずですが、接写しないと産卵行動の詳細が分かりませんね。

再び♂が飛来して辺りを徘徊し始めました。(@4:57)
揺籃製作中の♀をランダムウォークで探し当てると♂は直ちにマウントしました。(@5:15)
先程争っていた♂の一方が戻って来たのでしょうか。
♂を背負ったまま♀bは葉の巻き上げ作業を続けます。

オトシブミ♀が揺籃を巻く向きを考えて撮影アングルを決めないと、♀が作業する裏側ばかり撮ることになります。
画面に写っているのは、交尾後ガードで♀に付き添いウロウロと徘徊する♂ばかりかもしれません。
しかしフィールドの現場では他の茂みがあったり斜面だったりと諸事情により、三脚を立てて撮影できるアングルに制限があるので仕方がありません。

明らかに産卵が済んだ揺籃作りの後半になっても♂がしつこく交尾後ガードを続けている点が不思議に思いました。
素人目には♂はただ♀の作業を邪魔しているだけのように見えますし(お邪魔虫)、♂の立場で合理的に考えれば次の交尾相手の♀を探しに出かけた方が良さそうな気がします。
ライバル♂から♀を守るだけでなく、労働寄生種のオトシブミ♀に托卵されないように献身的に警護する意味もあるのでしょうか?
葉の巻き上げが完了するとようやく♂が交尾後ガードを止めて♀から離れました。
マウントを解除しても♂はしばらく揺籃上をウロウロ徘徊しています。

完成した揺籃を切り落とす最後の工程を微速度撮影と同時並行で別アングルでも撮影しました。
真下に受け皿を置いて、完成した揺籃を採集します。
揺籃がポトリと落ちる肝心の瞬間がピンぼけになってしまいました。

カメラのバッテリー交換に手間取ったせいです。
『オトシブミハンドブック』p26-27によれば、ルイスアシナガオトシブミの♀は完成した揺籃を切り落とす場合と切り落とさない場合があるらしい。
実際にこのハルニレ幼木で探すと、切り落とされず枝に残ったままの揺籃も見つけました。


3日後の揺籃

採集した揺籃をそのまま容器に入れて室内飼育しているのですけど、この記事を執筆中の現在(7月上旬)も未だに成虫が羽化してきません。
揺籃が乾燥し過ぎないように注意したつもりですが、もっと水気を与えるべきだったかもしれません。
カビの発生が怖くて霧吹きなどはしませんでした。
揺籃を切って中を調べてみるべきか、もう少し静観すべきか、悩みます…。

以下は、採集したルイスアシナガオトシブミ♀bの標本写真です。(掲載予定)


2016/07/02

ハルニレの葉裏で交尾するルイスアシナガオトシブミ♀♂



2016年5月中旬
▼前回の記事
飛べ!ルイスアシナガオトシブミ

里山に生えたハルニレの幼木でルイスアシナガオトシブミHenicolabus lewisii)の♀♂カップルが若葉の裏面で交尾していました。
接写の大敵である風が絶え間なく吹いて悩まされるのですが、マウントしているだけで交尾器は結合していませんでした。
♂は交尾を済ませた後もライバル♂から♀を守っている(交尾後ガード)のでしょう。
♂の腹端に見える白いものは精子なのかな?(交尾器?)
一方、♀は揺籃作りの途中だったのかもしれません。


撮影後にペアを採集しました。
以下は標本写真。(掲載予定)


2016/06/24

ハルザキヤマガラシの花蜜を吸うベニシジミ



2016年5月中旬

堤防の遊歩道の脇に咲いた菜の花でベニシジミLycaena phlaeas daimio)が訪花していました。
翅を半開きにして花蜜を吸っています。
途中からもう一頭が飛来したのは、もしかすると誤認求愛なのかな?(私にはベニシジミの性別を見分けられません。)
花から押し出されるように追い出された個体は隣の花へ移動しました。




【追記】
この菜の花は、帰化植物のハルザキヤマガラシでしょう。


2016/06/18

ウワミズザクラの花蜜を吸うサカハチチョウ春型



2016年5月中旬

里山で満開に咲いたウワミズザクラの花で春型のサカハチチョウAraschnia burejana)が2頭、翅を開閉しながら仲良く並んで吸蜜していました。
途中で1頭が飛び去ったと思いきや、再び飛来してホバリング(停空飛翔)しました。
これは求愛行動なのかな?
(サカハチチョウの求愛が成就して交尾に至った例を未だ見たことがないので、自信がありません。)
花上の個体が翅をしっかり閉じて交尾拒否すると、諦めて飛び去りました。
ちなみに、つづいて飛来した小さな黒っぽい鱗翅目はマドガです。

▼関連記事
ウワミズザクラの花蜜を吸うマドガ(蛾)
余談ですが、日本の蝶の中で私はサカハチチョウの翅裏の模様が一番好きかもしれません。
この繊細で込み入ったデザインと言い、配色と言い、見る度にセンスあるよなー!と感心します。


花の中に隠れて獲物を待ち伏せしているクモの歩脚が動いていますね。
爽やかな5月の風にウワミズザクラの枝が揺れています。



2016/06/11

モンキチョウ♂♀の求愛飛翔



2015年7月下旬

農村部の道端の原っぱでモンキチョウColias erate poliographus)の♀♂ペアが激しく求愛飛翔していました。

初めは♀がムラサキツメクサの花蜜を吸っていてそこに♂が飛来したのですが、出会いのシーンは撮り損ねました。




2016/06/09

野外で交尾するヒダリマキマイマイ【早回し映像】



2016年5月上旬・くもり・午前11:27〜午後13:03

道端を這い回るヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)を見つけました。

現場は平地で、標高266m地点でした。
珍しいカタツムリなのに、一度に3匹も同時に見かけたのはこれが初めてでした。
発見時は3匹が進む向きはバラバラでした(←←→)。
「発情している」という表現が正しいか分かりませんが、生殖器が少し外に出かかっている個体が気になりました。
殻が左巻きなので、本種の生殖器は通常のカタツムリとは逆で体の左側にあります。

そのうちの2匹が出会ってから交尾して別れるまでの一部始終を動画に記録する機会に恵まれました。
明け方と午前中に雨が降ったので、交尾日和だったのかもしれません。
路上を這った跡に透明の粘液が乾いてテカテカ光っています。
この軌跡を化学的な道しるべにして、互いに出会うのでしょう。
今にもぶつかりそうなので、横に15cm定規を置いて撮影開始。


3匹のヒダリマキマイマイ
交尾直前:路上に徘徊痕跡(乾いた粘液)

長撮りした映像そのままではあまりにも長編なので、6倍速に加工した早回し映像でご覧ください。
この日は三脚を持っていなかったため、手ブレはご容赦願います。

三脚を使っていれば、早回し速度をもっと上げれたのに。
カメラを路上に置いてローアングルから微速度撮影した後半(@10:55〜)は10倍速の早回し映像になります。
(長くてもオリジナル映像を見たい方は、後述のおまけ動画をご覧ください。)


2匹がすれ違いざまに激しい交尾を始めたので驚きました。
ナメクジの交尾ともまた異なり、なかなかエロチックな光景です。

▼関連記事
ヤマナメクジの交尾【50倍速映像】
ヤマナメクジの交尾

カタツムリが交尾の際に相手へ打ち込む「love dart;恋矢れんし」を初めて実際に観察して感動しました。
確かにローマ神話のキューピット(=ギリシャ神話のエロス)が放つ恋の矢を連想させますね。

恋矢はカルシウムを含み,交尾前に恋矢嚢が裏返しとなることによって射出され,相手の個体の皮膚に機械的刺激を与え,交尾が終ると捨てられる.刀身状のものが多いが,紡錘形・剣菱形・三角形・山形・円形など種類によってさまざまで,分類上の重要な標徴となる.(『岩波生物学辞典第4版』より)

蝸牛の生殖器官の解剖学や機能に全く疎くてよく分からない(自信がない)のですけど、恋矢を伸ばしたのは右側の個体Rからだけ?
また、伸ばした恋矢で相手を突き刺してはいないように思いました。(見逃しただけかも?)
やがて左側の個体LがペニスをRから抜き、ゆっくりと引っ込めました。
LがRの殻入り口(左側)に繰り返し頭を突っ込んだり殻の入り口の縁を舐めたりしている謎の行動が繰り返し見られ、どういう意味があるのか興味深く思いました。
互いに離れ始めたのに、強引に引っ張ってもRのペニスが抜けないようです。
特定の角度で抜こうとしないと抜けない構造なのでしょうか?
体の左側、ペニスの前で開閉している穴は呼吸孔かな?

いつのまにか2匹は正面から顔を突き合わせていました。
2匹は巴のような陣形で互いに左回りにぐるぐる動きました。
相手のペニスを抜くための回転運動なのでしょうか?
舗装路で長居すると体が乾燥するので、スギナ群落の生い茂った路肩の地面を目指して移動したようです。

交尾器を連結したまま相手を引き摺りながら移動し、路肩の枯れ葉の上に乗りました。
交尾のついでに落ち葉の表面を舐めて摂食しているようですけど、肝心の口元がはっきり見えませんでした。

カタツムリの交尾を初めて観察しましたが、なかなか終了しません。
これぐらい長時間続くのが普通ですかね?
やや風が強く、肌寒くなりました。(気温を測り忘れた)
カタツムリの種類によってはダート・シューティングしてから10時間以上挿入してるらしい。(※追記の参考サイト)
白昼堂々、目立つ場所で延々と交尾していたら天敵の捕食者に対して無防備ではないのか?と心配になります。
交尾中にアリが横を通りかかっても、カタツムリを狩るどころか体には決して触れませんでした。
アリがヒダリマキマイマイの殻に登っても、すぐに降りました。
カタツムリの分泌する粘液がアリの忌避物質を含んでいる印象を受けました。

途中から一方(早目に交尾が終了した個体?)が殻に引きこもって動かなくなりました。
繋がった交尾器を捻じるように片方だけが何度もぐるぐる回り、ようやく縁が切れました。
強引に引き千切ったのかな?

3匹目の個体も参戦して三つ巴の交尾になるかと密かに期待したのですが、そのような展開にはなりませんでした。
もしかすると既に交尾を済ませていたのかもしれません。
恋矢で刺されたカタツムリは性欲が減退するそうです。

交尾を終えたRはその場に居残りました。
一方、Lはスギナの群落を越えて向こう側に移動しました。
カタツムリが這った跡は透明な粘液で濡れていますが、やがて乾いてカピカピになります。




【おまけの動画】ノーカット完全版

特に交尾の初めのシーン(ダート・シューティングなど)は早送りしないこちらの方が見応えがあると思います。
カメラを路上に置いてローアングルから微速度撮影した後半(@1:08:30〜)は10倍速の早回し映像になります。


【参考サイト】
専門家(木村一貴氏)によるカタツムリの交尾とダートシューティングについて詳しく解説したサイト



相手の殻入り口の縁にキス
相手の殻入り口の縁にキス
相手の殻入り口の縁にキス
交尾中:路上に徘徊痕跡(乾いた粘液)


【追記】
飼育下で脱落したヒダリマキマイマイ恋矢の写真。
飼育容器の壁面にいつの間にか3個へばりついていました。
私が気づかずに掃除の際に幾つか捨ててしまったかもしれません。
大きさ(長さ)がまちまちですが、白いカルシウム質で魚の小骨のように硬いです。
先端は鋭く尖っています。
色が違うのは飼育下での汚れだと思います。

英語版wikipediaに掲載された本種の恋矢の模式図とそっくりです。





【追記2】
『科学のアルバム:カタツムリ』p14〜15にヒダリマキマイマイの交尾行動が連続写真で紹介されていました。
2匹のカタツムリは、石灰質でできた白い槍のような管をのばし、相手の首の右側めがけてさしこみました。このとき精子の入った袋を交換します。交尾が終わって2匹が別れるまで約1時間。ときには、袋の交換に失敗して、落としてしまうことがあります。

ランダムに記事を読む