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2016/07/23

求愛するアオバセセリ♀♂の卍巴飛翔



2016年6月上旬
▼前回の記事
ハルジオンを訪花するアオバセセリの羽ばたき【HD動画&ハイスピード動画】

山間部の道端に咲いたハルジオンアオバセセリChoaspes benjaminii japonica)の訪花シーンを撮っていたらもう一頭が背後から飛来し、熱烈な求愛を始めました。
ホバリング(停空飛翔)しているのが♀で、その周囲をぐるぐると縦に高速回転しているのが♂なのでしょう。
そのまま2頭は上昇し、雑木林の梢に消えました。
アオバセセリが求愛する卍巴飛行を初めて観察して感動しました。
次回はハイスピード動画で撮ってみたいものです。


2016/07/18

アカガネサルハムシ♀♂の交尾



2016年6月上旬

山麓の道端の茂みでアカガネサルハムシAcrothinium gaschkevitchii gaschkevitchii)♀♂が交尾していました。

♀の背後からマウントした♂がときどき体を左右に激しく揺する行動が気になりました。
交尾器の結合部が見えないのが残念。
ライバル♂の精子を掻き出そうとしているのか?と想像しました。(精子競争
それとも挿入角度を調節しているのでしょうか?

ちなみに、交尾中の尻振り行動はナミテントウでも観察したことがあります。
そしてナミテントウの場合では研究の結果、交尾中の♂の体の振動はおそらく精子を送り込む運動であると考えられているそうです。


同時にアカガネサルハムシ♂が長い触角で♀の腹背(肩の辺り)を激しく叩いているのは、求愛行動の一種なのか、♀にじっとしているよう宥めの信号を送っているのかな?
更に♂はときどき後脚も激しく動かしています(側面からも接写したかった…)。
ところが、静止していた♀が♂を背負ったまま歩き出しました。

複数ペアを撮影した後に、1ペアを採集しました。
以下は標本写真。(掲載予定)







2016/07/14

フランスギクの花で交尾するアカスジカメムシ♀♂



2016年6月上旬

郊外の住宅地で道端に咲いたフランスギクの花でアカスジカメムシGraphosoma rubrolineatum)の♀♂ペアが交尾していました。
よりによって萎れかけの花に居るのはフォトジェニックじゃなくて残念ですけど、逆に言えばカメムシが吸汁した結果、花が急速に萎れたのでしょうか?
隣の花にもう一匹居て、こちらはおそらく吸汁中。





2016/07/03

ルイスアシナガオトシブミ♀bの揺籃作り【10倍速映像】



2016年5月中旬・午後15:32〜17:34
▼前回の記事
ハルニレの葉裏で交尾するルイスアシナガオトシブミ♀♂

里山に生えたハルニレの幼木で若葉を巻いて揺籃を作っているルイスアシナガオトシブミHenicolabus lewisii)♀が数匹いました。
その中の一匹♀bに注目して、微速度撮影で作業の一部始終を記録してみました。
10倍速の早回し映像をご覧ください。
ただし、映像のラスト22秒間のみ5倍速に落としました。(♀が揺籃を切り落とし始め、受け止めて揺籃と♀bを採集するまで)
この日は風が絶え間なく吹く悪条件でしたので、マクロレンズによる接写は早々に断念しました。
山の陰に日が沈み夕方になると風が止んで助かりました。
余談ですが、野外に持ち運べる風除けのための衝立があれば虫を楽に接写できるのになーといつも夢想します。
巨大なテントを立てても良いのでしょうが、被写体が暗くなったり中が暑くなったりと、色々と副作用がありそうです。
大名行列のように助手を何人も引き連れて出かけ、被写体を取り囲むように円陣を組んで長時間立たせるのも現実的ではありませんね。
閑話休題。

ルイスアシナガオトシブミ♀bが加工に適したハルニレ葉の吟味を終え、葉の根本(短い葉柄の少し上)で両裁型の加工を始めました。
残った主脈に傷をつけると葉が垂れ下がりました。
体重を利用しているのでしょう。
次に♀bは垂れ下がった葉の下方に移動しました。
いつの間にか♂が来ていて、作業中の♀の背後からマウントしていました。
交尾器が結合しているのか、それとも交尾後ガードでマウントしているだけなのか、接写しない限り分かりませんね。
♂を背負ったまま♀はハルニレ葉裏の主脈に噛み傷をつけているようです。
動きがあまり無くて退屈ですが、♀は葉が適度に萎れるのを待っているのでしょう。

しばらくすると、別のライバル♂が上から登場しました。(@3:30)
♀をめぐって♂同士が闘争を始めました。
♀はその喧騒から離れて黙々と作業と続けます。
交尾後ガードしていた♂も含めて、♂は2匹とも落下してしまいました。(喧嘩両成敗@3:48)
『オトシブミハンドブック』p26-27によると、

(ルイスアシナガオトシブミの)♀をめぐる♂同士の闘争では、向かい合って長い前脚を振り上げ合ったり、レスリングのように組み合う行動が見られる。
興味深い♂の闘争シーンを微速度撮影ではなくリアルタイムのマクロ動画でじっくり記録したかったです。
残念ながら撮影中はこの闘争シーンに気づきませんでした。
おそらく他の虫のことに気を取られていたのだと思います。

独り残された♀は垂れ下がった葉の主脈を中心に葉裏が表になるように二つ折りにします。
そして葉先から巻き上げ始めました。
この辺りで♀は産卵したはずですが、接写しないと産卵行動の詳細が分かりませんね。

再び♂が飛来して辺りを徘徊し始めました。(@4:57)
揺籃製作中の♀をランダムウォークで探し当てると♂は直ちにマウントしました。(@5:15)
先程争っていた♂の一方が戻って来たのでしょうか。
♂を背負ったまま♀bは葉の巻き上げ作業を続けます。

オトシブミ♀が揺籃を巻く向きを考えて撮影アングルを決めないと、♀が作業する裏側ばかり撮ることになります。
画面に写っているのは、交尾後ガードで♀に付き添いウロウロと徘徊する♂ばかりかもしれません。
しかしフィールドの現場では他の茂みがあったり斜面だったりと諸事情により、三脚を立てて撮影できるアングルに制限があるので仕方がありません。

明らかに産卵が済んだ揺籃作りの後半になっても♂がしつこく交尾後ガードを続けている点が不思議に思いました。
素人目には♂はただ♀の作業を邪魔しているだけのように見えますし(お邪魔虫)、♂の立場で合理的に考えれば次の交尾相手の♀を探しに出かけた方が良さそうな気がします。
ライバル♂から♀を守るだけでなく、労働寄生種のオトシブミ♀に托卵されないように献身的に警護する意味もあるのでしょうか?
葉の巻き上げが完了するとようやく♂が交尾後ガードを止めて♀から離れました。
マウントを解除しても♂はしばらく揺籃上をウロウロ徘徊しています。

完成した揺籃を切り落とす最後の工程を微速度撮影と同時並行で別アングルでも撮影しました。
真下に受け皿を置いて、完成した揺籃を採集します。
揺籃がポトリと落ちる肝心の瞬間がピンぼけになってしまいました。

カメラのバッテリー交換に手間取ったせいです。
『オトシブミハンドブック』p26-27によれば、ルイスアシナガオトシブミの♀は完成した揺籃を切り落とす場合と切り落とさない場合があるらしい。
実際にこのハルニレ幼木で探すと、切り落とされず枝に残ったままの揺籃も見つけました。


3日後の揺籃

採集した揺籃をそのまま容器に入れて室内飼育しているのですけど、この記事を執筆中の現在(7月上旬)も未だに成虫が羽化してきません。
揺籃が乾燥し過ぎないように注意したつもりですが、もっと水気を与えるべきだったかもしれません。
カビの発生が怖くて霧吹きなどはしませんでした。
揺籃を切って中を調べてみるべきか、もう少し静観すべきか、悩みます…。

以下は、採集したルイスアシナガオトシブミ♀bの標本写真です。(掲載予定)


2016/07/02

ハルニレの葉裏で交尾するルイスアシナガオトシブミ♀♂



2016年5月中旬
▼前回の記事
飛べ!ルイスアシナガオトシブミ

里山に生えたハルニレの幼木でルイスアシナガオトシブミHenicolabus lewisii)の♀♂カップルが若葉の裏面で交尾していました。
接写の大敵である風が絶え間なく吹いて悩まされるのですが、マウントしているだけで交尾器は結合していませんでした。
♂は交尾を済ませた後もライバル♂から♀を守っている(交尾後ガード)のでしょう。
♂の腹端に見える白いものは精子なのかな?(交尾器?)
一方、♀は揺籃作りの途中だったのかもしれません。


撮影後にペアを採集しました。
以下は標本写真。(掲載予定)


2016/06/24

ハルザキヤマガラシの花蜜を吸うベニシジミ



2016年5月中旬

堤防の遊歩道の脇に咲いた菜の花でベニシジミLycaena phlaeas daimio)が訪花していました。
翅を半開きにして花蜜を吸っています。
途中からもう一頭が飛来したのは、もしかすると誤認求愛なのかな?(私にはベニシジミの性別を見分けられません。)
花から押し出されるように追い出された個体は隣の花へ移動しました。




【追記】
この菜の花は、帰化植物のハルザキヤマガラシでしょう。


2016/06/18

ウワミズザクラの花蜜を吸うサカハチチョウ春型



2016年5月中旬

里山で満開に咲いたウワミズザクラの花で春型のサカハチチョウAraschnia burejana)が2頭、翅を開閉しながら仲良く並んで吸蜜していました。
途中で1頭が飛び去ったと思いきや、再び飛来してホバリング(停空飛翔)しました。
これは求愛行動なのかな?
(サカハチチョウの求愛が成就して交尾に至った例を未だ見たことがないので、自信がありません。)
花上の個体が翅をしっかり閉じて交尾拒否すると、諦めて飛び去りました。
ちなみに、つづいて飛来した小さな黒っぽい鱗翅目はマドガです。

▼関連記事
ウワミズザクラの花蜜を吸うマドガ(蛾)
余談ですが、日本の蝶の中で私はサカハチチョウの翅裏の模様が一番好きかもしれません。
この繊細で込み入ったデザインと言い、配色と言い、見る度にセンスあるよなー!と感心します。


花の中に隠れて獲物を待ち伏せしているクモの歩脚が動いていますね。
爽やかな5月の風にウワミズザクラの枝が揺れています。



2016/06/11

モンキチョウ♂♀の求愛飛翔



2015年7月下旬

農村部の道端の原っぱでモンキチョウColias erate poliographus)の♀♂ペアが激しく求愛飛翔していました。

初めは♀がムラサキツメクサの花蜜を吸っていてそこに♂が飛来したのですが、出会いのシーンは撮り損ねました。




2016/06/09

野外で交尾するヒダリマキマイマイ【早回し映像】



2016年5月上旬・くもり・午前11:27〜午後13:03

道端を這い回るヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)を見つけました。

現場は平地で、標高266m地点でした。
珍しいカタツムリなのに、一度に3匹も同時に見かけたのはこれが初めてでした。
発見時は3匹が進む向きはバラバラでした(←←→)。
「発情している」という表現が正しいか分かりませんが、生殖器が少し外に出かかっている個体が気になりました。
殻が左巻きなので、本種の生殖器は通常のカタツムリとは逆で体の左側にあります。

そのうちの2匹が出会ってから交尾して別れるまでの一部始終を動画に記録する機会に恵まれました。
明け方と午前中に雨が降ったので、交尾日和だったのかもしれません。
路上を這った跡に透明の粘液が乾いてテカテカ光っています。
この軌跡を化学的な道しるべにして、互いに出会うのでしょう。
今にもぶつかりそうなので、横に15cm定規を置いて撮影開始。


3匹のヒダリマキマイマイ
交尾直前:路上に徘徊痕跡(乾いた粘液)

長撮りした映像そのままではあまりにも長編なので、6倍速に加工した早回し映像でご覧ください。
この日は三脚を持っていなかったため、手ブレはご容赦願います。

三脚を使っていれば、早回し速度をもっと上げれたのに。
カメラを路上に置いてローアングルから微速度撮影した後半(@10:55〜)は10倍速の早回し映像になります。
(長くてもオリジナル映像を見たい方は、後述のおまけ動画をご覧ください。)


2匹がすれ違いざまに激しい交尾を始めたので驚きました。
ナメクジの交尾ともまた異なり、なかなかエロチックな光景です。

▼関連記事
ヤマナメクジの交尾【50倍速映像】
ヤマナメクジの交尾

カタツムリが交尾の際に相手へ打ち込む「love dart;恋矢れんし」を初めて実際に観察して感動しました。
確かにローマ神話のキューピット(=ギリシャ神話のエロス)が放つ恋の矢を連想させますね。

恋矢はカルシウムを含み,交尾前に恋矢嚢が裏返しとなることによって射出され,相手の個体の皮膚に機械的刺激を与え,交尾が終ると捨てられる.刀身状のものが多いが,紡錘形・剣菱形・三角形・山形・円形など種類によってさまざまで,分類上の重要な標徴となる.(『岩波生物学辞典第4版』より)

蝸牛の生殖器官の解剖学や機能に全く疎くてよく分からない(自信がない)のですけど、恋矢を伸ばしたのは右側の個体Rからだけ?
また、伸ばした恋矢で相手を突き刺してはいないように思いました。(見逃しただけかも?)
やがて左側の個体LがペニスをRから抜き、ゆっくりと引っ込めました。
LがRの殻入り口(左側)に繰り返し頭を突っ込んだり殻の入り口の縁を舐めたりしている謎の行動が繰り返し見られ、どういう意味があるのか興味深く思いました。
互いに離れ始めたのに、強引に引っ張ってもRのペニスが抜けないようです。
特定の角度で抜こうとしないと抜けない構造なのでしょうか?
体の左側、ペニスの前で開閉している穴は呼吸孔かな?

いつのまにか2匹は正面から顔を突き合わせていました。
2匹は巴のような陣形で互いに左回りにぐるぐる動きました。
相手のペニスを抜くための回転運動なのでしょうか?
舗装路で長居すると体が乾燥するので、スギナ群落の生い茂った路肩の地面を目指して移動したようです。

交尾器を連結したまま相手を引き摺りながら移動し、路肩の枯れ葉の上に乗りました。
交尾のついでに落ち葉の表面を舐めて摂食しているようですけど、肝心の口元がはっきり見えませんでした。

カタツムリの交尾を初めて観察しましたが、なかなか終了しません。
これぐらい長時間続くのが普通ですかね?
やや風が強く、肌寒くなりました。(気温を測り忘れた)
カタツムリの種類によってはダート・シューティングしてから10時間以上挿入してるらしい。(※追記の参考サイト)
白昼堂々、目立つ場所で延々と交尾していたら天敵の捕食者に対して無防備ではないのか?と心配になります。
交尾中にアリが横を通りかかっても、カタツムリを狩るどころか体には決して触れませんでした。
アリがヒダリマキマイマイの殻に登っても、すぐに降りました。
カタツムリの分泌する粘液がアリの忌避物質を含んでいる印象を受けました。

途中から一方(早目に交尾が終了した個体?)が殻に引きこもって動かなくなりました。
繋がった交尾器を捻じるように片方だけが何度もぐるぐる回り、ようやく縁が切れました。
強引に引き千切ったのかな?

3匹目の個体も参戦して三つ巴の交尾になるかと密かに期待したのですが、そのような展開にはなりませんでした。
もしかすると既に交尾を済ませていたのかもしれません。
恋矢で刺されたカタツムリは性欲が減退するそうです。

交尾を終えたRはその場に居残りました。
一方、Lはスギナの群落を越えて向こう側に移動しました。
カタツムリが這った跡は透明な粘液で濡れていますが、やがて乾いてカピカピになります。




【おまけの動画】ノーカット完全版

特に交尾の初めのシーン(ダート・シューティングなど)は早送りしないこちらの方が見応えがあると思います。
カメラを路上に置いてローアングルから微速度撮影した後半(@1:08:30〜)は10倍速の早回し映像になります。


【参考サイト】
専門家(木村一貴氏)によるカタツムリの交尾とダートシューティングについて詳しく解説したサイト



相手の殻入り口の縁にキス
相手の殻入り口の縁にキス
相手の殻入り口の縁にキス
交尾中:路上に徘徊痕跡(乾いた粘液)


【追記】
飼育下で脱落したヒダリマキマイマイ恋矢の写真。
飼育容器の壁面にいつの間にか3個へばりついていました。
私が気づかずに掃除の際に幾つか捨ててしまったかもしれません。
大きさ(長さ)がまちまちですが、白いカルシウム質で魚の小骨のように硬いです。
先端は鋭く尖っています。
色が違うのは飼育下での汚れだと思います。

英語版wikipediaに掲載された本種の恋矢の模式図とそっくりです。





【追記2】
『科学のアルバム:カタツムリ』p14〜15にヒダリマキマイマイの交尾行動が連続写真で紹介されていました。
2匹のカタツムリは、石灰質でできた白い槍のような管をのばし、相手の首の右側めがけてさしこみました。このとき精子の入った袋を交換します。交尾が終わって2匹が別れるまで約1時間。ときには、袋の交換に失敗して、落としてしまうことがあります。

2016/06/03

キジ♂(野鳥)の求愛行動【中編:求愛ディスプレイ】



2016年5月上旬・午前6:05〜6:17
▼前回の記事
キジ♂(野鳥)の求愛行動【前編:鳴き声で♀にアピール】

先ほどキジ♂(Phasianus versicolor)が入っていった枯れ葦原の茂みの奥で何か動きがあります。
どうやらもう一羽いるようです。
早朝から♂が囀りと母衣打ちを頑張って繰り返していた甲斐があって、♀が♂の縄張りにやって来たのです。
茂みに隠れてほとんど見えず、もどかしく思っていると、ようやく広場に姿を現してくれました。
手前の柳灌木が邪魔。
まさに本に書いてあった通りの求愛誇示を披露してくれました。
♂は♀の進路を塞ぐように前方に回り込むと体の側面を見せ、広げた尾羽根で扇ぎます。
求愛された♀は迷惑そうに逃げ回ります。

動物行動学の教科書に必ず載っている有名な話として、クジャク(キジ科)は求愛の際に扇状に広げた飾り羽根の目玉模様が多い♂ほど♀にもてることが実証されています。
孔雀の求愛のように、キジ♀も♂が見せる尾羽根の模様の美しさをしっかり品定めしているのかもしれません。



オオヨシキリの鳴き声がうるさくてかき消されそうなのですが、途中でキュー、キュー♪と小声で鳴いたのは求愛されているキジ♀の声でしょうか?(@1:18辺り)
♀は広場を離れ、柳の木の下へ逃げて行きます。
残念ながら交尾したかどうか見届けられませんでした。
地味な♀は完璧な保護色になっていて、茂みに隠れて動かなければ絶対に見つかりません。



しばらくすると、諦めた♂が単独で採食を始めました。
♂が広場の地面を啄んでいると、ヨシの茂みから♀が出てきてペアで頭を突き合わせて、仲良く採食しています。
親鳥が雛鳥によくやるように、♂が♀に餌の場所を教示したように見えました。
これは一種の求愛給餌なのでしょうか?

(キジの)♂は地面を頻繁につついて、食べ物のあるところを♀に教えたり、昆虫の幼虫などをくわえて頭を持ち上げ、じっとしていたりする。こうしたときに♀は一直線に走ってそれをすばやくとる。(『日本動物大百科4鳥類II』p16より)



念願の求愛シーンが撮れて、この日一番興奮しました。
まさに早起きは三文の得ですね♪
実は3年前にこんな記事を書いています。

▼関連記事
田んぼで♀の尻を追いかけるキジ♂(野鳥)
今回の観察でようやくミッシング・リンクがつながりました。
残る撮影テーマは交尾です。

帰宅してからすぐに本を紐解いて、キジの求愛行動について復習します。


『日本動物大百科4鳥類II』p16より

キジの求愛ディスプレイ
尾羽を広げて♀に向かってはすにかまえ、翼を半開きにして、♀に近寄る。
頭はかならず下を向き、くちばしを♀に向けることはない。ほとんどの場合、♀は♂を無視して少し逃げる。すると♂は再び♀の前方にまわりこんでディスプレイをくりかえす。このため、♂が♀のまわりを円を描いてまわっているように見える。

 ♂は、♀について歩くことで交尾のチャンスをねらう。♂は突然♀に突進して、♀の背にのって交尾行動をするのである。しかし、♂の突進に気がつけば♀はちょっとわきに跳んで避けることが多いので、交尾はめったに成功しない。♂はときどき♀に対して求愛行動と思われる行動もする。それは♂同士の闘いで見せる行動と似ていて、♀の直前で尾羽を半開きにしてはすにかまえ、自分の美しい羽を♀に魅せつけるのである。これに対して、♀はたいていちょっと跳び退くか、走って避ける。するとまた♂はその♀の前にいき、同じ行動をくりかえす。この行動は1羽の♀に対して1度に数十回もくりかえされることがある。筆者はこの行動を数百回も野外で観察したが、その直後に交尾を見たことはなく、その意味については今後の研究が待たれる。


『カラー自然シリーズ45:キジのくらし』によると、

メスキジがやってきました
♂の声にさそわれて、2羽の♀が、なわばり内にはいってきました。♂は、大喜びででむかえ、ディスプレイをはじめます。(P6より)

尾羽をひらいて♀にせまる♂。
♂キジは、自分のなわばりにはいってきた♀に、美しい羽を見せびらかすようにして近づきます。肩をいからせて、翼を半分開き、腰の毛をふくらませ、尾羽を扇のように開きます。顔もまっかになります。この行動をディスプレイ(求愛誇示)といいます。
♀は、2〜6羽のグループで、♂のまわりに群れていますが、なわばりの境をこえることもあります。すると、となりの♂がでむかえ、♀のグループは、そちらでくらします。こうして♀たちは、いったりきたりするのです。

「どうだ、かっこいいだろう。」
オスキジがかたをいからせ、尾羽をひらいてせまっていくと、メスキジはひょいとにげます。
♂はあわてておいかけ、おなじしぐさをくりかえします。
チィーュチィーュ。しきりに♀の声もします。
朝はやくや夕がた、キジは交尾をします。

オスキジのディスプレイ
♂がディスプレイすると、♀はうるさそうに、ひょういと身をかわします。♂はあわてて追いかけ、また、♀の前のほうからディスプレイします。ディスプレイは5〜10分つづき、♀はしつこい♂をさけて、木の上に逃げることもあります。
ディスプレイのときは、ほとんど交尾しません。なぜ、ディスプレイするのか、よくわかっていませんが、♀の発情をうながすためかもしれません。(p8より)



小林朋道『先生、キジがヤギに縄張り宣言しています! :鳥取環境大学の森の人間動物行動学』p178-179によれば、

キジ科のいろいろな鳥の求愛行動のなかで、祖先種の特徴を残しているのが、ニワトリの求愛行動、次にキジ、そしてそれらの行動型を基礎にして最も最近現れたのが、クジャクの求愛行動だと考えられているのである。(中略)地面の餌の場所を嘴でつついて求愛するニワトリに対し、キジの求愛になると、実際に地面をつつくことはなくなるが、それでも頭を低くして嘴を地面のところまで運ぶ動作は残っている。そして、キジでは、ニワトリにはなかったあるものが♀へのアピールに加えられる。それは尻のまわりの長くてめだつ羽である。この尾羽(正確には上尾筒)が、♂が頭を下げるという動作の必然的な結果として、上方へ上げられることになり、♀によく見えるようになるのである。
下線部に関しては私の観察結果と異なります。
一例だけの反例では偉そうなことは言えませんが。


つづく→後編:採食と囀り♪


2016/06/02

キジ♂(野鳥)の求愛行動【前編:鳴き声で♀にアピール】



2016年5月上旬・午前5:55〜6:00

枯れたヨシが広がる湿地帯でキジ♂(Phasianus versicolor)が早朝から大声で鳴いていました。
縄張り宣言の鳴き声 囀りとドラミング(母衣打ち)で近所の♀にアピールしています。
手前に生えた柳の灌木が邪魔なのですが、私が下手に動いてキジに逃げられては困るので、このまま我慢して撮影を続けます。
私が気配を消して静かに撮影していると、警戒を解いたキジ♂が葦原から広場に少し出て来ました。
依然として柳の茂みが目障りですけど、キジ♂は羽繕いしています。
しばらくすると、後ろを向いたまま再びケンケーン♪と鳴き、翼をバサバサッと羽ばたいて母衣打ちしました。

キジが後ろを向いている隙に私は忍び足で少しだけ移動して、ようやく撮影アングルを確保しました。
後ろから見ると、ピンと立った耳羽がよく目立ちます。
豪華絢爛で美しい羽毛を鑑賞していると、キジ♂は向きを変えて右手に歩き出しました。
広場から枯れ葦原へ戻ってしまいました。
隠し撮りしている私の存在などキジ♂は先刻承知なのかもしれません。
カメラを嫌って茂みへ逃げ込んだのかと落胆しつつも粘って待つと、新たな展開がありました。

つづく→中編:
求愛ディスプレイ

映像の最後で♂が移動したのは、勇ましい鳴き声に惹き寄せられた♀を出迎えに行ったのかもしれません。



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