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2010/12/27

ヒノマルコモリグモを曳くクロクモバチ




2010年6月中旬

獲物を運搬中のクモバチを発見。
蜂は獲物の歩脚を咥え、後ろ向きに引きずって歩きます。
用水路沿いの道を横切り、潅木に覆われた斜面をどんどん登って行きます。
細い枝の上も構わず渡って運びます。
落ち葉の中に何度も獲物を落としては探しに戻ります。
行き先を偵察しているのだろう。
毒針で麻痺させられた獲物は歩脚や触肢が弱々しく動くだけ。
闇クモ画像掲示板で問い合わせたところ、獲物のクモは写真鑑定でヒノマルコモリグモ♀(Arctosa ipsa)と教えて頂きました。


蜂の体は真っ黒なのに単眼の周囲だけ白いのが目立ちます。
右中脚の付け根にタカラダニらしき赤い虫が付着していました。
今回もクモバチの巣まで追跡できませんでした。
薄暗い潅木の茂みの中を這いつくばるように接写しながら蜂のスピードに付いていくのは至難の業でした。
蜂を警戒させないよう望遠で狙うべきだったかもしれない。
同定してもらうため、蜂を採集して持ち帰りました。
残念ながら今回もクモは落ち葉に紛れて見失ってしまいました。
落ち葉の下の既存坑に運び込んで素早く産卵したのだろうか。
蜂類情報交換BBSにて問い合わせたところ、蜂はクロクモバチ属の一種と教えて頂きました。




2010/12/22

オオモンクロクモバチが獲物を巣坑に搬入





(つづき)
▼前回の記事オオモンクロクモバチ♀のアリ対策

2010年7月下旬

営巣地探索からオオモンクロクモバチ♀(=オオモンクロベッコウ;Anoplius samariensisが戻ってきました。
草むらに放置した獲物のスジアカハシリグモ♀(Dolomedes saganus)を探し回るもなかなか見つけられないでいます。
ようやく発見すると、しばしの休憩後に運び始めました。
営巣地の選定にかなり手間取りましたが(2時間!)、決まると最後の運搬作業は迅速でした。
クモを咥えると後ろ向きで一目散に歩いて行きます(後退地上運搬)。
クモが地面の障害物に引っかかって悪戦苦闘しています。
ヒメクモバチのように麻酔した獲物の歩脚を切り落とせば運搬は楽になりそうな気がします。
しかし歩脚が無いと草上に引っ掛けられなくなり、アリに持ち去られる可能性が高まるのでしょう。
映像をよく見ると蜂は獲物を大顎で咥えて引きずっているのではなく、少し持ち上げて運んでいます。
数回の小休止と偵察を挟んで運搬します。
もはやゴールが近いので、獲物から離れる際もわざわざ草上に引っ掛けたりしません。
あれほど念入りに選定した営巣地は落ち葉の下の隙間で、人間が上から見ても何の変哲も無い場所です。
後ろ向きのまま獲物を搬入しました。
初めに麻酔したクモを置いた草むらから目測で約3mの地点。 
クモバチ科の蜂は独房に獲物を一匹貯食する毎に産卵するはずです。
残念ながら地中での様子は分からず、産卵および巣坑の閉鎖行動は見届けられませんでした。
搬入後20分ほど粘って蜂が潜った場所を監視してみたものの、同じ穴からは出てきませんでした。
数分後に離れた場所からひょっこり現れた蜂が同一個体なのかどうか定かではありません。
観察打ち切り時(18:00 PM)の気温は28℃。
日が暮れる前に決着が付いて一安心。
心地良い疲労です。
(シリーズ完)


 ≪参考図書≫
『本能の進化:蜂の比較習性学的研究』 岩田久二雄 眞野書店 p98より 
本種は狩猟行動が掘坑に先行するタイプであり、「地中の小動物の坑を入ってから、暗黒のところで狩猟運搬後に自ら巣坑をほるのである。」

『狩蜂生態図鑑』p80によればオオモンクロクモバチは
地中深くに営巣するため、巣を調べるのは困難。 


オオモンクロクモバチ♀による麻酔手術





(承前)
獲物を同定するためにオオモンクロクモバチ♀(オオモンクロベッコウ;Anoplius samariensisが少し離れた隙を狙って、葉上に放置されたクモの側面と眼列を接写。
次に麻痺状態のクモをピンセットで摘んで定規の上にクモを移動し採寸(体長14mm)。
腹部腹面に外雌器を認めました。
獲物は色彩変異型のスジアカハシリグモ♀(Dolomedes saganus)でした。


営巣地の偵察から戻ってきた蜂が獲物を探し回ります。
目の前の定規の上に置いてあるのにも関わらず、記憶(匂い?)を頼りにまず草上を探しました。
辺りを一回りしてようやくクモを発見しました。
このとき蜂も定規の上に乗ったので体長が分かります。




ちょっと見えにくいのですが、毒針でクモを再び刺し、麻酔手術を行ったようです。
麻酔が不十分で覚醒したクモが留守の間に勝手に移動したと思ったのだろうか。
再び獲物を咥えて葉上に運び上げました。
教科書通り、歩脚を振り分けて草の葉に引っ掛けています。

▼その3へ続く
オオモンクロベッコウの喧嘩

オオモンクロクモバチ♀がスジアカハシリグモ♀(蜘蛛)を運ぶ





2010年7月下旬

草刈りのされた用水路横の土手で獲物を運んでいるオオモンクロクモバチ(旧名オオモンクロベッコウ;Anoplius samariensis)を発見。
狩りのシーンは見ていませんが、獲物は色彩変異型のスジアカハシリグモ♀(Dolomedes saganus)と後に判明。
歩脚の根元を咥えて後ろ向きに歩いて運んでいます(後退地上運搬)。
歩脚は切り落としていないため、地面の障害物に引っかかって運びにくそうです。
しばらく進むと地面に獲物を残し、行き先を見定めるため少し離れました。
獲物の元に戻ると、腹端を曲げてクモの歩脚の根元に何度か素早く毒針を刺しました。
念入りに麻酔手術をやり直しているようです。
運搬中に獲物が何かに引っかかる度に刺している気がします。
クモが抵抗していると感じるのだろうか。
『ファーブル昆虫記』を読んで以来、クモバチの麻酔手術を目の当たりにしたのは初めてなので感動しました。


運搬を再開すると獲物を草の葉の上に持ち上げ、引っ掛けて置きました。
横でしばし身繕い。

▼その2へ続く
オオモンクロベッコウによる麻酔手術


 この蜂が人を刺しにくることはありませんが、素手で捕まえようとしたりすると刺されることがあるそうです。
その痛みは相当なものらしい。


2010/12/16

オオフタオビドロバチが青虫を搬入




2010年8月上旬

(つづき)

竹筒内の空室に卵を産むと、オオフタオビドロバチ♀(Anterhynchium flavomarginatum)は再び狩りに出かけました。
麻酔した青虫(種名不詳)を一匹ずつ空中運搬し、貯食していきます。
一つの育房に数匹の獲物を搬入します。
後ろ向きに出てくると口に咥えたゴミ(竹の髄)を空中で撒き散らしながら飛び去りました。
午後になると竹筒に西日が直接当たるようになりました。
遠くで鳴っていた雷が近づいてきたので、観察を打ち切りました。気温34℃


後日、営巣の完了した竹筒を回収しました。
竹を割って中の様子を調べ蜂の子を飼育開始(つづきの記事はこちら)。
文献によると本種は二化性とされているので今年中に成虫が羽化するはずですが、どうでしょう。


 ≪参考≫
 『ドロバチのアオムシがり』 岩田久二雄 文研出版 
(オオフタオビドロバチの生活についての児童書ですが格好の入門書です)

ハチのかんさつ―竹づつにあつまるハチたち』p8によると、
泥壁で入り口を塞ぐと、オオフタオビドロバチは、かみくだいた木の繊維で壁の表面を塗ります。この加工で、雨水にも溶けないじょうぶな壁ができあがります。


オオフタオビドロバチ♀が巣材の泥玉を搬入




(承前)
竹筒トラップに営巣するオオフタオビドロバチ♀(Anterhynchium flavomarginatum)を定点観察するため翌日再訪。
ちょうど蜂が青虫を搬入するところでした。
麻酔した獲物を脚で体軸方向に抱えたまま飛んで来てそのまま頭から竹筒内に貯食するとまたすぐに外出しました。
前日に貯食していた竹筒は使い切ったようで既に泥で閉鎖され、その一つ上にある竹筒で新たに営巣しています。


竹筒を横から望遠で監視したまま待っていると、次からは泥玉を咥えて帰巣するようになりました。
泥の巣材で育房間の隔壁を作っているのでしょう。
狩り・貯食モードよりも帰巣頻度が短くなりました。
中でしばらく作業すると、後ろ向きに出て来た蜂は口にゴミを咥え、辺りに撒き散らしながら飛び去りました。
スポンジ状をした竹の髄を掃除して空間を広げているのでしょう。
竹筒の奥から順に育房を作っていきます。
昼休みなのか長時間巣から出てこないこともありました。 


ここで一回ちょっとした実験をしてみました。
蜂が留守の間に竹筒に枯草の茎を軽く刺し込んでみます。
帰巣を少し妨害することで時間を稼ぎ、蜂が口に咥えたものをよく確認できるという撮影テクニックを教えてもらったのです。
巣材集めから帰った蜂は見慣れない障害物に少し戸惑ったようですが、そのまま強引に頭から竹筒内に入り、中から枯草を蹴落として取り除きました。
私の予想としては、障害物を大顎で取り除きたくても口には泥玉を咥えているので荷物をいったんどこかに下ろしてから除去し、改めて搬入すると思っていたのですが、外れました。

この日は気温35℃で無風。
からっと晴れて蒸し暑さはなく、日傘をさせば長時間の連続観察も快適でした。
パート3に続く)


オオフタオビドロバチ♀の芋虫搬入




2010年8月上旬

借坑性の蜂を観察するため5月上旬に設置して以来3ヶ月間見向きもされなかった竹筒トラップに、ようやく営巣してくれる蜂が現れました。
女竹の筒は雨のかからない軒下南面の資材置き場で西を向けて10本束を水平に設置しました。

その竹筒からオオフタオビドロバチ♀(Anterhynchium flavomarginatum)が狩りに飛び立ちました。
竹筒内に詰まった髄をほじり出して利用しており、既に入口を泥で閉鎖した竹筒も見受けられます。
しばらくすると麻酔した芋虫(青虫)※を脚で腹に抱えたまま帰巣しました(空中運搬)。
獲物の搬入・貯食シーンを初めて、それも2回観察できました。
中に貯食するとすぐに後ろ向きで外に出て来ます。
気温35℃。


帰巣間隔や前兆が分からなくても、三脚に固定したカメラで竹筒入り口を狙い愚直に長撮りを繰り返すことで貯食シーンをものにすることができました。
あとは動画編集でなんとかなります。
その2へ続く)


※ 本種の獲物としてメイガ科やハマキガ科、ヒメハマキガ科などの幼虫を狩ることが報告されています。
参考資料として「森林総研 日本竹筒ハチ図鑑」の掲載ページはこちら


2010/12/12

オオハキリバチの貯食行動2




2010年9月上旬

(つづき)

オオハキリバチ♀(Megachile sculpturalis)の貯食作業が続いています。
花蜜を吐き戻すのは簡単ですが、スコパに付いた花粉を掻き落とすためには入口で向きを変え後ろ向きに入り直さなければなりません。
方向転換に毎回かなり手間取ります。
逆さまの姿勢で材木の平らな部分にぶら下がらないといけないので、尻で巣口を探し当てられなかったり脚を滑らせて落ちたりします。
それでも七転び八起きでアプローチから何度もやり直します。

(次回、塩分補給編に続く。)

オオハキリバチの貯食行動1




2010年9月上旬

翌朝いそいそと様子を見に行くと、オオハキリバチ♀(Megachile sculpturalis)は既に働いており前日作った育房にせっせと貯食していました。
観察開始時の気温は25℃。
きな粉のような黄色い花粉を腹面のスコパにびっしり付けて帰巣すると、まず頭から巣穴に入ります。
中の様子は見えませんが、おそらく胃から花蜜を吐き戻しているのでしょう。
後退して出てくると巣口で方向転換します。
尻から穴に入り直します。
集めてきた花粉を掻き落とし、花蜜と混ぜて団子状に練っているのでしょう。
次に外出するとき、スコパはきれいになっています。
この貯食の手順は一貫して変わりません。


オオハキリバチの主な花資源植物としてクズ(葛)が知られており、これから花粉と花蜜を集めて花粉団子を作り、その表面に産卵するそうです※。
確かに蜂が飛んで行く先の斜面はクズが繁茂し花をたくさん咲かせています。




巣口でぶら下がりながらの方向転換に毎回かなり苦労しています。
何度も滑落したり尻で巣穴をなかなか探り当てられなかったり、散々失敗した挙句、横の丸太で小休止することもありました。
ベタベタした樹脂を巣材としている筈なのに、滑り止めの効果は無いのだろうか。
(つづく)


 ※≪参考≫ 『ハチとアリの自然史:本能の進化学』 北海道大学図書刊行会 第4章「オオハキリバチとその労働寄生蜂の生活」 p71より 




≪追記≫ 
実際の訪花シーンは観察できませんでした。
蜂の体や巣内から花粉を採集して専門家が顕微鏡で調べればクズの花粉だと同定できるのかもしれません。

2010/12/11

エントツドロバチの貯食活動




2010年9月中旬・気温28℃

木の手摺りに昔クマバチが穿坑した巣穴を再利用して(借坑性)あちこちにエントツドロバチOrancistrocerus drewseni)の巣があり、集団営巣地の様相を呈しています。
材の下面に開いた穴に泥で作られた煙突状の入り口が覗いています。
特徴的なこの煙突は巣が完成すると取り払われます。
泥玉を運んだり芋虫を運搬したり、蜂が何匹も出入りしているのでどうしても目移りしてしまいます。
今回は初めて見る貯食行動の観察に集中しました。
つまり、一つの巣に注目して蜂の活動を追うのではなく、あちこちの巣で獲物を搬入する蜂(複数個体)の映像をまとめました。


材の側面が朽ちて中が剥き出しになっている部分に先程フタスジスズバチが侵入して荒らしていたのですが、巣穴の主が獲物を抱え戻ってきました。
留守中に侵入していたヨツボシオオアリが入れ替わるように慌てて外に出てきました。
横向きの煙突の手前にある控え室のような空間に数匹の芋虫が無造作に置かれていて(捨てられていて)、これを蟻が狙っています。
やがて中からエントツドロバチが一匹の麻痺した芋虫の胴体中央を咥え巣の外に捨てました。
狩りモードのはずなのに自分の貯食物として煙突内に搬入しないのが不思議。
麻酔手術に失敗した芋虫で腐ったりカビが生えたりしたのだろうか。
それとも、この木の手摺りに外から産卵管を盛んに突き立てて回っているシリアゲコバチに寄生産卵された芋虫を見抜いて捨てたのだろうか。
断片的な観察ではよく分かりません。


獲物は褐色の芋虫で、蜂の体長より少し短いようです。
メイガ、ハマキガ、キバガ、ヤガなどの蛾の幼虫を狩るそうです。
近くの雑木林に狩場があるのだろう。
毒針で麻酔した芋虫の尾端付近を咥えて背に跨るように(腹合わせ?)抱えて空中輸送します。
従って芋虫の頭部は必ず蜂と逆を向いています。
蜂は手摺りに着地すると材の下面を逆さまに歩いて煙突に搬入します。


本種は亜社会性のドロバチで母♀が育房内の幼虫の成長に合わせるように餌を少しずつ運ぶそうです(随時給餌)。
他のドロバチよりも産卵数が少なく営巣のペースが緩慢なので身近な普通種なのに定点観察しても今まで貯食行動を見れませんでした。
今回生息密度の高い営巣地を発見したことで念願の貯食行動を繰り返し見れて大満足。
来季はここに竹筒トラップを設置したり蜂を個体識別したりすれば随時給食の様子も調べられそうです。


≪参考≫ 『ハチの博物誌』 青土社






どなたかこの芋虫の名前が分かる方がいらっしゃいましたら是非教えて下さい。
どの科に属するか、だけでも助かります。

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