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2018/06/04

アカオニグモ♀の卵嚢作り:その3(蜘蛛)【10倍速映像】



2017年11月上旬・午前7:10〜10:40
▼前回の記事
アカオニグモ♀の卵嚢作りと産卵:その2(蜘蛛)【10倍速映像】

橙色の丸い卵塊がフワフワの白い糸で包まれていきます。
アカオニグモ♀(Araneus pinguis)が卵嚢の下面にぶら下がった状態でグルグル回る動きを止めました。
遂に卵嚢が完成したようです。(@13:55;午前9:29)
大きさの比較として、画面右側で奥から手前に伸びている白い丸パイプの直径は12mm。
大仕事を終えたアカオニグモ♀は、その場でピクピクと身動きしています(身繕い?)。

♀クモが卵塊の下に潜り込んで作業できる(ギリギリの)高さを見込んで、初めに天幕を張り始めていることに感嘆しました。
産卵後は腹部がペシャンコに萎むことも織り込み済みのようです。


つづく→卵嚢作り:その4(卵嚢ガード)


アカオニグモ♀(蜘蛛)側面@卵嚢:完成直後

2018/06/03

アカオニグモ♀の卵嚢作りと産卵:その2(蜘蛛)【10倍速映像】



2017年11月上旬・午前3:55〜7:09
▼前回の記事
アカオニグモ♀の卵嚢作り:その1(蜘蛛)【10倍速映像】


アカオニグモ♀(Araneus pinguis)の卵嚢作りが続いています。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。
作りかけの天幕(卵嚢の天井部)にぶら下がって休んでいた前半部分は編集でカットしました。

明け方になると、糸を紡ぐ作業のピッチが急に上がりました。
アカオニグモ♀は休みなくグルグル回りながら天幕シートに糸疣を繰り返し打ち付けて糸を張り続けています。
サボりながら作業していたこれまでとは打って変わり、一気呵成に卵嚢上部を作り上げます。

私がようやく就寝したので、クモ♀が警戒を解いて本格的に作業するようになったのでしょうか。
やはり、最も無防備で危険な産卵行動のタイミングを天敵の活動が少ない夜明けに合わせるために、時間調節していた(サボっていた)のかもしれません。
だとすれば、どのようにして時刻を知るのか、気になります。
撮影用のLED照明を夜通し点灯しっぱなしだったので、視覚による日照情報では時刻を判断できないはずです。
クモが体内時計を持っているか、早朝の最低気温を感知して、時刻を判断したのだと思います。

ちなみに、この日の日の出時刻は午前6:07。
もちろん、この一例だけでは結論は出せません。

クモが作業を止めて静止したと思いきや、いよいよメインイベントの産卵が始まりました。(@9:21;時刻は日の出直後の午前6:20)
出来上がった白い天幕の下面に押し付けるように生殖口から産卵し、橙色の卵塊が少しずつ大きくなります。
オレンジ色のピンポン球を小さくしたような卵塊です。
大きさの比較として、画面右側で奥から手前に伸びている白い丸パイプの直径は12mm。

丸い卵塊がこぼれたり落ちたりしないで天幕にしっかり付着しているのは、卵が粘液で包まれていて粘着力があるためでしょう。
もしヒトが同じ課題を与えられたら、まず容器(卵嚢)の底を作ってから中に産卵し、次に上から蓋をするでしょう。
重力に縛られた発想しかできないのです。
クモのやり方は重力があるのに上下逆で、どうして進化したのかいつも不思議に思います。
もし無重力の宇宙ステーションで飼育したら、クモはどんな卵嚢を作るのでしょうね?

卵を産み終わったアカオニグモ♀は、卵塊の下面を糸で包み込み始めました。(@10:52〜)
卵塊を中心としてクモ自身が回転しながら丹念に糸を紡いでいます。
クモの回転の向きは時計回りだったり反時計回りだったりと、特に規則性は無いようです。
産卵前は丸々と膨らんでいた♀の腹部がペシャンコに萎んでいるのが印象的。


つづく→卵嚢作り:その3(完成)


2018/06/02

アカオニグモ♀の卵嚢作り:その1(蜘蛛)【10倍速映像】



2017年11月上旬・午後13:22〜翌日の午前3:48
▼前回の記事
糸を引いて懸垂下降するも水面を忌避するアカオニグモ♀(蜘蛛)【3倍速映像】

飼育下でアカオニグモ♀(Araneus pinguis)に造網させようと悪戦苦闘してきましたが、私が提供した足場でクモは思うように振る舞ってくれません。
本を参考にして、脱走防止のために大型水槽の底に水を張っていたのですが、水難事故が繰り返されました。
さすがに可哀想になって、水を抜くことにしました。
この♀成体は円網を張りたいのではなくて、卵嚢を作る場所を必死で探しているのではないか?と思い始めたからです。
乾いた水槽の底をアカオニグモ♀はひたすら徘徊・探索していました。

一晩放置して朝になると、水槽の底の物陰にアカオニグモ♀は小さな不規則網?を張ってその中で休んでいました。
水槽の底に敷いたダンボールの上、木製トイレットペーパーホルダーと物干し枠に囲まれた隙間です。
ただの住居網でしょうか?
しばらく様子を見ていると、どうやらここに卵嚢を作り始めたようです。
(動画はここから。)

卵嚢作りの一部始終を微速度撮影で記録してみました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。
大きさの比較として、画面右側で奥から手前に伸びている白い丸パイプの直径は12mm。

この居心地良さそうな隙間でクモはぐるぐる回りながら周囲の足場に糸を張り巡らせています。
様々な材質の人工物(プラスチック、木、ダンボール紙)に対してもクモの糸はしっかり接着しています。


次に、アカオニグモ♀は自分の体の上を覆うように、ドーム状の天幕を作り始めました。
上から見ると円形の天幕がほぼ水平に張られます。
これがやがて卵嚢の天井部分になるのです。
天幕にぶら下がる姿勢でほとんどの作業を行いますが、ときどき地面に下りたりもします。
休み休みしながら、この天幕を断続的に作っています。
網のような天幕の裏面にぶら下がり、自らグルグルと回りながら腹端を上下に動かし、糸疣を天幕に付けて管状腺から出る糸を張っていきます。
クモ自身が回る向きは時計回りだったり反時計回りだったりと、一定していませんでした。
糸を紡いで作る構造物という点では同じですが、当然ながら、獲物を捕らえるための円網を張る動き(作り方)とはまるで違います。

実は作業時間よりも休んでいる時間の方が長かったです。

計24回の休憩タイムは退屈なので、編集でカットしました。
(休息も含めたノーカット版の動画は記事を改めて公開します。)

絹糸腺(管状腺)が枯渇する度に、回復(糸の材料を合成)を待っているのでしょう。
この個体に対して後ろめたいことがある私は、彼女が体力を消耗して息も絶え絶えなのではないかと、気が気ではありません。
卵嚢を作り始めるまでに私の世話(飼育)が上手く行かなかったので採集後の貴重な数日をロスしてしまい、おそらく栄養状態が万全ではなかった(飢えていた)はずです。
それだけでなく、数回の水没事故(溺れそうになって酸欠状態?)を経た個体なので、産卵行動を司る神経系に何らかの後遺症が残っているのではないか?という心配もあります。
円網ではなく卵嚢を作りたいという♀の意図を早く汲んでやるべきでした。(産ませてよ!)
果たして卵嚢を最後まで完成してくれるでしょうか?
私がクモの卵嚢作りを観察するのは、イオウイロハシリグモ、ジョロウグモ以来です。
アカオニグモは元々ゆっくり卵嚢を作る種なのかな?
気温の低い野外では、更に緩慢な動きのはずです。
楽観的に考えれば、最も無防備で危険な産卵を夜中に行うように、時間を調節している(適当にさぼっている)のかもしれません。

前日に比べて、アカオニグモ♀の腹背の赤みがどんどん増した気がします。(照明の具合?)
クモを採寸し忘れたのが残念。
底に敷いたダンボールは初め水滴が染みて濡れていたのですが、次第に乾いてきました。

撮影中にときどき測った室温および湿度の記録です。(1日目のみ)
午後14:28 25.4℃、44%
午後16:05 25.6℃、42%
午後18:10 24.6℃、41%

晩秋の外気温に比べたら、かなり高温です。


つづく→卵嚢作り:その2(産卵)


【参考】
遠藤知二『まちぼうけの生態学:アカオニグモと草むらの虫たち』によれば、

アカオニグモ(コガネグモ科オニグモ属)
形態: ♀は成熟するにしたがい、おなかの色が黄白色から赤色へかわる。♂のおなかの色は黄白色のまま。
生活史: 産卵期は9〜10月。秋に産まれた卵は雪の下で越冬し、翌春に孵化。 (月刊たくさんのふしぎ2011年8月号p5より引用)


少し古い本ですが名著の誉れ高い、千国安之輔『クモの親と子(観察の本4)』を紐解くと、アカオニグモの生活史を丹念に観察記録した章があります。
しかし卵嚢作りの過程を千国先生は見ておられないようで、次のような記述と越冬後の卵嚢(および幼体の団居)の写真しか掲載されていませんでした。

 秋の終わりごろになると、アカオニグモの母グモは、地面のくぼみを利用して袋を作り、卵をうみます。
卵は雪の下で冬を越し、翌年5月なかばに孵化します。



いつもお世話になっている『クモ生理生態事典 2016』サイトでアカオニグモの産卵について調べた成果を抜き書きします。

・産卵期は10~11月で,地中のくぼみに卵のうを作る
・卵のうは半球形で直径2.5cmぐらい.卵を包む糸は黄色. 寒い地方では秋に産まれた卵は深い雪の下で越冬し,翌春ふ化.
・樺太では,産卵期は9月中旬~10月上 旬.卵のうは円形,半球状で直径2.5cm,高さ1.5cm.卵数は1546個.
・雌は産卵後1~2週間にて死亡
・地面のくぼみに産卵.出のうは5月中旬・葉や茎でまどい,その後分散



アカオニグモ♀(蜘蛛)@卵嚢作り開始
アカオニグモ♀(蜘蛛)@卵嚢作り開始
アカオニグモ♀(蜘蛛)@卵嚢作り2日目
アカオニグモ♀(蜘蛛)@卵嚢作り2日目

2018/05/31

糸を引いて懸垂下降するも水面を忌避するアカオニグモ♀(蜘蛛)【3倍速映像】

2016年10月上旬〜下旬

私のフィールドは、アカオニグモAraneus pinguis)の生息数が多い北国です。
造網行動の一部始終を観察したいのですが、未だ幾つか見逃している過程が宿題として残されています。
造網は通常、夜間に行われるため、フィールドに通って観察するのは大変です。
そこで室内飼育で造網を再現できないか、あれこれ試行錯誤しています。
飼うだけなら比較的簡単なのですが、撮影しやすい条件との両立がなかなか難しいのです。

フィールドで生け捕りにしてきたアカオニグモ♀を部屋に放し飼いにしてみると、天井隅に小さ目の垂直円網を張ってくれました。
チョウやトンボなどの生き餌を網に給餌して、一時期アカオニグモを室内で飼っていました。
しかし壁や天井が白いため、肝心のクモが張る糸や網が見えにくく、撮影には不向きです。(部屋全体を黒く塗り直す訳にもいきません…)


アカオニグモ♀(蜘蛛)@室内天井隅+食べ残しモンシロチョウ
アカオニグモ♀(蜘蛛)@室内天井隅+食べ残しアキアカネ
飼育下で成熟し、腹背が赤く色づいた。

蚊帳や網室の中にクモを放し飼いにする方法も考えましたが、未だ試していません。

動画に撮ったときに背景がゴチャゴチャしているのはなるべく避けたいのです。


クモ関連の本などでよく紹介される方法は、四角い木枠を2枚のガラス板で挟んだ箱を自作し、ガラス板の隙間に造網性クモを入れて飼うという方法です。
私は工作が得意ではありませんし、お金もかかりそうなので、腰が重いです。

今森光彦『クモ (やあ! 出会えたね 4)』という本(写真集)を読んでいたら、コガネグモの造網観察法として面白いアイデアが書いてありました。

いくら根気よく見ていても、網づくりをつづけてくれません。
考えたすえ、家にクモをつれてきて、網をはってもらうことにしました。
しかし、部屋のなかにはなすと、クモはすぐに上へかけのぼり、天井のすみに、でたらめな糸をはりめぐらすだけです。(中略)
そこで、竹を組み合わせて枠をつくり、クモがにげないように、下に水をはって立てました。
竹枠に、クモをそっとはなしてまちます。


昆虫写真家の筆者はこの方法でコガネグモの造網過程の一部始終を見事な連続写真で記録しています。
私もこの作戦を真似してみることにしました。

タオル等を干すための小型の物干しスタンドを網作りの土台(立体的な枠)として使ってくれることを期待して、ここにアカオニグモ♀成体を乗せてみます。
大きな水槽の代わりに衣装ケースのプラスチック製引き出しを再利用し、この大きな箱の中に物干しスタンド(縦42cm×横32cm×高さ50cm)を立てました。
そしてクモ脱走防止のため、容器の底に水を張りました。
さあ、こんな人工的な環境で果たしてアカオニグモ♀は造網してくれるでしょうか?






柳の灌木を利用して造網し昼間は柳の葉を糸で綴った隠れ家に潜んでいたアカオニグモ♀成体を水辺の堤防付近で採集してきました。(2017年10月下旬)

地上から隠れ家までの高さを測ると、約165cm。


アカオニグモ♀(蜘蛛)@隠れ家:柳葉
アカオニグモ♀(蜘蛛)@隠れ家:柳葉+垂直円網





2017年11月上旬

前置きがすっかり長くなりました。
いよいよ本題です。
あまりにもクモの動きが緩慢なので、3倍速に加工した早回し映像をご覧下さい。
動きがゆっくりでもオリジナルの動画を見たい人は、下に掲載した動画をご覧下さい。

スタンドの上(高さ50cm)から糸を引きながら懸垂下降していたアカオニグモ♀の背中が水面に触れると、慌てて引き糸を登り返しました。
たるんだ引き糸が室内の微風でたなびいています。
このような上下動を繰り返しているところを見ると、やはりクモは水面を忌避しているようです。

物干しスタンドのワイヤー(長さ42cm)に沿って綱渡りのように往復移動しながら糸を何重にも張り始めました。
造網を開始してくれたと思い込んでいた私は、これがいずれ枠糸または橋糸になるのだろうと考えていました。


次に、枠糸の中間地点から糸を引きながら懸垂下降しました。
これはまさに、網を張り始める際のY字型の縦糸の作り方とそっくりです。
引き糸の下端をクモは地面のどこかに固定したいはずですが、水面に触れたクモは慌てて引き糸を登り返しました。
物干しスタンドに戻ると、水平に張られた橋糸を右往左往して補強しています。

途中から私は、水を張った容器の底に陸地として木製の台(キッチンペーパーホルダー)を入れてやりました。
懸垂下降してきたクモが木の棒の天辺に着地すると、下まで伝い降りました。
すぐにまた引き糸を登り返しました。
1箇所でも容器の下部で糸を固定できたら、造網のための枠糸を張る手がかりが得られただろうと私は楽観的に思いました。
ところがクモは私の思い通りには動いてくれず、先程と同じように橋糸の補強と懸垂下降、水面忌避という動作を繰り返しています。

見ていてもどかしくなります。
おそらくクモも途方に暮れていたことでしょう。(ストレスに感じていた?)
私は物干しスタンドの全体像を俯瞰で見渡せるので、クモも造網の土台として使ってくれるはずだと期待したのです。
ところが造網性クモは体が小さい上に視覚が悪いために、歩き回って探索しないと周囲の環境を把握できないのでしょう。

今思えば、クモが橋糸の真ん中から下にY字型の縦糸を張ろうとしていた地点の直下にも陸地(島)を作ってやるべきでしたね。
実は真夜中に思いつきで始めたテキトウな飼育実験なので、私も眠くて頭が働きませんでした。

物干しスタンドの縦のメイン支柱をようやく見つけたクモは、これを伝って降り始めました。
下に置いた木台(キッチンペーパーホルダー)に辿り着いたクモは、ウロウロと徘徊。
容器の底からプラスチックの壁面を登ろうとしても、足の爪が滑って登れません。
はずみで水面に落ちてしまいました。
溺れそうになっても自力で引き糸を登り返して難を逃れました。

(映像はここまで。)

室内の照明があると造網を始めてくれないのかと思った私は、消灯してクモを放置しました。
ところが翌朝見ると、水槽にアカオニグモ♀が浮かんでいました。(溺死?)

明かりを消すと、水面が分からなくなってしまうのかな?
ぐったりしたクモを慌てて救出して、物干しスタンドの止まり木に戻してやりました。
歩脚に軽く触れると反応したので、死んではいないと分かり一安心。
やがて元気を取り戻して活動を再開してくれました。

その後もクモは探索行動を続け、私が目を離すと水難事故が繰り返されました。
まさか飼育環境に絶望したクモが入水自殺したのだとしたら、申し訳ないです。


造網性クモは網を使ってしか獲物を捕食できません。
したがって、この個体を野外で採集してきて飼育を始めて以来ずっと(数日間)餌を食べられず、私もやきもきしていました。
牛乳などを強制給餌すべきか迷いましたが、一般にクモは飢餓耐性が強いので大丈夫だろうと判断しました。


アカオニグモ♀(蜘蛛)@水没:容器内
アカオニグモ♀(蜘蛛)@水没後救出

止まり木に戻すと、元気復活。

いかにも素人臭い(お遊びのような)実験の失敗談で、お恥ずかしい限りです。
このブログは個人的なフィールド撮影日記(飼育日記)なので、なるべく失敗したことも記録することにしています。
書き残しておかないと失敗したこともすぐに忘れてしまい、同じ過ちを繰り返してしまうのです。
水を嫌うアカオニグモ♀の行動が面白かったというのも、記事にした理由の一つです。

もし私がクモをわざと水に何度も直接落として溺れさせたりしたら動物虐待だと非難されることでしょう。(炎上案件)
しかし今回アカオニグモ♀が落水して溺れそうになったのは全く予想外でした。
そもそも、本の記述(撮影ノウハウ)を参考にして(多少アレンジして)始めたことです。

しかし生き物は、なかなか本に書いてある通りには振る舞ってくれません。
最近の動物園では猛獣を檻に閉じ込めずに、水堀などを効果的に配置した開放的な展示が主流になっています。(無柵放養式展示
これはネコ科の猛獣が水に濡れることを極端に嫌う性質を利用した展示法です。
今回の実験も同様に、クモが水面を忌避する性質を利用して網の張り方を飼育下でヒトがコントロールできるだろうという期待がありました。

消灯後に何が起きたのか分かりませんが、もしかすると、偶発的な水難事故とは限らないかもしれません。
クモが自発的に入水した可能性はあるのか、少し考えてみました。
造網に適した環境ではないとクモが判断すれば、餌を捕るために他所へ移動するはずです。
風が吹けば糸を吹き流しバルーニングで空を飛び移動するでしょう。(体重の重い♀成体が飛ぶのは無理かも?)

吹き流した糸が遠くの何かに付着すれば、糸を伝って移動することが可能です。
しかし無風の室内では、糸を吹き流すことができません。
野外でも台風や大雨で生息地が増水したり地面が水浸しになることもありそうです。
そのような緊急事態(水害)になるとアカオニグモは、水中で泳げないにしてもあえて水の流れに身を任せて新天地へ移動するのかもしれない…と妄想してみました。

なんとか飼育下でこちらの望むように造網させようと悪戦苦闘してきましたが、ひょっとすると、この♀個体は網を張りたいのではなくて、卵嚢を作る場所を必死で探索しているのではないか?という気がしてきました。
そこで次は、容器の底の水を抜いてやりました。
造網性クモはプラスチック容器の垂直壁面をよじ登れないので、水が無くても簡単には脱走されないでしょう。
すると予想が当たり、このアカオニグモ♀は産卵を始めてくれました。

つづく→卵嚢作りを開始



アカオニグモ♀(蜘蛛):腹面@垂体+外雌器
アカオニグモ♀(蜘蛛):腹面@垂体+外雌器
アカオニグモ♀(蜘蛛):腹面@垂体+外雌器


【おまけの映像】
早回し速度を色々と変えてみた動画をブログ限定で公開します。



↑オリジナル映像(1倍速)



↑2倍速映像



↑4倍速映像



2018/04/28

チャコウラナメクジとヒダリマキマイマイの競争 【10倍速映像】



2016年11月上旬・午前2:33〜2:36

ヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)とチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)を同じ容器で飼い続けています。


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チャコウラナメクジに襲われ泡を吹くヒダリマキマイマイ 【10倍速映像】

プラスチック壁面にカタツムリのすぐ横にナメクジが居たので、またナメクジがカタツムリを捕食するのかと半ば期待し、微速度撮影で記録してみました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。

しかし、後から来たチャコウラナメクジがヒダリマキマイマイを追い抜いて行っただけで、何事もありませんでした。
殻を持たず身軽なナメクジの方が蝸牛よりも速く移動できることがよく分かります。
つまり、ナメクジに追われたらカタツムリはとても逃げられません。

タンパク質性の餌として煮干しを与えるようにしたら、ナメクジがカタツムリを襲うことは無くなったようです。

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煮干しを食べるチャコウラナメクジ 【10倍速映像】



野島智司『カタツムリの謎: 日本になんと800種! コンクリートをかじって栄養補給!?』によると、

巻き貝が進化の過程で殻をなくすことを「ナメクジ化」と言います。ナメクジ化は陸貝が進化する過程でいろいろなグループで起こっています。そのため、ナメクジを一つのグループにまとめることはできません。  (p37より引用)

陸貝にとって、ナメクジ化は(中略)大きく3つのメリットが考えられます。
(1)狭い隙間に入り込める(2)体重が軽くなる(3)カルシウムを節約できる。
タコやイカも、海の中でナメクジ化した生物の一種と言えます。 (p37-38より引用)



2018/04/19

チャコウラナメクジの好物は?【10倍速映像】



2016年10月下旬・午後23:04〜23:11

これまで野外でナメクジがキノコを食べる様子を観察したことがありました。


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キノコを食べるナメクジ【名前を教えて】

てっきりナメクジはキノコが好きなのかと思い、飼育中のチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)にキノコを給餌してみました。
スーパーで買ってきた普通のシメジは気に入らなかったようで、口を付けないまま干からびたので捨てました。

(映像はここから。)

栽培されたキノコではなく山で採れたブナシメジ(ホンシメジ?)を給餌してみたら、どうでしょうか?
他には煮干しと、気紛れで乾パンも与えてみました。

10倍の早回し映像をご覧下さい。
結果は、煮干しを少し齧っただけでした。

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煮干しを食べるチャコウラナメクジ 【10倍速映像】

キノコは今回も口にせず、方向転換して立ち去りました。
ナメクジが好きなキノコは特定の種類に限られるのかもしれません。(それを突き止めたいものです)

動画を撮り始めるとナメクジはいつもすぐに居なくなってしまい、私としては物足りないです。
長撮り中の眩しい照明が嫌なのかな?
赤外線の暗視カメラで行動を監視すれば、より自然な振る舞いをしてくれるでしょうか。


2018/04/10

煮干しを食べるチャコウラナメクジ 【10倍速映像】



2016年10月下旬・午前00:33〜00:56

飼育しているチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)がカタツムリを襲った事件をきっかけに、ナメクジの生育にはタンパク質が必要らしいと知りました。


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タンパク質を補給するために試しに数匹の煮干しを小皿に入れて給餌してみます。
ダシを取るための食品ですが、若干の食塩が添加されていることが気になります。
ナメクジを含めたペットに与えるときは健康のために減塩加工された煮干しの方が良いのかも知れません。


すると早速、チャコウラナメクジは初めての餌を喜んで食べ始めました。
微速度撮影で記録してみたので、10倍速の早回し映像をご覧下さい。
しばらくすると満足したのか、チャコウラナメクジは小皿の上でUターンして立ち去りました。
死んだ魚の乾燥肉を食べただけでなく、煮干しの小骨に含まれるカルシウムを喜んで摂取していたのかもしれません。

タンパク質の餌を与えたので、これでチャコウラナメクジが同居しているヒダリマキマイマイを襲うことはなくなるでしょうか?

宇高寛子、田中寛『ナメクジ:おもしろ生態とかしこい防ぎ方』という本を読むと、ナメクジを飼育するための餌として次のように書かれていました。

容器の底には湿らせたペーパータオルを敷き、エサとしてニンジンとコオロギ用人工飼料(魚粉を固めたもの。金魚のエサに似ている)をナメクジと一緒にいれた。(中略)数日に一度、エサや容器は新しいものと交換した。(p35より引用)

一方、同じ容器で同居させているヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)も同じ小皿に登ってきたものの煮干しには口をつけずに引き返しました。
近くに置いてあったリンゴの皮に気を取られたのかな?
あるいは、近くに天敵の(以前自分を襲った)チャコウラナメクジが居ることに気づいて、慌てて逃げ出したのかもしれません。



2018/04/08

トノサマバッタ♀緑色型の産卵未遂



2017年9月中旬・午後16:49〜16:55

田園地帯の砂利が敷かれた農道で緑色型のトノサマバッタ♀(Locusta migratoria)が産卵を始めていました。
私がすぐ横を通り過ぎても跳んで逃げずに、身じろぎするだけでした。
(映像はここから。)


腹端を器用に開閉して地表面を探りながら、少しずつ掘り進めています。
西日を浴びて影が長く伸び、なかなかフォトジェニックです。
トノサマバッタ♀は太陽に対して横を向いていました。
この個体は、左の後脚が欠損しています。(-L3)

長期戦になるかと思い、少し離れた位置に三脚を立てて微速度撮影で記録してみることにしました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。(@1:47〜1:57)
しかし残念ながら、このトノサマバッタ♀はじきに穴掘りを中断してしまい、農道を歩き始めました。
おそらく土質が硬すぎるなど産卵に適さないと判断して諦めたのでしょう。
小さなクロアリ(種名不詳)が産卵中のバッタにつきまとったので、煩く思ったのかもしれません。

トノサマバッタ♀は砂利道を横断し、草むらへ逃げ込みました。
次回は産卵シーンを最後まで見届けたいものです。
♀を採集して飼育下で産ませるのが成功への早道かもしれません。


『カラー自然シリーズ44:バッタのくらし』によると、

(トノサマバッタは)一生のあいだに、多いものは20個近くの卵塊を産み残します(p25より引用)





2018/04/03

ナスとリンゴの果実を食べ排便するノハラナメクジ?【40倍速映像】



2016年9月下旬

ヒダリマキマイマイと同じ容器(大き目の水槽)でナメクジを何匹か飼っています。

台所の流しで徘徊するナメクジを見つける度に採集して、飼育容器に投入していたのです。(野菜と一緒に外から持ち込まれたナメクジ?)
餌として野菜屑を適当に入れてやると、この日はナス(茄子)のヘタが気に入った様子です。
40倍速の早回し映像をご覧下さい。

ナスの黒紫色で固い果皮には全く口を付けていません。
輪切りにした断面の白くて柔らかいスポンジ状の果肉にえぐれたような食痕が残りました。
この嗜好はヒダリマキマイマイと同じでした。

▼関連記事
ナスの実を食べるヒダリマキマイマイ 【10倍速映像】

黒い大触角を途中で引っ込めたのは、撮影用の照明が眩しいからですかね?
ナスに頭をつっこんでいる体勢のため、触角が傷つかないように引っ込めているだけかもしれません。

移動する前に、体の前方右側からオレンジ色の糞をニョロニョロと少し排泄しました。(@1:39)
糞の色は前に食べたニンジンの色素(カロチン)から来ているのでしょう。
橙色の糞がナスのへたに残りました。
ヒトのうんちは、ヘモグロビンの分解産物の色の影響が強く、食べた物の色にあまり左右されないような色(茶色系)になりますが、ナメクジが排泄するうんちは食べたエサと同じ色をしています。(p34より引用)


後半ナメクジはナスのヘタから離れ、隣に置いてあったリンゴの皮を摂食しました。
体を左右に動かしながら、皮の裏に薄く残った白い果実の部分をデザートとして食べているようです。

宇高寛子、田中寛『ナメクジ:おもしろ生態とかしこい防ぎ方』によれば、

ナメクジはゴミ食い(動植物の遺体食い)であり、生きた植物はそれほど好きではない(p83より引用)
もっと腐りかけの生ごみが好みなのかもしれませんが、飼育下では衛生面からご希望に応えられず誠に申し訳ないです。

さて、このナメクジの和名、学名が分かりません。
背中に甲羅が見えるのでコウラナメクジ科だと思うのですが、チャコウラナメクジとは違い、体の左右に黒い線が全くありません。
体全体が茶色で、素人目には特徴がありません。
体長を採寸するのを忘れました。
動画撮影中にコインでも並べて置くべきでしたね。
ヨーロッパからの外来種ノハラナメクジDeroceras reticulatum)でしょうか?
ナメクジの見分け方(簡易版)」サイトを参考にしたら、ノハラナメクジが候補に残りました。

体長は這っている時で5cm程度と小型。全体的に灰色~茶色で目立った模様は無い。
大触覚(原文ママ。「大触角」の誤植)が灰色~黒色。外来種。コウラナメクジ科。
体色が違い自信がないので、もし間違っていたら、ご指摘願います。
この検索表は「簡易版」と断っているように、国内で見られるナメクジを網羅しているとはとても思えません。

それともチャコウラナメクジ類の一種(Ambigolimax sp.)とすべきでしょうか?

日本にはチャコウラナメクジのほか、外見的によく似た複数種が侵入し、定着している。これらは生殖器の形で区別できる。(『カタツムリハンドブック』p64より引用)


※ 接写パートのみ動画編集時に自動色調補正を施しています。




↑【おまけの動画】
オリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開しておきます。



2018/03/24

チャコウラナメクジに襲われ泡を吹くヒダリマキマイマイ 【10倍速映像】



2016年10月下旬・午後22:39〜23:23

夜、いつものように飼育容器内に霧吹きしようと蓋を開けたら、その蓋の裏にへばりついて居たヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)が大量の泡を吹いていました。
同居させているチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)がヒダリマキマイマイの殻に乗って攻撃しているようです。

2匹の軟体動物による緩慢な闘争・逃走シーンを微速度撮影で記録してみました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。
(もう少し早く気づいて撮り始めていれば…。)

泡を吹きながら逃げ回るヒダリマキマイマイをチャコウラナメクジが執拗に追い回しています。
野菜屑などの餌をきちんと与えているつもりでしたが、このナメクジはひどく飢えているのでしょうか?
カラスのモビング行動(擬攻撃)を連想しましたが、まさか縄張り争いではないでしょう。
カタツムリの分泌する粘液を舐めているだけかもしれません。
ヒダリマキマイマイが這った跡に残した粘液を頼りにチャコウラナメクジが追跡していることは確かです。(本来ナメクジは夜行性ですし、その眼は光の明暗を感じる程度で周囲のものの形をみることはできないらしく、視覚で追跡しているのではありません。)

ヒダリマキマイマイが嫌がって逃げているのは分かりますが、ナメクジがカタツムリの殻に乗っているのは果たして偶然でしょうか?
映像ではどう見ても獲物として繰り返し襲おうとしているようです。
ナメクジがカタツムリを襲うとは予想だにしなかったので、初めて見る光景に仰天しました。
宇高寛子、田中寛『ナメクジ:おもしろ生態とかしこい防ぎ方』という本を紐解いてみると、ナメクジが時に獰猛な肉食性になることを初めて知りました。

ナメクジは肉も食べるということがわかる。
 実は、多くのナメクジはタンパク質を食べなくては成長することができない。ナメクジにとって一番身近にあるタンパク質は、同じ仲間のナメクジなので、生きているナメクジを積極的に食べるわけではないようだが、死んだ(または弱っている)ナメクジを食べることはある。
 日本にいるナメクジは基本的に草食・雑食性であるが、海外には肉食性のナメクジもいて、彼らはミミズや他の陸貝をエサとしている。 (p27より引用)


また、侵入生物データベースのサイトにてチャコウラナメクジが「ハマキガ類の卵塊を捕食する」との記述がありました。


徘徊速度を比べると殻を持たない身軽なナメクジにカタツムリは負けていて逃げ切れないのかもしれません。
ヒダリマキマイマイはナメクジに正面から触れた瞬間にビクッと身を縮めました。
殻口から奥に侵入できる捕食者に対しては殻の中に軟体を引っ込んで籠城するだけでは身を守れません。

サザエとは違ってカタツムリは殻口を閉じる固い蓋を持たないからです。
このような緊急時にカタツムリが自衛のために激しく泡を吹くらしいのですが、実際に見るのは初めてでした。
この泡は苦い分泌物(毒?)が含まれているのだそうです。
容器の蓋の縁を乗り越えようとするついでに、ヒダリマキマイマイは殻を大きく振り回してナメクジを振り落とそうとしました。(@1:06〜1:15)
この動きはカタツムリの第二の自衛手段です。
最後にヒダリマキマイマイが殻の中に籠城すると(第三の自衛手段)、ナメクジはようやく諦めて立ち去りました。
このときヒダリマキマイマイは殻口を容器蓋のプラスチック面に伏せているため、ナメクジは攻撃できませんでした。

思い返してみると、以前にも同居しているヒダリマキマイマイの殻や軟体部にナメクジがへばりついていることがありました。
徘徊中に偶然出会っただけかと思って見過ごしていました。
実はナメクジが競争相手を密かに一匹ずつ殺そう(捕食しよう)としていたのか?と戦慄しました。
無知な私は横着してナメクジとカタツムリを同居させてしまいましたが、別々の容器で飼うべきでしょう。

逆に言えば、素人ならではの失敗が転じて興味深い発見(セレンディピティ)ができました。


その後、ヒダリマキマイマイとチャコウラナメクジの同居飼育を続けても捕食シーンを二度と観察できませんでした。(私が見逃しただけ?)
必死で防御・抵抗するヒダリマキマイマイを手強い相手だとチャコウラナメクジが記憶して、襲わなくなったのでしょうか。
襲われた蝸牛が泡を出し始める様子をいつかじっくり見てみたいものです。
唾液で泡を立てるのでしょうか?
呼吸孔からブクブクと息を吹き込んで泡立てるのかな?
泡立ちやすい界面活性剤を含んだ特殊な粘液を急激に分泌するのですかね?
今回の映像を見直すと、ナメクジの執拗な追跡をやり過ごし殻の中に籠城したヒダリマキマイマイが泡を出したのは左側からでした。(@3:20〜3:28)

なぜ粘液を泡状にするのか?という理由を私なりに考えてみると、SF映画などでお馴染みの「バリアを張る」作戦なのでしょう。
つまり、生身の体(軟体部)に到達される手前に忌避剤を含む軽い膜を素早く張って防衛線とするのだと思います。
もし相手がアリのように小さな虫なら、何重ものバリアを突破する必要があり、かなり有効そうです。


2018/03/19

垂直円網を張るコガネグモダマシ(蜘蛛) 【10倍速映像】



2016年9月下旬・午後17:11〜17:28 (日の入り時刻は17:33)

湿地帯に近いススキの原で夕方になるとコガネグモダマシLarinia argiopiformis)があちこちで造網を始めます。
10倍速の早回し映像でご覧ください。
慌てて三脚を立てて撮り始めた時はもう縦糸張りの後半でした。
まず放射状に縦糸を張り、網の中心部から外側に向かって螺旋状に(反時計回りに)足場糸を張り、最後に粘着性の横糸を密に張り巡らせます。
横糸張りの初めに何度か回る向きを変えたのは、枠糸にしっかり固定、補強するためでしょう。
横糸張りの後半は時計回りで安定しました。
網が完成すると中央のこしき)で下向きに占座しました。

風が吹くとススキの穂が激しくなびくために、AFではすぐにピントが合わなくなります。
仕方がないので、枠糸を固定してある左のススキの茎に焦点を固定して長撮りしました。
全体的にピンぼけなのは、そのためです。

▼関連記事
コガネグモダマシ♀の造網:足場糸と横糸張り(15倍速映像) @2011年10月中旬
コガネグモダマシ♀の造網(横糸張り:4倍速映像) @2009年10月中旬

コガネグモダマシが網を張る過程の一部始終を動画で記録したくて頑張っています。

この季節になる度に何度かトライしているネタなのですが、なかなか自分でも満足の行く生態動画が撮れません。
今回も残念ながら逆光で、クモの糸や網はほとんど見えませんでした。
クモの動きから造網プロセスを想像してもらう他ありません。
縦糸張りの過程が少しだけでも撮れたのがささやかな収穫(前進)です。
どうしてもこの時期は魅力的な被写体が他にも色々とあるために、浮気症の私はすぐに目移りしてしまいます。

じっくり腰を据えて取り組まないといけませんね。
夕方で無風になる日を待つのも大変なので、やはり飼育下で網を張らせるのが近道かもしれません。




↑【おまけの動画】
長撮りしたオリジナルの動画(早回し加工する前)をブログ限定で公開しておきます。


コガネグモダマシ(蜘蛛)@垂直円網
画像処理で無理やり垂直円網を可視化

2018/03/15

ナスの実を食べるヒダリマキマイマイ 【10倍速映像】



2016年10月上旬・午前5:46〜6:15

ヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)とチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)を同じ容器で飼育中です。
餌として入れておいた輪切りのナス(茄子)の果実をヒダリマキマイマイが早朝から食べていました。
摂食シーンを微速度撮影で記録したので、10倍速の早回し映像でご覧ください。
容器内にはナスのへたとニンジンの輪切り、リンゴを剥いた皮も入れて置いたのですが、ヒダリマキマイマイが選んだのはナスの輪切りでした。
満足すると蝸牛は餌から這って立ち去りました。
ナスの黒紫色で固い果皮は全く食べず、白くて柔らかいスポンジ状の果肉にえぐれたような食痕が残りました。
このことから、もし野生のヒダリマキマイマイがナス畑に侵入したとしても、実ったナスの果実を果皮ごと食害するのは、考えにくいと思います。

それと入れ替わるように、物陰に隠れていたチャコウラナメクジが登場。
ナメクジもナスの実などを口にしたのかどうか気になりますが、映像でははっきりしませんでした。(素人目には食べていない気がします。)



【追記】
台所でナメクジを見つける度に採集して、ヒダリマキマイマイと同じ飼育容器に投入していました。
窓の外から台所に侵入したのか、それとも畑で収穫した野菜と一緒に持ち込まれたのか、どちらかでしょう。
以下の写真は2017年7月下旬の撮影。

チャコウラナメクジ@濡れた食器洗いスポンジ
チャコウラナメクジ@濡れ布巾


2018/02/22

恋矢を自ら引き抜くヒダリマキマイマイ



2016年10月上旬

夜、いつものように飼育容器内に霧吹きしていると、一匹のヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)が恋矢れんしを排出していることに気づきました。
最近もう一匹と交尾したはずですが、私は見逃したようです。

恋矢(交尾矢love dart)はカルシウムを含み,交尾前に恋矢嚢が裏返しとなることによって射出され,相手の個体の皮膚に機械的刺激を与え,交尾が終ると捨てられる.刀身状のものが多いが,紡錘形・剣菱形・三角形・山形・円形など種類によってさまざまで,分類上の重要な標徴となる. (『岩波生物学辞典第4版』より引用)


透明なプラスチック容器越しに腹面から接写すると、水滴で濡れた壁面を舐める歯舌の動きよく分かります。
体の左側面から白く長い恋矢が伸びています。
魚の小骨のように湾曲し、一端は鋭く尖っています。
交尾の際にパートナーから刺された恋矢を傷口から排出しているのでしょう。
体内にしばらく残された恋矢は痛むのでしょうか?
やがて水滴を舐めるついでに、体を左によじって恋矢にキスを始め、体に刺さっていた恋矢を口で引き抜きました。
しばらく抜けた恋矢の根元を舐めています。
もしかすると、自分の体液(血液?)やパートナー由来の粘液が恋矢に付着していて、それを栄養源として摂取しているのかな?と想像しました。

後半は微速度撮影に切り替えて記録したので、10倍速の早回し映像でご覧ください(@4:01〜)。
蛇行しながら飼育容器の壁面を登って行きます。
波打つ腹足の蠕動がよく分かります。
ヒダリマキマイマイが這った後は、透明な粘液で泡立っています。



恋矢の排出シーンを観察したのはこれが初めてです。
今回の恋矢について改めて考えると、おかしなことに気づきました。
もし体内に刺さった恋矢を引き抜いたのなら、尖った先が内側(傷口)を向いているはずです。
しかし映像を見直すと、恋矢の尖った先が外側を向いています。
これは何を意味しているのでしょう?
交尾に使われなかった自分の恋矢を体内から排出(排泄)したのでしょうか?

そんな必要性があるのか疑問です。
次回の交尾に使えば良いのでは?
あるいは、交尾で相手を刺したのに恋矢が折れなくて、排出に手間取ったのかもしれません。(恋矢は交尾の度に使い捨て?)
交尾相手から刺された恋矢が体を完全に貫いて折れ、そのまま排出したのですかね?
それとも、捨てられた古い恋矢が容器の壁面に付着していて、徘徊中の個体がそれをゆっくり乗り越えるシーンをたまたま見ただけかな?
どのシナリオが正しいのか知るためには、交尾直後から連続録画でひたすら愚直に監視するしかなさそうです。


飼育容器内に脱落した恋矢を見つける度に記念として採集してきたのですが、なぜか今回の恋矢はどこに紛れてしまったのか、採集した記憶がありません…。


▼関連記事 (背側からの観察例)
交尾後に恋矢を排出するヒダリマキマイマイ

2018/02/19

チャイロヒダリマキマイマイの起き上がり運動



クロマルハナバチの巣:定点観察#13
▼前回の記事
クロマルハナバチの古巣に侵入を繰り返し獲物を探すクモバチ♀

2016年8月下旬

丁度1ヶ月ぶりにクロマルハナバチBombus ignitus)営巣地の様子を見に行くと、一度は草刈りされていた側溝の雑草が再び生い茂り、巣穴を覆い隠していました。
山腹に車道を通した法面をコンクリートで補強していて、その壁面に開けられた排水口の一つに営巣していたのです。
コロニーの活動は終了(逃去?)していて、出入りする蜂の姿はありません。

巣口の奥を覗き込むと、珍客が侵入していました。
穴に詰まっている苔混じりの土塊と一緒に取り出してみると、なんとチャイロヒダリマキマイマイEuhadra quaesita montium)でした。

真夏に乾燥したコンクリート壁面を徘徊していて、湿り気が多少ある穴の中に避難していたのでしょう。
あるいは産卵場所を探索していたのかもしれません。
採集シーンをハンディカムで撮っていたのに、肝心の動画ファイルが失われていました。
ハンディカム本体の不調なのかSDカードの異常なのか不明ですが、この日にハンディカムで撮った映像がすべて失われました…。



チャイロヒダリマキマイマイ@採集直後@クロマルハナバチ古巣
チャイロヒダリマキマイマイ+scale
チャイロヒダリマキマイマイ裏面+scale

焦げ茶色の殻の個体でした。(※追記参照)
殻を逆さまにして路上に置いてしばらくすると、警戒を解いて起き上がり、徘徊を始めます。
軟体の左側面に見える黒くて細長い物は、チャイロヒダリマキマイマイが排泄した糞だと思うのですが、飼育下での観察と逆側なので自信がありません。
力強く起き上がる動きが面白くて、初めは微速度撮影で記録しました。
10倍速の早回し映像でご覧ください。
意外に早く起き上がることが分かったので、リアルタイムのHD動画に切り替えてから、チャイロヒダリマキマイマイを再びひっくり返してみました。
また、採寸代わりに一円玉(直径2cm)を並べて置きました。

持ち帰って飼育しようか迷ったものの、元の穴に戻して帰りました。
今思うと、カタツムリがクロマルハナバチの古巣を食害する可能性もあるので、別の穴に入れるべきだったかもしれません。

クロマルハナバチの巣穴を発掘調査するための道具をネット通販で注文しているのですけど、最安値の店を選んだばかりに、商品がなかなか届きません。
古巣の採集は次回に持ち越します。
クロマルハナバチの古巣にカビが生えたり虫などに食害されるのではないかと心配で、気が気でありません。
しかし、巣口の奥は土砂がびっしり詰まっていて、古巣は埋もれているようなので、半ば諦めています。

つづく→#14



【追記】
私が当初この個体をヒダリマキマイマイと記述していたところ、YouTubeのコメント欄にて、MEGUMI ch KOTAさんからチャイロヒダリマキマイマイではないか?という御指摘を頂きました。
これだけ、濃い個体ならば、チャイロヒダリマキマイマイだと思います。ヒダリマキマイマイとチャイロヒダリマキマイマイ、両方飼育したことありますが…チャイロヒダリマキマイマイの方が、より標高が高い所に生息しているようです。チャイロは、静岡県、山梨県、神奈川県では、私自身でも確認できました。この殻の具合も、軟体部分の模様も、山梨県で採集されて、我が家にやって来て、通算7回も産卵したチャイロヒダリマキマイマイにそっくりです。
チャイロヒダリマキマイマイとは、
ヒダリマキマイマイの亜種。殻幅50mm前後。殻の色が暗褐色で火炎彩をもつ。関東地方と中部地方の山地に分布する。(wikipediaより引用)
私も平地(標高266m地点)で交尾していたヒダリマキマイマイを採集・飼育していて、確かにそれよりも今回の個体は殻の色が濃いなと思いました。
素人ながら私が気になるのは、チャイロヒダリマキマイマイの生息地が「関東地方と中部地方の山地に分布する」と限定されていることです。
一方、今回の撮影地は山形県南部(内陸部)の低山で、標高645m地点です。
歩みの鈍いカタツムリの国内分布の定説を覆すのはとても恐れ多いのですけど、チャイロヒダリマキマイマイで間違いないということなので、訂正しておきます。
実は東北地方のカタツムリはあまりよく調べられていないのかもしれません。

今回の個体は殻口(最終層の螺管)が広がっているので、ムツヒダリマキマイマイ類ではありません。

チャイロヒダリマキマイマイとヒダリマキマイマイは亜種の関係ですから交雑可能のはずです。
試しに同居させて交尾行動を観察してみれば良かったと今になってちょっぴり後悔…。
当時は他にもあれこれと色んなことに手を広げすぎて、一杯いっぱいだったので、採集せずに帰りました。


【追記2】
野島智司『カタツムリの謎:日本になんと800種! コンクリートをかじって栄養補給!?』という本を読むと、山地性のカタツムリが黒っぽいのは一般的な傾向のようで、保護色で説明されています。
野鳥が繁殖期になると卵殻の形成に必要なカルシウムを補給するためにカタツムリをよく殻ごと捕食するという話に続いて、次のように書かれていました。

 カタツムリの殻は、海にすむ巻き貝の殻と比べて茶色っぽい地味な模様をしています。これは保護色といって、周囲の色に紛れて発見されにくいためです。実際、暗い山奥にいるカタツムリの殻は黒っぽく、明るい平地にいるカタツムリの殻は白っぽい傾向があります。
明るいところでは白っぽいほうが、空からエサを探す鳥に見つかりにくいと考えられます。同様に、高い木の上で生息する種類も、殻が白っぽくなる傾向があります。(p72-73より引用)


チャイロヒダリマキマイマイを採集後のクロマルハナバチ古巣(中には土砂が詰まっている)
その全景(側溝から生い茂る雑草をかき分けて巣口を露出している)




2016年9月上旬

クロマルハナバチの古巣の発掘

別の記事にするまでもないので、残念な結果をここに報告しておきます。(動画も無し)
8日ぶりに現場を再訪すると、側溝の雑草がより一層生い茂り、巣穴を覆い隠していました。
気になるこの植物はミズヒキですかね?
花が咲かないと私には名前が分かりません。
葉の中央部が「斑入り」のように色が変わっています。



ファイバースコープがあれば穴に差し込んで、活動中のコロニーの様子を直接観察できたかもしれません。
予算がない私は仕方なく、古巣を発掘するために長くて頑丈なピンセット(27cm)を購入しました。
普通のスコップ(移植ゴテ)では直径7cmの狭い排水口に差し込めないのです。



しかしコロニーが逃去(全滅? 解散?)してから発掘に着手するのがあまりにも遅過ぎました。
台風や大雨のせいで、巣穴(法面補強するコンクリート壁の排水口)には小石混じりの土砂がみっちり詰まっていました。
苺パック容器に一杯分の土を掘り出しても、マルハナバチの巣の痕跡は皆無でした。
古巣の育房の破片ぐらいは見つかるかと期待していたのですが、全くの空振りでした。(掘る穴を間違えたかと思ったぐらいです)
ロングピンセットでも届かないもっと奥に営巣していたのでしょうか?
奥は硬い岩(コンクリートかも?)で塞がれているような手応えで、突き当たりになっていました。

生物の痕跡としては唯一、キセルガイの稚貝を一つ発見しました。
(落胆のあまり、泥まみれになったゴム手袋を外すのも億劫で、写真も撮っていません。)
ちなみに、巣口のすぐ下のコンクリート壁面にはキセルガイの成貝が3匹居ました。


▼関連記事
キセルガイの徘徊と交尾行動?【10倍速映像】
側溝の縁を移動するキセルガイ【10倍速映像】

クロマルハナバチの古巣はカタツムリ(チャイロヒダリマキマイマイ)やキセルガイなどの陸貝、または土壌生物などに食害されたり、カビが生えてあっという間に分解されてしまった可能性も考えられます。
陸貝は排水口にたまたま迷い込んだだけかもしれませんが、分解者である蝸牛やキセルガイが栄養価の高いマルハナバチの古巣に誘引されたのだとすれば、とても面白いなと思いました。

シリーズ完。





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