2014/12/30

ミネラル摂取中に飛翔筋をアイドリング♪するヒラタアブの一種♀



2014年9月中旬

山道の休憩所に飛来したヒラタアブの一種♀が、カメラのストラップやザックに止まり口吻を伸ばして舐め始めました。
雨水や私の汗が染み込んでいる所からミネラル摂取(塩分補給)しているのでしょう。
左右の複眼が離れているため♀のようです。

翅を休めて静止している間も甲高い音を発し続けていることに気づきました。
ハナアブはホバリング(停空飛翔)の名手ですけど、飛行中の羽音よりも高い音でした。
胸部の飛翔筋を高速で伸縮させて、いつでも飛び立てるようアイドリングしているのでしょうか?
この行動の正式名称は?
この日は周囲にうるさい蝉しぐれが無く静まり返っていたおかげで気づけた現象(行動)です。

ヒラタアブ飛翔筋のアイドリングを声紋解析してみる

いつものようにオリジナルのMOV動画ファイルから音声をWAVファイルにデコードし、適当に切り出してからスペクトログラムを描いてみました。
すると何やら思わせぶりな声紋が得られました。
飛び立つ前後でスペクトログラムに劇的な変化が現れるかと期待したのですが、低周波成分が少し増えるだけで、素人には違いがよく分かりませんでした。 

※ 16kHz付近に持続する強いシグナルがあり、その半音の8kHzが逆にすっぽり抜けている、という謎の現象はこのビデオカメラに特有のノイズのようです。(何を撮っても毎回出現する波形)

カメラのストラップを舐めている時のアイドリング声紋
ザックを舐めている時のアイドリング声紋
飛び立つ前後の声紋を切り出してみる(3秒〜離陸)

撮影後に逃げられてしまいましたが、戻って来たハナアブを2匹採集しました。
(映像に登場した個体と同一である保証はなく、別種の可能性すらあるかも。)
以下は標本写真。
まずは一匹目の個体♀a。



続いては二匹目の個体♀b。



2014/12/29

総員臨戦態勢のキイロスズメバチ移動巣



2014年8月中旬


▼前回の記事
引越し後の移動巣を急ピッチで作り上げるキイロスズメバチ【微速度撮影】

キイロスズメバチ移動巣の定点観察#3

天井裏に引っ越したキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)の移動巣(第二次巣)を観察していると夕刻に突然、在巣のワーカー♀が一斉に外へ出てきて外被を激しく走り回り始めました。
(何に対して警戒しているのか、きっかけは不明です。)
一部の個体は東屋の天井板や垂木を徘徊しています。
外被の増築は中断し、次々と離着陸を繰り返しています。
激しく動き回るのでとても数えられませんでしたが、これほど多くの成虫が巣内に居たとは知りませんでした。
その警戒態勢はかなり恐ろしげで、示威行動だとしても迫力満点です。
興奮したコロニー全体が落ち着きを取り戻すまでに、かなりの時間を要しました。(※下記の追記参照)

巣が固定された天井裏の梁(幅115mm)を引きの絵で写し込みました。
外被の直径を比例計算すると、74.5mmと算出されました。

※ 光量不足で画質が粗くなってしまったので、動画編集時に自動画質補正を施してあります。

巣の下に三脚を立てて長時間撮影しても、こちらが静かにしていればキイロスズメバチは敵とみなして攻撃してくることはありませんでした。
ただし用心のため頭髪は白布で覆い隠しておきます。
巣から飛び立ち定位飛行するワーカーがときどき私に向かって来た時も、ゆっくり後ずさりするだけで凌げました。
気になったのは、キイロスズメバチ♀がカメラの黒いベルト(ストラップ)に対して(襲うほどではないものの)興味を示し少しまとわりついたことです。
スズメバチを特集したTV番組を見ていても、防護服を身にまとい体を張ってレポートする芸人よりも黒いカメラを担いだカメラマンがよく刺されていますね。
カメラのボディが黒い場合は剥き出しのままで使わず、白っぽいビニール袋などで覆った方が安全かもしれません。
当然ながら建物(東屋)の柱などに衝撃や振動を与えれば、巣内のワーカーが一斉に出てきて外被上を激しく走り回ります。

つづく→シリーズ#4:日没後の営巣活動



【追記】
『スズメバチの科学』p110に警報フェロモンの解説が記されていました。
スズメバチのコロニーが哺乳類など大型の外敵に攻撃されたときに示される統制のとれた激しい防衛行動は、敵の襲来を仲間に知らせる化学的コミュニケーションが発達しているためである。(中略)放出と同時に仲間に伝わり、放出が止まればすぐに平静状態に戻れるという点で、揮発性の高い物質が警報物質としての機能をもつというのは適応的。



柳の樹液を吸いに来たコムラサキ♀



2014年9月中旬

水辺に生えた柳(種名不詳)の幹でコムラサキApatura metis substituta)が樹液を探し歩いていました。
翅の損傷が激しい個体で性別が分かりにくいのですが、翅表に光沢が無いので♀だと思います。
おそらくカミキリムシの幼虫が幹の内部から木屑を排出したと思われる穴に辿りつくと、口吻を伸ばして木屑から樹液を吸い始めました。

▼関連記事
柳に穿孔する昆虫が木屑を外に排出する瞬間
するとそこへもう一頭のコムラサキが幹を降りて来ました。
こちらも翅の損傷が激しい♀個体です。
先客と入れ替わるように樹液酒場を占有しました。
力関係が明白なのか、戦わずして交代しました。
先客はすごすごと幹の裏側に回り込みました。
(裏側の幹にも樹液が滲んでいるのか確認していません。)

横から撮ると、伸ばした薄黄色の口吻が見やすくなりました。
翅を開閉しながら樹液を吸汁しています。
退化した棒状の前脚(タテハチョウ科の特徴)が見えます。

この日は水辺で計4頭のコムラサキと出会いましたが、なぜか♀ばかりで♂の姿はありませんでした。



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