2014/12/04

採土をアリに邪魔されたムモントックリバチ♀の飛翔【ハイスピード動画】



2014年8月上旬
▼前回の記事
ムモントックリバチ♀の集団採土場(蜂を個体標識してみる)
地面に穴を掘って巣材の泥玉を作っているムモントックリバチ♀(Eumenes rubronotatus rubronotatus)が飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画に撮り始めました。
そこへたまたま地面を徘徊中のクロアリ(種名不詳)が近づいて来るとムモントックリバチは警戒して飛び立ち、ホバリングしながらお邪魔虫の蟻と対峙しました。
低空飛行の羽ばたきで地面の砂埃が舞う様子がアクション映画のようにドラマチックですね。
しかし喧嘩(異種格闘戦)になることもなく、ムモントックリバチは軽く定位飛行してから泥玉を抱えて巣へ飛び去りました。
アリに邪魔されたので穴を掘る場所を変えるかと思いきや、泥玉がある程度採れたので「今回はもうこれで充分」との判断なのでしょう。
体長ではムモントックリバチの方が大きいのに、蟻を恐れている(一目置いている)印象を受けました。

個体識別のために腹背に白の油性ペンでマーキングを施してあります。



ハナトラノオの花で採餌するトモンハナバチ♀



2014年8月下旬

民家の花壇に咲いたカクトラノオ(=ハナトラノオ)トモンハナバチ♀(Anthidium septemspinosum)が訪花していました。
花筒に潜り込んで吸蜜しています。
腹面のスコパに白い花粉を付けていました。
こんな郊外の住宅地で出会えるとは驚きました!

採餌が済むと花筒の外側に乗り、身繕いして体中の毛に付いた花粉をスコパに移しています。
このとき口吻を出し入れしていました。
同一個体を追いかけて撮影。
大雨の翌日の、特に午前中は訪花吸蜜するハチが多いので狙い目です。

残念ながら営巣地は突き止められませんでした。
ちなみに前年に定点観察に通ったクサフジとムラサキツメクサの群落は堤防一帯が小綺麗に草刈りされてしまって大打撃を受け、トモンハナバチの姿も見られなくなりました。



2014/12/03

汗を舐めるシロスジナガハナアブ♀


2014年8月下旬


▼前回の記事
シロスジナガハナアブ♀の探索飛翔

私が山道で休んでいると、シロスジナガハナアブ♀(Milesia undulata)が飛来しました。
やがて私のザックに降り立ち、汗の滲み込んだベルト部分を舐め始めました。
汗に含まれるミネラルを摂取(塩分補給)しているのでしょう。
左右の複眼が離れているので、性別は♀ですね。
それまで探索飛翔していたのは、汗の匂いに誘引されたようです。
近寄ってきたクロアリを嫌って飛び立ち、ホバリング(停空飛翔)を披露してくれました。
飛び回ると意外に重低音の羽音が鳴り響きます。
ザックのいつもほぼ同じ場所に着地します。
不思議なことに私の体や服には寄って来ず、汗ばんだ腕を差し出してもその手に乗りませんでした。
警戒しているのか、それとも新鮮な汗は惹き寄せる匂いが足りないのかな?(濃縮・熟成が必要?)【※追記を参照のこと】

このハナアブは見た目がアシナガバチやスズメバチにそっくり(ベイツ型擬態)なだけでなく、捕獲すると蜂のように刺す真似をする(行動擬態)そうです。
捕虫網が無いと採集できず今回も確かめられませんでした。
実は近くをキイロスズメバチが盛んに行き来しています。
擬態のモデルかもしれないキイロスズメバチとシロスジナガハナアブ♀は互いに没交渉でした。(追記2を参照)


【追記】
私は山中でも虫除けスプレーや制汗剤、香水などを使う習慣がありません。
ひとつ心当たりがあるのは、私が夏に使っている冷涼系ボディソープにメントール(ハッカ油の成分)が含まれていることです。
虫除け効果が知られているため、ハナアブも私の汗を直接摂取しに来るのは忌避したのかもしれません。


【追記2】
上田恵介・有田豊『黄色と黒はハチ模様:ハチに擬態する昆虫類』 (『擬態:だましあいの進化論〈1〉昆虫の擬態』p62-71に収録) によると、
”虻蜂取らず”はアブの戦略 
針を持たないのにハチの姿をまねている昆虫というと、まず双翅目のアブ類が挙げられる。(p62より引用) 
 ところで、モデル種であるハチ類は、自分とよく似たアブ類をどう見ているのであろう。自分と同じハチの仲間と見ているのか、それともいくら模様が似ていても、ハエと同じただの双翅目と認識しているのであろうか。これについて、コガタスズメバチVespa analisがスズキナガハナアブSpilomyia suzukiiを捕らえた報告がある。(p63より)


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