2014/09/23

カタグロチビドロバチ♀とアリの攻防【ハイスピード動画】




2014年6月下旬
▼前回の記事
営巣地を探索するカタグロチビドロバチ♀の飛翔【HD動画&ハイスピード動画】
倒木に開いた直径4mmの虫喰い穴に借坑性のカタグロチビドロバチ♀(Stenodynerus chinensis)が営巣候補地として興味を示し、繰り返し内見しています。
クロアリ(種名不詳)のワーカー♀がたまたま近くを通りかかる度に、蜂はかなり警戒して向き直ります。
アリとの攻防を240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
蜂が飛び立つとアリは逃げて行きます。
煩わしいアリを追い払うと蜂はすぐに穴の物色を再開します。
ところが次から次にアリが通りかかるので、埒が明きありません。
この倒木は林床を徘徊するアリの通り道になっているのでしょうか。
著しい体格差があってもアリは素早く手強い相手のようで、本格的な激しい闘争には至りません。
アリに対して神経質そうに警戒するカタグロチビドロバチ♀の様子から、天敵の関係にあるように見受けられました。

この後、倒木の傍らに三脚を立ててじっくり監視を始めたのに、なぜか蜂は戻って来ませんでした。
獲物を狩るのに手間取っているだけかもしれません。
ただなんとなく、この虫喰い穴を結局は営巣地として選ばなかったように思います。
これほどアリの往来が多い場所では蜂の留守中に貯食物(ハマキガなどの幼虫)や卵をアリに盗まれそうです。
実際に映像のラストシーンでは、蜂が居ない間に好奇心旺盛(穴があったら入りたい)のアリが穴に侵入する様子を示しています。(@8:41〜)
この虫喰い穴は営巣地として適していないとの評価を母蜂が下して、諦めたのかもしれません。
単独で営巣するカタグロチビドロバチ♀が巣穴に何かアリ対策を施すという話は聞いたことがないので、営巣地の選定がとにかく重要なのでしょう。

例えば、同じく借坑性のイスカバチは巣口の周りにアリの嫌がる樹脂を塗りつけます。
関連記事:イスカバチの巣穴を囲む樹脂の役割
また、アシナガバチが巣柄や巣盤上部に塗りつける黒いタール状の分泌物はアリ避けの効果があります。
関連記事は例えば:キアシナガバチ女王の巣柄補強

なかなか定点観察に通えない場所なのですけど、夏の終わりに再訪すると倒木の虫喰い穴は開いたままでした。
もしカタグロチビドロバチが営巣を完了すれば泥で閉鎖するはずですから、やはり使われなかったのでしょう。


【追記】
穴の大きさが営巣に向いていなかった可能性も考えられます。
中の様子は窺い知れませんが、入り口の大きさだけで考えると今回(直径4mm)は過去に観察した営巣例(2011年:長径2mm、2012年:長径4mm、短径3mm)とほぼ同じでした。

モナルダの花蜜を吸うオオウラギンスジヒョウモン♂



2014年7月中旬

丹精込めて育てられた花壇で2頭のオオウラギンスジヒョウモン♂(Argyronome ruslana)がモナルダ(=ヤグルマハッカ、ベルガモット)を訪花していました。
薄紫色の花に止まり翅をほぼ全開にして吸蜜しているので、肝心の翅裏をなかなか見せてくれません。



2014/09/22

電柱で集団産卵するマイマイガ♀(蛾)



2014年7月中旬

郊外某施設の駐車場でコンクリートの電柱に夥しい数のマイマイガ♀(Lymantria dispar japonica)がびっしり群がり、集団産卵していました。
夜に煌々と灯される水銀灯に誘引されて集まって来たのでしょう。
思わず笑ってしまうほどの大発生でした。
卵塊の表面には♀の毛が植えられ、越冬に備えて保護しています。
来春に孵化する幼虫はいくら広食性とは言え、果たして食草にありつけるのでしょうか?
近くの花壇や庭木は全滅でしょうが、とても食欲を満たせないでしょう。
その後、近隣住民の苦情が寄せられたようで、電柱の卵塊は除去されました(害虫駆除)。 (※追記参照)

今年は全国各地でマイマイガ大量発生のニュースが報じられました。(例:2014年8月28日朝日新聞@秋田県

『日本動物大百科9昆虫II』p78によると、

日没と同時にマイマイガの♀は活発になり、歩き回ったり飛び回ったりして産卵場所を探し、夜の間に産卵する。日本での最近の研究によれば、♀は、卵や孵化幼虫の生存に適した高さに産卵し、積雪の程度などによって、地方ごとに産卵の高さが異なるという。(信ぴょう性に疑問)


小汐千春『じらすメスと離れないオス―昼行性のガの場合』によると、
北海道立林業試験場におられる東浦康友さんが、マイマイガの♀の産卵場所選択に関する興味深い論文を発表された。マイマイガの♀は、北海道や北陸地方の雪の深いところでは、下枝より低い所、特に雪に埋もれる低い位置に産卵するのに対して、京都や奈良などの雪の少ない地方では下枝より高い所に産卵する傾向があり、これを、餌の乏しい冬期における鳥による捕食と、孵化後の幼虫にとってたいせつな餌までの距離という観点から解析している (『虫たちがいて、ぼくがいた:昆虫と甲殻類の行動』第2-2章p71より引用)


しかし、私個人としては、この説に懐疑的です。
今回撮影したフィールドは東北地方の雪国なのに、マイマイガの卵塊は冬期の積雪に埋もれそうにない高さにも多数産みつけられていました。



【追記】
中村眞樹子(NPO法人札幌カラス研究会)『なんでそうなの 札幌のカラス』を読むと、カラスがマイマイガの駆除に一役買っているのだそうです。
夏から秋にかけてよく大発生するマイマイガは、住民にとっては頭の痛い厄介者ですが、相当数の幼虫や卵塊をカラスが食べてくれています。これに限らず昆虫の大発生は突然のように起きますが、カラスがいるおかげで、人間への被害が少なく抑えられているのです。 (p70-71より引用)

ブト(=ハシブトガラス:しぐま註)はマイマイガなどをホバリング(停止飛翔)しながら食べます。蛹化する時期のあの大きさの幼虫になると、スズメでは食べる量が限られます。でも晩夏からの晩秋にかけてのガの大発生を抑えてくれるカラスの存在は、ほとんど思い出されることはありません。 p73より引用)
私もいつかカラスによる捕食シーンを観察してみたいものです。






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