2014/09/10

モノサシトンボ♀【猟奇的な彼女?】



2014年7月上旬

溜池に近い平地の林縁でモノサシトンボ♀(Copera annulata)がウコギの葉に止まって休んでいました。
平和な光景もよく見ると、実は恐ろしい惨劇の直後だったようです。
交尾しようとした♂が♀の頭部を腹端の把握器で捕まえたまま天敵に捕食されてしまい、腹部の一部しか残っていません。
♀だけが命からがら逃げ延びたのでしょう。
ちぎり取られて残された♂の腹部がときどき自発的に屈曲する様がなんとも不気味です。
トンボの♂は副性器(交接器)に移精してから♀と交尾します。

(トンボの交尾がハート型の体勢になるのはそのためです。)
したがって、カマキリの性的共食いとは異なり、腹端だけ残っていても♂はもはや交尾不能です。
静止している♀は頭部を脚で拭って身繕い。

おそらく♀は自力で♂の把握器を外したり振り解いたり出来ませんから、もはや次の♂と新たに交尾することも難しいでしょう。
そうなると♂は身を犠牲にしつつも究極の貞操帯を♀に付けて死んだことになりますね。(配偶者ガード)

♀にしたら良い迷惑かもしれません。



【追記】
井上清、谷幸三『トンボのすべて(第2改訂版)』という本に「連結中に♂が襲われ、腹端だけ♀の頭に残ったクロイトトンボ」と題した生態写真が掲載されていました。
 イトトンボの仲間は♀の産卵中♂が尾部付属器で♀の前胸を挟んで直立し、警護することが多いのですが、そのとき♂が鳥などに襲われ、残った腹端を前胸につけたままの♀を見かけることがあります。(p87より引用)



マイマイガ(蛾)終齢幼虫cの繭作り【50倍速映像】



2014年7月上旬・室温28℃→26℃

今季の山林で大発生したマイマイガLymantria dispar japonica)終齢幼虫を5日前に3匹採集してきました。
木の葉を糸で綴って作ったシェルターを開いたら1匹の毛虫が驚いて逃げ出しました。
この終齢幼虫cを隔離して、繭作りを微速度撮影で記録することにしました。
安全な場所を探して激しく徘徊するので、足場糸を張りやすいようにプラスチックケース内に紙箱(ティッシュペーパーの空き箱)を入れてやりました。
しばらくすると、目論見通りに紙箱の上の角で足場糸を張り始めました。
ジオラマモードで10倍速の微速度撮影した映像を元に50倍速の早回し映像を制作しました。
撮影しやすいように(照明のため)紙箱の天地を逆にするべきか迷いました。
最近観察したオビガの幼虫は途中で紙箱の天井隅から落ちて営繭に失敗した(関連記事)ので心配ですが、作業の邪魔をせずにこのまま続行します。

繭作りが本格化しても、吐糸の際に頭部を八の字に回す行動が見られない気がします。
本種の繭が密にならないのはそのせいでしょうか。
つまり、営繭行動が退化したせいで粗末な粗い繭しか作れなくなったのでしょうか。
進化的に原始的なグループに属するのかどうか知りませんが、マイマイガの幼虫は絹糸腺の発達が悪いのかな?
ときどき休息をはさみながら営繭を続けています。



微速度撮影の早回し映像というのは、見て心地よいスピードが人それぞれ好みが違うようです。
もう少し遅くした動画もブログ限定で公開しますので、宜しければご覧ください。
こちらは↑30倍速映像。



最後はオリジナルの↑10倍速映像。

残念ながらこの個体は体内寄生されており、驚くような異常行動を始めます。
つづく


プラスチック容器では絹糸が付着できず、いつまで経っても繭が作れません。





2014/09/09

幼体を守り♂を牽制するイエユウレイグモ♀(蜘蛛)



2014年6月下旬
▼前回の記事
分散を始めた幼体をガードするイエユウレイグモ♀(蜘蛛)

6/25
前日に天井隅の不規則網へ新たに侵入していた無印のイエユウレイグモ成体♂(Pholcus phalangioides)を個体標識することにしました。
一時捕獲してから、炭酸ガス麻酔下で黄色の油性ペンで腹背にマーキングを施しました。
ついでに発達した触肢を接写しておきます。
採寸すると体長7mm(上顎および糸疣を含まず)。

クモ♂が目覚めてしまいました。





イエユウレイグモ♂黄色を網に戻す際にうっかり糸をあちこち切ってしまったようで、網の主である♀が怒って排斥行動を始めました。
映像の冒頭で♂を幼体の居る右側に追いやってしまったのは♀の珍しいミスです。
幼体をガードする♀は常に♂と幼体との間に立ち塞がる必要があります。
♀が長い歩脚を伸ばして触れただけで、♂は慌てて離れました。
♂黄色を追い払った♀が幼体の近くに戻ると身繕いを開始。
その後も♀がときどき♂に少し近づいては牽制しています。
体格差がある訳でもないのに、♂が♀に反撃することはありませんでした。

ところがこの騒ぎの間に幼体は動かず、「蜘蛛の子を散らしたように逃げる」行動は特に見られませんでした。
イエユウレイグモの幼体は運動機能(歩行能力)が未発達なのでしょうか?
だから孵化した後も♀がしばらく保護する必要があるのかな?

肩身の狭い思いをしながら居候を続ける♂は、幼体が完全に分散して♀が再び発情する(求愛を受け入れてくれる)のを待っているのでしょうか?



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