2013年9月下旬
林縁で山裾を法面補強するコンクリートブロックの辺りを飛び回る暗色型のミドリヒョウモン♀(Argynnis paphia)が居ます。
石垣に止まると驚いたことに腹端を曲げて擦り付けるように産卵していました。
忙しなく飛んで石垣を横に移動しながら産卵を続けます。
その後は草むらに下りて産卵していました。(映像なし)
どうやら産卵基質は何でも良いみたいで、手当り次第あちこちに産んでいます。
しかし、よくよく見ると無機質なコンクリートブロックそのものではなく、その隙間に生えたコケ(地衣類?)を選んでその上に産卵しているようです。
本種の幼虫はスミレ類を食べて育つそうですが、食草に産み付ける親心も無い放任主義とは意外でした。
きわめて多産のr戦略なのでしょうか?
雪国で越冬するための知恵なのかもしれません。(本種は卵または若齢幼虫で越冬するとのこと。)
動き回る蝶を追っていると産卵場所を見失いがちで、卵そのものは確認していません。
【追記】
私が知らなかっただけで、実はこのような産卵行動は別に珍しくないのかもしれません。
『日本動物大百科9昆虫II』p48によると、
1卵ずつ産む産卵様式は大型ヒョウモンチョウ類でも見られるが、このグループでは卵は食草に産みつけられるのではなく、食草の自生する生息場所内の立木、枯れ枝、小石、コケ類、その他に産みつけられる。
【追記2】
『チョウのはなしII』p13より
ミドリヒョウモンは秋になって食草のスミレがありそうな樹林の中にやってくると、あたりの立木の樹皮などに卵を産むのです。春になって孵化した幼虫は、木を伝ってスミレにたどりつくのですが、わずか2mmくらいの仔虫にとって、ときには10m以上もの道のりは苦難の旅立ちといえましょう。
2013年9月下旬
ニホンザルの死骸を土に還す者たち:#01
害獣駆除のため山裾に仕掛けられた檻の中で野生ニホンザル(Macaca fuscata)が2頭捕らえられたまま死んでいました。
餌に釣られて罠に閉じ込められたのは好奇心旺盛な子猿のようです。
山でニホンザルの行動を観察してきた者としては、殺された猿の姿を見ることはショックで色々と思うところはあります。
その一方で、農作物を荒らされ猿害の現実に苦しむ人々にも言い分があることを知っています。
野生動物の死体が生物分解される過程を観察できるチャンスは滅多に無いので、定点観察に通って一部始終を見届けることにしました。
木陰に設置された金網製の檻のサイズは98×98×185cm。
檻を破って逃げられないよう全面が(底も)丈夫な金網で覆われています。
金網は5×5cmの鉄格子。
これなら放置された死骸を誰かに悪戯されたり野犬やカラスに持ち去られる心配は無さそうです。
忌み嫌われる死を仏画の九相図のようにしっかり記録することが私に出来るせめてもの供養です。
先ずは横向きに倒れて死んだ個体Lに注目して、全身像を10倍速で微速度撮影してみました。
(手っ取り早くジオラマモードで撮った動画のため、画面の周縁部はティルトシフト処理でピンぼけになっています。)
死後数日が経過しているようで、死骸には夥しい数のハエの幼虫(蛆虫)が沸き、川の流れのように毛皮の上を蠢いています。
子供の頃に読んだ漫画『はだしのゲン』に登場するような地獄絵図です。
風下にはきつい腐臭が漂っています。
この日は気温を測るのを忘れました。
様々な昆虫が次々と死体に飛来し、掃除屋として各々の役割を果たしています。(これから順に紹介します)
自然界のリサイクル(輪廻転生)をテーマとして、しばらく長期連載します。
つづく→#2(ウジ虫の活動をリアルタイムの寄りの絵で撮りました)