2013/10/22

飛べ!カノコガ(蛾)【ハイスピード動画】



2013年7月下旬

里山で葉に止まって休んでいるカノコガAmata fortunei fortunei)が飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
なかなか自発的に飛んでくれないので、草むらに物を投げつけて蛾を飛び立たせました。
カノコガは葉裏に隠れて止まることが多い印象です。


2013/10/21

ササコナフキツノアブラムシを捕食するゴイシシジミ幼虫



2013年8月中旬

前回の記事はこちら→「笹の葉裏でアブラムシを捕食するゴイシシジミ幼虫【微速度撮影】

体長(齢数)の異なるゴイシシジミTaraka hamada)幼虫がササコナフキツノアブラムシCeratovacuna japonica)のコロニーに4匹も群れていました。
産卵時期がまちまちなのでしょう。
ゴイシシジミの幼虫は老熟すると側面に黄色の部分が現れるようです。

『里山蝶ガイドブック』p51によると、
若いうちの(ゴイシシジミ)幼虫は口から吐いた糸で簡単なテント巣を作り、そこに潜んでいることが多い。



しばらくすると、ようやくゴイシシジミ幼虫が食事を始めました。
アブラムシの本体だけでなく、葉裏に分泌された白いワックス質も盛んに食べています。
甘露のように甘くて美味しいのでしょうか。
ワックス質に残されたアブラムシの脱皮殻や死骸も一緒に食べているようです。
口元にたまたま近づいてきた小型のアブラムシ幼虫をガブリと捕食する決定的瞬間も接写することができました。
あっという間に獲物を噛み砕き咀嚼します。
このときアブラムシから茶色い体液が滲み出ます。
(これはアブラムシを手で潰したときも同じ。)
ゴイシシジミ幼虫は肉食の合間に必ず周囲のワックス質をかじる点が興味深く思いました。
デザート感覚なのでしょうか。(甘い物は別腹?)
コロニーに身を寄せ合っている大型のアブラムシには余り手を出さないようです。



一方、アブラムシの側も天敵に捕食されるがままになっている訳ではありません。
ササコナフキツノアブラムシは真社会性アブラムシです。
コロニーを守る兵隊アブラムシという不妊カーストの幼虫が居るのです。
兵隊アブラムシは褐色の幼虫で、頭部に生えた一対の角で敵を攻撃するそうです。
実は今回の映像でも兵隊がゴイシシジミ幼虫に立ち向かっているのですけど、あまり有効な攻撃にはなっていない気がします。
次々に特攻しても返り討ちに会うばかりです。
天敵の背中に乗って角で突き刺している(ように見える)兵隊アブラムシもごく僅かです。
兵隊アブラムシは自らを生贄として捧げゴイシシジミ幼虫に満腹になってもらい、コロニーの生殖虫の損失を抑えられればそれで良いのかもしれません。
ゴイシシジミ幼虫は全身が白く粉を吹いたようにアブラムシのワックスで覆われているため※(自ら分泌したのか?)、強力なカモフラージュになっているのでしょう。
アブラムシのコロニーで巧妙に紛れ込んでいるようです。


※ 『里山蝶ガイドブック』p50によると、
ゴイシシジミ終齢幼虫はアブラムシの白いワックスを、自分の体に擦りつける行動が見られる。


  • ササコナフキツノアブラムシの幼虫には普通型と兵隊アブラムシがある。ササ世代では相手を角で攻撃する1齢幼虫が見られる。 (『校庭のクモ・ダニ・アブラムシ』p177より)
  • アリやシロアリに見られる兵隊階級と同じように、自分を犠牲にしてコロニーのほかのメンバーを捕食者の攻撃から守る幼虫個体を「兵隊アブラムシ」と呼ぶ。
  • マワタムシ亜科とヒラタアブラムシ亜科のアブラムシは兵隊アブラムシと通常幼虫(普通型)の2型の幼虫を産み出し、兵隊アブラムシは1齢幼虫のままで不妊である。兵隊アブラムシは不妊カーストとよばれ、形態は攻撃に用いる脚や角が大きく発達し、キチン化も強い。 (同図鑑p168より)
警報フェロモンを分泌?

食事中のゴイシシジミ幼虫に向かって歩いて来た一匹のアブラムシが捕食されそうになると、腹端を持ち上げ透明の甘露を分泌しました!(@7:55〜8:15)
ゴイシシジミ幼虫はすぐにこの液滴を吸汁しました。
この隙にアブラムシが逃げる作戦なのかと思いきや、結局は捕食されてしまったようです。
あるいはボディーガードのアリに催促されたと勘違いして甘露を分泌したのでしょうか。
それとも兵隊カーストへの警報フェロモンなのかな?(参考サイト

蝶の幼虫による肉食行動と兵隊アブラムシを初めて目の当たりにして、いたく感激しました。
笹薮でこれほどドラマチックな弱肉強食がひっそりと繰り広げられているとは知りませんでした。

今回じっくり落ち着いて捕食シーンを接写するために、風揺れ対策として笹の葉(アズマネザサ?)を葉柄から切り落とし、地面に静置しました。
もともと葉裏に群がっていたササコナフキツノアブラムシは直射日光を嫌う傾向があるようです。
異変に気づいた者から分散を始め、葉の下に隠れようと移動します。
また、葉を茎から切り離すと水脈を絶たれたアブラムシは師管から上手く吸汁できなくなるようで、それが分散の原因かもしれません。
葉柄の切り口に移動したアブラムシは吸汁を続けます。
ゴイシシジミ幼虫も獲物の後を追うように移動開始。
何が言いたいかというと、今回の映像はアブラムシもゴイシシジミ幼虫も100%自然な行動とは言えないかもしれません。
特にアブラムシは普段これほど活発に動き回らない気がします。

切り落とした笹の葉は炎天下ですぐに萎れてしまいました。
撮影後は観察した葉を笹の群落の上に置いて帰りました。
アブラムシやゴイシシジミ幼虫が自力で生葉に移動してくれることを期待しました。

つづく→「ゴイシシジミ幼虫vs兵隊アブラムシ(ササコナフキツノアブラムシ)


寄主ヨシカレハ(蛾)の繭から脱出するヤドリバエ幼虫



2013年8月中旬・室温24℃

ヨシカレハの飼育記録2

繭を紡いでから3日後の早朝、ヨシカレハEuthrix potatoria bergmani)の繭から蛆虫が脱出しかけていることに気づき、仰天しました。
ヤドリバエの仲間が寄主を捕食寄生して十分に育った後に寄主の体外へ脱出し、これから蛹化するものと思われます。

繭の先端部が濡れており、そこからヤドリバエの幼虫が脱出しています。
繭の狭い脱出口に体が閊えている蛆虫もいます。
脱出した蛆虫が這い回った跡は大量の液体で濡れています。
この液体は蛆虫の分泌した潤滑液なのでしょうか?
それとも蛆虫の唾液に繭の絹糸を溶かすタンパク質分解酵素(コクナーゼ※)が含まれているのでしょうか?
寄主のヨシカレハの体液である可能性は?

※ コクナーゼとは

[英cocoonase]
鱗翅目の一部の昆虫の蛹が分泌する蛋白質分解酵素で,孵化酵素の一種.繭(cocoon)のセリシンを分解しフィブロインだけにすることによって,繭からの成虫の脱出を容易にする.
(『岩波生物学辞典第4版』より)

白くて丸々と太った蛆虫の体表に付着している黒い毛は、寄主ヨシカレハの毛虫が繭に植えた毛です。

野外で採集したヨシカレハ終齢幼虫が異常なほど巨大化していた謎がこれで解けました。
体内寄生者が自らの発生に都合の良いように寄主の内分泌系(脱皮ホルモン・幼若ホルモン)を撹乱制御していたのかもしれません。
安全な隠れ家となる繭を作らせてから寄主を体内から食い尽くして殺したのでしょう。

計4匹の蛆虫が続々と脱出する様子をジオラマ・モードで撮影した10倍速の早回し映像をご覧ください。
(私が気付く前に脱走した個体もいるかもしれないので、4匹以上ですね。)
ある蛆虫は繭の左端から脱出を試みてから一旦諦めて繭の中を右往左往し、ようやく繭の右端から脱出に成功しました。

元気な蛆虫はプラスチック容器の垂直な壁面も登れます。
容器内を徘徊する蛆虫が繭の付いたボール紙(ティッシュの紙箱)の裏側に潜りこもうとするため、ボール紙が一緒に動いてしまい、微速度撮影の邪魔になります。

次は蛆虫の蛹化が始まります。→つづく(蛹化の微速度撮影

ヤドリバエに捕食寄生を受けたのでヨシカレハは殺され、成虫が羽化することは無くなりました。
毒毛に刺されないようゴム手袋を着用してから繭を切り裂いてみると、ヨシカレハ前蛹の干からびた死骸が見つかりました。
繭を紡いだ後で蛹化(脱皮)する前にヤドリバエ幼虫が食い殺したようです。



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