2013/05/31

飛べ! ツマグロオオヨコバイ【ハイスピード動画】



2013年4月下旬

山地の道端に生えたエゾユズリハの群落に多数のツマグロオオヨコバイBothrogonia ferruginea)が続々と飛来して葉に止まっていました。

なぜユズリハの潅木に集まってくるのか不思議です。
吸汁シーンも確認できず、お気に入りの食草という訳でもなさそうです。
レック(集団お見合い場)にしては交尾行動などは見られません。
テラテラした光沢の葉がツマグロオオヨコバイの眼には魅力的に映るのでしょうか。

飛び立ってもまた戻って来ます。
集合フェロモンでも放出したのかな?

飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
虫を驚かせたりせず、自発的に飛んでくれるまでひたすら待ちます。
個体によっては横這いで葉裏に逃避してから、またすぐに葉表に戻って飛び立つ者もいます。
捕食者を警戒したフェイント行動なのでしょうか?
翅を広げ勢い良く跳躍してから空中で羽ばたき始めるようです。
セミのように飛びながらオシッコしないかな?と期待したものの、スローモーションでも排泄シーンは映っていませんでした。



【追記】
本種の越冬態は成虫らしいので、もし集団越冬だとすれば、たまたまこの日に休眠から一斉に目覚めて活動を開始したのかもしれません。


『日本動物大百科8昆虫Ⅰ』p138-139より
  • ツマグロオオヨコバイの出現時期は8月〜翌年6月(成虫越冬)。
  • 越冬後に交尾を行うツマグロオオヨコバイの春における性比は1:1のままである。



2013/05/30

鳥の糞に群がるシホンハマダラミバエとルリシジミ



2013年4月下旬

飛んでいるシジミチョウを目で追って、地面に着陸したのを撮り始めたら見慣れないハエの大群に気づきました。
道端に落ちたスギの枯葉に白っぽい鳥の糞が付着しています。
これに同じ種類と思われるハエが集まり、糞を舐めたり身繕いしたりしていました。
少なくとも9匹のハエを数えました。
複眼がきれいな緑色で、翅の黒い模様も独特です。
群がるハエ同士で喧嘩や求愛行動は見られませんでした。
ときどき翅の黒紋を誇示するような動きは、何の意味があるか思わせぶりです。
素人目にはミバエ科の一種だと思うのですが、同定(写真鑑定)してもらうためハエを3匹採集しました。

気温が低いせいか、容器を被せても飛ばずにウロウロと歩き回るだけでした。
体長〜5mm。

シジミチョウの方はスギタニルリシジミではなくてルリシジミCelastrina argiolus)だと思いますがどうでしょう。
ミネラル補給のためミバエと一緒に鳥の糞を吸汁している筈ですが、伸びた口吻を確認できる接写アングルを確保できませんでした。





スギの枯葉に付着した鳥の糞










いつもお世話になっている双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」に投稿して問い合わせたところ、ミバエに詳しいほげさんより以下の回答を頂きました。
動画&写真のミバエは
Acidiella sapporensis (Shiraki) シホンハマダラミバエ
でほぼ間違いないと思います!翅や腹部の模様からそう判断しました。本種はShiraki(1933)にて記載されましたが、これに掲載されている本種の原色図は、お写真のものにソックリです。
なお、本種のタイプ標本は札幌から得られており、これが種小名の由来と思われます。
いまのところはシホンハマダラは北海道にのみ記録があるので、山形県で得られたとなれば、本州初記録のはずです。
見た限り、全部オスっぽいのも興味深いです。※ 
これだけまとまっているということは、付近にホストのハリギリが生えているのだろうと推測します。

シホンハマダラが属するAcidiella属はアケビ科などの葉潜りであることが知られています。ハモグリバエのようなきれいな「字書き虫」ではなく、染みのような潜葉痕を残します。

現地にハリギリ(センノキとも言います)があり、葉に染み状の潜葉痕があるようなら要注意、ということです。

つづく→「シホンハマダラミバエ♂の身繕いと翅の誇示行動


【追記】
※ 獣糞で吸汁するチョウの多くは♂で、性成熟に必要なミネラル等を補給するのだと言われていますが、ミバエもそうなんですかね。

2013/05/29

巣にゴミを運ぶアカヤマアリと奴隷アリ



2013年4月下旬

ようやく雪が消えた峠道のピークで腰を下ろして休憩していると、路肩(舗装路の端で地面との境界)に見つけたアリの巣が気になりました。
ムネアカオオアリよりも薄い赤色で、見慣れない種類です。
帰ってから調べると、どうやらアカヤマアリFormica sanguinea)らしい。

未だ気温が低く動きが緩慢とは言え、黒いアリと遭遇しても激しい喧嘩にならず、一緒に働いているように見える点が非常に不思議でした。

しかも同じ巣穴に出入りしているようです。
アカヤマアリはクロヤマアリなどの巣を襲って奴隷狩りを行うと知って納得。
きっと同じ巣の仲間なのでしょう。
体長はアカヤマアリ>クロヤマアリ。

奴隷(クロヤマアリ)に働かせるだけでなく、アカヤマアリ♀も自ら働いています。
いつもそうなのか、それとも早春は奴隷の労働力不足なのでしょうか?
ワーカーは辺りから小さなゴミを拾ってくると大顎に咥えて巣穴まで運び、ポトリと落とす謎の行動をせっせと繰り返しています。
採餌行動ではないことは確かですが、意図が分かりません。
巣の入り口を塞ごうとしているのか、蟻塚を築くつもりなのだろうか?
しかし近縁種のエゾアカヤマアリとは違って、アカヤマアリは蟻塚を作らないはずです。

興味があるので定点観察に通ってみることにします。



【追記】
NHKの動物番組『ダーウィンが来た!』2014年8月17日放送の回「不思議いっぱい!身近なアリを大研究」を視聴し、とても興味深いことを知りました。
トビイロシワアリとクロオオアリの巣穴が近くにある場合の話です。
地面に餌を置いてやると体格で劣るトビイロシワアリは餌を奪われないように、クロオオアリの巣口にせっせと砂粒を運んで投下するそうです。
困ったクロオオアリが巣穴から土を搬出する隙に餌を占有して持ち帰るのです。
寄って集って嫌がらせをして、ライバル種を巣に釘付けにするという高等戦術に驚愕・感嘆しました。
今回、私が観察したアカヤマアリの行動はいたって穏やか(平和)に見えたのですが、実はライバルのコロニー間の工兵部隊による争いだったのかな?
関係ない行動かもしれませんけど、覚書として残しておきます。


【追記2】
丸山宗利『昆虫はすごい (光文社新書)』によると、

クビレアリ属の一種も別のミツツボアリと同じ場所で競合関係にあるが、彼らの戦術も面白い。
小石をくわえて、ミツツボアリの巣の入り口から放り込むのである。
これにより、ミツツボアリは巣から出にくくなり、餌をとりに行けなくなる。
この「投石行動」は別のアリでも独自に進化しており、同じく北米の乾燥地帯で、アミナガアリ属の一種がシュウカクアリ属の巣口を埋め、餌とり行動を妨害することがわかっている。(pXXX)

アカヤマアリの場合、奴隷がいなくても、単独でも生活が可能だ。
自分で餌をとることもできるし、食べることもできる。
奴隷はより効率よく巣の環境を維持し、幼虫を育てるための手段なのである。(p167) 





頭楯前縁の中央部は凹む。
アカヤマアリ♀標本a:側面@方眼紙

アカヤマアリ♀標本a:背面@方眼紙

アカヤマアリ♀標本a:顔@方眼紙

アカヤマアリ♀標本b:側面@方眼紙

アカヤマアリ♀標本b:背面@方眼紙

アカヤマアリ♀標本b:顔@方眼紙

アカヤマアリ♀標本c:側面@方眼紙

アカヤマアリ♀標本c:背面@方眼紙

アカヤマアリ♀標本c:顔@方眼紙

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