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2016/05/28

尾繋がりのオツネントンボ♀♂がヨシの葉に産卵開始



2016年5月上旬

▼前回の記事
ヨシの葉に産卵するオツネントンボ♀【接写】

ここで前回から時間を少し遡ります。
夕方に湿地帯の遊歩道を私が歩いていたら、尾繋がりしたオツネントンボSympecma paedisca)の♀♂ペアが驚いて飛び立ち、水溜りの近くに生えたヨシの枯れ茎に止まり直しました。
これからハート型の交尾体勢に入るのかと期待して撮り始めたら、産卵を始めたのでした。

カメラを警戒したのか、茎の反対側に回り込んで隠れました。
こちらもそっと回り込んで隠し撮りします。
♀は水平に伸ばしていた腹部を曲げて腹端で枯れ茎に触れました。
枯れ茎は見るからに固そうで産卵基質として適しているとは思えません。
やがて♀は身繕いを始めました。
後脚で棘状の産卵管を左右から挟み込んで、しごくように掃除しています。

再びタンデムで枯れ茎から飛び立ち、下に生えたばかりのヨシの若葉に止まり直しました。
♀は直ちに産卵姿勢になりました。
♀が歩いて下に降りようとすると、♂も追従します。
またタンデムで飛び立つも、同じ葉に止まり直し、産卵します。
翅の縁紋は♂が濃くて♀が薄いですね。(オツネントンボは常にそうなのかな?)
どうも♀はここが気に入らなかったようで、タンデムで飛び立つと見失ってしまいました。

慌てて追いかけると、水溜りの端っこでなんとか♀♂ペアを見つけることができました。
産卵場所の選定(飛行)は♂が主導権を握っているのかな?
気に入らなければ♀が一瞬先に飛び立つのでしょうか?
それとも♀の不満を感じた♂が阿吽の呼吸で先導するのでしょうか?(♀をグイグイ引っ張っていく亭主関白タイプ?)
タンデム飛行(尾繋がり)の飛び立ちをハイスピード動画で撮れば分かるかもしれません。

ようやく安住の地を見つけ、とあるヨシの葉表で落ち着いて産卵を始めました。(@1:45〜)
オツネントンボの産卵を観察するのは初めてなので、この後はひたすら望遠マクロで長撮りしました。
途中で撮影アングルを何度か変えています。
合間にマクロレンズで接写した産卵映像は前回紹介しました。
背後の湿地帯ではオオヨシキリの鳴き声♪が響き渡ります。
本当は産卵シーンを微速度撮影したかったのですけど、あいにく三脚を持参していませんでした。
葉身に卵を並べていく順番を早回し映像で記録したかったです。

撮影中はトンボに夢中で気づかなかったのですが、後で写真を見直すと、同じヨシの茎についた別の若葉にも似たような(刺青のようなミミズ腫れのような)産卵痕が見えます。
やはり人気のスポットには集中するようです。

♀が産卵中でも♂ががっちり束縛するのは、ライバル♂に寝取られないようにガード(警護)して確実に自分の精子で受精した卵を産んでもらおうという企みなのでしょう。
♂による交尾後ガードはいつまで続くのか?

つづく→♂が離れた後も単独で産卵するオツネントンボ♀






【おまけの動画】
産卵シーンの一部を6倍速の早回し映像に加工してみました(@8:42〜)。
ブログ限定で公開します。
三脚を使っていないので、手ブレはご容赦ください。


2016/05/27

ヨシの葉に産卵するオツネントンボ♀【接写】



2016年5月上旬

尾繋がりしたオツネントンボSympecma paedisca)の♀♂ペアが産卵していました。
場所は、湿地帯の水溜りの岸に生えかけたヨシ(=葦、アシ)の群落です。
そっと近寄りマクロレンズで接写してみると、翅の縁紋がずれていることを確認できたので、ホソミオツネントンボではなくオツネントンボです。

ヨシ若葉の表面に止まった♀の腹端には、焦げ茶色でやや湾曲した棘状の突起があります。
その産卵管をヨシの縦に走る葉脈に沿って葉身の薄い植物組織内に器用に差し込んで、卵を一粒ずつ産み付けています。
産卵管を引き抜くと真横にずれて挿し直すため、産卵痕はほぼ等間隔で横一列に並びます。
葉縁に達すると♀はヨシの葉を少し前進してからまた横へ産み進めます。
その結果、独特のパターンで刺青のような産卵痕が並ぶことになります。
もっと細かく観察すると、♀は腹部を屈曲させΩの体勢で産卵を始めます。
♀は少しずつ腹部を後ろに伸ばしていくため、産卵痕の列は後ろへ後ろへ並びます。
腹部が伸び切ったり腹端が障害物(ヨシの茎)に突き当たったりすると、♀はヨシの葉を少し前進してから改めて産卵を再開します。

♂は産卵する♀の首根っこを掴んだままおとなしく待っています。
尾繋がりの♀♂ペアが左右の足でヨシの葉を抱え込むことで葉身を軽く丸め(凸状に湾曲)、産卵しやすくしているのかもしれません。
一心不乱に産卵する♀の前脚の先が左右ともに欠損している事に気づきました。
本種は「越年蜻蛉」の名前が示すように成虫で越冬することで有名ですから、凍傷で壊死したのかな?

帰ってから手持ちのトンボ関連本や図鑑を調べても、オツネントンボの産卵行動に関する記述は見つかりませんでした。
こんな時期に産卵するということも、植物組織内に産むことも知りませんでした。
ヨシの葉が大きく育つと産卵痕はどのような形状になるのでしょう?
ところで、孵化した幼虫(ヤゴ)はヨシの茎を歩いて降りて下の水溜りに自力で入水するのでしょうか?
ヤゴは鰓呼吸のはずですが、陸上ではどうするのでしょう?
それともヨシの葉裏から孵化してすぐ水溜りに落下するのかな?

つづく→尾繋がりのオツネントンボ♀♂が産卵開始


オツネントンボ♂側面@尾繋がり+産卵中
オツネントンボ♂縁紋@尾繋がり+産卵中
オツネントンボ♀側面@尾繋がり+産卵中。
焦げ茶色の部分に白い毛が生えています。
オツネントンボ♀産卵管@尾繋がり+産卵中@ヨシ葉

2016/05/09

ナガコガネグモ(蜘蛛)の卵嚢



2015年11月上旬

最上川に注ぐ小さな水門の隅にナガコガネグモArgiope bruennichi)の卵嚢を見つけました。
卵嚢の上端が開いているのは正常なのかな?(出嚢後の古い卵嚢である可能性は?)
採寸代わりに右手の人差し指を並べて映し込みます。
卵嚢を周囲に固定する糸には粘着性がありませんでした。

越冬後に採集して飼育下で幼体の出嚢を観察するつもりでしたが、春になったら卵嚢は無くなっていました。
卵は卵嚢内で秋のうちに孵化し、そのまま越冬して、翌春に一回目の脱皮をした後に分散する[4]。(wikipediaより)
一度雪に埋もれて溶けた際に卵嚢も一緒に落ちてしまったのか、あるいは鳥が捕食したのでしょうか?


2016/01/26

寄生蜂コクロオナガトガリヒメバチ♀の産卵および寄主ヒメクモバチとの攻防



2015年10月上旬

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#7


ヒメクモバチ♀b(旧名ヒメベッコウ;おそらくAuplopus carbonarius)が作った泥巣bに招かざる客の到来です。
真っ直ぐに伸びた長い産卵管を有する黒いヒメバチの一種♀が境界標を思わせぶりに徘徊しています。
産卵するチャンスを虎視眈々と窺っている寄生蜂だとしたら、7年前の記憶が鮮明に蘇りました。

▼関連記事(2008年9月下旬撮影)
コクロオナガトガリヒメバチ@ヒメベッコウ泥巣
そのときヒメクモバチ(Auplopus carbonarius)に寄生する蜂として名前を教えてもらったコクロオナガトガリヒメバチ♀(Picardiella tarsalis)の写真(@「日本産ヒメバチ目録」サイト)にそっくりです。

たまたまホスト(寄主)が油断して泥巣を留守にした隙に、寄生蜂が泥巣の下部を触角で探りながら丹念に調べていました。
初めは境界標の側面でマイマイガ幼虫の死骸を調べていたのですが、寄主は鱗翅目ではなく本命はヒメクモバチの泥巣にありました。



「山形県」の刻印(窪み)を利用して泥を詰め込んで作った巣の中で、「形」の字の第6画後半に強い興味を示しています。
ここにヒメクモバチの育房があるようです。

(育房内には母蜂が狩ってきたクモが貯食され、麻酔されたクモの表面に卵が産み付けられているはずです。もしかするとヒメクモバチの幼虫が既に孵化していてクモを食べているところかもしれません。)
寄生蜂♀は腹端を前方に曲げ、産卵管を前に向けると産卵姿勢になりました。
厚く泥塗りされ乾いた巣にこんな華奢な蜂が細い産卵管で突き刺し産卵するとは驚きです。
産卵シーンを背面ではなくできれば側面から撮りたいのですが、私が下手に動くと気配を感じて寄生蜂が逃げてしまいそうで我慢しました。
まさに産卵中に母蜂が空荷で帰宅しました。(@2:20)
境界標の下から登ってきたヒメクモバチ♀bは寄生蜂を見つけても特に激しい攻撃は加えないのが意外でした。
ヒメクモバチ♀が近寄ると寄生蜂が慌てて逃げました。
母蜂は泥巣全体を心配そうに見回ります。
一方、追い払われた寄生蜂は境界標の泥巣がある面の角を曲がった側面に止まっています。
ホスト♀が横を通ると寄生蜂は飛んで逃げるものの、またすぐに舞い戻って来て境界標の天辺の角に静止しました。

マクロレンズを装着して寄生蜂を接写してみました。
しっかり背面を接写するのはアングルが確保できず無理でした。
触角の中央部、腹端、および後脚の先が白色で、残りは全身黒色の蜂です。
泥巣をガードしているホストの顔も接写すると、触角の根本が白く見えました。
寄生蜂の居る上を向いたまま油断なくじっとしています。
(※ マクロレンズで接写したパートのみ動画編集時に自動色調補正を施してあります。)


ほとぼりが冷めると、寄生蜂は境界標の側面から慎重に泥巣へ忍び寄りました。
泥巣上のヒメクモバチ♀bは後ろを向いていて、恐るべき天敵の存在に気づいていません。


「志村〜、後ろ、後ろ〜!!」
ヒメクモバチ♀はなんとなく警戒しているのですが、なぜか寄生蜂とは逆方向へ泥巣を離れてしまいました。
その間に寄生蜂が泥巣の下部に到達し、触角で探っています。
ようやく異変に気づいたヒメクモバチ♀が駆け寄ると、寄生蜂は慌てて飛んで逃げました。
産卵未遂と思われます。
ヒメクモバチ♀は泥巣上で油断なく警戒を続けています。

逃げたと思った寄生蜂はちゃっかり境界標の天辺に居ました。
触角を拭い身繕いしています。
産卵のチャンスを虎視眈々と待っている印象。
急に飛び立つと、境界標の横に生えた灌木(常緑樹)の葉に止まりました。
しばらく休んだり身繕いしてから飛んで境界標へ戻りました。
その間、寄主のヒメクモバチ♀bが警戒して泥巣をガードしています。

7年越しに寄生産卵の決定的瞬間を撮影できて感無量でした。

寄生蜂と寄主が境界標で繰り広げる小競り合いも何度か観察しました。
ヒメクモバチがいくら寄生蜂を追い払っても、しばらくするとまた戻って来ます。
個体識別のマーキングを施していませんが、おそらく同一個体のコクロオナガトガリヒメバチ♀なのでしょう。
ヒメクモバチ♀は天敵の寄生蜂を撃退する有効な対抗手段や防衛戦略を持ち合わせていないようです。
寄生蜂は素早く飛んで逃げてしまうため、殺すこともできません。
もしこの泥巣を採集して蜂の子を飼育すると、果たしてヒメバチが羽化してくるでしょうか?(ヒメクモバチの寄生率を調べる)

母蜂(ヒメクモバチ♀b)がこの日は全く造巣活動せずに泥巣をひたすらガードしていたのは寄生蜂対策だったようです。
息詰まるような神経戦が続き、天敵が心配でおちおち外出できないのでしょう。
もし仮に寄生蜂を採集・除去したらヒメクモバチ♀bは安心して造巣を再開してくれるかな?
それとも別個体の寄生蜂が侵入して来るだけでしょうか?
逆に、泥巣をガードする寄主のヒメクモバチ♀bを除去すれば寄生蜂が産卵する様子をじっくり観察できるかもしれません。
(除去実験は頭をよぎっただけで、今回は自然の成り行きに任せ見守りました。)

つづく→#8:ヒメクモバチは夜どこで寝るのか?【暗視映像】




2016/01/15

イヌタデに産卵するベニシジミ♀



2015年10月上旬

道端にアカマンマ(イヌタデの俗称)の花が咲いています。
イヌタデの群落でベニシジミLycaena phlaeas daimio)を見つけました。
ベニシジミの幼虫はタデ科を食草とするのを思い出しました。
行動を注意深く見ていると、腹端を曲げて根際の茎に擦り付けていました。
私は外見でベニシジミの性別を見分けられないのですが、おそらく産卵中の♀でしょう。
その後は葉表に出てきてしばらく休息も兼ねて日光浴していました。
しばらくすると、再び葉裏に隠れてしまいました。
茂みの奥に潜り込むため、説得力のある決定的な産卵シーンの映像が撮れず、もどかしい思いをしました。

撮影後に卵を探してみればよかったですね。
幼虫越冬らしいので、飼育してみるのも面白そうです。


【追記】
新開孝『虫のしわざ観察ガイド—野山で見つかる食痕・産卵痕・巣』によると、ベニシジミ♀の産卵習性は私が観察した通りでした。
(ベニシジミの)♀は食草の根元に潜り込んで産卵する。(p28より引用)







2015/11/02

トリノフンダマシ(蜘蛛)卵嚢と隠れ家の♀



2015年8月下旬

トリノフンダマシ♀の定点観察#1


農地の用水路脇に生えたヤマグワの灌木でトリノフンダマシCyrtarachne bufo)の卵嚢を早朝の散歩中に見つけました。
球形の卵嚢が2個吊り下げられた近くを探してみると、予想通り桑の葉裏を隠れ家として♀が潜んでいました。
卵を食べる天敵が来たら♀はガードするのでしょうか?
同心円状の水平円網を夜に張るらしいのですが、既に取り壊さています。

この日は朝から台風が接近中で、強風のため撮影できなくなりました。
定点観察に通うことにしました。
台風が去るまでトリノフンダマシが居なくなりませんように!

▼関連記事(7年前!の同時期に撮影)
トリノフンダマシ♀(蜘蛛)と卵嚢


つづく→#2:トリノフンダマシ♀(蜘蛛)の造網準備(枠糸張り?)【暗視映像】


2015/10/14

ノシメマダラメイガ♀(蛾)の産卵



2015年8月上旬

ノシメマダラメイガの飼育記録#28

▼前回の記事
ニンニク上で繭を紡ぐノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫

餌としてニンニク球根を与えた飼育容器底の隅でノシメマダラメイガPlodia interpunctella)終齢幼虫がいつの間にか繭を作り直し、その中で蛹化していました。
薄い繭の表面およびその周囲に多数の卵が産み付けられていることに気づきました。
営繭の際に周囲のゴミを集めたのかと一瞬思ったのですが、卵でした。
ノシメマダラメイガの卵を初めて見ました。
卵塊ではなく白い微小の卵がバラバラに産み付けられています。


容器の下に1mm方眼紙を敷いて採寸

そこで容器内に同居させていた成虫♀の行動に注目して、産卵シーンを撮影してみました。
まずはプラスチック容器越しに接写してから、蓋を外し上から見下ろしながら直接狙いました。
♀は腹端を壁面に擦り付けながら徘徊しています。
あちこちにバラバラに産み付けているようです。
腹端の触覚で繭のような手触りだと落ち着いて産卵する印象を受けました。
産卵基質としてガーゼ等を入れてみたら良いかもしれません。

ところで、幼虫の餌として与えたつもりのニンニク球根に産卵しないのは何故でしょう?
ニンニクの強い匂いで多少は忌避効果があるのでしょうか?
それともニンニクが白っぽいので卵が見えにくいだけかな?



※ 動画編集時に全編、自動色調補正を施してあります。

害虫駆除のサイトでノシメマダラメイガのことを調べると、

・成虫は、幼虫の餌やその周辺に、200個前後の卵を点々と産む。
・夏期においては、卵期は数日、幼虫期は22~45日、蛹期は約1週間で、気温が低下すると各期間が延長される。


また、食品害虫を研究している食総研のサイトによれば、

30℃でふ化幼虫から成虫まで平均で約34日でした(同じ条件で玄米なら約24日)。 この温度での卵の期間は4日ほどですので、卵から成虫までは平均38日になります。

前日に飼育容器に投入した成虫は交尾も確認しているので、受精卵のはずです。
その後は忙しくて、卵から幼虫が孵化する様子を観察できませんでした。
そのまま放置していたら幼虫は全く育たず死んでしまいました。
やはり生のニンニクだけを餌として与えても食べることはできないようです。
いくら栄養満点とは言え、ヒトが食べても強い辛味がありますしね。

孵化直後は無理でも幼虫が少し大きくなればニンニクを食べられるようになるのでしょうか?
別の可能性として、密閉容器ではニンニクの匂いがキツすぎて幼虫が死んだのかもしれません。
蓋の通気性を良くして開放環境で飼ったら育つでしょうか?

貯蔵ニンニクからノシメマダラメイガが発生したというメキシコからの報告(PDFファイル)が飼育下で再現できなかったのも不思議です。
国産ニンニクとメキシコ産では品種や成分が異なるのでしょうか?

Perez-Mendoza, J., and M. Aguilera-Peña. "Development, reproduction, and control of the Indian meal moth, Plodia interpunctella (Hübner)(Lepidoptera: Pyralidae), in stored seed garlic in Mexico." Journal of stored products research 40.4 (2004): 409-421.

ノシメマダラメイガとニンニクを巡る謎の解明は道半ばですけど、今のところ私はノシメマダラメイガ幼虫が生のニンニク球根を食害して育つとは考えていません。
それでもノシメマダラメイガ成虫がなぜニンニク球根に誘引されるのか、不思議で仕方がありません。
ニンニクの山で見つけたノシメマダラメイガ老熟幼虫は、そこで育ったのではなさそうです。
別の貯蔵食品を餌に終齢まで育った幼虫が繭を紡ぐ場所を探して厨房を盛んに徘徊した結果、ニンニクにたまたま辿り着いたのではないかと考えています。

米びつなどに虫除けとして唐辛子やニンニクを入れておく人がいるそうです。
本当にニンニクがノシメマダラメイガに対して忌避効果があるのかどうかもはっきりした結論は得られませんでした。(個人的には懐疑的です)
チョコレートや穀類を与えて大量飼育した容器内にニンニクを追加するとノシメマダラメイガの増殖や成長を抑制できるのか(なんらかの毒性を発揮するのか)、調べることが次の課題です。


今回の産卵シーンを撮影する際に容器内のニンニクの山を不注意でゴロゴロと動かしてしまいました。
そのとき薄い繭が剥がれてしまい、中の蛹も潰れてしまったようです。

やはり本種幼虫が周囲のゴミを集めて繭に織り込むのは、薄い繭を強化するためなのでしょう。(集めるゴミが周囲に無いと脆弱な繭しか作れない


つづく→#29:羽化直後のノシメマダラメイガ(蛾)


2015/09/17

ヤブキリ♀の産卵



2015年7月下旬

草刈りされた山麓の土手でヤブキリ♀(Tettigonia orientalis)が長い真っ直ぐの産卵管を地面のあちこちに突き刺して感触を確かめていました。
腐葉土になる前の枯葉が堆積してフカフカ(スカスカ)の状態です。
ヤブキリは植物の茎に産卵するかと勝手に想像していたので、地中に産卵するとは意外でした。
餌植物の豊富な藪の中ではなく、やや日当たりの良い開けた空き地を選んでいるのも不思議です。
卵が孵化するまでの胚発生を太陽光で早めるためかもしれない、と想像しました。
しかし調べてみるとヤブキリは卵で越冬するらしい。

ようやく産卵適地を見つけると、地中に産卵管を深く差し込んでじっとしています。
産卵中に小さなアリが脚などに這い上がってきそうになると、ピクッと動いて嫌がりました。
ただし産卵管から這い登ってきそうになっても無反応でした。

周囲でときどき聞こえるシリリリリ…♪という鳴き声もヤブキリ♂のようです。


2015/06/11

クロスジギンヤンマ♀の単独産卵



2015年6月上旬

溜池の岸辺でクロスジギンヤンマ♀(Anax nigrofasciatus nigrofasciatus)が産卵していました。
私が気づかずに池の畔を歩いていたら驚いて飛び立つも、場所を変えてすぐ産卵を再開してくれました。

岸辺の水面に浮いた抽水植物の枯れた茎に止まって卵を産み付けています。
ときどき軽く飛び上がり、産卵場所を変えていました。
産卵法に関する図鑑の記述がことごとく的中していて、感嘆しました。

夕方、単独で産卵する。浮遊植物などの水面に近い部分の組織内に産卵。
『ヤマケイポケットガイド18:水辺の昆虫』p97より


♂と尾繋がりしないで♀が単独産卵する種類のトンボがいるという知識はあったものの、実際に見るのはこれが初めてでした。(追記:そんなことはなかった)
辺りを見回しても、産卵中の♀を警護する♂は居ませんでした。

途中からは取り出した三脚にカメラを固定し、じっくり撮らせてもらう余裕がありました。(映像では順番を逆にしてあります。)
この溜池は今年水量が激減し、水質が悪化したので心配です。
同じ場所で以前ギンヤンマ♂♀の連結産卵を観察していますが、クロスジギンヤンマは初見です。





2015/05/29

古池やモリアオガエル飛び込む水の音♪【暗視動画】



2015年5月中旬

▼前回の記事
夜に産卵するモリアオガエルの群れ【暗視動画】

沼の岸辺から水面に張り出しているマユミの枝先にモリアオガエルRhacophorus arboreus)が作っている泡巣aに注目しました。

長靴を履いて岸から夜の沼にゆっくり入水し、卵塊に近づきました。
うっかり枝に触れて揺らしてしまうと、せっかく集まったカエル達が驚いて水に飛び込んでしまいます。
真暗闇でビデオカメラの液晶画面だけを見つめていると、ときどき吸い込まれるようにバランスを崩して水に落ちそうになります。

泡巣の上の枝になぜかのんびり静止して喉をヒクヒクさせている個体が居ます。
泡風呂で混浴している仲間への合流・参加をどうして急がないのか、性別の見分け方を知りたいところです。
その一方で、なぜか泡巣を抜けだして上の枝葉に登り始める個体も居ます。(性別は?)

途中で暗視モードから通常モードに切り替えてみました。
白色LEDの光で間近から急に照らされても、お取り込み中のモリアオガエル達はさほど気にする素振りはありませんでした。

後半、泡巣手前の表面で激しく暴れている個体が気になりました。(@3:35-)
撹拌行動にしては脚が空を切っているなー、と思いつつ見ていると、そのまま自発的に下の水面にポチャンと落下しました。(@3:50)
泡巣の成分として卵と精子だけでなく、放出した尿や粘液を撹拌して作るそうです。
脱水症状になった個体が水入り休憩するのでしょうか?(※追記参照)
それとも産卵を終えた♀から離脱するのでしょうか?

泥濘ぬかるみに長靴を取られ、撮影中の体勢を保つのに苦労しました。
なんとか必死で頑張ったものの、思うように撮影アングルを確保できず不満が残りました。
退屈な休息シーンはカットし、鳴きながら泡巣を足で撹拌する様子だけを撮りました。




この日の夜間撮影にはあまり満足できず、その後も夜な夜な通いました。
なるべくカエルを刺激せずに自然な行動を撮ることにこだわり、増水した沼の中から岸辺の枝を撮る工夫をあれこれ考えました。
ここは泥沼ですから、長靴を履いただけでは入水するとズブズブと沈み、安心して池の中を渡れません。
予算が潤沢にあれば、ゴムボートを持ち込んで池に浮かべたり、防水ウェイダーを買ったりすれば解決するでしょう。
なんとかお金をかけずに済む方法を絞り出します。

まず考えたのは、倒木などを沈めて池の中も歩けるように足場を作ることです。
しかし気になるのは、「モリアオガエルが産卵地点を選定する際に、下に水面(の反射)が見える枝を選ぶ」という話です。
下手に土木工事(というと大袈裟ですけど)をした結果、沼が浅くなってモリアオガエルが卵を産んでくれなくなるのでは本末転倒で意味がありません。
山形県のレッドデータでモリアオガエルは準絶滅危惧種(NT)に指定されているため、生息地を勝手に改変するのは論外です。
撮影後には沼に沈めた足場を引き上げて原状回復する必要があります。

第二案は忍法「水蜘蛛の術」にヒントを得ました。

季節外れですが、冬山で使うスノーシュー(西洋かんじき)を長靴に装着してみました。
これが思いの外うまく行き、岸に近いところなら泥にあまり潜らず池の中を自由に歩き回ることができるようになりました。

足先を見ると、渉禽類は長い趾をもっている。フラミンゴなどは、水かきも発達している。こうした長い趾や水かきがあると、体重が分散されるんで、湿地などのぬかるみでも沈まずにあるくことができる。天然のかんじきを履いているようなものである。(藤田祐樹『ハトはなぜ首を振って歩くのか(岩波科学ライブラリー)』p27-28より引用)


歩いて水底の泥をかき混ぜると、ドブのような匂い(メタンガス?)がしました。
長靴だけを履いて入水したときと比べて、撮影中にバランスを崩して池に転倒する心配も減りました。
これで撮影ポイントに頭を悩ませることはなくなりました。
赤外線投光機を使えば、対岸からでも暗視動画を撮影ができることも確かめました。

こうして私が撮影準備に悪戦苦闘している一方で、結局モリアオガエルの産卵行動を見れたのは初日だけでした。
モリアオガエルの繁殖期はあっさり終わってしまったようです。
しかも沼の水が少し引いて島が現れ、せっかく重いスノーシューや三脚を担いで登った苦労が無駄になりました。
自然を相手にすると一筋縄ではいきませんが、これも来年以降のロケハンだと思うことにします。

つづく



※【追記】
平凡社『日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類』でモリアオガエルについて調べてみると(p46)、
やってきた♀はいったん水中に入り、総排出腔から水を吸い込みそれを膀胱にためる。この水は産卵の際に卵塊をメレンゲ状に泡立てるために使われる。


2015/05/28

夜に産卵するモリアオガエルの群れ【暗視動画】



2015年5月中旬

モリアオガエルRhacophorus arboreus)が繁殖する里山の小さな沼に毎年通って定点観察しています。
岸辺に生えた木の枝に集まり泡巣を作りながら抱接産卵する様子を2012年に動画で記録し、2013年には微速度撮影しました。

今年のテーマは夜間の撮影です。
この日は午前中まで雨が降り午後から晴れたので、いざ出陣。
すると予想通り、既に繁殖期が始まっていました。
例年より少し早いようです。

雨が降ったせいで沼の水量が多く、毎年使っているお気に入りの撮影ポイントが水没していました。
カエルが集結している木に接近しずらくなり、三脚も使えず困りました。
マユミの枝先に産み付けられた泡巣の一部は枝がしなって水に浸っていました。
このように泡巣が着水すると水中に住む天敵に卵が捕食されてしまうのでしょうか?



枝の2箇所で今まさに集団産卵が行われているのを明るいうちから見つけておきました。
暗くなるのを待ってビデオカメラを手に岸からゆっくり水辺に近づきます。

この日一番の失態は赤外線投光機を家に忘れてきたことです。
したがって、ビデオカメラ内蔵の赤外線LEDが届く範囲まで被写体に近づかないといけません。
なるべく枝を揺らさないよう慎重に忍び寄り、間近で繁殖行動を撮影しました。
それでも接近中にカエルを驚かせてしまい、泡巣から数匹が下の水面にポチャンと飛び降り逃げてしまいました。
ヤブ蚊対策としてウィンドブレーカーを上下に着こみ、ニット帽と手袋まで着けました。
季節外れの重装備でも、日が暮れた山中ではあまり暑くありません。

隣接して生い茂ったマユミケナシヤブデマリが重なりあう枝葉に産み付けられた泡巣bにまず注目します。(泡巣aについては別記事に)



モリアオガエルの繁殖行動に影響を及ぼさないよう、照明はなるべく控えて赤外線の暗視カメラで撮りました。(※追記参照)
途中でビデオカメラを通常モードに切り替え、試しに白色LEDで照らしてもカエルは平気そうでした。

♀らしき巨大な個体が中央に居て、その背中に♂と思われる小型の個体が多数しがみついています(抱接)。
長い休息を挟みながら、ときどき一斉に鳴き始め、それを合図に脚で粘液を泡立てています。
このとき産卵および受精が行われているそうです。
鳴いている喉の動きが見えます。
夜行性というよりも、「昼間から始めた産卵行動を暗くなっても続けている」という印象でした。
夜の方が多くのモリアオガエルが集まってくる、ということもありませんでした。(短い観察時間ですけど)

翌日に再訪しても泡巣の数はもう増えていませんでした。

ちなみに、日の入り時刻は18:43PMでした。
ほぼ新月(月齢27.3)でしかもとっくに沈んだ後なので、月明かりは全くありません。
気温を測り忘れたのが残念。

▼つづく

古池やモリアオガエル飛び込む水の音♪【暗視動画】

以下は翌日に現場を再訪して撮ったケナシヤブデマリの写真。
いつもうろ覚えのムシカリと間違えるので、この機会に記録しておきます。



※【追記】
『動物の記録8:モリアオガエルの谷』p102によると、
現在まで何回か産卵を観察したわたしの経験によりますと、ふだんはおくびょうで、とても注意ぶかいモリアオガエルも、卵をうみはじめると、それに神経を集中するせいか、生来の神経がにぶってくるようです。近よって懐中電灯で照らしても、大きな音をたてても、枝をうごかしてさえもにげません。写真をとるにしても、近くに三脚を立てて、ゆっくりと撮影することができます。

2015/05/19

セアカヒメオトシブミの揺籃作り【前編】



2015年5月中旬

平地の水辺に生い茂った(樹種不詳※)の灌木群落で夕方、葉に止まって交尾中のセアカヒメオトシブミApoderus geminus)♀♂ペアを発見。
♀は揺籃(落し文)を作り始めたばかりのようです。

ヒメクロオトシブミ背赤型と外見で区別するのは困難らしいのですが、揺籃の材料となるホスト植物にヤナギ類を含むのはセアカヒメオトシブミの方でした。




一枚の若葉を選んだ♀は基部を両側から主脈だけを残して既に切っており(挟裁きょうさい型の揺籃)、葉が適度に萎れるのを待っているようです。
映像冒頭では葉裏に止まった♀が主脈の折り目で葉を折り曲げようとしています。
♀にマウントした♂がときどき暴れて♀の背中を足で激しく擦っています。(@0:24)
振り落とされないよう必死にしがみついているだけなのか、それとも♀に何かの合図を出しているのでしょうか?



隣の葉表に別個体(性別不明)が止まっていて(@0:40)、しばらくすると向きを変えてから飛び立ちました(@1:10)。
あぶれ♂なら交尾干渉するはずなので、♀なのかな?
それとも既に喧嘩で負けた♂βなのでしょうか?

後述するように本種は形態的な性差に乏しい(性的二形に分化していない)ので、♂同士の闘争は激しくないことが予想されます。
実際のところはどうなんでしょうね?
実は初めに見つけた時は3匹がもっと近くにいて何かしていたのですが、私がマクロレンズを用意している間に別れてしまいました。
『オトシブミ ハンドブック』p38によると、本種は

日当たりの良い環境で高密度で生息している場合が多い。複数の♀が同じ葉を利用して作業している場合さえある
とのこと。

交尾中のペアは挟裁した葉の裏面(白っぽい)下側におとなしく静止し、葉先が萎れて垂れ下がるように自らが重しとなっています。
マガネアサヒハエトリ♂がすぐ近くを徘徊しても、互いに無関心でした。(映像省略)

ようやく♀が揺籃作りを再開しました。(@2:07)
♂を背負ったまま♀が方向転換すると、主脈に沿って葉先へ歩き始めました。
葉縁のあちこちに食痕があるものの、♀は気にせずこの葉を揺籃の材料に選びました。
♂は交尾器を結合したままです。
ようやく全身像を拝むことができました。
セアカヒメオトシブミの形態的な性差はほとんど無い(『オトシブミ・ハンドブック』p38)ものの、「オトシブミ・チョッキリの世界」サイトの解説によると

後頭部の形状がオスとメスとではわずかに違いメスのほうがより丸みが強い
とのこと。(標本で要確認)

この♀の左鞘翅中央に白い微小な汚れ(ゴミ)が付いていて、個体識別できる目印になりそうです。

♀は葉裏を下りながら両足を使い、葉を主脈で半分に折り畳むように、折り癖を付けています。
葉先に辿り着くと♀は方向転換し、いよいよ葉先から上に巻き始めました。
巻きながら葉に噛み傷を付けているかもしれませんが、よく見えません。(@2:50)
その間、マウントした♂は前脚の先を擦り合わせ、のんびり身繕いしています。

交尾を終えた♂が遂に♀から離れ、巻いている葉を徘徊開始。(@5:29)
♀は葉先で黙々と作業しています。
すぐに飛び去るかと思いきや、意外にも♂は再び♀のもとに戻りマウントし直しました。
これ以降はおそらく交尾器を結合しておらず、交尾後ガード(♀が産卵するまでライバル♂から守る)のようです。


本種の揺籃作りを観察したのはこれが初めてのため、映像を見直しても♀がいつ産卵したのか私には分かりませんでした。
(♀がお尻を向こう側に向けているときに産卵?)
完成した揺籃を分解して調べれば、卵の位置が分かるはずです。

カールした葉先の近くの葉裏に見える黄色っぽい粒が、もしや卵なのかと疑いました。
再び♂がマウント解除し、徘徊を始めました。(@9:45)
揺籃に巻き込まれそうになっていた謎の粒を♂が右中脚の跗節で蹴飛ばし除去しました。(@9:50)
これが♂の意図的な行動なのか不明です。
托卵(労働寄生)するオトシブミ♀や寄生虫の卵が揺籃に混入しないよう、警戒しているのでしょうか?
もしそうなら、手が離せない♀を助ける共同作業と言えるでしょう。
あるいは、♂が歩き回る時にゴミ粒を偶然に右中脚の跗節で蹴飛ばしただけかもしれません。

実験でこの行動を再現できるでしょうか?
つまり、卵を模した異物を製作中の揺籃に付けたら交尾後ガード中の♂は甲斐甲斐しく除去するでしょうか?
♂はすぐにまた戻ると交尾後ガードのため♀にマウントしました。(@10:15)





♀は巻いた葉先の主脈を噛んで傷を付けているように見えます。
揺籃作りが進むにつれて、♂はあまり♀にマウントしなくなりました。
それでも♀から離れた♂はすぐ上の葉裏に静止し、交尾後ガードを続けています。
♀が巻き上げている葉を♂はときどき点検して回ります。
葉の基部で静止し、辺りを見回したり♀を見下ろしたりしています。
♂が再び♀のもとに戻りマウント…するかと思いきや、♀の背中を通り過ぎました。(@12:57)
葉を一回りしてから♂がまた♀のもとに戻り、体に触れるもマウントせず離れました。(@13:35)

ところで、♂は交尾後ガードを解除するタイミングをどのように知るのか、とても不思議です。
♂も揺籃作りの手順を知っていて、産卵の有無を見れば分かるのでしょうか?
産卵後は♀の体臭(性フェロモン?)が変わるのかな?
葉巻の進捗状況を挟裁部からの歩数で計測しているのかもしれません。


『オトシブミハンドブック』に掲載された「オトシブミ揺籃検索表」によれば、セアカヒメオトシブミが作る揺籃の特徴は

  • 揺籃は葉の一部分で作られる。
  • 揺籃は円柱形。
  • 葉の基部以外の大半が巻かれる。
  • 揺籃は切り落とされる。
  • 揺籃の主脈には噛み傷があり、多角形。
  • 揺籃の外側の大部分は葉の裏面。

※ どなたか柳の詳しい樹種を見分けられる方は教えて下さい。
柳の花も少し咲いていました。




生憎この日は三脚を忘れたので、微速度撮影が出来ませんでした。
マクロレンズを付けた手持ちカメラで接写すると無理な体勢ですぐに疲れてしまい、集中力が続きません。
ときどき休みながら頑張って動画に記録しました。
下手に近づくと足元の枝に触れて揺らしてしまうため、撮影アングルを思うように変えられませんでした。
接写の大敵である風があまり吹いていなかったのは助かりました。


長撮りした素材をつなげただけの長編映像なので、お急ぎの方はYouTubeプレイヤー再生速度の設定を変えて早回しでご覧下さい。
FLASHではなくHTML5プレイヤーを推奨します。(ブラウザに依存?)

つづく→中編


2015/03/11

卵鞘を産み始めたヤマトゴキブリ♀の水飲み行動



2014年6月上旬

ヤマトゴキブリPeriplaneta japonica)飼育個体♀aの記録です。

腹端に産みかけの白い卵鞘をぶら下げていました。
この個体が産んだ7個目の卵鞘です。
まさに産卵マシーン!
そのまま飼育容器内を歩き回り給水皿(ペットボトルの蓋)に近づいて水を飲む様子を接写できました。
この日の晩になると卵鞘は見慣れた黒褐色に変わりました。

夜間にヤマトゴキブリ♀が卵鞘を朽木に産み付けその表面に木屑をまぶす興味深い行動を暗視カメラで撮影するのが今後の目標です。



2015/03/06

アキアカネ♀♂の連結打水産卵【HD動画&ハイスピード動画】



2014年9月中旬

農道の水たまりで尾繋がりの赤トンボ♀♂が連結打水産卵していました。
その様子を240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
雌雄どちらが連結飛翔の主導権を握っているのですかね?
たまに♂♀のタイミングが合わず、♀が空振りしていました。

同定のため連写モードで写真に撮ると、アキアカネSympetrum frequens)と判明。



2015/01/12

ノシメトンボの連結打空産卵



2014年9月下旬

稲刈りが進行中の田んぼで、尾繋がりのトンボが飛びながら産卵していました。
黄金色の稲穂のすぐ上から連結打空産卵しています。
ハイスピード動画や同定用の写真を撮る前に♀♂ペアは飛び去り、見失ってしまいました。
映像を見る限り、おそらくノシメトンボSympetrum infuscatum)だと思います。
『ヤマケイポケットガイド18:水辺の昆虫』p152でノシメトンボの項目を参照すると、

♀♂が連結。挺水植物の生えているところで打空産卵
とあります。


水抜きされた田んぼに卵を産みつけても孵化できるのか、という疑問が湧きます。
調べてみると、本種は卵で越冬するらしい。
【参考サイト】:保存版 ノシメトンボの見分けと産卵によると、

春まで卵のままで越冬し、春先に水が田んぼに張られると孵化して幼虫になります。



2014/12/05

スギ伐採木に産卵するオオホシオナガバチ♀



2014年8月中旬

里山の林道でスギの木が無造作に転がして置かれていました。
おそらく最近ここで伐採されたようです。※
その倒木にオオホシオナガバチ♀(Megarhyssa praecellens)が産卵しに来ていました。
一瞬キバチ科の仲間かと思いきや、キバチ類の幼虫に外部寄生※※するヒメバチ科の一種でした。
前翅の斑紋が目立つので、同属のエゾオナガバチではなくオオホシオナガバチと分かります。

※※ この「外部寄生」という解説は『ハチハンドブック』p26に書いてあるのですが、内部の間違いではないですかね? 英語版wikipediaのMegarhyssa属の項にはendoparasitoid(内部寄生捕食者)とありました。(自己解決したので追記参照。)産卵直後に樹皮を剥いて寄主を探し、実際にどうなのか調べてみたいものです。



初めは長い触角で材の表面を探っています。
やがて産卵場所を決めると、長い産卵管を垂直に突き立て始めました。
樹皮が激しくめくれ、ささくれだっている場所を選んだようです。
腹端をカールさせて産卵しています。
このとき、オオホシオナガバチの特徴である第2腹節の背板の凸状黄色斑が見えました。
産卵管の根元は2本に別れていることも分かりました。
産卵を終えて産卵管を抜くと、もう次の産卵場所を探索し始めました。
2回目の産卵は観察しやすい場所を選んでくれました。
産卵中の無防備な状態の時に背後から微小なアリ(種名不詳)が通りかかると(@6:55)、オオホシオナガバチ♀は嫌がって噛まれた左後脚をピクリと動かし足踏みしました。
産卵中はすぐには逃げ出せませんからね。
産卵管を抜いて徘徊・探索を再開したところで撮影を止めたのですけど、直後に蜂は材木から飛び立ちました。
採集を試みたのですが逃げられました。
実は2匹も見かけました。

本種の産卵行動について『狩蜂生態図鑑』p150にとても興味深い記述を見つけました。

後脚の一部に半円状のくぼみがあり、左右の後脚を合わせると、産卵管の大きさにピッタリとしたすき間となる。これを照準として、朽木の中にいる幼虫に産卵している。


「日本産ヒメバチ目録」サイトには本種の寄主としてニトベキバチ、ヒラアシキバチ?、ニホンキバチが挙げられていました。

また、古い文献で次の記述を見つけました。

オオホシオナガバチが産卵に際し産卵管をまげて腹部第7〜8節間の膨張膜が気球のように大きく丸くふくれている。
南川仁博. "オオホシオナガバチの産卵状況." 昆蟲 36.2 (1968): 163.(PDFへのリンク)より
今回の映像ではアングルがいまいちなのか、この点はよく分かりませんでした。

ところで私はキバチの生態に疎いのですけど、木が切り倒されてしまったら中に潜むキバチの幼虫は成長できずに死んでしまうのですかね?
それとも初めから倒木を選んで産卵するキバチもいるのでしょうか。
オオホシオナガバチに産卵されたら捕食寄生される運命なので、どちらにせよもう関係ないですけどね。

※ 最近、砂防ダム改修工事のため沢の両岸の林を大量に伐採した結果、スギ倒木などが大量に転がっている状況でした。


※【追記】
『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』という名著の第9章 藏滿司夢「キノコとキバチと寄生バチ:枯れ木をめぐる奇妙な三者系」を読むと、オナガバチの仲間の産卵行動について詳しく知ることができました。
キバチ類を寄主として利用する寄生バチの(中略)1つはヒメバチ科オナガバチ亜科の寄生バチで、キバチの幼虫に外部寄生する殺傷寄生者として知られている。(中略)
腹部を高く持ち上げると同時に、長い産卵管鞘を木に突き立て、それをリードにして器用に産卵管を木の中へと挿入していく姿は圧巻である。挿入する産卵管の角度をときどき変えながら、木のなかに隠れるキバチ幼虫を探すのだ。この寄生バチのなかまは産卵管の先に感覚器と化学受容器を持っており、それによって産卵管が寄主に到達したことを認知すると寄主の体表に産卵する。 (p190より引用)
もう一つ勉強になったのは、寄主のキバチについてです。
キバチ亜科に属するキバチ類は全ての種類がマツ科やヒノキ科などの針葉樹を食樹とする。それに対して、ヒラアシキバチ亜科に属するキバチ類はブナ科やムクロジ科などの広葉樹を食樹としているのである。 (p185より引用)
今回私が観察した事例では、スギ倒木で産卵行動が行われたので、オオホシオナガバチの寄主はキバチ亜科に属する種類(ニトベキバチまたはニホンキバチ)に絞り込めそうです。(ヒラアシキバチ属は除外できる。)




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