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2018/04/28

チャコウラナメクジとヒダリマキマイマイの競争 【10倍速映像】



2016年11月上旬・午前2:33〜2:36

ヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)とチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)を同じ容器で飼い続けています。


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プラスチック壁面にカタツムリのすぐ横にナメクジが居たので、またナメクジがカタツムリを捕食するのかと半ば期待し、微速度撮影で記録してみました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。

しかし、後から来たチャコウラナメクジがヒダリマキマイマイを追い抜いて行っただけで、何事もありませんでした。
殻を持たず身軽なナメクジの方が蝸牛よりも速く移動できることがよく分かります。
つまり、ナメクジに追われたらカタツムリはとても逃げられません。

タンパク質性の餌として煮干しを与えるようにしたら、ナメクジがカタツムリを襲うことは無くなったようです。

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煮干しを食べるチャコウラナメクジ 【10倍速映像】



野島智司『カタツムリの謎: 日本になんと800種! コンクリートをかじって栄養補給!?』によると、

巻き貝が進化の過程で殻をなくすことを「ナメクジ化」と言います。ナメクジ化は陸貝が進化する過程でいろいろなグループで起こっています。そのため、ナメクジを一つのグループにまとめることはできません。  (p37より引用)

陸貝にとって、ナメクジ化は(中略)大きく3つのメリットが考えられます。
(1)狭い隙間に入り込める(2)体重が軽くなる(3)カルシウムを節約できる。
タコやイカも、海の中でナメクジ化した生物の一種と言えます。 (p37-38より引用)



2018/04/19

チャコウラナメクジの好物は?【10倍速映像】



2016年10月下旬・午後23:04〜23:11

これまで野外でナメクジがキノコを食べる様子を観察したことがありました。


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てっきりナメクジはキノコが好きなのかと思い、飼育中のチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)にキノコを給餌してみました。
スーパーで買ってきた普通のシメジは気に入らなかったようで、口を付けないまま干からびたので捨てました。

(映像はここから。)

栽培されたキノコではなく山で採れたブナシメジ(ホンシメジ?)を給餌してみたら、どうでしょうか?
他には煮干しと、気紛れで乾パンも与えてみました。

10倍の早回し映像をご覧下さい。
結果は、煮干しを少し齧っただけでした。

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キノコは今回も口にせず、方向転換して立ち去りました。
ナメクジが好きなキノコは特定の種類に限られるのかもしれません。(それを突き止めたいものです)

動画を撮り始めるとナメクジはいつもすぐに居なくなってしまい、私としては物足りないです。
長撮り中の眩しい照明が嫌なのかな?
赤外線の暗視カメラで行動を監視すれば、より自然な振る舞いをしてくれるでしょうか。


2018/04/10

煮干しを食べるチャコウラナメクジ 【10倍速映像】



2016年10月下旬・午前00:33〜00:56

飼育しているチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)がカタツムリを襲った事件をきっかけに、ナメクジの生育にはタンパク質が必要らしいと知りました。


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タンパク質を補給するために試しに数匹の煮干しを小皿に入れて給餌してみます。
ダシを取るための食品ですが、若干の食塩が添加されていることが気になります。
ナメクジを含めたペットに与えるときは健康のために減塩加工された煮干しの方が良いのかも知れません。


すると早速、チャコウラナメクジは初めての餌を喜んで食べ始めました。
微速度撮影で記録してみたので、10倍速の早回し映像をご覧下さい。
しばらくすると満足したのか、チャコウラナメクジは小皿の上でUターンして立ち去りました。
死んだ魚の乾燥肉を食べただけでなく、煮干しの小骨に含まれるカルシウムを喜んで摂取していたのかもしれません。

タンパク質の餌を与えたので、これでチャコウラナメクジが同居しているヒダリマキマイマイを襲うことはなくなるでしょうか?

宇高寛子、田中寛『ナメクジ:おもしろ生態とかしこい防ぎ方』という本を読むと、ナメクジを飼育するための餌として次のように書かれていました。

容器の底には湿らせたペーパータオルを敷き、エサとしてニンジンとコオロギ用人工飼料(魚粉を固めたもの。金魚のエサに似ている)をナメクジと一緒にいれた。(中略)数日に一度、エサや容器は新しいものと交換した。(p35より引用)

一方、同じ容器で同居させているヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)も同じ小皿に登ってきたものの煮干しには口をつけずに引き返しました。
近くに置いてあったリンゴの皮に気を取られたのかな?
あるいは、近くに天敵の(以前自分を襲った)チャコウラナメクジが居ることに気づいて、慌てて逃げ出したのかもしれません。



2018/04/08

トノサマバッタ♀緑色型の産卵未遂



2017年9月中旬・午後16:49〜16:55

田園地帯の砂利が敷かれた農道で緑色型のトノサマバッタ♀(Locusta migratoria)が産卵を始めていました。
私がすぐ横を通り過ぎても跳んで逃げずに、身じろぎするだけでした。
(映像はここから。)


腹端を器用に開閉して地表面を探りながら、少しずつ掘り進めています。
西日を浴びて影が長く伸び、なかなかフォトジェニックです。
トノサマバッタ♀は太陽に対して横を向いていました。
この個体は、左の後脚が欠損しています。(-L3)

長期戦になるかと思い、少し離れた位置に三脚を立てて微速度撮影で記録してみることにしました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。(@1:47〜1:57)
しかし残念ながら、このトノサマバッタ♀はじきに穴掘りを中断してしまい、農道を歩き始めました。
おそらく土質が硬すぎるなど産卵に適さないと判断して諦めたのでしょう。
小さなクロアリ(種名不詳)が産卵中のバッタにつきまとったので、煩く思ったのかもしれません。

トノサマバッタ♀は砂利道を横断し、草むらへ逃げ込みました。
次回は産卵シーンを最後まで見届けたいものです。
♀を採集して飼育下で産ませるのが成功への早道かもしれません。


『カラー自然シリーズ44:バッタのくらし』によると、

(トノサマバッタは)一生のあいだに、多いものは20個近くの卵塊を産み残します(p25より引用)





2018/04/03

ナスとリンゴの果実を食べ排便するノハラナメクジ?【40倍速映像】



2016年9月下旬

ヒダリマキマイマイと同じ容器(大き目の水槽)でナメクジを何匹か飼っています。

台所の流しで徘徊するナメクジを見つける度に採集して、飼育容器に投入していたのです。(野菜と一緒に外から持ち込まれたナメクジ?)
餌として野菜屑を適当に入れてやると、この日はナス(茄子)のヘタが気に入った様子です。
40倍速の早回し映像をご覧下さい。

ナスの黒紫色で固い果皮には全く口を付けていません。
輪切りにした断面の白くて柔らかいスポンジ状の果肉にえぐれたような食痕が残りました。
この嗜好はヒダリマキマイマイと同じでした。

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黒い大触角を途中で引っ込めたのは、撮影用の照明が眩しいからですかね?
ナスに頭をつっこんでいる体勢のため、触角が傷つかないように引っ込めているだけかもしれません。

移動する前に、体の前方右側からオレンジ色の糞をニョロニョロと少し排泄しました。(@1:39)
糞の色は前に食べたニンジンの色素(カロチン)から来ているのでしょう。
橙色の糞がナスのへたに残りました。
ヒトのうんちは、ヘモグロビンの分解産物の色の影響が強く、食べた物の色にあまり左右されないような色(茶色系)になりますが、ナメクジが排泄するうんちは食べたエサと同じ色をしています。(p34より引用)


後半ナメクジはナスのヘタから離れ、隣に置いてあったリンゴの皮を摂食しました。
体を左右に動かしながら、皮の裏に薄く残った白い果実の部分をデザートとして食べているようです。

宇高寛子、田中寛『ナメクジ:おもしろ生態とかしこい防ぎ方』によれば、

ナメクジはゴミ食い(動植物の遺体食い)であり、生きた植物はそれほど好きではない(p83より引用)
もっと腐りかけの生ごみが好みなのかもしれませんが、飼育下では衛生面からご希望に応えられず誠に申し訳ないです。

さて、このナメクジの和名、学名が分かりません。
背中に甲羅が見えるのでコウラナメクジ科だと思うのですが、チャコウラナメクジとは違い、体の左右に黒い線が全くありません。
体全体が茶色で、素人目には特徴がありません。
体長を採寸するのを忘れました。
動画撮影中にコインでも並べて置くべきでしたね。
ヨーロッパからの外来種ノハラナメクジDeroceras reticulatum)でしょうか?
ナメクジの見分け方(簡易版)」サイトを参考にしたら、ノハラナメクジが候補に残りました。

体長は這っている時で5cm程度と小型。全体的に灰色~茶色で目立った模様は無い。
大触覚(原文ママ。「大触角」の誤植)が灰色~黒色。外来種。コウラナメクジ科。
体色が違い自信がないので、もし間違っていたら、ご指摘願います。
この検索表は「簡易版」と断っているように、国内で見られるナメクジを網羅しているとはとても思えません。

それともチャコウラナメクジ類の一種(Ambigolimax sp.)とすべきでしょうか?

日本にはチャコウラナメクジのほか、外見的によく似た複数種が侵入し、定着している。これらは生殖器の形で区別できる。(『カタツムリハンドブック』p64より引用)


※ 接写パートのみ動画編集時に自動色調補正を施しています。




↑【おまけの動画】
オリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開しておきます。



2018/03/24

チャコウラナメクジに襲われ泡を吹くヒダリマキマイマイ 【10倍速映像】



2016年10月下旬・午後22:39〜23:23

夜、いつものように飼育容器内に霧吹きしようと蓋を開けたら、その蓋の裏にへばりついて居たヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)が大量の泡を吹いていました。
同居させているチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)がヒダリマキマイマイの殻に乗って攻撃しているようです。

2匹の軟体動物による緩慢な闘争・逃走シーンを微速度撮影で記録してみました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。
(もう少し早く気づいて撮り始めていれば…。)

泡を吹きながら逃げ回るヒダリマキマイマイをチャコウラナメクジが執拗に追い回しています。
野菜屑などの餌をきちんと与えているつもりでしたが、このナメクジはひどく飢えているのでしょうか?
カラスのモビング行動(擬攻撃)を連想しましたが、まさか縄張り争いではないでしょう。
カタツムリの分泌する粘液を舐めているだけかもしれません。
ヒダリマキマイマイが這った跡に残した粘液を頼りにチャコウラナメクジが追跡していることは確かです。(本来ナメクジは夜行性ですし、その眼は光の明暗を感じる程度で周囲のものの形をみることはできないらしく、視覚で追跡しているのではありません。)

ヒダリマキマイマイが嫌がって逃げているのは分かりますが、ナメクジがカタツムリの殻に乗っているのは果たして偶然でしょうか?
映像ではどう見ても獲物として繰り返し襲おうとしているようです。
ナメクジがカタツムリを襲うとは予想だにしなかったので、初めて見る光景に仰天しました。
宇高寛子、田中寛『ナメクジ:おもしろ生態とかしこい防ぎ方』という本を紐解いてみると、ナメクジが時に獰猛な肉食性になることを初めて知りました。

ナメクジは肉も食べるということがわかる。
 実は、多くのナメクジはタンパク質を食べなくては成長することができない。ナメクジにとって一番身近にあるタンパク質は、同じ仲間のナメクジなので、生きているナメクジを積極的に食べるわけではないようだが、死んだ(または弱っている)ナメクジを食べることはある。
 日本にいるナメクジは基本的に草食・雑食性であるが、海外には肉食性のナメクジもいて、彼らはミミズや他の陸貝をエサとしている。 (p27より引用)


また、侵入生物データベースのサイトにてチャコウラナメクジが「ハマキガ類の卵塊を捕食する」との記述がありました。


徘徊速度を比べると殻を持たない身軽なナメクジにカタツムリは負けていて逃げ切れないのかもしれません。
ヒダリマキマイマイはナメクジに正面から触れた瞬間にビクッと身を縮めました。
殻口から奥に侵入できる捕食者に対しては殻の中に軟体を引っ込んで籠城するだけでは身を守れません。

サザエとは違ってカタツムリは殻口を閉じる固い蓋を持たないからです。
このような緊急時にカタツムリが自衛のために激しく泡を吹くらしいのですが、実際に見るのは初めてでした。
この泡は苦い分泌物(毒?)が含まれているのだそうです。
容器の蓋の縁を乗り越えようとするついでに、ヒダリマキマイマイは殻を大きく振り回してナメクジを振り落とそうとしました。(@1:06〜1:15)
この動きはカタツムリの第二の自衛手段です。
最後にヒダリマキマイマイが殻の中に籠城すると(第三の自衛手段)、ナメクジはようやく諦めて立ち去りました。
このときヒダリマキマイマイは殻口を容器蓋のプラスチック面に伏せているため、ナメクジは攻撃できませんでした。

思い返してみると、以前にも同居しているヒダリマキマイマイの殻や軟体部にナメクジがへばりついていることがありました。
徘徊中に偶然出会っただけかと思って見過ごしていました。
実はナメクジが競争相手を密かに一匹ずつ殺そう(捕食しよう)としていたのか?と戦慄しました。
無知な私は横着してナメクジとカタツムリを同居させてしまいましたが、別々の容器で飼うべきでしょう。

逆に言えば、素人ならではの失敗が転じて興味深い発見(セレンディピティ)ができました。


その後、ヒダリマキマイマイとチャコウラナメクジの同居飼育を続けても捕食シーンを二度と観察できませんでした。(私が見逃しただけ?)
必死で防御・抵抗するヒダリマキマイマイを手強い相手だとチャコウラナメクジが記憶して、襲わなくなったのでしょうか。
襲われた蝸牛が泡を出し始める様子をいつかじっくり見てみたいものです。
唾液で泡を立てるのでしょうか?
呼吸孔からブクブクと息を吹き込んで泡立てるのかな?
泡立ちやすい界面活性剤を含んだ特殊な粘液を急激に分泌するのですかね?
今回の映像を見直すと、ナメクジの執拗な追跡をやり過ごし殻の中に籠城したヒダリマキマイマイが泡を出したのは左側からでした。(@3:20〜3:28)

なぜ粘液を泡状にするのか?という理由を私なりに考えてみると、SF映画などでお馴染みの「バリアを張る」作戦なのでしょう。
つまり、生身の体(軟体部)に到達される手前に忌避剤を含む軽い膜を素早く張って防衛線とするのだと思います。
もし相手がアリのように小さな虫なら、何重ものバリアを突破する必要があり、かなり有効そうです。


2018/03/19

垂直円網を張るコガネグモダマシ(蜘蛛) 【10倍速映像】



2016年9月下旬・午後17:11〜17:28 (日の入り時刻は17:33)

湿地帯に近いススキの原で夕方になるとコガネグモダマシLarinia argiopiformis)があちこちで造網を始めます。
10倍速の早回し映像でご覧ください。
慌てて三脚を立てて撮り始めた時はもう縦糸張りの後半でした。
まず放射状に縦糸を張り、網の中心部から外側に向かって螺旋状に(反時計回りに)足場糸を張り、最後に粘着性の横糸を密に張り巡らせます。
横糸張りの初めに何度か回る向きを変えたのは、枠糸にしっかり固定、補強するためでしょう。
横糸張りの後半は時計回りで安定しました。
網が完成すると中央のこしき)で下向きに占座しました。

風が吹くとススキの穂が激しくなびくために、AFではすぐにピントが合わなくなります。
仕方がないので、枠糸を固定してある左のススキの茎に焦点を固定して長撮りしました。
全体的にピンぼけなのは、そのためです。

▼関連記事
コガネグモダマシ♀の造網:足場糸と横糸張り(15倍速映像) @2011年10月中旬
コガネグモダマシ♀の造網(横糸張り:4倍速映像) @2009年10月中旬

コガネグモダマシが網を張る過程の一部始終を動画で記録したくて頑張っています。

この季節になる度に何度かトライしているネタなのですが、なかなか自分でも満足の行く生態動画が撮れません。
今回も残念ながら逆光で、クモの糸や網はほとんど見えませんでした。
クモの動きから造網プロセスを想像してもらう他ありません。
縦糸張りの過程が少しだけでも撮れたのがささやかな収穫(前進)です。
どうしてもこの時期は魅力的な被写体が他にも色々とあるために、浮気症の私はすぐに目移りしてしまいます。

じっくり腰を据えて取り組まないといけませんね。
夕方で無風になる日を待つのも大変なので、やはり飼育下で網を張らせるのが近道かもしれません。




↑【おまけの動画】
長撮りしたオリジナルの動画(早回し加工する前)をブログ限定で公開しておきます。


コガネグモダマシ(蜘蛛)@垂直円網
画像処理で無理やり垂直円網を可視化

2018/03/15

ナスの実を食べるヒダリマキマイマイ 【10倍速映像】



2016年10月上旬・午前5:46〜6:15

ヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)とチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)を同じ容器で飼育中です。
餌として入れておいた輪切りのナス(茄子)の果実をヒダリマキマイマイが早朝から食べていました。
摂食シーンを微速度撮影で記録したので、10倍速の早回し映像でご覧ください。
容器内にはナスのへたとニンジンの輪切り、リンゴを剥いた皮も入れて置いたのですが、ヒダリマキマイマイが選んだのはナスの輪切りでした。
満足すると蝸牛は餌から這って立ち去りました。
ナスの黒紫色で固い果皮は全く食べず、白くて柔らかいスポンジ状の果肉にえぐれたような食痕が残りました。
このことから、もし野生のヒダリマキマイマイがナス畑に侵入したとしても、実ったナスの果実を果皮ごと食害するのは、考えにくいと思います。

それと入れ替わるように、物陰に隠れていたチャコウラナメクジが登場。
ナメクジもナスの実などを口にしたのかどうか気になりますが、映像でははっきりしませんでした。(素人目には食べていない気がします。)



【追記】
台所でナメクジを見つける度に採集して、ヒダリマキマイマイと同じ飼育容器に投入していました。
窓の外から台所に侵入したのか、それとも畑で収穫した野菜と一緒に持ち込まれたのか、どちらかでしょう。
以下の写真は2017年7月下旬の撮影。

チャコウラナメクジ@濡れた食器洗いスポンジ
チャコウラナメクジ@濡れ布巾


2018/02/22

恋矢を自ら引き抜くヒダリマキマイマイ



2016年10月上旬

夜、いつものように飼育容器内に霧吹きしていると、一匹のヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)が恋矢れんしを排出していることに気づきました。
最近もう一匹と交尾したはずですが、私は見逃したようです。

恋矢(交尾矢love dart)はカルシウムを含み,交尾前に恋矢嚢が裏返しとなることによって射出され,相手の個体の皮膚に機械的刺激を与え,交尾が終ると捨てられる.刀身状のものが多いが,紡錘形・剣菱形・三角形・山形・円形など種類によってさまざまで,分類上の重要な標徴となる. (『岩波生物学辞典第4版』より引用)


透明なプラスチック容器越しに腹面から接写すると、水滴で濡れた壁面を舐める歯舌の動きよく分かります。
体の左側面から白く長い恋矢が伸びています。
魚の小骨のように湾曲し、一端は鋭く尖っています。
交尾の際にパートナーから刺された恋矢を傷口から排出しているのでしょう。
体内にしばらく残された恋矢は痛むのでしょうか?
やがて水滴を舐めるついでに、体を左によじって恋矢にキスを始め、体に刺さっていた恋矢を口で引き抜きました。
しばらく抜けた恋矢の根元を舐めています。
もしかすると、自分の体液(血液?)やパートナー由来の粘液が恋矢に付着していて、それを栄養源として摂取しているのかな?と想像しました。

後半は微速度撮影に切り替えて記録したので、10倍速の早回し映像でご覧ください(@4:01〜)。
蛇行しながら飼育容器の壁面を登って行きます。
波打つ腹足の蠕動がよく分かります。
ヒダリマキマイマイが這った後は、透明な粘液で泡立っています。



恋矢の排出シーンを観察したのはこれが初めてです。
今回の恋矢について改めて考えると、おかしなことに気づきました。
もし体内に刺さった恋矢を引き抜いたのなら、尖った先が内側(傷口)を向いているはずです。
しかし映像を見直すと、恋矢の尖った先が外側を向いています。
これは何を意味しているのでしょう?
交尾に使われなかった自分の恋矢を体内から排出(排泄)したのでしょうか?

そんな必要性があるのか疑問です。
次回の交尾に使えば良いのでは?
あるいは、交尾で相手を刺したのに恋矢が折れなくて、排出に手間取ったのかもしれません。(恋矢は交尾の度に使い捨て?)
交尾相手から刺された恋矢が体を完全に貫いて折れ、そのまま排出したのですかね?
それとも、捨てられた古い恋矢が容器の壁面に付着していて、徘徊中の個体がそれをゆっくり乗り越えるシーンをたまたま見ただけかな?
どのシナリオが正しいのか知るためには、交尾直後から連続録画でひたすら愚直に監視するしかなさそうです。


飼育容器内に脱落した恋矢を見つける度に記念として採集してきたのですが、なぜか今回の恋矢はどこに紛れてしまったのか、採集した記憶がありません…。


▼関連記事 (背側からの観察例)
交尾後に恋矢を排出するヒダリマキマイマイ

2018/02/19

チャイロヒダリマキマイマイの起き上がり運動



クロマルハナバチの巣:定点観察#13
▼前回の記事
クロマルハナバチの古巣に侵入を繰り返し獲物を探すクモバチ♀

2016年8月下旬

丁度1ヶ月ぶりにクロマルハナバチBombus ignitus)営巣地の様子を見に行くと、一度は草刈りされていた側溝の雑草が再び生い茂り、巣穴を覆い隠していました。
山腹に車道を通した法面をコンクリートで補強していて、その壁面に開けられた排水口の一つに営巣していたのです。
コロニーの活動は終了(逃去?)していて、出入りする蜂の姿はありません。

巣口の奥を覗き込むと、珍客が侵入していました。
穴に詰まっている苔混じりの土塊と一緒に取り出してみると、なんとチャイロヒダリマキマイマイEuhadra quaesita montium)でした。

真夏に乾燥したコンクリート壁面を徘徊していて、湿り気が多少ある穴の中に避難していたのでしょう。
あるいは産卵場所を探索していたのかもしれません。
採集シーンをハンディカムで撮っていたのに、肝心の動画ファイルが失われていました。
ハンディカム本体の不調なのかSDカードの異常なのか不明ですが、この日にハンディカムで撮った映像がすべて失われました…。



チャイロヒダリマキマイマイ@採集直後@クロマルハナバチ古巣
チャイロヒダリマキマイマイ+scale
チャイロヒダリマキマイマイ裏面+scale

焦げ茶色の殻の個体でした。(※追記参照)
殻を逆さまにして路上に置いてしばらくすると、警戒を解いて起き上がり、徘徊を始めます。
軟体の左側面に見える黒くて細長い物は、チャイロヒダリマキマイマイが排泄した糞だと思うのですが、飼育下での観察と逆側なので自信がありません。
力強く起き上がる動きが面白くて、初めは微速度撮影で記録しました。
10倍速の早回し映像でご覧ください。
意外に早く起き上がることが分かったので、リアルタイムのHD動画に切り替えてから、チャイロヒダリマキマイマイを再びひっくり返してみました。
また、採寸代わりに一円玉(直径2cm)を並べて置きました。

持ち帰って飼育しようか迷ったものの、元の穴に戻して帰りました。
今思うと、カタツムリがクロマルハナバチの古巣を食害する可能性もあるので、別の穴に入れるべきだったかもしれません。

クロマルハナバチの巣穴を発掘調査するための道具をネット通販で注文しているのですけど、最安値の店を選んだばかりに、商品がなかなか届きません。
古巣の採集は次回に持ち越します。
クロマルハナバチの古巣にカビが生えたり虫などに食害されるのではないかと心配で、気が気でありません。
しかし、巣口の奥は土砂がびっしり詰まっていて、古巣は埋もれているようなので、半ば諦めています。

つづく→#14



【追記】
私が当初この個体をヒダリマキマイマイと記述していたところ、YouTubeのコメント欄にて、MEGUMI ch KOTAさんからチャイロヒダリマキマイマイではないか?という御指摘を頂きました。
これだけ、濃い個体ならば、チャイロヒダリマキマイマイだと思います。ヒダリマキマイマイとチャイロヒダリマキマイマイ、両方飼育したことありますが…チャイロヒダリマキマイマイの方が、より標高が高い所に生息しているようです。チャイロは、静岡県、山梨県、神奈川県では、私自身でも確認できました。この殻の具合も、軟体部分の模様も、山梨県で採集されて、我が家にやって来て、通算7回も産卵したチャイロヒダリマキマイマイにそっくりです。
チャイロヒダリマキマイマイとは、
ヒダリマキマイマイの亜種。殻幅50mm前後。殻の色が暗褐色で火炎彩をもつ。関東地方と中部地方の山地に分布する。(wikipediaより引用)
私も平地(標高266m地点)で交尾していたヒダリマキマイマイを採集・飼育していて、確かにそれよりも今回の個体は殻の色が濃いなと思いました。
素人ながら私が気になるのは、チャイロヒダリマキマイマイの生息地が「関東地方と中部地方の山地に分布する」と限定されていることです。
一方、今回の撮影地は山形県南部(内陸部)の低山で、標高645m地点です。
歩みの鈍いカタツムリの国内分布の定説を覆すのはとても恐れ多いのですけど、チャイロヒダリマキマイマイで間違いないということなので、訂正しておきます。
実は東北地方のカタツムリはあまりよく調べられていないのかもしれません。

今回の個体は殻口(最終層の螺管)が広がっているので、ムツヒダリマキマイマイ類ではありません。

チャイロヒダリマキマイマイとヒダリマキマイマイは亜種の関係ですから交雑可能のはずです。
試しに同居させて交尾行動を観察してみれば良かったと今になってちょっぴり後悔…。
当時は他にもあれこれと色んなことに手を広げすぎて、一杯いっぱいだったので、採集せずに帰りました。


【追記2】
野島智司『カタツムリの謎:日本になんと800種! コンクリートをかじって栄養補給!?』という本を読むと、山地性のカタツムリが黒っぽいのは一般的な傾向のようで、保護色で説明されています。
野鳥が繁殖期になると卵殻の形成に必要なカルシウムを補給するためにカタツムリをよく殻ごと捕食するという話に続いて、次のように書かれていました。

 カタツムリの殻は、海にすむ巻き貝の殻と比べて茶色っぽい地味な模様をしています。これは保護色といって、周囲の色に紛れて発見されにくいためです。実際、暗い山奥にいるカタツムリの殻は黒っぽく、明るい平地にいるカタツムリの殻は白っぽい傾向があります。
明るいところでは白っぽいほうが、空からエサを探す鳥に見つかりにくいと考えられます。同様に、高い木の上で生息する種類も、殻が白っぽくなる傾向があります。(p72-73より引用)


チャイロヒダリマキマイマイを採集後のクロマルハナバチ古巣(中には土砂が詰まっている)
その全景(側溝から生い茂る雑草をかき分けて巣口を露出している)




2016年9月上旬

クロマルハナバチの古巣の発掘

別の記事にするまでもないので、残念な結果をここに報告しておきます。(動画も無し)
8日ぶりに現場を再訪すると、側溝の雑草がより一層生い茂り、巣穴を覆い隠していました。
気になるこの植物はミズヒキですかね?
花が咲かないと私には名前が分かりません。
葉の中央部が「斑入り」のように色が変わっています。



ファイバースコープがあれば穴に差し込んで、活動中のコロニーの様子を直接観察できたかもしれません。
予算がない私は仕方なく、古巣を発掘するために長くて頑丈なピンセット(27cm)を購入しました。
普通のスコップ(移植ゴテ)では直径7cmの狭い排水口に差し込めないのです。



しかしコロニーが逃去(全滅? 解散?)してから発掘に着手するのがあまりにも遅過ぎました。
台風や大雨のせいで、巣穴(法面補強するコンクリート壁の排水口)には小石混じりの土砂がみっちり詰まっていました。
苺パック容器に一杯分の土を掘り出しても、マルハナバチの巣の痕跡は皆無でした。
古巣の育房の破片ぐらいは見つかるかと期待していたのですが、全くの空振りでした。(掘る穴を間違えたかと思ったぐらいです)
ロングピンセットでも届かないもっと奥に営巣していたのでしょうか?
奥は硬い岩(コンクリートかも?)で塞がれているような手応えで、突き当たりになっていました。

生物の痕跡としては唯一、キセルガイの稚貝を一つ発見しました。
(落胆のあまり、泥まみれになったゴム手袋を外すのも億劫で、写真も撮っていません。)
ちなみに、巣口のすぐ下のコンクリート壁面にはキセルガイの成貝が3匹居ました。


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キセルガイの徘徊と交尾行動?【10倍速映像】
側溝の縁を移動するキセルガイ【10倍速映像】

クロマルハナバチの古巣はカタツムリ(チャイロヒダリマキマイマイ)やキセルガイなどの陸貝、または土壌生物などに食害されたり、カビが生えてあっという間に分解されてしまった可能性も考えられます。
陸貝は排水口にたまたま迷い込んだだけかもしれませんが、分解者である蝸牛やキセルガイが栄養価の高いマルハナバチの古巣に誘引されたのだとすれば、とても面白いなと思いました。

シリーズ完。





2017/12/09

朝ムクドリの大群が高圧線鉄塔の集団塒から飛び去るまで【後編:10倍速映像:野鳥】



2017年8月上旬・午前4:12〜5:25 (日の出時刻は午前4:49)

▼前回の記事
朝ムクドリの大群が高圧線鉄塔の集団塒から飛び去るまで【中編:野鳥】

高圧線鉄塔#30および下の電柱、電線で一夜を過ごしたムクドリSturnus cineraceus)の大群が、夜明けとともに集団塒内で上下に移動したり、少しずつ塒から飛び去る様子を、10倍速の早回し映像に加工してみました。

黒い点々のように見えるムクドリの塒内分布や時間変化に何か法則やパターンが見出せたら面白いですね。

鉄塔の背景となる西の空を流れる雲の動きも味わい深いです。


動画編集した結果、無音となり、せっかくの音声情報(ムクドリの鳴き声)が失われてしまいました。

シリーズ完。



【おまけの映像】
早回し速度を少し落とした6倍速映像をブログ限定で公開します。
このバージョンには、ムクドリの鳴き声などの音声も含まれています。




2017/12/05

イラガ(蛾)終齢幼虫bが作り直した繭の色斑は不鮮明型に【100倍速映像】



イラガ(蛾)の飼育記録#2016-15


2016年10月上旬・午後13:49〜午前00:12

▼前回の記事
プラスチックの壁面で繭を作り損じたイラガ(蛾)終齢幼虫b【100倍速映像】

プラスチック容器の壁面で作りかけた繭が破れてしまったイラガMonema flavescens)の終齢幼虫bをメタセコイアの小枝に移してやりました。
営繭に適した場所を探してゆっくりワンダリング(徘徊)する幼虫をよく見ると、腹面が黄緑からオレンジ色に変色していました。
やはり、この変色は営繭の前兆と考えても良さそうです。
『イモムシハンドブック』や『繭ハンドブック』に掲載されたイラガ終齢幼虫の体長は24〜25mmですが、この個体は体長が著しく萎縮しているのが気がかりです。(と言いつつも、微速度撮影を優先して体長を実測するチャンスを逃してしまいました…。)
営繭に一度失敗したので、絹糸腺が枯渇してしまったのではないかと心配です。
食餌を再開して栄養をつけてから営繭し直すのかと思いきや、繭作りのプログラムが一旦始動してしまうと生理的に後戻りは出来ないようです。

斜めに立てた小枝(メタセコイア)の上面で足場糸を紡ぎ始めました。
イラガの繭がよく作られる小枝の二又部分をわざわざ選んで与えてやったのに、イラガ幼虫は私の親心を知らず、またもやY字状になった部分を営繭場所に選ばなかったのが不思議でなりません。

白い絹糸を吐いて小型な繭を順調に紡いでいます。
粗い網状の繭を作り終えると、次は繭内で回転しながらマルピーギ管に蓄えられていたシュウ酸カルシウムを含んだ白い液体を排泄しました。(@2:41)

次は褐色の液体(硬化剤タンパク質)を口から分泌するも、なぜかイラガ繭に特有の縞模様が形成されません。
コーヒー豆と似た状態のままで、繭の硬化・黒化が進みます。
繭が小さ過ぎて、幼虫が繭内で自在に動き回れなかったのでしょうか?
あるいは、シュウ酸カルシウムまたは硬化剤タンパク質の分泌量が少なかったのかもしれません。
営繭に一度失敗した直後なので、素材の消耗が激しかったのでしょう。

作り直したせいか、完成した繭はとても小さな物でした。
表面の縞模様も全体的に不明瞭です。
密閉容器に移した繭を外気に晒して越冬させました(冬の低温をしっかり経験)。

おそろしく矮小化した成虫が羽化するかと期待していたのですけど、翌年になっても残念ながら成虫は羽化してきませんでした。
原因は不明です。

私が晩秋に野外からイラガ幼虫を何匹も採集してきても、飼育下ではなかなか繭を正常に作ってくれない、ということがここ何年も続いています。
営繭する前に萎んだように死んでしまう幼虫が多いのです。
その原因として、素人は素人なりに仮説を考えてみました。
秋も深まると食樹植物の葉に含まれる毒物(シュウ酸など)の量が増えて栄養価が下がるのではないでしょうか?
つまりイラガ幼虫は、食べても食べても栄養失調の状態なのかもしれません。
イラガ幼虫は体内のマルピーギ管に溜め込んだシュウ酸カルシウム(毒物)の量が限界(臨界点)に達すると自家中毒になり、栄養状態や絹糸腺の発達があまり良くなくても営繭のスイッチが入り毒物を排泄するのではないでしょうか?
この仮説が正しければ、もっと季節の早い夏に第一化の幼虫を飼育すれば、繭の歩留まりが向上するでしょう。
(夏のフィールドではイラガ幼虫の個体数が少ないようで、私にはなかなか見つけられないのです。)
イラガの繭作りや縞模様のパターン形成のタイムラプス映像はダイナミックで美しく、見ていて飽きません。
いつかまた再挑戦するつもりです。


つづく→#16



【追記】
CiNiiで文献検索してみると興味深い論文を見つけました。
野外におけるイラガ繭の色斑二型の出現要因. 古川 真莉子 , 中西 康介 , 西田 隆義.  環動昆 27(4), 133-139, 2016.   Jpn. J. Environ. Entomol. Zool. 27(4):133-139(2017)
日本語要旨を引用すると、
イラガは固い繭を樹木の幹や枝に形成する.この繭の色斑には大きな変異があり,縞模様型(全面が鮮明な白黒模様)と不鮮明型(不鮮明な縞模様,または全体的に不鮮明な茶褐色)に大別される.しかし,繭の色班型の違いに関わる環境条件について知見は乏しかった.そこで本研究では,イラガ繭の色班型の出現頻度と環境条件との関係を,野外調査により明らかにすることを目的とした.調査対象とした 47 種の樹種のうち,17 種でイラガの繭が見つかり,94 個の繭を採集した.縞模様型の繭は,そのうち 9 種の樹種から 33 個採集した.縞模様の有無に対する,繭形成樹種,繭を形成した場所の地面からの高さおよび枝・幹の太さとの関係を解析したところ,繭が形成された部分の枝の太さと負の関係があり,細い枝ほど縞模様型の割合が高いことがわかった.また,同じ樹種で行なわれた先行研究の結果と比較すると,縞模様型の割合は地域によって異なることが示された.

この研究によれば、私が今回飼育した繭が全体的に不鮮明型の色班になったのは、与えた小枝が太かったからということになります。
しかし繭を新たに作り直した影響の有無は検討の余地があると思います。
私としては今のところ自分で観察した例数が少な過ぎて、未だ何とも言えません。


13:49 pm
17:02 pm
20:33 pm
翌日 00:12 am

【おまけの動画】
同じ素材で再生速度を落とした60倍速映像とオリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開します。
じっくり見たい方はこちらをご覧ください。








2017/12/04

プラスチックの壁面で繭を作り損じたイラガ(蛾)終齢幼虫b【100倍速映像】



イラガ(蛾)の飼育記録#2016-14


2016年10月上旬・午前5:33〜9:49

朝に様子を見ると、イラガMonema flavescens)の終齢幼虫bが夜の間に食樹植物から自発的に離れて飼育容器のプラスチック壁面に静止していました。
てっきり脱皮前の眠かと思い、微速度撮影で監視を始めました。
100倍速の早回し映像をご覧ください。

壁に静止していても背脈管(昆虫の心臓)の激しい拍動が見られます。
脱皮前の眠かと思い込んでいたら、しばらくすると、その場で足場糸を張り巡らせて営繭開始。

イラガ幼虫はプラスチック容器の中でも表面がザラザラに加工してある部分を営繭場所に選びました。
背景が白いと、白い絹糸が見え難いですね。

この個体は営繭前に体色変化も見られませんでした。
採集時には一番小さな個体だったのに、飼育下では食欲旺盛で仲間をごぼう抜きして営繭を始めたのです。


イラガの終齢幼虫bは白い絹糸で自分の体の周りに粗い網目状の繭を順調に紡いでいたのに、途中でなぜか薄い繭が破けてしまいました。
幼虫の肉角が作りかけの繭を突き破ってしまったのかな?
絹糸と接着するプラスチック素材の相性が悪かったのかもしれません。(営繭場所の選択ミス)
もはや繭は修復不能らしく、体が外に出てしまった幼虫は困っているようです。
これ以上放置すると大量の絹糸を無駄に使うだけなので、小枝に移すことを決意しました。
今思うと、失敗作の繭を食べて絹糸のタンパク質を再利用していたのかもしれませんが、確認していません。


本を読むと、イラガは平面にも繭を作ることが出来るらしいのですが、失敗の原因は不明です。
(細い枝に作る時と比べて平面上の繭は縞模様が変わるらしい。)
もしプラスチック容器を横に寝かせて水平にしておけば、失敗事故は避けられたでしょうか?

この間、ときどき記録した室温は以下の通り。
午前6:26 室温22.3℃、湿度62%
午前7:22 室温21.0℃、湿度72%
午前8:54 室温21.5℃、湿度72%


つづく→#15:小枝に繭を作り直したイラガ(蛾)終齢幼虫b【100倍速映像】


【おまけの動画】
同じ素材で再生速度を落とした60倍速映像とオリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開します。
じっくり見たい方はこちらをご覧ください。









2017/11/28

イラガ(蛾)終齢幼虫の繭作り【100倍速映像】




イラガ(蛾)の飼育記録#2016-11


2016年9月中旬・午前8:04〜午後22:14

▼前回の記事
繭を紡ぎ始めたイラガ(蛾)終齢幼虫

イラガMonema flavescens)終齢幼虫cが小枝(メタセコイア)に営繭する一部始終を微速度撮影してみました。
100倍速の早回し映像をお楽しみ下さい。
これは長年自分で撮ってみたかったテーマなので、ようやくものにできて感無量です。
何度も飼育に失敗していたのです。(原因不明)

▼関連記事(2012年) 
イラガ(蛾)幼虫の営繭異常【早回し映像】


斜めに立てた小枝の下面に足場糸を敷き詰めてから、自分の体の周囲に絹糸を張り巡らし始めました。
白い糸を紡ぎながら繭内でグルグルと激しく動き回る幼虫の腹面が赤っぽいことから、なぜか木星の大赤斑を連想しました。
こんなに繭内で擦られても、ヤドリバエの卵の殻らしき白い異物が幼虫の体表(左側面後部)から剥がれ落ちないことが意外でした。

網目の粗い繭の表面に突然、白い縞模様が左端から見え始めました。(@3:50)
イラガ幼虫のマルピーギ管で大量に作られた白いシュウ酸カルシウムは肛門から脱糞したのか口から吐き出したのか、気になるところですが早回し映像ではよく分かりませんでした。
繭内部の繊維全体に白い液体を染み込ませています。
次に硬化剤のタンパク質を含む褐色の液体を分泌しました。(これもどこから出たのか映像では不明。)
自らの全身を完全密閉して封じ込めてしまう繭の中でイラガ幼虫がどうして窒息しないで激しく動き回れるのか、不思議でなりません。
閉所恐怖症のヒトには想像するだけで悪夢でしょう。
もう一つの疑問は、成虫の羽脱に備えて硬い繭の内部に予め丸く切れ込みを作るのですが、その方法が映像では全く分かりませんでした。(※追記参照)

名著『イラガのマユのなぞ』でも未解決の難問です。
蛹化する前に幼虫が繭の内側に口器で齧りながら回転して丸い切れ込みを入れるのか、それとも微量の酸などを分泌して化学的に溶かすのでしょうか?
硬い繭をX線(レントゲン)で透視しながら微速度撮影すれば何か分かるかもしれません。


15:08 pm
18:38 pm

最後は幼虫の動きが止まりました。
回転楕円体の小さな繭が完成し、硬化・黒化が進行します。

名著『イラガのマユのなぞ』で探求されているように、イラガの繭に現れる白い縞模様のパターン形成はとても興味深いテーマです。
この個体では残念ながらカメラに向いた面にはあまり白い縞模様が形成されませんでした。
おそらく偶然だと思いますが、撮影用の眩しい明かりを照射し続けた影響があったのかもしれません。
飼育中のもう一匹の幼虫が新たに営繭しそうなので、次に期待しましょう。


『繭ハンドブック』によると、イラガの繭は

白地に濃褐色の不規則な縞模様がある楕円形、硬い。繭は糸で作られるが、幼虫はお尻からシュウ酸カルシウムの白い液を、口からはタンパク質を含む褐色の液を出し繭層に塗りつけ、これが繭の模様となる。
表面の模様は様々で個体差が大きい。(p82より引用)



つづく→#12:営繭中に排便するイラガ(蛾)終齢幼虫




※【追記】
鈴木知之『さなぎ(見ながら学習・調べてなっとく)』によると、
イラガ科の繭は、蛹の頭部側の内壁だけが薄く、ここが羽化に際して出口となります。羽化が近づくと、蛹は破繭器はけんきを使って脱出孔を開け、半身を繭外にせり出して羽化します。破繭器は、繭内で体を回転させて缶切りのように使ったり、てこのように押し上げて使うようです。  (p77より引用)



22:28 pm(裏側にはきれいな縞模様)
22:28 pm
22:29 pm
22:30 pm

【おまけの映像】
同じ素材で再生速度を落とした60倍速およびオリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開します。
営繭の過程をもう少しじっくり観察したい方は、こちらをご覧ください。








2017/11/12

開花初日のハス蕾の開閉運動(壺状開花)【180倍速映像】

▼前回の記事
夜明けに咲くハスの開花運動【180倍速暗視映像】

前回は、ハス(蓮)の花が一番きれいに咲く開花3日目の様子を微速度撮影しましたが、あれは実は二回目の挑戦でした。
話の都合で紹介する順序が逆になりましたが、ハスの開花についてろくに予習せずに出かけたので、初回の挑戦はこんな映像↓になりました。



2017年7月下旬・午前5:33〜7:13(日の出時刻は4:35)


日の出とともに蓮池に出かけたら、時既に遅しでした。
開花の一部始終を記録するのなら、暗い夜明け前から撮り始めないといけないことが分かりました。
それでも一部の蕾が咲きかけ?のまま残っていたので、駄目元で三脚を立てて微速度撮影を開始。
広い蓮池でどの蕾を撮るべきか選ぶのに目移りしてしまい、何度か場所を変えました。
朝日の方角(東)に対して逆光にならないように考慮すべきですが、この日は曇り空なので関係ありませんでした。
野外で微速度撮影する際に大敵となるのは風による振動なのですけど、朝は穏やかでほぼ無風なので助かります。
早朝に咲いたばかりの蓮の花の独特の芳しい香りが辺りに漂い、クラクラします。

1時間40分間、10倍速の微速度撮影で記録しました。
その素材を更に加工した180倍速の早回し映像をご覧ください。
勉強不足の私はてっきり、開花不全の蕾を選んでしまったのか、たまたま開花のタイミングが他の蕾よりも出遅れてしまった個体を撮った失敗作の映像だと思ってしまいました。
しかし、ハスの開花について復習してみると、謎が解けました。
平均的なハスの花は4日間の寿命があり、毎日開閉を繰り返してから散るのだそうです。
また、開花を始めてからの日数によって開花の程度が異なります。
今回の映像の被写体は開花初日の蕾と考えられ、花弁がほとんど開かずにすぐに閉じてしまうので壺状開花と呼ばれています。

加藤文男『大賀ハス (縄文ハス)の花の開閉について』によると (福井市自然史博物館から公開されたPDFファイルへのリンク)、初日は開花開始時刻が遅いらしい。(p125より)



田中修『花が季節や時を告げるしくみ』によると、
花の開閉運動は、花弁の内側と外側の細胞の伸長差にもとづいている。(中略)そのため、花が開閉を繰り返すと花びらは大きくなる。だから、つぼみが初めて開いた花より、何日間かの開閉運動をつづけてきた花のほうがずっと大きくなっているのである。 (『花の自然史:美しさの進化学』第13章:p199より引用)

このように、本や文献を読んで復習してみると訳が分からなかった全ての現象が説明できて、感動しました。
粘り強い観察によってそれをゼロから完全に解明した先人の苦労が忍ばれます。
「咲かない蕾」をひたすら撮り続けていた私は、朝の蓮池ですっかり変人扱いされてしまいました。
しかし早回し映像にしてみれば、蕾の開閉運動は一目瞭然です。
開花初日のハスは花弁が全開せず、少し咲きかけただけですぐに蕾が固く閉じてしまうのです。(壺状開花)
開きかけの蕾にもときどきハナバチ類が偵察に来ていました。

▼関連記事:開花初日のハスの花を偵察するクロマルハナバチ♀とセイヨウミツバチ♀
開花すると一番外側の花弁がハラリと下の葉に落ちる様子も、他の花で目撃しました。




↑【おまけの映像】
オリジナルの10倍速および60倍速に加工した映像をブログ限定で公開します。
ゆっくり見たい人はこちらのバージョンをどうぞ。

2日目、4日目の開花運動および閉花運動も撮影したいところですが、来季以降の宿題です。
本当に同一の蕾に注目して4日間、ひたすら開花と閉花を観察できれば、花の生涯の記録としては理想的です。


5:31 am
5:32 am(動画の撮影アングル)

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