桑の木に営巣したコガタスズメバチ#4
▼前回の記事
晩秋にコガタスズメバチの巣を桑の木から採集【暗視映像】
2020年5月上旬〜中旬
昨年の晩秋(11月中旬)に採集してきたコガタスズメバチ(Vespa analis insularis)の古巣を丸ごと記念品として保存することにしました。
防腐剤として、外側の外被全体に無色のクリアラッカー(ニス)をスプレー缶で散布します。
マスクを着用し、換気のため野外で作業しました。
営巣木ヤマグワの枝に残った枯葉は邪魔なので、予め取り除きました。
充分な乾燥期間をはさみつつ、計5回もクリアラッカーを塗り重ねました。
同じ作業の繰り返しなので、後半は10倍速の早回し映像でご覧ください。
完成したスズメバチの巣は、外被の表面にかなり光沢が出てきました。
パリパリと脆いパルプ製の外被が強化され、多少は防水・防虫加工されました。
動画撮影に気を取られてしまい、少し塗りムラができてしまったのが残念です。
もっと対象物から離れてスプレーをかけるべきでしたね。
少し大き目の透明フィギュアケースを買ってきてコガタスズメバチの古巣を中に入れました。
安かったせいか、アクリル板が極限まで薄くてペラペラなのが不満です。(箱の強度が足りない)
ナフタリンなどの防虫剤を一緒に入れておけば、標本を虫に食い荒らされることはないそうです。
ステイホーム期間中の暇つぶしでした。
そのうちに気が向いたら、巣をノコギリで切断して内部構造(巣盤や育房の様子)を調べるかもしれません。
シリーズ完。
2020年4月中旬・午後22:10頃
ひと気のない夜の台所で点灯すると、ヤマトゴキブリ♂(Periplaneta japonica)が1匹、流しの中にいました。
長翅の成虫♂です。
私は悲鳴を上げたりせずに、いそいそとビデオカメラを取りに戻りました。
補助照明LEDを点灯して動画を撮りながらカメラを近づけると、光を嫌う(夜行性の)ヤマトゴキブリ♂は洗い桶の陰に隠れようとしました。
6年前には本種を飼育して面白かったのですが、今回は駆除することにしました。
私がよくやる方法を実演します。
ヤカンでお湯を沸かして、沸騰した熱湯をゴキブリに直接かけるだけます。
この方法なら殺虫剤や洗剤を使わなくてもゴキブリはほぼ即死で動かなくなります。
シンクを熱湯消毒できて一石二鳥です。
台所で安易に殺虫剤を噴霧すると、食品や食器、蛇口、まな板などが汚染されて嫌なのです。
害虫だからと言って殺虫剤を乱用すると薬剤耐性を獲得する(効き目が無くなる)恐れがありますが、ゴキブリが熱湯に耐性を獲得することはあり得ません。
いつ見てもおっとりのんびりしているヤマトゴキブリ♂は流しのステンレス壁面をよじ登れないようで、私が横でお湯を沸かしている間も逃げませんでした。
「熱湯で殺す方法を皆さんにお薦めします」と言いたいところですけど、都会のチャバネゴキブリなど俊敏なゴキブリが相手の場合は、悠長にお湯を沸かしている暇は無いかもしれません。
電気ポットで保温された熱湯があれば良いでしょう。
仰向けになった死骸を使い捨ての割り箸で摘み上げ、ゴミ袋に捨てました。
最後に採寸すれば良かったですね。
▼関連記事(1年前の撮影)
夜、台所の流しにヤマトゴキブリ幼虫が出没
キアゲハの飼育記録(2018年)#12
▼前回の記事
キアゲハ成虫♂aの羽化【10倍速映像】
2018年7月中旬
羽化してから箱の中に一晩閉じ込めておいたキアゲハ♂a(Papilio machaon hippocrates)の翅をつまんで取り出し、スポーツドリンクを飲ませてみました。
マルチビタミン配合のアクエリアスを含ませた脱脂綿に足を触れさせても興奮しているのか口吻を伸ばしませんでした。
ゼンマイ状の口吻を爪楊枝でそっと伸ばして先端を脱脂綿に付けてやると、足をバタつかせていたキアゲハ♂aは急におとなしくなり吸水を始めました。
やはり喉が渇いていたのでしょう。
羽化後、初めての吸水になります。
翅をつまんでいた手をそっと離しても、飛んで逃げようとしません。
夢中になってアクエリアスを飲んでいます。
水分、糖分だけでなく、各種ビタミン類やミネラル(ナトリウムやカルシウムなど)も含まれているので、酸味が強くても気に入ってくれたようです。
使用したアクエリアスの成分表を見たい方は、下記の関連記事をご覧下さい。
やがて充分に飲んで満足したキアゲハ♂aは自分で口吻をクルクルと丸めながら縮め、その後もしばらくじっとしていました。(映像なし)
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
▼関連記事(別個体)
キアゲハcにスポーツドリンクを与えてみる
終齢幼虫から飼育しながら一通り動画に撮って満足したので、外に放してやりました。
(近所で採集した幼虫を育てただけなので、放蝶しても生態系を乱す心配はありません。)
シリーズ完。
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キアゲハ♂a:顔@スポーツドリンク吸水 |
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キアゲハ♂a:側面@スポーツドリンク吸水後 |
2016年7月上旬・夕方
山麓を流れる深い用水路(高さ170cm、幅〜250cm)になぜか落ちて困っているサシバ♂(Butastur indicus)を見つけました。
全身ずぶ濡れで体が重くなり、飛び立てないようです。
羽根を乾かす場所もありません。
水路に流れる水量は少ないので、すぐに溺死するおそれはありません。
しかし、このまま脱出できなければ、低体温症で死ぬかもしれません。
野生動物の営みに介入しないという原則を破って救出すべきか、かなり悩みました。
水路内に万一ヒトが落ちた時のために脱出用の梯子などがあちこちに設置されているのですけど、サシバにはこれを自力で利用する知能は無さそうです。
そんな事態は想定外なので、鳥が止まり木として利用しにくい構造なのです。
水深は浅いので、いざとなったら私が梯子を降りて直接サシバを救出に向かうことも可能です。
その際はサシバが暴れないように被せる大きな布袋が欲しいところですけど、そんな便利な物は持っていません。
この日の私は軽装(タンクトップと短パン)なので、素手で猛禽類を捕獲しようとしたら鋭い鉤爪や嘴で怪我しそうです。(流血の惨事)
長考の末に、救出用の長い棒を探すことにしました。
辺りを探し回り、アカマツの枯れ枝を折り取ってきました。
いまいち細くて頼りない上に長さもギリギリですけど、これでなんとかするしかありません。
サシバを怖がらせないように、脱出用の枯れ木を見せながらゆっくり目の前に差し出してみました。
怖がって暴れるかと思いきや、サシバは不思議そうにキョトンと見上げています。
衰弱しているのかな?
溺れる者は藁をも掴む…はずなのに、どうも私の意図を察してくれません。
私が近くに居たのでは警戒・緊張して、脱出どころではないのかもしれません。
岸に枝の端を立てかけたままで、私がしばらくその場を離れることにしました。
他所で用事を済ませてから(12分後に)戻ってみると、いつの間にかサシバは棒の長さの半分近くまで自力で登っていました。
もし三脚を持参していれば、無人の監視カメラで録画したかったところです。
どうやらサシバの足には怪我が無いようで、安心しました。
今にも飛んで逃げられそうな気がして撮りながら近づくと、シジュウカラ?の警戒声♪が近くで聞こえました。
窮地に陥った猛禽類に対してここぞとばかりにモビング(擬攻撃)するため集まっていたのかもしれません。
水路内に立てかけた枯れ木の端を岸壁に固定する手段が無かったので、とても不安定な状況です。
サシバが岸まで登ろうとするとバランスを崩して枯れ木ごと水路にまた落ちてしまいそうなのが一番の心配でした。
つまり、このまま放っておく訳にはいかないのです。
サシバが乗った枯れ木を私がそっと水から引き上げて、ゆっくり岸の地面に置きました。
その間、幸いサシバは逃げたり暴れたりしませんでした。
随分ヒト馴れしているというか、未だヒトを恐れることを知らない幼鳥なのかな?
ずぶ濡れでもサシバの体重はさほど感じず、軽いので拍子抜けしました。
カメラを鳥に向けておく余裕がなくて、肝心の救出シーンが撮れずに残念。
救出直後もサシバは呆然とした様子でキョロキョロしています。
カメラのちょっとした動きに驚いて翼を広げ、向きを変えました。
しばらく私の顔をじっと見てから、遂にサシバ♂が力強く飛び立ちました!
飛翔能力は正常そうです。
どこにも外傷が無くて良かったです。
サシバは用水路の上を飛んで上流へ向かい、羽ばたきながら白い糞を大量に排泄しました。
水路脇に生えたクリの灌木に止まった直後に甲高くキンミー♪と繰り返し鳴きました。
特徴的な鳴き声から、このとき初めてサシバと確信できました。
樹上で身震いして羽根の水気を切っています。
即席の救出作戦がこれほど上手く行くとは思いませんでした。(自画自賛♪)
鷹匠になったような気分も少しだけ味わえ、貴重な体験でした。
※ 動画編集時にラストの樹上シーンのみ自動色調補正を施しています(@5:40〜)。
つづく→樹上で脱糞するサシバ♂(野鳥)
2015年7月中旬
▼前回の記事
死んだハシボソガラス(野鳥)の生物分解
昨年の夏(2014年7月下旬)にハシブトガラス(Corvus corone)の死骸を見つけました。
当時は気づかなかったのですが写真を見返すと、口の中が赤いので巣立ったばかりの幼鳥のようです。(成鳥は口の中が真っ黒)
自分で餌が上手く取れずに餓死したのですかね?
(解剖して胃内容物を調べるには、死骸の発見が少し遅かったです。)
幼鳥とは言え、カラスを襲う天敵が思いつきません。
もし万一、死因が鳥インフルエンザなら感染のリスクがあるかも…と心配したものの、杞憂に終わりました。(※追記参照)
せっかくなので、頭骨の標本を作ってみました。
全身骨格標本や剥製を作るのは物凄く手間がかかりそうなので、頭骨に絞りました。
ハシブトガラスから全身骨格標本を作る方法を詳細に解説したサイト(生物教材として骨格標本を作っておられる専門家)を後になってから見つけました。
私はほぼ自己流でやってしまいました。
完成がここまで遅れたのは、一気に仕上げず作業の途中でかなり放置してしまったからです。
亡骸を採集してから4日後に、作業開始。
ほとんど羽と骨のみで、干からびていました。
死臭も少なく、ハエもほとんど来ません。
死骸の接地していた側の肉や内臓は生物分解されていました。
まずカッターナイフで首の皮と頸骨を断ち切りました。
頭部を水で煮て除肉します。
沸騰するとアクと悪臭が大量に出ました。
何度も頭を裏返しながら弱火で煮ます。
嘴の中に舌骨が見えます。
眼球を支える強膜骨をきれいに残す方法が分からないので、取り除いてしまいました。(元から眼球は食われていたかも?)
このまま7ヶ月以上も室内に放置された頭骨は褐色に色素沈着していました。
もしかするとこの期間にカツオブシムシなどが乾燥組織を食べに来ていたかもしれません。
上下の顎が外れてしまいました。
タンパク質分解酵素を含むポリデント(入れ歯洗浄剤)処理は手軽ですけど、関節がばらばらになる失敗が怖いので、ただ水に浸してじっくり腐らせることにしました。
ペットボトル容器に頭骨を入れ水道水をなみなみと注ぎました。
サランラップで覆い、更にビニール袋で三重に密閉してから、保管します。
室温放置で丸2ヶ月が経過したので、頭骨を取り出してみました。
水は少し濁っていたものの、特に腐臭はしませんでした。
取り出した頭骨を水洗い。
嘴をキャップ状に覆う銀色の組織は、指で擦るだけで剥落しました。
関節?が今にも外れそうなので、歯ブラシで擦ったり漂白処理するのは中止。
後は自然乾燥するだけです。
脱脂処理(アセトン)も漂白処理(過酸化水素水)もしていない手抜きです。
(薬品の入手や廃液の処理が面倒そう)
頭骨標本を売り物にする訳でもありませんし、純白の白骨にしなくても、自然な色合いで満足しています。
充分に乾いてから側頭部の細長い骨を木工用ボンドで接着しました。
上下の嘴の先端をがしっかり噛み合わせようとすると、後頭部の接合部が浮いてしまいます。
何か重要な骨を紛失してしまったかな?
下顎の骨を間違って上下逆にしてますかね?
上下の嘴を接着せず、下顎にただ頭骨を乗せているだけです。
余った謎の骨は頚椎骨と舌骨の一部でしょうか?
舌骨と強膜骨を失ってしまったこと以外、初めてにしては満足の行く出来栄えでした。
頭骨の重量を量ると、上が2.1g、下が0.8gの計2.9gでした。
空を飛ぶために、おそろしく軽量化されているのですね。
実際に頭骨標本を手に取ってみると、あれほど賢いカラスの脳容量が小さいことに驚きます。
頭骨のほとんどは眼窩が占めています。
それでも他種の鳥類と比べれば破格に頭でっかちなのかもしれません。
【追記】
中村眞樹子『なんでそうなの 札幌のカラス』という本によると、
高病原性鳥インフルエンザに感染しやすいのはキジ類やカモ類などの鳥たちで、カラスが感染する可能性は低いとされています。 (p193より引用)
他にもカラスがよく罹る病気として、クル病やペローシス(腱はずれ;perosis)、鳥ポックスウイルス感染症、ウェルシュ菌などによる腸炎が詳しく解説されていて、とても勉強になりました。
2014年12月下旬
雪に埋もれた庭の生ごみ堆肥化容器(コンポスター)内で1匹のネズミ(種名不詳)が死んでいました。(写真なし)
生ゴミの天辺で横臥していた死骸を採集すると、左首の側面に鳥に深く突かれたような謎の傷跡がありました。
実は半年前の夏に、同じコンポスター内に地中からトンネルを掘って出入りするネズミを見かけています。
▼関連記事
コンポスト内に出没するネズミの仲間【名前を教えて】
餌の少ない厳冬期に居心地の良い(暖かい)堆肥の中でネズミ同士で死闘を繰り広げたり共食いしたのでしょうか?
(たとえば以前、室内のゴミ箱の中に落ちて脱出不能になったハツカネズミが共食いしていました。)
それとも、近くで拾った死骸を誰かがここに捨ててくれたのかな?
野鳥(モズなど猛禽類?)がネズミの急所に致命傷を与えたのなら、なぜ持ち去って捕食しなかったのか謎です。
実は6日前、早朝の雪かきの際に生きたネズミがコンポスター脇の新雪を走り去る姿を目撃しています。
雪国でも冬眠せずに活動するネズミがいるとは、ネズミに疎い私にとって新鮮な驚きでした。
せっかく野生動物の死骸が手に入ったので、頭骨標本作りに挑戦しました。
まずは写真に記録、採寸。
体重を測るのを忘れました。
前足はX本指、後ろ足は5本指。
このとき風邪気味だった私は、生ごみにまみれた不潔な死骸をじっくり調べる気力がありませんでした。
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15cm定規を並べる。 |
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尾長≧頭胴長ならばクマネズミ |
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大きな耳(前に倒して目が隠れればクマネズミ) |
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左首の傷 |
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前足の裏を撮るのを忘れた。 |
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後ろ足 |
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右後足の裏 |
ネズミ類に疎い私は、この死骸が家ネズミなのか野ネズミなのかも分かりません。
最近『リス・ネズミハンドブック』という手頃な図鑑が出版されたみたいなので、いつか調べてみます。
とりあえず手元にある『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』と見比べてみると、クマネズミまたはドブネズミではないか(なんとなくクマネズミ?)と思うのですが、どうでしょう?
【追記】
コメント欄にておーやぎさんよりヒメネズミ(Apodemus argenteus)ではないかとご指摘頂きました。
ゴム手袋を着用し、カッターナイフで断頭。
一刻も早く煮沸消毒したかったので、頭部を10分間水煮しました。
体を捨てる前に、開腹解剖してみました。
内臓には特に異常はなさそうです。
この日とにかく体調の悪かった私は、胃内容物を調べる気になれませんでした。
今思うと、内部生殖器官をしっかり見れば性別が分かったかもしれませんね。
『リス・ネズミハンドブック』p3によると、
雌雄の判別は、♀では尾の付け根の腹側に肛門がある。肛門と尿道孔の間が短い。♂は肛門からペニスまでの間が長く、成獣では清掃が大きくなっていて膨れている。
次にピンセットで顔の皮膚(毛皮)と筋肉を粗取りしました。
顎が開かないのは死後硬直ですかね?
大まかに除肉した頭骨を再び弱火で5分強、水煮しました。
皿洗い用の洗剤(界面活性剤)も少量加えました。
次に水洗いしながら柔らかい綿棒で脳を掻き出しました。
頭骨は薄く半透明でした。
脳をピンセットなどで手荒に掻爬するのでは、繊細な頭骨を突き破ってしまいそうなので要注意。
舌をピンセットで引き抜きました。
鳥類と異なり、おそらく舌骨は無いようです。
ネズミの鼻先は軟骨?
未だ頭骨にへばり付いて取り切れていない細かな組織を、どう処理するか問題です。
方法は色々とあるみたいですけど、今回も入れ歯洗浄剤で溶かすことにしました。
中性の類似商品が多いなか、弱アルカリ性の部分入れ歯用ポリデント錠(漂白剤、界面活性剤およびタンパク分解酵素を配合)を使用。
説明書を読んでぬるま湯(32℃)150mLにネズミの頭骨を浸しポリデント1錠を投入するとすぐにシュワシュワと発泡が始まりました。
爽やかなミントの香りが漂います。
アルミ箔で蓋をして、浸け置きしました。
室温が低いので、分解反応が鈍かったかもしれません。
一晩漬け置きした翌日、歯ブラシで軽く擦りながら頭骨を水洗い。
細かい肉片を爪楊枝で丹念にほじくり出しました。
首につながる後頭部が少し破損していたのが残念でした。
鳥に襲われた際に負傷したのか、それとも死骸から頭部をゴリゴリと力任せに切り落とした衝撃で割ってしまったのだろうか?
外傷があったのは首の左側で、後頭部の頭骨左側が砕けていたことから、前者の可能性が高いと思います。
もしかするとネズミぐらいの小動物なら、素人が下手に頭骨だけ標本にするよりも全身骨格を作るつもりの方が結果的にきれいな仕上がりになるのかもしれません。