2016/01/06

泥巣を閉鎖するヒメクモバチ♀b【10倍速映像】



2015年9月下旬・午後13:11〜14:18

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#2


ヒメクモバチ♀(旧名ヒメベッコウ;Auplopus carbonarius)の造巣行動をいつか微速度撮影してみたいと思っていました。
絶好の機会にウキウキしながら、境界標の前に三脚を据えて約1時間の長撮りをしてみました。
営巣基質の境界標は地中に打ち込まれているため、いくら風が吹いても「動かざること山の如し」で、微速度撮影の対象として適しています。
育房群の全体を厚い泥で覆い隠そうとしている最終段階を10倍速の早回し映像でご覧ください。
巣材の泥玉を新たに付け足した部位は湿っているので黒点として見えます。
しばらくすると泥が乾いて周囲と同じ色になります。
母蜂は気紛れというか毎回違う場所にせっせと巣材を付け足していることがよく分かります。
ランダムに付け足すことで、乾くまでの待ち時間を節約できますね。
「山」の字の右側の縦溝を主に埋めているのですが、その下の文字「形」の凹みにもときどき巣材を付け足しています。
境界標を歩いて降りるのは巣材集めのためで、飛んで泥巣を離れるのは水を飲むためです。
水を吐き戻しながら土と混ぜて泥玉を作るために、ほぼ採土5回に対して1回の割合で吸水が必要になるようです。
映像の後半になると蜂は造巣を止め、巣上での休息が増えました。

これだけの泥巣を建造するのにヒメクモバチ♀は一体何往復して巣材を運んだのだろうと想像すると気が遠くなります。
ご覧の通り山形県に泥を塗る不届き者の蜂ですけど、洒落の分かる知事さん辺りが鶴の一声で「県の蜂」に指定してくれたら嬉しいなー!…という初夢を見た。

ヒメクモバチは『ファーブル昆虫記』にも登場する由緒正しい蜂です。


ヒトを刺しに来ることはありませんし、大人しくて可愛らしい蜂ですので、成虫や泥巣を見つけても目の敵にしないで暖かく見守ってください。

この母蜂が巣材を集めてくる採土場は意外な所にありました。

つづく→#3:営巣地の直下で採土するヒメクモバチ♀b



ノダケの花蜜を吸うシロスジベッコウハナアブ♀とメスグロヒョウモン♀



2015年9月下旬

林縁の農業用水路沿いの草むらに咲いたノダケシロスジベッコウハナアブ♀(Volucella pellucens tabanoides)とメスグロヒョウモン♀(Damora sagana)が同じ花序で仲良く吸蜜していました。
花から飛び立ったシロスジベッコウハナアブ♀は次に近くのイヌタデの花穂に止まりました。(撮り損ね)

地味な花ですけど、今回初めてノダケという植物の名前を知りました。

多くの図鑑などでは、分布は「本州(関東地方以西)」とあるが、東北地方でも分布が確認されている。(wikipediaより)



2016/01/05

境界標に作った泥巣を閉鎖するヒメクモバチ♀b



2015年9月下旬・午後13:00〜13:10

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#1


里山の参道沿いに県の境界標が地面に何本も打ち込まれています。
コンクリートで出来た境界標の東側面に刻印された「山形県」という文字の窪みに泥巣を作っている黒いハチを見つけました。
同定のため蜂を採集すべきか迷いましたが、造巣行動をよく観察すると腹部を屈曲して腹端をコテのように使って巣材の泥玉を塗り伸ばしています。
この特徴的な行動からヒメクモバチ(旧名ヒメベッコウ;Auplopus carbonarius)だろうと判りました。
この辺りでは普通種ですけど、これまでに蜂を個体識別して定点観察したり飼育したりと手を替え品を替え何年もしつこく調べ続け、私と付き合いの長いクモバチです。

今回見つけた営巣地は標高360m地点で、周囲の環境はスギと雑木林の混合林。
コンクリート製の境界標を採寸すると、12.5×12.5×40cm。
側面に刻印された「山」の字の第1、3画の縦線(溝)の長さと幅は各々5cm、1.5cm。

おそらく営巣末期で、クモを貯食した育房群の全体に泥を厚塗りして埋めようとしているようです。(泥巣閉鎖)
泥玉を咥えた蜂が境界標の下から登って来ました。
口に咥えた泥玉に水を吐き戻しつつ噛み解しながら泥巣上を歩き回り、触角で泥巣表面を探りながら巣材を付け足す場所を慎重に選定しています。
腹端を叩きつけて巣材を塗りつけると、触角を一拭いして軽く身繕い。

付け足したばかりの新鮮な泥は黒っぽく点のように見えますが、乾くと灰土色になります。
ヒメクモバチ♀は休むまもなく境界標を歩いて下に降り、最後は地面に飛び降りたところで見失いました。

巣材は一体どこで集めてくるのでしょう?


つづく→#2:泥巣を閉鎖するヒメクモバチ♀b【10倍速映像】


泥巣@境界標b・全景
隣の同形の境界標cの裏面

実は同じ参道沿いに数メートル離れたところにもう一本の境界標があり、そこにも別個体のヒメクモバチ♀aが同様に営巣していました。(映像なし)
先に見つけた♀aは泥巣を守るように静止してばかりで殆ど離れないので面白くありません。
活発に造巣している個体♀bに注目して撮影することにしました。
2匹のヒメクモバチ♀はおそらく同じ泥巣から羽化した姉妹ではないかと想像しました。
巣材の盗掘や労働寄生など互いに交流があれば面白そうです。


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