2015/11/10

網にかかって暴れる蛾を仕留めて捕食するトリノフンダマシ♀【蜘蛛:暗視映像】



2015年8月下旬・深夜2:26〜3:03

トリノフンダマシ♀の定点観察#8


いつの間にかトリノフンダマシ♀(Cyrtarachne bufo)がまた隠れ家を離れていました。
水平円網の中央付近にかかって暴れている蛾e(種名不明)が逃げられる前に処置するため現場に急行したようです。
蛾がいくら激しく羽ばたいても、強力な粘着糸から逃れられません。
駆けつけたクモが獲物の胸部付近に噛み付いて毒液を注入しました。
しかし意外とクモ毒に即効性はないようで、蛾の脚がしばらく動いています。
クモは一旦獲物から離れ、毒が回るのを待っているようです。
糸を弾いて獲物の動静を探っています。
再び獲物に噛み付きました。

次に、仕留めた獲物を網から外す作業にクモは手こずっています。
獲物が網にかかると際に粘着糸の一端が切れるはずですが、たまたま今回は切れなかったようです。(甑付近だから?)
獲物が網にかかっても粘着糸が切れないと、回収にかなり手間取ってしまうようです。
うっかり手足が滑らせたクモが宙吊りになっても、蛾は網から剥がれません。
クモが悪戦苦闘している手前には別の蛾f(シャクガ科)も網にかかって切れた粘着糸に宙吊りになっていることに気づきました。(@4:42)
こちらの獲物fは擬死状態です。
蛾fの写真を見直しても翅裏しか見えないので難しいのですが、ユウマダラエダシャク(またはその仲間)かもしれません。
性別は見分けられません。





いつもお世話になっている新・蛾像掲示板に投稿して問い合わせたところ、hitoriさんより以下のご教示を頂きました。
ユウマダラエダシャクは後翅前縁基部付近に出っ張りがありますが、写真の個体は出っ張っていないように見えるので同属の別種ではないでしょうか。この属の触角は♂は微毛を生じる鋸歯状、♀は微毛状らしいので触角をちゃんと見れば雌雄の区別ができると思います。
という訳で、Abraxas sp.としておきます。

触角の拡大写真



赤外線投光機のバッテリーが消耗したせいでピントが合わせにくく、肝心の梱包ラッピング作業がピンぼけになってしまいました。
クモはようやく周囲の糸を噛み切って獲物を網から外すと、歩脚の先から糸で吊り下げました。(@7:23)

左にスルスルと綱渡りして隠れ家に持ち帰ります。
ヤマグワの幼木に達すると真っ先に食べ残し(蛾d)を確認し、これに糸を巻きつけてラッピングし直しました。
新たに運んできた獲物(蛾e)は隠れ家に近い枠糸の途中に固定しました。
右にパンすると、網に放置された蛾fが糸で吊り下げられたまま相変わらず死んだふりをしています。
クモは隠れ家に体を固定すると、食べかけを手繰り寄せて捕食を再開。
こうした食事の手順(ルーチン)はこれまでと全く同じです。

つづく→#9:網が壊れたトリノフンダマシ♀の狼狽【蜘蛛:暗視映像】



ムモンホソアシナガバチ♀同士の栄養交換



2015年8月中旬

石灯籠内で営巣するムモンホソアシナガバチの定点観測記録#3


まる一ヶ月(31日)ぶりに様子を見に行くと、コロニーは小規模のままなのに、ムモンホソアシナガバチParapolybia indica)♂(雄蜂)が羽化していました。
雄蜂はほっそりした体型で長い触角の先がカールし、顔色が白いのが特徴です。
いつものように、初めは赤外線の暗視カメラで暗い石灯籠内部を撮ります。
在巣の蜂の構成は♀3♂1で、育房を点検して回ったりおとなしく身繕いしたりしていました。

次に白色LEDを点灯すると、♂は複眼が黒いので羽化したばかりと判明。
巣盤上部に居る2匹の♀成虫間で口づけを交わし栄養交換しています。

※ 動画では撮影した順番を入れ替えて編集しました。(メインのトピックを先に紹介)

つづく→#4:発達の悪いムモンホソアシナガバチの巣




【追記】
松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』を読むとホソアシナガバチの順位性について驚くことが書いてありました。
ホソアシナガバチの社会は、一頭の女王と、10数頭の働きバチによって構成されている。女王は、働きバチにたいして絶対的優位の立場にあるが、働きバチのあいだには、ほぼ直線的な順位関係がみられ、早く羽化した個体ほど劣位の地位を占める。(中略)既知のアシナガバチ属では、新しく羽化した個体ほど劣位となる傾向があるのとくらべ、まったく逆の関係になっている。
ホソアシナガバチの分業の特色は、肉団子、蜜、巣の材料など、すべての採集活動が、最初に羽化した3〜4頭の下位グループの働きバチに集中していることである。 (p205より引用) 
私もいつかホソアシナガバチの巣の構成員を個体標識して確かめてみたいものです。


2015/11/09

トリノフンダマシ♀(蜘蛛)が3頭目の蛾をラッピング、運搬、捕食【暗視映像】



2015年8月下旬・深夜1:24〜2:17・気温17.5℃(@1:37)

トリノフンダマシ♀の定点観察#7


監視中に居眠りしていた訳ではないのですが、ハッと気づいたときには隠れ家にトリノフンダマシ♀(Cyrtarachne bufo)が不在でした。
たまたま夜蛾が飛来するも、網にはかかりません。
このときクモが食べ残した蛾cの死骸に触れて飛び去ったのは、性フェロモンが残留しているのかもしれません。

ようやく見つけたクモは、水平円網の中央部にかかっていた蛾d(種名不明)を捕獲しに向かっていました。
水平円網を上から見下ろすアングルでは奥ピンになりがち(背景の草むらにピントが合ってしまう)なので、ハンディカムを手で持って網の下に潜り込み見上げるアングルで撮影しました。
画面が暗いのは、赤外線投光機のバッテリーが消耗したせいです。
クモは手早く梱包ラッピングしてから甑を経由して隠れ家まで獲物を持ち帰ります。
スルスルと綱渡りで隠れ家に戻ると、すぐに食べ残し(蛾c)に食いつきました。
食餌を再開しつつ、食べ残し(蛾c)をラッピングし直しています。
新鮮な獲物(蛾d)は後回しに残しておくつもりのようで、隠れ家の少し右下に保管しました。
桑の葉先ではなく、放射糸の途中に固定しているようです。

次に気づくとクモは食事を中断して蛾cを手放し、身繕いを始めまていました。(深夜1:29)
体に付いた蛾の鱗粉を念入りに落としているのでしょう。
化粧を済ませ自分の体をしっかり糸で固定すると、食べ残し(蛾c)を手繰り寄せて捕食を再開。



次に気づいた時には、蛾cの食べ滓をいつの間にか捨てていました。(深夜2:16)
食欲旺盛のクモは、予め近くに吊り下げていた蛾dを引き上げました。
獲物の腹端の辺りに噛み付き、体外消化を始めます。

円網に蛾が引っかかる度に粘着糸が切れるので、破損がどんどん進行します。
朝に行われる取り壊し作業を見届けたいのですが、夜明けまでに網はほとんど残っていないのでは?と心配になってきました。




つづく→#8:網にかかって暴れる蛾を仕留めて捕食するトリノフンダマシ♀【蜘蛛:暗視映像】


ランダムに記事を読む