2015/07/08

マイマイガ幼虫を寄主とする寄生蜂の羽化【微速度撮影】



2015年6月上旬・室温23→22℃
▼前回の記事
マイマイガ幼虫(蛾)に寄生したサムライコマユバチの繭塊

雑木林の下草(クヌギの幹に伸びた蔓性植物)にマイマイガLymantria dispar japonica)幼虫と寄生蜂の繭塊を見つけました。
羽化してくる寄生蜂を調べるために、採集して飼育することにしました。
同じ葉の表面と裏面に2組の寄主と繭塊が付いていたので、葉を切り離して別々に隔離しました。
以下の記録では、葉表に居た寄主と繭塊に注目します。



3日後の朝、微小の蜂が羽化していました。
6年前に飼育したときに得られた寄生蜂と似ているかもしれません。(二次寄生蜂かも?)

▼関連記事
マイマイガと二次寄生蜂

寄生蜂が繭から羽化する瞬間を動画に記録するのが一つ目の目標です。
羽化の前兆が不明なので、取り敢えず10秒間隔のインターバル撮影で監視してみることにしました。
すると1匹の寄生蜂が羽化しました。
夜22:02、白い繭の端が開き始めました。
22:03には蜂の黒い頭部が見え始め、次のコマ(10秒後)では既に羽化脱出した寄生蜂が繭から離れた位置に写っていました。
やはり羽化は一瞬なので、インターバル撮影ではなく動画で記録すべきだと分かりました。

引き続き、繭塊を10倍速の動画で夜通し監視・録画しました。
続々と寄生蜂が羽化してきました。
毛虫の下に隠れている繭からも羽化しました。

羽化の予兆は外から見て全く分かりません。

寄主(マイマイガ幼虫)は下半身で繭塊に覆い被さるような姿勢のまま静止しています。
その胸部第2〜3節辺りだけ妙な(不自然な)蠕動が認められました。
まさにその体節の背面および側面に付着している白い米粒のような物はヤドリバエの卵なのかな?
寄主の体内で寄生蜂とはまた異なる寄生者が跳梁跋扈しているようです。
予想通り、後にこの寄主からヤドリバエ終齢幼虫が1匹脱出してきました。(映像なし)
栄養不足だったようで、とても小さな蛆虫でした。(容器内で小さな囲蛹になったものの、成虫は羽化せず。)

▼つづく
マイマイガ(蛾)幼虫の二次寄生蜂(Acrolyta sp.)


池の水を飲むスズメ(野鳥)



2015年6月中旬

溜池の岸辺の階段で一羽のスズメPasser montanus)が物欲しそうにしているので、これはもしや…と予感がして望遠で撮り始めました。
すると案の定、おずおずと水を飲み始めました。

一番下の階段から水面を覗きこんでいます。
危険はないか調べつつ階段を横に移動。
階段の端まで来ると、ここなら目立たないと安心したように、スロープを降りて岸から水面に嘴を浸しました。
群れではなく単独行動のためか、かなり辺りを警戒しているようです。
上空を飛来したカラスに驚いて、飛んで逃げました。


スズメの飲水行動を観察できたのはこれが2回目です。
行動から意図や予兆を読み取るのが肝心だと分かってきました。

▼関連記事
川の水を飲むスズメの群れ(野鳥)

※ YouTubeの動画エディタで自動色調補正を施してあります。




2015/07/07

マイマイガ幼虫(蛾)に寄生したサムライコマユバチの繭塊



2015年6月上旬

平地の雑木林でクヌギの幹にマイマイガLymantria dispar japonica)の幼虫が大量に止まっていました。
今年もやはり大発生したようです。
昼間はこのように樹皮に隠れて休み、夜になったら枝に移動して葉を食害するのかもしれません。(実際に夜に観察しに行ったら分かるはずです。)
それとも樹皮に静止している幼虫は、脱皮や営繭する前の眠のステージなのでしょうか?



▼関連記事(前年に同じ場所で撮影)
クヌギの木に群がるマイマイガ(蛾)老熟幼虫

害虫扱いされているマイマイガの強力な天敵として期待されるのが寄生蜂です。
クヌギ樹皮の裂け目の奥に潜む一頭のマイマイガ幼虫の体内からサムライコマユバチの一種(例えばブランコサムライコマユバチ[Protapanteles liparidis])と思われる寄生蜂の幼虫が一斉に脱出して近くに繭塊を紡いだようです。
小さな白い繭が10個集まっていました。
寄主の毛虫は体内を食い荒らされても未だ生きていて、虫の息ながら自発的に少し動きました。
頭部を繭塊に向けていて静止しています。
自由に徘徊したり摂食したりする運動能力は奪われているようです(単に弱っているだけ?)。
捕食寄生されたマイマイガ幼虫がこのまま死ぬまで寄生蜂の繭塊を守るように行動操作されているかどうか、昔から非常に興味があります。
寄生蜂の繭に更に寄生する二次寄生蜂がいるので、もし無防備な繭を守るボディガードとして寄主(マイマイガ幼虫)をマインドコントロールで雇うことができれば有利になります。

▼関連記事(6年前に調べた映像)
マイマイガ幼虫から脱出した寄生蜂の繭
6年ぶりにチャンスが巡ってきたので、調べてみることにしました。
草の茎の先で毛虫をつついてみました。
体に触れると威嚇する(嫌がる)ぐらいの元気は残っていました。
元気な個体なら触られると這って逃げ出すはずですが、そのような運動能力はないようです。
(おそらく体内の筋肉や運動神経が食い荒らされているのでしょう。)
幹を上下するアリが毛虫や繭塊を攻撃してくれないかと期待したのですけど、横を素通りするだけでした。
アリは力関係でマイマイガ幼虫よりも弱く、近寄りたがらないことを示す映像が後日撮れました。(映像はこちら
寄生蜂による行動操作の可能性については、残念ながら今回もはっきりした結論は得られませんでした。

実験のアイデアとして、確かめるべきことは明快です。
  • マイマイガ幼虫を寄生蜂の繭塊から少し離した時に自力で繭塊の傍に戻ってくるかどうか?
  • 寄生蜂の幼虫が脱出した後の寄主を解剖して筋肉や内臓器官の状態を調べる。
  • 寄生蜂の繭塊から寄主のマイマイガ幼虫を除去した場合と残した場合とで、二次寄生を受ける割合がどう変化するか?(素人が想像するに、二次寄生蜂の分布が一様とは限らないので、フィールドではかなり多数のデータを取って統計処理しないといけない気がします。)
  • それならむしろ飼育下で直接的に実験した方が楽かもしれません。(二次寄生蜂♀をどうやって手に入れるか?)



実はこのクヌギの木の下草で、同じく寄生蜂の繭塊に随伴するマイマイガ幼虫を3頭見つけました。
羽化してくる寄生蜂を調べるために、採集して飼育することにしました。
クヌギの樹皮からは採集しにくかったので、映像の個体は見送りました。

つづく→寄生蜂の羽化(微速度撮影)


【追記】
動物行動の映像データベースに「サムライコマユバチに操作されボディーガードとして振る舞うマイマイガ幼虫」と題した動画が公開されています。その説明文を読んでもタイトルのように寄主操作を言い切ってしまって良いのか、個人的には疑問です。私と似たような簡単な実験をしてるのですが、繭塊に覆い被さっている毛虫に直接触れたら嫌がるのは当然です。近くにある寄生蜂の繭塊だけに触れた時にも毛虫が威嚇・防御するかが問題です。

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