2014/11/27

ミズナラの幹で休むカブトムシ♂



2014年8月中旬

里山の雑木林で定点観察に通っているミズナラの木bは樹液の分泌が涸れてしまったようです。
もう樹液の発酵臭も無くなり、ほとんど虫が来ていません。
ところが幹の根元付近にカブトムシ♂(Trypoxylus dichotomus)が静止していました。
雨上がりの日光に照らされて黒光りしています(焦げ茶色)。
角の発育状態があまり宜しくない個体でした。

木登りしたりせず動きに乏しいのは、カメラを警戒しているのか、それとも昼間は寝ているのかな?
幹から浮かせた右後脚の爪先だけをかすかに動かしています。
口元を接写するとときどき口吻が動いているのですが、樹液を舐めていないと思います。
樹皮をよく見ても樹液は滲んでいません。
触角と口髭がわずかに動いています。

※ マクロレンズで接写したシーン(@1:37〜)のみ動画編集時に自動色調補正を施してあります。



【追記】
小島渉『わたしのカブトムシ研究』p24によると、
カブトムシは、樹液の出ていない木でも自ら口器で傷をつけ、樹液を出すことがある。(中略)日本のカブトムシでもときどき観察される。
しかし映像の個体がそれをやってるとは思えません。




2014/11/26

モンスズメバチ♀の巣を冷やす扇風行動【HD動画&ハイスピード動画】



2014年8月中旬

▼前回の記事
寄主モンスズメバチ♀の巣の近くに産卵するムツボシベッコウハナアブ♀

モンスズメバチの巣の定点観察5

クヌギの樹洞に営巣したモンスズメバチVespa crabro flavofasciata)のコロニーを観察していると、途中からワーカー♀が扇風行動を始めました。
巣口の上半分を塞ぐ被膜にぶら下がったり樹洞の縁に掴まったりしながら激しく羽ばたき、巣内に新鮮な外気を送風して冷却しています。
これまでミツバチやアシナガバチでは同様の扇風行動を観察していたのですけど、スズメバチ類では初めてでした♪
扇風役の顔はいつも必ず外を向いて巣内に送風しています。
これはニホンミツバチの扇風行動と同じ向きでした。
ニホンミツバチの場合はオオスズメバチの襲撃を警戒し、巣内の匂いが外に漏れないように注意しているそうです。
(ちなみにセイヨウミツバチの扇風行動は逆向きで、熱気を巣から排気します。)
モンスズメバチが扇風行動を始めるとブブブブ…♪という重低音の羽音が長時間響くので、離れた所からでもすぐに分かります。

樹洞で羽音が反響するのかもしれません。
巣口が狭いため、扇風役は必ず1匹のようです。
(樹洞の奥に引っ込むと暗くて羽ばたきが見えなくなります。)

扇風行動の動画を撮る度に外気温を測ると、初めは30℃で以降は26℃、25℃まで下がりました。

剥き出しの巣盤を作るアシナガバチではこの程度の気温(暑さ)で扇風行動を始めることは無いので、不思議な気がしました。
森の中なので体感でもそれほど暑いとは思いませんでした。
また気温の下がる夜になってもモンスズメバチの扇風行動は続いたので(映像公開予定)、もしかすると巣内の空冷というよりも、二酸化炭素(CO2)を換気するための行動なのかもしれません。
樹洞内の温度を測定したいところですが、防護服を着用しないと危なくて近寄れません。
ついでにファイバースコープ・カメラがあれば巣盤の様子を観察できるのになー、と無い物ねだりしてみる。

扇風役がぶら下がる被膜の左部分を別個体が増築し始めました(@1:57〜)。

扇風役の蜂が巣造りの邪魔になっているのですけど、横にどかずに居座っています。
巣造りよりも扇風行動を優先するようです。
考えてみれば、樹洞を被膜で完全に密封するのではなく出入りする巣口を残す必要がある訳ですから、これで上手く行くようです。




扇風行動を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。
1/8倍速のスローモーションでも扇風役の羽ばたきは未だ速過ぎて見えません。
しかし帰巣する蜂が近づくと、扇風役の♀は警戒して羽ばたきを一瞬だけ止めることが分かりました。
狭い巣口ですれ違うには扇風の羽ばたきを止める必要があるのでしょうか。
扇風役は門衛としての役目も兼ねていて、出入りする外役♀を誰何すいかしているのかもしれません。
帰巣した♀と口移しの栄養交換をすることもありました。
また、扇風を止めて自ら出巣することもありました。
空腹になり栄養補給に出かけたのかな?


この樹洞はモンスズメバチの引越巣なのか?

『スズメバチの科学』p171より用語の解説

巣の引っ越し(nest relocation)
モンスズメバチとキイロスズメバチにおいて越冬後の女王蜂によって狭い空間に巣が創設された場合、巣の発達に応じて広い場所に新たな巣を造り移動すること。最初の巣を母巣(primary nest)、後の巣を移動巣(第二次巣:secondary nest)という。

※ 巻末の用語集が充実しているところが、この名著の素晴らしい点のひとつです。

モンスズメバチの巣を初めて見つけたこの日、どうして蜂がこれほど興奮したように巣の回りを飛び回り忙しなく巣に出入りしているのか、不思議でなりませんでした。
この状態がモンスズメバチでは普通なのかな?
味方同士の空中戦が頻発するほど興奮しているのは外敵に対して極度に警戒しているのでしょうか。
それにしては撮影する私を攻撃する様子は全く見られませんでした。

実はこの樹洞に引っ越してきたばかりの移動巣なのではないかという気がしています。
理由は以下の3点。

  1. 私が観察を始めた当初は扇風行動をしていなかったのに途中から扇風行動を始めた。以降は交代しながら昼夜を問わずほぼ絶え間なく扇風を続けている。
  2. 並行して外被の被膜を増築して巣口を狭くする突貫工事をしている。
  3. 9日前に近くで別の撮影を長時間した時には、クヌギ樹洞にモンスズメバチの巣があることに気づかなかった。(私が見落としていた可能性もありますが…。)

母巣から続々とワーカーが引っ越してきて巣内の個体密度が上がって暑くなり、女王が産卵を始めたので蜂の子のために巣内温度を適切に保つ必要が出てきたのではないでしょうか。
母巣から続々と移って来るワーカーを迎え入れたり、新たに巣の位置を記憶する定位飛行を繰り返したりしていたために、
樹洞の周囲で激しく飛び回りコロニー全体が興奮したように見えたのではないか、という解釈です。
あれこれ好き勝手に想像するのは楽しいですけど、タイムマシンに乗って時間を遡らない限り真相は不明ですね…。
せめて半日早くから観察を始めたかったです。
斥候役が移動巣(第二次巣)の樹洞を選定して母巣からコロニーの仲間を呼び寄せる際にもし集合フェロモンを使うのであれば、樹洞の縁で逆向きに止まって(顔を樹洞内に向け)フェロモン拡散のための扇風を行ったかどうか興味があります。
ミツバチではそのような「匂い扇風」行動も知られています。

▼関連記事
ニホンミツバチの匂い扇風?

更にこの夏はキイロスズメバチの移動巣を観察する僥倖に恵まれたのですけど(こちらは確実に引越巣)、その記録はまた記事を改めて報告します。

つづく→シリーズ#6:夜の営巣活動(扇風行動・造巣)



スジアカハシリグモ♀(蜘蛛)による卵嚢保護



2014年8月中旬

山道でアカソ?の葉にスジアカハシリグモ♀(Dolomedes saganus)が乗っていました。
日向ぼっこ(日光浴)しているのでしょうか。
腹面に丸い卵嚢を抱えガードしています。
撮りながら慎重に撮影アングルを変更すると、意外にも逃げません。
振動に反応して歩脚を一瞬動かしただけです。
背側から見ると、左の第二歩脚が根元から欠損(-L2)していました。

採寸代わりに右手の人差し指をクモの横に並べて写し込んでも逃げません。
クモの背後から歩脚に触れると驚いて駆け出し、隣の葉に素早く移動しました。
もう一回触れると葉先へ移動。
更にその葉を揺らすと下の葉に跳び下りました。
逃げるときも卵嚢を持ち歩きます。



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