2014/02/11

汗を舐めるシタキモモブトスカシバ(蛾)の停空飛翔【ハイスピード動画&HD動画】



2013年8月上旬

登山道の東屋で休憩していると、一頭の蛾(スカシバガの一種)がどこからともなく飛来しホバリングしながら私の脚にまとわりついてきました。
濃い脛毛がお見苦しいのですが、毛深い「腿太」同士の奇跡の邂逅です。
これぞまさに「類は友を呼ぶ」♪

よく見ると、蛾は口吻を伸ばして私の体表から汗を舐めています。
ミネラル(塩分)補給しているのでしょう。
汚物やヒトの汗に集まる蝶は珍しくありませんけど、蛾では初めて見ました。
しぐま汁がよほど気に入ったのか、私がじっと立っていると繰り返し飛来します。
ズック靴の甲から靴下、脛へと吸汁ホバリングしながら登って来ました。
単なる脚フェチではなく、足の匂いフェチなのかな?(フェロモン成分と似ていたりして…。)
脛毛も気にせず素足の脛から吸汁を続けます。
近寄ってきたクロアリに驚いて飛び去っても、すぐに戻ってきます。

停空飛翔(ホバリング)を240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
吸汁の間は前脚を掛けつつも、決して羽ばたきを止めません。
高速で羽ばたく翅の動きは、1/8倍速のスローモーションでも速すぎてよく見えません。

ホバリング中に毛深い後脚を左右交互に動かしているのが興味深く思いました。
羽ばたきの風圧で毛束がなびいているだけなのかと初めは思いました。
ところが『擬態:だましあいの進化論〈1〉昆虫の擬態』という本によると、深い意味があるようです。

(オオモモブトスカシバやシタキモモブトスカシバは訪花の際に)前脚を花にかけて空中で翅をはげしく動かしてホバリングしながら、セイヨウミツバチやマルハナバチ類のように後脚を「く」の字に曲げて交互に動かして吸蜜しながら花から花へと移動していく。飛翔しながら後脚を「く」の字に曲げて交互に動かす行動は、ミツバチ類とまったく同じである。(p68-69)

関連記事(横から見た映像が分かりやすい)→「シタキモモブトスカシバ(蛾)の吸蜜ホバリング【ハイスピード動画】



同一個体を通常のHD動画でも撮ってみました。
見下ろすアングルでは蛾の口吻になかなかピントが合いません。
せめて私の腕に移動してくれれば撮影しやすいのですが、汗ばんだ腕を差し出してみても、なぜか気に入らないようで逃げられました。
結局、私の脚に戻ってきます。

山中の草むらを歩いて来た際に蛾の好きな花の芳香が脚に付着したのではないか、とコメントをYouTubeで頂きました。

驚いたことに、この蛾は少なくとも4分半以上も私の汗を吸い続けました。
「生きる小型扇風機」が懸命に扇いでくれて、束の間の涼を得ました。

蛾の種類はオオモモブトスカシバMelittia sangaica nipponica)またはシタキモモブトスカシバMelittia inouei)と思われます。
東北地方にはシタキモモブトスカシバしか分布していないのだそうです。
しっかり同定するためにストロボ写真も撮るべきでしたが、動画撮影に夢中になりチャンスを失いました…。


【追記】
有田豊、池田真澄『擬態する蛾スカシバガ (月刊むし・ブックス 3)』という本の口絵 p55 に「指から汗を吸うMelittia sumatrana(スマトラ)」と題した見事な生態写真が掲載されていました。
スマトラ産の同属近縁種が日本産のシタキモモブトスカシバ(Melittia inouei)と同じ習性を持つのは面白いですね。


動画を撮りながらのスナップショットではシャッター速度が遅くて翅がぶれてしまう。

2014/02/10

網にかかったオオアオイトトンボ♀を捕帯でラッピングするイシサワオニグモ♀(蜘蛛)



2013年9月下旬

オオアオイトトンボを捕食するイシサワオニグモ♀:前編(捕帯によるラッピング)

里山の林道脇に立派な正常円網が張られており、中央の甑にイシサワオニグモAraneus ishisawai)♀成体が占座していました。
円網は厳密には垂直ではなく、やや斜めに傾いています。
周囲の環境は、ササの群落、ニセアカシア潅木、スギ幼木、クリの木など。
林道を挟んで反対側にはアカマツが生えていました。
円網の主な枠糸は倒木の枝に付けられており、右側の長い枠糸はニセアカシアの枝先に固定。

夕方で薄暗くなってきました。
近くで生け捕りにしたオオアオイトトンボ♀(Lestes temporalis
)を生き餌として、片側の翅を毟ってから網に給餌してみました。
網の右側に獲物を投げると、クモはすぐに駆けつけて、先ず噛み付きました。
次に大量の捕帯で獲物をラッピングし始めました。
毒液を注入されたトンボが初め少し暴れたものの、すぐに動かなくなりました。
梱包した獲物を円網に糸で固定してから、獲物の周囲にある粘着性の横糸を少しずつ歩脚で切っていきます。
再び獲物を捕帯でラッピングし直します。
梱包をくるくると回しながら、余計な横糸を歩脚の先で切ったり大顎で横糸を噛み切ったりします。
獲物は細長い腹部を折り曲げられてコンパクトになりました。
梱包作業を終えると右第4歩脚で獲物をぶら下げ、甑(こしき)に持ち帰りました。
甑の数カ所に獲物を固定すると、下向きに占座。
ようやく落ち着いたイシサワオニグモ♀は、糸が粘りついた歩脚の先を舐めて身繕い。
最後に獲物を口元に引き寄せると、食事開始。

つづく→後編(捕食シーンの早回し映像)


【追記】
『スパイダー・ウォーズ』p143によると、
梱包ラッピング:ヨコ糸を切断して餌を運ぶ前に行われるラッピング。チョウやトンボなどの大きな(または長い)餌は、梱包しないと途中で網にからまり、網を壊してしまいます。こんなことにならないように、クモは糸を巻きつけて餌を小さな固まりにし、梱包します。



ミズナラの樹液を吸うキアシナガバチ♀



2013年10月下旬

キアシナガバチ♀(Polistes rothneyi)もミズナラの樹液酒場に来ていました。
この時期はワーカーだけでなく新女王の可能性もあります。
やけに色褪せた個体だなと思いました。
歩いて幹を移動すると、近くで吸汁していたヒオドシチョウNymphalis xanthomelas japonica)が威嚇するように翅を広げて蜂を追い払いました。(専有行動)
この一件から察するに、力関係ではヒオドシチョウ>キアシナガバチのようです。



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