2016/02/09

仰向けから起き上がるクロシタアオイラガ(蛾) 幼虫



2015年10月上旬

里山の林床で徘徊するクロシタアオイラガParasa sinica)の派手な幼虫を見つけ、採集して持ち帰りました。
終齢幼虫が営繭場所を探索しているのか?と思い、飼育してみます。

板の間に置いて仰向けにしてみます。
棘だらけでカラフルな配色の背面とは裏腹に、腹面はのっぺりしていて腹脚がどこにあるのかよく分かりません(退化傾向にある?)。
警戒してしばらく擬死(死んだふり)してから起き上がろうと奮闘を始めます。
寝返りを打つように身を攀じってまず上半身だけ起き上がり、そのまま前進することで下半身も起こします。
その動きが面白くて、何度も繰り返してしまいました。

最後は幼虫の歩行を正面から接写してみました。
イラガの仲間は頭部がフードに隠れています。
頭部で∞の字を書きながらゆっくり前進します。
歩く地面を調べているだけで、絹糸は未だ吐いていないと思います。

木の棒を登らせると滑落することがありました。(映像なし)
背中の刺は柔らかいのか、背中から落ちても折れません。
仰向けになると体を捻り上半身が接地したら前進しながら起き上がります。
海老反りから後転で起き上がるパターンもありました。


つづく→クロシタアオイラガ(蛾)幼虫の営繭異常【60倍速映像】



2016/02/08

寄生蜂コクロオナガトガリヒメバチ♀と寄主ヒメクモバチの攻防:その2



2015年10月上旬

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#11


シーン1:午前10:50

寄主のヒメクモバチ(旧名ヒメベッコウ;おそらくAuplopus carbonarius)♀bが在巣のときに、境界標の左の縁から寄生蜂が泥巣に近づいてきました。
寄主と正面から向かい合い、ヒメクモバチが追い払いました。
しかし激しい闘争行動と呼べるようなものではなく、軽く突進する素振りを見せるだけでした。
ヒメクモバチは穏健な性格なのでしょうか。
もしかすると、コクロオナガトガリヒメバチ♀の姿形が寄主に擬態していてヒメクモバチ♀の目には紛らわしく見えるのかもしれません。

それとも、コクロオナガトガリヒメバチは白い触角を激しく動かすことで寄主を幻惑しているのかな?
寄生蜂は境界標の角を曲がった死角に隠れるだけで、執念深くチャンスを窺っています。
しばらく境界標の天辺を徘徊してから、寄生蜂は飛び去りました。




シーン2:午前10:52

寄主のヒメクモバチ♀bが吸水に出掛けた隙に寄生蜂がまた飛来しました。
泥巣の近くを徘徊している間に母蜂が泥巣に戻って来たので、絶好の産卵機会を逃しました。
ヒメクモバチ♀に睨まれた寄生蜂は境界標の天辺に登ってから、あっさり飛び去りました。
泥巣をガードしている間に、寄生蜂は未練がましく周囲を飛び回っています。
寄生蜂に挑発を繰り返されても深追いせず、泥巣から動かないのは賢明な防衛戦略と言えるでしょう。
しつこい天敵がようやく居なくなると、ヒメクモバチ♀は巣材集めのため地面に歩いて降りました。
泥玉を持って登り、造巣作業を続けています。
次は飛び去り、おそらくまた水を飲みに出掛けたようです。



シーン3:10倍速映像

シーン1、2と同時並行に微速度撮影した映像(@2:59〜)にも寄生蜂との攻防が写っていました。
引きの絵では小さな蜂は見えにくいのですけど、コクロオナガトガリヒメバチ♀は触角に白い部分があるのでなんとか見分けられます。



この日の総括:

この日は寄生蜂の産卵が見られず、前回ほど泥巣に執着して近づかなくなったのは何故でしょう?
寄主の巣作りの進捗状況を見に来ているだけかもしれません。
寄主ヒメクモバチの育房内で胚発生が進み、寄生蜂の産卵に適さなくなったのでしょうか?
母蜂の造巣ペースを見定め、次の貯食物が新しい育房に搬入されるまで待っているのかもしれません。
寄生蜂が人懐こくカメラの三脚に乗って来ることもありました。(映像は撮り損ね)

一方ヒメクモバチ♀も寄生蜂の存在に気づいているのにも関わらず、平気で巣を留守にしたり造巣活動を続けているのは不思議です。
もしこの日初めて観察していたとすれば、我が子を危険に晒す投げやりの態度にも見えたでしょう。
前回の観察(5日前)ではしつこい寄生蜂のせいで母蜂は泥巣に釘付けになり、ひたすらガードしていました。
造巣どころではなく、泥巣のガードを優先していました。

▼関連記事
寄生蜂コクロオナガトガリヒメバチ♀の産卵および寄主ヒメクモバチとの攻防

シリーズ完。


2016/02/07

コウスベリケンモン(蛾)幼虫の歩行と防御姿勢



2015年10月中旬

河川敷の橋の下で舗装された道を毛虫がモコモコと横断していました。

毛虫を転がすと丸まって防御姿勢をとり、擬死(死んだふり)しました。
もし毒毛をもっていると素手で触れるのはかぶれそうなので、拾った小石で間接的に触りました。
しばらくすると警戒を解き、体を伸ばすと徘徊を再開します。
採寸する代わりに左手の人差し指を並べて写し込んでみました。
爪先で毛虫を軽く弾いて転がすとまた丸まって防御姿勢になります。
この状態で強風に吹かれると、コロコロと路上を転がりました。(映像撮れず)

薄褐色の毛の所々(腹部の各体節の背面など)に黒い毛束が混じっています。
特徴的な毛虫なので、帰ってからすぐ同定できるかと思いきや、意外にも難問でした。
イモムシハンドブックや幼虫サイトで絵合わせしても見当たりません。
食草が分からないので飼育は無理だと思い、採集せずにスルーしてしまいました。
なんとなく、ヒトリガ科の一種ですかね?

いつもお世話になっている「不明幼虫の問い合わせのための画像掲示板」に投稿して問い合わせてみたところ、ATSさんよりコウスベリケンモンAnacronicta caliginea)の幼虫だろうとご教示頂きました。
幼虫はススキを食草とするそうで、ヤガ科から新しく別れたケンモンガ科に属するらしい。

ケンモンガ科ですが、最新の図鑑である「日本産蛾類標準図鑑(学習研究社 2011)」ではヤガ科ウスベリケンモン亜科に戻っています。(ATSさんのコメント)


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