2015/06/27

羽化したヒオドシチョウの初飛行



ヒオドシチョウの飼育記録#14


▼前回の記事
羽化直後に蛹便を排泄するヒオドシチョウ

2015年6月上旬・室温25℃・湿度45%

午前中に羽化したヒオドシチョウNymphalis xanthomelas japonica)個体c無印は昼頃になるといつの間にか止まり木から離れ、レースカーテンに止まっていました。
ようやく翅や体が充分に固まったのでしょう。
走光性があり、明るい窓際へ向かって飛んで行きました。
記念すべき初飛行の瞬間を(無理に飛び立たせるのではなく)自然な状態で動画に記録するのはなかなか難しそうです。

翅を開閉しながらカーテンをよじ登ります。
逆光では翅表の美しい紋様がよく見えないため、ビデオカメラ内蔵の白色LEDを点灯しました。
ところが眩しい光を近づけられた蝶は、興奮したように暴れてしまいます。
この辺りが動画撮影の難しさで、美しい写真を撮るだけなら逆光でもフラッシュを焚けば簡単です。
しかし動画となると、補助照明のせいで不自然な行動になってしまうのでは本末転倒になってしまいます。
レフ板は使ったことがないのですけど、蝶を怖がらせてしまうのは一緒でしょう。

手に乗ってもらおうと蝶の目の前に指を差し出したのですが、落ち着かなく羽ばたくばかりで上手くいきませんでした。
最後は窓を開けて放蝶しました。
(近所で採集してきた幼虫を育てた場合は放蝶しても問題ないというのが私の個人的見解です。)

つづく→#15:ヒオドシチョウの羽化(左右の口吻が結合する様子)



ツルマンネングサの花蜜を吸うヒメハナバチの一種♀



2015年6月上旬

堤防の階段に蔓延るツルマンネングサの群落で訪花している蜂がいました。
吸蜜してから身繕いしました。
後脚の花粉籠に黄色の花粉団子を付けています。
あまり自信がないのですが、この蜂はウツギメハナバチ♀(Andrena prostomias)と思い込んでしまいました。
狭食性(狭訪花性)のウツギヒメハナバチ♀がウツギ(アジサイ科ウツギ属)以外のベンケイソウ科から訪花集粉するとしたら大発見かもしれません。

密かに興奮しつつ、同定のため撮影直後に採集しました。

実はこの堤防の少し離れたところにウツギの大群落があり、昨年はウツギヒメハナバチを観察できたのでした。

▼関連記事(標本写真あり)
ウツギの花で採餌するウツギヒメハナバチ♀
今年もそろそろシーズンかな?と定点観察に来てみたものの未だ開花しておらず、当然ながらウツギの群落にウツギヒメハナバチはいませんでした。
今年は何らかの理由で(春の気温が高かった?)ウツギヒメハナバチの羽化が早まり、ウツギの開花とタイミングがずれてしまったのかもしれません。


『但馬・楽音寺のウツギヒメハナバチ:その生態と保護』p74によると、

ウツギヒメハナバチとその姉妹種であるコガタウツギヒメハナバチはともに短舌で典型的な狭食性種で、ウツギ属Deutzia(日本には7種ある)だけを訪花する。花粉採餌をしない♂は、ほかの花でも採集されることがある。
同書p72によると、
狭食性は共進化の証で、花資源種の選択幅の狭く、融通のきかない保守派である。


私の知らない場所で咲いているウツギの花粉を直前まで採餌していた可能性もあるので、後脚から採取した花粉を顕微鏡で分析してツルマンネングサの花粉だと花資源を同定すれば完璧ですね。


以下は標本写真。
方眼紙に乗せて大きさを調べると体長は11mm以上で、コガタウツギヒメハナバチではなくウツギヒメハナバチ♀のようです。

【追記】

てっきりウツギヒメハナバチかと思い込んで先走った記事を書いたら、コメント欄でうすのきさんより別種らしいとご指摘頂きました。
標本の写真も撮り直したものに差し替えました。


中胸盾板
中胸盾板
前伸腹節

翅脈を記録するのに良い方法を編み出しました。
私には展翅する暇もスキルも無いので、乾燥した標本の翅が反ったりカールしがちです。

被写界深度の浅いマクロレンズで接写しようとすると翅全体をきっちり平面に収めないといけなくて、いつも苦労していました。
ふと思いつき、根本から切り落とした翅をクリアファイルに入れると、静電気でクリアファイルと敷紙に翅が密着しました。
こうして反り返った翅を平にしてから翅脈を記録しました。
専門家はプレパラートのカバーガラスなどに翅を挟んでからスキャナで画像を取り込むらしいのですが、私にはこれで充分です。


左前翅(裏返しで接写)
左後翅(裏返しで接写)

前胸背板
前胸背板
前胸背板
腹部第一背板
腹部背板

2015/06/26

羽化直後に蛹便を排泄するヒオドシチョウ



ヒオドシチョウの飼育記録#13


▼前回の記事 
ヒオドシチョウの羽化【10倍速映像c】

2015年6月上旬・室温25℃・湿度50%

ヒオドシチョウNymphalis xanthomelas japonica)個体c無印が翅の伸展を完了しました。
次は余分な体液を蛹便(羽化液)として排泄する瞬間を動画に記録するのが今回の目標です。
微速度撮影ではなく、通常(リアルタイム)のHD動画に切り替えました。
午前10:02:00、初めて排便しました。
その瞬間に閉じていた翅を少しだけ開いたのは、おそらく蛹便で翅を汚さないためでしょう。
5分後の10:07:15に再び排便しました。
今回は翅をわずかに開いた状態で静止していたので、排泄の瞬間に翅を動かす必要がなかったようです。
血の色をした雫が水差しのペットボトルを伝い垂れ落ちる様子が撮れていました。
下に敷いた白紙も赤く汚れています。

動画による監視を止めた直後に、今度は透明な液体を排泄しました。

蛹便の色は種類によって異なります。
鱗翅目を幾つか飼育下で羽化させてきた中で、今までこんなに赤い蛹便を他の種類では見たことがありません。
緑色の柳の葉だけを食べて育ったのにこんな赤色を合成するなんて、まるで魔法のようです。
翅の鱗粉に使われた赤い色素の残りなのでしょうか?
(仮説:赤い翅のチョウの蛹便は赤いのかな?)

ちなみに、昆虫の血液はヘモグロビンを含まないため赤くありません。

これまで私が飼育下で羽化を観察した数種類の鱗翅目の中で、ヒオドシチョウの羽化は翅伸展の速度も蛹便を排泄するまでの時間もおそろしく早かったのが印象的でした。

つづく→#14:羽化後の初飛行



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