2018/04/05

オオハンゴンソウの花蜜を吸うウラギンスジヒョウモン♀



2017年9月中旬・正午頃

道端の空き地に咲き乱れるオオハンゴンソウの群落でオオウラギンスジヒョウモン♀(Argyronome ruslana)が訪花していました。
やや風のある日でしたが、半開きの翅を少し開閉しながら吸蜜しています。


関連記事(5年後の撮影)▶ オオハンゴンソウの花蜜を吸うウラギンスジヒョウモン♂



【追記】
この植物はハチミツソウではなくてオオハンゴンソウですね。
遅ればせながら訂正しておきます。



2018/04/04

ツユクサの実を食べるキジバト(野鳥)



2017年9月中旬

平地の道路を一羽のキジバトStreptopelia orientalis)が首を前後に振り振り歩きながら採食していました。
道端に咲いたツユクサの群落で頻りに何か植物体を嘴で繰り返しつついています。
アブラムシなどの小さな虫を捕食しているのかな?と初めは不思議に思いました。
「道草を食う」瞬間の映像をスロー再生してみると、どうやらツユクサの舟形の包葉ほうように挟まれている黄緑色の丸い実を気に入って繰り返し食べているのだと判明しました。(例えば@4:07ではキジバトがつつき損ねた拍子に実がこぼれ落ちています)


ツユクサの実を後で動画や写真で記録しようと思いつつ、すっかり忘れてしまいました。
画像検索で見つけた写真(撮影:Blue birdさん)へのリンクを載せておきます。
実が熟すと黒っぽい種子ができます。
ちなみに、ツユクサの花は朝咲いて午後には萎んでしまう一日花らしい。
しかも9割以上の花で、咲いた時には自家受粉が完了しているのだそうです。



野鳥と木の実の共生関係が有名ですから、初め私はツユクサの実を食べるキジバトも種子散布を助けているのだろうと短絡的に思い込み、そんなストーリーで記事を書きかけていました。
ところが鳩は種子食性のはずだと思い出し、ならば種子を消化できないとおかしいだろうと思い至りました。

▼関連記事 
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資料によると、「ツユクサの種子は長径5mmほどあるから比較的大きい」とのこと。
(『花の自然史:美しさの進化学』という本の第16章。森田竜義「花の性型の可塑性:雄花を咲かせるツユクサの不思議な性表現」p241より引用)


念のためにインターネット検索すると、日本野鳥の会 大阪支部の広報誌の連載記事:和田岳「身近な鳥から鳥類学」がヒットしました。

よく果実を食べているのを目にするヒヨドリ、ムクドリ、ツグミ類などは種子散布者です。一方、キジバトなどのハト類は、果実を呑み込んだら、タネまで消化してしまい、タネを運んでくれません。他に、カモ類、キジ類、アトリ類などもタネまで消化するグループです。こうした鳥は種子捕食者と呼ばれます。

次に平凡社『日本動物大百科4.鳥類II』を紐解いてキジバトの食性について参照すると、
 ハト類はすべて植物質を主食にしており、キジバトもその例にもれず植物の果実、種子、花、芽などをおもに食べる。(中略)
 樹木の果実はキジバトの主要な食物の一つである。果実を食べるとはいっても、ヒヨドリやムクドリが果肉目当てで種子は消化せずに糞やペリットとして出すのとは異なり、キジバトは種子も消化してしまう。植物の立場から見れば、種子散布に役立つヒヨドリやムクドリとは異なり、キジバトは大変迷惑な存在である。むしろキジバトは果肉ではなく種子が目当てで、ヒヨドリやムクドリが排出した種子をあさることも多い。(p22-23より引用)



「種子捕食者」という用語は初耳で、とても勉強になりました。
危うく知ったかぶりで「キジバトによるツユクサの種子散布」などと間違ったことを書くところでした。
種子食性のハト類は飲み込んだ種子を砕く砂嚢(いわゆる砂肝)が特に発達しているのでしょう。

鳥類では歯を欠くが,食物は砂嚢で細かく砕かれる.肉食性の鳥に比べ,果実・穀類などを食べるものにおいて砂嚢は特に発達し,のみこまれた砂や小石が内腔にあって食物の破砕をたすけるためにこの名がある.(『岩波生物学辞典 第4版』より引用)

野間直彦『種子散布にみる植物との共生』によれば、
(液果の)種子は鳥に丸飲みにされるが、果実食鳥の砂嚢・消化管はこれらを破壊しない。ただし、アトリ科の鳥やキジバトは種子を壊して中身を食べる。 (『鳥類生態学入門:観察と研究のしかた』第9章:p132より引用)
ハト科の中でも強力な砂嚢をもつキジバトは壊してしまう。(p134より) 



【追記】
実は同一個体のキジバトの排便も観察しています。
▼関連記事 
キジバトの首振り歩行と脱糞 【HD動画&ハイスピード動画:野鳥】
キジバトの糞に植物の種子が含まれているのかどうか、次回は確かめてみたいものです。


【追記2】
国松俊英『ハトの大研究―古代から人とともに生きてきた鳥』によれば、

キジバトが食べるのも、草の種、木の実、果実、花、芽、穀物など植物質のものです。えさは地上でさがします。(中略)果実を食べる時、ヒヨドリやムクドリは種子は消化しないで、フンやペリット(骨や毛など消化できなかったものをかたまりにしてはきだしたもの)として出してしまいます。けれどキジバトは種子が好きなので、出さないで消化してしまいます。ヒヨドリやムクドリは、種子を遠くへ運んでまいてくれます。けれど種子を食べてしまうキジバトは、植物の立場になればちょっとこまる鳥です。 (p16より引用)


種子散布の問題は鳥の糞だけでなくペリットにも注目して調べる必要がありますね。
ペリットのことを忘れていました。





【追記3】
吉川徹朗『揺れうごく鳥と樹々のつながり』 (フィールドの生物学 25)によれば、
ハト類のなかでも穀物類を主食とするキジバトやドバトは、より種子食性が強い種類であり、糞から種子が見つかったという報告はない。おそらく砂嚢で種子をすりつぶす力が強く、液果種子に対してもっぱら種子捕食者になっているとみられる。 (p115より引用)



【追記4】
根本正之『雑草たちの陣取り合戦―身近な自然のしくみをときあかす (自然とともに)』という植物学の本を読んだら、ツユクサの種子散布戦略について学ぶことができました。
ツユクサは遠くまで種子を散布するための仕組みを特に持たず、種子自身の重さで近くに落下する重力散布種子なのだそうです。 (pp33-34より)

ミヤマアカネ♀♂連結打水産卵からの♀単独打水産卵



2017年9月上旬・午後12:13〜12:16

正午過ぎに街中の側溝でミヤマアカネ♀♂(Sympetrum pedemontanum elatum)が連結飛翔しながら連続で打水産卵していました。
用水路を流れる水深はかなり浅かったです。
産卵地点は流れの中央ではなく、コンクリートの護岸付近のようです。(死角でうまく撮れず)
本種は卵で越冬するそうです。

しかし、こんな水草も生えていない殺風景なコンクリート三面張りの水路に産卵しても、無事に孵化してヤゴが育つとは思えません。
冬は融雪溝として使われるため水量が激増し、大量の雪が連日投下されるからです。

やがて、この♀♂ペアは尾繋がりを解消してしまいました。
私が近づいたから焦って連結が外れてしまったのかと申し訳なく思ったのですけど、後に本種の産卵習性を知るとどうやら自然に別れたようです。
驚いたことにミヤマアカネ♀は単独でも産卵を続け、♂はその近くでホバリング(停空飛翔)しながら警護していました。
本種は分かりやすい性的二形(雌雄異型)なので、観察しやすくて助かります。
成熟した♂は目にも鮮やかな「赤とんぼ」ですが、♀は地味な黄色っぽい体色です。

その後、♀だけが近くの路上で暫し休息(日光浴?)しました。
私が♀の写真を連写している間に♂の姿を見失ってしまいました。
次の♀を探しに行ったのかもしれません。


図鑑『日本のトンボ (ネイチャーガイド)』でミヤマアカネについて調べると、まさに観察した通りの産卵行動が書いてありました。

交尾後のペアは連結態のまま浅い流れを訪れ、水面や泥面を腹端で打って産卵する。♂の警護飛翔を伴い、♀が単独で産卵することもある。飛翔中は翅の模様がちらつくように目立つ。(p405より引用)

wikipediaでも同様の記述でした。

産卵は打水産卵または打泥産卵で、緩やかで浅い流れの上を通常は雌雄が連結して行う。流速が早い場所、水深の深い場所は産卵には適していないようである。産卵の途中で「キ」の字に連なったまま植物などにつかまり休息することも多い。その後連結を解いて雌の単独で産卵に移行することもあり、その場合は短時間ではあるが雄が上空で警護飛翔をする。


ミヤマアカネ♀♂@用水路+連結打水産卵
ミヤマアカネ♂@用水路+警護飛翔
ミヤマアカネ♀@路上+休息:産卵直後

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