2018/03/08

巣材のスギ樹脂を集めるオオハキリバチ♀



2017年8月下旬・午後15:47〜16:06

平地の用水路沿いに民家の防風林と思われる小さなスギ(杉)林がありました。
そこに一匹のオオハキリバチ♀(Megachile sculpturalis)が飛来しました。
幹に止まると、自然に滴り落ちているオレンジ色の樹脂を頑丈な大顎で削り取って採取しています。
新鮮な樹脂の塊を抱えて飛び去ったのですが、巣の場所は突き止められませんでした。

本種はハキリバチ科なのに切り取った葉ではなく樹脂を巣材として巣穴に詰め込むので、オオハキリバチという和名はやや誤解を招くかもしれません。
一方、英語名は営巣習性を反映して「giant resin bee (樹脂を巣材とする大型の蜂)」と呼ばれていて分かりやすいですね。

和名もオオヤニバチと改名しては如何でしょう?

オオハキリバチの造巣習性からすると、何度も巣材の樹脂を採取しに来るはずだと予想しました。

▼関連記事
オオハキリバチの造巣1
オオハキリバチの造巣2
オオハキリバチによる巣穴の閉鎖:1樹脂

その場でしばらく待つと案の定、同一個体と思われる蜂が戻って来てくれました。

胸背に微小なゴミ(木屑?)が白点のように付着しているので、同一個体で間違いないでしょう。
幹のあちこちからオレンジ色の樹脂が滲み出しているため、厳密に同じ地点から連続して採取するという訳ではありませんでした。
粘り気の強い樹脂を大量に扱ってもオオハキリバチの体表にあまり付着しないのは、何か特別な仕組みがありそうです。(油分を分泌している?)
同じ杉の木に繰り返し通って来てくれたおかげで、巣材集めの行動を背面だけでなく側面からも動画で記録することができました。
ちなみに、計5回撮れた動画の撮影開始時刻は、15:47、15:51、15:53、16:01、16:05でした。
数分間隔で同じ杉の木にせっせと通いに来ていることが分かります。(他の被写体に気を取られて、オオハキリバチ♀の飛来を見逃したことがあったかもしれません。)

最後(5回目)に飛来したオオハキリバチ♀は、杉の幹に数回着陸したものの、巣材を集めずに飛び去りました。
巣穴を大量の樹脂で閉鎖する工程が完了したのかな?と想像しました。
その後はしばらく待っても戻って来ませんでした。

オオハキリバチ♀の営巣行動を7年前に定点観察していますが、巣材集めだけ見たことがありませんでした。

長年の懸案だったミッシング・リンクの現場に遭遇できて、この夏一番に嬉しかったです。
私にとって輝かしい午後のひとときで、忘れ難い日になりました。

毎回オオハキリバチ♀が私の目の届く高さで巣材集めをしていたのは、とても助かりました。
長年探し求めても巣材集めの現場に出くわさないということは、おそらく針葉樹のもっと高い上部から樹脂(松脂?)を採取しているのだろうと半ば諦めていました。
今回の蜂が通っていた杉の木は明るい林縁に生育し農道に面した木でした。(暗いスギ林の中央部に生えた木ではなかった。)
探す際の目の付け所が一旦分かれば、次回からは巣材集めを目にする機会が増えるかもしれません。
生息密度の高いところで探し回るのが鍵でしょう。

このスギ林のすぐ近くにはハチミツソウの群落が咲き乱れていて、オオハキリバチの♀も♂も多数訪花していました。
労働寄生種ハラアカヤドリハキリバチもハチミツソウに訪花していた点も、寄主オオハキリバチの生息密度が高いことを物語っています。


オオハキリバチ♀@巣材集め:スギ樹脂
オオハキリバチ♀@巣材集め:スギ樹脂
オオハキリバチ♀@巣材集め:スギ樹脂
オオハキリバチ♀@巣材集め:スギ樹脂

スギ幹
スギ枝葉
スギ枝葉

2018/03/07

目立ちたがりのニホンアマガエル



2016年9月下旬

民家の生垣として植栽されたベニカナメモチ(=レッドロビン)の真っ赤な葉にニホンアマガエルHyla japonica)が座り込んでいました。
喉がヒクヒク動いているので、生きています。



強い毒を持つ種類のカエルは派手な警告色に身を纏います。
それに対してニホンアマガエルが捕食者から身を守る自衛戦略は、目立たない保護色のはずです。
赤と緑は保護色どころか反対色(補色)ですから、このままでは目立ちまくりです。

まさか、この個体は赤緑色盲だったりして…?(※ 追記参照)
 こんな暢気な(無鉄砲な)個体は、捕食圧によって淘汰されてしまうのではないでしょうか?

この辺りでニホンアマガエルを捕食しそうな天敵としては、例えばハシボソガラスとモズが生息しています。

それとも、これから周囲の環境に合わせて体色がゆっくり変化するのかな?
しかし、真っ赤に変色したニホンアマガエルなんか、未だかつて見たことがありません。(せいぜい褐色の迷彩模様が精一杯でしょう)

もしかすると、天敵に襲われる危険を承知の上で、ベニカナメモチの樹液に誘引された虫を待ち伏せしているのかもしれません。
それでもやはり、赤く色づいた葉ではなく緑の葉が付いた小枝で待ち伏せする方が得策でしょう。

▼関連記事
ベニカナメモチの樹液を舐めるコガタスズメバチ♀
ベニカナメモチ生垣の樹液を舐めるキイロスズメバチ♀
アマガエルにとってスズメバチを捕食するのは手強そうですが、ハエ類が甘い樹液を舐めに来ていても不思議ではありません。(未確認)
実はこの時期、樹液に来る虫を観察するためにレッドロビンの生け垣を見回りしていたら、今回カエルを見つけたのです。
しかしこの時、生垣に虫は来ていませんでした。

日光浴していた可能性もありそうです。
赤い葉の方が緑の葉よりも太陽光をよく吸収していて暖かいのかな?(うろ覚えの物理学の知識では逆のような…。)


急いでいた私はスナップショットを撮っただけでその場を離れてしまいました。
じっくり観察すれば何か面白い発見があったかもしれません。



※【追記】
ニホンアマガエルの色覚はどうなっているのか、気になりました。
ネット検索すると、お転婆さんのブログ「アマガエルのお話」で飼育下の実験(色覚テスト)を試行錯誤なさっていました。
問題への取り組みはこうあるべきだなと感銘を受けました。

更にネット検索すると、酪農学園大学のブログで以下の記述を見つけました。
何か勉強会のレジュメを載せた記事のようです。
・少なくともいくつかのカエルの種は、色覚をもっている。 
・青色選好性がみられた。 
・実験により、3種のカエルは三色型色覚、2種のカエルは二色型色覚をもっている事がわかった(二色型…赤と青を灰色から弁別できたが、黄色と緑はできなかった)→色覚特性の詳細、種間変動の可能性はよくわからない。

ただし、情報の出典が書かれていませんでした。



【追記2】
一方、レッドロビンの葉が赤く色づく理由はそもそも何でしょう?
カナメモチやモミジのように、若葉が赤く色づく樹種が多い。(中略)若葉が赤く色づくのは、若葉を紫外線から守る目的や、害虫に見えにくい色のためとの説がある。   (林将之『葉っぱはなぜこんな形なのか?:植物の生きる戦略と森の生態系を考える』p180より引用)
後半の「赤が害虫に見えにくい色のため」という説は初耳で興味深く思ったので、個人的な覚書として書き残しておきます。



ハチミツソウの花で採餌するニホンミツバチ♀



2017年8月下旬

農業用水路沿いに咲き乱れるハチミツソウ(別名ハネミギク)の群落でニホンミツバチApis cerana japonica)のワーカー♀が訪花していました。
吸蜜しているニホンミツバチ♀の顔は黄色い花粉で汚れていますが、後脚の花粉籠は空荷でした。

複数個体を撮影。
千客万来でまさにハチミツソウの面目躍如。
ハチミツソウは養蜂の蜜源植物として原産地の北米から日本に導入された外来植物です。
その蜂蜜はどんな風味がするのか食べてみたいものです。
実はハチミツソウの花はミツバチにはあまり人気が無いとするサイト(蜜源・花粉源データベース)も見つけました。
(地域によって違うのかもしれません。)

▼関連記事
オオハンゴンソウの花蜜を吸うセイヨウミツバチ♀


ニホンミツバチ♀@ハチミツソウ訪花採餌
ニホンミツバチ♀@ハチミツソウ訪花採餌
ニホンミツバチ♀@ハチミツソウ訪花採餌

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