2017/11/08

夜明けに咲くハスの開花運動【180倍速暗視映像】



2017年7月下旬・午前3:31〜8:11 (日の出時刻は4:36)

明け方に咲くハス(蓮)の開花運動を微速度撮影するために、夜明け前から蓮池に出かけました。
この撮影テーマについては予め勉強しておいた方が良かったと後で痛感するのですが、自分で試行錯誤するのも楽しいかな?と思い、敢えてあまり情報を入れずにほぼぶっつけ本番で挑みました。



広い蓮池のどの蕾に注目して撮り始めるべきか、暗闇でまず迷いました。
照明機材を使わずに未明の暗いうちから撮影を開始するとなると、岸から近い蕾を選ぶ必要があります。

それから朝日が昇ったときに逆光にならないように、撮影する方角を考えました。

岸のすぐ近くで咲きそうな一つの蕾に注目し、まず側面から赤外線の暗視カメラで1分間隔のインターバル撮影を始めました。
朝日が昇り明るくなるとともに周囲の赤外線ノイズが増え、ビデオカメラのピントが合わなくなりました。
そこで暗視モードから通常光モードに切り替えてインターバル撮影を続けます。
終了後は連続写真から30fpsの設定で早回し動画(1800倍速)に加工したのですが、これでは早過ぎたので編集し直して180倍速に落としました。


インターバル撮影と同時に蓮池の岸に別のカメラの三脚を立てて、見下ろすアングルで10倍速の微速度撮影を始めました。
後半から被写体を3つの蕾のうちの1つに絞りました(ズームイン)。
(しっかり予習していれば、初めからどの蕾に注目すべきか分かったはずです。)
撮影後は編集し直して180倍速映像に揃えました。
カメラ2台で同じ蕾の開花を別アングルで記録したことになります。

ぶっつけ本番で撮ったにしては、完成した映像の出来栄えに満足しています。


「ハスが開花の際にポン!と音を立てる」という俗説は、やはり迷信でした。
蓮池で夜を明かしても、一度もそのような破裂音は聞こえず、 静かに開花しました。

「ハス博士」大賀一郎氏の訃報に接した毎日新聞の社説「余録」によると(昭和40年6月17日)、
ハスが開花する時にポンと音がするという俗説についても、博士は上野公園不忍池などで徹夜で調べて、とうとうこの俗説はウソだということを証明した。明け方にハス池のコイが水面近くに飛んでいる蚊をとりにきて、ハネ上がる音をハスの開花とまちがえたのだそうだ。


ハスの花の独特な芳香が濃密に漂い、むせ返りそうでした。
個人的にはエキゾチックでどことなくケミカルな匂いで、あまり好みではありません。

咲き終わった後もしばらく撮り続けると、様々な昆虫が早速訪花を始めました。
朝から快晴で日差しが強く、大きな花弁がすぐに萎れてきました。
映像の最後で早くも閉花運動が始まっているようですが、尻切れトンボになってしまいました。
昼過ぎにはもう花が閉じてしまうのだそうです。
ハスの閉花運動の撮影は今後の宿題です。
暑い昼間に長時間撮影するとなるとまた別の問題があり、カメラが直射日光によってオーバーヒートしないように日傘などを用意する必要がありそうです。


復習としてインターネット検索したところ、次の文献がとても参考になりました。
加藤文男『大賀ハス (縄文ハス)の花の開閉について』によると (福井市自然史博物館から公開されたPDFファイルへのリンク)、

・ハスの花の開閉は花弁の基部の内側の生長度が外側のそれより盛んになれば開き、逆に弱くなれば閉じる。さらに花弁の基部の生長度の違いは、生長を促すホルモン(生長ホルモン)の濃度のかたよりによって生ずると考えられる。しかし、ハスの場合どのような外因または内因によって、上述のような生長度の違いがひき起こされるのか、明確ではない。(p125より引用)
・開花がハス自体のもつ周期性(バイオリズム)によることも考えられる。
ハスの花は4日間、毎朝開閉を繰り返してから散るのだそうです。
今回撮影したのは、花の開き方から見て3日目の花だろうと分かりました。(一番美しいとされる、浅い椀状開花)
蓮池の各蕾の開花日はばらばらなのです(開花して何日目か?)。


十亀好雄『ふしぎな花時計:身近な花で時間を知ろう』によれば、
ハスの花の開閉観察 エイジング(加齢)との関係で、初めて咲く花は、その日の午後7時ごろに五分咲き程度に開花して、10時ごろには閉花してしまいます。翌2日目は午前7〜8時ごろに全開して午後0時ごろに閉花し、3日目も再び早朝に完全開花して正午ごろに半閉花します。そして、4日目の早朝に3回目の完全開花をしてその日の午後に散っていきます。風が強く吹いたり暑いときには3日間ぐらいで終わったり、気温が低めで涼しいときには1週間ぐらい開閉運動を続けます。 (p64より引用)

野外での微速度撮影は大変なので、室内で楽できないかと考えました。
ハスの蕾を採取して水差しにしたら、室内でも開花してくれるでしょうか?
ネット検索すると、ハスは水揚げが悪く、残念ながら生け花の専門家でもきわめて難しいそうです。

3:30 am(開花日の異なる3つの蕾)。以降は左の蕾に注目。
6:02 am
8:13 am(閉花開始?)
8:15 am(左から順に開花3日目、4日目、1日目)


【追記】

北村文雄『蓮:ハスを楽しむ』という本を読んでびっくりしたことの一つは、童謡「ひらいたひらいた」に関するトリビアです


ひらいた ひらいた 
なんの花が ひらいた 
レンゲの花が ひらいた 
ひらいたと思ったら 
いつのまにか つぼんだ
この歌詞に登場するレンゲの花とは、てっきりレンゲソウ(ゲンゲ)だと今まで私は思い込んでいたのですが、蓮華の花、つまりハスの花なのだそうです。
これは、ハスの花の生態をよく表している、わらべうたです。(同書p13より引用)



↑【おまけの映像】
注目した蕾の周囲の環境については、開花前後のスナップショットをブログ限定で公開します。

折れた茎の断面にレンコン様の穴

科学のアルバム『水草のひみつ』によると、

ハスの葉の付け根部分の断面。葉の先まで管が通っています。(p37より引用)


つづく→開花初日のハス蕾の開閉運動(壺状開花)【180倍速映像】

クマバチ♂は手に乗せても刺さない



2016年10月中旬・午後16:11〜16:13

▼関連記事
セイタカアワダチソウの花蜜を吸うクマバチ♂

夕方の農道沿いに生えたセイタカアワダチソウの群落でキムネクマバチ♂(Xylocopa appendiculata circumvolans)が花序にしがみついていました。
この個体は吸蜜中ではなく、ただ休んでいるだけでした。
このまま夜もセイタカアワダチソウの花で寝るつもりなのでしょうか?

複眼が大きく発達していて頭楯が白いことが雄蜂の特徴です。
この個体が雄蜂であることに確信を得たので、そっと手で触れて掌に乗せてみました。
雄蜂は毒針を持たないので、手掴みしても刺される心配は全くありません。
(もちろん♀が相手なら私もこんな危険な真似はしません。)
なんとか「手乗りクマバチ」の状態にしたものの、嫌がってすぐにセイタカアワダチソウの花の方へ移動してしまいました。
気温が低い訳でもないのに飛んで逃げないのは不思議です。
実は同じ日にもう一匹のクマバチ♂をセイタカアワダチソウの群落で連続して見つけ、同様に手乗りさせてみたのですが、やはり大人しくて飛び立ちませんでした。(映像公開予定?)
夕方になるとクマバチ♂はもう寝る時間なのか、それともたまたま見つけたのが老化した個体で、衰弱していたのかな?
あるいは飛翔筋の準備運動をして体温を上げてからでないと、すぐには飛び立てないのかもしれません。




2017/11/07

巣立ちが遅れた最後の雛に給餌するハシボソガラス親鳥【10倍速映像:野鳥】



高圧線の鉄塔#21でのハシボソガラス営巣記録#34


2017年6月中旬・午後15:29〜17:02

最後まで巣に残ったハシボソガラスCorvus corone)雛に対する親鳥の給餌活動をまとめてみました。
冒頭は通常のHD動画で記録した1回の給餌シーンで、残りは(@1:57〜)微速度撮影した10倍速映像です。
90分間で親鳥は7回帰巣したものの、そのうちの一回は給餌せず雛の様子を見に来ただけでした。
親鳥を個体識別出来ていないので、つがいの2羽が相変わらず共働きで巣に通っているのかどうか不明です。(今回の映像では2羽の親鳥が同時に登場することはありませんでした。)
もしかすると育雛に分担が生じ、巣立ち前の雛の世話は親鳥の一羽が担当し、もう一羽の親鳥は既に巣立った3羽の幼鳥に給餌したり面倒を見ているのかも知れません。

この日は明らかに給餌頻度が減りました。
しかし雛1羽あたりの給餌頻度を比べれば、前日(4羽の雛に親鳥2羽が66分間で計12回の給餌)までとあまり変わりないようです。
餌の争奪戦をしていた兄弟姉妹の雛鳥が巣立った後は、親鳥が与える餌を独り占めにすることができます。
巣立ち前に親鳥が雛への給餌を控えてダイエットさせ巣立ちを促す、という話が本当なのかどうか、私にはよく分かりませんでした。
この問題を調べるには、雛も全て個体識別した上で給餌をしっかり記録する必要があるでしょう。

独りで留守番している間、1羽で取り残された雛は羽繕いしたり羽ばたき練習をしています。
やがて巣内で動きが見られなくなりました。
私がちょっと目を離した隙に最後の1羽も巣立ってしまったのかと焦りました。
しかし鉄骨の陰に隠れ、巣にうずくまって休んでいただけと分かり、一安心。

この雛はやはり発育が遅れている印象で、体つきが華奢に見えるだけでなく、巣から離れて鉄骨を登ったり歩き回ったりするやんちゃな独り遊び(冒険)もやりませんでした。
性格が臆病なのかも知れません。
高所から飛び降りる巣立ち(初飛行)は、鳥の雛にとっても、いきなりバンジージャンプするような恐怖感があるのでしょうか?
一方、親鳥が巣の右下に張り出した鉄骨の端に止まり、そのまま帰巣せず南の杉林の方へ滑空したことが一度ありました。
巣に残った雛に飛び方のお手本を見せているのかな?

さて、巣立ったばかりの3羽の雛は、どこに行ったのでしょう?
なんとなく、鉄塔の南の杉林に隠れていそうな気がしてきました。
親鳥がときどき鉄塔に帰巣せず、南にある杉林の方へ低空で飛んで行くのが怪しい…。
幼鳥へ巣外給餌しに行ったのでは?と予想したものの、実際に確かめた訳ではありません。

映像には写っていませんが、給餌後に排泄した雛の糞を親鳥が持ち去り、近くの屋根で捨てていました。(排糞行動)
また、親鳥が縄張り防衛するのを目撃しています。
溜池の北の電線まで急行して、侵入したカラスを追い払いました。



以下は微速度撮影した映像のメモ。

再生時間  行動
0:25   帰巣、給餌
0:30   出巣 鉄骨の右端に飛んで移動しただけ。
0:38   出巣 今度こそ出巣
0:51   帰巣、給餌
0:53   出巣
1:20   帰巣、給餌
1:34   出巣
3:30?   幼鳥が巣にうずくまり、完全に見えなくなった。ときどき風で煽られる羽毛がかすかに見えるだけ
6:40?   幼鳥が一瞬立ち上がった。昼寝から起きた? すぐにまた座り込み、 姿が見えなくなった。
7:18   帰巣? やや引きの絵にすると、親鳥が鉄骨の右端に止まっていた。
7:19   出巣 雛に給餌せず飛び去った。
7:23   帰巣、給餌
7:26   出巣
7:31   帰巣、給餌
7:36   出巣
8:23   帰巣、給餌
8:25   出巣
9:02   撮影終了





※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

つづく→#35:ハシボソガラスの雛が全て巣立った後の空巣とその真下の糞(野鳥)



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