2011/01/02

コガタスズメバチの初期巣とシダクロスズメバチによる謎の訪問





2010年6月下旬

コガタスズメバチVespa analis insuralis)創設女王がしばらく巣口にぶら下がってから外出しました。
入れ替わるようにクロスズメバチの仲間が一匹飛来し、軒下を探索し始めました。
初期巣の外被にもときどき止まって徘徊しています。
虫の知らせで異変を感じたのか、コガタスズメバチ女王が巣材を咥えて帰巣しました。
以前も同様の事件があり侵入者の正体が気になっていたので(エピソード#15参照)、同定のため採集することにしました。
捕虫網を振り捕まえた蜂を容器に移していたら、なんと別個体のクロスズメバチが飛来しました。
千客万来です。
どうしてコガタスズメバチの初期巣にこれほど集まるのか不思議でなりません。

コガタスズメバチ創設女王が口に巣材を咥えたまま出巣しました。
ホバリングで定位飛行し、外被に止まりました。
外被を徘徊して点検するも、増築せず巣内に戻りました。
またすぐ出てきて外被を点検し、巣内に戻りました。
招かれざる訪問客が相次ぐので警戒しているのだろうか。
ようやく外被増築を開始。
梁との結合部を補強しています。気温25℃。


採集した蜂を持ち帰り標本を調べると、シダクロスズメバチ♀(Vespula shidai)と判明しました。
腹部体節が縮こまってしまいましたが、体長17mmは明らかにワーカーではなく女王蜂のサイズです。
期待していたような社会寄生種のスズメバチではありませんでした。
それにしても、単独営巣期のシダクロスズメバチ女王がコガタスズメバチの初期巣に一体何の用があって強い興味を示すのだろうか。
謎は深まるばかりです。
主が留守の間に巣内に進入して大胆にも幼虫や蛹を狩ろうとしているのだろうか。
ちなみに体格差は歴然としています(コガタ>シダクロ)。
もし侵入中に見つかって喧嘩になると、シダクロに勝ち目はないでしょう。
つづく
 


2011/01/01

蜘蛛(ワシグモ科)の遊糸飛行




2010年10月下旬

飛行機雲…ではなく飛行蜘蛛の映像です。
道端で黒い小さな徘徊性クモがススキの茎(直径4mm)に止まっていました。
触肢が膨らんでいるので♂だろう。
茎を少し前進し、腹端を持ち上げてそよ風に糸を吹き流しています。
糸疣から複数の糸が風に乗って伸びているのが分かります。
風でススキが揺れて接写しにくいので、後半は左手で茎を摘まみながら撮りました。
逆バンジーのように飛んで行く瞬間がばっちり撮れてラッキー♪
風が弱かったようでそれほど飛距離は稼げなかったものの、クモを見失ってしまいました。
バルーニング行動の撮影と採集は両立できないのが悩みです。
秋晴れですが前日に降り続いた雨のせいで肌寒い午前中。
いつもお世話になっている闇クモ画像掲示板に投稿したところ、ワシグモ科の一種だろうとご教示頂きました。

『クモの科学最前線:進化から環境まで』p91によると、
糸疣を高く突き上げる“tip-toeing(つま先立ち)”と呼ばれる行動は、バルーニングの際にさまざまなクモで見られる特有の行動である。飛んでいく方向は風任せであるが、バルーニングに関わる一連の行動は特定の気象条件が揃った場合に限られ、能動的な行動であると考えられる。




↑【おまけの動画】
最新の研究によると、クモのバルーニングは空気の静電気も関与しているらしい。

ムネアカオオアリvsコガタスズメバチ女王




2010年6月下旬

コガタスズメバチVespa analis insuralis)初期巣の定点観察記録

次の招かれざる客は蟻です。
ムネアカオオアリCamponotus obscuripes)と思われる働き蟻が餌を求めて巣の外被上を徘徊しています。
遂に巣口から中に侵入しました。
スズメバチはアシナガバチのように天敵である蟻の忌避物質を巣の表面に塗布していないみたいです。
コガタスズメバチの初期巣に特有の長い首にいわゆる「アリ返し」の効果があるんじゃないかと個人的に思っていたのですけど、それも無さそうです。(時間稼ぎにはなるでしょうけど。)
しばらくすると中から這い出てきたアリが巣口の辺りでウロウロしています。
コガタスズメバチ女王が帰巣すると慌ててアリは退散しました。
単独営巣期に初期巣外被の長い首を人為的に壊すと女王は修復するだろうか?
中の幼虫・蛹がアリや寄生虫などの天敵に襲われ易くなるのだろうか?
 (つづく


【追記】
森林生物データベースによるとコガタスズメバチの「初期巣の円筒部分は北日本より南日本のほうが長くなる」らしい。
南方で特に跋扈するアリ対策として初期巣の首が長く発達したことを示唆しているように思います。

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