2011/03/24

アリグモ(蜘蛛)の擬態



2007年6月下旬


アリグモMyrmarachne japonica)の擬態はアリを油断させて捕食するための攻撃的擬態ではないそうです。
アリは視覚で騙されるほど目が良くないのでしょう。
試しに生餌のミクロ蛾と一緒にアリ(種類不明)をアリグモ♀の飼育容器に投入してみました。
数日飼っても力関係で劣るのかアリグモは決してアリを捕食せず逃げて回りました(映像なし)。
やはり攻撃的で恐れられているアリに似せることで外敵から身を守る作戦らしい。
「蟻の威を借る蜘蛛」


アリは獲物を噛み砕いて体内消化します。
対するアリグモは体外消化で腹部にはアリの分節を模した横縞が見えます。
第一脚をアリの触角のように振り立てます。



【追記】
『クモのはなしII:糸と織りなす不思議な世界への旅』p107(第14章:アリに似たクモ)によると、
アリグモ類は、日本での観察によると、ハエなどの双翅類の昆虫を食べていることが多く、アリを襲うことは知られていません。(中略)ほかの虫たちにきらわれているアリに似ることで、外敵、とくに狩人蜂から身を守っているというわけです。



【追記2】
鈴木紀之『すごい進化 - 「一見すると不合理」の謎を解く (中公新書)』によると、
(ヨーロッパに生息するアリに擬態したクモの)擬態はあくまで不完全で、アリの完全なコピーとはなっていません。いつも何匹かで歩き回っているアリとは異なり、アリに擬態したクモはよく葉の上に単独で餌を待ち伏せしていますが、こうした行動の差も「アリとは少し違う」という違和感の原因になっています。それゆえか、実験の結果、アリだけを食べるクモはアリに擬態したクモのことをエサとは認識せず、攻撃をしかけませんでした。アリだけを食べるクモは不完全な擬態を見抜き、クモであると正しく認識していたのです。では、クモだけを食べるクモはどうだったのでしょう。彼らは逆に、アリに擬態したクモのことを「こいつはアリかもしれない」と思い込み、攻撃をしかけませんでした。不完全ながらも擬態がうまく機能して、天敵をだますことに成功していたのです。  つまり、擬態が不完全だからこそ、アリを狙うクモとクモを狙うクモの双方に対して効果的だったのです。p215〜216より引用)



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