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2026/09/23

カラス雛の死骸をホンドタヌキの溜め糞場に給餌してみると…【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2025年5月上旬〜中旬

シーン0:5/7・午後(@0:00〜) 

郊外の道端で鳥の雛が路上に落ちて死んでいました。 
一部の羽根が青かったのでオナガの雛と迷ったのですが、喉が黒かったので、おそらくハシボソガラス(Corvus corone)の雛だと思います。 
(念のためにGoogleレンズで写真鑑定してもらいました。)
嘴をしっかり閉じて死んでいるため、カラス雛の口内が赤いことを確認できませんでした。 (カラス成鳥は口内が黒になる。)

電柱に架けられたカラスの巣を撤去・駆除する際に、雛が落ちてしまったのでしょうか? 
しかし、カラスの巣の撤去を依頼されても、巣内に卵や雛が居た場合には、基本的に撤去作業を強行しないはずです。
鳥獣保護管理法で守られているからです。

それとも、巣内で死んだ雛を親鳥が巣外に捨てたのでしょうか? 
巣内で死んだカラスの雛を親鳥が食べたり、他の雛に給餌したりすることはないらしく、死骸を巣の外に捨てるらしい。 
真上の電柱にカラスの巣があるかどうか確認すべきだったのに、こんな街なかで営巣しているはずがないと思い込んでいた私は見上げませんでした。 
(たとえカラスの巣が電柱の上に無かったとしても、電力会社が撤去した直後かもしれません。)
実は翌年、同じ(または隣の)電柱に営巣するハシボソガラスを観察しています。 


この近所で他にカラスの営巣地として心当たりがあるのは、高圧線の送電塔です。 
猛禽などの捕食者がカラスの巣を襲い、雛をさらってくる途中で落としてしまった可能性もありそうです。 

死んでいるとは言え、カラスの雛の実物を見るのは初めてです。 
この個体は羽根がまだ生え揃っていません(水色の羽鞘が見えます)。 
採集時に死骸を持ち上げてみたら意外に重かったので、カラスの親鳥が巣外に捨てるにしても、咥えて運ぶのは大変そうです。 
したがって、巣から遠くに運んで捨てたとは思えません。 

写真に撮ってから死骸を採集しました。 
一度は立ち去りかけたものの、ビニール袋を持参していたことを思い出し、それを手袋代わりにして死骸を素早く回収しました。 
死骸が横たわっていた舗装路は体液で湿っていて、微小なアリ(種名不詳)が数匹群がっていました。 
死臭を嗅ぎつけたハエ類などはまだ来ていませんでした。 
死後硬直もなかったので、死んでからそれほど時間が経っていないようです。 

持ち帰った死骸をとりあえず冷凍保存しました。 
剖検して死因を調べるか、頭骨標本を作るか、スカベンジャーに給餌するか、使い道を考えます。
15cm定規を並べて置いた。



シーン1:5/9・午後・晴れ(@0:12〜) 
前回の成功に味をしめて、ハシボソガラスの雛の死骸もホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)に給餌することにしました。 


2日後に、冷凍庫から取り出したカラス雛の死骸を、スギ防風林にあるタヌキの溜め糞場wbcまで持参しました。 
死骸は不自然な体勢で曲がったまま凍っていました。
ゴム手袋をしてから、まだ完全に解凍されていない死骸をじっくり見ると、総排泄孔が大きいことにちょっと驚きました。
青い羽鞘の先から黒い羽根が生えかけています。

死骸をただ林床に置くのではなく、溜め糞の横にある灌木(樹種不明:落葉性広葉樹)に針金で頸部を固定してぶら下げました。 
前回の反省を活かして、スカベンジャーが死骸を監視カメラの前からすぐに持ち去れないように工夫したつもりです。 


カラス雛の死骸を常温解凍しても、私の嗅覚ではほぼ無臭でした。
しかし、かすかな死臭を敏感に嗅ぎつけたハエ類(キンバエ、クロバエ)がすぐに飛んできて頭部に群がり、吸汁し始めました。 
ハエ♀が産卵しても死骸がまだ凍っているため、ウジ虫(ハエの幼虫)の孵化を遅らせることができそうです。

果たしてタヌキはカラス雛の死骸を巣穴に持ち帰って母親♀に給餌するでしょうか? 
予想では、繁殖期に巣穴で出産・授乳・育児する母親♀にせっせと餌を運んできて与えるのは父親♂やヘルパー♀(娘)の仕事です。 


シーン1:5/13・午前2:06・気温8℃(@1:53〜) 
今回の給餌実験は、残念ながら全然私の思い通りにはいきませんでした。
監視カメラが不調だったのか、4日後の深夜未明までろくに起動しませんでした。
すでにカラス雛の死骸は何者かにほとんど持ち去られた後で、頭部しか残っていませんでした。

ホンドタヌキの両目失明個体(ヘルパー♀)が死骸をぶら下げておいた真下の落ち葉の匂いを嗅ぎ回っています。
カラス雛の死骸から垂れた体液(ドリップ)の死臭が残っているのでしょう。 

針金でぶら下げられたカラス雛の頭部を嗅ぎ当てると、恐る恐る咥えて引っ張り、手前の林床に落としました。 
発見が遅れたせいで、死骸(の頭部)はかなり腐敗しているはずです。  
タヌキが腐肉を食べる前に1分間の録画時間が終わってしまいました。


シーン2:5/13・午前2:21・気温9℃(@2:21〜) 
14分後も両目失明個体が同じ場所に留まり、のんびり座って体を掻いていました。
すぐ横には親ダヌキと思われる別個体が居ます。
結局、誰がカラス雛の死骸を食べたのか、証拠映像が撮れませんでした。
どうやら死骸を監視カメラの画角から外れた位置に持ち去ってから食べたようです。
今回も両目を失明したヘルパー♀はせっかく見つけた死骸を食べられず、両親のどちらかが横取りして食べたのでしょうか?

親子2頭が溜め糞場WBCに並んで一緒に大小便の排泄を始めました。
そこへ3頭目の個体が現れ、合流しました。(@3:34〜)
(溜め糞場wbcで3頭の家族群が揃ったことになります。)


シーン3:5/13・午前2:22(@3:53〜) 
最後に来た殿(しんがり)の個体(両目が健常の親ダヌキ)も排便を済ませると、獣道を右へ向かい、スギの木の根本で待っていた両目失明個体と合流しました。


シーン4:5/13・午前2:24(@4:23〜) 
左から来たタヌキが溜め糞を素通りして、右のスギの根本に座っていた個体と合流しました。
このときキュン♪と小声で鳴きました。(@4:31〜)
タヌキの鳴き声にしては初めて聞くレパートリーです。 
2頭が相互毛繕いしているようですが、よく見えません。




※ 鳴き声が聞き取れるように、動画の一部は編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


シーン5:5/21・午前11:24・晴れ・気温30℃(@4:38〜) 
8日後の昼間にたまたま撮れた現場の様子です。


【考察】
残念ながら、今回の死骸給餌実験は失敗に終わりました。
今回の撮影アングルでは、もしもタヌキが手前から奥に歩いて来てそのまま死骸に食いついた場合、トレイルカメラのPIRセンサーは反応しにくいことが仕様上予想されます。
撮り漏らしをなくすためには、トレイルカメラをもう1台別のアングルで設置するべきでしたね。

これで懲りずに、次の死骸を探すことにします。
くれぐれも、人目につかない場所で小規模にやりましょう。
死骸の給餌方法については試行錯誤中なのですが、今回は見栄えがよろしくありません。
死んだ雛の首に針金を巻き付けてぶら下げたので、もしも誰かが給餌現場に通りかかって見つけたら、違法な罠を設置したのか?とか、生きたまま鳥の雛を吊り下げて野生動物をおびき寄せようとしているのか(動物虐待)?などと誤解されて通報されそうです。
いざというときに「私が鳥の雛を殺した訳ではない」と申開きができるように、死骸を見つけたときの証拠写真を残しておく必要があります。
死んだ雛の首ではなく足を針金で縛って吊り下げようかとも思ったのですが、スカベンジャーが死骸を咥えて引っ張ったら、すぐに針金がすっぽ抜けてしまいそうです。

つづく→

2026/09/19

ハシボソガラスに腹部を捕食されても虫の息で歩くカブトムシ♂

 

2026年9月上旬・午後16:20頃・晴れ 

山麓の農村部の歩道で1羽のハシボソガラス(Corvus corone)が何かしていました。
私が歩いて近づいても、珍しくカラスはなかなか逃げようとしません。 
横のガードレールに一旦飛び乗ってから(名残惜しそうに)ようやく飛び去りました。 
逃げたハシボソガラスは、少し離れた外灯の支柱や送電塔の中段に留まって、私の様子をうかがっています。
(映像はここから。)
カラスが居た歩道を現場検証すると、解体されたカブトムシ♂(Trypoxylus dichotomus)の死骸が歩道に仰向けで転がっていました。 
ハシボソガラスがカブトムシ♂を捕食・解体するシーンを撮影する絶好のチャンスだったのに、気づかず撮り損ねたのが残念です。 

カブトムシ♂の頭部には前胸と右鞘翅が付いたままでした。 
脚は、左右の前脚と左の後脚だけ残っています。
立派な角は無傷でしたが、身を守る役には立たなかったようです。 
指で触れると、左右の前脚および口吻が動いたので、まだ生きていることが分かりました。 

背側の状態を見るために仰向け状態から元に戻してやると、1対の前脚だけを使ってぎこちなく歩いて前進し始めました! 
左の後脚は麻痺していました。
左前脚の跗節に力が入らないようで、路面を歩くグリップが左右非対称になっています。 
そのため、瀕死のカブトムシ♂はすぐにバランスを崩して再び横転しました。 
もがき続ける前脚が空を切ります。 
カブトムシの歩行を司る中枢神経系は胸部の腹側にあって、カラスに解体されても、ほぼ無傷だったようです。 
(ちなみに、我々ヒトを含む脊椎動物の中枢神経系は背側にあって、昆虫とは体制の背腹軸が逆になっています。) 

かなりショッキングな恐怖映像ですけど、過去にほぼ同じシーンを観察した経験があるので、冷静に撮影できました。 
今回はハシボソガラスのしわざだとはっきりしています。



カラスがカブトムシ♂を捕食する前に根元から毟り取った脚や翅(前翅と後翅)が路上に散乱していました。 
そのうち脚の1本をクロヤマアリ(Formica japonica)のワーカー♀が後ろ向きに引きずって巣穴に運び去るところでした。 

胸部からちぎり取られた腹部も路上に残されていました。 
腹部の内部組織はハシボソガラスに捕食されて空っぽでした。 
カラスはカブトムシを狩っても、腹部の肉しか食べないようです。
これは6年前の事例でも同じでした。 

もし私が現場にカメラだけを置いて離れたら、さっきのカラスが戻ってきて食べ残しのカブトムシ♂を捕食するシーンを撮れたかな?
もしもまだ食べるつもりなら、カラスは逃げる際に獲物を咥えて持ち去ったはずです。



2026/09/16

路上に捨てられたスズメ(野鳥)の卵に群がるクロヤマアリ♀

 

2025年5月上旬・午後15:10頃・くもり 

山麓の農村部で舗装された道端に小さな鳥の卵が落ちていました。 
舗装路に落ちた衝撃で割れたのか、卵の真下の路面が乾きかけの卵白で汚れていました。 


中身の卵黄が乾いている。
定規を並べて置いて採寸
なぜか道端に落ちていたスズメの卵

卵殻は褐色で、濃淡のある斑点模様がありました。 
おそらくスズメ(Passer montanus)の卵でしょう。 
卵殻の表面をよく観察すると、数本の黒い体毛が粘液で付着しています。 
鳥の羽毛っぽくありませんが、スズメの親鳥が産座の巣材として持ち込んだ獣毛や人毛(頭髪)かもしれません。 

クロヤマアリ(Formica japonica)のワーカー♀3匹が割れた卵の内部に潜り込んで、乾きかけた黄身を食べていました。 
割れた卵を私が路上で転がしながら接写すると、アリは逃げてしまいました。 


【アフィリエイト】 


【考察】 
スズメの卵を見つけたのは初めてです。
近くにスズメの巣があるはずですが、発見現場の真上にはありませんでした。 
何者かがスズメの巣から卵を1個持ち出し、空中から落として捨てたようです。 
雛が孵化した後に残った卵殻を親鳥が巣外に捨てたのかと初めは推理しました。
しかし、雛が正常に孵化したときには、卵殻がこのような割れ方にはならないのだそうです。(後述) 

殻の中には乾いた黄身が残っていて、卵白は路面に流出してました。 
したがって、高所から路面に落ちた衝撃で卵殻が割れたようです。 
孵化しなかった未受精卵を親鳥が巣外に捨てたのかもしれません。 

卵殻をよくよく見ると、鳥の鋭い嘴で一突きされたような割れ方です。 
例えばカラスなどの捕食者がスズメの巣を襲って卵を奪い、持ち去る途中でうっかり落としてしまったのでしょうか? 
あるいは、住宅難のスズメが同種の巣を襲って乗っ取る際に、巣内の卵を壊して捨てたのかもしれません。 


Perplexity AIに色々と相談してみました。

Q1: 住宅難のスズメ親鳥が他の巣を襲って乗っ取る場合、先に産みつけられていた卵をどう処分するか? 捨てるか食べるか?


A1: 日本のスズメ(Passer montanus)については、乗っ取り時に先住者の卵をどう処分するかを系統的に調べた国内研究は、確認できた範囲では見当たりません。ただし、国内の観察記録からは、卵を巣の外へ押し出す、巣内でつついて割る、といった処理は十分に考えられます。

卵の処分方法

もっとも可能性が高いのは、次の順です。

  1. 巣の外へ落とす・押し出す
  2. 巣内でつついて破壊する
  3. 割れた卵の中身を食べる
  4. 卵を残したまま、上から巣材を積んで埋める

スズメは、他種の巣を利用する際、巣材を大量に運び込んで巣を作り替えることがあります。環境省の生物多様性センターの資料にも、スズメがコシアカツバメやイワツバメの巣を奪い、場合によっては雛をくわえ出して巣を乗っ取ることが記録されています。[]

したがって、先住巣に卵がある場合も、まずはその卵を除去して巣場所を使うと考えるのが自然です。ただし、卵をくわえて運び出すのは難しいため、実際には巣内でつついて割り、殻や内容物を残す、あるいは巣の縁から落とす可能性が高いでしょう。

食べるのか

割れた卵の中身を食べる可能性はありますが、卵を目的に襲うと断定できる国内資料はありません。

スズメは雑食性なので、割れた卵の黄身や白身を食べること自体は不自然ではありません。しかし、乗っ取りの主目的は通常、卵や餌の獲得ではなく、安全で使いやすい営巣場所の確保と考えられます。卵を食べるとしても、巣場所を確保する過程で割れたものを利用する、という位置づけでしょう。

実際、国内の巣箱観察では、スズメに奪われたシジュウカラの卵が巣箱下で割れた状態で見つかった例があります。観察者は、スズメが卵をくわえて運んだのではなく、巣箱内でつついて割ってから外へ出した可能性を推測しています。ただし、これは個別観察であり、スズメ一般の行動として確定したものではありません。[]

雛がいる場合との違い

先住巣に卵ではなく雛がいる場合、スズメが雛をくわえ出して巣を乗っ取ることは国内資料に明記されています。[]

卵の場合は、雛よりも小さく、巣から押し出したり、つついて破壊したりしやすいため、次のような痕跡が考えられます。

  • 地面に卵殻が落ちている。
  • 殻が巣箱や巣の入口付近に残る。
  • 黄身・白身の痕跡だけが巣内にある。
  • 卵が消え、巣材が増えている。
  • 先住種が巣場所から追い出されている。

ただし、落下、捕食者、親鳥自身による巣放棄などもあり得るため、卵殻だけから「スズメが食べた」と断定することはできません。

要するに、日本のスズメでは、先住卵を巣外へ落とすか、巣内でつついて破壊し、その過程で中身を食べることはあり得る。しかし、卵を必ず食べるという証拠はなく、乗っ取りに伴う副次的な行動と見るのが妥当です。


Q2: スズメが産んだ卵を温めても雛が孵化しなかった場合、親鳥は未受精卵をどう処分するのか? つついて割って、中身を食べてしまうのか? 捨てに行くのか? いつまでも温め続けるのか?


A2: 日本のスズメについて確実に言える範囲では、次のようになります。

  • 未孵化卵が生じること自体は普通にあり得る。

  • 未孵化卵には、無精卵だけでなく、発生初期に死亡した卵や抱卵不良による失敗も含まれる。

  • 孵化した雛がいれば、親鳥は通常、雛への給餌を優先する。

  • 未孵化卵を巣内に残すことも、巣材や雛に埋もれさせることも、巣外へ落とすこともあり得る。

  • 親鳥が必ず卵を割って摂食する、あるいは必ず積極的に運び出す、とまでは言えない。



Q3: スズメの雛が卵から無事に孵化すると、卵殻はパカッと半分に別れるのか? 親鳥が外から嘴でつついて雛の孵化を助けるのでしたっけ? 私が路上で見つけたスズメの卵は、鳥が外から鋭い嘴でつついたような割れ方でした。

A3: 結論から言うと、スズメの雛が正常に孵化した場合、卵殻は「パカッと2つ」に きれいに割れるわけではなく、雛が内側から円状にひびを入れて蓋のように開けるのが一般的です。また、親鳥が外から嘴でつついて孵化を助けることはありますが、必須ではありません。

正常な孵化時の割れ方

多くの鳥類(スズメを含む)では、雛は卵の中で「卵歯(らんし)」という一時的な突起を使い、内側から卵殻をコツコツとつつきます。この行動を「嘴打ち(はしうち)」と呼びます。

  • 雛はまず気室(卵の太い端にある空気の部屋)の境界付近を内側からつつき、円を描くようにひびを入れていきます。
  • 最終的にはその円状のひびに沿って、卵の先端側が「蓋」のように外れ、雛が這い出します。
  • したがって、正常な孵化後の卵殻は、1つの大きな破片(蓋)+本体という形になりやすく、「2つに真っ二つ」というよりは「蓋が開いた形」になります。[]

スズメの卵は小さく(長径約18 mm)、殻も薄いため、巣内ではさらに細かく砕かれることもありますが、孵化直後の状態としては「円状のひび+蓋」が基本です。

親鳥は外から助けるのか

親鳥は、雛が内側からつつく音や振動を感知し、外側から嘴で卵殻を啄む(つつく)ことで介助することがあります。これを「卒啄(そつたく)」と呼びます。

  • 野外の巣では、親鳥が外からつついて孵化を助ける例が知られています。
  • ただし、雛が自力で嘴打ちを完了できれば、親鳥の介助はなくても孵化します。
  • 人工孵化などでは、介助がないため、弱った雛が殻割りに失敗することもあります。[]

したがって、「親鳥が必ず外からつついて助ける」というよりは、「必要に応じて介助することもある」が正確です。

路上で見つけた卵の割れ方から考えられること

あなたが路上で見つけたスズメの卵が、「鳥が外から鋭い嘴でつついたような割れ方」をしていた場合、次のような可能性があります。

  1. 正常な孵化後に、親鳥が卵殻を処分するために外からつつき、巣外へ押し出した

    • 孵化後の空卵殻は、巣内に残すと腐敗や捕食者を誘引するリスクがあるため、親鳥が巣外へ運び出す、またはつついて壊すことがあります。
    • この場合、卵殻は巣の近くや落下地点で見つかることがあります。
  2. 孵化に失敗した卵を、親鳥がつついて破壊し、巣外へ捨てた

    • 未受精卵や胚が死亡した卵を、親鳥が巣から排除する行動は多くの鳥で知られています。
    • この場合も、外からつついたような不規則な割れ方になりやすいです。
  3. 捕食者(カラス、ヘビ、ネコなど)や他の鳥が卵を襲い、割って中身を食べた

    • この場合は、殻が不規則に砕け、黄身・白身の痕跡が残ることが多いです。
  4. 巣から落下し、衝撃で割れた

    • この場合は、割れ方がランダムで、円状のひびが見られないことが多いです。

正常な孵化直後の卵殻であれば、円状のひび(蓋の縁)が残っていることが手がかりになります。一方、外から強くつつかれた、あるいは衝撃で割れた卵では、そのような規則的なひびが見られないことが多いです。

路上の卵から何が言えるか

路上で単独で見つかった割れたスズメの卵だけでは、「正常孵化後の殻捨て」なのか「失敗卵の排除」なのか「捕食・落下による破壊」なのかを確定するのは困難です。

ただし、次のような特徴があれば、孵化に関わる可能性が高まります。

  • 殻に円状のひびが見られる。
  • 殻の内側が比較的きれいで、黄身・白身の付着が少ない(すでに雛が出た後)。
  • 巣が近く(数メートル以内)にあり、親鳥の出入りが観察される。

逆に、殻が不規則に砕け、中身が飛び散っている、巣が近くにない、といった場合は、失敗卵の排除や捕食・落下の可能性が高いと考えられます。



Q4:  写真を添付したので判定して下さい。割れた卵に定規を並べて置いて採寸しました。さっきの回答によると、雛が正常に孵化した後に親鳥が卵殻を巣外に捨てたようには見えません。卵殻の中には卵黄が少し残っていて、乾いていました。割れた卵の下の路面は卵白で濡れていました。落下の衝撃で卵が割れたのかな?



A4: 写真からは、正常に孵化した後の空卵殻には見えにくく、落下などの衝撃で割れた可能性が最も高そうです。ただし、写真だけで割れた原因を断定することはできません。

写真から読み取れる特徴

  • 卵殻は、およそ長径20 mm前後、短径15 mm前後に見えます。これは国内のスズメ(Passer montanus)の卵の大きさと概ね一致します。国内資料では約18 × 14 mm、別資料では平均18.5 × 13.7 mmとされています。[][]
  • 殻は「円周に沿って割れた蓋状」ではなく、比較的大きな不規則な開口部が一つできているように見えます。
  • 殻の内側に黄身の残渣があり、卵白が卵の下の路面に広がっています。
  • 卵殻の表面には、開口部から離れた位置まで走る細い亀裂も見えます。

この状態は、少なくとも典型的な「雛が内側から嘴打ちして、円形のひびに沿って蓋を開けた空殻」とは一致しません。雛は卵歯を使って内側から殻を破り、孵化時には卵殻に割れ目を作りますが、卵歯はあくまで雛側の構造です。[][]

落下で割れた可能性

かなりあります。

路面に卵白が濡れた状態で残っていたという観察は、卵が割れた時点で内容物が液状だったことを示します。卵が巣から落下すると、まず衝突した部分に大きな破口が生じ、そこから卵白や卵黄が流れ出ます。さらに、落下後に卵が路面上で転がると、殻に複数の亀裂が広がります。

写真のような、

  • 大きく不規則な破口。
  • 破口から連続する細い亀裂。
  • 路面への卵白の流出。
  • 殻がほぼ原形を保ったまま開いている。

という組み合わせは、巣から落ちた未孵化卵が路面に衝突して割れたという説明とよく合います。

親鳥がつついた可能性

親鳥や別の鳥が外側からつついた可能性を完全には排除できません。ただ、写真で確認できる破口は、嘴による複数の小さな穿孔が連続したというより、一度の衝撃で生じた破断に近い印象です。

もし外側からつつかれた場合には、通常は次のような痕跡を期待します。

  • 独立した小孔、または小孔が複数並ぶ。
  • 穴の周囲に内側へ向かう局所的なへこみ。
  • 殻の一部が内側へ押し込まれている。
  • 一方向からの攻撃を示す、比較的限局した破壊。

今回の写真だけでは、そのような典型的な嘴痕は明瞭ではありません。したがって、親鳥が外からつついて割ったというより、卵が落下・衝突して割れた可能性を優先します。

正常孵化との違い

正常孵化後の殻なら、次のような所見があると判断材料になります。

  • 卵の太い端を中心に、ほぼ一周するひび。
  • そのひびに沿って外れた「蓋」のような殻片。
  • 殻の内側に卵黄・卵白が大量には残っていない。
  • 殻の一部が薄く、内側から外へ押し広げられたような破断。

今回の殻では、開口部の縁は不規則で、正常孵化に特徴的な一周性の切断線は明瞭ではありません。また、卵黄が残り、卵白が路面に流れたという点から、雛が出た後の空殻ではなく、内容物が残った卵が破損したと考えるのが妥当です。

判定

現時点での推定順位は次のようになります。

  1. 巣から落下し、路面への衝突で破損した。
  2. 巣内または巣の縁で押し出され、落下時に破損した。
  3. 親鳥または別の鳥がつついて破壊した後、落下した。
  4. 正常孵化後に残った殻。

特に、卵白が路面に流れ、卵黄が殻内に一部残って乾燥しているという情報は、孵化後の空殻よりも、未孵化卵の破損を支持します。したがって、写真の卵は「雛が正常に孵化した後、親鳥が捨てた殻」より、発生中または未受精の卵が巣から落ちて割れたものと見るのが最も自然です。


 

2026/09/11

ジムグリの死骸をホンドタヌキの溜め糞場に給餌してみてると…【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2025年4月下旬〜5月上旬

シーン0:4/30(@0:00〜) 
ドラッグストア郊外店の広い駐車場で、ヘビの死骸を見つけました。
白っぽい腹面を上に向けて舗装路に横たわっていました。 
損傷が激しく、頭部が完全に失われていた他、尻尾の先も千切れかけています。 
駐車場で車に轢き殺された(ロードキル)とは限らず、カラスやトビなどのスカベンジャーが他所から死骸を運んできた可能性もありそうです。

ビニール袋に入れて死骸を採集しました。 
死後硬直はなく、手に持つとぐったりしていました。 
ハエなどが集まって来ていなかったこともあり、死んでからまだそれほど時間が経過していないようです。


裏返して背面も調べると、ヘビの種類はジムグリ(Elaphe conspicillata) でした。
街なかによく出没する種類ではないので、やはり他所から持ち込まれた死骸のような気がします。

関連記事(2年前の撮影)▶ 


シーン1:4/30・午後16:04・晴れ(@0:03〜) 
スギ防風林にあるホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)の溜め糞場WBCまでジムグリの死骸を持ってきて林床(スギ落ち葉の上)に置きました。
死骸を採集してから5時間以上も経っていたので、死後硬直が進んでいました。
採寸のため、15センチの定規を並べて写真に撮りました。
ここには複数のタヌキが頻繁に通って来ることが分かっています。
雑食性でスカベンジャーとしても知られるタヌキがヘビの死骸を見つけたときの反応をトレイルカメラで記録しようという企みです。
本当は、溜め糞場から離れた獣道で給餌実験をすべきなのですけど、少ない撮影機材でやり繰りしているので仕方がありません。
なるべく夕方に近い時間に給餌したのは、昼間にカラスが死骸を見つけて食べてしまうと困るからです。


シーン2:4/30・午後18:44・気温10℃(@0:22〜) 日の入り時刻は午後18:32。
日没直後の晩に、早速2頭のホンドタヌキが連れ立って溜め糞場WBCに現れました。
近くにある休耕地の巣穴から排便に来たようです。

珍しく先に到着していた両目失明個体(ヘルパー♀h)がヘビの死臭を嗅ぎつけ、頭部のない死骸の首付近を咥えて持ち上げました。
そのままズルズルとひきずるように獲物を持って少し右に移動。
2番目に来た親タヌキ(♀?)がそれに気づくと、近づいて分け前を要求しました。
このとき餌乞いの鳴き声などは発しませんでした。 
ヘビの反対側の端を咥えると、親子2頭で綱引きのように引っ張り合いを始めました。 
そのまま蛇を引き千切るかと思いきや、立場の弱いヘルパー♀hがあっさり諦めて口を離したので、激しい争奪戦にはなりませんでした。
ジムグリ死骸の匂いを嗅いだり舐めたりしてから、親タヌキはヘビ死骸の太い端(前側)を咥えて奥に持ち去りました。 
林床の少し離れた地点まで運ぶと、蛇の死骸を独り占めで食べ始めました。

せっかく先に見つけた 獲物を奪われた両目失明個体(ヘルパー♀h)は抵抗も抗議もしませんでした。
タヌキにとって、ヘビの死骸は争奪戦するほどの魅力がない餌なのかな?  
その場で未練がましくスギ落葉に付いた残り香を嗅いだりしています。 

最後3番目に来た親タヌキ(♂?)は、溜め糞場wbcで排便もしないで、ぼんやり佇んでいるだけです。

重要なシーンを1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@1:24〜2:21) 


シーン3:4/30・午後18:46(@2:22〜)
ヘビの死骸を持ち去った親タヌキa(♀?)がさらに奥に移動していて、食べ続けています。 
(完食しなかったことが後に判明します。)

その間に、両目失明個体が溜め糞場で排便しました。
もう1頭の親タヌキb(♂?)はパートナーに分け前を要求することなく、少し離れたまま林床の匂いを嗅ぎ回っています。 
ジムグリ死骸の残り香が気になるようです。 

脱糞シーンを1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@3:22〜) 


シーン4:4/30・午後19:06・気温11℃(@4:23〜)
約20分後、奥の林床にヘビの死骸が放置されているようです。
単独行動のタヌキが溜め糞場を素通りして奥へ歩き去りました。 

やがて別個体が手前から登場しました。 
林床の匂いを嗅ぎながら奥へ歩いて行きます。
2頭とも後ろ姿なのでタペータム(輝板)が見えず、個体識別が出来ません。 



シーン5:5/1・午前4:20・気温2℃(@4:53〜) 日の出時刻は午前4:40。
監視カメラが次に起動したのは日の出直前です。
スギ林床の赤丸で囲んだ位置にヘビの死骸がなぜか突然出現していました。
何者かがここに運んできたシーンが撮れていないことになります。 
シデムシなど腐肉食性の昆虫が死骸を埋葬するために運んできたとしたら、変温動物ですからトレイルカメラには当然写りません。 
しかし5月上旬の未明は気温がかなり低い(2℃)ので、越冬明けの昆虫はまだ活動できないはずです。

左から来たタヌキ(両目の輝板は正常)が、ヘビ死骸の食べ残しを見つけました。
左前足で押さえつけながら、咥えてグイグイ引っ張っています。 
引きちぎることはできないものの、ヘビの皮を剥いているようです。
残念ながら、尻切れトンボで録画が打ち切られてしまいました。 
ホンドタヌキがヘビの死骸を完食したのか、どこかに持ち去ったのか、不明です。


シーン6:5/1・午前5:25・気温1℃(@5:54〜)
すっかり明るくなった早朝に、単独で来たタヌキが林床をうろついています。
もうヘビの死骸は残っていないようです。

後日に現場検証すると、私が置いたジムグリの死骸は無くなっていました。



【考察】
私にはまだ親タヌキの性別が見分けられず、個体識別ができていません。
ジムグリ死骸を食べた個体は、妊娠、出産、育児で食欲旺盛な母親♀なのではないかと勝手に想像しています。 

給餌実験をしたら、親ダヌキと子ダヌキ(ヘルパー)間の力関係を示す重要な証拠動画が撮れました。 
両目を失明したヘルパーは、親タヌキに餌を奪われても全く反抗しないで完全に服従しているようです。 
実は、冬の積雪期にも同様のシーンを観察しています。



野生動物に給餌するのは原則的に避けるべきですが、ヘビの死骸を駐車場に放置していれば、いずれ何らかのスカベンジャー(掃除屋)が食べに来たはずです。 
公共の駐車場にトレイルカメラを設置することはできませんから、予めトレイルカメラを設置した獣道に死骸を移動しただけです。
タヌキにドッグフードなどを給餌するよりはマシでしょう。 
路上の死骸(ロードキル)を放置したままだと不衛生なのは確かです。
通報して死骸を焼却処分してもらうと燃料代が余計にかかりますから、なるべくスカベンジャーに食わせる方がCO2の放出も減らせてエコです。
生態系にはスカベンジャーというグループがいて大切な役割を果たしているということを都会人は忘れがちです。

次に死骸を給餌するときには、監視カメラの近くから持ち去られないように工夫した方が長く観察できそうです。



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2026/09/05

池で煮干しの争奪戦を繰り広げるクロゲンゴロウの群れ

 



2026年4月下旬・午後14:30頃・晴れ・気温24℃・水温20℃(煮干しを給餌した岸辺) 

山麓の池Lに煮干しを投入してしばらくすると、水中を泳ぎ回っていた複数個体のクロゲンゴロウ(Cybister brevis)が煮干しの匂いを嗅ぎつけて集まってきました。 
同種間で餌をシェアするかと思いきや、独り占めしようとする占有行動(争奪戦)が勃発しました。 

同じ煮干しを巡ってクロゲンゴロウ同士が争っているというよりも、協力して餌を解体し始めた、という見方もできそうです。 
煮干しを噛んで引きちぎると、自分の分け前を持って急いで泳ぎ去ります。 
対岸の抽水植物の茂み(スゲの根元)などに隠れ、持ち込んだ餌をゆっくりと食べるのです。 
餌から滲み出る匂いが拡散しにくい場所を隠れ家として選んでいるようです。 
そこなら鳥などの捕食者からも見つかりにくくて安全です。 
しかし、隠れ家でも餌の独り占めは長く続きません。 
遅かれ早かれ煮干しの匂いが水中に拡散するために、周囲を泳いで探索していたクロゲンゴロウが集まってきてしまい、再び争奪戦が勃発することになります。 

ヤマアカガエル(Rana ornativentris)の幼生も一部の個体が煮干しに群がって食べ始めました。 
意外にも、クロゲンゴロウは同じ餌に群がるオタマジャクシに対して攻撃や捕食することはありませんでした。 
しかしクロゲンゴロウがオタマジャクシに対して寛容な訳ではありません。 
しばらくすると、クロゲンゴロウは息継ぎするために煮干しを抱えたまま水面まで浮上し、ついでにライバルのオタマジャクシから逃れて安全な隠れ家まで持ち去りました。 

クロゲンゴロウは、煮干しの争奪戦の最中にも定期的に浮上して水面で息継ぎする必要があります。 
しかし、息継ぎした直後に急いで潜水しても、池の底に沈んでいる煮干しを見失うことがありました。 
ライバルが息継ぎでいなくなった隙に、残った個体が急いで煮干しを持ち去る事例も多いです。 
つまり、息継ぎするのはせっかく手に入れた餌を失うリスクがあるのです。 
大庭伸也 編『ゲンゴロウ類の生態学』という専門書を読んでみると、まさしくこの問題を取り上げていました。
水深が浅い水域においては、息継ぎ後に餌を再発見できる確率が高いため、餌を置き去りにする。一方、水深が深い水域においては息継ぎ後に餌を再発見できる確率が低いため、餌を持ち去る戦略をとることが多いという。 (p94より引用)
同じ餌を巡ってライバルがいる間は、息継ぎするのをなるべく我慢しないといけません。 
ゲンゴロウは鞘翅の下に空気の層を溜め込みますから、大きな酸素ボンベを持っている大型の個体の方が長時間潜水できて有利なのでしょうか?
しかし、大型の個体が水中を激しく泳ぎ回ると、酸素の消費量も多そうです。


定点観察に通う池でクロゲンゴロウに煮干しを給餌したら、今回はドラマチックな展開となり、面白い動画が撮れました! 
水生昆虫のクロゲンゴロウはとても優秀なスカベンジャー(死骸の掃除屋)であることがよく分かりました。 
こうして水中の死骸をクロゲンゴロウが寄って集ってきれいに食べ尽くし、池の水質はきれいに保たれます。 

今回、餌として用意した煮干しは無塩タイプです。
予め頭部を取り除き、背骨に沿って半分に割ってから投入しました。 
煮干しを丸ごと池に投入すると、水中のクロゲンゴロウが餌に気づくまで長引くようです。
食べ残しが出ると水質を汚染するので、各池に1匹ずつしか煮干しを給餌していません。 

水中を泳ぐクロゲンゴロウは、角度によって鞘翅が緑色を帯びて見えることがありました。 
3〜4匹のクロゲンゴロウが煮干しに群がって奪い合いを繰り広げると、なかなか迫力があります。 
水底の泥を激しくかき回すので、水がどんどん濁って観察しにくくなります。


つづく→

2026/09/02

池の岸辺で息継ぎ体勢のまま煮干しを食べるクロゲンゴロウ

 

2026年4月下旬・午後14:15頃・晴れ 

山麓の池Lでクロゲンゴロウ(Cybister brevis)を定点観察しています。 
越冬明けのクロゲンゴロウ成虫の食事シーンを、この日初めて観察できました。 
早春の時期は息継ぎのために浮上と潜水を繰り返すだけで、餌を与えても無反応でしたが、ようやく食欲が回復したようです。 
水中を泳ぎ回る速度も見違えるように速くなりました。 
山から沢の雪解け水が流入する池なので、水温がようやく上がったのかもしれません。 

持参した煮干しの頭を取り除いてから縦に裂いて池に投入しても、水中のクロゲンゴロウはなかなか気づきませんでした。 
ようやく煮干しの匂いを嗅ぎつけた1匹のクロゲンゴロウ個体が、浅瀬の水面で息継ぎ体勢のまま(腹端だけ水面の上に出したまま)煮干しに食いついていました。 

ちなみに、クロゲンゴロウの成虫が同じ池で暮らすオタマジャクシの群れ(ヤマアカガエル(Rana ornativentris)の幼生)を襲って捕食することはありませんでした。



2026/08/30

池の水面に浮かぶ煮干しに群がるアメンボの謎

 

2026年4月下旬・午後14:30頃・晴れ 

山麓にある池Hで水生生物を定点観察しています。 
餌として持参した煮干しを池に投入してみました。 
煮干しの頭部は予め取り除き、縦半分に裂いてあります。 
水中に煮干しの匂い(出汁)が少しでも拡散しやすくするためです。 

しばらくすると、水面に浮いた煮干しに3匹のアメンボ(種名不詳)が乗っていました。 
アメンボは死んで乾燥した小魚から吸汁したり体外消化したりできないはずですから、ただ水面に浮いた煮干しに乗って休んでいるだけでしょう。 
あるいはもしかすると、乾燥煮干しから水中に溶け出したアミノ酸やミネラル成分をアメンボは口吻で吸汁しているのかもしれません。 
そのまま筏(いかだ)のように、水面を漂っています。 

アメンボは、隣の個体と脚で蹴り合って牽制しているようにも見えましたが、どうですかね?
途中から4匹目の個体が水面を遊泳してきて、煮干しに辿り着きました。 
死んでいる煮干しは暴れて水面に波紋を作りませんから、アメンボが誘引されるはずがありません。 
仲間が集まっているので、興味を持ったのかもしれません。 
いつの間にか水面の煮干しに誘引されたアメンボは1匹増えて、計5匹になっていました。 
それでもアメンボは求愛や交尾を始めなかったので、お見合い場所(レック)でもなさそうです。

やがて春風が吹いて煮干しが傾き、一気に水中へ沈みました。 
池に投入した乾燥煮干しが水を吸って、比重が大きくなったのでしょう。 
煮干しに群がっていたアメンボは、慌てて離脱・解散しました。 




煮干しが池の底に沈むと、たちまちヤマアカガエル(Rana ornativentris)の幼生が群がって食べ始めました。 
煮干しの姿が見えなくなるぐらい多数の黒いオタマジャクシが殺到しています。 
この池でオタマジャクシは強力なスカベンジャー(掃除屋)として死骸を始末してくれます。 

実は、縦に裂いた煮干しの残り半分は先に沈んでいて、オタマジャクシがすでに群がっていました。

池の水面と水中で別々のドラマが繰り広げられている上に、水面には陸地の世界が反射しています。 
MCエッシャーの有名なリトグリフ(版画)『三つの世界』を連想しました。 


つづく→

2026/06/12

早春の池で煮干しをかじるトビケラの幼虫を一時捕獲(エグリトビケラ科?)

 



2026年4月上旬・午後12:15頃・晴れ 

山麓にあるヤマアカガエル(Rana ornativentris)の繁殖池を毎年早春に定点観察しています。 
この日は卵塊から孵化した幼生(オタマジャクシ)の群れが岸辺付近の浅い水中に蠢いていました。 
その様子を動画に撮り始めたら、後に登場するトビケラ幼虫が一緒にちらっと写っていました。(冒頭の赤丸○) 
しかしカモフラージュの効果抜群の蓑を身にまとっているため、このときの私はまだ気づいていません。 
オタマジャクシが動き回るので、水底のゴミが揺れているだけのように見えます。 

試しに餌として、煮干し(無塩タイプ)をヤマアカガエル幼生の群れの近くに投入してみました。(@0:36〜) 
水中に煮干しの匂い物質(ダシ)が拡散するまで、しばらく時間がかかります。 
予め煮干しの頭部を取り除き、背骨に沿って半分に裂いておくと(2枚おろしの状態)、煮干しの匂いが早く水中に拡散することが後に分かりました。
やがて、オタマジャクシが煮干しに群がり、ちびちびと食べ始めました。 
このとき煮干しの端に1匹のトビケラ幼虫が食いついていることに、動画を見て初めて気づきました。(赤い矢印⇩@1:09〜) 





しばらく経つと、蓑をかぶった(筒巣を背負った)トビケラの幼虫が新たにもう1匹合流し、同じ煮干しの別の部位を食べています。(赤い矢印⇦@1:46〜) 

三脚を使って動画を長撮りしていると、煮干しがオタマジャクシの集団につつかれて水中で移動してしまったので、私が煮干しを鉛筆でつついて画角の中央に戻してやりました。 
煮干しを動かしても、謎の異物はしっかり付着して離れません。 
ただの水底のゴミではあり得ません。 
現場の私もこれでようやくトビケラの幼虫だと確信できました。 
筒巣に入って身を守りつつ、その端の開口部から顔だけ外に出して、煮干しを食べているようです。 

1匹の筒巣の腹端に白っぽい粘液のような物質が付着していたのは、トビケラ幼虫が排泄した糞なのでしょうか?(右の個体@2:02〜)
巣材を筒巣に固定するために分泌した接着剤なのかと初め勘違いしたのですが、そのための絹糸は腹端ではなく口から吐くとPerplexity AIに教えてもらいました。
周囲のオタマジャクシは煮干しに夢中で、トビケラ幼虫の糞?を食べることはありませんでした。
謎の白い水溶性分泌物をちゃんと分析した訳ではないので、ヤマアカガエル卵塊のゼラチン質が分解された断片がたまたまトビケラ幼虫の筒巣に付着していただけかもしれません。

謎のトビケラ幼虫2匹をじっくり観察するために、煮干しと一緒に手掴みで池の外へ取り出してみました。(@3:40〜) 
今回は餌を池に投入しただけですが(給餌実験)、釣り糸を付ければ、煮干しでトビケラ幼虫が釣れることになります。
巣筒は円筒状で、採寸してみると長さは約25mmでした。 
トビケラ幼虫が持ち運んでいる筒巣は、水中の落ち葉や枯れた茎など植物質の欠片を丹念に寄せ集めて作られていました。 
枯草の細長い茎や落枝を巣材として使う際には、長さを切り揃えた上で、幼虫の体軸に対して直角の向きに並べてあります。 








1匹のトビケラ幼虫は採集時に煮干しを放してしまいましたが、近くに置いてあります。 
すると筒巣の端から上半身を乗り出して、煮干しを目指して這い始めました。 
おかげで、水中では見えなかったトビケラ幼虫の頭部や胸部(地味な焦茶色)、脚(薄い茶色)などを観察することが出来ました。 
もう片方のトビケラ幼虫は、煮干しにしっかり食いついたままです。 

蓑の巣材が濡れている限り、陸上でもトビケラ幼虫はエラ呼吸が可能です。 
一方、変態前のヤマアカガエル幼生は陸上で肺呼吸できないので、ピチピチと暴れています。 

トビケラ幼虫が2匹とも煮干しに食いついたので、小魚(カタクチイワシ?)の死骸を口器で齧る様子をじっくり接写することができました。 
途中で左の個体が筒巣ごとゴロンと転がり、2匹のトビケラ幼虫が横に並んでくれました。 
おそらく同種のトビケラだと思いますが、巣筒の長さはほぼ同じでした。 
少し体格差があるのは、栄養状態(それまでの摂食量)の違いでしょう。 

持ち帰って家の水槽で飼育し成虫が羽化すれば、私にもトビケラの種類が同定できるかもしれません。 
しかし、持ち帰る容器を何も持ってきませんでしたし、水槽の水温を低く保ち流水にするなどの飼育ノウハウが難しそうなので、水生生物に疎い私は諦めてしまいました。 
元の池に戻してやり、微速度撮影を続けました。 




【考察】 
私が煮干しを給餌する前に、自然状態のトビケラ幼虫は池の底で何を食べていたのでしょうか?

筒巣に入ったままの状態のトビケラ幼虫を同定できるでしょうか?
筒巣の形や巣材、生息環境などで種類をある程度まで絞り込めるのだそうです。
幼虫を蓑から取り出して裸にした状態で実体顕微鏡で精査すれば、検索表も用意されていました。

【ネット検索で見つけた参考文献】
・河川生物の絵解き検索@環境省2017年(PDF資料)
・京都府の水生昆虫(トビケラ)PDF資料

環境省の検索表2017を参照すると、エグリトビケラ科(Limnephilidae)が素人目には似ています。
大顎には明瞭な歯がある。
筒巣の材料や形は様々、中〜大型種が多い。
後胸の中央前方のキチン板は常にある。
などと記載されていました。

30年前の古い資料ですが、谷幸三『水生昆虫の観察: 安全できれいな水をめざして 』(1995年)という本にはトビケラ目の科の幼虫の検索表が細密画と共に載っていました。
素人には使いこなせない検索表は飛ばして、代表種が作る筒巣の細密画だけを眺めると、確かにエグリトビケラ科エグリトビケラ(Nemotaulius admorsus)幼虫の筒巣が一番似ているものの、微妙に違います。

一方、ChatGPTに写真鑑定してもらうと(途中経過は割愛)、おそらくエグリトビケラ科(Lepidostomatidae)であり、候補としてエグリトビケラ属(Lepidostoma)の一種ではないかとの見解でした。
改めてエグリトビケラ科をネット検索すると、「An Artless Riverside ​川虫館」というサイトに幼虫と筒巣の見事な標本写真が掲載されていました。
エグリトビケラ科 Limnephilidaeキリバネトビケラ属Limnephilusの一種(トウヨウウスバキトビケラまたはその近縁種)の筒巣や生息環境などがそっくりでした。

来季はぜひトビケラ幼虫を採集して、飼育に挑戦してみたいものです。
私は「延長された表現型」として、虫の巣が大好物です。

【アフィリエイト】

ピンセットで蓑を脱がして裸の幼虫をじっくり観察してから、筒巣を作り直す過程を飼育下で微速度撮影してみたら、面白そうです。

関連記事(20年前の撮影)▶ 色紙の上で動き回る蓑虫

2026/06/06

早春の池で煮干しに群がって食べるトビケラの幼虫とヤマアカガエルの幼生【10倍速映像】

 

2026年4月上旬・午前11:55頃 〜 午後12:50頃・晴れ・気温19℃、水温16℃

山麓にあるヤマアカガエル(Rana ornativentris)の繁殖池で定点観察しています。 
池の浅瀬(浅水部)に煮干しを投入してみました。 
食品スーパーのダシ(乾物)売り場で、無塩タイプの煮干しを買ってきて、給餌実験に使いました。
餌の匂いが水中に拡散しやすいように、煮干しの頭部は取り除いてあります。 
初めは水面に浮かんでいた煮干しが、やがて水中に沈みました。
池畔に三脚を立てて、10倍速で微速度撮影(タイムラプス)してみました。 
他の被写体(水生動物)の観察も色々とやりながら、断続的に微速度撮影しました。 

すると早速、ヤマアカガエルの幼生(オタマジャクシ)が煮干しに続々と群がり始めました。 
煮干し(小魚の死骸)に食いつくと、ちびちびと齧っているようです。 

保護色のため初めは全く気づかなかったのですが、蓑虫(ミノムシ)のような水生生物も煮干しの匂いに誘引されていました。 
蓑を引きずりながら池の底を這って煮干しに近づき、オタマジャクシと並んで煮干しを食べ始めました。 

微速度撮影の合間に一旦オタマジャクシの群れを追い払い、煮干しの位置がカメラの画角に収まるよう調節しました。 

このとき、何か異物が2つ煮干しに付着していることに気づきました。
鉛筆を使って煮干しを水中で動かしても、しっかり食いついていて離れません。
2匹の蓑をかぶったトビケラ類の幼虫(種名不詳)が、煮干しに食いついたのです。 
トビケラ幼虫の隠れ家を筒巣(とうそう)と呼ぶそうです。
ヤマアカガエルの幼生(オタマジャクシ)が乱暴にぶつかっても、トビケラ幼虫は餌の煮干しにしっかりしがみついています。 
死肉食性のトビケラ幼虫がいるなんて全く知らなかった私は、意外な発見にとても興奮しました。 
筒巣の上端部から外に乗り出した頭部や脚の動きがときどき見えます。

後半は、1匹のトビケラ幼虫を煮干しから少し引き離してみました。(@1:17〜) 
左のトビケラ幼虫Lは、近くの煮干しにすぐ食いつきました。 
一方、右の個体Rは餌に辿り着くまで苦労しています。 
池の底(岸辺の浅水部)で方向転換したくても、水底のちょっとした障害物に筒巣(蓑)が引っかかってしまい、自由に動けないのです。 
スイッチバックのように何度も方向転換して、ようやく(10分以上もかけて)煮干しに到達できました。 
トビケラ幼虫は池の底をランダムウォークしてたまたま煮干しという餌に辿り着いたのではなく、明らかに煮干しの匂いに誘引されて定位していることが、これで明らかになりました。 

トビケラの種類や生態について私は全く疎いのですが、AIの画像認識でカクツツトビケラ科(Lepidostomatidae)Limnephilus属(エグリトビケラ属)の一種だろうと教えてもらいました。 
その後の再検討で、エグリトビケラ科の一種としておきます。

煮干しを給餌実験した直後にその地点の温度を測ると、気温19℃、水温16℃でした。
沢から山の雪解け水が流れ込んでいるのに、意外と水温が高かったです。
岸辺の浅い水深だったので、日光で水温が上がりやすいようです。

余談ですが、煮干しの左のデトリタス(泥)の下からヤゴ(トンボの幼虫)が這い出て来ました。 (赤矢印@1:58〜)
白っぽい体色で、寸詰まりの体型です。 
不勉強な私にはヤゴの種類がさっぱり分かりません。 
もし映像から見分けられる方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。 
謎のヤゴは煮干しには興味がなく、少し右に移動してからデトリタスに再び潜り込んで隠れ、しばらくすると左に立ち去りました。 
煮干しに群がる生き物たちの喧騒を嫌ったのですかね? 
ヤゴは生き餌しか捕食しないので、煮干しという死肉に興味を示さないのも当然です。 

他には、アメンボがときどき水面を画面を滑るように横切りました。 
アメンボも水中の煮干しには興味がありません。 
そもそもアメンボは生きた餌物しか吸汁しませんし、水中に沈んだ餌を認識できないでしょう。 

実は、この池には越冬明けのクロゲンゴロウ(Cybister brevis)成虫も生息しています。 
煮干しを給餌したらゲンゴロウ類が食べると本で読んだので今回試してみたら、なぜかクロゲンゴロウ成虫は全く餌に誘引されませんでした。 
越冬後しばらくは食欲が戻らないようです。 
本来の目的ではありませんでしたが、フィールドで給餌実験をやってみると何かしら予想外の面白い発見があるのが、自然観察の醍醐味です。 
池の水質を汚さないように、食べ残しが出ない程度の少しだけ給餌しましょう。
後日、クロゲンゴロウが煮干しを食べる様子を同じ池で観察できました。(映像公開予定) 




【考察】
トビケラ幼虫の生態について私は全く疎いので、ChatGPTを相手にブレインストーミングしてみました。

Q1: フィールド(池の底)で活動するトビケラ幼虫を微速度撮影できた。蓑の巣材が障害物に引っかかって、蓑を引きずりながら移動するのが大変そうでした。ちょっとした障害物のせいで、餌の煮干しに定位するのも苦労していました。

A1: 結論から言うと、見えている挙動は トビケラ幼虫にとって本質的なトレードオフそのものです。

■「動きにくさ」は異常ではなく仕様

トビケラ の幼虫にとって巣筒は

  • 防御装備(捕食回避)

  • 体の支持構造

  • 呼吸環境の維持

という利点がありますが、その代償として

→
機動力が著しく制限される


■引っかかる理由(力学的に)

観察された現象はかなり理にかなっています。

①表面の粗さ

  • 砂粒・小枝などの突起
    → 摩擦係数が高い

②形状の問題

  • 円筒でも完全な滑らかではない

  • 端部(前縁・後縁)が引っかかりやすい

③重さ

  • ケースが重いほど慣性が増す


■自然環境ではどうか

重要なのはここで、

あなたが見た「苦労している状態」は

→
自然でも普通に起きている可能性が高い

です。

ただしフィールドでは

  • 微妙な水流がある

  • 底質が均一でないが“流動性”がある

  • 有機物マットが柔らかい

→
わずかに動きやすくなる条件がある


■餌への定位が難しい理由

煮干しに向かうのに苦労していた点も重要です。

トビケラ幼虫は

  • 視覚よりも化学感覚(匂い)+接触
    で餌を探すため

起きていること:

  • 方向はなんとなく分かる

  • しかし直進できない(ケースが引っかかる)

  • 微調整が効かない

→
“分かっているのに行けない”状態


■行動戦略としての割り切り

トビケラはそもそも

  • 長距離を積極的に移動する動物ではない

  • 「その場で食べられるものを食べる」戦略

です。

つまり

  • 餌に向かって一直線に行く能力は低い

  • 環境のほうが流れてくる/接触する前提


■面白い観察ポイント(今後)

今回の映像からさらに読み取れる可能性があります:

・障害物に当たったときの挙動

  • 後退するか?

  • 回転するか?

  • こじ開けるか?

→ 種によって癖が出る


・ケースの向きと動き

  • 頭部だけ動かして方向探査

  • ケース全体を回転させる頻度


・「諦め」のタイミング

  • 一定時間で探索をやめるか

  • 同じ方向に固執するか


■あなたの観察の価値

この種の

  • 「不器用さ」

  • 「環境に対する制約」

は、実は野外では見えにくい重要な側面です。

特に

  • 微速度撮影での連続挙動

  • 障害物との相互作用

は

→
行動の“コスト”を可視化している

点でかなり貴重です。


■まとめ

  • ケースは防御と引き換えに機動力を犠牲にしている

  • 引っかかりは構造的に不可避

  • 餌定位の不器用さも本来の性質

  • 「分かっているのに行けない」は正常な挙動


もし映像をさらに解析するなら、
**「1cm進むのに何秒かかるか」「方向転換の頻度」**などを定量化すると、かなり面白いデータになります。


Q2: 水底で暮らすトビケラ幼虫は、水面や水中に餌があっても利用できませんよね? つまり、トビケラ幼虫は自由に泳ぎ回れませんよね? 初めは水面に浮いていた煮干しが水底に沈んだら、トビケラ幼虫が2匹、食べに来ました。

A2: 結論としては、

多くのトビケラ幼虫は「自由に泳ぎ回って餌を取りに行くタイプではない」が、完全に利用できないわけでもなく、条件次第で水中の餌にも到達できます。


■基本:移動様式の制約

トビケラ のうち、あなたが観察しているような

  • ケース(巣筒)を背負うタイプ

は

  • 基本は歩行(底面移動)

  • 体を伸縮させて這う

→
遊泳能力はほぼない(あっても非常に限定的)


■では水中の餌はどう利用するか

①「沈んできたもの」を利用する

今回の観察がまさにこれです。

  • 水面 → 沈降 → 水底に到達

  • そこで初めて接触可能になる

→
“待ち”の戦略


②接触ベースの採餌

  • 匂いで方向はある程度わかる

  • しかし最終的には接触が必要

→
水底にないものは基本的に利用できない


③短距離の位置調整は可能

完全に動けないわけではなく

  • 数cm〜数十cm程度は移動

  • 障害物がなければある程度は到達

ただし

→
「目標に向かって一直線に泳ぐ」ことはできない


■例外:泳げるタイプもいる

トビケラ全体で見ると

  • ケースを持たない種(自由生活型)

  • 軽いケースで浮きやすい種

では

  • 体をくねらせて遊泳する種もいる

ただし一般的には

→
主流ではない


■なぜこの戦略で成立するのか

水底環境では

  • 落ち葉・デトリタスが常に供給される

  • 有機物が沈降してくる

  • 微生物が付着して栄養価が上がる

→
「動かなくても餌が来る」環境


■あなたの観察の意味

煮干しが沈んだら2匹が食べに来た

これは

  • 匂いを感知して定位した

  • ただし水底に来るまで待つしかなかった

という典型例です。

しかも

  • 複数個体が集まる

→
化学シグナルへの反応がそれなりに強い


■重要なポイント

あなたの疑問を整理すると:

水面や水中の餌は利用できないのか?

→
水底に来ない限り、ほぼ利用できない(特にケース持ち種)


■まとめ

  • ケースを持つトビケラ幼虫は基本的に遊泳しない

  • 餌は「沈んでくるもの」を利用

  • 匂いで定位はできるが移動能力に制約あり

  • 水底に到達すれば複数個体が集まることもある


この観察をさらに発展させるなら、
餌の沈降速度や配置を変えて「到達率」や「到達時間」を比較すると、行動の制約がかなりはっきり見えてくると思います。


Q3: その池は、山麓を流れる沢が一時的に幅広くなって貯まっていました。沢の水が常にちょろちょろと流入し、反対側からちょろちょろと流れ出る構造でした。ワンドというか、流れが淀んだ浅い水底にトビケラ幼虫はいました。ガマなどの抽水植物が夏には繁茂しています。このようなトビケラ幼虫の生息環境は、池とは呼ばず、渓流と呼ぶべきか?

A3: 結論として、その環境は

**「渓流の一部に形成された止水的(緩流)マイクロハビタット」**と考えるのがいちばん実態に合っています。
したがって名称としては

  • 大枠:渓流(沢)

  • 局所:ワンド状の緩流域/淀み

という二層で捉えるのが適切です。


■なぜ「池」ではないのか

いわゆる池(静水域)は

  • 外部からの流入・流出が弱い/ない

  • 水の滞留時間が長い

  • 水塊として独立性が高い

一方、あなたの場所は

  • 上流から連続的に水が供給される

  • 下流へ抜けていく

  • 系としては流路に属している

→
独立した水域ではない


■なぜ「渓流」だけでは不十分か

ただし典型的な渓流(riffleなど)は

  • 流速が速い

  • 底質が粗い(礫・砂利)

しかし観察環境は

  • 流れが弱い

  • 落ち葉が堆積

  • 抽水植物が繁茂

→
明らかに「止水寄り」の条件


■適切な言い方(現場感のある表現)

実際の生態学的な言い方としては:

  • 渓流のワンド(側湾)

  • 流路内のバックウォーター

  • 緩流域(slow-flowing margin)

  • 淀み(pool margin / slack water)

あたりがしっくり来ます。


■トビケラ幼虫との対応

トビケラ の中でも

  • 強流を好む種

  • 緩流・止水寄りを好む種

が分かれます。

あなたの場所は

  • デトリタス(落ち葉)が豊富

  • 流れが弱い

  • 隠れ場所が多い

→
緩流・堆積物利用型のトビケラに適した環境


■むしろ重要なのは「連続性」

この環境の本質は

  • 完全な止水ではない

  • しかし流速が局所的に低下している

→
「流れの中の止まりどころ」

です。

このタイプの環境は

  • 有機物が集まりやすい

  • 小動物の密度が高くなる

ため、生態的にかなり重要です。


■まとめ

  • 全体としては「渓流系」に属する

  • 局所的には「ワンド状の緩流域」

  • 池ではなく「流れの一部」

  • トビケラ幼虫にとっては好適なデトリタス環境




Q4: トビケラ幼虫は巣筒の中でどのように呼吸しているのか? 完全に密閉した袋を作るのではなく、ある程度は隙間を作って水流がないと、鰓から(?)酸素を取り込めないはずです。

A4: 結論から言うと、

トビケラ幼虫の巣筒は「完全密閉」ではなく、意図的に水が通る構造になっており、幼虫自身が水流を作って呼吸しています。


基本:呼吸の仕組み

トビケラ の幼虫は

  • 体側や腹部にある鰓(気管鰓)

  • 体表からのガス交換

で酸素を取り込みます。

ただし重要なのは
水が流れていないと酸素供給が不足するという点です。


巣筒はなぜ密閉されないのか

巣筒は

  • 砂粒

  • 小石

  • 枯葉片

などを糸で固めて作られますが、

  • 材料同士の間に微細な隙間がある

  • 完全に水を遮断しない

→
常に水が出入りできる構造


水流の作り方(ここが核心)

多くの種では、幼虫は

■腹部の運動でポンプのように水を流す

  • 体を周期的に動かす

  • 巣の中に水を引き込み、後方へ押し出す

→
巣筒内部に一方向の流れを作る


巣の形にも意味がある

種類によっては

  • 前方が広く、後方がやや狭い

  • 円筒形で直線的

といった形をしていて、

→
水が通りやすい「パイプ構造」


隙間+ポンプの組み合わせ

呼吸は次の2つで成立します:

  1. 巣材の隙間 → 水が出入りできる

  2. 幼虫の運動 → 水を強制的に流す

この結果:

  • 新鮮な水が常に供給される

  • 鰓で効率よく酸素交換できる


流れが止まるとどうなるか

もし

  • 巣が泥で詰まる

  • 水流が極端に弱い

と

→
酸欠状態になりやすい

実際に

  • 流れのある環境を好む種が多い

  • 停滞水では活動が鈍ることがある


落ち葉下での生活との関係

あなたの想定しているように、

  • 落ち葉の下

  • 堆積物の中

にいる場合でも

  • 完全な無流ではなく「微弱な間隙流」がある

  • 自分で水を動かして補う

→
“止水に見えて実はわずかに流れている環境”+自力ポンプ

で成立しています。


まとめ

  • 巣筒は密閉ではなく「水を通す構造」

  • 幼虫は腹部運動で水流を作る

  • 鰓で酸素を取り込むには流れが必須

  • 巣の形自体も流れを助ける設計


この視点で微速度撮影を考えると、
「体の微妙な伸縮運動(ポンピング)」に注目すると、呼吸の痕跡が見える可能性があります。

外からは動いていないように見えても、
実際にはかなり規則的に水を動かしています。


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