前回の記事:▶ 溜池の泥濘にはまって死んだアオサギ(野鳥)
2023年10月上旬・午後14:30頃・くもり
溜池にダイサギ(Ardea alba)の群れが集まっていました。
この夏は日照り続きで、この溜池は干上がりかけていたのですが、秋に雨が降るようになって水位がやや回復しました。
池の中に散開したダイサギの多くは、ただ佇んでいるだけでした。
優雅に歩き回って獲物を探し回り、立ち止まって羽繕いする個体もいました。
対岸の泥濘に横たわっているアオサギ(Ardea cinerea jouyi)の死骸に気づいているはずなのに、ダイサギは興味がない(あるいは恐れている?)ようで、あまり近寄ろうとしませんでした。 (※追記参照)
鳥が仲間の死を悼むとは思えませんが、もしも同種のダイサギの死骸だとしたら、何かしらの感情的な行動を示したでしょうか?
ダイサギが共食いしたり屍肉を直接食べたりするとは考えにくいです。
アオサギの死骸にはハエ♀がすぐに集まって卵を産み付けているはずですから、屍肉を食べて育つウジ虫などをダイサギがついばみに来るのではないか?と期待しました。
池の水かさがもう少し増して死骸が水に浸れば、死骸の周囲に小魚が集まり、それを食べにダイサギが集まるかもしれません。
しかし、そのような二次的な捕食行動も見られませんでした。
溜池に忍び寄る私の存在に薄々気づいてダイサギたちは警戒しているのかもしれません。
動画の前半で手ブレが酷かったのは理由があります。
警戒心の強いダイサギに見つからないように、池畔に繁茂するクズの藪の隙間に腕を伸ばしてカメラを挿し込み、こっそり隠し撮りしたからです。
もっと良い撮影アングルを求めて私がそっと移動した途端に気づかれてしまい、ダイサギの群れは一斉に飛んで逃げてしまいました。
6羽と3羽の群れに別れて飛び去ったダイサギは、隣接する刈田に降り立ち、今度は落ち穂拾いを始めました。(映像公開予定?)
その後もときどき定点観察に通ったのですが、溜池の泥濘に放置されたアオサギの死骸に(遠目では)変化はありませんでした。
死骸に近づくスカベンジャーの足跡も泥濘には残っていませんでした。
底なし沼のように深い泥濘に阻まれて、スカベンジャーも死骸に辿り着けないのでしょうか?
ところが、ある日突然、アオサギの死骸が忽然と無くなっていました。
大型のスカベンジャーが全く来ないのなら、アオサギの死骸が虫に食べられて完全に白骨化するまで待って採集したかったのですが、残念ながらそれも果たせませんでした。
無人カメラを設置して、何者がアオサギの死骸を食べたり持ち去ったりするのか、スカベンジャーの活動を撮影してみたかったです。
残念ながら、手持ちの機材は他のプロジェクトで全て出払っていて使えませんでした。
底なし沼の可能性が怖くて死骸に近づけず、この現場に監視カメラを設置するのがきわめて難しい、という理由もありました。
トレイルカメラに任せられないとなれば、昔ながらの撮影方法に回帰するしかありません。
池畔にブラインドを張って私自身が死骸をじっくり見守り、隠し撮りするべきでした。
※【追記】
アオサギの死因がたとえば鳥インフルエンザ・ウイルスの場合はダイサギにも感染するリスクがありますから、屍肉食性ではないダイサギがアオサギの死骸に近寄らないのは適応的な行動と言えるでしょう。
【追記2】
哺乳類(チンパンジー)についてですが、ごく僅かな死臭に対しても無意識に忌避することが実験的に確かめられたそうです。
解説記事「「ここ、嫌な感じがする」生物は死がある場所を無意識に避ける事ができる」by ナゾロジー