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2024/10/10

ダイサギの群れは池で死んだアオサギを弔うか?(野鳥)

 



2023年10月上旬・午後14:30頃・くもり 

溜池にダイサギArdea alba)の群れが集まっていました。 
この夏は日照り続きで、この溜池は干上がりかけていたのですが、秋に雨が降るようになって水位がやや回復しました。 
池の中に散開したダイサギの多くは、ただ佇んでいるだけでした。 
優雅に歩き回って獲物を探し回り、立ち止まって羽繕いする個体もいました。 

対岸の泥濘に横たわっているアオサギArdea cinerea jouyi)の死骸に気づいているはずなのに、ダイサギは興味がない(あるいは恐れている?)ようで、あまり近寄ろうとしませんでした。 (※追記参照)
鳥が仲間の死を悼むとは思えませんが、もしも同種のダイサギの死骸だとしたら、何かしらの感情的な行動を示したでしょうか? 
ダイサギが共食いしたり屍肉を直接食べたりするとは考えにくいです。 
アオサギの死骸にはハエ♀がすぐに集まって卵を産み付けているはずですから、屍肉を食べて育つウジ虫などをダイサギがついばみに来るのではないか?と期待しました。 
池の水かさがもう少し増して死骸が水に浸れば、死骸の周囲に小魚が集まり、それを食べにダイサギが集まるかもしれません。
しかし、そのような二次的な捕食行動も見られませんでした。 
溜池に忍び寄る私の存在に薄々気づいてダイサギたちは警戒しているのかもしれません。 

動画の前半で手ブレが酷かったのは理由があります。 
警戒心の強いダイサギに見つからないように、池畔に繁茂するクズの藪の隙間に腕を伸ばしてカメラを挿し込み、こっそり隠し撮りしたからです。 
もっと良い撮影アングルを求めて私がそっと移動した途端に気づかれてしまい、ダイサギの群れは一斉に飛んで逃げてしまいました。 
6羽と3羽の群れに別れて飛び去ったダイサギは、隣接する刈田に降り立ち、今度は落ち穂拾いを始めました。(映像公開予定?) 

その後もときどき定点観察に通ったのですが、溜池の泥濘に放置されたアオサギの死骸に(遠目では)変化はありませんでした。
死骸に近づくスカベンジャーの足跡も泥濘には残っていませんでした。
底なし沼のように深い泥濘に阻まれて、スカベンジャーも死骸に辿り着けないのでしょうか?
ところが、ある日突然、アオサギの死骸が忽然と無くなっていました。 
大型のスカベンジャーが全く来ないのなら、アオサギの死骸が虫に食べられて完全に白骨化するまで待って採集したかったのですが、残念ながらそれも果たせませんでした。

無人カメラを設置して、何者がアオサギの死骸を食べたり持ち去ったりするのか、スカベンジャーの活動を撮影してみたかったです。
残念ながら、手持ちの機材は他のプロジェクトで全て出払っていて使えませんでした。 
底なし沼の可能性が怖くて死骸に近づけず、この現場に監視カメラを設置するのがきわめて難しい、という理由もありました。
トレイルカメラに任せられないとなれば、昔ながらの撮影方法に回帰するしかありません。
池畔にブラインドを張って私自身が死骸をじっくり見守り、隠し撮りするべきでした。


※【追記】
アオサギの死因がたとえば鳥インフルエンザ・ウイルスの場合はダイサギにも感染するリスクがありますから、屍肉食性ではないダイサギがアオサギの死骸に近寄らないのは適応的な行動と言えるでしょう。


【追記2】
哺乳類(チンパンジー)についてですが、ごく僅かな死臭に対しても無意識に忌避することが実験的に確かめられたそうです。




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2024/06/12

ヒヨドリの腐乱死体に群がるハエとヨツボシモンシデムシ(野鳥)

 

2023年9月中旬・午後13:40頃・晴れ 

里山で急斜面の細い沢を下っていると(沢登りの逆)、急に強い死臭がしました。 
辺りを探すと、沢の横でヒヨドリHypsipetes amaurotis)の死骸が仰向けで転がっていました。 
死後数日経っているようで、腐敗が進んでいます。
ヒヨドリの死因が不明です。 
沢の水を飲んだり水浴びしていたヒヨドリが捕食者に襲われたのだとしたら、どうして死骸が何日もまるごと残っているのでしょう?


私が近づくと死骸からハエの群れが飛び立ち、辺りを飛び回るハエの羽音がウヮーンと鳴り響きます。 

死肉食性の昆虫を観察するために、拾った小枝でヒヨドリの死骸を裏返してみると、鮮やかなオレンジ色が目に付きました。 
少なくとも6匹のヨツボシモンシデムシNicrophorus quadripunctatus)が腐敗の進む死骸の下面に潜り込んでいて、腐肉を食べていました。 
腐肉に執着しているようで、ヨツボシモンシデムシを小枝でつついても逃げようとしません。
仰向けにひっくり返り、起き上がろうともがいている個体もいます。 
「頭隠して尻隠さず」の状態で腹端を振っているのは、威嚇行動かもしれません。 
死骸の横の小石の下にもヨツボシモンシデムシが隠れていました。

後になって気づいたのですが、ヒヨドリが死んだ地点は必ずしも沢の横とは限りません。
ヨツボシモンシデムシは死骸を見つけるとその下に潜り込み、力を合わせて運んでから地中に埋めるからです。


現場では気づかなかったのですが、フラッシュを焚いて撮った写真を見直すと、ヨツボシモンシデムシ以外の小さな甲虫も数匹写っていました。 
謎の甲虫の名前が分かる方がいらっしゃいましたら、教えて下さい。
しばらくすると、キンバエLucilia caesar)の仲間やニクバエの仲間が死骸に舞い戻ってきました。 

足元が不安定な崖で体勢が悪かったこと、死臭をなるべく吸い込まないように息を止めて撮影していたこと、飛び回るハエが私の顔に絶え間なくぶつかってくるのに閉口したことから、撮影が雑になってしまいました。 
状況説明の動画を撮る際に、カメラを焦って振り回してしまう悪癖が出ました。 
酔いそうな映像になってしまったので、仕方なくスローモーションに加工しました。 

ヒヨドリの死骸ごと採集してヨツボシモンシデムシを飼育すれば、有名な育児行動を観察できたかも知れません。 
今回はあまりの強烈な腐臭にたじろいでしまい、そこまでする根性がありませんでした。 
野鳥の腐乱死体を運んでいる途中で警察に職務質問されたりしたら、説明するのが厄介です。
それが無理でもヨツボシモンシデムシを採集して、鞘翅の裏面の色を確かめるべきでしたね。 



自然界でヒヨドリの死骸が生物分解される様子を微速度撮影しても面白そうです。 
残念ながら今回はトレイルカメラなどの機材を持ってきていませんでした。 

沢登りしていると清流に見えて、沢の水を直接飲みたくなります。
しかし、源流域で野生動物が沢に糞尿を排泄したり死骸が転がっているのを知ると、そんな気は失せてしまいます。
関連記事(1年前の撮影)▶ 


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・舘野鴻『しでむし』 

2024/05/03

ヒバカリの死骸に群がるハエとアリ

 

2023年7月下旬・午前10:35頃・晴れ 

山麓の舗装された農道で蛇の死骸を見つけました。 
真っ白な腹面を上に向けて死んでいます。 
車に轢き殺されてしまったようです。

動物の遺体に真っ先に集まる常連として、キンバエの仲間(種名不詳)とニクバエの仲間(種名不詳)が飛び回っていました。 
死骸の表面を舐めて吸汁し、その合間に身繕いしています。 
他にはクロオオアリCamponotus japonicus)のワーカー♀が来ていました。 
ヘビを採寸するために15cm定規を並べて置いたら、ハエ類は警戒して飛び去りました。 

腹面だけではヘビの種類が分からなかったので、死骸を裏返してみました。 
頭部と尾端の損傷が激しいです。 
おそらくジムグリ(Elaphe conspicillata)の幼蛇ではないかと思います。 
成長して白い腹面に黒い市松模様が現れる前に非業の死を遂げたようです。 

関連記事(7年前の撮影)▶ ジムグリの幼蛇を見つけた!


死骸の下にシデムシ類などが潜んでいるかと期待したのですが、何も来てませんでした。 
土ではなく固い舗装路では埋葬虫の活動が阻害されてしまうのでしょう。 
夏の炎天下でアスファルトが熱せられ、ロードキル死骸は乾燥が進んでいます。

撮影後は小枝を使ってヘビの死骸を舗装路から拾い上げ、道端の草むらに投げ込んでおきました。 
衛生当局や清掃業者が回収して焼却処分するよりも、自然界のスカベンジャー(掃除屋)の活動に任せる方がはるかにエコです。 
生物分解されて土に還るまでの様子を微速度撮影してみたかったのですけど、手持ちのトレイルカメラは全て他のプロジェクトで稼働中のため、諦めました。 
あまり世間に知られていませんが、『ファーブル昆虫記』にはヘビの死骸を放置してその変化を克明に観察した章もあります。


【追記】
YouTubeのコメント欄にて、RIFLAさんよりご指摘いただきましたので、ジムグリ幼蛇ではなくヒバカリHebius vibakari)の死骸と訂正しておきます。
腹板に市松模様がなく、体色からもヒバカリかと思われます。 


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2024/04/09

スズメの死骸(野鳥):ロードキル

2023年7月下旬・午後15:05頃・晴れ 

郊外の住宅地を抜ける車道でスズメPasser montanus)の死骸が路肩に転がっていました。 
損傷が激しく、赤い肉や内臓が露出しています。 
飛んでいるときに対向車に衝突し、その後で後続車に轢かれたのでしょうか? 
スズメのロードキルを見つけたのは初めてです。 
それとも、スズメを営巣地で狩ったカラスが獲物を持ち去る前に落としてしまったのですかね? 



死肉食性の昆虫はまだハエ1匹も死骸に来ていませんでした。 

残念ながら、骨格標本を作るには状態が悪すぎます。 
スズメの死骸を食べに来る掃除屋(カラスなど屍肉食性のスカベンジャー)を観察するために、どこか落ち着いた場所に亡骸を移動させてからトレイルカメラで監視するのも面白そうです。 
しかしこの日はあいにく、死骸を持ち帰るためのビニール袋や容器を何も持ってきてなかったので、泣く泣く諦めました。 
運用しているトレイルカメラの台数が足りないという事情もありました。 


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2024/04/06

ミミズの死骸に群がるキンバエ

2023年7月中旬・午前11:35頃・くもり 

里山の中腹をトラバースする林道でスギの落葉が堆積している一角にキンバエの仲間(種名不詳)が群がっていました。 
臭い匂いもしたので、てっきり少量の獣糞で汚れているのかと思ったのですが、撮った写真を見直すとミミズの死骸が写っていました。 
暑い真夏の山行でよほどバテていたのか、観察が疎かになっていたようです。
死んだミミズが腐って変色し、周囲のスギ枯葉と同系色(茶色)になっていたので、紛れて気づかなかったのでしょう。


2024/04/02

死んだカラスの羽根に群がるシデムシの幼虫

2023年7月上旬・午後12:20頃・晴れ 

平地のスギ防風林の林床にタヌキなどが歩く獣道が形成されています。 
定点観察のためにホンドタヌキの溜め糞場phから溜め糞場wbcへ獣道を辿って歩いていると、腐りかけたカラスの死骸が獣道の真ん中に転がっていました。 
骨も肉もほとんど残ってなくて、数枚の黒い羽根だけでした。 
頭部が無いとカラスの種類(ハシブトガラスかハシボソガラスか)を見分けることが出来ません。 
おそらく死肉食性の野生動物が死んだカラスをどこかで見つけ、死骸を運んでいく途中で落とした羽根なのでしょう。
カラスも死肉食の掃除屋ですけど、仲間の死骸を共食いすることはあるのでしょうか?
 
通い慣れた獣道にある日突然現れたので、ここで死んだカラスが生物分解された訳ではありません。
スギ林をねぐらとするカラスが死んで、樹上で腐った死骸の一部が地面に落ちたという可能性も考えられます。

腐りかけたカラスの羽根に、黒くて三葉虫のような体型をしたシデムシ類の幼虫が群がっていました。 (種名不詳)
落枝を使って羽根を裏返してみてもシデムシ成虫の姿がなかったので、私には幼虫の種類を見分けられません。
近くの溜め糞場でよく見かけるクロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)の幼虫ですかね?
他には微小なハエも来ていました。 

鬱蒼としたスギ林の中は日差しが遮られて薄暗いのに、かなり蒸し暑い日でした。 
写真の後で動画も撮ろうとしたのですけど、先を急ぐ用事があって焦っていた上にあまりの暑さで頭がボーッとしていた私は動画撮影が雑になってしまいました。
不用意に近づいたら、シデムシの幼虫は散り散りに素早く逃げてしまいました。


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・舘野鴻『しでむし

全景写真の中央の上下に獣道が走る。

2023/12/26

ゴマダラカミキリばらばら死体の謎

2022年8月中旬

里山の尾根道でゴマダラカミキリAnoplophora malasiaca)の死骸が転がっていました。
頭部、胸部、腹部とバラバラにされた部位が点々と散らばっています。
鞘翅を開げたまま死んでいるのも不思議です。
復元すればほぼ全身が残っているので、野鳥や野生動物が捕食した食べ残しにしては変です。
自然死した死骸がアリによって解体されて巣に運ばれる途中なのでしょうか?
アリの大群は居なかったものの、写真をよく見直すと、頭部の死骸に2匹の黒アリ(種名不詳)が写っていました。
(右触角の先と大顎の下)

2023/12/18

草地でハタネズミの死骸を見つけた!

 

2023年5月上旬・午後15:10頃・晴れ 

川沿いの農道(堤防路)で見慣れない野ネズミが仰向けに死んでいました。 
トレイルカメラの映像でよく見ているアカネズミやヒメネズミに比べて顔つきが丸っこい印象です。 
調べてみると、ハタネズミMicrotus montebelli)のようです。 


平地(特に農地の近く)で野ネズミを見つけた場合、ハタネズミも考慮に入れる必要があると学びました。 

素人目には外傷が認められず、死因が不明です。 
殺鼠剤でも撒かれたのでしょうか? 
死後間もないらしく、死臭もありません。 

腐肉食の掃除屋は1匹のニクバエ科(種名不詳)しか来ていませんでした。 
現場では気づかなかったのですが、撮れた写真を拡大すると、死んだハタネズミの耳に小さなアリ(種名不詳)が数匹群がっていました。 (※追記参照)
拾った棒切れで死骸を裏返してみても、死骸の下にシデムシ類は潜り込んでいませんでした。 

死骸を採寸するために15cm定規を並べて置くと、ニクバエがそれに止まって前脚を擦り合わせました。(身繕い) 
ハタネズミ死骸を裏返して腹面を向けると黄色くて長い門歯が目立ちます。 
耳介が小さくて目立ちません。

このとき私は強行軍の後で疲労困憊していたので、ハタネズミの死骸をせっかく見つけたのに、写真と動画で記録しただけです。 
今思えば貴重な死骸を解剖して胃内容物を調べたり、頭骨標本を作成したりしたかったのですが、とても余力がありませんでした。

ハタネズミの死骸をそのまま放置するにしても、トレイルカメラを横に設置しておけば、カラスやトビなどのスカベンジャー(あるいは近所のネコ?)が 死骸を食べに来る様子を録画できたかもしれません。


※【追記】
飯島正広、土屋公幸 『リス・ネズミハンドブック』でハタネズミを調べた際に、次の記述を読んで震え上がりました。
耳介に着いているダニの1種であるツツガムシによってリケッチア症が媒介されるので注意が必要だ。(P45より引用)
当地はツツガムシ病という死に至る風土病がかつて猖獗を極めた最上川流域の某地区に近く、私が子供の頃はツツガムシ病について大人から散々脅かされてきたものです。
野ネズミの死骸を素手で触れてはいけません。

2023/11/20

動物の死骸を独り占めする恐妻家のトビ(野鳥)

 

2023年4月下旬・午後14:55頃・くもり 

春の刈田で2羽のトビMilvus migrans)が仲良く(?)並んでいました。 
ズームインしてみると、右の個体(♀?)が何か哺乳類の死骸をついばんでいました。 
死後かなり日数が経っているようで、ずたぼろの死骸は損壊が激しく、何の動物か全く見分けられません。 
黒灰色の毛皮に血痕は付いていませんでした。 
なんとなく長毛品種のイエネコかと推測したものの、定かではありません。 
冬の間に行き倒れた動物が深い雪の下に埋もれ、春の雪解けで死骸が再び露出したのかな?
野生動物の轢死体(ロードキル)かもしれません。 

関連記事(7ヶ月前に現場近くで撮影)▶ 車に轢かれたニホンイタチの死骸に群がるハエ他

 

左の個体(♂?)は横で物欲しそうに見てるだけです。 
♀は獲物を♂とシェアするつもりはないようです。
2羽の間で力関係の序列が既にできているようで、餌を巡って直接的な争奪戦は起こりませんでした。 
この2羽は♀♂つがいなのでしょうか。 
トビは体格にやや性差があることが知られています(♀>♂)。 

やがて♀が死骸を独り占めするために咥えたまま飛び立ち、少し離れた休耕地に運びました。(@0:48〜) 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、トビ♀は飛翔中に、ぼろきれのように風でなびく細長い死骸を嘴から足の鉤爪へと器用に持ち直していました。 

♂から離れると、♀は落ち着いて死骸を啄み始めました。 
カラスと並んでトビは屍肉食性の掃除屋(スカベンジャー)として有名ですが、実際に食事シーンを観察するのは初めてです。 

そこへ背後から追いすがるように♂が飛来しました。 
♀の頭上を通り過ぎる際に鉤爪で襲いかかる素振りを見せたものの、ただの威嚇(ブラフ)で激しい喧嘩にはなりませんでした。 
不意打ちされても♀はさほど動揺せず、獲物を離そうとしません。 
♂は少し奥の休耕地に着陸したものの、遂に諦めて飛び去りました。 

興味深いのは次のシーンです。 
諦めて飛び去りかけた♂が、休耕地に一瞬だけ舞い降りました。(@2:57〜) 
トビ♂が空中で何か白い物を落としたので、てっきり腹立ち紛れに脱糞したのかと撮影しながら私は思いました。 
ところが1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、♂はタッチダウンの瞬間に地表から何か白いゴミを鉤爪で素早く拾っていました。 
獲物ではないと悟ると、すぐに空中投棄しました。 
餌にありつけなかった♂が欲求不満を解消するためにやった代償行動かもしれません。
代償行動     【ダイショウコウドウ】
substitute behavior
 ある目標を達成しようとする欲求が何らかの障害によって充足できない時に,その目標と機能的に類似した他の目標を達成することによって,初めの欲求の充足を図ろうとする行動をいう。代償の仕方は目標の変更と手段の変更とに大別できるが,もともと目標の満足をすべて含むわけではなく,部分的解決や満足となることが多い。社会的な価値の高い方向に代償が行われる場合は昇華とよばれる。適応機制の一つと考えられる。(有斐閣『心理学辞典』より引用)

♂が居なくなった後も、♀は獲物を横取りされまいと嘴に咥えたまま周囲を油断なく見張っています。 
警戒を解くと、腐肉を食べ始めました。 
残念ながら、ここでカメラのバッテリーが切れてしまいました。 
私が急いで交換している間に、トビ♀は更に遠くへ獲物を持ち去ってしまい、見失いました。 

できればトビ♀♂が動物の死骸を見つけるところから観察したかったです。 
早い者勝ちだったのでしょうか?
繁殖期が始まりますから、もしかすると♂が先に見つけたのに、パートナーの♀に獲物を譲ったのかもしれません。(求愛給餌
しかし、それだと♂がやった威嚇飛行や代償行動と辻褄が合いませんね…。
動画に登場する2羽のトビの性別を外見で見分けられる方がいらっしゃいましたら、教えて欲しいです。


【追記】
平凡社『日本動物大百科3鳥類I』でトビの性差について調べると、(p147より引用)
サイズ
全長:♂51〜66cm、♀57〜66cm。 
翼長:♂36〜51cm、♀45〜51cm。 
翼開長:♂129〜162cm、♀139〜160cm。 
体重:♂630〜1150g、♀750〜1240g。

特徴
♂は♀に比べ色が薄く体羽の縁が白っぽい。また、耳羽もはっきりしている。♀は縁が赤褐色。飛翔中、♂は下面が白っぽく見え、個体によっては縦縞模様に見える。♀は下面が暗赤褐色に見える。幼鳥は♂成鳥よりもクリーム色をおびるため、♂よりも明るく、縦縞模様もはっきりしている。飛翔中には、尾の先端の1本の太い横縞模様とクリーム色の縁が目立つ。


2023/10/30

ゴイサギ幼鳥の死骸を見つけた!(野鳥)

 

2023年4月中旬・午後15:50頃・くもり 

平地の休耕地(夏はソバ畑)の端に自生する落葉灌木(オニグルミ?)の下に鳥の死骸を見つけました。 
辺りに羽毛が散乱しているということは、捕食者に狩られた食べ残しなのかな? 
手に直接触れないように小枝を使って死骸を裏返してみるとミイラ化した頭部が現れ、ゴイサギNycticorax nycticorax)の幼鳥(俗称ホシゴイ)だと判明しました。 
体が不自然に曲がった状態で固まっています(死後硬直)。 
大きさの比較として、長さ20cmの熊よけスプレーを横に並べて置きました。 

春が来て残雪が溶けたのに、屍肉食性の昆虫は全く来ていませんでした。 
古い死骸だと思うのですが、死亡推定時刻どころか、いつ死んだのか不明です。 

この死骸について、私なりに推理してみました。
死体発見現場は溜池から数百m離れた地点でした。 
夜行性のゴイサギを、昼間にその池で見たことはありません。 
夜になると採食のために飛来するのでしょう。 
餌場の溜池から少し離れた防風林をねぐらとしていたゴイサギ幼鳥が冬の間に死んだようです。 
寒さや飢えで死んだのか、猛禽などの捕食者に狩られたのか、解剖しないと詳細は不明です。 
この辺りは様々な野生動物(テン、ハクビシン、タヌキ、キツネなど)が生息しているのに、死骸がミイラ化して干からびるまで放置されていたのは不思議です。 
おそらく根雪の下に長期間埋もれていたせいで、カラスやトビなどのスカベンジャーに見つからなかったのだろうと推測しています。 

せっかく見つけたゴイサギ幼鳥の死骸を回収して頭骨標本を作ろうか、そのまま放置してスカベンジャーが来る様子を監視カメラで撮影しようか、悩みました。 
しかし当時の私は複数のプロジェクトが同時進行中で忙しく、とても余力がありませんでした。 
限られた台数のトレイルカメラをやりくりするのは大変で、どうしてもプロジェクトの優先順位をシビアに決める必要があります。 

定点観察のため7日後に現場を再訪してみると、ゴイサギ幼鳥の死骸は無くなっていました。 
屍肉食性の野鳥(カラスやトビ)または野生動物が死骸を見つけて持ち去ったのだろうと推察しています。 


※ 私の悪い癖なのですが、現場の状況を動画で記録する際に寄りの絵でカメラをせっかちに振り回してしまい、動きが激し過ぎて酔いそうな映像になってしまいました。 
苦肉の策として、再生速度を70%に落としたスローモーションでお届けします。 
音声がやや間延びしているのは、そのせいです。

2023/08/19

交通事故で死んだホンドテンの割れた頭骨をミールワームに除肉クリーニングしてもらう【50倍速映像】

 



2023年1月上旬・午後14:00頃 

ロードキル死骸のホンドテンMartes melampus melampus)を解剖したついでに頭骨標本も作りたかったのですが、走行車と正面から激しく衝突して頭蓋骨の頭頂部が骨折していたので使い物になりません。 
それでも冬の暇潰し(ブログのネタ)として、やれるところまでやってみました。 
頭骨の表面に少しへばりついている脳や筋肉組織などをきれいに取り除く必要があります。 
今回は残った組織を入れ歯洗浄剤(タンパク質分解酵素)で溶かしたりバクテリアに分解してもらうのではなく、ミールワームに食べさせることにしました。 




まずは皮を剥いで首から切り落としたホンドテンの頭部を専用の小鍋に入れて水から軽く茹でます(水煮)。 
煮汁を捨てて粗熱を冷まします。

左側面

右側面

上面。頭頂部の骨折が激しく、煮ただけで左右に割れて脳が飛び出した。

下面


ピンセットや爪楊枝などを使って頭骨からチマチマと除肉しました。 
それでもきれいに取り切れません。 

左側面

右側面

上面

下面

除肉片



ホームセンターのペットショップ・コーナーからチャイロコメノゴミムシダマシ(ミールワーム;Tenebrio molitor)幼虫を2パック買ってきました。 
容器には「10gまたは約150匹」と記載されていましたが、2パック分のミールワームを実際に数えると、計255匹でした。 
ホンドテン頭骨が収まる大きな容器にミールワームを餌のフスマごと全て移し替えました。 
下半分をカットした2Lペットボトルを飼育容器として再利用します。 
それまで水に浸しておいたホンドテン頭骨を容器に投入しました。 
乾燥しないように、飼料のフスマを被せて頭骨を埋めるべきだったかもしれません。 
(しかし、頭骨の状態が逐一見えなければ微速度撮影できません。)

5日後に微速度撮影してみました。 
50倍速の早回し映像をご覧ください。 
ミールワームの大群が蠕動徘徊するせいで、飼料や頭骨が波打つように動いています。 
残った屍肉をミールワームが食べて頭骨をきれいにクリーニングする様子を記録したかったのですが、ここで問題発生。 
どうやら撮影用の眩しい照明を嫌って(負の走光性)ミールワームがフスマの中に潜り込んでしまうようです。 
好き好んでホンドテン頭骨に殺到している様子はありません。 
それなら赤外線の暗視カメラに切り替えて暗所で微速度撮影すれば良かったのですけど、「どうせ激しく砕けた頭蓋骨だしなぁ…」とモチベーションが上がらず、ここで諦めてしまいました。 
古生物学者は細かく折れた骨からでもパズルのように丹念に組み合わせて嬉々として復元するのですから、凄いですよね。

暗所に放置して5日後の状態
頭骨を裏返した下面

一方、解剖後のホンドテン死骸の残りは人気ひとけのない野外の雪原に放置して、カラスなどのスカベンジャーに給餌することにしました。 
どんな生き物が来るのかトレイルカメラを設置して観察したかったのですが、複数のプロジェクトを同時並行でやっているためにトレイルカメラの数が足りず、泣く泣く諦めました。 
数日後に現場を再訪すると、ホンドテンの死骸は毛皮や内臓も含めてきれいさっぱり無くなっていました。

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