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2024/04/17

キジバトは有毒植物ナニワズの赤い実を食べるか?【野鳥:トレイルカメラ】

 

2023年7月下旬・午後12:50頃・ 

二次林の中にあるニホンアナグマMeles anakuma)の旧営巣地をトレイルカメラで監視していると、とある昼下がりにキジバトStreptopelia orientalis)が登場しました。 
林床をトコトコ歩き回り、あちこちで地面を啄んでいます。 
種子食性のキジバトは夏の森で何を食べているのでしょうか? 

後半はミズキの根本に回り込んで採食を続けています。 
その辺りには冬緑性の小低木ナニワズ(別名エゾナニワズ、エゾナツボウズ)が群落を形成していて、この時期には落葉が始まり赤い実がなります。 
有毒植物ナニワズの赤く熟した果実をキジバトが食べたかどうか、気になります。 
毒をものともせずナニワズの熟果を食べたとしても、キジバトは種子捕食者ですから、ナニワズの種子散布には貢献しません。
むしろ、そのような種子捕食者に対抗する防衛戦略としてナニワズは毒を溜め込んでいると考えられます。
追加したトレイルカメラでナニワズの群落を監視して種子散布者を調べるのも面白そうです。 
ナニワズの含む有毒物質daphninは鳥類に対して毒性が無いらしく、果実食性のヒヨドリが赤い実を丸呑みして未消化の種子を含む糞をすることで種子散布を助けていることが予想されます。




※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


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2024/03/28

ヤマザクラの樹上で果実を食べるニホンザルの群れ

 

2023年7月上旬・午後13:30頃・晴れ 

里山の登山道を登り始めて間もない地点で野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れと遭遇しました。 
山中で猿の鳴き声が近づいてくるとその場に立ち止まって神経を集中し、揺れている木がないかどうか探します。 
すると大抵、樹上にニホンザルを見つけることが出来ます。 

葉の生い茂ったヤマザクラの樹上に登り降りして、果実を摘み食いしています。 
ヤマザクラの実は完熟すると黒くなるのですが、ニホンザルは半熟の赤い実も食べるようです。 

関連記事(11年前の撮影)▶ ニホンザルが群れでヤマザクラの果実を採食 


山麓で土木工事する重機の騒音がうるさいのに、ニホンザルは全く気にしていません。 
しかし、カメラに撮られていることに気づくと警戒し、枝葉の影に隠れたり木から降りたりしてしまいます。 
工事の騒音が止まると、近くの草むらからナキイナゴ♂(Mongolotettix japonicus)が鳴く声♪が聞こえました。 

関連記事(15年前の撮影)▶ ナキイナゴ♂の鳴き声♪


ヤマザクラの果実に含まれる堅い種子を噛む音がカリカリ♪と聞こえたのですが、葉の生い茂る樹上でサルの姿を見失ってしまい、動画で記録できませんでした。 
撮影アングルを求めて私が右往左往すると、ニアミスしそうになった個体が悲鳴を上げて逃げてしまいます。 
猿害問題の対策として、ニホンザルの群れが山から麓に降りてくる度にロケット花火を打って追い払っています。 
警戒心が強いのはそのためでしょう。 
一方、私のことを認識している群れは、山中で出会ってもあまり恐れずにリラックスして自分たちの行動を続けてくれます。 


数時間後に私が同じ山道を戻ってくると、ニホンザルの残した糞が点々と残されていました。(計3個) 
糞をほぐして調べれば、未消化のヤマザクラ種子が含まれているかも知れません。 
猿の採食時に噛み砕かれずに果肉と一緒に飲み込まれた種子は糞と一緒に排泄され、ヤマザクラの種子は遠くに散布されることになります。 


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2024/03/12

有毒植物ナニワズの熟果を採食するニホンザルの子猿【トレイルカメラ】

 



2023年6月下旬・午後14:10頃・気温27℃ 

ニホンアナグマMeles anakuma)の母子が転出した後の営巣地にニホンザルMacaca fuscata fuscata)の小群が白昼堂々、遊動して通りかかりました。 
母子が連れ立って左下から登場しました。 
母親と思われる♀がアナグマの巣口LとRを順に覗き込んでいる間に、子猿が奥に駆け出しました。 
林床で目立つ赤い実を摘んで採食したようです。 
手前のマルバゴマキの枝葉が邪魔なのですが、1.5倍に拡大して子猿の採食行動をリプレイしてみましょう。 
下草で虫を見つけて捕食(掴み取り)したのではなく、確かに赤い実を摘果・採食していました。

更に別個体が画面の右上隅から登場し、合流した子猿にちょっかいを掛けました。 
子ザルは一時的に樹上に逃げてやり過ごしました。 

平地の二次林にも野生ニホンザルの群れが生息しているとは知りませんでした。 
山から降りてきたのでしょうか? 
平地に点在する二次林が緑の回廊になっているのかもしれません。

トレイルカメラで撮れた動画をその場でチェックしてからすぐに現場検証して、残っていた謎の赤い実の写真を撮りました。 
ヒメアオキかと勘違いしそうになったのですが、調べてみると、ナニワズ(別名エゾナニワズ、エゾナツボウズ)というジンチョウゲ科の落葉小低木と分かりました。 
早春に黄色い花を咲かせていたのを覚えています。 
この時期(6月下旬)、どんどん黄葉して落葉するのが気になりました。 
この二次林は鬱蒼と葉が生い茂り、林冠ギャップがほとんどありません。
てっきり日照不足で小低木の葉は枯れてしまうのかと初めは思いました。 
しかしナニワズは冬緑性で夏に落葉する珍しい植物なのだと知りました。 
ナツボウズという別名はそこから由来しています。
スプリング・エフェメラルと似たような繁殖戦略(フェノロジー)なのでしょう。

驚いたことに、ナニワズの赤い熟果(液果)は有毒なのだそうです。 
花、葉、樹皮、果実など植物全体にクマリン系配糖体のダフィニン(daphnin)を含み有毒です。 
アイヌ民族はナニワズの木から絞った液を矢毒に用いたそうです。 
クマリンは血液凝固を阻害する殺鼠剤として有名です。 
しかし鳥類には毒性が無いらしく、ヒヨドリが熟したオニシバリ(ナニワズの近縁種)の実を丸呑みして未消化の種子を含む糞をすることで種子散布に貢献しているそうです。 
一方、カワラヒワはオニシバリの種子捕食者として関わっているそうです。 



【参考文献】 
鈴木惟司. 南関東における有毒性小低木オニシバリ Daphne pseudomezereum (ジンチョウゲ科 Thymelaeaceae) の果実食者と種子捕食者. 山階鳥類学雑誌, 2016, 48.1: 1-11. 

Google Scholarで検索すると、全文PDFが無料でダウンロード可能です。
読んでみると、カメラトラップを用いた研究でした。
メインのストーリーは鳥類による種子散布ですが、哺乳類についても記述がありました。
オニシバリ3個体の近くでアカネズミ属Apodemus(5回),ニホンアナグマMeles anakuma(6回)及びハクビシンPaguma larvata(1回)の3種が記録された。またこれら以外に,撮影状態が悪く被写体を特定できなかったが,ネズミ類と思われる動物に反応した記録が6回得られた。哺乳類についてはいずれのケースでもオニシバリ果実の採食は記録されなかった。

恐らくその有毒性のために本種(オニシバリ:しぐま註)は他の日本産ジンチョウゲ属数種とともにニホンジカCervus nipponの不嗜好性植物となっている。

この研究にニホンザルは登場しません。 
また、私がネット検索してもニホンザルがナニワズの果実を採食した例は知られていないようです。 
ニホンザルの採食メニューを膨大なリストにまとめた文献にもナニワズやオニシバリは掲載されていませんでした。 
という訳で、今回の動画はニホンザルがナニワズの熟果を採食したシーンを録画した貴重な証拠映像かも知れません。 
味見した直後に不味くて吐き出したかどうか不明ですが、続けて幾つもナニワズ熟果を採食しないで子猿はナニワズの群落から立ち去りました。 
登場した3頭のうち、若い子猿だけがナニワズ熟果を採食(味見・毒味)したのも興味深いです。 
このアナグマ営巣地(セット)で夜な夜な活動していた野ネズミの出現頻度が減ったのは、もしかするとナニワズの実(天然の殺鼠剤)を食べて次々に死んでしまったのかもしれません。 
ニホンザルは野ネズミよりも大型なので、1個ぐらいナニワズ果実を食べても致死量とはならないのでしょう。 
しかし一気に大量に食べると、ダフィニンの毒性により体調を壊すはずです。 
熟した液果が赤く色づくのは種子散布者の鳥や動物に食べてもらうための適応のはずなのに、有毒成分が抜けないのはどういうことでしょう? (アメとムチ?)
種子散布者に果実を少量ずつ食べてもらいたい植物(ナニワズ)の戦略で毒を含んでいるのではないかと考えられます。 
ニホンザルの成獣がナニワズの果実を食べようとしなかったのは、経口毒性を身をもって学習済みだったからかもしれません。
ナニワズの赤い実を食べた子猿が遊動して遠くで排便すれば、未消化の種子がやがて発芽して、種子散布に成功したことになります。
ナニワズの果実を解毒するために、ニホンザルが特定の土や薬草を併せて食べるように進化したら面白いですね。




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この二次林内のあちこちで見つけたナニワズの群落
子猿が採食した現場
その拡大写真

2024年3月中旬 

残雪が溶ける前にスギ防風林の林縁に咲いていたナニワズの花および蕾の写真を撮りました。
冬の間は緑の葉が付いたまま雪の下に埋もれていたことになります。(冬緑性)

一方、庭木に植栽されるジンチョウゲは常緑性です。

2024/03/09

ニホンアナグマの溜め糞をほじくり返してみると…

 

2023年6月下旬・午前10:00頃 



スギ防風林の中にニホンアナグマMeles anakuma)が通う溜め糞場stmpがあり、定点観察しています。 
放置されたまま朽ちた古い手押し車(猫車)の金属フレームが目印になっています。
約5m離れた地点に残されたタヌキの溜め糞wbc-1と異なり、アナグマの溜め糞は黒い軟便で糞の原形が残っていません。 

鈴木欣司『アナグマ・ファミリーの1年』(2000年)によると、
 (アナグマの溜め糞は:しぐま註)軟便でしたが、(中略)土の中の酸化鉄を原料にしている絵の具のイエローオーカーのにおいがしました。これは、ミミズばかりむさぼり食べていた証拠です。(p35より引用)
アナグマの糞特有の匂いが気になっているのですけど、私はまだイエローオーカーの匂いを理解できていません。
タヌキの溜め糞に比べて臭くない(糞便臭が弱い)としか思えません。


すぐ横には朽ち果てた切株があり、その下にオニグルミ堅果の殻が大量に散乱していました。 
殻の両側に丸い穴がくり抜かれていることから、アカネズミApodemus speciosus)の食痕と判明。 
周囲を見回してもオニグルミの木は生えていなかったので、秋にオニグルミの落果を1個ずつせっせと運んで貯食していたのでしょう。 
大雪の積もる冬に貯蔵庫のクルミを食べて暮らし、残りの殻を一箇所に捨てていたのです。 
つまり、この辺りはアナグマのトイレでもあり、アカネズミのゴミ捨て場でもあります。 
どこか近くにアカネズミの巣穴があるはずですけど、朽ち果てた切株の根元は穴だらけで逆によく分かりませんでした。 
後日、すぐ近くのスギ林床(スギ落ち葉の下)に野ネズミ(ノネズミ)の巣穴を発見しました。(映像公開予定)
右上にアカバトガリオオズハネカクシ
 
2023年6月下旬・午後13:50頃

3日後に現場を再訪しました。
鬱蒼としたスギ林の林床は、日中でもかなり薄暗いです。 
小枝でアナグマの溜め糞stmpをほじくってみると、湿った粘土状というか、独特の質感です。 
溜め糞の中から得体の知れない小型の黒い虫が大量に現れ、慌てて逃げ惑います。
糞虫やハネカクシ類、シデムシ類だと思うのですが、糞分析の要領でじっくり調べないと分かりません。
(目の細かいザルに獣糞を入れてほぐしながら流水で洗い流し、未消化の内容物や糞虫を濾し取る手法)
アナグマの調査で忙しくてこれ以上手を広げられず、糞虫の採集調査は後回しになっています。
隣りにあるタヌキの溜め糞wbcと糞虫相を比較するのも面白そうです。

溜め糞stmpの周囲を黄色い昆虫が高速でブンブン飛び回っていました。
ようやく近くの下草に止まったので接写してみると、キイロコウカアブPtecticus aurifer) でした。
右翅だけ広げた謎の体勢です。 
レンズをそっと近づけてもなかなか逃げません。
最後にようやく羽音を立てて飛び去りました。


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・ふしぎいっぱい写真絵本『うんちレストラン』 

2024/02/25

蔓植物クマヤナギの果実

2023年6月中旬・午前 

里山で廃道状態の荒れた山道を登っていたら、下草の蔓植物にブドウのような色鮮やかな果実が房状に実っていました。 
赤く色づき始めてから紫になり、熟すと黒くなるようです。 
見た目は美味しそうですが、有毒植物かどうか分からず、味見する勇気はありませんでした。 (生食可能らしい。)

こんな蔓植物を知らなかったので写真をそのまま画像検索すると、どうやらクロウメモドキ科のクマヤナギらしいと分かりました。 
野鳥によって種子散布されるらしいので、将来やる予定の糞分析に備えて果実ごと種子を採取すべきでした。

2023/12/29

サルナシの果実を食べてみる

2022年10月上旬

河畔林のオニグルミ灌木に巻き付いた謎の蔓植物に果実がつきました。

図鑑で調べてみると、名前だけは聞いたことのあるサルナシ(マタタビ科)でした。

 



緑色で熟しているかどうか分からないのですけど、果実を1個採取し、ナイフで輪切りにしてみました。
切り口になぜか粘り気があります。


2022年10月中旬

19日後に現場を再訪すると、手の届く範囲のサルナシ果実は無くなっていました。
野生動物が食べ尽くしたのか、それとも通りすがりのヒトが誰か採取したのかな?

蔓を強引に引き寄せて、残った熟果をなんとか1房(5個)だけ採集しました。
果実が熟しても果皮は緑色のままで、表面がシワシワになるだけです。

採寸代わりに1円玉(直径2cm)を並べて写真に撮りました。
ナイフで輪切りと縦切りにしてみました。
断面の果汁に粘り気があります。


試食してみると、酸味が強いものの、確かにキウイフルーツと同じ味でした。
小さな種子のプチプチした歯応えも同じでした。
しかしサルナシは1個の果実が小さいので、食べごたえがありません。
食後に口内が少しピリピリするのは、アクチニジンと呼ばれるタンパク質分解酵素が含まれているからでしょうか。

多田多恵子『身近な草木の実とタネハンドブック』を紐解いてサルナシについて調べると、このタンパク質分解酵素の役割りについて興味深い話が書いてありました。
なるほどなぁ。

・キウイに似て美味だが、食べ進むと甘みを感じなくなり、苦痛になる。果肉中のタンパク質分解酵素で舌の味蕾がやられてしまうのだ。大食いの哺乳類が1回に食べる量を制限して、タネを少しずつ分散させるために酵素はある。

・種子の粒は小さく、サルやタヌキやクマの歯の間をすり抜ける。(p147より引用)

サルナシやキウイフルーツは熟しても果皮が色づかず地味なままなので、鳥類ではなく哺乳類に果実を食べてもらって種子を糞と一緒に散布してもらう戦略です。
サルナシの果実を食べる種子散布者としてはホンドテンやハクビシン、ニホンザル、ツキノワグマなどが予想されます。
(『身近な草木の実とタネハンドブック』にはタヌキも挙げられていましたが、木登りのできないタヌキは落果を食べるしかないでしょう。)

トレイルカメラを設置して、サルナシの実を食べに来る野生動物を観察してみたいところです。
しかし、この場所は川沿いの遊歩道のすぐ横なので人通りが多く、隠しカメラを設置したらトラブルになりそうです。
人里離れた山林に自生するサルナシを探しているのですが、なかなか見つかりません。
適当な場所にサルナシの種子をばらまいて育つのを待つ方が早いかもしれません。


同じ日の帰り道に、民家の庭の蔓棚でたわわに実ったキウイフルーツの熟果を2箇所で写真に撮りました。
東北地方の雪国でもキウイフルーツが育つとは最近まで知りませんでした。
品種改良すればサルナシの果実もこのぐらい大きく立派に育つのでしょうか。

民家aの蔓棚
民家bの大きな蔓棚

【追記】
2023年5月下旬
同じ場所に定点観察に通い、蕾の写真を撮りました。






その後は忙しくなってしまい、残念ながらサルナシの花を観察しそびれてしまいました。
訪花昆虫(サルナシの送粉者)に興味があるので、花を見るのは来季の宿題です。

同じ日に民家の蔓棚bで育つキウィフルーツの蕾も写真に撮っています。






次は6月中旬に定点で撮ったサルナシ未熟果の写真です。





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