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2025/12/17

池を泳いで渡るシマヘビは舌をチロチロと出し入れしながら水面を舐めている【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年9月中旬・午後12:40頃・くもり・気温27℃ 

里山で急坂コースの山道を登って小さな池に辿り着きました。 
息を整えながら、水面の上を飛び回るトンボの縄張り争いを眺めていると、池を泳ぐシマヘビElaphe quadrivirgata)に気づきました。 
シマヘビが泳ぐシーンは初見です。 

動画を撮り始めた私を警戒しているのか、シマヘビは池の水面に浮いて静止しています。 
口元を見ると、先の割れた舌を高速で出し入れしていました。 

池に浮かぶシマヘビの高速ベロを240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみましょう。(@0:59〜4:24) 
波ひとつない水面に、鎌首をもたげたヘビの頭部が逆さまに写っています。 
先端が二股に割れた舌の表側は白っぽく、裏側は赤黒いようです。
細長い舌を上下にヒラヒラと動かしながら伸縮させ、鋤鼻器(ヤコブソン器官)に風の匂いを送り込んでいます。 
スーパースローで見て初めて分かったのですが、引っ込める際に舌先を水面に軽く触れていて、その度に波紋が広がっていました。 
最近撮影したヤマカガシと同じでした。

近くの水面に浮いていたアメンボが、マヘビの立てる波紋に警戒して逃げ出しました。 
舌を出し入れする頻度が高くなると、蛇行を始める前兆です。 
予想通り、水面を蛇行しながら泳いで前進を始めました。  
泳ぎながらも舌の出し入れを続けていて、水質検査もしているようです。(水面も舐めている) 

高画質のFHD動画に戻して蛇行遊泳シーンの撮影を続けます。(@4:25〜) 
急にシマヘビが水面を泳いで岸辺に突進したのでカエルでも狩るのかと期待したものの、カエルはとっくに逃げてしまったようです。 
岸辺に生えた抽水植物(種名不詳)の葉の下に顔を隠してシマヘビは安心したようですが、「頭隠して尻隠さず」の状態です。 
どうやら私を警戒して逃げたのかもしれません。 
シマヘビの顔が見えるように私が動画を撮りながらゆっくり横にずれると、シマヘビはまた少し前進して葉陰に顔を隠しました。 
慎重でなかなか上陸してくれません。 

舌をチロチロと高速で出し入れして周囲の状況を絶えず探りながら、慎重にゆっくり上陸します。 
水際の泥濘や落ち葉の上を這い回り、池の畔を少し登りました。 
静止したシマヘビは、舌の出し入れを止めてしまいました。 



【考察】 
この水場は浅い水溜りではなく、深い池です。 
鎌首をもたげたシマヘビの上半身は水面より上に浮いていましたが、尻尾付近の下半身は水没していました。 
ということは、肺や消化管を浮き袋としているのでしょうか? 
まさか上半身よりも下半身の方が重い(比重が大きい)はずはありません。
Perplexity AIに質問すると、否定的な見解でした。

陸棲のヘビであるシマヘビやヤマカガシは、肺に入った空気を浮き袋のように使って水中の浮力を得ているわけではありません。これらのヘビは肺呼吸を行い、空気を鼻や口から取り入れているので、泳ぐときに鼻や口を水面に出して呼吸しますが、肺の空気を利用して体を浮かせているわけではないのです。

ヘビの肺は呼吸のための器官であって、魚やウミヘビのような特別な浮き袋機能はありません。陸棲ヘビは泳ぐ際に体の一部が水面に浮くことはありますが、それは肺の空気の浮力というよりも体の形状や泳ぎ方によるものです。下半身が水没しても泳ぐのに問題はなく、呼吸のために時々鼻先を水面に出します。

このため、シマヘビやヤマカガシなどの陸棲ヘビが深い池で泳ぐ際、上半身が水面に浮くのは肺の空気による浮き袋効果ではなく、水中での体のポジションや泳ぎ方によるものと考えられます。肺はあくまで呼吸器官で、浮力調整を目的にはしていません。

まとめると、陸棲のヘビは肺の空気を浮き袋のようには使わず、泳ぐ際は肺呼吸を保ちながら水面に鼻を出すことで呼吸を行います。浮力は主に体形や筋肉の動き、水の抵抗によって調整されています.wikipediayoutube


陸生ヘビが水中で泳いだり浮いている際に、下半身が沈みやすい理由は単に重量や比重の違いだけでは説明されません。ヘビ全体の比重はほぼ水に近いものの、体の構造や体表の形状、筋肉の使い方が影響します。


ヘビの体は円筒形で柔軟性が高く、泳ぐ時は体を波打たせて推進力を作ります。上半身が水面にあるのは呼吸のために鼻や口を水面に出しやすくするための姿勢維持や、筋肉の働きによって姿勢が保たれているからです。一方、下半身は水中に沈んでいても筋肉の動きや水の抵抗で問題なく泳げます。


また、肺は比較的大きな空洞ですが、ヘビの体全体に対しては肺の容積はそれほど大きくないため、肺の空気が浮き袋として体の浮力を大きく支えるわけではありません。体の各部の重さの差よりも、筋肉と体の動き、および水と接する表面積の違いが浮き沈みの感覚により影響するのです。


したがって、下半身だけが水中に沈むのは比重差より体の形態と行動の結果であり、陸生ヘビの肺は浮き袋のような役割は持たないものの、水面に上半身を保つ姿勢制御を筋肉などで行っていると考えられます。比重の違い説は現実のヘビの泳ぎ方とは食い違います。 


ヘビが水面に浮いているときに鎌首をもたげて頭部を水面より上に保つ姿勢は、確かに身体のバランスに影響を与えます。この姿勢により、ヘビの頭部付近が高くなり見た目上は上半身が水面に浮いているように見えますが、それと反対側の下半身は自然と水中に沈みやすくなります。

これはヘビの体が柔軟で長いため、重心と姿勢の関係でこうした浮沈みの差が生まれるためです。頭部を高く持ち上げ呼吸を確保しながら、下半身は水底に近い深さでしっかりと水圧の支持を受ける形でバランスを取っていると考えられます。

したがって、ヘビの水面に浮く姿勢は肺の浮き袋効果とは別に、体の姿勢制御と筋肉の働きで決まるもので、鎌首をもたげる姿勢が水中での浮き沈みに大きな影響を与えているのです。このため、浮いているときに下半身だけ沈むのは自然な現象と言えます。

結論として、シマヘビやヤマカガシのような陸生ヘビが泳ぐとき、鎌首の姿勢保持によって頭部が水面に優先的に浮き、反対側の下半身が水中に沈むのは身体のバランスを保つための合理的な動きであり、肺の空気量だけによる浮力差では説明できません.herpetology.raindropyoutube

ところで、ヘビの先端が二股に別れていることに生態的に重要な意味や役割があることをご存知でしょうか。


ヘビの舌が二股になっているのは、きわめて典型的な「適応形質」で、主に化学感覚(嗅覚+味覚に相当)の空間分解能を高めるためと考えられています。ki-nokon+1

二股の舌とヤコプソン器官

ヘビは舌で空気中や地表の化学物質(匂い分子・フェロモンなど)を集め、それを口蓋にあるヤコプソン(鋤鼻)器官に運んで感知します。allabout+1
ヤコプソン器官は左右一対で、舌先の左右それぞれが対応する孔に差し込まれるため、二股構造はこの「左右別々にサンプルを運ぶ」仕組みに適合した形態と解釈されています。reddit+1

方位検出と「においのステレオ」

二股になっていることで、舌先の左右で僅かに異なる場所の化学情報を同時に採取できます。getnews+1
その結果、左右の濃度差や到達タイミングの差を比較し、におい源の方向を推定できるとされ、「におい版ステレオ視・ステレオ聴覚」のような役割を果たしていると考えられています。youtubeallabout

探索効率と行動上の利点

二股構造により、一本の舌より広い範囲から効率的に化学物質を拾えるため、獲物・天敵・配偶相手などの存在や位置をより精密に把握できます。fujisan+1
視覚や聴覚が制約される夜間や地表近く・隠蔽環境での探索において、こうした高分解能の化学定位能力が大きな適応的利益をもたらすと考えられています。youtubeallabout

2025/12/09

水溜りに顔を浸して水中も探索するヤマカガシ

 



2024年9月上旬・午後12:55頃・晴れ 

山中の浅い水溜りに入り浸るヤマカガシRhabdophis tigrinus)をしばらく観察していると、とても興味深い行動が見られました。 
それまでは水面から少し上に顔がくるように軽く鎌首をもたげて蛇行していたのに、頭を下げて喉(顎の下面)を泥に接地させながらあちこち探るような動きを始めたのです。 
このとき、呼吸する鼻の穴は泥の中に潜りましたが、眼球はギリギリ泥水で濡らしませんでした。 


【考察】 
ヘビが水を飲む行動を私はまだ観察したことがないのですけど、今回のような行動ではなく、水面に口を付けて飲むのだそうです。 
頭部も接地して周囲のかすかな振動も検知しようとしているのかな?
Perplexity AIによると、

ヘビには鼓膜はありませんが、「内耳」はしっかり残っており、別の経路で振動=音を感じています。wikipedia+1

鼓膜の有無と耳の構造

  • ヘビは外耳孔・外耳道・鼓膜を欠きます(ここがトカゲなど他の爬虫類と大きく違う点)。exoinfo+1

  • 一方で、内耳(前庭・蝸牛に相当する部分)はよく発達しており、「耳小柱」(哺乳類のアブミ骨に相当)で顎骨などからの振動を受け取ります。mhlw-grants.niph+1

どうやって「聞いている」のか

  • 地面に接した下顎や体全体が振動を受け、それが骨伝導で耳小柱→内耳に伝わることで低周波の振動・音を感知します。ddnavi+2

  • 空気中の音も、人間ほどではないものの、体表に当たる振動としてある程度は検知できるとされます(可聴域は狭い)。signia+1


それとも泥の匂いを直接嗅いで、獲物を探索しているのでしょうか? 

Perplexity AIに質問してみると、以下の回答が得られました。
ヘビについて疎い私は、この回答にAI特有のハルシネーション(知ったかぶり)が含まれているかどうか判断できないので、そのまま引用します。

ヤマカガシが頭を下げて喉(顎の下面)を泥に接地させ、鼻の穴を泥の中に潜らせる行動は、おそらく泥や水の匂いを直接嗅いでいるものである可能性が高いです。ヘビはヤコブソン器官による化学感覚を非常に発達させており、水中や泥中のにおい分子を検出するために、このように鼻を濡れた部分に近づけたり泥に接触させたりすることがあります。

この動きは周囲の振動を検知するためのものではなく、動物が泥水の匂いを集中的に採取していると考えられます。水を飲む際は通常、口を水面につける動作が見られ、鼻を泥に潜らせる行動とは異なります。maff+1

つまり、この行動は泥や水の匂い(化学物質)を直接嗅いで環境や獲物の存在を確認しようとしている探索行動であると考えられます。






ヤマカガシが鼻を泥に潜らせて泥の匂いを積極的に嗅ぐ行動は、端的には「化学探索行動」や「化学感覚探索」と呼べます。この行動は、舌を高速で出し入れして揺り動かすことで「鋤鼻器」(ヤコブソン器官)に空気中の化学物質を送り込み、環境中の匂いを探索していることから、化学的な情報収集のための「探索行動」とされます。

このような行動に特別な単語があるわけではありませんが、生物学や行動学の文脈では「舌フェロモン探索」や単に「フェロモン探索」「化学受容探索」という表現が使われることがあります。

従って、ヤマカガシの鼻を泥に潜らせる行動は「化学探索行動」あり、舌の出し入れと合わせて鋤鼻器を使った嗅覚による周囲環境の調査行動であると理解できます。

水溜りの泥水は濁っていたので、ヤマカガシの水中での舌の動きを観察できませんでした。

泥の中でもヤマカガシは舌を出し入れしていた可能性が高いです。ヤマカガシは鋤鼻器(ヤコブソン器官)を使って化学物質を感知するために、舌を頻繁に出し入れし、口腔内に集めた化学物質を鋤鼻器へ運びます。この行動は泥の中でも変わらず行われ、視覚では見えない状況でも化学感覚を駆使して周囲の情報を得ています。泥の中に鼻の穴を潜らせていても、舌の動作は継続すると考えられ、泥や水中の化学物質を嗅ぎ分けているためです。toho-u

したがって、肉眼では泥に隠れて舌の動きは見えなくても、ヤマカガシは泥の中でも舌を出し入れして探索していると推察されます。


前回の記事で紹介したヤマカガシが水面を舐めてヤコブソン器官に送り込む行動と、今回の記事で扱った水中での探索行動はどう違うのでしょうか?

ヤマカガシが鼻の穴まで泥に潜らせて水底の匂いを積極的に嗅ぐ行動と、舌のフリッキングで水面を軽く舐める行動の違いを整理すると以下のようになります。

  • 鼻の穴を泥に潜らせる行動は、より直接的に「水底や泥中の非揮発性化学物質」を感知するための深くかつ集中的な化学探索行動です。この行動によって、泥や水底に存在する獲物の痕跡や環境中の物理的・化学的サインを詳細に検知し、鋤鼻器に送り込みます。

  • 一方、舌のフリッキングで水面を軽く舐める行動は、「水面上の揮発性または溶存化学物質」を素早く検査するための浅い探索行動であり、幅広い環境情報や獲物・捕食者の匂いなどを素早くキャッチする役割です。

要約すると、鼻穴を泥に潜らせる行動は「局所的かつ詳細な化学物質検知行動」であり、舌を水面に軽く触れさせるフリッキングは「広域的かつ迅速な化学情報収集行動」と言えます。両者は鋤鼻器を用いた化学探索という意味では共通しますが、感知対象となる物質の種類や探索の深度・範囲に違いがあります。

これらの行動は水中環境におけるヤマカガシの柔軟で高度な獲物探索戦術を示しています。



ところで、ウミヘビも海で泳ぎながら絶えず舌を出し入れして、海水中に溶けた匂い分子をヤコブソン器官に送り込んでいるのでしょうか?

ウミヘビも、基本的には他のヘビと同様に水中で舌を出し入れし、その舌に付着した化学物質を鋤鼻器(ヤコブソン器官)に送り込んでいます。水に完全適応した種(セグロウミヘビなど)でも鋤鼻器はよく発達しており、「空気中の匂い分子」ではなく「水中に溶けた化学物質」をサンプリングしていると考えられています。exoinfo+1

水は空気より粘性が高く、匂い分子の拡散様式も異なりますが、アナコンダなど淡水性の水生ヘビでは舌が水中で効率的に機能することが示されており、同様のメカニズムがウミヘビにも当てはまるとみなされています。つまり、ウミヘビは泳ぎながら舌をフリッキングし、水中の化学シグナル(獲物・仲間・環境情報)を鋤鼻器へ運ぶことで「嗅いでいる」と理解するのが妥当です。exoroom+3

2025/12/05

水溜りを泳ぐヤマカガシが舌を出し入れして水面を舐めるとき舐めないとき【FHD動画&ハイスピード動画】

 



2024年9月上旬・午後12:30頃・晴れ 

山中の湿地帯にある水溜りでヤマカガシRhabdophis tigrinus)が細い体を浸し、鎌首をもたげて静止していました。 
先が二股に割れた黒い舌を素早く伸縮させています。 
ヘビが舌舐めずりをするようにチロチロと出し入れしているのは、口腔内にあるヤコブソン器官(鋤鼻器)に周囲の空気を取り込んで、周囲のかすかな匂いを敏感に嗅ぎ取るためです。 
ヘビも普段は我々ヒトと同様に鼻の穴で呼吸し、鼻腔の奥にある嗅上皮で空気の匂いを嗅いでいますが、獲物のかすかな残り香を嗅ぎ取るために特別な鋤鼻器を発達させたのです。 
(ヒトの鋤鼻器は退化しています。)


高速で出し入れする舌の動きを、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:37〜5:54) 
ヤマカガシが静止しているときには、出し入れする舌の先端は水面に触れていませんでした。 
このときヤコブソン器官で嗅ぎ取っているのは、周囲の空気中に漂う匂いの情報だけです。 
舌を出し入れする筋肉の動きだけで、水面に少し波紋が広がっています。 

しばらくすると、ヤマカガシが舌を出し入れする頻度が高くなり、しかも舌を長く伸ばすようになりました。 
これは蛇行を始める前兆です。 
下半身を左右にくねらせて前進を始めました。 
すると、長く伸ばした舌を引っ込める際に先端が水面にピタピタと軽く触れるようになりました。 
まるで水面に鞭を打っているようです。 
そのたびに水面に波紋が広がります。 
初めは正面を向いていたヤマカガシが左に移動し始めたので、側面からも舌の出し入れを撮ることができました。

蛇行する際は、持ち上げていた頭部を少し下げる(前傾姿勢)ので、舌先が水面に触れるのは仕方がない(不可抗力)のかもしれません。 
それとも、蛇行しながら意図的に水面を舐めて、空中だけでなく水中に漂う微量な匂い分子も鋤鼻器に取り込んでいるのかもしれません。
Perplexity AIに質問した回答がこちら。

水面や泥水に舌をピタピタと触れさせる「水中化学探索行動」と、空気中で舌を高速で出し入れする通常の化学探索行動は、機能や役割に違いがあります。

機能の違い

  • 水面や泥水に舌先を触れさせる行動は、液体中の溶存化学物質やその濃度分布をダイレクトに検知する機能があります。舌先に付着した水や泥水中の化学物質は、そのまま口腔内の鋤鼻器へ運ばれ、獲物や環境情報(微量な匂い・代謝物など)をピンポイントで感知できます。ivma+1

  • 通常の空気中の舌フリッキングは、空気中に漂う揮発性化学物質(匂い分子)を舌に集め、周囲の広い範囲の情報や個体間フェロモンなどを検知します。獲物や繁殖相手の探索、危険回避行動など広範な目的を持ちます。exoinfo+2

役割の違い

  • 水面(液体)への舌の接触は、カエルなどの水生獲物の痕跡(代謝物、分泌物、卵、粘液など)の探索や環境状態の把握に特化した役割を持ち、一種の「水生化学的ターゲット探索」と位置づけられます。

  • 空気中の舌フリッキングは、個体間コミュニケーション、広域の獲物探索、捕食者の検知などに寄与する「空中化学探索行動」といえます。

補足

どちらの行動も「鋤鼻器(ヤコブソン器官)」を使っており、環境に応じて液体/気体から最適な化学情報収集方法を選択していることが分かります。水中でも舌を出し入れする行動は、特に水生環境での餌探索に重要となります。city.kobe+1

つまり、水面や泥中への舌の接触は、液体に存在する化学物質の「局所的・直接的な検知」、空気中での舌フリッキングは「広域的・揮発性化学物質の検知」という機能分化があります。


ヘビが水を飲むシーンを私はまだ実際に観察したことがないのですが、イヌやネコのようにピチャピチャと舌を使って飲むのではなく、水面に口を付けて直接飲むのだそうです。 
つまり今回の高速ベロは、喉の乾きをいやす飲水行動ではありません。

ヘビは基本的に水容器や自然の水たまりの水を直接口に含んで飲む方法をとります。ヤマカガシも例外ではなく、水辺や水溜りなどで水を飲む際は、頭を水面近くに下ろし、舌を出し入れしながら水を口に含みます。この際、直接水に口をつけて飲むことが多いです。exoroom+1

自然界での水飲み行動においては、水たまりの水を利用したり、葉や石に溜まった水滴をなめたりすることもありますが、ヤマカガシは水場に来て実際に水を飲む習性があります。また、湿度を保つために水辺周辺で時間を過ごすことも多いです。exoroom


かなり穿った仮説として、近くのアメンボをおびき寄せてから捕食するために、わざと舌先で水面に触れて波紋を立てている可能性はあるでしょうか? 
しかしスーパースローの映像を見てもらうと分かるように、ヤマカガシのすぐ目の前の水面をアメンボが滑走してもヤマカガシは無視することが多いです。 
しかも、ヤマカガシが眼の前のアメンボに襲いかかろうとしても、いつもアメンボは波紋を敏感に察知して素早く逃げてしまいます。(例@3:41〜3:45) 

動画の後半は、ヤマカガシが水溜りで静止しながらも舌を高速で出し入れしている様子を再び高画質のFHD動画でご覧ください。 
蛇足かもしれませんが、せっかく長々と観察できた記録映像を捨てるのも惜しいので付け足しました。 
水溜りの中を蛇行で移動しながら舌を高速で出し入れする様子は、前回の記事で紹介しました。 




【考察】 
水面を舐めているヤマカガシが「泥水の味見をしている」と表現するのは誤解を招きます。

確かに、ヘビが水面を舐めている行動を「泥水の味見」と表現するのは誤解を招きやすいです。ヘビの舌には味覚受容器がほとんどなく、舌の主な役割は「鋤鼻器(ヤコブソン器官)」に匂い分子を運ぶことで化学情報を得ることにあります。つまり、ヘビが水面を舐めるのは「味を感じている」わけではなく、水や泥に含まれる化学物質を検出し、周囲環境や獲物の存在を把握するための「化学探索行動」です。

したがって、観察者としては「水面の化学的な情報をサンプリングしている」「水中や周囲の環境を匂いで調べている」と表現するのが正確であり、味覚的な「味見」とは区別して理解することが重要です。omnh

ヘビの舌には味覚はほとんど発達していません。ヘビは丸呑みで食べる習性があり、舌にもヒトのような味蕾はほとんど存在しないか非常に少ないと考えられています。そのため、食物の味を詳細に感じ取る能力は弱く、主に嗅覚によって獲物や環境の情報を得ています。uenonorenkai+1

ヘビの味覚は舌ではなく、口内の一部や咽頭などにわずかにある可能性はありますが、味覚の感度や役割はヒトや他の哺乳類に比べて限定的です。その代わりに、ヘビは鋤鼻器(ヤコブソン器官)を通じて化学物質を検出し、行動決定に重要な情報を得ています。exoroom+1

ヘビのゲノムには味覚受容体の遺伝子が、多くの他の動物に比べて減少していることが研究で示されています。特に哺乳類が持つ甘味や苦味などの味覚受容体遺伝子の一部が、ヘビでは数が大幅に減少していたり(時には機能を失っている場合も)、特定の味覚受容体遺伝子が完全に欠損していることがあります。

これはヘビが丸呑みで食物を摂取し、味覚よりも嗅覚や触覚に頼る生活様式に適応した結果と考えられています。舌を使い鋤鼻器へ匂いを運ぶ嗅覚情報が重要な役割を果たしているため、味覚受容体の機能は比較的低下したと解釈されています。


ヘビのゲノムにおける味覚受容体遺伝子の減少は、一般的に「退化現象」と考えられています。ヘビは丸呑みで捕食し、味覚よりも嗅覚に大きく依存した感覚系に進化しているため、味覚受容体の遺伝子が機能的に不要になった結果、遺伝子が失われたり非機能化したと解釈されています。

一方で、爬虫類全般では必ずしも同一の傾向は見られません。例えばトカゲやワニなど他の爬虫類はヘビほど味覚受容体の遺伝子が減少しておらず、彼らはヘビとは異なる食性や捕食方法を持つため、味覚の重要性や遺伝子の保存度は高いままです。

したがって、味覚受容体遺伝子の減少はヘビに特有の適応的退化であり、爬虫類全体には当てはまらない進化的特性といえます。



高速ベロの他にもう一つ興味深いのは、水溜りを泳ぐヤマカガシの眼球が一度だけ左にキョロッと動いた(ように見えた)ことです。(@4:17〜) 
しかし、何度も見返すと、単にヘビが進む方向を変えた(頭部の向きを変えた)だけで、眼球が動いたように見えたのは私の錯覚(思い込み)かもしれません。 
Perplexity AIに質問すると、ヘビは基本的に眼球を動かすことはないらしい。

ヤマカガシが蛇行中に一度だけ眼球をキョロキョロ動かした行動は、ヘビの中でも一般的には珍しい動きとされています。ヘビは基本的に眼球を独立に動かすことは少なく、視野の調整は頭や体全体の動きで行うことが多いです。

しかし、ヤマカガシのような種類でも特に水中や湿地帯の環境で探索や警戒行動中に、眼球を動かして視界の細かい変化を確認しようとすることが稀に観察されます。このような動きは外界の動く物体や捕食対象の細部を精密に見極めるための補助的な機能と考えられ、珍しいものの異常ではありません。nacsj+1

したがって、キョロキョロと眼球を動かす行為は珍しいが、ヤマカガシが水中で細かく環境認識を行うための一環として自然な行動とも言えます。




2025/12/01

水溜りを泳ぎ回るヤマカガシはアメンボなど水生昆虫を捕食するか?

 

2024年9月上旬・午後12:28〜13:08・気温24.5℃ 

トレイルカメラの保守作業のために、里山に登って、湧き水や雨水の溜まった湿地帯に来ました。 
現場入りした私が静かに電池交換などの作業を始めると、干上がりかけた水溜まりSの方から水音が聞こえてきました。 
てっきりカエルやオタマジャクシが水溜りで跳びはねているのかと思いきや、ヘビが入水していました! 
ヤマカガシRhabdophis tigrinus)です。 
素人目にはなんとなく、まだ少し若い個体のような気がするのですけど、どうでしょうか? 

関連記事(8年前の撮影)▶ 水路を泳いで渡るヤマカガシ 


ヤマカガシは蛇行して水溜まりや岸辺の泥濘を右往左往しています。 
9月の水溜りには、ヘビの獲物となるオタマジャクシやカエルはもう1匹も居ません。 
どうやらアメンボなどの水生昆虫を狙って狩りをしているようです。 
ヤマカガシが目の前の獲物に襲いかかる瞬間を1.5倍に拡大した上で1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
射程距離に入ると突進して噛みつこうとしますが、何度やっても水面のアメンボはピョンピョン跳んで素早く逃げてしまいます。 
よく見ると、アメンボが逃げ出す動きに反応して襲っていることが分かりました。
表面張力を利用して水面に浮いているアメンボは、獲物を捕るために足先の感覚毛で波紋を敏感に感じています。
ヘビが水溜りで少しでも動くと波紋が立ちますから、どうしてもアメンボに気づかれて逃げられてしまうのです。
長い胴体を使ってヤマカガシがアメンボをゆっくりと囲い込み(アメンボの行く手を塞ぎ)、待ち伏せしている顔の方へ誘導する作戦を試みても、アメンボはヘビの胴体をピョンと跳び越えて脱出してしまいます。 
結局、狩りが成功して水生昆虫を捕食するシーンは一度も撮れませんでした。 

ヤマカガシがアメンボに襲いかかるかどうかは、とても気まぐれです。 
せっかく目の前にアメンボが近寄って来たり通り過ぎたりしても、ヤマカガシは知らん顔でやり過ごすことが多いです。 
襲ってもどうせ逃げられると分かり、諦めているのでしょうか。

浅い水溜りを蛇行するヤマカガシの右横で丸っこい小型の水生甲虫(ミズスマシ?)が慌てて潜水すると、水底のデトリタスに隠れました。(@10:40〜) 

活動中のヤマカガシが口を開閉したのは欠伸でしょうか? 
なんとも可愛らしい映像が撮れました。(@0:35、0:43〜) 
Perplexity AIに尋ねてみると、ヘビもアクビをするそうです。
ヤマカガシを含むヘビは欠伸をすることがあります。欠伸はヘビなど多くの脊椎動物に見られ、あくびとも呼ばれ、口を大きく開けて呼吸を整えたり、顎の筋肉をほぐしたりする行動です。特に捕食や休息の前後、または体温調整の一環として行われると考えられています。 ヤマカガシの求愛や警戒行動の中であくびが観察されることがあり、他のヘビと同様に生理的な意味を持っています。そのため、欠伸は単なる疲労サインだけでなく、体調維持や環境への適応行動の一部とみなせます。[2] 

撮影の合間に木陰で測った気温は24.5℃でした。 
ヘビが浸っている水溜りの水温を実際に測るべきだったのですが、この日に限って長靴を履いて来なかった私は、泥で靴が汚れるのが嫌で水溜りに近づけませんでした。 
こういうときこそ、離れた位置からも温度が測れるレーザー式のデジタル温度計が必要ですね。 
もし携行していれば、水温だけでなくヤマカガシの体温も測れたはずです。 
同じ水溜りでも日陰の部分と日向の部分では水温が微妙に違うのかもしれません。 
しかし映像を見る限り、ヤマカガシは水溜りの中で日向・日陰のいずれかを特に好んで留まる訳ではなさそうです。 
ヒトが暑いサウナと水風呂を交互に入るのと同じように、ヘビも日向と日陰に出入りして自分で体温調節しているのかもしれません。

泥濘を蛇行したり水溜りを泳いだりするヤマカガシがあまりにも美しく、夢中になって動画を撮りまくりました。 
これほど長時間ヘビを観察できたのは初めてかもしれません。 
さすがに飽きてきたので、水場を監視するトレイルカメラでも軽く撮影してみました。 
その映像が冒頭のシーンです。
(これだけ動画素材を撮影順から入れ替えました。) 
私が愛用しているデジカメは最近ズームの調子が悪くて現場の状況を引きの絵で撮れなかったので、代わりにトレイルカメラの映像を冒頭に差し込みました。
その後、トレイルカメラを監視モードに切り替えて私が現場を立ち去ると、水溜まりSの中に浸っているヤマカガシの活動はもう録画されていませんでした。 
爬虫類は変温動物ですから、いくら活発に蛇行してもトレイルカメラの熱源センサーが反応しないのです。 

せっかく三脚があるのですから、固定した定点カメラでヤマカガシが水溜りSの中を蛇行する様子をタイムラプス撮影(インターバル撮影)すれば面白かったかもしれません。 


【考察】
動画の他に写真でもヤマカガシを撮ったのですが、フラッシュを焚いたら目が光を強く反射していました。 
てっきりヤマカガシにもタペータムがあるのかと思いきや、Google AIによれば違うそうです。
フラッシュ撮影時にヤマカガシの目が光って見えたとのことですが、これはタペータム(輝板)によるものではなく、角膜の外側にある透明な膜(眼鏡板)への光の反射と考えられます。 ヤマカガシを含むヘビの仲間には、一般的にタペータムは存在しないと考えられています。 ヘビの目の特徴と目の反射 まぶたがない: ヘビにはまぶたがなく、常に目を開けた状態のように見えます。その代わりに、目全体が「眼鏡板(スペクタクル)」と呼ばれる透明なウロコで覆われています。 タペータムの有無: タペータムは、犬や猫などの多くの夜行性動物が持つ反射層で、わずかな光を効率よく利用するために光を反射させる役割があります。しかし、多くのヘビはタペータムを持っていません。 フラッシュ撮影時の反射: 昼夜を問わず、ヘビの目にフラッシュの光が当たった際に光って見えるのは、この目の表面を覆う眼鏡板が光を反射しているためです。 ヘビの目は独特な構造を持っており、視力はあまり良くないと言われていますが、その代わりにピット器官(赤外線感知器官)などで周囲の情報を補っています。

 

ヘビの角膜の外側にある透明な膜(眼鏡板)は、鳥の瞬膜と異なります。両者は機能は似ていますが、解剖学的・進化的な起源が異なる別の器官です。 眼鏡板と瞬膜の違い 特徴 ヘビの眼鏡板 (Brille, Spectacle) 鳥の瞬膜 (Nictitating membrane) 構造 動かない透明なウロコ状の皮膚。上下のまぶたが融合してできたものに由来する。 半透明の薄い膜状の「第三のまぶた」。 動き まったく動かない。脱皮時に一緒に剥がれ落ちる。 目頭から目尻へ水平方向に素早く動く。 役割 まぶたの代わりとして常に目を保護し、乾燥を防ぐ。 まばたきのように角膜表面を潤し、破片から目を守る「ワイパー」や「水中メガネ」のような役割。 起源 上下のまぶたの融合。 脊椎動物が持つ第三のまぶた。 まとめると、鳥の瞬膜は動くことによって目を保護・保湿する機能的な「まぶた」の一部であるのに対し、ヘビの眼鏡板は固定された透明な皮膚の層であり、根本的な構造と動作が異なります。



記事のタイトル「ヤマカガシはアメンボなど水生昆虫を捕食するか?」について、Perplexity AIを相手にブレインストーミングしました。

A1: ヤマカガシは主にカエルやオタマジャクシのような動く小動物を捕食し、動きのないものは獲物として認識しにくい可能性が高いです。


A2: ヤマカガシは獲物を探す際に視覚を部分的に利用しますが、主に嗅覚を使っていると考えられています。特にヤコブソン器官(舌を使った化学感覚)を使って餌を識別し、ヒキガエルなど特定の獲物を嗅覚的に認識するという研究報告があります。視覚においては動くものの認識や動きに敏感で、素早く動くものを感知して反応しますが、色覚や細かな視覚情報の利用は限られているともされます。oirase-fm+2

総じて、ヤマカガシは視覚より嗅覚に依存する捕食行動が強く、特に獲物の存在確認や識別には化学感覚が重要とされています。ただし、獲物の動きの検知などに視覚も役立っていると考えられるため、視覚を完全に使わないわけではありません。note+1

したがって、ヤマカガシは主に嗅覚で獲物を探しつつ、視覚で動きを検知するという補助的な役割で視覚を使っていると理解できます。


A3: ヤマカガシにはピット器官(熱を感知する赤外線受容器官)はありません。ピット器官はマムシ亜科やニシキヘビ科、ボア科の一部のヘビに見られる特徴で、目と鼻の間のくぼみに存在しますが、ヤマカガシはナミヘビ科に属し、この器官を持たないとされています。

A4: ヤマカガシは昆虫を捕食することはほとんどなく、その主な食性はカエルやオタマジャクシ、魚類、トカゲなどの小動物で構成されています。ヤマカガシは特に有毒なヒキガエルも捕食できることで知られており、昆虫は食餌の主要な対象には含まれていません。amaru+3

報告されている食物リストに昆虫は基本的に含まれていないため、昆虫を捕食する機会や頻度は非常に低いか、ほぼないと考えられます。

 

A5: ヤマカガシが浅い水溜りの中で舌を出し入れしながらゆっくりと蛇行し、目の前にいるアメンボに襲いかかる行動は、単なる反射的なものではなく、獲物の動きを認識して捕食を試みている可能性が高いです。ヤマカガシは化学感覚(ヤコブソン器官)で獲物の存在を探知しつつ、動きに反応して捕食行動を起こします。アメンボは素早く逃げる能力が高い水生昆虫であるため、捕食されにくいですが、ヤマカガシのこの行動は獲物として認識しての捕食努力と考えられます。bdcchiba+1

つまり、襲いかかるのは単なる偶発的な反射ではなく、獲物としての意識を持っての捕食行動の一部と見なせます。ただし、アメンボが逃げやすいため捕獲には成功しにくいということです。

 

A6: ヤマカガシが夏の山中の浅い水溜りに長く滞在していたのは、体温を下げるための水浴を兼ねていた可能性が高いです。ヤマカガシは特に夏季の高温期に水辺で行動することが知られており、捕食対象のカエルやオタマジャクシがいない場合でも、水中で体温を調節するために一定時間水に浸かることがあります。また、水辺環境は湿度を保ち、脱水を防ぐ役割も果たすため、暑さや乾燥対策として利用されていると考えられています。yahagigawa+1

つまり、ヤマカガシが浅い水溜りに長居したのは、単に餌のためだけでなく、夏の暑さ対策としての水浴の目的もあるためと理解できます。



つづく→水溜りを泳ぐヤマカガシが舌を出し入れして水面を舐めるとき舐めないとき【FHD動画&ハイスピード動画】

2025/11/19

シマヘビの幼蛇:休息からの蛇行逃走

 



2024年8月下旬・午前13:20頃・くもり 

郊外の住宅地でシマヘビElaphe quadrivirgata)の幼蛇が道端でじっとしていました。 
家屋の北側で、しかも木陰のため、日光浴ではないはずです。 
私を警戒しているのか、舌の出し入れはしていません。 

私が右足の爪先で蹴るそぶりをすると、左を向いていたシマヘビ幼蛇は、身を翻して右の草むらに素早く逃げ込みました。 
蛇行の逃走シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:23〜)


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