2023年3月下旬・午後14:00頃・晴れ
里山の雪解け水が貯まった池でヤマアカガエル(Rana ornativentris)の卵塊を調べていたら、池の水中を泳ぐミズカマキリ(Ranatra chinensis)を見つけました。 越冬明けの個体が飛来したのかな?
越冬は水中で、ミズカマキリは集団で越冬すると言われているが実際に観察されることはまれである。(p88より引用)
水生昆虫に疎い私は、生きたミズカマキリをフィールドで見つけたのはこれが生まれて初めてで、歓喜しました。
池畔は残雪で囲まれ、水面には太陽が反射して眩しいです。
雪解け水の貯まった池の水温は低いはずです。
この池でヤマアカガエル♀♂の繁殖行動をタイムラプス撮影するプロジェクトは、いまいち納得の行く結果を得られませんでした。
がっかりしたものの、この日はミズカマキリと出会えた喜びで帳消しになりました。
初めミズカマキリは私を警戒して身を隠そうとしているのか、ヤマアカガエルの卵塊の下に潜り込もうとして、もがくように泳いでいました。
手足にオール状の構造がないため、泳ぎはあまり得意ではなく、水中で手足をゆっくり動かすだけです。
中脚と後脚は長毛を有し、中脚と後脚で器用に水を掻いて潜水し、水中を遊泳する。(同書p88より引用)
潜水中は腹端から伸びた呼吸管の先端を水面に出して、ときどき息継ぎしています。
これぞまさに忍法「水遁の術」。
呼吸管を根元から曲げることができます。
ゼラチン質の卵塊の下からなかなか浮上できず溺れそうになっているのか?と心配になったものの、ようやくミズカマキリはヤマアカガエル卵塊の上に脱け出しました。
水面で卵塊に乗って静止し、獲物を待ち伏せするのかな?(日光浴?)
岸辺は枯れた草の茎が水中に沈んでいるため、細長い体型で黄土色(枯草色)のミズカマキリがじっと静止すると見事なカモフラージュになっています。
ミズカマキリが再び動き回っても、近くで背泳するマツモムシは無反応でした。
互いに狩り(捕食)の対象ではないようです。
ミズカマキリは前脚の鎌でマツモムシを狩ることはなく、蹴散らすようにして水中を進みます。
水中ではミズカマキリの右前脚の鎌が途中から欠損しているように見えたのですけど、ただ折り畳んでいるだけでした。
少し離れたところにヤマアカガエルの♂成体がいました。
岸の方を頭を向けて水面に浮かび、産卵に来る♀を待ち構えています。
ヤマアカガエルがミズカマキリに跳びついて捕食するかと期待したのですが、繁殖期のヤマアカガエル♂は「食い気より色気」なのでしょう。
日当たりの良い岸辺にヤマアカガエル♀が最近産み付けた個々の卵内では黒い胚が発生しつつあります。
ミズカマキリが岸辺のヤマアカガエル卵塊に執着しているように見えたのはたまたまでしょうか?
個々の卵内で育つ黒い胚または孵化した幼生(オタマジャクシ)を狩って体液を吸汁するつもりなのかもしれません。
ところが、しばらく粘って観察しても、捕食の確証を得られませんでした。
タピオカドリンクのような卵塊を散々吸汁した後で満腹なのかな?
動きのない胚は獲物と認識できないのでしょうか。
実はこの池の岸辺に沿ってヤマアカガエルの卵塊がいくつも産み付けられていて、既に幼生が孵化した卵塊もありました。
ミズカマキリがオタマジャクシを捕食したいのなら、そちらに向かうはずです。
眼は上を向いており、アメンボ類のような水面上の小動物を待ち伏せて捕食する。(同書p88より引用)
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1枚目は水中の潜水シーン |
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2〜4枚目は水面に浮かぶミズカマキリ |
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潜水中に呼吸管で息継ぎ |