2024/11/09

雪山でニホンカモシカの蹄跡を辿ると溜め糞場を新たに発見!

 

2023年12月下旬・午後13:10頃・くもり 

初冬の雪山でニホンカモシカCapricornis crispus)のアニマル・トラッキングをしたら、嬉しい収穫がありました。 
スノーシューを履いて雪面に残る蹄跡を辿って行くと、里山の通い慣れた山道から外れて横の山林に入って行きました。 

しばらく進むと、スギの木の下に溜め糞場sr2を新たに発見しました。 
周囲はスギ、アカマツ、カラマツなどの混交林で、倒木もゴロゴロあります。 
糞粒の山(糞塊)が辺りに複数あるということは、カモシカが何回にも分けて(時間を空けて)排泄したということを意味しています。
糞粒にうっすらと雪が積もっているのは、少し古い糞塊と分かります。 
雪に埋もれた糞塊の上を踏み荒らして歩いた蹄跡もあるので、(複数個体?の)カモシカが何度も溜め糞場sr2を通っているようです。 

雪を溶かした小便の跡も残されていました。 
カモシカが排尿した跡の雪は茶色に染まっていました。 
小便の跡が見つかるのは積雪期ならではの収穫です。

残念ながら、今回見つけたニホンカモシカの溜め糞場sr2にフユユスリカは群がっていませんでした。 
関連記事(1年前の撮影)▶  

以前から別の地点で見つけていたカモシカの溜め糞場sr1は最近あまり使われなくなっているようなので、トレイルカメラでこっちを定点監視した方がよいかもしれません。

実はここからが本題です。 
溜め糞場sr2から更にカモシカの足跡を辿って行くと…。 







根曲がり巣穴の横でスギ倒木の根っこが気になる初冬のヤマガラ【冬の野鳥:トレイルカメラ】

 

2023年12月中旬

シーン0:12/11・午後14:11・くもり(@0:00〜) 
明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
平地のスギ防風林にある「根曲がり巣穴」をトレイルカメラで見張っています。 
後にここでニホンイタチが越冬していることが分かりました。 
杉の木が強風で奥に向かって根こそぎ倒れ、その巻き添えを食った落葉性広葉樹の幼木が毎年の積雪の重みで捻じくれた「根曲がり」の樹形に育ちました。 
手前に見える赤い実は、ツルウメモドキという蔓植物です。 
根雪が積もる前に登場したヤマガラSittiparus varius)の様子をまとめました。 


シーン1:12/12・午後12:00(@0:03〜) 
正午に1羽で来たヤマガラが、巣口を覗き込んでいました。 
一度は左に飛び去ったのに、しばらくすると右から戻ってきました。 
もしかすると、別個体のヤマガラとペアで行動しているのかもしれません。 


シーン2:12/14・午前10:49(@0:24〜) 
風倒したスギの根にまだ土がびっしり付いているのですが、そこに2羽のヤマガラが来て細根の奥を啄んだりしています。 


シーン3:12/16・午後13:36(@0:44〜) 
再びヤマガラが来ていて、スギ倒木の根っこを物色していました。 


シーン4:12/16・午後13:38(@0:53〜) 
1分30秒後にヤマガラが右から戻ってきました。 
スギ風倒木の根っこや根曲がり巣穴の巣口を探索してから右へ飛び去りました。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】
スギ倒木の根っこにヤマガラが繰り返し飛来して、餌を探しているようなのが気になりました。
露出した根っこの隙間に隠れている虫を捕食しに来るのか、それともまさか土を食べる行動(ミネラル摂取?)なのでしょうか? 
ヤマガラは貯食する鳥ですから、もしかすると冬に備えて木の実を隠しているのかもしれません。
いずれにせよ、決定的な証拠映像は撮れていません。

根曲がり巣穴の手前にあるツルウメモドキの赤い熟果を野鳥が食べるかと期待したのですが、ヤマガラは見向きもしませんでした。

根曲がり巣穴にイタチが住んでいるとしたら、巣口の近くに野鳥が来ていたら狩られるのではないかと心配になります。
しかし野鳥は別に警戒している様子はありません。


つづく→

2024/11/08

初冬の雪山を夜にピョンピョン跳ね回る冬毛のニホンノウサギ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年12月中旬〜下旬 

里山の渓谷沿いに植林されたスギ植林地でニホンカモシカの溜め糞場sr1を自動センサーカメラで見張っていると、冬毛のニホンノウサギLepus brachyurus angustidens)が頻繁に現れます。

シーン1:12/20・午前0:36(@0:00〜) 
大雪が積もった後の深夜にノウサギが斜面を手前に走ってきました。 


シーン2:12/21・午前5:16(@0:11〜) 
雪が降りしきる夜明け前に、画面左に立つスギの背後を通って左へ走り去りました。 


シーン3:12/23・午前1:27(@0:16〜) 
雪が降る深夜に、スギの木の下で立ち上がっていたノウサギが雪面に座ってじっとしています。 
ノウサギが奥を向いたり瞬きしたりすると、白く光る目が写らなります。 
辺りをキョロキョロと見回すだけで、移動しませんでした。 
動きが乏しいので、5倍速の早回し映像でお届けします。 


シーン4:12/23・午後19:05(@0:38〜) 
同じ日の晩になっても雪が降り続いています。 
ノウサギが雪山の斜面をトラバースするように、ぴょんぴょん跳んで右へ(渓谷の方へ)向かいました。 


シーン5:12/23・午後21:10(@0:52〜) 
約2時間後、ニホンノウサギが画面の左端(スギの木の左)に佇んでいました。 
しばらくすると左へ消えました。 


シーン6:12/24・午後18:10(@1:01〜) 
翌日の晩には、雪がようやく降り止んでいました。 
ノウサギが雪面に座って監視カメラの方を見ています。 
警戒を解くと、ゆっくり右へ移動し、渓谷へ向かいました。 


シーン7:12/25・午前5:00(@1:20〜) 
夜明け前にスギの右横に居たノウサギが後足で立ち上がり、太いフジ蔓の匂いを嗅いでからスギの背後を通って左へ移動しました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


白梅の花でニホンミツバチ♀が採餌

 

2023年3月下旬・午後13:30頃・晴れ 

民家の庭木として植栽されたウメ(白梅)にニホンミツバチApis cerana japonica)のワーカー♀が訪花していました。 
意外にもこの組み合わせは初見です。 
吸蜜中に身繕いもしています。 
後脚の花粉籠が空荷の個体と少量の白い花粉団子を付けた個体がいました。 

実はセイヨウミツバチもニホンミツバチも両方来ていたのですが、訪花ワーカーの個体数はセイヨウ>ニホンでした。 


2024/11/07

根雪の積もった休耕地をうろつき越冬用巣穴を物色する雪国のホンドギツネ【トレイルカメラ:暗視映像】

 


2023年12月中旬〜下旬〜2024年1月上旬

シーン0:12/4・午後14:08・晴れ・気温26℃(@0:00〜) 
シーン0:12/11・午後13:30・くもり・気温18℃(@0:03〜) 
明るい昼間に誤作動などでたまたま撮れた現場の状況です。 
休耕地にあるホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の営巣地を自動撮影カメラで見張っています。 
辺り一面に蔓延っていたクズやカナムグラなどの蔓植物がすっかり枯れています。 

タヌキが繁殖した後にニホンアナグマMeles anakuma)が巣穴(の一部)を乗っ取ったらしく、晩秋になると越冬に備えて巣材(断熱材の枯草)を巣穴に搬入しました。 

つまり、この営巣地が今誰のものか、いまいちはっきり分かっていません。 
ホンドギツネVulpes vulpes japonica)の登場シーンをまとめてみました。 
キツネは滅多に現れないので、いつもより長目の撮影期間を一気に紹介します。 


シーン1:12/12・午前10:09・小雨・気温6℃(@0:07〜) 
小雨が降る午前中にキツネが身震いしてから枯野を奥へ向かってジグザグに走り去りました。 
枯れた原野を背景にすると、キツネの毛皮は見事な保護色になっています。 
このキツネは一体どこから来たのでしょう? 
手前の防風林から奥に向かって登場したのに、トレイルカメラがなかなか検知できなかったのでしょうか? 
あるいは、巣穴から外に出てきた直後という可能性もあります。 
後者だとすると、ここでも「同じ穴のむじな」というややこしい問題に取り組まないといけません。 
初心者に分かりやすい単純な問題から出題してくれればよいのに、自然界(フィールド)で観察していると、手加減なしでいきなり難しい応用問題が出題されて困ることがよくあります。 

画面の奥で左右に走る農道の手前にある、大量の籾殻を捨ててある区画でキツネが立ち止まりました。 
野ネズミやモグラなどの獲物を狙っているのかな? 
遠いので、1.5倍に拡大した上でリプレイ(@0:47〜)。 


シーン2:12/19・午前9:55・晴れ・気温9℃(@1:21〜) 
暖冬でしたが、まとまった雪が積もり、一面の銀世界になりました。 
巣穴から右下手前に向かって野生動物が出入りしている足跡(深雪のラッセル跡)が雪面に残っているのに、その行動が監視カメラで撮れていませんでした。 


シーン3:12/22・午前4:26・気温-7℃(@1:25〜) 
雪原にはラッセル済みの獣道がくっきりと残っています。 
未明にキツネが手前の林縁から単独でやって来ました。 
タヌキ?の営巣地の方を見たのに、直行しないで右から迂回して近づきます。 
右奥の巣穴Rに頭を突っ込んで匂いを嗅いだものの、中には侵入しませんでした。 
続いて左隣の巣穴Lへ行こうとしたところで、1分間の録画時間が終わりました。 


シーン4:12/22・午前4:28(@2:19〜) 
18秒後にトレイルカメラが再起動すると、キツネは巣口Rに戻っていました。 
身震いしてから雪原を奥に向かって元気に走り出しました。 
ラッセルするほどの深雪ではないようで、新雪を蹴立てて走り去ります。 
暗視映像の赤外線が奥にある農道まで届いていません。 


シーン5:12/24・午前5:24・みぞれ・気温-3℃(@2:31〜) 
2日後の未明にはみぞれが降っていました。 


シーン6:12/24・午前9:48・晴れ・気温10℃(@2:36〜) 
4時間半後の朝には晴れていました。 
巣穴から雪原をあちこちに伸びる獣道が深くなっています。 


シーン7:1/3・午前4:17・気温-2℃(@2:40〜) 
新年の未明に、キツネらしき野生動物が雪面を左から右に横切りました。 
夜霧がうっすらと発生しているようです。 
画面奥の暗闇をひときわ明るい光点が点滅しながら左に移動しているのは、車のヘッドライトです。 
スギ防風林の奥の車道を走る車のヘッドライトが、スギ林の隙間を通してチラチラと見えているのです。 

監視カメラの電池がかなり消耗しているのか、赤外線の光量が弱くて画面全体が暗いです。 


【考察】 
今のところ、ホンドギツネはいつも単独行動しています。
ホンドギツネは冬眠しません。

雪国の厳冬期になると、野生動物が活動してもトレイルカメラがうまく作動しないことが多くなります。 
トレイルカメラを駆動する乾電池の電圧が低温で低下して、性能が発揮できないのでしょうか? 
電源をソーラーパネル付きのバッテリーに切り替えると、電圧低下問題が改善されるのかな?
もしかすると、雪国に適応した哺乳類が身にまとう毛皮の断熱性能が良すぎて、トレイルカメラの熱源センサーが検知できないのかもしれない、と思うようになりました。 
どうしても撮り漏らしが多くなりますが、断片的な記録でも撮れた映像をありがたく味わうことにします。 



野生ニホンザル♀の同性愛行動(雌同士の抱擁、マウンティング、正常位の擬似交尾など)

 

2023年12月中旬・午前11:40:頃・晴れ 

里山の麓に流れる沢を治水する砂防ダムのコンクリート堰堤で2頭のニホンザルMacaca fuscata fuscata)が毛繕いしていました。 
このペアは体格に少し差があり、大柄な個体が小柄な個体に対して甲斐甲斐しく対他毛繕いをしています。 
大柄な個体は、胸にピンク色の細長い乳首があることから、経産♀(オトナメス)とすぐに分かりました。 
小柄な個体は対他毛繕いを一方的に受けながらも自分でも蚤取りをしていて、お返しの毛繕い(相互毛繕い)を全くしませんでした。 
初めは小柄な個体の性別を見分けられなかったものの、胸に乳首が見えないことは確かです。(この時点では若い♂または子育て未経験の若い♀だと思っていました。)

谷(渓流)を挟んで対岸に座って居るニホンザルと私は、充分に距離が離れているのですが、私に対して少し警戒しているようです。 
周囲をキョロキョロと見回して、物音がするとビクッと怯えました。 
群れの仲間が近くに居るのかもしれませんが、私には姿が見えませんでした。 

砂防堰堤に座ったまま至近距離から互いにちょっと見つめ合ってから、正面から抱き合いました(ハグ)。 
すぐにまた対他毛繕いを続けます。 
抱擁したのは心理的な不安を和らげるための行動なのか?と微笑ましく思いつつ撮影を続けると、驚きの展開が待っていました。 

毛繕いを受けていた小柄な個体が立ち去ろうとすると、大柄な年長♀が相手を抱きかかえるように引き留めて、2頭はハグしたまま後足で立ち上がりました。(@1:00〜) 
抱き合ったまま年長♀が後ろに倒れ込んだ結果、正常位の交尾行動?が始まりました。 
年長♀が後ろに倒れ込む際に、左手で近くの枝を掴んでいました。 
このとき初めて小柄な個体の股間がしっかり見えたのですが、外性器から♀だと分かって驚愕しました(睾丸も陰茎もない)。 
もしも若い個体の性別判定が間違っていたら以下の解釈は全て台無しなので、ご指摘願います。
小柄な若い♂が年増の♀を押し倒して正常位の交尾を始めたのではなくて、明らかに年長♀が若い♀を誘い込んでいました。 
♀同士の同性愛行動なのでしょうか? 
正常位で下になった年長♀が腰をスラストして下腹部の外性器を若い♀の体に擦り付けています。 
ここまでの行動から、年長♀の方が性的にかなり積極的で、明らかに発情しているようです。 
異性間の交尾なら正常位の上になった♂が腰をスラストさせるはずですが、上になった若い♀は棒立ち(四足)のまま腰を動かしませんでした。 

抱擁を解くと若い♀は少し離れ、砂防堰堤に身を伏せました。 
このとき若い個体の股間に見えたピンク色の陰部は、やはり♂ではなく♀の外性器でした。 
年長♀は若い♀に対して再び対他毛繕いをしてやります。 

辺りをしばらく見回してから、年長♀が若い♀の背後からマウンティングしました。(@2:13〜) 
両足で相手の腰の上に乗った年長♀は、左手で近くの木の幹を掴んでバランスを取りながら、下腹部の外性器を若い♀に擦り付けました。 
マウンティングされた若い♀は体をねじって相手の顔を見上げ、右手で相手を掴んで引き寄せています。 
この行動は、異性間交尾でマウントされた♀がやる行動と同じでした。 

若い♀の腰に乗った年増♀が地面に跳び下りると、少し離れて座って休みます。 
日当たりの良いコンクリート堰堤は暖かそうです。 
小柄な若い♀個体は、痒い体を掻いたり自分で毛繕いしたりしています。 
年長♀は、対岸で撮影している私を気にしてチラチラと見ています。 
一方、若い♀は周囲をそれほど警戒しません。 

短い休憩を挟んだだけで、すぐにまた年長♀が立ち上がると若い♀の背後に回り込み、マウンティングしました。(@2:50〜) 
年長♀が近づくと、座っていた若い♀は立ち上がり、四足で迎え入れました。 
これが交尾を促す積極的なプレゼンティングなのかどうか、観察経験の浅い私には判断できません。 
少なくとも、マウントされることを嫌がっていないのは確かです。 
今回もマウントされながら若い♀は振り返って相手を仰ぎ見ながら片手で触れました。 
若い♀が前に歩きながらのマウンティングになってしまい、バランスが不安定ですぐに離れました。 

少し離れて座ると、各々が毛繕いをしています。 
耳を澄ますと周囲からニホンザルの鳴き声がかすかに聞こえます。 
近くで遊動・採食している群れの仲間が鳴いている声なのか、それとも被写体の♀同士が鳴き交わしているのか、遠くて分かりませんでした。 

これで観察を打ち切りましたが、ニホンザル♀のペアが同性愛の行動を繰り返しながら少しずつ奥へ奥へと移動しているのは、私を警戒して物陰に隠れようとしているのかもしれません。 
群れの仲間に邪魔されないように、群れから離れて安全な砂防ダムの上で同性愛行動を始めたようです。 
ちなみにニホンザルでは異性間の交尾行動でも、繁殖期に仲良くなった♀♂ペアはライバルに邪魔されないように群れから離れて逢引することが多いです。

今回のペアが役割を入れ替えて、若いニホンザル♀が年長♀に対して逆にマウンティングしたり対他毛繕いしたりすることは一度もありませんでした。
一連の行動を見ると、群れ内での順位を決めるための優劣行動として年長♀が若い♀に対してマウンティングしただけとはとても思えません。

ボノボ(別名ピグミーチンパンジー)というアフリカの類人猿は、異性愛だけでなく同性愛も大っぴらに行う猿、正常位で性行動をする猿ということで有名で、テレビの動物番組で何度も紹介されています。 
個体間で緊張が高まると擬似的な交尾行動(マウンティング)、オス同士で尻をつけあう(尻つけ)、メス同士で性皮をこすりつけあう(ホカホカ)などの行動により緊張をほぐす[5][6]。(中略)体位については、人間だけが行うと考えられていた正常位での性行動を行うことが発見されている。 (wikipediaより引用)
ボノボの♀同士がやる有名なホカホカ行動を今回ニホンザルで初めて観察できて、びっくりしました。
ボノボは喧嘩・対立した当事者間の緊張をほぐすために儀式的な同性愛行動をするそうです。
今回私が観察したニホンザル♀の事例ではその解釈は当てはまらず、年長♀の性的衝動から始まった性行動だと思います。
撮影時期はニホンザルの交尾期(発情期)ですし、撮影直前にこの2頭のニホンザル♀が喧嘩をしていたようには見えません。
年長♀は乳首が長いことから、過去に出産・育児をして授乳経験があると考えられます。
したがって、この年長♀個体は異性♂と交尾した経験があり両性愛者です。 

Google Scholarで文献検索して、ニホンザルの♀同士の同性愛行動について調べてみました。
全文PDFが無料で閲覧できる論文をざっと斜め読みしただけでも勉強になりました。

中川尚史, 中道正之, and 山田一憲. "ニホンザルにおける稀にしか見られない行動に関するアンケート調査結果報告." 霊長類研究 27.2 (2011): 111-125.
メスのメスに対するマウンティングに代表されるメス間の同性愛行動にも個体群間変異が知られている。Vasey & Jiskoot (2010) は,メスの同性愛行動が嵐山,箕面,地獄谷の3個体群で知られ,これらはいずれもミトコンドリア DNA の型で言えば東日本タイプのうちの同じサブタイプ(A1)に属することから,遺伝的なバックグラウンドがある可能性を指摘している。しかし,メスのメスに対するマウンティングが,西日本タイプに属する屋久島(Kawamoto et al., 2007)で比較的高い観察頻度で認められたことは,この可能性を否定するものである。
Vasey, Paul L., and Hester Jiskoot. "The biogeography and evolution of female homosexual behavior in Japanese macaques." Archives of Sexual Behavior 39 (2010): 1439-1441. 
カナダのレスブリッジ大学のVasey氏がこの分野における第一人者なのか、ニホンザルの同性愛行動に関する論文を何本も精力的に発表しています。

今回観察したニホンザル♀のペアは母と娘または姉妹なのでしょうか?
群れを長期間追いかけて個体識別で家系調査をするかDNA鑑定をしないと、血縁関係は分かりません。
驚くべきことに、ニホンザル♀の同性愛行動でもインセスト・タブー が守られている(近親者を忌避する)という研究結果が報告されていました。
Chapais B, Mignault C. Homosexual incest avoidance among females in captive Japanese macaques. Am J Primatol. 1991;23(3):171-183. doi: 10.1002/ajp.1350230304. PMID: 31952407.
つまり、今回のニホンザル♀2頭は母娘や姉妹ではなく、同じ群れで年齢差があって血縁関係のない仲良しから同性愛行動に発展したと考えられます。

ヒトの同性愛に対する価値判断を伴わない純粋な動物行動学の文脈であっても、「同性愛」という手垢のついた用語を軽々しく使うことに強い抵抗を示す人々がいます。
安易な擬人化をなるべく避けるためにも、「同性間性行動」と言い換えるべきかもしれません。
交尾の体位を説明する「正常位」という用語も人間中心主義的で、ある種の価値判断が含まれているように思うのですが、中立的な用語に言い換えられるのでしょうか?
「マウントを取る(マウンティング)」というサル学の用語も最近では日本人の日常会話によく登場する比喩表現になり、すっかり手垢がついてしまいました。


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2024/11/06

ニホンアナグマの越冬用営巣地で新雪を舐める初冬のホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年12月下旬・午後17:00頃・気温-3℃(日の入り時刻は午後16:26) 

とっぷり日が暮れて真っ暗になった晩に、♀♂ペアと思われる2頭のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)がニホンアナグマMeles anakuma)の越冬用営巣地(セット)に現れました。 
大雪が積もった落葉二次林の林床を2頭が前後して右奥へ向かっています。 

後続個体が居る場所がちょうどアナグマの巣口Rの辺りなので、解釈が悩ましいです。 
左から深雪をかき分けながらやって来たタヌキのペアがセットを横断している途中でトレイルカメラが遅ればせながら起動したのか、それとも巣穴Rから外に出てきた直後のようにも見えます。 
後者だとすると、アナグマとタヌキが同じ巣穴で越冬していることになります。 (同じ穴のむじな

後続個体が巣口Rに座って待っている間に、舌でペロペロと雪面を舐めていました。 
新雪をむしゃむしゃと食べるのではなく、ぺろぺろと舐めています。 
冬になると、雪国の野生動物は喉の乾きを癒やす飲み水には困らなくなります。 
タヌキの雪舐め行動がよく見えるように、まずは1.5倍に拡大した映像をご覧ください。 
その後にオリジナルの映像をリプレイ(@1:00〜)。 




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ヤマハッカの花蜜を吸うウラナミシジミ♂

 

2023年9月下旬・午後12:00頃・くもり後晴れ 

山腹の草地に咲いたヤマハッカの群落でウラナミシジミ♂(Lampides boeticus)が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。 
初めは翅をしっかり閉じて吸蜜していました。 
閉じた後翅を互いに擦り合わせて、尾状突起を触角のように動かして自己擬態しています。 
鳥などの捕食者に対して「偽の頭部」を体の反対側にも見せることで、眼状紋をつつかれても本当の急所に致命傷を負う確率を半分に減らす自衛の作戦なのです。

少し飛んで次の花穂に移動すると、半開きにしてくれた翅の隙間から翅表が見えて、♂と判明しました。

2024/11/05

雪山でスギの枝葉に積もった雪を味見するニホンカモシカ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年12月中旬〜下旬 

シーン0:12/14・午後14:08(@0:00〜) 
明るい時間帯にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
スギの木の下(画面の左下)にあるニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr1を自動撮影カメラで見張っています。 
場所は里山にあるスギ植林地の上端部で、斜面を下から上に見上げるアングルなので、奥には落葉性広葉樹も見えます。 
右には渓谷(沢)が流れています。 


シーン1:12/17・午後13:38(@0:04〜) 
暖冬でしたが、この日から雪が本格的に降り始めました。 
スギ林床も薄っすらと雪化粧しました。 


シーン2:12/19・午後12:00(@0:08〜) 
新雪が積もった林床を手前から歩いて来たカモシカが、溜め糞場sr1を素通りして右上奥の画角外に消えました。 
谷の方へ向かったのかと思いきや、しばらくすると右奥から画角内に戻って来ました。 
渡河地点を探して谷の左岸を上流へ向かって移動しているのかもしれません。 

スギ林に大雪が降っても常緑の枝葉にかなり積もるので、林床(地面)の積雪量は大したことありません。 
スギ樹上の冠雪は少しずつ落雪するのです。 
雪山でもスギ林の中は歩きやすいのですが、外に出ると一気に深雪となり、カモシカも一歩ずつ苦労して深雪をかき分けながら進まないといけないようです。(ラッセル) 


シーン3:12/21・午後16:39(@0:29〜)日の入り時刻は午後16:26。 
日没直後なのに、積雪があると雪明りでまだ明るいです。 
右の谷から来たカモシカが立ち止まり、目の前に垂れ下がったスギの枝葉に積もった雪を食べていました。 
直後にもぐもぐ咀嚼しましたが、まさかスギの葉(常緑)を採食したのでしょうか?
よほど飢えていないとスギの葉なんか食べないはずです。 

その後は溜め糞場sr1を素通りして、監視カメラに向かって一直線に歩いて来ました。 
角が細いので、若い個体のようです。 
死角に消えてからゴシゴシと物音がしたので、カメラを固定してあるスギの幹に眼下腺を擦り付けてマーキングしたかもしれません。 


シーン4:12/24・午後17:59(@0:59〜) 
3日後の真っ暗な晩に、カモシカが深雪をラッセルしながら雪山を右から左へ横切ると、スギの背後を通って左へ立ち去りました。 


シーン5:12/24・午後18:36(@1:16〜) 
約35分後に、同一個体と思われるカモシカが左から引き返してきたようです。 
スギの背後を通って右へ(谷へ)向かっています。 


シーン6:12/24・午後18:39(@1:31〜) 
4分後にカモシカが雪山の斜面を下ってきました。 
トレイルカメラに気づいたようで、ちょっとフリーズしてから、左下へ歩き去りました。 
溜め糞場sr1で排便するつもりだったのに、警戒して止めたのかもしれません。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
せっかく溜め糞場sr1にトレイルカメラを設置したのに、この辺りを縄張りとしてうろつくカモシカが排便してくれなくなりました。 
どこか別な場所に新たな溜め糞場を設けたのでしょうか? 
この動画に何頭のカモシカが登場したのか、しっかり個体識別できていません。 




夕方に塒を目指して飛び去るカラスの大群(冬の野鳥)

 

2023年12月中旬・午後16:15頃・くもり(日の入り時刻は午後16:24) 

日没直前の夕方に、市街地の上空を夥しい数のカラスが鳴きながら一斉に飛んでいました。 
集団塒(または就塒前集合場所)を目指して飛んでいるのでしょう。 
遠くてカラスの種類を見分けられませんでした。 
かすかに聞こえる鳴き声は、ハシブトガラスCorvus macrorhynchos)っぽいです。 
2種類のカラスの混群かもしれません。
カラスの大群を追いかけて集団ねぐらの場所を突き止めたかったのですが、この日は用事があって無理でした。 

これほどの大群を見たのは久しぶりで、壮観でした。 
最近ではカラスのねぐらとなる林が次々に伐採されたり、カラスが追い払われたりして、群れの規模がどんどん小さくなっている気がしています。 
群れで塒入りしたカラスの鳴き声がうるさかったり、糞害に悩まされたりして、近隣住民から苦情が出るのでしょう。 


【アフィリエイト】 





2024/11/04

二次林の深雪をかき分けたり潜ったりして進む雪国のニホンイタチ【トレイルカメラ】

 



2023年12月中旬〜下旬 

シーン0:12/11・午後12:55・くもり・気温21℃(@0:00〜) 
シーン0:12/15・午前7:22・くもり・気温1℃(@0:03〜) 
平地の落葉した二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が越冬する営巣地(セット)を自動センサーカメラで監視しています。 

殺風景な林床に点在する緑の低木群落は、常緑のヒメアオキと冬緑性のナニワズ(別名エゾナニワズ、エゾナツボウズ)です。 


シーン1:12/17・午前10:49・気温0℃(@0:07〜) 
この日から雪が本格的に降り始めました。 
暖冬でしたが、ようやく根雪になりそうです。 


シーン2:12/19・午前9:28・くもり・気温0℃(@0:12〜) 
かなり大雪が積もった後で、アナグマ営巣地(セット)の景色が一変しました。 
深雪をかき分けて、茶色い毛皮のニホンイタチMustela itatsi)が活動しています。 
アナグマの巣口Lまで来ると後足で立ち上がり、右を見ています。 
方向転換すると、ラッセル済みの細い獣道を通って左へ駆け出しました。 

細いマルバゴマギの落葉灌木に雪が積もると、その重みで枝が折れ曲がり、営巣地の雪原に覆いかぶさっています。 
これが撮影の邪魔になっているのですけど、遮蔽物のおかげで野生動物は身を隠しながら安心して巣穴に出入りできるのでしょう。 


シーン3:12/19・午前11:46・くもり・気温2℃(@0:49〜) 
約2時間20分後にイタチが再登場。 
ラッセル済みの細い獣道を通って左から来たニホンイタチが、奥に向かいました。 
立ち止まると、後足で立ち上がって姿勢を高くすると、辺りの様子を伺っています。 
新雪をラッセルしながら進むかと思いきや、深雪にすっぽり潜り込んだまま、なかなか出てきません。 
しばらくすると、画面左上隅の雪面からイタチがひょっこり顔を出しました。 
辺りをキョロキョロ見回してから、再び雪の中に潜りました。 
深い新雪の中にトンネルを掘って移動しているようです。 

昼間に気温が上がると、マルバゴマギ落葉灌木の冠雪が少しずつ溶け落ち、折れ曲がっていた灌木が弾性で少しずつ戻ります。 


シーン4:12/22・午前7:03・くもり気温-8℃(最低気温を更新)(@1:35〜) 
3日後の朝、また新雪が積もった後で、雪は降り止んでいました。 
イタチが雪原をラッセルしながら左へ向かいます。 
細長い体で新雪の上を泳ぐように、しなやかな動きで移動していました。 
途中からはラッセル済みの獣道を利用したようです。 


【考察】 
真冬(積雪期)のイタチは昼行性になるのか、夜間には全く撮れていませんでした。 

この巣穴Lで越冬しているのは、アナグマではなくて、やはりイタチなのかもしれません。 
「同じ穴のむじな」だとすると、アナグマは巣内で寝ているのかな? 
雪で埋もれたアナグマの営巣地(セット)をイタチが勝手にうろついているだけなのか、それとも巣穴Lで越冬しているイタチが巣穴Lを拠点として活動しているのか、今のところ私には判断がつきません。 
巣口Lが積雪の下に埋もれてしまい、野生動物(アナグマまたはイタチ)が巣穴Lに出入りするシーンが撮れなくなったからです。 
トレイルカメラの設置アングルを変更すべきかもしれません。

隣接するスギ防風林にある根曲がり巣穴でもイタチが越冬しているようです。
どちらが越冬用巣穴として本命なのでしょうか?
ここアナグマ営巣地で越冬するイタチと別個体なのか、それとも同一個体が2つの巣穴を行き来しているのか、などと考え出すと問題がややこしくなるばかりです。



ヤツデの花蜜を舐めて飛び回るオオハナアブ♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年11月中旬・午後13:45頃・晴れ 

民家の裏庭に咲いたヤツデオオハナアブ♀(Phytomia zonata)が訪花していました。 
ヤツデの散形花序を歩き回りながら、口吻を伸縮させて花蜜や花粉を舐めています。 
左右の複眼が離れていることから、♀と分かります。 
もっと多数が集まっていたのですが、撮影できたのは2匹の♀です。 

今回のヤツデは両性花だったのに、オオハナアブ♀の体にヤツデの花粉が全く付着していませんでした。 
訪花昆虫が雄しべの葯から花粉を全て取り尽くした(食べ尽くした)後だったのでしょう。 

関連記事(6年前の撮影)▶ ヤツデの雄花で吸蜜するオオハナアブ♀


ヤツデの花序に離着陸する瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:06〜)
訪花中に別個体のオオハナアブが飛来して目の前でホバリング(停空飛翔)すると、平気なときもあれば、ラストシーンのように慌てて花から滑落するように逃げる(飛び去る)ときもあるのが興味深く思いました。
蜜源植物をめぐる占有行動があって体格差で勝負が決まる、という単純な話ではなさそうです。

 

2024/11/03

トレイルカメラに気づいて大雪の積もった獣道を引き返す初冬のホンドギツネ【暗視映像】

 

2023年12月中旬・午後20:35頃

平地のスギ防風林で、風倒したスギの根元に掘られた巣穴でニホンイタチMustela itatsi)が越冬しているようなので、トレイルカメラで見張っています。 
大雪が降り止んだ晩に、ホンドギツネVulpes vulpes japonica)がやって来ました。 
この地点でキツネは初登場になります。

奥から手前に向かって来ようとしたのに、見慣れないトレイルカメラの存在に気づいたらしく、露骨に警戒しています。 
すぐにまた左に戻って姿を消した(獣道を引き返した)ので、ホンドギツネは全身像を現してくれませんでした。 

残念ながら、今回のキツネはイタチの越冬用巣穴を調べる間もなく逃げてしまいました。 
タラレバの話になりますが、もしも怪しい監視カメラに邪魔されなかったして、キツネがイタチの巣を襲って捕食する可能性はあり得るのでしょうか? 
野ネズミもイタチの巣穴に居候している(分岐したトンネルで棲み分けている?)可能性があるので、キツネは獲物として手強いイタチよりも野ネズミを狙いそうです。 



ニホンカモシカの溜め糞場で見つけた緑色の糞粒と黒色の糞粒

 



2023年12月中旬・午後13:55頃・くもり 

早春までトレイルカメラで定点観察していたニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr1に久しぶりに来てみました。
里山の山腹に植林されたスギ林の上端部の林床で、すぐ横に渓谷(深くえぐれた沢)があります。
シシガシラという常緑のシダ植物の間に糞塊が2つ見つかりました。 

艶のある深緑色の新鮮な糞粒は、ユキツバキエゾユズリハなど何か常緑灌木の葉をカモシカが食べた後に排泄した糞だと思われます。 
糞分析の専門家(達人)は顕微鏡で検鏡して、未消化の葉の断片から食べた植物の種類を見分けることができるのだそうです。
最近では糞の試料からDNAバーコーディングを分析することで、食べた植物を一気に調べることが(理論的には)できるようになりました。

その隣に残されていた、黒い糞粒の山(糞塊)は少し古い(排便後に日数が経過している)のでしょうか?
採寸代わりに、熊よけスプレー(長さ20cm)を溜め糞の横に並べて置いて写し込みました。 

気温が下がった初冬の時期には、昆虫全般の活動が低下します。
(ほとんどの昆虫が休眠越冬に入るります。)
今回もニホンカモシカの溜め糞sr1に糞虫やハエ類などは1匹も来ていませんでした。

以前は(早春の時期には)スギの木の根元(右下)に、茶色に変色したかなり古い糞塊があったのですが、それはもう分解されて土に還ったようで、探しても見つかりませんでした。

他のプロジェクトで忙しい夏の間は観察できず、空白期間が生じました。
トレイルカメラを再び設置して、溜め糞場sr1に通ってくるカモシカを冬の初め(根雪が積もる前)から監視することにしました。
ニホンカモシカは基本的に群れを作らずに単独で暮らしています。
タヌキのように複数個体のカモシカが溜め糞場srを共有しているのか、それとも同一個体のカモシカが繰り返し使っているのか、という点にとりわけ興味があります。 



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