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2025/06/14

ニホンカモシカの溜め糞で糞虫が見つからず分解も遅いのはなぜか?【フィールドサイン】

 



2024年5月下旬

シーン1:5月下旬・午後14:10頃・晴れ(@0:00〜)
里山でスギと雑木の混交林に残されたニホンカモシカCapricornis crispusが残した溜め糞場sr2の定点観察にやって来ました。
ここにはカモシカが最近もよく排便に通っていることが、トレイルカメラによる監視で分かっています。

この溜め糞場sr2でハネカクシの仲間を見かけたのですが、撮り損ねてしまいました。
新鮮な糞粒は、まだ黒っぽく艶があります。
小枝を拾って溜め糞をほじくり返してみても、糞便臭は全く感じず、糞虫は1匹も見つかりません。
糞虫屋さんにしてみれば、こんな雑な探し方では駄目なのかもしれません。
ふるいにかけるなどして、もっと徹底的に探すべきですかね?
ここに生えていたキノコ(クズヒトヨタケ)は「一夜茸」の名前の通り、消失していました
ムネアカオオアリCamponotus obscuripes)のワーカー♀がうろついているだけでした。
古い糞粒の表面が点々と茶色い粉を吹いたようになっているのは、カビが生えてきたのでしょうか。



シーン2:5月下旬・午後13:00頃・晴れ(@1:39〜)
その前の週に、同じ里山で渓谷沿いのスギ植林地にニホンカモシカCapricornis crispus)が残した溜め糞場sr1の定点観察にやって来ました。
スギの林床に下草が伸びてきました。 
新鮮な糞粒はなくて、古い糞だけでした。
最近はカモシカが排便しに来ていないようです。

拾った小枝で古い糞粒をほじくり返しても、糞虫は全く来ていませんでした。 
糞便臭を全く感じません。 
糞粒の表面に粉を吹いているのは、カビが生えているのですかね?
キノコの子実体も生えていません。

関連記事(同時期に別の溜め糞場sr2で撮影)▶ ニホンカモシカの溜め糞場から生えてきたクズヒトヨタケ?【キノコ】




つづく→ 


【考察】 
私が定点観察しているカモシカの糞粒は、古くなっても形が崩れず、原型を留めたままです。 
カモシカの溜め糞にはキノコもあまり生えず糞虫にも人気がないのは、私のフィールドだけですか?
ある地域である生物を探しても見つからない、 というネガティブデータは、論文や報告書にもなりにくいですし、YouTuberも動画にしたがりません。
(日本各地にあるカモシカの溜め糞場でも同じだとすれば、話が変わってきます。)

糞虫に関する本を何冊か読んだことがあるのですけど、
どんな動物にもその糞を分解する糞虫がいるという話でした。
そのバランスが崩れると、例えば「有袋類しか生息していなかったオーストラリアで家畜を導入して外来種を放牧した結果、その糞が分解されずに地上に残り続けて大問題(糞害)を生じたものの、糞虫を海外から導入(放虫)したら解決した」という逸話が有名です。
その定説からすれば、カモシカの溜め糞がいつまで経っても分解されず、糞虫も来ていないのは異常事態だと感じてしまいます。
不思議なことに、同じ里山に生息する(同所性の)タヌキやアナグマ、ニホンザル、ツキノワグマなどの糞には糞虫が来ています。
したがって、当地ではカモシカの糞粒にだけ糞虫が寄り付かないと結論づけるしかありません。
それとも定説に問題(間違い)があるのでしょうか?
自分で調べたカモシカ溜め糞のサンプル数がまだ少ないので、一般論として語れる傾向なのかどうかもまだ分かりません。

私は他の地域のフィールドについては知らないので、私のフィールドだけが不健全な生態系なのかと心配でした。
ニホンカモシカはマタギ(猟師)による狩猟圧や開発のため、一時期は絶滅に瀕していましたが、天然記念物に指定されて保護された結果、個体数が回復しました。
そのようなボトルネックを経た結果、カモシカの糞を好んで利用するスペシャリストの糞虫が当地では知らぬ間に絶滅してしまったのかもしれません。
 
以上のような仮説をいくつか立ててChatGPTとブレインストーミングを行い、その結果をレポートにまとめてもらいました。
一部の細かい文言だけ推敲してあります。
結論部分は完全にChatGPTが生成した作文なのですが、あまりにも大言壮語で笑ってしまいます。

 


ニホンカモシカの溜め糞場における糞虫不在現象に関する考察

1. 背景と発端

筆者が調査を行っている山形県の低山・里山域において、ニホンカモシカ(Capricornis crispus)の溜め糞場では、排泄された糞粒が長期間分解されずに残存している現象が確認された。この糞は形状が崩れることなく保持され、キノコ類等の菌類も発生しにくい。加えて、フン虫(糞虫)類の活動痕跡が見られず、掘り起こし・埋設・球状運搬などの典型的なフン虫行動が全く確認されていない。

この状況は「野生哺乳類の排泄物には必ずそれを分解利用するフン虫類が存在する」という従来の昆虫生態学的通説と矛盾する可能性がある。筆者はこの疑問を基点に、以下のような仮説と解釈を考察した。

2. 既知情報と比較

2-1. 家畜ヤギ・野生シカの糞とフン虫

  • ヤギの団粒糞(ペレット型)は水分量が少なく、液状糞を好む大型コガネムシ(タマオシコガネ類やオオセンチコガネ)の誘引力が低いことが知られている。

  • 奈良公園のシカ糞ではセンチコガネ類が活動するが、同じペレット型でも密度・利用頻度の高さが寄与していると推定される。

  • カモシカは糞場への再訪頻度・個体密度ともにシカより低く、誘引力・検出確率がさらに下がる可能性。

2-2. ノウサギの糞

  • ノウサギ糞もペレット型で、乾燥後は容易に崩壊・土壌化するため、糞虫による積極的な利用は報告例が少ない。

2-3. 捕食性動物(テン、キツネ等)の糞

  • 肉食獣の糞は乾燥しやすく、植物食獣糞ほど糞虫の利用例は少ないが、特定の腐食性昆虫(ハエ類、シデムシ類)が利用する場合あり。

3. 仮説

仮説1:「カモシカ糞には防虫・抗菌成分が含まれる」

  • カモシカの食餌植物由来の二次代謝物(苦味成分、精油成分など)が糞中に残り、フン虫を忌避させている可能性。

仮説2:「フン虫不在型糞リサイクル系の存在」

  • 山地林内ではフン虫ギルド自体が貧弱であり、主に微生物・土壌動物(ダニ、トビムシ等)や物理風化で分解が進む「フン虫不在型系」が成立している可能性。

仮説3:「ボトルネック効果によるスペシャリスト絶滅」

  • 過去の狩猟圧でカモシカ個体群が激減した際、カモシカの糞に依存していたスペシャリストのフン虫類が絶滅した可能性。

仮説4:「カモシカ糞の低い誘引力と周辺フン虫相の組成」

  • 林内フン虫の種数・密度自体が低いため、偶発的にカモシカ糞に到達する個体が稀である可能性。しかし、同所性のタヌキやアナグマの溜め糞、ニホンザルやツキノワグマなどの糞には糞虫が来ていることが説明できない。

4. 思考実験とその考察

  • 奈良公園のルリセンチコガネ(Geotrupes属)のようなペレット糞適応型フン虫を山形県の低山地に人為的に放虫した場合、カモシカ糞の分解促進が期待できるか?→理論的には可能だが、国内外来種問題や気候・繁殖条件の違いにより定着は難しいと考えられる。

  • ノウサギ、カモシカ、ヤギなどペレット糞排泄動物の糞リサイクルは、フン虫が関与しない独自路線を取っている可能性。

5. 今後の調査方針

  1. カモシカ糞粒の化学成分分析(抗菌・防虫物質の検出)

  2. 冬期雪解け後・春先の糞粒の分解状況調査

  3. 林内フン虫相の再評価(マグソコガネ類等の存在確認)

  4. 飼育下カモシカ糞への野外フン虫誘引実験(無菌下設置)

  5. 他地域(中部、関西、九州)のカモシカ溜め糞場との比較調査

6. 結論

ニホンカモシカの溜め糞場におけるフン虫不在現象は、全国的・生態系的に普遍的な現象である可能性が高まった。ただし、化学的忌避・生息地的隔離・進化史的喪失など複数要因が複雑に絡む未解明分野であり、基礎生態学的価値は高い。

「日本山地林内におけるフン虫不在型糞リサイクル系の存在」という仮説は、今後の生態系モデルに新たな視座を提供する可能性がある。

2025/06/13

ツキノワグマの糞塊内に潜むセンチコガネ

 

2024年5月下旬・午前11:10頃・くもり 

山麓の小径を歩いていたら、かなり大きな糞塊を見つけました。 
ニホンザルの糞と迷ったのですが、ツキノワグマUrsus thibetanus)の落とし物でしょう。
道の中央で枯れた落ち葉(広葉樹)の上に残されていました。 
糞塊の表面は真っ黒で、半乾きの状態です。 


15cm定規を並べてみる。




小枝を拾って糞塊をほじくってみると、内部はまだ瑞々しい状態でした。
未消化物は緑色の植物繊維の塊でした。 
植物の若葉を大量に食べたことが分かります。 
この時期のツキノワグマはベジタリアン(植食性)です。 
糞塊をほじくってみても、糞便臭を全く感じませんでした。 
(同じ雑食性でもヒトの大便の方がはるかに臭いです。) 

クマの糞の中にセンチコガネPhelotrupes laevistriatus)が1匹だけ隠れていました。 
この路面は落ち葉の下が硬いコンクリートですから、糞虫たちはいくら頑張っても獣糞を地中に埋めることが出来ません。 
したがって、このセンチコガネはクマの糞を食べていただけでしょう。 
ほじくり出したセンチコガネは、擬死したまま動きません。 
ひっくり返すと、腹面も鈍い金属光沢(構造色)でしたが、オオセンチコガネほど綺麗な玉虫色ではありませんでした。 






クマの糞を見つける度に中をほじくって食性調査(糞内容物調査)の真似事をしてみるのですが、糞虫を見つけたのは今回が初めてで、嬉しい発見でした。 
糞の鮮度がちょうど良かったのでしょう。 
クマの専門家は糞を持ち帰って水洗いしながら網で濾し、小型の糞虫や未消化の種子などを丹念に探すのだそうです。 

関連記事(1、5、6年前の撮影)▶  


山中ならともかく、通い慣れた山麓の小径までクマが降りてきた証拠が残されていたのは衝撃です。 
「熊出没注意!」
熊よけスプレーと熊よけ鈴を携帯していることを改めて確認し、気を引き締めて先に進みます。 


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2025/06/02

タヌキの溜め糞場を踏んづけて横切るヤマドリ♂【野鳥:トレイルカメラ】

 

2024年5月下旬・午前5:15頃・日の出時刻は午前4:19 

里山でホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)の溜め糞場ltrがある林道を見張っていると、早朝にヤマドリ♂(亜種キタヤマドリ:Syrmaticus soemmerringii scintillans)が現れました。 
溜め糞の手前で立ち止まって見ていたので、もしかすると糞虫類を捕食しに来たのかもしれません。 
しかし糞虫が見つからなかったのか、左へゆっくり歩いて横切りました。 

関連記事(2年前に別の溜め糞場で撮影)▶ 昼間にスギ林道を歩くヤマドリ♂【野鳥:トレイルカメラ】


我々ヒトの衛生感覚からすると信じられないのですが、このヤマドリ♂は溜め糞を気にせず素足で直に踏んづけて歩きました。 
鳥は嗅覚が鈍く糞便の悪臭も感じないとすると、嫌悪感もないのでしょう。
穿った解釈をすると、鋭い嗅覚を頼りに獲物の足取りを追跡するキツネやテンなどの捕食者を撹乱するために、わざと獣糞の匂いを足の裏に付けたのかもしれません。
この場合、ヤマドリが脳で考えて対捕食者戦略を編み出したとは限りません。
獣糞を迂回して歩く個体よりも、無頓着に獣糞を踏んで歩く個体の方が捕食者によって狩られる頻度が下がれば、そのような性質が自然淘汰の結果として進化するはずです。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 
綺麗なフルカラーでヤマドリ♂を撮れなかったのが残念です。



2025/05/25

ニホンカモシカの溜め糞場から生えてきたクズヒトヨタケ?【キノコ】

2024年5月下旬・午前 

里山にあるスギと雑木の混交林でニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr2をトレイルカメラで定点観察しています。 
カメラの保守管理のため久しぶりに現場入りしました。 
 「溜め糞場」と言っても実際には、林床に糞粒の塊が何箇所にも分散しています。
溜め糞場の全景を撮った写真です。 
最後の写真は、アカマツの幹に固定したトレイルカメラと同じアングルから撮ったものです。
 

最も新鮮で瑞々しい糞粒は、表面が深緑色です。 
カモシカが食べた植物の葉緑素が含まれているのでしょう。 
カモシカが4日前に排便したものと思われます。 


 

真っ黒な糞粒はもう少し古いようで、さらに古くなると艶がなくなり茶色になります。

少し古い糞塊から、白いキノコがヒョロヒョロと育っていました。
写真に撮って画像検索(Googleレンズ)してみると、どうやらヒトヨタケ科のクズヒトヨタケである可能性が高いようです。

クズヒトヨタケはいわゆる「アンモニア菌」(ammonia fungi)の一種であり、動物の糞や窒素分の豊富な環境で発生する典型的な糞生菌(coprophilous fungi)です。
動物糞の分解初期に現れるらしいのですが、クズヒトヨタケの子実体は一晩で溶けてしまうほど短命で、観察機会が限られるため見逃されやすいのです。

また別の古い糞塊では、表面に粉を吹いていました。 
カビや菌類が生えかけているのでしょうか? 

カモシカの溜め糞に注目して、そこからキノコやカビが生えて分解される様子を接写のタイムラプス動画で記録してみたいものです。
しかし、設置したカメラにカモシカの糞尿が直撃する可能性があるので躊躇しています。
それともカモシカはカメラという人工物の出現に警戒して、溜め糞場に近寄らなくなってしまうかな?


不思議なことに、私はカモシカの溜め糞場で糞虫を1匹も見つけたことがありません。
この点がタヌキやアナグマの溜め糞場と異なります。
カモシカの古い溜め糞が林床でいつまで経っても分解されずに残っているのです。
その理由についてあれこれ妄想しています。 
私のフィールドでは生態系のバランスが何か崩れているような気がしています。

カモシカの糞はほぼ無臭で、いわゆる糞便臭がありません。
糞虫にとってあまり魅力がないのでしょうか?


与えるサルと食べるシカ: つながりの生態学』という本を読んでいたら、興味深い記述を見つけました。
 東北地方では、明治時代にサルが乱獲されて個体数が激減した。最近こそ回復傾向にあるが、多くの地域では、猿がいない森林が100年近く続いたことになる。(中略)猿が不在の森や最近サルが新たに進出した森では、糞虫の種多様性が著しく低いことがわかった。 (p157より引用)
東北地方のサルの分布が限られている(中略)大きな理由は、明治期に肉や薬にする目的で盛んに行われた狩猟による、地域的な絶滅だ。(p181より引用)


当地ではニホンザルが昔も今も里山に生息していますが、ニホンカモシカが狩猟圧によって一時期は絶滅に瀕していたのではないか?と想像しています。

特別天然記念物に指定されて保護されたのが奏効し、現在ではカモシカの数が増えて、里山(低山)でもありふれた哺乳類になりました。

その結果、カモシカの糞を好んで分解していたスペシャリストの糞虫類が絶滅してしまい、カモシカの生息数が回復しても糞虫類は戻ってきてないのかもしれません。(個人的な妄想・仮説です)


このような個人的な妄想をPerplexity AIとブレインストーミングした問答集をレポートにまとめてもらいました。

レポート:カモシカの糞と糞虫分解系に関するブレインストーミング


1. はじめに

本レポートは、山形県多雪地帯の里山フィールドにおけるカモシカの溜め糞と糞虫の関係について、現地観察と素朴な疑問を出発点とし、ブレインストーミングを通じて得られた知見と仮説をまとめたものである。


2. 現地観察の概要

  • カモシカの溜め糞が林床に長期間残り、分解が非常に遅い。

  • タヌキやアナグマの溜め糞場にはセンチコガネなどの糞虫が集まり、分解が進んでいる。

  • カモシカの糞にはカビやキノコなどの分解者もほとんど見られない。

  • カモシカの糞粒はほぼ無臭で、タヌキの糞に比べて糞便臭が弱い。


3. 主な仮説と考察

3.1 糞虫の不在・機能的絶滅仮説

  • 過去の狩猟圧などでカモシカが一時的に絶滅し、それに依存していた糞虫も局所絶滅した可能性。

  • カモシカの個体数が回復しても、糞虫は分散能力や気候適応性の制約により戻っていない可能性。

3.2 餌資源としての魅力の低さ

  • カモシカの糞は乾燥しやすく、臭気成分が乏しいため、センチコガネなどの糞虫にとって魅力が低い。

  • タヌキやアナグマの糞は水分や動物性成分が多く、糞虫を強く誘引する。

3.3 栄養バランス・分解者忌避仮説

  • カモシカの糞は繊維質が多く、発酵や微生物の多様性が乏しいため、幼虫の発育に適さない可能性。

  • カモシカが抗菌・忌避成分を含む植物を好んで食べている場合、糞中にこれらの成分が残り、糞虫やカビ、キノコの分解を阻害している可能性。

3.4 餌資源の希少性と糞虫の生態

  • カモシカの個体数密度が低く、糞の供給量も少ないため、糞虫にとっては「当てにならない」希少な資源であり、専門的に利用する種が成立しにくい。

3.5 糞虫導入による分解サイクル復活の可能性

  • オーストラリアの糞虫導入事例を参考に、他地域からカモシカ糞分解糞虫を移植すれば分解サイクルが復活する可能性はあるが、気候適応や生態系リスクの検討が必須。

  • 多雪地帯では、暖地性糞虫の越冬能力が不足し、定着が困難。

3.6 「もともと分解糞虫がいなかった」可能性の検証

  • 歴史的文献・標本記録、広域比較調査、気候・環境要因の検討を通じて、当地にカモシカ糞分解糞虫が「もともといなかった」可能性も調べる必要がある。


4. 今後の調査・検証の方向性

  • 過去の文献・標本調査や、他地域との比較による検証。

  • カモシカ糞の化学分析や分解実験による忌避・抗菌成分の有無の確認。

  • 糞虫導入のシミュレーションや、現地での分解サイクルの実験的再構築。


5. まとめ

本ブレインストーミングを通じて、カモシカの糞分解サイクルが途絶している現象には、動物の個体数動態、糞の性質、分解者の生態、地域環境の多様な要因が複雑に絡み合っていることが浮かび上がった。
今後は、フィールド観察と広域的・歴史的な視点を組み合わせ、糞虫と分解者ネットワークの成り立ちと変遷を明らかにしていくことが重要である。


見落としがちな視点・新しい仮説

あなたの観察と仮説は非常に多角的ですが、さらに検討できる新しい視点や仮説をいくつか挙げます。


1. カモシカの糞の社会的機能と分解抑制仮説

最新の研究では、カモシカの溜め糞がなわばり宣言ではなく、「メスがオスへ発情をアピールするため」に使われている可能性が指摘されています9
この場合、糞が長期間残ること自体がカモシカの社会的コミュニケーションにとって有利であり、分解されにくい性質(抗菌成分、乾燥しやすさ、無臭化など)が進化的に選択された可能性もあります。
つまり、「分解されにくい糞」は、カモシカ自身の生態的戦略の一部かもしれません。


2. シカとの種間関係・競争の影響

近年、シカ(ニホンジカ)の分布拡大が東北地方でも進んでおり、カモシカとの生息地競争やストレス増加が報告されています1013
シカの糞虫群集がカモシカの糞虫群集に影響している可能性や、シカの増加によってカモシカの糞虫が駆逐・交替した可能性も考えられます。
また、シカの糞が大量に供給されることで、糞虫がシカ糞に依存するようになり、カモシカ糞は相対的に利用されなくなった可能性もあります。


3. 糞の識別・誤認による調査バイアス

カモシカとシカの糞は外見が非常に似ており、DNA識別法が開発されるまで正確な区別が難しかったことが指摘されています12131415
過去の糞虫観察記録や分解状況の報告が、実はシカ糞とカモシカ糞を混同していた可能性もあり、糞虫が本当にカモシカ糞を利用していたかどうか再検証が必要です。


4. 微生物・土壌環境の特殊性

糞虫やカビ・キノコが付かないのは、糞そのものだけでなく、**フィールドの土壌微生物群集や環境条件(pH、含水率、他の有機物供給状況など)**が影響している可能性もあります。
例えば、分解者の「種のプール」がそもそも貧弱である場合、どんな糞でも分解が遅れることがあります。


5. 季節性・積雪の影響

多雪地帯では、糞虫や分解者の活動期間が短く、糞が分解される前に積雪で覆われてしまうことで、分解サイクルがリセットされている可能性も考えられます。
春先に糞虫が活動を始める頃には、糞がすでに乾燥・風化していて利用しにくくなっているかもしれません。


6. カモシカ糞の化学的多様性

カモシカの餌植物は季節や地域で大きく異なります。特定の時期や場所だけ分解者忌避成分が強くなる場合もあり、糞の分解難易度が一様でない可能性もあります。


まとめ

  • カモシカの糞が「分解されにくい」こと自体が社会的・進化的な適応である可能性

  • シカとの種間競争や糞虫群集の変化

  • 糞の識別誤認による過去データの再検証

  • 土壌や微生物環境の特殊性

  • 多雪地帯特有の季節性・リセット効果

  • 糞の化学的多様性と分解難易度の変動

これらの視点は、今後のフィールド調査や実験計画の新たな切り口となるでしょう。

(参考文献リストは割愛。)


なんか一丁前の研究計画のようなものが出来てしまいました。
最近のAI凄くないですか? (私の好みは今のところPerplexity AIです。)



実は翌年(2025年5月上旬)に初めて1匹のオオセンチコガネをカモシカの古い溜め糞場で発見することになります(映像公開予定)。

私の仮説は修正を余儀なくされそうです。

しかし、カモシカの溜め糞に集まる糞虫の数が相変わらず非常に少ないことには変わりがありません。



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ニホンカモシカの生活

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2025/05/24

溜め糞場に来て糞粒を排泄するニホンカモシカ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年5月中旬 

シーン0:5/6・午後13:49・くもり(@0:00〜) 
明るい昼間にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
ニホンカモシカCapricornis crispus)が通う溜め糞場sr2を見張るために、自動センサーカメラを里山の雑木林(スギとの混交林)を抜ける獣道に設置しています。 


シーン1:5/17・午後19:26(@0:03〜) 
晩にカモシカが珍しく手前の獣道から来て、溜め糞場sr2の匂いを嗅いでいます。 
肛門がよく見える後ろ姿で立ったまま、排便を始めてくれました。 
糞粒をポロポロと大量に排泄しています。 
下痢便ではありませんが、同時に水分もかなり排出しています。
カモシカは大腸による水分の吸収が弱いのでしょうか。
脱糞中にときどき尻尾を上下に動かしています。 
手前の下草が邪魔で、地面に落ちた糞粒は見えません。 

1分半の録画時間では短くて、最後まで見届けれれませんでした。
(脱糞シーンを狙うなら、2分間に設定すべき。) 


シーン2:5/17・午後19:28(@1:33〜) 
次に監視カメラが起動したときには、排便後のカモシカが右へ立ち去るところでした。 
珍しくミズナラ立木の手前を通って暗闇の斜面を登って行きます。 
カモシカが通りすがりに足の蹄で灌木(樹種不明)の根元を踏んでしまい、枝葉が大きく揺れました。 

今回はカモシカの性別を見分けられませんでした。 



2025/05/22

ミズナラの幼木に出来たナラメリンゴフシ【虫こぶ】

2024年5月上旬

里山の細い林道の脇に自生するミズナラ幼木の群落で白いピンポン玉のような物が目に付きました。
ナラメリンゴタマバチ(Biorhiza nawai)の両性世代がナラ類の芽に形成した虫こぶらしい。
細い枝の分岐点で大きく膨らんだ虫こぶの表面はまだ黄緑色で、少しだけ赤く色づき始めていました。

以前もミズナラに寄生しているのを見つけています。

関連記事(8年前の撮影)▶ ミズナラに形成したナラメリンゴフシ【虫こぶ】#1 
定点観察した連載記事#1〜#6。


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2025/05/18

獣道でノイバラの棘に引っかかった抜け毛はホンドタヌキの物か?【フィールドサイン】

2024年5月中旬・午後・晴れ 

休耕地にあるホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)の営巣地をトレイルカメラで定点監視しています。 
休耕地から隣接する二次林には獣道が形成されています。 
春になって二次林の下生えでノイバラが若葉を開いて育ち始めました。 

トレイルカメラの保守管理のために私が現場入りすると、ノイバラの棘だらけの茎に白っぽい獣毛が引っかかっていました。 
獣道を往来するホンドタヌキの抜け毛と思われます。 
山形県で5月中旬はホンドタヌキの換毛期に当たるので、特に冬毛(ふわふわしたアンダーコート)が抜け落ちやすくなっていたのでしょう。 
毛が生え変わり終わると、ノイバラの藪をタヌキが通っても、あまり抜け毛が引っかかることはなくなるらしい。 
つまり、ノイバラの棘にタヌキの抜け毛がよく引っかかるのは主に換毛期特有の現象であり、換毛が終わればそのような抜け毛の痕跡はほとんど見られなくなるそうです。 

付近に設置したトレイルカメラに写る映像から、タヌキ以外にもアナグマやキツネなど他の野生動物(あるいは近所のイエネコ)の可能性もありそうです。 
ただし、トレイルカメラに写る頻度が最も高いのはタヌキです。
DNA鑑定しないと同定するのは無理ですかね? 
念のために、ノイバラの茎ごと採取して持ち帰りました。 

この件について、いつものようにPerplexity AIとブレインストーミングしてみました。
ノイバラの棘に引っかかったふわふわのアンダーコート(抜け毛)に毛根が含まれている可能性は低いです。 換毛期に自然に抜け落ちる毛(特にアンダーコート)は、通常「自然脱落毛」と呼ばれ、これは毛根(毛球や毛乳頭)が付かずに抜け落ちることが多いです。毛根は皮膚にしっかりと埋まっており、動物が強く引っ張られた場合や、何らかの力で無理に抜けた場合には毛根が付着することがありますが、自然な換毛や摩擦による脱落では毛幹部だけが残ることが一般的です。 DNA検査で高い確率で個体識別や種判定を行うには、毛根が付いた毛が必要です。毛幹部(毛根なしの毛)からも微量のDNA(主にミトコンドリアDNA)は抽出可能ですが、成功率は低くなります。特に野外で自然に抜け落ちたアンダーコートの場合、毛根が付いていることは稀です。 したがって、ノイバラの棘に引っかかったタヌキの抜け毛でDNA検査を確実に行いたい場合、毛根が付いているかどうかを顕微鏡などで確認する必要があり、ほとんどの場合は毛根が付いていないと考えられます。

関連記事(1年前の撮影)▶ 野生ニホンカモシカの抜け毛【フィールドサイン】


余談ですが、トレイルカメラで撮れた映像を見ると、タヌキやアナグマなどがときどき痛々しく跛行しているときがあります。 
しばらく日数が経つと、その症状は自然に回復しています。 
獣道を歩く際にノイバラなど棘の鋭い植物を誤って踏んでしまい、足の裏に棘が刺さって痛むのではないかと推測しています。 
ノイバラの藪が繁茂すると、野生動物は痛い棘を嫌って自然と迂回するようになるはずです。 (獣道の変更)
ノイバラの花には様々な昆虫が集まりますし、赤い果実は野鳥が食べます。 
このように、ノイバラと野生動物との関わりにも様々な局面があるのです。 


【アフィリエイト】 

2025/05/12

ニホンカモシカの溜め糞場を夜な夜な往来するニホンイノシシ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年5月上旬〜中旬 

シーン1:5/6・午後13:49・くもり(@0:00〜) 
里山の雑木林(スギとの混交林)でニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr2を自動撮影カメラで見張っています。 
左から右へ斜面を登る途中で、平坦になった区間に溜め糞場sr2があります。 
この時期に登場したニホンイノシシSus scrofa leucomystax)の映像をまとめました。 


シーン1:5/8・午前4:37・(@0:04〜)日の出時刻は午前4:32。 
日の出直後の暗い早朝に、真っ黒な体毛の獣が現れました。 
一瞬クマかと思ったのですが、イノシシでした。 
奥から手前に来て立ち止まると、私が薮漕ぎの際に切除した灌木の枝の切り口の匂いを嗅いでいます。 
手前の死角に来ると、アカマツの根元の匂いを嗅いでいるようです。 
引き返して左に立ち去りました。 
結局、カモシカの溜め糞には興味を示しませんでした。 


シーン2:5/9・午前4:10・(@0:29〜)日の出時刻は午前4:31。 
翌日は、日の出直前の未明に現れました。 
右の藪の奥に動物の目が白く光っています。 
それが右に移動しました。 
獣道を左から来たのに、監視カメラの起動が遅れたようです。 
イノシシかどうか、いまいち自信がないのですけど(カモシカかも?)、一応ここに含めました。 
真相は藪の中です。


シーン3:5/15・午後19:00・(@0:42〜)日の入り時刻は午後18:46。 
日没後の晩にイノシシの幼獣が獣道を左から右へ駆け抜けました。
1/3倍速のスローモーションでリプレイすると、幼獣(ウリ坊)に特有の縦縞模様の名残?が背中にチラッと見えました。 
もしかすると、先行個体の通過を撮り損ねたのかもしれません。


シーン4:5/17・午後21:26・(@〜) 
カモシカが排便に来た(映像公開予定)2時間後に左下からイノシシ成獣がやって来ました。 
溜め糞場sr2でカモシカの新鮮な糞の匂いを嗅いでいますが、食糞することはありませんでした。 

林床に生える細い灌木の枝葉の匂いも気にして嗅いでいます。 
監視カメラを固定したアカマツの根元でイノシシが何をしているのか気になりますが、死角で写っていません。 


※ 低音の鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】 
イノシシの個体識別ができていませんが、明らかに複数個体が登場しています。 
イノシシはカモシカの溜め糞場に何か目的があって通っているのではなくて、獣道の途中にたまたま溜め糞場があるので、通り過ぎているだけのようです。 
動画では単独行動をしているように見えますが、監視カメラの画角が狭いので、林床に散開する群れの採食行動が撮れてないだけかもしれません。


つづく→

2025/05/02

山道の溜め糞場に昼も夜も排便に通うホンドタヌキの♀♂ペア(白毛ほか)【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年5月上旬〜中旬 

里山の山道に残された溜め糞場ltrが本当にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残したものかどうか確かめるために、自動撮影カメラを設置してみました。 


シーン0:5/6・午後12:10・くもり(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
カメラの背後(画面の手前)がスギの植林地で、山道を挟んで反対側(画面の奥)は雑木林になっています。 
現場の区間は平坦ですが、基本的に画面の右から左に向かって坂を登る山道になっています。 
スギの落ち葉が敷き詰められた山道の中央に、溜め糞場ltrがあります。 


シーン1:5/7・午前7:26・くもり(@0:06〜) 
旧機種のトレイルカメラにしては珍しく、昼間でもフルカラーで録画されていました。 
左に立ち去りかけたタヌキが引き返して来て、溜め糞場ltrの匂いを嗅ぎました。 
毛皮の色が全体的に白っぽいので、老齢の成獣なのでしょうか? 
それとも、冬毛から夏毛に生え変わる途中、あるいは個体差なのかな? 
尻尾が真っ白で、明らかに初見の個体です。 
額は焦げ茶色なので、アルビノではありません。 

山道を右往左往しています 画面の右下に立ち止まって身震いすると、濡れた毛皮から水飛沫が飛び散りました。 


シーン2:5/8・午後13:29・くもり(@1:06〜) 
翌日の午後にも白毛のタヌキが再登場しました。 
溜め糞場ltrに跨がり、脱糞していました。 
カメラの方を向いていたので肛門が見えず、大便の状態は不明です。 
しばらく右を眺めてから、左上奥の藪に入って行きました。 


シーン3:5/8・午後18:58(@2:06〜)日の入り時刻は午後18:39。
その日の日没後に来たタヌキが左を向いて脱糞中でした。 
黒くてしっかりした固形糞を大小3個排泄しました。 
右に向き直ると、溜め糞場ltrの匂いを嗅いでいます。 
右へ立ち去るかと思いきや、途中で立ち止まって身震いすると、その場に座り込みました。 
右の方を頻りに気にしています。 
(後続個体が追いついてくるのを待っていたのだと、じきに判明します。) 


シーン4:5/8・午後18:59(@2:43〜) 
入れ替わりで別個体(パートナー?)が来たようで、右から来て左を向いたままタヌキが排便しました。 
左へ立ち去ったタヌキがぐるっと回り込んできたようで、下から再登場し、右へ向かいました。 


シーン5:5/9・午後13:12(@3:23〜) 
翌日も日中に白毛のタヌキが排便しに来ていました。 
カメラの方を向いて脱糞すると、手前(下)に立ち去る途中で立ち止まって右を見ました。 


シーン6:5/12・午前4:29(@4:02〜)日の出時刻は午前04:28。 
日の出直後に右から来た白毛のタヌキaが、溜め糞場ltrの横で左を向いて佇んでいました。 
すぐに後続個体bが右から登場しました。 
このペアには体格差があり、a>bでした。 
合流すると、白毛aが脱糞してから、相次いで左へ立ち去りました。 

生殖器が見えなかったのですが、体格だけから判断すると、白毛♀aと♂bのペアのようです。 
採餌のために行動を共にするタヌキのペアは、♀が先行して♂が後をついて歩く傾向があるようです。(一般論ではなく、あくまでも個人的な印象) 


シーン7:5/12・午後19:33(@4:49〜) 
同じ日の晩に、左から来たタヌキが右を向いて排便していました。
白毛ではなく、通常個体です。
右に少し前進してから山道に座り込んで、長々と毛繕いを始めました。 


シーン8:5/13・午前4:15・雨天(@5:49〜)日の出時刻は午前4:28。 
雨が降る未明に、タヌキがペアで右からやって来ました。 
1頭(白毛♀?)がそのまま左向きで溜め糞場ltrに跨がり、排便しました。 
その間、パートナーは先に左へ立ち去りました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】
予想通り、この溜め糞場ltrはタヌキが使っていました。

通ってくるタヌキの中で、白毛のタヌキだけは私でも個体識別できそうです。
夏毛に換毛しても白毛のままかどうか、要注目です。

巣穴が近くにありそうですが、辺りを闇雲に探し歩くしかないのでしょうか。
冬の積雪期なら足跡を辿って追跡できるのですが、雪が溶けてしまうとその手は使えません。
イヌの嗅覚が欲しいなぁ…。

2025/04/09

カモシカの溜め糞場を春の夜にうろつくホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年4月中旬 

シーン1:4/14・午前10:22・晴れ(@0:00〜) 
明るい昼間にたまたま撮れた現場の状況です。 
里山の雑木林にあるニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr2を自動センサーカメラで見張っています。 
画面の左下から右上に向かって斜面を登りながら獣道が通っているのですが、溜め糞場sr2付近は勾配が一旦ほぼ平坦になっています。


シーン2:4/17・午後18:55・(@0:04〜) 
監視カメラの起動が遅れたようです。 
単独行動のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が画面の左端に来ていて、林床の匂いを嗅いでから左へ(獣道を谷側へ)立ち去りました。 

厳冬期にはタヌキの飢えた個体が雪山のカモシカの溜め糞場sr1で食糞していたのですが、今回は特に興味を示さず通り過ぎました。 
春になるともう他に餌が取れるのでしょう。 

関連記事(2〜3ヶ月前の撮影)▶  



つづく→

2025/03/25

早春の溜め糞場で小便するニホンカモシカ♂【トレイルカメラ】

 



2024年4月上旬〜中旬

シーン0:4/3・午後15:23・くもり(@0:00〜) 
明るい昼間にたまたま撮れた現場の状況です。 
雑木林に覆われた里山の斜面でニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr2を自動撮影カメラで見張っています。 
画面の中央付近に古い糞塊が残されています。 
基本的に画面の奥から手前に向かって斜面が登っていますが、溜め糞場sr2付近は、ほぼ平坦になっています。 
画面の右端および奥の林床に残雪がわずかに見えます。 


シーン1:4/6・午前5:33・(@0:03〜)日の出時刻は午前5:14。 
早朝に右奥の獣道から単独で来たカモシカの成獣が、アカマツ(右)とスギ(左)の間で溜め糞場sr2の匂いを嗅いでから立ち止まると、腰を少し落として膀胱に溜まった小便を長々と排泄しました。 
音量を上げても、小便の音は聞き取れませんでした。 
排尿姿勢を真横からしっかり撮れたおかげで、性別が♂と判明しました。 
カモシカの♀は、もっと深くしゃがんで排尿するらしい。 
【参考】平田貞雄『ニホンカモシカ・ミミの一生』p80写真 


用を足したカモシカ♂は、左奥に行くと立ち止まって高いスギ枝葉の匂いを嗅ぎました。 
顔を擦りつけて眼下腺マーキングするかどうか見届けたかったのですが、録画が1分間で打ち切られました。 
後ろ姿の股間に睾丸は見えませんでした。 
実はスギ立木の左下にも、カモシカの糞塊が複数あります。 

ニホンカモシカ♂の排尿シーンを1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@1:03〜) 
お尻付近をよく見ても、排尿しながらついでに糞粒を肛門からポロポロと排泄することはなかったようです。 
後日に現場検証しても、その地点に新鮮な糞粒は残されていませんでした。 

関連記事(1年前に別の地点で撮影)▶ 溜め糞場で排尿するニホンカモシカ♂【トレイルカメラ】 


シーン2:4/11・午後16:46・(@1:51〜)日の入り時刻は午後18:14。 
5日後の夕方に、カモシカが奥から手前へと獣道を登って来ました。 
今回は溜め糞場sr2を素通りしています。 
落枝をまたぎ、手前の斜面を登って監視カメラの死角に消えました。 

前後半で同一個体のカモシカ♂かどうか、個体識別できていません。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 



2025/03/14

ニホンアナグマの溜め糞に産み付けられたベッコウバエの卵

 

2023年10月中旬・午後13:15頃・くもり 

平地のスギ防風林に長年放置された手押し車の錆びたフレームの中にニホンアナグマ♀♂(Meles anakuma)の溜め糞場stmpがあります。 
定点観察に来てみると、新鮮な黒い下痢便が残されていました。 

ベッコウバエ♀♂(Dryomyza formosa)がアナグマの溜め糞に群がっていました。 
糞塊上に居たのは交尾後ガード中の♀♂ペアが3組と、単独個体の♀が1匹です。 
すぐ横の細い落枝の上にもベッコウバエがもう1匹(性別不明)、止まっていました。 
(腹部の色でベッコウバエの性別判定が可能です。) 

♀の背後からマウントしている♂は交尾器を結合していないので、正確には交尾中ではありません。 
交尾を済ませた後も配偶者♀がライバル♂と交尾しないよう、♀が自分の精子で確実に受精した卵を産むまでガードしているのです。 
ベッコウバエ♀が獣糞から吸汁している間、交尾後ガード中の♂はおとなしくしています。 
やはり、ベッコウバエ♂が翅を素早く開閉して翅の斑点模様を誇示するディスプレイ行動は求愛誇示(あるいは♂同士の威嚇誇示)なのでしょう。 

糞塊の表面に大量に付着している白っぽい薄片はベッコウバエの卵です。 
ベッコウバエ♀の産卵行動を観察・撮影してみたいのですが、じっくり腰を据えて取り組む必要がありそうです。 
今回のように少し離れた位置から溜め糞を見下ろすように撮っても、ベッコウバエ♀の腹端がしっかり見えません。 
ベッコウバエ♀の真横からローアングルのマクロレンズで狙って待ち構える必要があるのですが、私がカメラをセッティングしている間にベッコウバエの群れは警戒して散り散りに飛び去ってしまうのです。 
ハエが溜め糞場stmpに戻ってくるまで辛抱強く待てるかどうかがポイントです。 
ベッコウバエの卵を採集して持ち帰り、1齢幼虫が孵化する様子を観察するのも面白そうです。 

他には、ハクサンベッコウバエNeuroctena analis)が1匹とキンバエ類(種名不詳)が2匹、アナグマの溜め糞上で吸汁していました。 
また、オオヒラタシデムシNecrophila japonica)の成虫が1匹、食糞していました。 

鬱蒼としたスギ林の中は昼間でもかなり薄暗いので、望遠マクロではどうしても画質が粗くなります。 
光量不足でAFが被写体に合焦しにくいのです。 
マクロレンズを装着したら更に暗くなることが予想されます。
強力な照明を使うと、その熱で溜め糞が乾燥したり、眩しい光をハエが嫌がって逃げたりしてしまうかもしれません。
静止画の写真を撮るだけなら薄暗くてもストロボを焚くだけで済むのですけど、動画で記録したい私はいつも悩むことになります。
いっそのこと、赤外線の暗視カメラで動画撮影する方が楽かもしれません。



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2025/03/08

ニホンイノシシの採食後に泥濘の湿地帯と化した山腹の草地【フィールドサイン】

 

2023年7月中旬・午前11:00頃・くもり 

山腹にあるカエルの繁殖池の様子を久しぶりに見に来たら(定点観察)、周囲の様子が変わり果てていました。
緩斜面の草地が盛大に掘り返され、そこに沢の水が流れ込んだり雨水が溜まったりして、泥濘と化していました。 
おそらくニホンイノシシSus scrofa leucomystax)が採食した痕跡(フィールドサイン)だと思われます。 
地中に石があっても、イノシシは鼻面を使って平気で掘れるようです。 
糞便臭のような悪臭も漂っていたので、おそらく最近できたばかりの痕跡で、イノシシは食事だけでなく排泄もして行ったようです。 

もしかすると、泥浴びをするためのヌタ場をイノシシが自分で開墾したのでしょうか? 
それなら横の池で水浴する方が手っ取り早い気がするのですけど、昔一度だけトレイルカメラでその池を監視したときにはイノシシの水浴シーンは撮れませんでした。 
もしイノシシが同じ場所に夜な夜な通って採食するのであれば、トレイルカメラで監視してみたいものです。 
しかし、この現場はトレイルカメラをきわめて設置しにくく、諦めざるを得ませんでした。 

ひどい泥濘なので、長靴を履かないと、ここを歩いて通過できなくなりました。 
イノシシのせいで里山のきれいな草地が荒らされた!と思いがちですが、新しく出来た湿地帯を好む生きものもいます。 

関連記事(同所で半年後の撮影)▶ 警戒して動かないタシギと根比べ(冬の野鳥) 

歩きにくくて見苦しい地形になったという理由で、地元の人が(良かれと思って)ブルドーザーで整地し直すのではないかと心配です。 


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2025/03/03

早春のハクモクレン樹上にメジロのペアとコガタスズメバチの古巣(野鳥)

 



2024年2月中旬・午後15:30頃・晴れ 

民家の庭木のハクモクレンの樹上で見つけた コガタスズメバチVespa analis insularis)の古巣を定点観察に来ました。 
見上げて撮影を始めたら、メジロZosterops japonicus)の♀♂ペアが近くの横枝に止まっていることに気づきました。 
小声で鳴き交わしながら♪枝から枝へピョンピョン飛び移り、最後は相次いで飛び去りました。 

※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


前回もここでメジロを見かけた(単独個体)ので、もしかすると、半壊した(くり抜かれた)コガタスズメバチの古巣をメジロ♀♂が樹洞のように夜のねぐらとして使っているのかもしれない、という仮説を思いつきました。 
スズメバチの古巣を再利用してスズメなどの鳥が営巣する事例があったそうです。 

関連ニュース記事(2013年・朝日新聞)▶ スズメバチの巣、スズメが再利用 宮城・南三陸 



その仮説を検証するために暗視カメラで夜に撮影したかったのですが、冬の寒い夜に出かける根性がなくてグズグズと先延ばしにしていたら、機会を逸してしまいました。 
その後も(昼間に)ときどき定点観察を続けていたら、3月下旬にはコガタスズメバチの古巣が撤去されてしまいました。 


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2025/02/10

笹薮のタヌキ溜め糞場に生えたキノコを調べる:オオキヌハダトマヤタケ?

 

2023年6月中旬・午後16:25頃・晴れ 

河畔林でオニグルミ大木の真下にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した最大級の溜め糞場rpを定点観察に来ました。 
周囲の笹藪は、ヒトの背丈よりも高く伸びていました。(>175cm) 
タヌキの新鮮な糞は追加されておらず、糞虫などの活動も見られませんでした。 
糞塊に集まっていた虫は、目視した限りではハエ類とアリ類だけでした。 





溜め糞の横の地面から生えた黄土色のキノコに注目し、引っこ抜いてみました。 
傘の中央部が突出しています。 
傘の裏面にはクリーム色のヒダが発達しています。 
柄にはツバもツボもありません。 
柄を裂いて見せればよかったですね。 
キノコの分類において、柄が中空か中実(柄の内部に菌糸が詰まっている状態)かというのは、重要な識別点なのだそうです。 






もう1本、同種と思われる別のキノコを採取しました。 
傘が大きく開いていて、私が触れると湿った傘の縁がボロボロとちぎれてしまいました。 




タヌキの溜め糞場で見つけたということは、いわゆるアンモニア菌の仲間なのか?と期待しました。
撮れた写真をGoogle画像検索してみると、どうやらアセタケ科のオオキヌハダトマヤタケという種類のようです。 
ムスカリンを含む毒キノコです。
ムスカリンは、あるタイプのアセチルコリン受容体(ムスカリン性アセチルコリン受容体)に結合し、神経伝達物質アセチルコリンの作用を模倣する、副交感神経作用薬である[2]。 ムスカリン中毒は、キノコの摂取後15-30分後に、涙と唾液の分泌増加、発汗が見られることで特徴づけられる。 (wikipediaより引用)
キノコに疎い私は聞き馴染みがなかったのですが、キノコにはアセタケ科やアセタケ属があります。
アセタケの名は、毒性物質ムスカリンを含み、滝のように汗をだすという異常な中毒症状によるとされる[3]。(wikipedia:アセタケ属より引用)

「オオキヌハダトマヤタケは夏〜秋にブナ科の樹木の下に生える」としか図鑑に書いておらず、ごく普通の毒キノコらしい。 
つまり、溜め糞場の近くに生えていたのはたまたま、という残念な結論でした。

遅々とした歩みですが、苦手なキノコも少しずつ種類を覚えていくしかありません。


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