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2024/11/15

雪山でニホンカモシカの寝床を見つけた!【アニマルトラッキング・フィールドサイン】

 



2023年12月下旬・午後13:20頃・くもり 

雪山でニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr2を見つけた後で、更に足跡を辿って行きます。 
スギの根元の雪面に大型の動物が長時間座った形跡を見つけました。 
周囲の雪面にはカモシカの蹄跡があることから、ここはニホンカモシカのねぐら(寝床)のようです。 
実は前年に見つけたカモシカの塒のある方向へ足跡は向かっていたのですが、急斜面に出る前に新しい塒を見つけることができました。
カモシカが休んだ場所の雪はよく踏み固められ、アイスバーンのように凍結しています。 
スギの落枝(木の根?)が露出していました。 
地面にフワフワの枯草や樹皮などを敷いて断熱材の寝床を作ることはしていません。 
熊よけスプレー(長さ20cm)を寝床の雪面に置いて、採寸代わりに写し込みました。 

現場は緩斜面に植林したスギ林の上端部で、その上はカラマツの植林地になっています。 
カラマツは落葉樹なので、冬になると雪が降ってもしのげません。 
カモシカが常緑のスギ林を好んでよく歩く理由が分かってきました。
ちなみに、この塒は溜め糞場sr2から緩斜面を登りつつ約20mほど離れた地点にありました。 

スギの木の下に積雪が少ないのは、空から降ってきた雪の多くが途中でスギの横枝や常緑の葉に積もるためです。 
隣の若いスギの木がもたれかかるように斜めに倒れていました。 
その枝葉に冠雪していることから分かるように、斜めスギ倒木はねぐらの目隠しにもなりますし、風雪をしのげる屋根(シェルター)ができていました。 
カモシカはよくよく考えた上で、少しでも安全で快適なねぐらの位置を選定していることが分かります。 

早速ここにトレイルカメラを設置して、ニホンカモシカの寝姿を観察してみましょう。 
果たしてカモシカは再び戻ってきてくれるでしょうか?
現場を踏み荒らさないように注意して撮影したつもりですが、塒の周囲を私が歩き回ったスノーシューの足跡をカモシカが警戒して、もうこの塒に近寄らなくなるのではないか?という一抹の懸念があります。 


つづく→ 


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2024/11/09

雪山でニホンカモシカの蹄跡を辿ると溜め糞場を新たに発見!

 

2023年12月下旬・午後13:10頃・くもり 

初冬の雪山でニホンカモシカCapricornis crispus)のアニマル・トラッキングをしたら、嬉しい収穫がありました。 
スノーシューを履いて雪面に残る蹄跡を辿って行くと、里山の通い慣れた山道から外れて横の山林に入って行きました。 

しばらく進むと、スギの木の下に溜め糞場sr2を新たに発見しました。 
周囲はスギ、アカマツ、カラマツなどの混交林で、倒木もゴロゴロあります。 
糞粒の山(糞塊)が辺りに複数あるということは、カモシカが何回にも分けて(時間を空けて)排泄したということを意味しています。
糞粒にうっすらと雪が積もっているのは、少し古い糞塊と分かります。 
雪に埋もれた糞塊の上を踏み荒らして歩いた蹄跡もあるので、(複数個体?の)カモシカが何度も溜め糞場sr2を通っているようです。 

雪を溶かした小便の跡も残されていました。 
カモシカが排尿した跡の雪は茶色に染まっていました。 
小便の跡が見つかるのは積雪期ならではの収穫です。

残念ながら、今回見つけたニホンカモシカの溜め糞場sr2にフユユスリカは群がっていませんでした。 
関連記事(1年前の撮影)▶  

以前から別の地点で見つけていたカモシカの溜め糞場sr1は最近あまり使われなくなっているようなので、トレイルカメラでこっちを定点監視した方がよいかもしれません。

実はここからが本題です。 
溜め糞場sr2から更にカモシカの足跡を辿って行くと…。 



2024/11/03

ニホンカモシカの溜め糞場で見つけた緑色の糞粒と黒色の糞粒

 



2023年12月中旬・午後13:55頃・くもり 

早春までトレイルカメラで定点観察していたニホンカモシカCapricornis crispus)の溜め糞場sr1に久しぶりに来てみました。
里山の山腹に植林されたスギ林の上端部の林床で、すぐ横に渓谷(深くえぐれた沢)があります。
シシガシラという常緑のシダ植物の間に糞塊が2つ見つかりました。 

艶のある深緑色の新鮮な糞粒は、ユキツバキエゾユズリハなど何か常緑灌木の葉をカモシカが食べた後に排泄した糞だと思われます。 
糞分析の専門家(達人)は顕微鏡で検鏡して、未消化の葉の断片から食べた植物の種類を見分けることができるのだそうです。
最近では糞の試料からDNAバーコーディングを分析することで、食べた植物を一気に調べることが(理論的には)できるようになりました。

その隣に残されていた、黒い糞粒の山(糞塊)は少し古い(排便後に日数が経過している)のでしょうか?
採寸代わりに、熊よけスプレー(長さ20cm)を溜め糞の横に並べて置いて写し込みました。 

気温が下がった初冬の時期には、昆虫全般の活動が低下します。
(ほとんどの昆虫が休眠越冬に入るります。)
今回もニホンカモシカの溜め糞sr1に糞虫やハエ類などは1匹も来ていませんでした。

以前は(早春の時期には)スギの木の根元(右下)に、茶色に変色したかなり古い糞塊があったのですが、それはもう分解されて土に還ったようで、探しても見つかりませんでした。

他のプロジェクトで忙しい夏の間は観察できず、空白期間が生じました。
トレイルカメラを再び設置して、溜め糞場sr1に通ってくるカモシカを冬の初め(根雪が積もる前)から監視することにしました。
ニホンカモシカは基本的に群れを作らずに単独で暮らしています。
タヌキのように複数個体のカモシカが溜め糞場srを共有しているのか、それとも同一個体のカモシカが繰り返し使っているのか、という点にとりわけ興味があります。 



2024/11/02

田んぼの農道に残されたタヌキの溜め糞【フィールドサイン】

2023年10月中旬 

砂利が敷かれた農道の端にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞場を見つけました。
食べた果実に含まれる種子が消化されないまま排泄され、糞に混じっています。

周囲は稲刈りが進む広大な田んぼです。 
こんな開けた場所に野生のタヌキが通って溜め糞をするとは意外ですが、人通りが少ない過疎地帯の農村なので、夜は特にタヌキの天下なのでしょう。 




 

2024/10/23

タヌキの溜め糞にガガンボが産卵?

 

2023年12月上旬・午前10:50頃・くもり 

里山のスギ林道に残されたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞場を定点観察しています。 
今回は新鮮な糞塊が残されていました。 

1匹のガガンボ(種名不詳)がタヌキの糞の上を歩いて横切っていました。 
後半は立ち止まって何かしています。 
林道を歩いていたガガンボが溜め糞場にたまたま通りかかったのではなく、明らかに獣糞に誘引されて来たようです。 
背側を見下ろすアングルでは産卵しているのか吸汁なのか、見分けられません。 
口器が退化しているように見えるので、吸汁ではなく産卵行動ではないかと思います。 
そもそも私にはガガンボの性別を外見から見分けられません。 
触角や腹端の形状などから性別を見分けられる方がいらっしゃいましたら、教えて下さい。 

撮影アングルを変えてガガンボを側面からも撮りたかったのですが、カメラの電池が切れてしまい残念無念…。 
私がカメラの電池を慌てて交換している間に、ガガンボは逃げてしまいました。 
動画を優先したので、同定用の高画質写真も撮れませんでした。 

冬に観察したフユユスリカ?とは明らかに別種でした。 

関連記事(1年前の撮影)▶  


余談ですが、今回タヌキの溜め糞場sで撮った隣の糞塊の写真をよく見ると、茶色い未消化物が大量に含まれていました。
もしこれがナツメの果皮だとすると、山のタヌキが里まで降りてきて庭木の下でナツメの落果をたらふく食べたことになります。
正式にはタヌキの糞分析をして、ナツメの種子が含まれていることを確かめる必要があります。
ナツメは日本の在来種ではありませんから、山中でナツメの木を見かけるようになったら、タヌキなどの野生動物が種子散布した結果ということになります。

関連記事(同時期に別の地点の溜め糞場で撮影)▶ ナツメの種子散布者としてのホンドタヌキ


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こっちの糞塊にはナツメの果皮が未消化のまま含まれている?

2024/10/13

農村の舗装路に残されたタヌキの溜め糞【フィールドサイン】

2023年10月上旬・午後 

山間部の農村で舗装された車道の道端にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞場を見つけました。 
走行車のタイヤに踏まれたのか、糞塊の形は崩れています。 

糞塊にはカキノキ果実(液果)の種子が未消化のまま大量に含まれていました。 
茶色で扁平の形をした大きな種子なので、素人でもすぐに見分けられます。
したがって、飼い犬が散歩中に残した糞とは考えにくいです。 
カキノキの熟果はタヌキの好物で、種子ごと丸呑みするのです。 

タヌキが里の舗装路に堂々と溜め糞するとは意外でした。 
野生のタヌキが舗装路を獣道として傍若無人に闊歩して溜め糞まで残しているということは、よほど車の交通量が少ない過疎地であることを物語っています。 
車道の外側には土の地面が広がっているのに、タヌキがわざわざ舗装路に排便したのはなぜでしょう?
タヌキも本来なら目立つ場所にサインポストとして溜め糞をしたいのかな?
舗装路の上では糞虫の活動が抑制されます※から、夏も溜め糞が長く残るはずです。
(※ 昼間はアスファルトが日光で熱くなって溜め糞がすぐに乾燥しますし、糞虫が獣糞を地中に埋めようとしても硬いアスファルトによって阻まれてしまいます。)

タヌキによって被食散布された柿の種(種子)が路上に散乱していますが、乾燥したアスファルトの上では発芽できないでしょう。


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2024/10/09

アナグマの溜め糞場に来ていたハサミムシ

2023年10月中旬・午後14:30頃・くもり 

平地のスギ防風林にあるニホンアナグマMeles anakuma)専用の溜め糞場stmpを定点観察しています。 
捨てられたまま長年放置された手押し車の錆びたフレームの中に、黒い泥状の新鮮な糞が残されていました。 
溜め糞をほじくって中に潜んでいる糞虫などを調べるべきだったのですが、この日は写真を撮っただけで済ませました。 

アナグマの溜め糞stmpに群がっていた常連客のベッコウバエ♀♂(Dryomyza formosa)は、私が近づくとほとんどの個体が飛んで逃げました。
撮れた写真を見直すと、珍客のハサミムシも糞塊の上に来ていることに初めて気づきました。 ※
ハサミムシの食性は糞食性ではなく肉食性(捕食者)だと思われますが、いつか実際に食事中の口元を動画で接写してみないことには気が済みません。 
約3m離れた地点にあるタヌキ専用の溜め糞場でも夏にハサミムシが来ていたのを観察しています。 



腹端にある鋏の形状から、今回の個体もおそらくヒゲジロハサミムシAnisolabella marginalis)ではないかと思うものの、触角の先端近くが白いかどうか、写真でははっきり見えません。
(もっと拡大して撮りたいところですが、そもそも私はハサミムシの存在に気づいていないのです。)


※ 鬱蒼と育ったスギ林の林床は昼間でもかなり暗いので、肉眼ではどうしても小さな虫を見落としがちです。 
強力なライト(照明)を持参するのが良いのかもしれませんが、明るい光で照らしたら虫が逃げてしまいそうな気もします。 


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2024/10/08

林床に散らばるアケビ果実の断片は誰の仕業?【食痕・フィールドサイン】

2023年10月中旬 

ニホンアナグマが営巣する平地の二次林を探索していたら、林床にミツバアケビ果実の断片が散乱していました。 
野生動物が果肉を食べた後の食べ残し(食痕)のようです。 
苦い果皮はちぎられただけで、甘い果肉および種子はほとんど食べられていました。 
どこか近くの藪に生えたミツバアケビの蔓から熟した果実だけをもぎ取って運び、食べ残し(残渣)を捨てて行ったのでしょう。 


トレイルカメラで長期間監視したおかげで、この二次林には様々な哺乳類が生息していることが分かっています。 
その中で果実食をする者として、ホンドテンMartes melampus melampus)、ハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)、ニホンザルMacaca fuscata fuscata)などの仕業と予想されます。 
テンが排泄した糞の中にアケビの種子が未消化のまま残されているのを山中で観察したことがあります。 

ニホンザルがアケビを食べたらしい傍証(食痕)は次の動画に示されています。 
関連記事(約2週間前の撮影)▶ 路上でクリの落果を拾い食いするニホンザルの群れ 


ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)やニホンアナグマMeles anakuma)も雑食性なので、アケビの果実に手が届けば、もしかしたら食べるかもしれません。 
タヌキやアナグマが残した溜め糞の中にミツバアケビの種子が未消化のまま排泄されるかどうか、糞内容物を調べる必要がありそうです。 
本格的な糞分析をしていませんが、糞塊を目視した限りでは、これまでアケビの種子を見たことはありません。
(もちろん、素人が見落としている可能性も高いです。) 

アケビ果実の断片に犯人の歯型や唾液が残っていそうなので、DNAを解析すれば誰が食べたのか法医学的に突き止めることができるかもしれません。 

スナップ写真をじっくり見直すと、微小なアリ(種名不詳)がアケビ果実の断片に群がっていました。 
わずかに残ったアケビの種子に付属するエライオソームを目当てにアリが集まっていたのでしょう。 
フラッシュを焚いてアリの写真をマクロレンズでしっかり接写するべきでした。 
枝葉が鬱蒼と茂った林内は昼間でも非常に薄暗くて、肉眼ではアリの存在に全く気づかず、通りすがりにスナップ写真を撮っただけです。 

アケビは甘い液果を報酬にして野生動物に食べられ、糞と一緒に排泄された種子が遠くに撒かれる、という種子散布の戦略をとっています。(被食型の動物散布) 
糞に含まれるアケビの種子にはエライオソームが付属しているので、これを目当てにアリが1粒ずつ巣に運び、さらに種子の分布を広げます。(アリ散布) 
アリはエライオソームだけを取り外して食べ、種子はゴミ捨て場に捨てるのだそうです。


アケビの実が熟す前からトレイルカメラで監視して、野生動物が採食する決定的瞬間を証拠映像に撮れたら最高です。


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・牧野富太郎『アケビ』 

2024/10/05

ナツメの種子散布者としてのホンドタヌキ

 



2023年11月下旬・午後12:25頃・晴れ 

平地のスギ防風林に残されたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞場wbc1を定点観察に来ました。 
まるでノウサギの糞のようなコロコロと丸い小さな糞粒が目に付きました。 
時間が経つとタヌキの溜め糞にケカビが生えてきます。 
新鮮な糞塊にベッコウバエ♂(Dryomyza formosa)が来ていました。 
交尾相手の♀を待ち伏せしているのです。(動画公開予定)

イチョウの種子(銀杏)やカキノキの種子が消化されないまま糞と一緒に排泄されていたのは前回と同じです。 
今回は、見慣れない茶色の果皮がほとんど消化されず大量に排泄されていました。 
この時期のタヌキがよく食べている旬の果物は何でしょう? 
私には心当たりがありました。 
近くの民家の庭に植栽されたナツメの果実ではないかと予想したのです。 
(その後、近所の別な地点でもナツメの若い庭木を見つけました。) 





早速、溜め糞場wbcから直線距離で約800m離れたナツメの木を見に行ってみると、完全に落葉した後の枝先に熟した果実が実っていました。 
ナツメの果実は核果に分類されるのだそうです。 
木の下には大量の落果が散乱しています。 
動画に撮りながら、ナツメの落果を手でほぐして、中に含まれている種子を確認しました。 
ほぐした茶色のナツメ果皮が、タヌキの溜め糞場で見つけた未消化物とそっくりです。
ホンドタヌキはナツメの落果(核果)を少し咀嚼しただけでほぼ丸呑みしているようで、消化が悪く、ほとんどそのまま糞と一緒に排泄されていました。

このときは種子を捨ててしまいましたが、後日に再訪してナツメの種子を改めて採集しました。 (写真公開予定)
今後はタヌキの糞分析で見つけた未消化の種子がナツメかどうか、詳細に比較することができます。 

ナツメの種子はタヌキによって被食型の動物散布されていることが分かりました。 
やがてタヌキの溜め糞場からナツメが芽生えてくるでしょう。


今後の課題は次の3点です。
今回はナツメの果皮だけで判断してしまいました。
まず何よりも、タヌキの溜め糞にナツメの種子が含まれることをしっかり確認しないといけません。 (※ 追記参照)
もう一つは、ナツメの木の下で秋に落果を夜な夜なタヌキが拾い食いに来るかどうか、トレイルカメラを設置して確かめる必要があります。
タヌキ以外の野生動物もナツメの種子散布を助けているかもしれません。
最後に、溜め糞から回収した種子の発芽能力を調べたら完璧です。


※【追記】
2023年12月上旬
少し離れた別の溜め糞場ph:スギ倒木横で撮った写真に、未消化のまま排泄されたナツメの茶色い果皮および両端の尖った細長い種子が写っていました。





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2024/09/28

晩秋に落葉した二次林の林床をあちこち掘り返したのはニホンアナグマのしわざ?

 

2023年11月中旬・午後13:45頃・晴れ 

ニホンアナグマMeles anakuma)が営巣する落葉した二次林で、林床のあちこちに落ち葉やその下の土を掘り返した浅い穴が掘られていました。 
立木の根元も浅く掘られています。 
おそらくアナグマが採食した痕跡(フィールドサイン)だと思うのですがどうでしょうか? 
地中のミミズなどを好んで捕食するのだそうです。 
もちろん晩秋にだけこうした採食跡が見つかるのではなく、他の季節でも同様の採食痕があるのですけど、動画ネタが乏しくなってきたこの時期に思いついて撮影してみました。

以前、私は野生動物のフィールドサインを解説した本を読んで、掲載された採食シーンのイラストについて噛み付いたことがあります。 

関連記事(1年前の撮影)▶ 林道を掘り返した採食跡は誰のしわざ?【ニホンイノシシまたはニホンアナグマのフィールドサイン】
果たしてどれだけがトレイルカメラによる証拠写真(または動画)によって裏付けられているのか、気になります。 「採食行動をもっともらしく描いたイラストは、ただの想像図(筆者の仮説、妄想、願望、ファンタジー)ではないのか?」と疑い深い読者が意地悪な質問をしたときに、どのように反論するのでしょう? フィールドあるいは飼育下で採食シーンを直接観察した直後に食痕の写真を記録したのであれば、文句はありません。

今回私が「この動画に写っているのはアナグマの採食痕だ」と断定的に言った場合、過去に抱いた疑念がブーメランのように返ってきます。 
採食シーンを直接見てませんから、例えば「タヌキの採食痕ではないと言い切れるのか?」と詰問されると困ってしまいます。 

今のところ、私はアナグマの撮影を無人カメラに任せて、この二次林にはなるべく立ち入らないようにしています。 
理想を言えば、私もこの二次林の樹上にツリーハウス(観察小屋)を建てて何日間も中に篭り、アナグマの採食行動を直接観察してみたいものです。 
採餌シーンをこの目で見た直後に採食現場へ急行し、フィールドサインを確認すれば、それ以降に自信をもって見抜くことができるでしょう。 
しかし、広い林床のどこでアナグマが採食するのか予想できないため、待ち伏せできないのが問題です。 
よく通ってくるお気に入りの餌場があれば、そこにトレイルカメラを仕掛けてもよいでしょう。 
人工的に餌場を設けて(給餌して)採食シーンが撮れたとしても、私が知りたいことからずれてしまいます。 
宝くじにでも当たって莫大な予算(財力)があれば、監視カメラの数を増やして林内で格子状にくまなく設置するのが近道かもしれません。

エゾタヌキと違ってホンドタヌキは真冬でも元気に活動することが分かっています。 
ニホンアナグマは厳冬期に冬ごもりするだけで冬眠はしないとされています。 
しかし冬の雪国(豪雪地帯)で野生のアナグマの行動を観察した記録はあまりないようです。
冬は絶食して秋に蓄えた皮下脂肪で生き延びるのでしょうか?
ここ雪国でもアナグマが真冬の巣外でときどき採餌する(深い雪を掘り返して地中のミミズを捕る?)とは素人には信じがたい話です。
この点をフィールドサインおよびトレイルカメラによって突き止めるのが次の目標です。 
もしもアナグマが冬ごもりした時期(厳冬期)にも林床に掘り返した採食痕があれば、それはタヌキなどアナグマ以外の野生動物のしわざであると言えそうです。 


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2024/09/23

イチョウの種子(銀杏)散布者としてのホンドタヌキ

 

2023年11月上旬・午後12:40頃・晴れ 

平地のスギ防風林でホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場wbcをトレイルカメラなどで定点観察しています。 
秋も深まり気温が下がったせいか、食糞性の昆虫が集まって来なくなりました。 

タヌキの溜め糞場には様々な種子が未消化のまま含まれていて、雑食性のタヌキが何を食べたのか旬のメニューを推理することができます。 
たとえば、柿の種は形が分かりやすく、素人にも一目瞭然です。 
(ちなみに、糞塊に混じっていたカキノキの種子も1個だけ動画に写っています。)
今回は銀杏(イチョウの種子)が糞塊に多数含まれていました。 
現場はスギ林ですから、溜め糞場の横にイチョウの木はありません。
スギ林の外から銀杏が大量に持ち込まれたことになります。

タヌキの糞塊を棒の先でほぐして、銀杏をほじくり出してみました。 
 硬い殻で守られたイチョウの種子(銀杏)は噛み砕かれておらず、臭い果肉(正確には外表皮)と一緒に丸呑みされたようです。 
イチョウの種子は未消化のまま、糞と一緒に丸ごと排出されていました。 
養分が豊富な溜め糞の中からイチョウの種子が発芽したら、種子散布に成功した(分布を広げた)ことになります。 
ただし、この地点は鬱蒼としたスギ林の暗い林床なので日照が乏しく、イチョウの芽生えは育たないでしょう。 
もしも強風の嵐が吹き荒れてスギの木が風倒すれば、林冠ギャップができて日光が射すようになり、イチョウが育つチャンスも生まれるかもしれません。 







撮影後、周囲にイチョウの木が生えているかどうか、探索してみました。 
次の課題として、イチョウの木の下にトレイルカメラを設置して、銀杏を食べに来るタヌキの証拠映像を撮ってみたくなります。
神社の境内に植栽されたイチョウの大木を見に行ったのですが、地面に落ちているのはイチョウの黄色い落ち葉だけで、銀杏は全く見つかりませんでした。 
近年は悪臭を放つ銀杏が嫌われ、街路樹のイチョウ雌株は次々に伐採されて雄株ばかりになっています。
他には某施設の敷地内で黄葉したイチョウの木を見つけたのですが、部外者は立ち入ることができません。 
おそらくタヌキは夜な夜なそこに忍び込んで、イチョウの落果を食べているのでしょう。 
次に掲載するのは資料用の写真で、11月上旬に全く別の地点で撮影したイチョウの落果(銀杏)です。




関連記事(2ヶ月後)▶ イチョウの種子(銀杏)を拾い集める


イチョウは「生きた化石」と呼ばれ、太古の昔には草食性の恐竜によって被食型種子散布されていたと考えられています。 
恐竜の糞の化石から、銀杏が発見されたからです。 

それにしても不思議なのは、イチョウの外種皮には悪臭(不快な糞便臭)があり、種子にはさまざまな有毒物質が含まれていることです。 
大切な種子が成熟するまで草食動物に果実を食べられないようにイチョウは防御しているのでしょう。
どうしてタヌキなどの野生動物が銀杏を好き好んで食べるようになったのか、不思議でなりません。 
鋭い嗅覚をもつタヌキにとって、銀杏は食欲をそそる匂いなのでしょうか?
wikipediaでイチョウの記事から銀杏の毒に関する記述を引用します。
イチョウの種子が熟すと肉質化した種皮の外表皮が異臭を放ち[128]、素手で直接触れるとかぶれやすい[119]。異臭の主成分は下記の皮膚炎の原因となるギンコール酸である[128]。異臭によりニホンザル、ネズミなどの動物は食べようとしないが、アライグマは食べると言われている[129]。

 

種皮の外表皮には乳白色の乳液があり、それにはアレルギー性皮膚炎を誘発するギンコールやビロボールといったギンコール酸(ギンゴール酸)と呼ばれるアルキルフェノール類の脱炭酸化合物を含んでいる[44][111]。これはウルシのウルシオールと類似し、かぶれなどの皮膚炎を引き起こす[128]。

 

食用とする種子にはビタミンB6の類縁体4'-O-メチルピリドキシン (4'-O-methylpyridoxine, MPN) が含まれている[128][131][132] が、これはビタミンB6に拮抗して(抗ビタミンB6作用)ビタミンB6欠乏となりGABAの生合成を阻害し、まれに痙攣などを引き起こす[128]。銀杏の大量摂取により中毒を発症するのは小児に多く、成人では少ない[115]。大人の場合かなりの数を摂取しなければ問題はない

私はてっきり、タヌキが銀杏の外側の臭い果肉(正確にはイチョウの外表皮)を食べるために種子ごと丸呑みしているのかと思っていました。 (周食型種子散布)
種子散布者のタヌキは種子を噛み砕かずに丸呑みするので、種子に含まれる中毒物質には影響されないのでしょう。
もしもタヌキがイチョウの外表皮を忌避して(取り除いて)種子だけ食べるのだとしたら、硬い殻を噛み砕かないと栄養豊富な仁を消化できませんし、一体なんのために銀杏を丸呑みしているのか、意味が分かりません。
タヌキに銀杏を給餌して食べ方を実際に観察してみないといけません。 

私は飲んだことがありませんが、コピ・ルアクと呼ばれる高級なコーヒーがあります。
ジャコウネコがコーヒーの果実を食べると、種子は消化されないまま糞と一緒に排泄されます。(ジャコウネコによるコーヒーの種子散布)
それをヒトがわざわざ拾い集めて洗浄してから、コーヒー豆として焙煎すると、すばらしい香りがするのだそうです。
(コピ・ルアクを最初に試飲した勇者を尊敬します。)
タヌキの溜め糞から回収した銀杏も、もしかしたら意外な風味が加わり、希少価値のある食材として高級料亭に売りつければ商売になるかもしれませんね。(ビッグ・ビジネスの予感!)
ぜひ誰か勇者が味見してみてください。
タヌキの糞が臭くて駄目だとしても、別の野生動物ならどうでしょう?

つづく→ 


※【追記】
2023年12月上旬
少し離れた別の溜め糞場ph:スギ倒木横で撮った写真に、未消化のまま排泄されたイチョウの種子(銀杏)および黄色い外表皮が写っていました。


ソバの実も溜め糞に含まれていました。




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