2026/06/20

ホンドタヌキ♂がパートナー♀の尻の匂いを嗅いだり小便跡を舐めたりして発情状態を頻繁に調べアロマーキングを繰り返す:3月上旬〜中旬【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2025年3月上旬〜中旬 

雪国の落葉二次林でホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が越冬する巣穴を自動撮影カメラで見張っています。 
ここは以前、ニホンアナグマが掘った営巣地(セット)でした。 

シーン1:3/10・午後20:10・気温-1℃(@0:00〜) 
晩に右から来たタヌキ♂aが、細い落葉灌木に小便をかけて縄張り宣言のマーキング(匂い付け)をしました。 
このとき右後脚を上げたので、♂と判明。 

巣口Rを覗き込んで点検中に、後続個体の♀bが遅れて右から登場。
巣口Rで合流した♀が入口の匂いを嗅いでいると、♂aが背後から♀bの尻の匂いを嗅ぎました。 
パートナー♀の発情状態をチェックしているようですが、巣口Rの窪みでの行動は残念ながらよく見えません。 
続けて♂が♀の体に排尿しました(アロマーキング)。 

左に立ち去る際にも、♂が♀の尻の匂いを嗅いで発情状態をチェックし、♀にアロマーキングしました。 
このとき♀が雪面で腰を落としたのは、♂のしつこいセクハラを嫌がっているのでしょうか?


シーン2:3/10・午後20:13(@1:00〜) 
♀♂ペアから少し遅れて、両目のタペータム(輝板)が失明したタヌキが右から来ました。 
巣口Rには立ち寄らずに、左下手前へ向かいます。 

実はこの個体が3時間前の夕方に獲物の生魚?を雪の下に埋めたばかりなので、貯食地点に向かったのかもしれません。


しかし、別アングルの監視カメラにそのシーンがなぜか写っていませんでした。 


シーン3:3/11・午前0:16・気温-2℃(@1:19〜) 
日付が変わった深夜に、右から来た先行タヌキ♀が巣口Rを点検しています。 
遅れて右から来た後続個体♂が通りすがりに、いつもの細い落葉灌木に軽く小便をかけてマーキングしました。 
巣口Rで合流すると、今度は♂が巣口Rの匂いを嗅ぎます。 

その間に、♀は同じ落葉灌木に排尿マーキングしました。 
♀は排尿時に後足をほとんど上げません。 
♂♀ペアが連続して同じサインポストに尿で匂い付けしたことになります。 
その直後に、巣口Rから戻ってきた♂が♀の小便跡をペロペロと舐めました。 
これもおそらく♀の発情状態をチェックしているのだと思いますが、初めて見る行動です。 
素人目には、フレーメン反応はしてないようです。 
♂は再び同じ落葉灌木にしつこく自分の尿で匂いを上書きしました。 
それでも立ち去り難いようで、また小便跡をペロペロ舐めました。


シーン4:3/11・午前0:18(@2:19〜)
30秒後に、両目失明個体が営巣地に来ていました。 
今回も巣穴Rには立ち寄らずに、右下手前へ立ち去りました。 


シーン5:3/12・午前8:23・晴れ・気温7℃(@2:33〜) 
翌日の明るい朝に、右から来たタヌキ♀が巣口Rの手前で立ち止まり、手前をキョロキョロ見ていました。 
すぐに右から後続個体♂が来ました。 
合流したペアが右を気にしているのは、殿しんがりのヘルパー個体(両目失明)が来るのを待っているのかな? 
その間に、♂が♀の尻の匂いを嗅いで発情チェックし、♀の体に尿をかけました(アロマーキング)。 

おそらく両目失明個体と思われるタヌキが遅れて到着し、巣口Rを軽く点検しました。 
明るい日中は、タペータム反射の有無による個体識別ができません。 
続けて♀も巣口Rを覗き込んで調べています。 


シーン6:3/12・午前8:24・晴れ・気温4℃(@2:33〜) 
別アングルに設置した監視カメラでも撮れていました。 
先着の♀♂ペアが背後を振り返って、殿しんがりを務めるヘルパーh(両目失明個体)がついて来るのを待っています。 
♂が♀の発情状態を調べてから、♀に尿をかけてアロマーキング。 
♀h、♀、♀hの順で巣口Rを覗き込んで奥の匂いを嗅ぎました。 
横で待っていた♂は、♀hに割り込まれても怒りませんでした。 


【考察】 
ホンドタヌキは一夫一妻制の社会構造です。
この時期の♂は、とにかくパートナー♀との交尾のチャンスを逃すまいと必死です。 
常に行動を共にして(配偶者ガード)、隙あらば♀の尻を追い回して、性フェロモンの変化を嗅ぎ取ろうとしています。
♀が小便した跡を直後に♂が舐める行動を初めて観察しました。
♀の体に♂が自分の尿をかけるアロマーキングも頻繁に行いました。

両目失明個体と♀♂ペアの関係が気になります。
採食のために出歩く際には、いつも健常♀♂ペアの後をついて歩いているようです。 
夜の行動で♀♂ペアから遅れがちなのは、夜目が効かないというハンディキャップのせいなのか、気になるところです。
♀♂ペアが産んだ複数の子供の中で、失明のハンディキャップが理由で選ばれたのか、ヘルパーとして縄張りに留まることを許された♀だろうと、私は想像しています。 
他の兄弟姉妹はすでに子別れした後のようです。
(両目失明個体の性別は不明ですが、♂はヘルパーとして選ばれずに両親の縄張りから放逐されるはずです。) 
この後も観察を続けると、両目失明のヘルパー♀は3頭の核家族の中では立場がとても弱く(劣位の個体)、いつも両親♀♂に遠慮して暮らしている印象です。 


つづく→

湿地を舐めてミネラル摂取するマツムラハラブトハナアブ♀?【ベーツ型擬態】

 

2026年5月中旬・午後13:00頃・晴れ 

春の里山のジメジメした林道の横の草むらで、低く飛び回っている虫がいました。 
てっきりクロマルハナバチBombus ignitus)の創設女王が営巣地を探索中なのかと思い、季節の風物詩を動画に撮ったつもりです。
ところが映像を見直すと、マルハナバチにベーツ擬態したハナアブ科の仲間と判明しました。 

山腹をトラバースする林道のこの区画は、沢からの水が流れ込み、年中湿って泥濘になりがちです。 
このハナアブ♀は口吻を伸縮させて湿った地面を舐めていました。
吸水しつつミネラル成分を摂取しているのでしょう。 
ミゾソバやヘビイチゴ、スギナなど湿地性植物の茂みの奥にどんどん潜り込んでしまい、姿を見失いました。 

関連記事(同所で3年前の撮影)▶ 山道の水溜まりに集まって産卵するオオハナアブ♀ 


今回の個体は、左右の複眼が離れているので♀ですね。 
翅先が擦り切れているので、越冬明けの個体なのかな? 
羽化直後にしては翅の損傷が激しいです。 (※ 後述の考察を参照)

いつもお世話になっている「ハナアブの世界」サイトで標本写真を見比べると、Mallota属(ハラブトハナアブ属)のようですが、種までは絞り込めませんでした。 
素人目には、マツムラハラブトハナアブ♀(Mallota rubripes)やミケハラブトハナアブ♀(=アシボソミケハラブトハナアブ;Mallota munda)などが似ている気がします。 
現場で私が騙されたように、ベーツ型擬態のモデルは、クロマルハナバチ♀(Bombus ignitus)だと思われます。


※【考察】
ハラブトハナアブ属の越冬態について、ChatGPTに質問してみました。

Q1: Mallota属(ハラブトハナアブ属)のハナアブ類は成虫で越冬するのか? 越冬態について調べて

A1: ハラブトハナアブ属(Mallota)の越冬態については、日本語文献では情報が少ないのですが、現在得られる情報を見る限り、

少なくとも日本産のタカサゴハラブトハナアブ(Mallota takasagoensis)は成虫越冬とされています。 (Insect)

ただし、属全体としては少し注意が必要です。

Mallota属全体の生活史

Mallota属の幼虫は、樹洞(うろ)や腐朽木の水たまりに生息する、いわゆる「ラットテイルマゴット(尾呼吸管をもつ幼虫)」です。(ウィキペディア)

ヨーロッパや北米の種については、

  • 幼虫は樹洞の腐植質や微生物を食べる

  • 成虫の出現期間は短い

  • 多くの種は春から初夏に見られる

ことが知られています。(ウィキペディア)

一方で、Mallota属全体について「成虫越冬が一般的」と明記した信頼できる総説は見つかりませんでした。

成虫越冬の可能性

日本の昆虫図鑑ではタカサゴハラブトハナアブについて

冬は成虫で過ごす

と記載されています。(Insect)

また、ヨーロッパ産の近縁種では春のかなり早い時期(4月頃)から成虫記録があり、成虫越冬を示唆する場合があります。(ResearchGate)

ハナアブ科全体で見ると、成虫越冬する種は珍しくありません。たとえばホソヒラタアブ類やナミホシヒラタアブ類では、受精雌成虫が物陰で越冬します。(RHS)

結論

現時点で言えるのは、

  • 日本産のタカサゴハラブトハナアブは成虫越冬とされる。 (Insect)

  • Mallota属全種が成虫越冬とは断定できない。

  • ただし、少なくとも一部のMallotaでは成虫越冬が行われている可能性が高い。

ということです。

もしお調べの対象が日本産のハラブトハナアブ類(タカサゴハラブトハナアブ、アシブトハナアブ類など)であれば、学術論文や『日本産ハラブトハナアブ属の再検討(Hirooka & Maruyama, 2015)』などをさらに追って、種ごとの越冬態を調べることもできます。現状では「属としては不明だが、日本で普通に見られるタカサゴハラブトハナアブは成虫越冬」というのが最も確実な答えです。


Q2: 5月中旬に低山で観察したハラブトハナアブ属の成虫は、翅先が擦り切れていました。羽化直後にしては翅の損傷が激しいので、越冬明けの個体だろうと推測したのです。


A2: その推測は十分に合理的だと思います。

ハナアブ類では、羽化直後の個体は通常、

  • 翅縁が滑らかで欠損がない

  • 翅膜にしわや摩耗がない

  • 体毛がよく残っている

という状態です。

一方、成虫越冬した個体では、

  • 翅先や翅縁の欠損

  • 翅膜の擦れ

  • 胸部や腹部の毛の脱落

  • 体色の退色

などがしばしば見られます。

5月中旬という時期も興味深い点です。もしその種が春に羽化するのであれば、新成虫が出始めていてもおかしくありません。しかし、「翅先が明らかに擦り切れている」という観察事実は、単なる春羽化個体よりも、前年から生存している成虫を示唆します。

特にMallota属は一般的なヒラタアブ類のように何世代も繰り返すタイプではなく、幼虫期間が長く、樹洞環境に依存する種が多いため、春先に見られる個体が越冬成虫である可能性は十分考えられます。

もちろん、翅の損傷だけでは確定できません。例えば、

  • 羽化後しばらく活動した個体

  • 鳥やクモの攻撃を受けて逃れた個体

  • 樹枝や下草との接触が多かった個体

でも翅は傷みます。

ただし、

「5月中旬」
+
「翅先の摩耗が顕著」
+
「Mallota属の一部で成虫越冬が知られている」

という3点を合わせると、その個体が越冬明けの成虫だったという仮説はかなり説得力があります。

もし記録写真が残っていて、胸部や腹部の毛並みも確認できるなら、毛の摩耗状態も重要な手掛かりになります。ハラブトハナアブ類は本来かなり毛深いので、越冬個体では「全体にくたびれた印象」になることが少なくありません。翅だけでなく体毛まで摩耗していれば、越冬成虫説はさらに強まるでしょう。 


ちなみに、ハラブトハナアブ属の♀が樹洞に産卵する様子を以前、観察しています。



【アフィリエイト】 


2026/06/19

チマキザサの葉を食べ漁る雪国のニホンザル♀

 

2026年1月上旬・午後14:50頃・晴れ 

山麓で若い♀(未発情)と思われるニホンザルMacaca fuscata fuscata)が群れから少し離れ、林縁の笹薮に向かって歩いて行きます。 
歩く後ろ姿の股間を見ると、外性器が見えませんし、尻も赤くないので、発情していない若い♀と判明。 

笹薮の雪面に座り込むと、採食を始めました。 
猿が笹の葉を食べたのは初見です。 
このササの種類はチマキザサではないかと予想していますが、笹類は難しくて真面目に検討していません。 
チシマザサ(ネマガリダケ)は、もう少し標高の高いブナ帯に分布しているらしい。 
今回の観察地点は、低山のミズナラ帯です。 

関連記事(14年前の初夏に撮影)▶ ニホンザル♂が笹の新芽を採食 


ニホンザル♀は、常緑の笹の葉を次から次に千切って食べ漁ります。 
餌の乏しい厳冬期には、冬芽や樹皮と並んで貴重な食料なのでしょう。 
手でササの茎を掴みながら幅広い葉を噛みちぎり、口に詰め込んで咀嚼します。 
茶色に枯れている葉は食べず、緑の葉を選んで食べていました。 
ササの葉脈に沿って縦に裂くように噛みちぎるので、独特の食痕が残ります。 
笹の葉を引き寄せるのにいつも右手を使うので、この個体は右利きのようです。 
別の採食法としては、手の届く範囲の笹の葉を食べ尽くした後は、少し離れた位置に生えたササに手を伸ばし、茎ごと噛みちぎってから手元でゆっくり葉を食べることもありました。 (@4:42〜)

笹の葉に栄養価はどれだけあるのでしょうか? 
食物繊維が豊富なので、便秘対策にはよさそうです。 

動画を見直して気づいたのですが、一度だけササ以外の植物を採食しました。 (@4:12〜)
笹の茎に巻き付いて育って枯れた蔓植物の実を食べたようです。 

山形県の豪雪地帯がシカの食害から免れている(シカの生息数が少ない)のは、冬季の主要な餌であるササが雪の下に埋もれて越冬できないからです。 
カモシカと違ってシカは蹄が小さいので、深雪の雪山を歩くのが苦手なのだそうです。 
地球温暖化がこのまま進めば、当地も冬に雪ではなく雨が多く降るようになり、シカが一気に分布を広げて食害も増えると予想できます。 
今回のチマキザサ?群落は雪の下に埋もれていませんから、この積雪量ならホンシュウジカCervus nippon centralis)もぎりぎり越冬できるかもしれません。 
しかし、鹿の群れは餌の笹群落をすぐに食べ尽くしてしまいそうです。 

【アフィリエイト】 


空は晴れているのですが、山麓の日陰はもう薄暗いのです。 
猿は笹の葉を食べながら、右手で痒い脇腹を掻きました。 
雪面に直接座ると尻が冷えるのか、なるべく灌木の枝の上に座るようにしているようです。 
やがて笹の葉を食べ飽きたのか、ニホンザル♀は口をモグモグさせながら、雪道を左に戻って群れの仲間に合流しました。 


【アフィリエイト】 

ランダムに記事を読む