2020/12/31

アオダイショウ:朝の日光浴からの蛇行逃走

 

2020年9月上旬・午前6:40頃・晴れ
▼前回の記事 
アオダイショウの高速ベロ【HD動画&ハイスピード動画】
田園地帯の農道で、朝からアオダイショウElaphe climacophora)が全身を伸ばした状態で横たわっていました。 
横顔にズームインしても、舌を出し入れしていませんでした。 
てっきり車に轢かれたロードキルの死骸かと思いきや、全身をじっくり見ても外傷や出血は認められません。  
私が動画を撮りながら近づき、靴の爪先で蛇にそっと触れた途端に、首だけを曲げてこちらをキッと振り返りました。 
更に私が蛇を跨いでも反応が鈍いです。 
私が歩いて近づく振動を感知したはずなのに、逃げ出す気配がありません。 
しばらくするとようやく舌を出し入れし始めました。 

ヘビは変温動物ですから、体温が未だ低い朝には動きが鈍いのでしょう。 
道端の草むらから舗装路に少し出て来て、朝日が差してくるのを待っていたと思われます。 
農道の中央部まで進めば既に朝日が照り始めていたのですけど、猛禽など捕食者に対して丸見えになってしまうリスクがあります。 
日光浴のために路上に出てきたのだとしたら、路面温度および蛇の体温を測るべきでしたね。 
私が赤外線のデジタル温度計を荷物の中からガサゴソと取り出す間にアオダイショウは逃げてしまいそうな気がして、今回は動画撮影を優先しました。 

目測では結構長い個体でした。 
巻尺で採寸したかったのですが、やはり逃げられそうなので諦めました。 

私がアオダイショウの尾を再びそっと踏むと、素早く蛇行しながら前進して道端の草むらに戻り、姿を消しました。 
踏んだ足を噛まれるかと一瞬焦りましたが、臆病なアオダイショウは慌てて逃げただけでした。 
逃げる瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@2:19) 
素早く蛇行すると、尻尾が鞭のように左右にしなります。  

アオダイショウをそのまま農道に放置していたら、車に轢かれたり、猛禽類に捕食されたりしそうな状況でした。 
実際、近くの電柱にはトビが止まっていて、周囲の田んぼを虎視眈々と見渡して獲物を探していました。  

毒を持たないアオダイショウぐらいは生け捕りにするスキルを身につけたいものです。 
YouTubeにはハウツー動画も公開されていて参考になります。


チョウセンカマキリ♀がアレチウリの花で獲物を待ち伏せハナアブを捕食する一部始終

 

2020年9月中旬・午後15:55頃・くもり  

川沿いの土手に蔓延るアレチウリの群落で、褐色型のチョウセンカマキリ♀(Tenodera angustipennis)が葉に乗ってじっとしていました。 
アレチウリに訪花する昆虫を待ち伏せているようです。 

しばらくすると右下のクズの葉に黒いハエ(種名不詳)が飛来して葉の上を徘徊したのに、カマキリは眼中にないのか無反応でした。 
おそらく鎌の射程距離ではないことを自覚しているのでしょう。 

その次には、ハナアブの一種がアレチウリの花に飛来しました。 
撮影中はハナバチ(蜂)の仲間かと思ったのですが、1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、ハナアブと分かりました。 
残念ながら、ハナアブの吸蜜シーンは手前の花の陰に隠れて見えませんでした。 
チョウセンカマキリ♀は鎌状の前脚を構えると、前後に揺れながら慎重ににじり寄ります。 
鎌を一閃すると俊敏なハナアブを見事に捕らえました。 
その場で捕食開始。 
獲物の頭部から胸部、腹部と平らげ、翅は食べ残しました。 
獲物の腹背がオレンジ色と黒の横縞模様で、ヒラタアブの仲間のようです。 
ハナアブの蜂に似せるベーツ型擬態はカマキリに通用しなかったことになります。 
(そもそもオオカマキリは毒針を持つミツバチやハナバチ類も難なく捕食すると思われます。) 

完食するとチョウセンカマキリ♀はこちらに顔を向けて舌舐めずり。 
獲物を捕らえるために閉じていた右鎌を開くと、獲物の体液の雫が鎌に付着していました。
カメラ目線で凝視している複眼には偽瞳孔が見えます。 
「見たなー!」と言わんばかりの、凄みのある殺し屋の目つきにぞっとしました。
食後のカマキリは汚れた鎌の掃除・身繕いをするはずですけど、先を急ぐ用事があった私は待ち切れずに現場を離れました。 

野外でカマキリが獲物を狩る瞬間を観察したのはこれが初めてでした。 
次回はハイスピード動画で狩りの瞬間を記録してみたいものです。


【追記】
よく調べずにてっきりオオカマキリ♀だと思い込んでいたのですが、チョウセンカマキリ♀と訂正します。

 

2020/12/30

オオイタドリの花蜜を吸うクロヤマアリ♀

 

2020年8月中旬・午後13:20頃・晴れ 

堤防路沿いに咲いたオオイタドリの群落でクロヤマアリFormica japonica)のワーカー♀が訪花していました。 
吸蜜シーンを望遠マクロでなんとか撮れました。 

イタドリの仲間には花外蜜腺があるのですが、オオイタドリの花外蜜腺をアリが舐める様子の撮影は今後の宿題です。 

 ▼関連記事(12年前の撮影) 

砂地を舐めてミネラル摂取するウラギンシジミ♂【HD動画&ハイスピード動画】

 

2020年9月中旬・午後15:20頃・くもり 

河川敷の水溜りの横でウラギンシジミ♂(Curetis acuta paracuta)が吸水していました。 
私が知らずに近づいたら飛び立ってしまい、しばらく待っても水溜りには戻って来てくれませんでした。 
激しく飛んで河川敷を蝶道のように往復し、砂利道の地面に降り立ってはあちこちで吸水を繰り返しています。  
翅をしっかり閉じたまま、口吻を伸ばして砂利道を舐めていました。 
水たまりに比べて地面がそれほど湿っているようには見えないのですが、ナトリウムなどのミネラル成分を摂取しているのでしょう。 
翅裏は純白(銀色)で、周囲の砂利に紛れてあまり目立ちません。 

ヒトの気配に非常に敏感なので、なかなか近づけません。 
仕方がないので、望遠レンズを装着して撮影しました。 

飛び立つと、翅表が赤いことから♂と判明。 
羽ばたくと赤と白が激しく点滅します。
低空で忙しなく飛び回っては砂利道に着陸し、地面の湿り具合を味見して回ります。 
 ウラギンシジミ♂の飛翔シーンを240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:44〜)

2020/12/29

夏の水田を走るキジ♂(野鳥)

 

2020年7月上旬・午後18:30頃・くもり 

夕暮れの田んぼで農道を慌てて走り去るキジ♂(Phasianus versicolor)を見つけました。 
知らずに近くを通りかかった私を警戒して逃げ出したのでしょう。 
途中で立ち止まって、水田の右に隣接するヨシ原を見ています。  
すぐにまた歩き始め、狭い用水路をぴょんと飛び越えました。(@0:20) 

近所の線路を列車が轟音を立てて通過しても、特に怯える素振りはありませんでした。
この辺りを縄張りとするキジ♂にとって日常茶飯事ですから、列車の騒音には慣れているのでしょう。
▼関連記事(3年前の撮影:別の縄張りの別個体) 
列車の通過音に驚いて逃げるキジ♂(野鳥)
農道から細い畦道に入ると、ヨシ原の方を目指しています。 
やがて、青々と生い茂ったイネにキジ♂の姿が隠れてしまいました。 
しばらく見失ったものの、私の予想通り、畦道からヨシ原へと警戒しつつ歩いて逃げ込みました。 
どうやら、ヨシ原の茂みの奥にキジのねぐらや巣がありそうです。 
いずれ良きタイミングを見計らって、このヨシ原に踏み込んで調査してみたいものです。

 
▼関連記事(2ヶ月前の撮影) 
耕耘中の田んぼを飛んで逃げるキジ♂(野鳥)
今回と逆のアングルから撮影した映像です。 
この田んぼを縄張りとしている同一個体と思われるキジ♂が、♀と共に同じヨシ原へ飛んで逃げ込みました。

ニラの花蜜を吸うウラギンスジヒョウモン♀

 

2020年9月中旬・午後15:00頃・くもり 

河原の土手に逸出したニラの群落でウラギンスジヒョウモン♀(Argyronome laodice japonica)が訪花していました。 
半開きの翅を開閉しながら吸蜜しています。

最後は背後から黄色い花粉まみれのキンケハラナガツチバチ♂(Megacampsomeris prismatica)が飛来し、同じニラの花序に着陸しました。
それに対してウラギンスジヒョウモン♀は翅をピクッとさせただけで逃げませんでした…と思いきや、結局は飛び去りました。


▼関連記事(7年前の撮影)

2020/12/28

オオイタドリの花蜜を吸うキンケハラナガツチバチ♀

 

2020年8月下旬・午前8:55頃・晴れ 

堤防路に沿って咲いたオオイタドリの群落でキンケハラナガツチバチ♀(Megacampsomeris prismatica)と思しきツチバチが訪花していました。 
すぐに奥の花穂へ移動してしまい、形態上の細かな特徴や吸蜜シーンをあまり観察できませんでした。


▼関連記事(同日に撮影)

オスグロトモエ夏型♀(蛾)の飛び立ち

 

2020年9月上旬・午前10:25頃・晴れ 

郊外の林縁の草むらでオスグロトモエ夏型♀(Spirama retorta)が止まっていました。 
翅を全開にして前翅表の巴紋を披露しています。 
捕食者を威嚇するための眼状紋を同心円ではなく渦巻模様で表現しているのでしょう。
右上にツユクサの花が咲いているものの、吸蜜してる訳ではありませんでした。(※追記参照)
そもそもツユクサの花には蜜腺がありません。

動画ブログで紹介するためには、じっとしている蛾像を撮るだけでは物足りません。 
映像を撮り続けながら左腕を振っただけで準備運動なしに飛び去りました。 


※【追記】
自分でも忘れていたのですが、オスグロトモエとは9年ぶりの再会でした。
▼関連記事(9年前の撮影) 
オスグロトモエ♂夏型(蛾)

そのとき腹面から撮った写真を見直すと、成虫の口吻は退化していませんでした。

果実を吸汁・加害する害虫(吸蛾類)のひとつとして果樹農家には嫌われているのだそうです。

参考:『夜蛾百種:吸蛾類を中心として』p52〜53より

 

2020/12/27

河原でさえずり♪ながら朝食を摂るセグロセキレイ♂(野鳥)

 

2020年8月下旬・午前7:00頃・晴れ 

岩だらけの河原でセグロセキレイ♂(Motacilla grandis)が水際を歩きながらひっきりなしに鳴いていました。 
鳴きながら水際の浅瀬に何度も嘴をつっこんで、水生昆虫などを次々に捕食しているようです。 

かなり複雑な節回しで長々と鳴いています。 
朝からさえずって縄張り宣言しているのでしょう。 
セグロセキレイ♂の囀りさえずりを聞いたのは初めてかもしれません。 
実は、この美声の主がまさかセグロセキレイ♂だとは思いませんでした。  

せっかくなのでセグロセキレイ♂の囀りを声紋解析してみたいのですが、周囲の河畔林からやかましく聞こえる蝉しぐれ(ミンミンゼミ♂など)のピンクノイズに残念ながらかき消されてしまっています。 
こういう場合は、指向性の高い集音マイクを使えば改善するのですかね?  

※ 対岸の鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

 高木清和『フィールドのための野鳥図鑑:水辺の鳥』を紐解いて調べると、セグロセキレイのさえずりは以下のように聞きなしされていました。
ヂインチュイチュイ、ヂュヂュ、ヂュクヂュクピピ、ヂィヂィッ、チッヂピチュイ、ヂヂヂ(濁った声や澄んだ声で複雑に) (p156より引用)
朝日を順光で浴びて、なかなかフォトジェニックな映像になりました。 
私は対岸に張った迷彩ブラインド内の狭い空間で胡座をかいて座ったまま、手持ちカメラで隠し撮りしています。(三脚を不使用) 
セグロセキレイ♂が右にどんどん移動するにつれて、私はカメラを構えたまま上半身をどんどん右にねじり、ヨガのような窮屈な体勢になりました。 
そのため、映像後半は画面の水平が取れず、不自然なほど斜めになってしまいました。 

最後、セグロセキレイ♂は聞き馴染みのある警戒声♪を発しながら飛び去りました。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイすると、カメラの目の前を再び横切っていました。 

朝露を飲むメスグロヒョウモン♂

 

2020年9月上旬・午前9:00頃・くもり
▼前回の記事 
路上の苔を舐めるメスグロヒョウモン♂
峠道沿いに生えたアカソの群落に移動したメスグロヒョウモン♂(Damora sagana)が葉に溜まった朝露(雨水?)を飲んでいました。 
翅をしっかり閉じたまま吸水しています。 

この個体は少なくとも10分以上も路上の湿った苔を舐めたり葉上に溜まった朝露を飲んだりと、大量の水分を摂取していました。 
よほど喉が渇いていたようです。
昼間の猛暑に備えて、予め朝のうちに体に水分を蓄えておくのかな? 

最後に、私が歩み寄ったらメスグロヒョウモン♂は飛んで逃げました。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。

2020/12/26

モンスズメバチの巣内で羽化した雄蜂♂、居候ゴキブリ・ゲジの跳梁跋扈【暗視映像】

 

八重桜の樹洞に営巣するモンスズメバチ:#11

▼前回の記事 
モンスズメバチの巣の定点観察と温度測定【暗視映像】
2020年9月上旬・午前1:30頃・晴れ 

定点観察の間隔が開いて10日ぶりになってしまいました。 
深夜でも半月で明るかったです(月齢19.0)。 
いつものように赤外線の暗視カメラで樹洞内をそっと撮影していみると、モンスズメバチVespa crabro)の巣盤を上からすっぽり覆う外皮の底部が大きく開口していました(巣口の拡大)。 

嬉しいことに、雄蜂♂が既に数匹羽化していて(少なくとも3匹?)、巣盤上を徘徊していました。 
雄蜂♂の触角は長くて先端が緩くカールしてるのですぐ判ります。 
生殖カーストが羽化し始めたということは、コロニーの営巣段階が無事に後半を迎えたことになります。 
新女王よりも雄蜂♂が早く羽化する雄性先熟なのでしょう。 
ただし気がかりなのは、私はこの巣でこれまで創設女王の存在を確認できていません。 
もし今後、新女王が羽化してこなかったら、雄蜂♂はワーカー♀が未受精卵を産卵した結果かもしれません。  

巣盤の育房内では幼虫が蠢いていました。 
おそらくこの蜂の子が新女王に育つのでしょう。 
繭キャップは見当たりませんでした。 

在巣のモンスズメバチ成虫の中には、空いた育房に頭を深く突っ込んでいる個体が数匹いました。 
寝ているのか、それとも育房内の幼虫が吐き戻す栄養液を摂取している(栄養交換)のでしょう。 
頭を育房から引き抜いたら触角の長い♂でした。 

もう一つの特筆すべき変化として、モンスズメバチの巣に居候する虫たちの数が増え、以前より大胆に活動するようになっていました。 
ヤマトゴキブリPeriplaneta japonica)と思われるゴキブリが多数と、1匹のゲジが巣に出入りしていました。 
肉食性のゲジは獲物として何を狩るのでしょうか? 
樹洞内にワラジムシの姿が見えなくなったのは、ゲジが捕食した結果なのかな? 
ゲジが蜂の子を襲って捕食する可能性があるのか、興味深いところです。 

 ヤマトゴキブリは無翅の幼虫または短翅の♀成虫ばかりで、長翅の♂成虫を見かけませんでした。 
ゴキブリが傍若無人に巣に出入りしたり外皮を齧ったり(?)しても、在巣のモンスズメバチ♀は追い払うどころか全く気づいていない(気にしない?)様子でした。 
モンスズメバチは夜行性(昼も夜も外役が可能)のはずなのに、暗闇で目が良く見えるという訳ではないようです。 
居候を決め込んだゴキブリは、体表成分をモンスズメバチに化学擬態して気づかれないようにしているのだとしたら面白いですね。 
モンスズメバチは雄蜂♂の羽化と引き換えに在巣のワーカー♀個体数が減っていたので、コロニー全体の防衛力が低下しているのかもしれません。 

木屑(外皮の破片?)を糸で綴ったようなゴミが樹洞内にぶら下がっていました。 
何者か(居候昆虫:蛾類?)の巣かもしれません。 
後日、この位置にマイマイガの垂蛹が見つかりました。 
他には微小なアリ(種名不詳)も何匹か樹洞内を徘徊していました。 

動画撮影の合間に赤外線のデジタル温度計で測定してみると、巣盤の表面温度は24.6℃。 
樹洞の底に溜まった木屑は24.3℃。 
 樹洞内部(開口部の奥)は24.4℃。 
営巣木の周囲の外気温は24.3℃、湿度76%。 
ちなみに、点灯した赤外線投光器の表面温度は32.3℃まで発熱していました。


オオイタドリの葉で日光浴するコミスジ

 

2020年8月下旬・午前9:00頃・晴れ 

オオイタドリの葉に乗ってコミスジNeptis sappho)が翅を開閉しながら休んでいました。 
口吻に注目しても、葉の表面を舐めてはいませんでした。  
ヒラヒラと飛び回ってから、少し離れた別の葉に着陸しました。 
初めは日陰の葉に居たのに、今度は小さな陽だまりを自発的に見つけて移動してきたのです。 
半開きの翅を開閉しながら朝の日光浴を始めました。 
朝は活動を始める前に体温を上げる必要がありますし、日差しが強い夏は体温が上がり過ぎないように注意する必要もあります。 
一口に「日光浴」と言っても、適切な体温調節のために意外と繊細な行動が必要とされるのかもしれません。 

日光浴中の昆虫(変温動物)をサーマルカメラ(サーモグラフィー)で動画撮影して体温変化を見てみたいのですが、高価で手が出ません…。 
コロナ禍の対策で体温を手軽に測定できるサーマルカメラの需要が世界的に増大したので、手頃な価格まで値下がりしてくれないかと期待しています。
▼関連記事(約2週間前の撮影) 
オオイタドリの花蜜を吸うコミスジ

2020/12/25

止まり木で羽繕いするキジバト(野鳥)

 

2020年7月中旬・午後18:20頃・くもり 

夕方、ヒノキ大木の枯れた梢にキジバトStreptopelia orientalis)が止まってのんびりと羽繕いしていました。 
その行動自体は別に珍しくもありません。
それでもなぜ記録するかというと…

実はこの木は例年だと夏にチゴハヤブサが止まり木としてよく利用しているのですが、この夏はなぜか一度も姿を見かけませんでした。 
キジバトは「鬼のいぬ間に洗濯…ならぬ羽繕い」とばかりに羽根を伸ばしているようです。 
天敵のチゴハヤブサが健在なら、キジバトは恐ろしくてこの木にはとても近づけないはずです。 

▼関連記事(1年前の撮影)

コロナ禍の影響で私も足が遠のいて、定点観察に来る頻度が減ってしまいました。 
そのせいでチゴハヤブサを見逃しただけなら良いのですが、今季は繁殖に失敗したのではないかと心配でなりません。 
「風が吹けば桶屋が儲かる」式の勝手な想像ですけど、コロナ禍→外出自粛→ドバトに餌をやるヒトが減少→地域全体でドバト個体数の減少→チゴハヤブサが狩場を変更→キジバトがのびのび暮らせる、というシナリオかもしれません。
もちろん、新型ウイルス流行の有無に関わらず、鳩への安易な給餌は止めて正解だと思います。

オトコエシの花蜜を吸うツヤハナバチの一種♀

 

2020年9月上旬・午前8:05頃・晴れ 

峠道に沿って咲いたオトコエシの群落でツヤハナバチの一種♀が訪花していました。 
小さな蜂なので、マクロレンズで接写してみましょう。 
黒い(焦げ茶色)口吻を伸縮させながら吸蜜しています。 
後脚のスコパは空荷でした。  
忙しなく動き回るために、頭楯の模様にピントがしっかり合いません。 
『日本産ハナバチ図鑑』の写真と見比べてみると、この個体は腹部に白紋があるので、クロツヤハナバチもエサキツヤハナバチも否定できます。 
キオビツヤハナバチまたはヤマトツヤハナバチで、頭楯の斑紋が退化した個体変異なのかな? 
だとすれば、脚の色から♀と分かります。 
現場は低山の標高421m地点でした。 
山地性のヤマトツヤハナバチと決めつけて良いものか迷います。
蜂を同定するため、撮影直後にビニール袋をすばやく被せて採集したのですが、慌てていたせいで少し潰れてしまいました。 
以下は標本写真(掲載予定) 



2020/12/24

ミドリヒョウモン♂の求愛飛翔と♀の交尾拒否

 

2020年9月上旬・午前9:35頃・晴れ 

山間部の林縁に咲いたオトコエシの花で吸蜜するミドリヒョウモン♀(Argynnis paphia)に対して同種の♂がしつこくつきまとって求愛していました。 
本種の求愛行動は初見です。 
リアルタイムの映像では激しい乱舞にしか見えません。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、なんとか行動を読み解くことができました。 
ミドリヒョウモンは翅の地色で性別を見分けることができる(性的二型)ので、配偶行動の観察に適しています。  
♂の翅は明るい茶色(オレンジ色?)なのに対して、♀の翅は薄くて名前の通り緑っぽい地色です。 

冒頭で♂は♀の周囲で激しく翅をはためかせてアピールしています。 
翅表の黒い性斑を♀に誇示したり性フェロモンを送ったりしているのでしょう。 
しかし♀は翅を半開きにしたまま腹端をやや上に持ち上げて、交尾拒否姿勢を取っていました。 
♂にしつこく迫られた♀は嫌がって、オトコエシの花から下へ下へと葉の茂みへ落ちるように逃げていきます。  
クズの葉の縁に避難した♀は依然として交尾拒否姿勢のままです。
♂が飛びつこうとすると嫌がる♀は逃げて飛び去り、 ♂はすかさず追いかけます。 
空中で激しい乱舞のような追跡求愛飛翔が繰り広げられましたが、交尾には至らずに別れました。 

古い本ですが、日高敏隆『♂をよぶ色とにおい:チョウが♀を見い出す仕組み』に、ミドリヒョウモン♂の求愛飛翔とそれに続く交尾行動が詳しく図解されていました。
ミドリヒョウモンは夏の終わり頃交尾する。林の空き地のようなところで♀を待っている♂は、♀が現れるとすぐ追いかけてゆき、図のような特徴のある追跡をはじめる。(中略) ♀を見つけたミドリヒョウモンの♂は、特殊な追跡飛翔をはじめる。♀のうしろからその下側に出て、さらに目の前を急上昇するのである。これが♀を強制着陸させる信号となる。(『エソロジカル・エッセイ 無名のものたちの世界I』p92〜93より引用)
最後は♀がしつこい♂を追い払ったようにも見えたのですが、引用した解説を読むと、そうではないようです。 
♂が♀の背後から下を通って追い越す求愛飛翔を繰り返したのに♀が誘いに乗らず、♂は♀を見失った(または諦めた)のでしょう。  

現場は峠道の道端で、スギが植林された山の林縁にクズなどが繁茂するマント群落になっていました。 
まさに本に書いてあった通りの環境です。 
昔は蝶の生態動画を自由に撮れなかったはずなのに、先人の鋭い観察眼と緻密な記録にはつくづく感服します。
もちろん、本の解説を全て鵜呑みにはできません。
頭の片隅では常に疑ってかかることが大切です。

オオイタドリの花蜜を吸うクロアナバチ

 

2020年8月下旬・午前9:05頃・晴れ 

堤防路に沿って咲いたオオイタドリの群落でクロアナバチSphex argentatus fumosus)が忙しなく訪花していました。 
白い花穂で口吻を伸ばして吸蜜した後、すぐに飛び去ってしまいました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイすると、頭楯が真っ白だったのでコクロアナバチではなくクロアナバチだと思います。 
クロアナバチの性別の見分け方を私は知りません。


▼関連記事(同日に撮影)

2020/12/23

水門から川の魚を探すカワセミ♂(野鳥)

 

2020年8月下旬・午前7:50頃・晴れ
▼前回の記事 
早朝の川に飛び込んで魚を捕るカワセミ♂(野鳥)
ようやく朝日が高く登り、ギラギラした夏の日差しが川に差すようになりました。 
顔馴染みになったカワセミ♂(Alcedo atthis bengalensis)が飛来し、用水路から川の本流に注ぐ水門の右のコンクリート護岸の天辺に止まりました。 
あまりにも至近距離なので、私はドキドキしながら息を潜めてそっとカメラをカワセミに向けました。 
カワセミがすぐに飛び立ってしまい、落胆しかけたのですが、今度は水門を挟んで左のコンクリート護岸の天辺に止まり直しました。 
「青い宝石」が間近で飛ぶ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
ホバリングしながらコンクリートの先端に止まり直す素振りを一瞬見せてから水門の反対側に飛んだのが見どころです。 
水門を挟んで両側のコンクリート護岸を行ったり来たりしています。  

護岸に止まったカワセミ♂は、ときどき首を上下に伸ばす仕草を繰り返し、川面を見つめています。 
藤田祐樹『ハトはなぜ首を振って歩くのか』岩波科学ライブラリーを読むと、この行動の意味が分かりました。
歩くでも泳ぐでもなく、じっとしているときに首を上下に振る鳥たちもいる。たとえばカワセミだ。(中略)このカワセミを観察していると、ひょいっと首を上に伸ばして、その後に縮める仕草を見せる。この一連の動作は、いったい何なのだろうか?  実はこれは、光の反射などによって見づらくなっている水中の獲物や天敵を見やすくするための行動である。私たちも、川や池にいる魚を見ようとすると、光の加減で水面が反射してしまい、よく見えないことがある。そんなとき、ちょっと頭の位置を変えてみると、見やすくなることがある。それと同じことを、カワセミは上下に首を振ることで行っているのである。 ここでも首振りは、視覚と、そして採食行動が関係しているのだ。 (p101〜102より引用)
水中の魚影を探しながら、小声で鳴いていました。 
※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。  

美しい翡翠色とオレンジ色の羽根が真夏の直射日光で輝いて見えます。 
後頭部から白い綿毛のような羽毛が寝癖のように飛び出ているのが愛嬌ありますね。(換羽中?) 
顔を向ける角度によっては下嘴の下面が少し赤く見えましたが、♀ならもっと全体が赤いはずです。 (もしかして、この個体は♂ではなく若い♀?)
憧れのカワセミをこれほど至近距離から撮らせてもらえて、痺れるほど感動しました。 

 最後はコンクリート護岸から身を翻しながら右へ飛び去り、続けて右から左へ川面スレスレの低空飛行で倒木の方へ飛び去りました。 
もしかすると隠し撮りしている私の存在にはとっくに気づいていて、フェイントをかけたつもりなのかもしれません。 (別個体、例えばつがい相手の♀とすれ違った可能性もありそうです。)


カワセミ♂が止まっていたコンクリート護岸上には白い鳥糞が多数付着していました。 
今回は飛翔前に脱糞しませんでしたが、ここはカワセミが魚を狙うお気に入りの場所のひとつなのでしょう。 
カワセミが吐き出したペリットは見つかりませんでした。(川に落ちてしまうのでしょう。) 
実は以前、ここの対岸でカワセミを目撃したこと、水門の陰から飛び去るカワセミを目撃していました。
更に、水門コンクリート護岸に残された鳥糞の存在からカワセミが来ることを予想(確信)して、私はここに夜明け前からブラインドを張って待ち構えていたのです。 
作戦が見事に成功したので最高の気分です。 
川辺りで徹夜した甲斐がありました。 

水門の真下を覗くと、川の中に黒っぽい小魚が群れていました。 
※ 水中の小魚を早朝6:30頃に撮ったラストシーンだけあまりにも暗過ぎたので、自動色調補正を施しています。

2020/12/22

ヒトリガ♀(蛾)長い準備運動後の飛翔と羽化液の排泄【暗視映像】

 

ヒトリガ(蛾)の飼育記録#7

▼前回の記事 
ヤマグワの若葉を蚕食するヒトリガ(蛾)終齢幼虫【100倍速映像】

2020年8月下旬・午後22:35頃頃 

飼育ケース内で暴れる羽音がするので中を覗くと、いつの間にかヒトリガArctia caja phaeosoma)成虫が羽化していました。 
ヒトリガの蛹は容器の底で6月上旬からずっと、長い眠りに就いていました。
羽化の予定日や前兆が分からなかったので、放置してしまいました。 
それでも成虫まで無事に育ってくれて一安心。 
左右の前翅の翅頂が変形してしまっているのは、翅伸展の際に足場となる止まり木を入れてやるのを私が忘れたせいで、翅先まで充分に伸び切らなかったのでしょう。(羽化不全個体)


 

2020年9月上旬・午前00:25頃・室温26.2℃、湿度55%  

羽化してから2日後。 
夜行性のヒトリガの飛翔行動を記録するために、赤外線の暗視カメラで撮影してみました。 
深夜に様子を見ると、ヒトリガ♀はプラスチック飼育容器の内壁に上向きにへばりつくように静止していました。 
Digital Moths of Japanサイトでヒトリガを調べると「触角は♂で櫛歯状、♀で歯牙状」とのことなので、この個体は♀のようです。 

容器の蓋をそっと外して暗視カメラを近づけても、ヒトリガ♀は寝ているのか無反応でした。 
蛾の翅に指で繰り返し触れると覚醒し、嫌々ながらも壁面を登り始めました。 
容器の一番上に達すると、上縁に沿って歩いて移動します。  

小休止の後に、翅を閉じたまま細かく震わせ始めました。 
しばらくすると急に翅を広げて細かく羽ばたき、飛翔筋の準備運動が本格化しました。 
後翅の眼状紋のような水玉模様が見えるようになりました。 
容器に翅を打ち付ける羽音がパタパタパタ…♪と静かな室内で聞こえます。 
どうも飛び立つには足場が不安定で気に入らないようで、少し移動しました。 
準備運動を止めてしまったので疲れたのか?と思いきや、すぐに再開。 

遂に羽ばたきながら飛び降りました。(@5:15) 
「飛び立ち」というには程遠く、ほとんど落ちるように飛び降りただけでした。 
床で暴れ回り、再び容器の外壁を登り、天辺で激しく羽ばたき続けます。 

急に準備運動の羽ばたきを止めると、腹端から白い?液状便(蛹便・羽化液)を3滴ポタポタと排泄しました。(@6:11) 
飛び立てないのを自覚して、軽量化のため排泄したのでしょう。 

すぐにまた準備運動の羽ばたきを再開すると、床に飛び降りて暴れ回ります。 
翅先が曲がっている羽化不全個体は、とにかく飛翔力が弱くて、残念ながらまともに飛び立てませんでした。 
上手く飛べずにすぐに墜落してしまいます。 
あるいは、多数の卵を体内に蓄えている♀は体重が重過ぎて、飛ぶのは苦手なのかもしれません。 
交尾のために♂が飛来するのをひたすら待つのがヒトリガ♀の配偶戦略なのでしょう。 
♀は性フェロモンを放出するコーリング行動をするはずですが、私は見逃してしまったのか、よく分かりませんでした。  

最後に、白色LEDの照明を点灯しても、疲れ切ったヒトリガ♀は逃げませんでした。 
指で前翅を広げると、後翅に眼状紋のような水玉模様があります。 
蛾の目の前に私が左手を差し出すと、自発的に登ってきてくれました。 
手乗り状態から腕を少し登り、活動停止。 

飼育記録シリーズ完。

ランダムに記事を読む