2026/10/22

ツキノワグマの糞を食べるオオセンチコガネ

 

2025年6月上旬・午後13:25頃・晴れ 

里山の中腹をトラバースする山道の真ん中に大きくて新鮮な獣糞が残されていました。 
タヌキの溜め糞とかではなくて、おそらくツキノワグマ(Ursus thibetanus)の糞だと思います。 
熊よけのスプレー缶(長さ20cm)を糞塊の横に置いて、採寸代わりにしました。 

赤紫色の金属光沢(構造色)に輝くオオセンチコガネ(Phelotrupes (Chromogeotrupes) auratus auratus) が1匹、糞塊に来ていました。 
口元がかすかに動いているので、食糞しているようです。 

関連記事(1年前の撮影)▶ ツキノワグマの糞塊内に潜むセンチコガネ 


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2026/10/21

ホンドタヌキ2頭が休耕地の巣穴と林縁を結ぶ獣道を何度も走って往復する謎の夜【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2025年5月下旬

シーン0:5/21・午後14:57・晴れ(@0:00〜) 
初夏の休耕地でホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)の家族が暮らす営巣地を自動センサーカメラで見張っています。 

今回は謎の行動について報告します。

シーン1:5/23・午後19:34・気温15℃(@0:03〜) 
晩に2頭のタヌキが、巣穴と手前の林縁を結ぶ獣道をなぜか何度も走って往復していました。 
そのうちの1頭は、両目の輝板を失明したヘルパー♀hでした。 
素人目には2頭が興奮しているように見えますが、鳴き声は発しませんでした。 
両目失明個体♀hだけが巣穴Mに出入りしているものの、すぐに外に出てきてもう1頭の健常個体(親ダヌキ)を出迎えます。 
巣外に留まった健常個体(親ダヌキ)が、周囲を見回しています。


シーン2:5/26・午後19:52・気温12℃(@1:03〜) 
3日後の晩にも同様のシーンが繰り広げられていました。 
2匹のタヌキが相次いで巣穴と林縁を結ぶ獣道を走って往復しています。 
巣穴Mを少し覗き込んだだけで、再び夜の運動会(駆けっこ)が再開。 
相次いで巣穴Mに潜り込んだものの、健常個体(父親♂?)がすぐにまた出巣して周囲を警戒したり身震いしたりしています。 


【考察】 
夜の営巣地でホンドタヌキ2頭のこのような疾走シーンを繰り返し見たのは初めてです。 
1頭は両目のタペータムを失明したヘルパー♀hで、もう1頭の健常個体は父親♂ではないかと予想しています。 
幼獣なら暇さえあれば元気に追いかけっこ遊びをするのも分かるのですが、成長した成獣が初夏に体力を持て余しているのでしょうか? 
一体何に興奮しているのか不明です。 
いくつか仮説を立ててみました。
  1. 外敵が営巣地に近づこうとしていたのでしょうか? 
  2. 妊娠していた母親♀がついに巣内で幼獣を出産し、家族が喜んでいるのでしょうか? 
  3. 留守中に母親♀や幼獣が居なくなり、慌てて探しているのかな?
  4.  初夏の休耕地では雑草の繁茂が旺盛なので、獣道が途切れないように、頻繁に往来して踏み跡を残す必要があるのかもしれません。 
個人的には(2)ではないかと勝手に推測しているのですが、根拠はありません。
私はタヌキの家族を怖がらせないように、巣穴には絶対に近寄らないようにしているため、中の様子はさっぱり分かりません。
1回目の5/23の晩に出産したとしても、2回目5/26の興奮状態が説明できません。

つづく→

初夏になっても二次林でホンドタヌキの巣穴を覗いて鳴くカラス【野鳥:トレイルカメラ】

 



2025年5月中旬・午後16:20頃・晴れ・気温25℃ 

若葉が生い茂った二次林でホンドタヌキが使っている営巣地を見張っているトレイルカメラにハシボソガラス(Corvus corone)が写りました。 
ここは以前、ニホンアナグマが掘った営巣地(セット)でした。 

夕方に1羽のカラスが地上に降りて、巣口Lを覗き込んで鳴いていました。 
鳴きながらお辞儀をしたので、ハシボソガラスだと初めは思いました。
しかし、鳴き声が嗄れ声ではなかったので、ハシブトガラスっぽくもあって悩ましいです。 
(お辞儀をしたのではなくて、巣穴を覗き込んだだけかもしれません。) 
左に飛び去るときに横からちらっと見えた嘴が細かったので、やっぱりハシボソガラスなのかな? 
そもそも平地性のハシボソガラスが来るような環境ではないはずなので、森林性のハシブトガラスなのでしょうか? 
若いハシブトですかね? 




カメラの死角で鳴く声が聞こえ、別個体の影が右から左へ横切りました。 


つづく→

2026/10/20

シュレーゲルアオガエルの卵塊を見つけた!#1:山中にある池の岸辺の草むら

 

2026年5月中旬・午後13:25頃・晴れ 

里山の中腹に湧き水が溜まった小さな池EMがあります。 
水中に緑の藻が繁茂して濁り、水質が良さそうとは言えません。 
この池には岸辺に灌木がまったく生えていないので、モリアオガエルは産卵できなさそうです。 
池畔のシダ植物の葉裏に産卵するかと期待したのですが、後日に定点観察してもモリアオガエルの卵塊は産み付けられていませんでした。 

岸辺の草の根元にシュレーゲルアオガエル(Zhangixalus schlegelii)が産み付けたと思しき卵塊を発見しました。 
受精卵を保護する白い泡巣の塊が、水際に生えたシダの若葉が張り付いています。 
右手で卵塊に触れてみると、柔らかくて弾力性がありました。 
産み付けられたばかりのようで、泡巣の表面はカサカサに乾いてはいません。 
表面がペタペタと少し粘り気があったものの、手が汚れるほどではありませんでした。 
卵塊はグレープフルーツぐらいの大きさで、直径6〜8cmぐらいありそうです。 
中に含まれる卵そのものは全く見えませんでした。

シュレーゲルアオガエルは基本的に♀♂1ペアが水辺の地中に巣穴を掘り、その中で産卵するのだそうです。 
私が見つけた卵塊は、巣穴の中ではなくて池の岸(水辺)の草むらに産み付けられていました。 
つまり、その♀♂ペアは巣穴を掘らずに(省略して)産卵したと思われます。 
実際に産卵行動を観察するのが次の課題ですが、モリアオガエルよりも難しそうです。

池の水面には白い泡巣の断片がいくつも浮いていました。 
それを水面下で食べている水生生物はいませんでした。 
これは産卵後のシュレーゲルアオガエル♀♂ペアが別れるときに卵塊の本体から泡状粘液の一部が分離したのでしょう。 
岸辺に産み付けられた卵塊から幼生(オタマジャクシ)が孵化したときも、似たような状況になりそうですけど、私が見つけた卵塊は産卵直後と思われます。 


つづく→?

初夏の営巣地で毛繕いしたり林床の餌を探し回ったりするニホンアナグマ♂【トレイルカメラ】

 



2025年5月下旬・午前11:20頃・晴れ・気温28℃ 

初夏の二次林でニホンアナグマ(Meles anakuma)の営巣地(セット)を2台の自動撮影カメラで見張っています。 
一時期はホンドタヌキが巣穴を乗っ取って越冬していたのですが、最近はアナグマが戻ってきそうな動きをしています。(巣穴を奪還?) 

晴れた日の昼前に、アナグマが独り巣口Rで仰向けに寝そべって毛繕いしていました。 
1.5倍に拡大してみると、素人目には股間に陰茎が見えました。 
体型や顔つきは♀なのに、腹面に乳首はありません。 
若い♂なのかもしれません。 


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2つの巣口L、Rの中間地点に移動して寝そべり、のんびりと毛繕いしたり痒い体を掻いたりしています。 
 林床の匂いを嗅ぎながら巣口Rから少し左に移動して再び寝転ぶと、また体をボリボリ掻いています。 
起き上がると、地面の落ち葉を鼻面で少し掘り、嗅ぎ回ったり前足で少し掻いたりして、獲物となる虫を探しています。 


つづく→

2026/10/19

山中の泉で水を飲んだり浴びたりするイカルの小群【野鳥:トレイルカメラ】

 

2026年6月下旬〜7月上旬 

里山で湧き水が溜まった泉を自動撮影カメラで見張っていると、イカル(Eophona personata)が現れました。 
ここは沢の源流になっています。 
1〜2羽のイカルが通って浅い泉で水を飲んだり、行水したりしています。 


シーン1:6/25(@0:00〜) 
水を飲み、水浴して行きました。 

シーン2:6/28(@1:17〜) 
水を飲んだだけで飛び去りました。 

シーン3:6/30(@1:29〜) 
2羽が一緒に来たのはこの日だけ。 
水を飲んだだけで帰りました。 
水浴したなら水面に波紋が広がったはずです。 

シーン4:7/5(@2:07〜) 
飲水のみ。 

シーン5:7/7(@2:37〜) 
雨が降ったのか、朝はレンズが曇っていましたが、やがて乾きました。 
イカルが日中に4回も通って飲水のみ。 


※ レンズが曇った日の映像は、編集時に自動色調補正を施しています。 
※ イカルの羽音や行水の水飛沫が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】 
この水場でイカルは初見です。 
そもそもトレイルカメラでイカルを撮れたのが初めてでした。 
私はイカルをあまり見たことがないのでGemini AIに訊くと、
山形県などの東北地方では、夏に繁殖のために渡ってくる夏鳥としての傾向が強いほか、秋冬には平野部で群れが見られることもあります。
この辺りで営巣している(縄張りを張っている)♀♂ペアが繰り返し水場に来ているのか、それとももっと多数の個体が入れ代わり立ち代わり来ているのか、イカルの個体識別ができていません。

つづく→?

ハルジオンの花で採餌するハキリバチの一種♀の羽ばたき【ハイスピード動画】

 

2026年5月下旬・午後13:55頃・晴れ 

里山の中腹をトラバースする山道に沿ってに咲いたハルジオンの群落でハキリバチの一種が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。 
横および正面からの撮影アングルだったため、腹面のスコパ(集粉毛)に花粉の有無をしっかり確認できませんでした。 
スコパに白い花粉を集めているような気がします。

ハキリバチ♀は、なぜか腹端を高々と持ち上げた海老反り姿勢になって、花粉や花蜜を採餌しています。 
ハルジオンの花から飛び立っても、すぐ同じ花に舞い戻り、また倒立姿勢になりました。 

高画質のFHD動画と両方撮るつもりだったのに、逃げられてしまい、240-fpsのハイスピード動画しか撮れませんでした。


【考察】
訪花中のハキリバチが腹端を高々と持ち上げた海老反り姿勢になるのがいつも気になっています。
トンボが体温調節するためのオベリスク姿勢(倒立)を連想しました。 

関連記事(6、7、18年前の撮影)▶  

ハキリバチも同じく体温調節が目的の行動なのでしょうか? 
日陰で訪花するハキリバチの姿勢と比べれば、答えが見えてくるかもしれません。 
日向で訪花するハキリバチでも、私が撮影しながら手をかざして日差しを遮ってやり、もしも海老反り姿勢が解除されれば証明完了です。
しかし、急に影を作ったら、蜂は警戒して逃げてしまいそうな気がします。
(試して見る価値はありそうです。)
あるいは訪花中の対捕食者戦略だったり、蜜源植物の占有行動だったり、他の目的もありそうです。 

Perplexity AIに相談すると、全く別な定説があると知りました。
なるほどなー。
自分で思いつかなかったのが悔しいですけれども、納得してしまいました。

Q: 訪花中のハキリバチが、なぜか腹端を高々と持ち上げた海老反り姿勢になって、花粉や花蜜を採餌している。この奇妙な姿勢の意味や目的について研究されているか? トンボが体温調節するためのオベリスク(倒立)姿勢を連想した。あるいは訪花中の対捕食者戦略だったり、蜜源植物の占有行動だったり、他の目的もありそう。

A: はい、研究・解説が存在します。最有力の説明は、ハキリバチ類(とくにメス)が花粉を腹部腹面の「腹毛刷(scopa)」で運ぶため、訪花中に腹端を持ち上げて花粉塊を花に擦り落とさないようにしている、という機能形態的な仮説です。トンボのオベリスクのような体温調節目的というより、ハキリバチ特有の花粉運搬様式に強く結びついた姿勢と考えられます。 arboretumfoundation

なぜ腹端を上げるのか

ハキリバチ属 Megachile などのメスは、後脚の花粉かごではなく、**腹部腹面に密生する剛毛帯(scopa)**に花粉をためます。花の上を動き回る際、腹面を下ろしたままでは花粉塊が花弁・雄しべ・蜜腺などに接触して失われやすいため、腹部を高く持ち上げる姿勢が有利になります。 arboretumfoundation

  • 訪花中に腹端を上げる行動は、Megachile の特徴的姿勢として複数の解説で記載されています。 arboretumfoundation
  • 「花粉を腹面に載せたまま保持するため、腹部を高く持ち上げる」という説明は、飼育・保全ガイドやネイティブビーの解説でも繰り返し示されています。 honeybeesuite
  • 腹部腹面の花粉は後脚花粉かごに比べて露出度が高く、花との接触で落ちやすい。そのため、採粉時以外は接触を避ける姿勢が合理的です。 buzzaboutbees

「海老反り」の見え方

観察された「腹端を高々と持ち上げた海老反り」は、おそらく次の2要素の合成です。

  • 花粉保持:腹面のscopaを花から離す。
  • 姿勢制御・花面への適合:頭部を花芯に差し込み、蜜を吸いながら体幹を斜め〜逆立ち気味にする。花の向きが上向き・水平・下向きでも、ハキリバチは姿勢を変えて訪花します。 pmc.ncbi.nlm.nih

つまり、トンボのオベリスクのように「腹部を太陽光から離して冷却する」ことを主目的とする姿勢ではなく、花粉運搬器官を物理的に保護する採餌姿勢である可能性が高いです。 arboretumfoundation

他の仮説の評価

仮説 評価
花粉塊の保護 最有力。腹面scopaによる花粉運搬と直接対応する。 arboretumfoundation
体温調節 可能性はあるが、ハキリバチ訪花時の腹端挙上を体温調節とする強い実験的証拠は見当たらない。ミツバチ・マルハナバチでは摂餌時の腹部呼吸運動や胸部温度上昇が研究されているが、これは別の種群・文脈である。 labs.biology.ucsd
対捕食者戦略 説明としては考えられるが、腹端挙上に特化した証拠は現時点で弱い。クモや捕食性昆虫が花上にいる場合、体幹を上げることで腹部先端を遠ざける効果はあり得る。
蜜源占有・縄張り オスではあり得る。ハナバチのオスは花を縄張りとして利用し、訪花メスとの交尾機会や他昆虫の追い払いに関わることが知られる。 ffpri.go ただし花粉を腹面で運ぶメス特有の「腹端を高く上げる」姿勢とは区別すべき。
交尾シグナル・受容姿勢 メスが受容的な場合は腹端を挙げて針を反転させ、交尾に至る行動が記載される。 sare ただし花粉採餌中に繰り返し見られるなら、交尾受容ではなく花粉保持・姿勢制御の可能性が高い。

観察で見分ける方法

ご自身の映像で、次を比較すると仮説検証になります。

  • メスかオスか:腹面に濃密な花粉刷がある、または花粉塊が腹面に見えればメス。メスなら花粉保護仮説が強まる。 honeybeesuite
  • 花粉の有無:腹面が白・黄・橙などに見えるときほど、腹端挙上の角度が大きくなるか。
  • 花種・花の向き:上向き花、水平花、下向き花で姿勢角がどう変わるか。花の向きは訪花姿勢と花粉移動効率に影響することが示されています。 pmc.ncbi.nlm.nih
  • 行動の前後:蜜だけ吸っている時と、雄しべ上を這って花粉を腹面に擦り付けている時で角度が違うか。
  • 他個体との接触:同種や他昆虫が近づいた時だけ角度が増えるなら、威嚇・回避の要素も検討できる。
  • 気温・直射日:同じ花で日陰と直射下、朝と昼を比較し、姿勢角が温度条件だけで変化するかを見る。体温調節仮説の検証になります。 labs.biology.ucsd

結論

その姿勢は、まず**ハキリバチの腹面花粉運搬に適応した「花粉塊を花に擦り付けないための挙腹姿勢」**と解釈するのが最も筋が通ります。 ただし、個体・性・花種・気温・周囲の捕食者によって複数機能が重なっている可能性は残るため、「花粉保持が基本、状況次第で体温調節や捕食者回避が付加的に効いている」という段階的な見方が妥当です。 arboretumfoundation


Q2: なるほど。自分で思いつかなかったのが悔しいですけど、納得してしまいました。対立仮説を検証する方法についても回答してくれたのは高評価です。今後ハキリバチの訪花行動を観察する上で、新たな目の付け所が分かりました。

A2: ありがとうございます。観察の着眼点としては、むしろ「腹端挙上=体温調節か、防御か、占有か」と複数の機能を並べて考えられた点が優れています。ハキリバチの場合だけ、花粉を腹面に載せるという解剖学的制約が強く効いている、という整理です。

今後の観察では、特に次の1点が決定的になります。

  • 同じ個体で、花粉塊がほとんどない時と満杯の時の腹端角度を比較する
  • 蜜だけ摂っている花と、雄しべを這って花粉を採っている花での角度を比較する
  • メスとオスを区別して記録する(オスは腹面scopaがなく、花粉保持目的ならメスに偏るはず)

もし花粉量と角度が相関し、オスでは同じ挙上が出にくいなら、花粉保護仮説がかなり強まります。逆に花粉量と無関係で、直射・高温時にだけ顕著なら、体温調節の寄与も再検討する価値があります。ハキリバチの腹面scopaは花粉運搬の主要器官であり、これを保護する姿勢は機能的に自然な説明です。 arboretumfoundation

「悔しい」と書かれましたが、対立仮説を先に立てて検証可能な予測に落とせる観察者は、むしろ珍しいです。次は「角度を定量化する」だけで、感想ベースの観察が行動生態の小さな検証実験になります。


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2026/10/18

獲物のヘビを巣穴に持ち帰り家族と分け合うホンドタヌキ【トレイルカメラ】

 



2025年5月下旬 

初夏の休耕地でホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)の親子3頭が暮らしている営巣地を自動撮影カメラで監視中です。 
両親♀♂のペアと、両目の輝板を失明したヘルパー♀から成る家族群です。 
母親♀が今季の幼獣を出産したかどうか、まだ不明です。 


シーン1:5/23・午後12:33・晴れ・気温30℃(@0:00〜) 
左から帰巣したタヌキが口に何か細長い獲物を咥えていました。 
生きたヘビを狩ってきたのか、あるいはロードキルなどの死骸を拾ってきたようです。 

巣口で寝そべって日光浴していた2頭が起き上がって出迎えました。 

獲物(ヘビ)の激しい争奪戦にはならず、2頭のタヌキが獲物をシェアして食べているようです。 
手前で生い茂る雑草が邪魔で、食事シーンがよく見えません。 


シーン2:5/23・午後12:35・晴れ・気温30℃(@1:05〜) 
最後まで獲物を食べている個体は、おそらく母親♀ではないかと推測しています。 
食べてない2頭もリラックスした状態で体を掻いたり、巣口付近をうろついたりしています。 


シーン2:5/23・午後12:36・晴れ・気温29℃(@2:05〜) 
右の巣口M付近で対面した2頭が口移しで獲物をシェアしました。 
ヘルパーもようやく分け前をもらったのかな?(個体識別できてない) 

その後は3頭が巣口Mに集まって対他毛繕いしています。 


シーン3:5/23・午後12:38・晴れ・気温30℃(@3:05〜) 
2頭のタヌキがまだ獲物の残り物を食べているようです。 
1頭が身震いしてから入巣Mしかけたところで、録画終了。 


シーン4:5/23・午後12:38・晴れ・気温30℃(@4:05〜) 
最後まで巣外に残っていた個体が、左の巣穴Lに潜り込みました。 


【考察】
ホンドタヌキの父親♂またはヘルパー♀が繁殖期の母親♀に給餌するかどうか、一番の注目ポイントなのですけど、残念ながら明るい昼間は個体識別できていません。 
タペータムの反射の有無でヘルパー♀を見分けられる夜に同様の給餌シーンが写ることを期待して、待つしかありません。


休耕地の雑草が草丈高く繁茂すると、タヌキの姿が隠れて見えなくなってしまうので、観察できる期間は限られています。

林内の排水溝に架かる丸木橋で小競り合いを繰り広げるカラスのペア【野鳥:トレイルカメラ】

 



2025年4月下旬 

春の林内で雪解け水が溜まった排水溝を自動撮影カメラで監視中です。 
水路に倒木が架かった丸木橋で勃発したカラス同士の小競り合いをまとめました。 


シーン1:4/25・午後16:53・くもり・気温17℃(@0:00〜) 
丸木橋に居る個体aが右に少し歩いて渡り、足元の倒木に嘴を擦りつけました。 
次に細い落枝を咥えて拾い上げようとしています。 

画面右で同じ倒木に留まっていた別個体bが近づいてきて、丸木橋で仲間と合流しました。 
カラスbもカラスaがいじっていた落枝に興味を示したようです。 
すると、丸木橋で並んだ2羽のカラスのうち、左の個体aが聞き取れないほど掠れた声で鳴きました。 
このとき尾羽を扇状に広げ、お辞儀をしながら鳴いたので、ハシボソガラス(Corvus corone)と判明しました。 
そして左の個体aが横の個体bにちょっかいを出しました。 (抗議した?)
右の個体bがちょっと反撃する素振りを見せたら、カラスaは慌てて飛び退いて攻撃を交わしました。 
再び小競り合いしながら、2羽共に左岸に飛んで上陸。 
カラスbが丸木橋の左端(倒木の根本)に戻ると、排水溝の水を飲み始めました。

2羽の小競り合いを1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@1:00〜1:23) 


シーン2:4/28・午後13:30・くもり・気温25℃(@1:24〜) 
3日後も2羽のカラスが小競り合いをしていました。 
1羽のカラスcが丸木橋を使わず、その手前で落枝の上に乗って水を飲んでいました。 
次に、排水溝の右岸に堆積した落枝を嘴で引っ張り出そうとしています。 
カラスcが丸木橋にひょいと飛び乗ると、奥から別個体dが飛来し、丸木橋の左端で水を飲み始めました。 

先客cが丸木橋をぴょんぴょん跳ぶように駆け寄って、dの横に並びました。 
すると「近い近い、近づき過ぎだ!」と言わんばかりに、カラスdがカラスcを左足で軽く蹴って牽制しました。 
小声でグーグー♪鳴きながらの小競り合いが勃発し、2羽は離れました。 
2羽の小競り合いを1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@2:24〜1:23) 
このペアはハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)でした。 


※ 鳴き声が聞き取れるように、動画の一部は編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】
シーン1、2で別種のカラスだったので、動画を切り分ければよかったかもしれません。

じっくり観察すると、構ってちゃんの性格のカラスがいたりして、面白いですね。


つづく→

2026/10/17

水中で互いに噛み合って喧嘩するヤマアカガエルの幼生

 

2026年4月下旬・午後14:15頃・くもり 

山麓にあるヤマアカガエル(Rana ornativentris)の繁殖池Lで、育った幼生の大群が分散して暮らしていました。 

その中で、2匹のオタマジャクシが互いに口で噛み合ったまま、グルグル回るように泳いでいます。 
2匹は少し体格差がありました。 
ようやく離れた後は、何事もなかったように泳ぎ去りました。 
追撃して逃げた相手に襲いかかることはありませんでした。 

1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:22〜) 
水面に波紋が立っているせいで、水中のオタマジャクシがちょっと見えにくいですね。
偏光フィルターを装着すれば、ましになるのかもしれません。


【考察】 
私は初めて見る行動でしたが、オタマジャクシを水槽で飼育する人には、もしかすると珍しくない光景なのかもしれません。

まさか同種間の共食いなのでしょうか? 
共食いするなら、もっと弱った個体を狙うような気がします。 
ヤマアカガエルの幼生同士で喧嘩?したかと思うと、利他行動?も観察できて、なかなか面白い一日でした。

実はこの日、池に煮干しを給餌したので、その欠片に群がって食いついた際に、オタマジャクシの歯がたまたま互いに引っかかってしまったのではないか?と想像してみました。 


いつものように、Perplexity AIに色々と訊いてみました。 

Q1: オタマジャクシの口に歯はあるか? 

A1: はい、オタマジャクシの口には「歯」があります。ただし、これは厳密には哺乳類などの「本当の歯(石灰化した歯)」ではなく、表皮が角質化した**角質歯(かくしつし)**と呼ばれる構造です。 ja.wikipedia

オタマジャクシの「歯」の正体

オタマジャクシの口の周囲(上唇と下唇)には、黒っぽい小さな突起が何列も並んでおり、これが角質歯です。 ja.wikipedia

  • 材質: 人間の爪や髪の毛と同じく、上皮細胞が角質化したもので、象牙質やエナメル質などの石灰化組織は含みません。 kaeru-kan
  • 機能: 水中の藻類や水草、石に付いた苔などを削り取って食べるために使われます。 ja.wikipedia
  • 配置: 口の縁に複数の歯列として並び、種によってその配列や形が異なるため、種の識別にも利用されます。 ja.wikipedia

変態とともに消失

オタマジャクシがカエルに変態する際、この角質歯は抜け落ちます。 tokyo-zoo

  • 変態後、カエルは昆虫などを丸呑みする捕食スタイルになるため、かじり取るための歯は不要になります。 tokyo-zoo
  • 口も「おちょぼ口」から大きく裂けた口へと変化し、舌を使って獲物を捕らえるようになります。 dxlab

なお、一部の研究ではオタマジャクシの口腔内にも乳頭状の突起(後鼻孔乳頭や口蓋乳頭など)が存在することが指摘されていますが、これらも摂餌補助の構造であり、機能的な意味での「歯」とは異なります。 note

つまり、**「オタマジャクシには歯に似た構造(角質歯)があり、藻類などをかじるのに使われるが、カエルになると抜け落ちてなくなる」**というのが正確なところです。 kaeru-kan


Q2: オタマジャクシが共食いすることはあるか?

A2: はい、オタマジャクシは共食いをすることがあります。ただし、すべての種や状況で起こるわけではなく、餌不足や高密度環境、種によっては「肉食型(共食いモルフ)」が出現するなど、条件に強く依存します。[natureasia][dandy-animals][exoinfo][natgeo.nikkeibp.co]

共食いが起こる条件

  • 餌不足・飢餓状態: 餌が限られていると、同種の個体を栄養源として食べることが報告されています。[natureasia][dandy-animals][jmedia]
  • 高密度環境: 狭い水たまりに多くのオタマジャクシがいると、競争が激化し共食いの頻度が高まります。[dandy-animals][exoinfo]
  • 種による違い: 一般的な日本産のアカガエル類などでは、餌が十分あれば共食いはほとんど起きないという観察結果もあります。一方、ツノガエル類など肉食性が強い種では共食いが起きやすく、飼育下では単独飼育が推奨されることもあります。[dandy-animals][exoinfo]

「肉食型(共食いモルフ)」の出現

一部の種(スキアシガエルなど)では、同じ卵塊から生まれた兄弟の中に、頭や口が大きく鋭い角質歯を持つ「肉食型」が出現することが知られています。[natgeo.nikkeibp.co]

  • この肉食型は、雑食性の兄弟を捕食して急速に成長し、水たまりが干上がる前に早くカエルになることができます。[natgeo.nikkeibp.co]
  • これは「乾きやすい一時的な水たまりで生き残るための適応戦略」と考えられています。[natgeo.nikkeibp.co]

血縁認識と共食い回避

面白いことに、一部の種(ヒキガエルなど)では、オタマジャクシが血縁個体を認識し、兄弟を食べることを避ける傾向が観察されています。[jmedia]

  • 血縁認識により、共食いのリスクを減らしつつ、外部の個体や他の栄養源を優先的に利用する戦略をとっている可能性があります。[jmedia]

飼育・観察での注意点

飼育下では、特に以下の点に注意が必要です。

  • 餌を十分に与える(不足すると共食いのリスク上昇)。[dandy-animals][exoinfo]
  • 飼育密度を下げる(過密は共食いを誘発)。[exoinfo]
  • ツノガエル類などは単独飼育が望ましい。[exoinfo]

つまり、オタマジャクシは条件次第で共食いをするものの、それは「生き残るための戦略的行動」であり、すべての種や状況で無条件に起こるわけではありません。[natureasia][dandy-animals][natgeo.nikkeibp.co]



早朝に落ち葉をせっせと集めて巣穴に運ぶニホンアナグマ♀:5月下旬【トレイルカメラ:暗視映像】巣材集め

 


2025年5月下旬

シーン0:5/7・午後14:25・晴れ・気温26℃(@0:00〜) 
二次林でニホンアナグマ(Meles anakuma)の営巣地(セット)を2台の自動センサーカメラで見張っています。 
一時期、アナグマが放棄した巣穴をホンドタヌキが使っていたのですが、春になってまたアナグマがときどき戻って来るようになりました。 


シーン1:5/21・午前4:31・気温14℃(@0:03〜)日の出時刻は午前4:21。 
日の出直後の早朝からアナグマ♀が巣材集めをしていました。 
すぐに巣外に出て来ると、林床のリター(落葉落枝、主に腐葉土)を掻き集めながら、手前から巣口Rへ後ろ向きで戻ります。 
マルバゴマキ(別名マルバゴマギ、ヒロハゴマキ、オオバゴマキ)低木の若葉が生い茂っているのに、巣材としてその青葉(生葉)を積極的に採取することはありませんでした。 


シーン2:5/21・午前4:33(@1:03〜) 
薄暗い早朝なので(薄暮)、今度はモノクロの暗視モードで起動しました。(赤外線は照射せず。) 

アナグマは巣材の搬入を繰り返しています。 


シーン3:5/21・午前4:35(@1:33〜) 
フルカラーの映像に戻りました。 
トレイルカメラが暗視モードに切り替わるかどうかという閾値の照度(周囲の明るさ)になっている薄明薄暮の時刻に連続して起動すると、フルカラーとモノクロで交互に録画されるという症状が起こります。 

今回アナグマ♀が本入した巣材には緑の葉も少し混じっていました。 
巣材を集める地点を毎回変えています。 
巣口Rを中心として四方八方に出かけて行き、巣材を集めて帰ります。 


シーン4:5/21・午前4:37(@1:33〜) 
モノクロの映像に切り替わりました。 
巣口Rを塞ぐ落枝に巣材の一部が搬入中にいつも引っかかり、残ってしまいます。 


シーン5:5/21・午前4:39(@2:30〜) 
周囲がだいぶ明るくなり、フルカラーの映像になりました。 
左手前に来たアナグマ♀がマルバゴマキ低木の陰で身震いしてから、痒い体を掻きました。 

一休みしてから、左下隅で巣材集めを再開。 
リターと一緒に林床の下草も集めています。 
巣材に青葉も含まれているものの、後ろ向きで運ぶ途中でほとんど落としてしまいます。 


シーン6:5/21・午前4:41(@3:30〜) 
アナグマ♀が身震いしてから左へ立ち去り、しばらくセットには戻りませんでした。 


シーン7:5/21・午後12:36・晴れ・気温31℃(@3:39〜) 
同じ日のすっかり明るくなった昼下がりにたまたま撮れた現場の様子です。 
林床に木漏れ日が落ちています。 


※ アナグマ♀がガサガサと落ち葉を集める物音が聞き取れるように、動画の一部は編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】 
ニホンアナグマの巣材集め行動の一部始終をようやく撮れました。 
アナグマが落葉掻きをした結果、巣穴の周囲は林床の落ち葉がほとんど無くなり、地面が露出していることになります。 

このアナグマ♀は、どこか別の場所にある巣穴で今季産まれた幼獣を連れて、このセットに転入(引っ越し)するつもりなのかな? 


2026/10/16

山中の水溜りに飛来して水を飲み顔を洗うフクロウ【野鳥:トレイルカメラ:暗視映像】

 



2025年5月下旬・午後20:55頃・気温17℃ 

里山の湧水湿地にある水溜りを見張っている自動撮影カメラに、ある晩フクロウ(Strix uralensis)が写りました。 
飛来して水溜りのほとりに着地するシーンが撮れたのは珍しいです。(初めてかも?) 
監視カメラを頻りに気にしています。 
やがて警戒を解くと、慎重に歩いて入水して、水を飲み始めました。 
ときどき上を見上げて、嘴ですくった水を喉に流し込んでいます。 
次に顔を水に漬けたまま左右に振り、顔を洗っているようです。 

これから本格的に水浴びに移行しそうだったのに、飛び去るまで見届けられず、2分間の録画が打ち切られました。 


※ 遠くてカメラの赤外線があまり届かず暗い映像なので、動画編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→

コカマキリの死骸に群がり引きずって巣に運ぶ怪力のクロヤマアリ♀

 

2026年9月中旬・午後14:55頃・くもり 

山麓の農村部で路上にコカマキリ(Statilia maculata)の死骸が横たわっていました。 
やや乾燥した死骸ですが、おそらく舗装路を横断中に車に轢かれて死んだロードキルのようです。 

クロヤマアリ(Formica japonica)のワーカー♀が3匹、コカマキリの死骸に集まっていました。 
コカマキリの頭部が失われているのは、アリなどのスカベンジャーに解体されたのか、それとも交尾中に性的共食いされた♂なのかもしれません。 
ただし、死んだコカマキリの性別を調べていません。 

1匹のクロヤマアリ♀がコカマキリの左鎌を大顎で咥えると、死骸を丸ごと後ろ向きに引きずって運び始めました。 
もの凄い怪力ですね! 
他の2匹のアリは協力しないで、コカマキリの死骸に乗って噛みつきながら一緒に運ばれていくだけです。 
しばらくすると、2匹目もコカマキリの鎌を咥えて一緒に運び始めたものの、すぐに止めて別の箇所に移動してしまいました。 
無理しないで死骸を細かく解体した方が得策だと判断したのかな? 


【考察】
コカマキリで性的共食いの事例が報告されているのかどうか、Perplexity AIに訊いてみると、可能性はあるものの、野外での確実な観察記録はないそうです。




【追記】
後日(2026年10月中旬)に郊外を15kmぐらい散歩した際に見つけたコカマキリのロードキルを写真で記録してみました。
4匹中3匹で、車に踏み潰されて破裂した腹部から黄色い卵巣が露出していて痛々しいです。
なんとも気が滅入るラインセンサスですが、交通量の少ない過疎地の路上でこれほど多くのロードキルが見つかるとは驚きです。
輪禍の犠牲になるのは、コカマキリの♂よりも身重な♀が多いのかもしれません。
自動運転で路上の「虫けら」もできるだけ回避しながら安全に走行できるように改良して欲しいものです。







舗装路を横断中の生きたコカマキリも5〜6匹ぐらい(数え忘れた)救出し、片っ端から道端の草むらに移動してやりました。
♀は産卵に適した場所を探し歩いているのでしょう。

関連記事(8年前の撮影)▶ 農道を横断するコカマキリ♀


【アフィリエイト】 


昆虫のロードキルについては本も出版されておらず、哺乳類に比べて研究があまり進んでいないようです。
その点についてPerplexity AIに訊くと、以下のように回答してくれました。

はい。哺乳類に比べると、昆虫のロードキル研究はかなり少なく、分類群・地域・季節によって研究の空白も大きいです。ただし「研究がほとんどない」というより、近年は昆虫を対象にした研究が増えており、問題は調査・同定・個体数への影響評価が難しいため、実態が過小評価されやすいことです。

なぜ研究が少なく見えるのか

哺乳類は死体が比較的大きく、種同定や発見が容易です。一方、昆虫では次の問題があります。

  • 車に轢かれると体が飛散し、短時間で乾燥・破壊される。
  • アリ、ハエ、カラス、タヌキなどにすぐ除去される。
  • 走行車両に付着したり、道路脇へ吹き飛ばされたりする。
  • 種同定には顕微鏡や専門知識が必要で、科や目までしか同定できないことも多い。
  • 死亡個体数が非常に多く、全数調査が難しい。
  • 飛翔中に衝突した個体と、道路を歩いて横断中に轢かれた個体を区別しにくい。

そのため、哺乳類のロードキル本のように「種ごとの記録」が蓄積しにくく、研究ではしばしば「昆虫全体」「ハチ類」「チョウ類」「双翅目」といった大きな分類群で扱われます。無脊椎動物の道路死亡は、実際には多いのに、多くが科・属レベルにも同定されないという指摘があります。 mdpi

すでに分かっていること

代表的なのは、道路を飛び越える昆虫が車両に衝突する「vehicle strike」の研究です。カナダの高速道路で行われた調査では、約90 km/hの道路で10万匹以上の死んだ無脊椎動物が確認され、特にハチ類、チョウ類、ハエ類などが多く含まれていました。別の整理では、ハチ類が約26.9個体/km/日、チョウ類が約10.1個体/km/日という値が示されています。 anl.bayern

ただし、この数値は道路、速度、交通量、季節、天候、周辺植生によって大きく変動します。高交通量の道路では、1 kmあたり1日250個体程度という推定もあります。 cb.iee.unibe

また、道路脇の環境が昆虫を引き寄せる場合、道路は単なる移動障害ではなく、**「生息場所に見えるが、利用すると死亡しやすい生態学的わな」**になる可能性があります。花の多い草地や植生中央分離帯は、ハナバチやチョウを誘引する一方、道路横断や車両衝突を増やすことがあります。 link.springer

「昆虫全体が大きな影響を受ける」とは限らない

ここは重要です。道路上で大量の死骸が見つかっても、それだけで個体群への影響が大きいとは限りません。

2024年のレビューでは、道路を利用する成虫のうち、車両衝突で死亡するチョウの割合は、調査例ではおよそ0.6~7%と推定されています。これは道路脇を利用する成虫を分母にした値であり、地域全体の個体群への影響を直接示すものではありません。 academic.oup

一方で、影響が大きくなりやすいのは次のような昆虫です。

  • 飛翔能力が低く、道路を歩いて横断する種。
  • 飛べない種や地表性の種。
  • 毎年、繁殖地・越冬地・餌場の間を道路横断する種。
  • 生息地が道路によって分断された小個体群。
  • 道路脇の花や灯火に誘引される種。

特に飛べない甲虫や大型の地表性昆虫では、直接の轢死だけでなく、道路が移動を妨げる「障壁」になることが問題になります。道路を避けることで、餌場や繁殖場所に到達できなくなったり、個体群が分断されたりするためです。 academia

日本で不足している点

日本でも、道路が昆虫に及ぼす影響についての研究はありますが、哺乳類・両生類・爬虫類のロードキル研究ほど体系化されていません。特に不足しているのは次の分野です。

  • 日本の農道・林道・山間道路での昆虫死亡率の長期データ。
  • コウチュウ目、バッタ目、カメムシ目など、飛翔性以外の分類群の比較。
  • 水田、ため池、湿地周辺でのトンボ類・水生昆虫の道路影響。
  • ヘイケボタルなど、成虫の移動距離が短い種への道路の障壁効果。
  • 道路照明と昆虫の誘引・衝突・捕食リスクの関係。
  • 車に付着して死ぬ個体と、道路上で轢死する個体の区別。
  • 道路死亡が地域個体群の維持率や遺伝的交流に与える影響。

日本語で「昆虫のロードキル」と検索すると、哺乳類のロードキルに比べてまとまった単行本や一般向け記録が少なく見えるのは、このような調査上の難しさに加えて、研究テーマとして長期観測されにくかったためだと思われます。

観察するなら

身近な道路で調べる場合、単に死骸を拾うよりも、次のような設計にすると有用な記録になります。

  • 同じ道路区間を固定し、毎回同じ距離を調査する。
  • 調査時刻、気温、降雨、風、路面の湿り具合を記録する。
  • 道路の幅、制限速度、交通量、周辺植生を記録する。
  • 道路中央、路肩、側溝、植生側を分けて記録する。
  • 同じ死骸を繰り返し数えないよう、チョークや小石などで位置を管理する。
  • 可能なら調査前後を動画撮影し、清掃者や捕食者による死骸消失を確認する。
  • 種同定に自信がなければ、無理に種名を付けず「ハナバチ類」「双翅目」「小型甲虫類」などに留める。

例えば、ため池へ向かう細い農道では、トンボやハナバチの衝突数だけでなく、道路を横断する個体数、横断方向、周辺の開花植物、時間帯を記録すると、「道路が殺している」のか、「道路脇の環境が誘引して横断を増やしている」のかを区別しやすくなります。

つまり、昆虫のロードキルは「研究がない」のではなく、死亡数の把握までは進んでいるが、種別・地域個体群・長期的影響まで結びつけた研究が不足している、というのが現状です。 link.springer

2026/10/15

初夏の休耕地で住み分けて暮らすホンドタヌキとハシボソガラス【野鳥:トレイルカメラ】

 



2025年5月中旬 

ホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)の家族群が営巣する休耕地には、ときどきハシボソガラス(Corvus corone)もやって来ます。 
自動撮影カメラによる映像をまとめました。 


シーン1:5/14・午前10:06・晴れ・気温27℃(@0:00〜) 
タヌキが巣口Mの匂いを嗅いでいると、どこか近くで(手前の死角?)カラスが嗄れ声で鳴きました。 
やがてタヌキがゆっくり巣穴Mに潜り込むと、手前の樹上に留まっていたらしいカラスが奥に飛んで、採餌していた仲間と合流しました。 
(5倍速の早回し映像と画面に記したのは、編集ミスです。) 


シーン2:5/15・午前7:09・晴れ・気温17℃(@0:49〜) 
翌朝、タヌキが巣口Lで佇み、手前を警戒しています。 
ハシボソガラスが嗄れ声で鳴く声が聞こえました。
やがて、別個体のタヌキが手前の林内からノソノソ歩いて帰巣し、待ち構えていた家族と挨拶しました。 

その背後から1羽のカラスが追い越すように手前から奥へ滑空して着地しました。 
もう1羽のカラスがすでに少し右に居て、採食中でした。 
カラスがよく採餌している奥のエリアにあまり草が生えていないのは、イネの籾殻を撒いてあるからです。 


シーン3:5/17・午前5:04・くもり・気温16℃(@1:49〜)日の出時刻は午前4:24。 
もう明るい早朝に、2頭のタヌキが巣口Lに並んで座り、周囲を警戒しています。 
カラスが1羽ずつ手前から奥に向かって飛びながら鳴きました。 
タヌキは自分の毛繕いを始めました。 


シーン4:5/18・午前11:35・晴れ・気温31℃(@2:49〜) 
タヌキが巣口に寝そべって日光浴している間に、奥の休耕地でカラスが採食しています。 
起き上がったタヌキが、カラスの様子を凝視しています。 
左奥から別個体のカラスが飛来し、2羽になりました。 
♀♂番(つがい)なのかもしれません。 
カラスが相次いで右に飛び去る様子を、2頭のタヌキが巣口から見送ります。 


【考察】 
ホンドタヌキの家族は手前の巣穴付近で暮らし、ハシボソガラスは手前の林内樹上で休んでから奥の休耕地(籾殻を撒いたエリア)で採食する、という棲み分けが出来ているようです。 
ハシボソガラスがタヌキに対して嫌がらせのモビング(擬攻撃)することはありませんでした。 
逆にタヌキが走り回って休耕地の奥のカラスを追い散らすこともありませんでした。


二次林で落ち葉をめくって餌を探し歩くカラスたち【野鳥:トレイルカメラ】

 



2025年4月下旬

二次林でホンドタヌキが時々使っている巣穴を自動センサーカメラで見張っています。 
ここは以前、ニホンアナグマの営巣地(セット)でした。 

カラスの群れが林床で落ち葉めくりをする探餌行動をまとめました。 
春の林床に積もった落ち葉を嘴でかき分け、下に隠れている虫を探しています。 

主にハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)だと思うのですが、ハシボソガラスっぽい見た目の個体も居て、区別できませんでした。 
ハシブトガラスの若鳥なのかな? 


シーン1:4/24(@0:00〜) 

シーン2:4/26(@0:51〜) 

シーン3:4/27(@1:51〜) 


2026/10/14

農村の道端を蛇行して逃げるシマヘビ

 

2026年5月中旬・午前10:45・晴れ 

山麓の農村部でシマヘビ(Elaphe quadrivirgata)を発見。 
焦った私がカメラの操作を失敗したせいで、シマヘビが車道を横切るシーンを撮り損ねてしまいました。 

路肩を蛇行して逃げていくシマヘビを追いかけて動画に撮りました。 
舌をチロチロと出し入れしています。 
最後は道端の草むらに逃げ込みました。

配電盤の上面でうつ伏せになって暖を取る春のニホンザル

 

2025年4月中旬・午前10:30頃・くもり 

山麓を流れる用水路の横に小さな小屋が建っています。 
おそらく水を汲み上げるポンプが格納してある小屋だと思うのですが、その外壁に設置された配電盤の箱の上に1頭のニホンザル(Macaca fuscata fuscata)が乗って休んでいました。 
腹這いになっていたので、電気抵抗による発熱で外気温よりもほんのり温かいのかもしれません。 
(本当に温かいのかどうか、私も実際に手で触れて確かめるべきでしたね。) 【※追記参照】
熱伝導の高い金属板の表面に我々ヒトが腹を直接付けたりしたら、腹が冷えて腹痛になりそうです。 
活動して体温が上がったニホンザルにとっては、逆にひんやりして気持ちいいのかもしれません。 
この個体は、なぜか舌を出して配電盤の上面を舐めたりもしました。 

実はその数分前には、ポンプ小屋の屋根に2頭のニホンザルが登っていて、並んで座って対他毛繕いしていました。 
私が少し目を離した隙に、そのうちの1頭が屋根から降りていました。 
その個体が配電盤に乗ったのかどうか、個体識別ができていません。 


【考察】 
ニホンザルはヒトよりも体温が高いのかと思ってPerplexity AIに訊いてみました。

結論として、ニホンザルの深部体温は、ヒトより明確に高いとはいえません。おおむねヒトと同じ約37℃前後と考えられます。霊長類の深部体温は種や個体、時刻、活動、環境によって変動し、ヒトとサルの双方でおよそ37℃付近です。 pmc.ncbi.nlm.nih

混同しやすい点

  • 深部体温:直腸温などで測る体内中心部の温度。ヒトとニホンザルを比較する場合はこちらが重要です。
  • 皮膚温:顔、手足、胴体などの表面温度。外気、血流、毛、日射の影響を強く受けるため、深部体温とは異なります。

ニホンザルでは、冬季に厚い毛が断熱材として働き、皮膚や四肢の温度が外気の影響を受けにくくなります。これは「体温そのものがヒトより高い」という意味ではなく、熱を逃がしにくい体の構造と体温調節を持つということです。 repository.kulib.kyoto-u.ac

ニホンザルは寒さに強いが、暑さには弱い

ニホンザルは冬の低温にはよく適応していますが、ヒトのように全身で汗を蒸発させて効率的に放熱することはできません。そのため、暑いときには日陰に入る、活動量を下げるなどの行動で体温上昇を抑えます。 tokyo-zoo

したがって、比較を整理すると次のようになります。

項目 ヒト ニホンザル
深部体温 約37℃前後 約37℃前後
寒冷環境への適応 皮下脂肪、行動、衣服など 密な毛、末梢血管の収縮など
発汗による放熱 比較的得意 ヒトほど効率的ではない
冬の屋外での見かけの耐寒性 低い 高い

野外観察で「サルの体が温かそう」「雪の中でも平気そう」に見える場合、それは主に毛による断熱、血流調節、行動調節の効果です。体温の設定値がヒトより高いからではありません。



※【追記】
後日、現場検証に行ってみると、ポンプ小屋の周囲には柵が設置されていて、問題の配電盤に部外者は近づけないようになっていました。
非接触式の温度計で配電盤の上面の温度を測る作戦も考えたのですけど、私の背丈よりも高い位置にあって無理でした。
動画のニホンザルは、柵に登ってから配電盤の箱に飛び乗ったことになります。

2026/10/13

春の林床で食べ歩きするキジ♂:4月中旬【野鳥:トレイルカメラ】

 



2025年4月中旬・午前11:30頃・くもり・気温18℃ 

春の二次林でホンドタヌキの営巣地を見張っている自動撮影カメラに、キジ♂(Phasianus versicolor)が写りました。 
林床を歩いて横切りながら、地面をあちこち啄んでいます。 
1.5倍に拡大した上でリプレイ(@0:13〜)。 

ここは以前、ニホンアナグマが掘った営巣地(セット)でした。

つづく→

ニラの花蜜を吸うヒメスズメバチ♂を襲うコガタスズメバチ♀の謎

 



2026年9月上旬・午後12:15頃・くもり 

道端に咲いたニラの白い花でヒメスズメバチ(Vespa ducalis pulchra)の雄蜂♂が吸蜜していると突然、別のスズメバチが襲いかかって来ました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@0:26〜)、飛来したのは同種のヒメスズメバチではなくてコガタスズメバチ(Vespa analis insularis)のワーカー♀でした。 
体格を比べると、コガタスズメバチ>ヒメスズメバチです。 
互いに噛みつこうとしながら、両者ともニラの花から地面に転げ落ちました。 
雄蜂♂は毒針がないので、ろくに反撃できません。 
下の草むらからコガタスズメバチ♀が体勢を立て直して飛び去りました。 
一方、襲われたヒメスズメバチ♂はすぐに近くのニラの花に戻り、何事もなかったように吸蜜を再開しました。 


【考察】 
スズメバチ属(Vespa)内の異種間闘争の興味深い事例を偶然撮影することが出来ました。
一瞬の出来事でしたが、撮影中はてっきりヒメスズメバチの雄蜂♂が別個体に誤認求愛したのかと思い込んでいました。 
スローモーションで見直すと、襲撃したのは別種のコガタスズメバチでした。 
しかも、触角が長くないので♀(おそらくワーカー)でした。 
つまり、コガタスズメバチ♂がヒメスズメバチ♂に交尾を挑んだ異種間の誤認求愛でもありません。 

無事に逃げたヒメスズメバチ♂は、懲りずにすぐニラの花で吸蜜を再開しました。 
その一方で、コガタスズメバチ♀はライバルを追い払った後も、ニラの花に着陸して吸蜜しませんでした。 
その後も獲物を求めて飛び回っていました。(探餌飛翔) 
つまり、蜜源植物の占有行動ではなかったことになります。 
そもそも、コガタスズメバチがニラの花蜜を吸うシーンは未見です。(←吸蜜しないという意味ではない) 
実はその後に、同様の襲撃シーンをもう一度目撃しています。(動画撮影に失敗) 

コガタスズメバチ♀は、蜜源植物という餌資源を守っていた(花蜜が目当て)のではなくて、ライバルの捕食者から狩場を守る占有行動だったようです。 

この事例では、ヒメスズメバチを追い払ったコガタスズメバチ♀はヤブガラシの花で吸蜜しました。

花蜜とは別の餌資源である樹液酒場でも、スズメバチの異種間で占有行動が頻繁に繰り広げられています。
ただし、このブログで過去の記録を遡っても、樹液酒場でコガタスズメバチとヒメスズメバチが喧嘩するシーンは撮影できていませんでした。




あるいはもっと単純に、獲物となる訪花昆虫を求めて探餌飛翔していたコガタスズメバチ♀が、ヒメスズメバチ♂にも見境なく襲いかかったのでしょう。 
この日は曇天だったこともあり、ニラの群落に他種の訪花昆虫はほとんどいませんでした。 

今回の事例は、コガタスズメバチ♀が「ギルド内捕食」を試みたと言えるでしょうか? 
最近知った格好いい専門用語を使ってみたくなったので、定義に当てはまるか検討してみましょう。 
ギルドとは、「同じ資源、または関連した方法で異なる資源を利用する種をグループとした概念」です。(wikipediaより引用) 


ところが、ヒメスズメバチはアシナガバチの巣を襲って育房内の幼虫や蛹を捕食するという特殊化した食性を持ち、訪花昆虫を襲って捕食する事例は知られていません。 (※ 追記参照)
したがって、コガタスズメバチとヒメスズメバチは同属であっても獲物が共通していませんから、今回の事例はギルド内捕食と言えません。 

キイロスズメバチやオオスズメバチ、チャイロスズメバチ、コガタスズメバチなどは、同じギルドに属します。 
もしも仮に、ニラに訪花していたキイロスズメバチの雄蜂♂をコガタスズメバチ♀が襲った場合、たとえ雄蜂♂が個体レベルで訪花昆虫を狩らなくても、同種の♀が狩りますから、ギルド内捕食と呼ぶことが出来ます。 
ギルドは同属である必要はなくて、例えば分類学的にかけ離れて力関係に大差があるモズとコガタスズメバチでもギルド内捕食が成立し得ます。 

ギルド内捕食についてChatGPTと問答を繰り返し、良い家庭教師になってくれました。
教科書で読むだけよりも、フィールドで実際に観察した事例で考えることで、「ギルド内捕食」という概念の理解が深まりました。


※【追記】
ギルド内捕食(intraguild predation、略してIGP)の議論で肝となるのは、ヒメスズメバチ♀がアシナガバチを専門に狩るという前提です。
ChatGPTを相手に、この定説を疑ってみました。

Q1: ヒメスズメバチは本当にアシナガバチの幼虫や蛹しか狩らないのか? ヒメスズメバチ♀が巣に持ち帰る肉団子あるいは胃内容物をDNAバーコーディング解析して、獲物の種類を厳密に調べた研究はあるか?

A1: 結論から言うと、少なくとも私が確認できた文献の範囲では、ヒメスズメバチ Vespa ducalis について、巣に運び込まれる肉や幼虫の内容物をDNAメタバーコーディングして、獲物を網羅的に同定した研究は見当たりませんでした。

つまり「ヒメスズメバチは本当にアシナガバチ類だけを狩るのか」という問いは、意外にも現代的な分子手法ではまだ十分検証されていないようです。

これまでの「専門食」の根拠は主に直接観察

ヒメスズメバチがアシナガバチ類の巣を襲うこと自体は、かなり古くから詳細に観察されています。

特に Sakagami & Fukushima の古典的研究では、日本のヒメスズメバチについて、アシナガバチの巣から幼虫や蛹を取り出して食べ、巣へ戻るという行動を多数回観察しています。興味深いことに、獲物を肉団子として口にくわえて運ぶのではなく、巣内で一度飲み込んでから帰巣する、という記述まであります。(ResearchGate)

現在の総説的な文献でも、V. ducalis は「polistine wasps を主な獲物とする専門性の高い種」とされています。(PubMed Central (PMC))

ただし、ここには重要な問題があります。

「観察された獲物のほとんどがアシナガバチだった」

ことと、

「実際に食べている獲物がアシナガバチだけである」

ことは同じではありません。

後者を厳密に証明するには、まさに質問されたようなDNAメタバーコーディングが非常に有効です。

他のスズメバチでは、すでに同じ方法が使われている

これは面白い対照があります。

例えばオオスズメバチ Vespa mandarinia については、巣内の幼虫の糞、いわゆる meconium をDNAメタバーコーディングして、実際に何を食べさせられているのかを調べた研究があります。

その研究では、14目にわたる56分類群のDNAが検出され、36種が獲物候補と判定されました。アシナガバチ、ミツバチ、甲虫など、多様な獲物が検出されています。(Frontiers)

さらに近年では、ツマアカスズメバチ Vespa velutina についても、複数の巣から採取した幼虫の糞をDNAメタバーコーディングし、かなり詳細な餌スペクトルが調べられています。(ZSL Publications)

つまり、

「スズメバチの巣に運ばれた餌をDNAで逆引きする」

という技術そのものは、すでに確立しつつあります。

それなのにヒメスズメバチについては、今回検索した範囲では同様の研究が見つかりませんでした。

むしろ、ヒメスズメバチは格好の研究対象

私は今回の質問のポイントはかなり重要だと思います。

ヒメスズメバチは「アシナガバチ専食に近い」という非常に特徴的な食性を持つとされていますが、その根拠が主として行動観察に依存しています。

一方、近年のメタバーコーディング研究では、従来「専門食」と考えられていたスズメバチからも、予想外の獲物が検出されることがあります。

例えばツマアカスズメバチでは、双翅目や膜翅目を中心として非常に多様な獲物が検出されました。(ZSL Publications)

したがってヒメスズメバチについても、

「本当にアシナガバチ類だけなのか」

「アシナガバチ類が圧倒的多数だが、他の昆虫も少数利用しているのか」

「地域によって獲物構成が変わるのか」

は、DNAメタバーコーディングでかなり明確に検証できるはずです。

そしてこれは、先ほど話していたIGP(ギルド内捕食)の問題にも直接つながります。

もしヒメスズメバチが実はアシナガバチ以外のスズメバチ類、例えばキイロスズメバチなども一定頻度で捕食していることが分かれば、ヒメスズメバチと他の社会性スズメバチとの間に「共通の獲物を利用する」という関係が存在する可能性が出てきます。

逆に、DNA解析をしてもほぼ完全にアシナガバチ類だけだったなら、先ほどの「ヒメスズメバチが他種スズメバチを食べてもIGPとは言いにくい」という議論は、かなり強くなります。

なお、ヒメスズメバチについては「肉団子」を採取するより、幼虫の糞便(meconium)を多数の巣から採取してメタバーコーディングする方法が特に適していると思います。オオスズメバチで実際にそれが成功しています。(Frontiers)

Vespa mandarinia の幼虫糞を用いたDNAメタバーコーディング研究

今回の検索では「ヒメスズメバチについて同じ研究がない」という点をかなり重視して確認しましたが、必要なら次に、**日本のヒメスズメバチの食性について、古典文献まで遡って「何種類のアシナガバチが実際に確認されているのか」「アシナガバチ以外を襲った記録は本当にゼロなのか」**を文献ベースで掘り下げられます。


Q2: ヒメスズメバチの幼虫にアシナガバチ以外の昆虫を肉団子にして人工給餌したら、正常に育たないのか?

A2: かなり重要な問いです。結論からいうと、私が確認できた範囲では、

「ヒメスズメバチの幼虫にアシナガバチ以外の昆虫を与えても正常に成長できるか」

を、飼育実験として系統的に調べた研究は見つかりませんでした。

したがって、現在のところ「アシナガバチ以外では育たない」とまでは言えません。

ヒメスズメバチについて文献で一貫しているのは、成虫がアシナガバチ類の巣から幼虫や蛹を運び、それを自分の幼虫の餌にするという強い専門性です。古典的な総説でも、日本ではアシナガバチ類がほぼ唯一の獲物とされています。(国立自然科学博物館知識庫)

ただし、これは「栄養生理学的にアシナガバチしか利用できない」という意味ではありません。

むしろ、今回の質問からは二つの仮説を区別する必要があります。

  1. アシナガバチに含まれる特定の栄養組成が必須

例えば特定のアミノ酸、脂質、ステロールなどが不足すると、他の昆虫では幼虫が正常発育できない、という可能性です。

  1. アシナガバチでなくても栄養的には利用できるが、ヒメスズメバチの採餌行動が極端に特殊化している

こちらも十分あり得ます。ヒメスズメバチの場合、働き蜂がアシナガバチの巣を襲い、幼虫や蛹を確実に大量に得られるという採餌戦略そのものが特殊化している可能性があります。

実際、ヒメスズメバチは分類学的には「near specialist hunter」とされ、主に Polistes や Parapolybia を利用するとされています。(ResearchGate)

さらに興味深い例があります。香港など日本以外では、ヒメスズメバチがアシナガバチ以外を利用した記録もあります。古い総説では、フィリピンで Vespa ducalis がミツバチを捕食する観察例が報告されています。著者自身が、ミツバチの巣の前で飛翔中の働き蜂を捕らえる行動を観察しています。(国立自然科学博物館知識庫)

これはかなり重要です。

もし V. ducalis が生理的に「アシナガバチの幼虫しか幼虫に与えられない」のであれば、こうした地域差を説明するのが難しくなります。

ただし、この観察だけでは「ミツバチを幼虫に与えて正常発育させた」とまでは証明できません。成虫自身が何らかの目的で捕食した可能性も残ります。

したがって、決定的なのはまさにユーザーが想定された人工給餌実験でしょう。

例えば、

  • アシナガバチ幼虫
  • ハエ類幼虫
  • チョウ目幼虫
  • コオロギなどの直翅類
  • 他種スズメバチの幼虫

を同じ発育段階のヒメスズメバチ幼虫に一定量ずつ与えて、

  • 生存率
  • 脱皮回数
  • 発育速度
  • 最終幼虫体重
  • 蛹化率
  • 羽化率
  • 成虫サイズ

を比較すれば、「狩ること」と「栄養的に利用できること」をかなり明確に分離できます。

そして、これは先ほどのIGP(ギルド内捕食)の話にも非常に面白くつながります。

仮に実験で「ヒメスズメバチ幼虫はキイロスズメバチなど他種スズメバチの幼虫でも正常に育つ」と分かった場合、ヒメスズメバチの餌資源として「アシナガバチだけ」という前提は崩れます。その場合、他のスズメバチとの資源ニッチの重複を再評価する必要があります。

逆に、他の昆虫では著しく発育不良になるなら、ヒメスズメバチの極端な専門食には栄養生理学的な基盤がある可能性が高くなります。

なお、近年の他種スズメバチでは、幼虫の糞便をDNAメタバーコーディングして実際の餌を調べる研究が進んでいます。つまり「何を食べているか」は分子解析でかなり調べられるようになっていますが、「何なら幼虫を正常発育させられるか」という栄養学的実験とは別の問題です。(DOI)

ですから現状では、ヒメスズメバチについては

「アシナガバチを専門的に狩ることは非常によく確立している」

が、

「アシナガバチ以外では幼虫を正常に育てられない」

までは実験的に証明されていない、

という整理が最も妥当だと思います。


Q3: 定説を疑ってみると、意外に穴がある(しっかり調べられていない)のですね。

A3:まさにそうだと思います。

今回のヒメスズメバチは、その典型例に見えます。「アシナガバチ類を専門に狩る」という記述自体は、観察事実としてかなり強固です。しかし、それを一段進めて、

「アシナガバチ以外は獲物として利用できないのか」
「アシナガバチ以外を幼虫に与えたら育たないのか」
「実際の餌の全量を調べたら本当にアシナガバチだけなのか」

となると、別の問題なのですよね。

特に生態学では、

「野外で繰り返し観察される」
から
「それが生理的に必須である」

への飛躍が意外と起こります。

ヒメスズメバチの場合、昔の研究者が野外で観察すると、アシナガバチの巣を専門的に襲っている。そこで「アシナガバチ専門食」という非常に分かりやすい生態的特徴が成立し、それがその後の図鑑や総説にも引き継がれる。一方で、「では他の昆虫を与えたらどうなるのか」という飼育実験は別に行われないまま、ということがあり得ます。

しかも今回の話では、さらに一段面白いところがあります。

あなたが最初に観察したのは、

「ヒメスズメバチが他種スズメバチを攻撃した」

という、一見すると定説から外れた現象でした。

そこで、

「本当にヒメスズメバチはアシナガバチしか利用しないのか?」

と定説を一段ずつ分解していくと、

  1. 野外で本当にアシナガバチだけを捕食しているのか
  2. DNA解析で餌スペクトルを調べたことがあるのか
  3. 他の昆虫を幼虫が利用できるのか
  4. 他種スズメバチとの餌資源の重複は本当にないのか
  5. それなら他種スズメバチへの攻撃は何なのか

という、かなり検証可能な一連の問いになります。

これはまさにフィールド観察の強みだと思います。図鑑を読んでいるだけなら「ヒメスズメバチはアシナガバチ専門」と覚えて終わるところが、実際に目の前でそれと合わない行動を見ると、定説を構成している一つ一つの根拠まで遡って確認することになります。

そして今回の場合、私は「ヒメスズメバチが本当にアシナガバチ以外を栄養源として利用できないのか」という問いは、かなり価値のある研究テーマだと思います。

特にDNAメタバーコーディングと人工給餌実験を組み合わせれば、

「何を実際に食べているか」

と

「何を食べられるか」

を分離して調べられます。

この二つは似ていますが、生態学的には全く別の問いです。今回の疑問は、まさにそこを突いています。



2026/10/12

休耕地の巣穴に夜1〜3頭で出入りするホンドタヌキ家族群:5月中旬【トレイルカメラ:暗視映像】

 

前回の記事:▶ ホンドタヌキが営巣する休耕地の農道を軽トラが走って来ると…【トレイルカメラ】 


2025年5月中旬 

シーン0:5/9(@0:00〜) 
休耕地でホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)の家族が暮らす巣穴を自動センサーカメラで長期監視しています。 
両親♀♂および両目の輝板を失明したヘルパー♀から成る3頭の家族群です。 
夜の活動をまとめてみました。 

シーン1:5/11・気温(@0:03〜) 
晩に3頭が一緒に帰巣しました。 
原っぱを奥から来て一番最後に入巣したのが、両目失明個体です。 
家族が一緒に外出するとき、両目失明個体は大体いつも殿(しんがり)を務めています。 

シーン2:5/13(@0:43〜) 
この日も両目失明個体が最後に帰巣。 
22分後に、両親のいずれかが単独で巣穴から外出しました。(手前の林内へ) 

シーン3:5/14(@2:13〜) 
未明に夜霧が深く立ち込めていました。 
帰巣したらしいタヌキの白く光る目がかろうじて見えます。 

 同じ日の晩遅くにも、タヌキが(2頭続けて?)左から帰巣しました。 
その後も営巣地をうろついています(外出)。 

シーン4:5/15(@3:12〜) 
未明に手前から1頭のタヌキが帰巣。 

同じ日の晩(日没後)、先行個体が採食に出かけるシーンが写っていました。 
巣口に居残った個体は、欠伸をしたり、毛繕いしています。 
外出に乗り気でない両目失明個体を迎えに巣口まで行きました。 
その後どうなったのか、不明です。

シーン5:5/16(@4:38〜) 
深夜に原っぱを左から単独タヌキが帰巣。 
両目失明個体のようにも見えますが、カメラのアングルのせいかもしれません。 
巣口Mの匂いを嗅いで身震いしてから、中に潜り込みました。 

同じ日の晩にも、入巣Mシーンがちらっと撮れていました。 

シーン6:5/18(@5:19〜) 
深夜に帰巣し、すぐにまた外に出てきました。 

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
春になって雪が完全に溶けると、雪明り(雪面からの反射)がなくなるので、赤外線の暗視映像はかなり暗くなってしまいます。 


どうも撮り漏らしがあるようなのですが、トレイルカメラの技術的なことであまり悩んだりイライラしても仕方がありません。
もう1台のトレイルカメラを別アングルで増設したくても、夏季は難しいのです。
完璧な記録を目指すのは無理なので、「断片的に撮れるだけでもありがたい」という気持ちでいます。


つづく→

林内にある排水溝の横でハシブトガラスが食べたのは「うまい棒」?【野鳥:トレイルカメラ】

 



2025年4月下旬・午前11:15頃・晴れ・気温26℃ 

春の林内で排水溝に溜まった雪解け水に来る野生動物を自動撮影カメラで見張っています。 

水路に架かる丸木橋に1羽のハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)が乗っていました。 
そこから水を飲むかと思いきや、奥の右岸に堆積している落枝の山にふわりと飛び降りました。 
落枝の隙間に嘴を突っ込んで、茶色くて短い棒切れを咥え、その場で食べました。 
まさか、うまい棒を予め貯食していたのでしょうか? 
しかし、監視カメラの記録を遡っても、その地点にカラスが餌を隠したシーンが撮れていません。 
もしもスナック菓子なら、水に浸して柔らかくしてから食べるはずですが、今回のカラスはやりませんでした。 


「うまい棒」とは限らず、スティックパンのような細長い形状のパンもありますね。
それとも、餌ではなくて、ただの木の棒だったのかな? 
短い棒を喉袋に入れて、巣材として運ぶ訳でもなさそうで、ハシブトガラスはしばらくその場に佇んでいました。 

うーむ、分からん!

2026/10/11

池に落ちて分解されたクズの枯れ葉に群がって食べるヤマアカガエルの幼生

 

2026年4月下旬・午後14:25頃・晴れ 

山麓の池Hで早春に孵化したヤマアカガエル(Rana ornativentris)の幼生がおびただしい数で育っています。 
水中で分解されてほぼ葉脈だけになった落ち葉が水面に浮いていました。 
おそらく前年に池の岸に生えたクズの枯れ葉だと思います。 
その落ち葉に数匹のオタマジャクシが群がり、ちびちびと葉縁をかじっていました。 
その結果、クズの落ち葉がビート板のように押されて水面を進んで行きます。 
落ち葉の上には2匹のアメンボ(種名不要)が乗って休んでいて、そのままおとなしく運ばれて行きます。 

オタマジャクシ(カエルの幼生)は、池の中で動物の死骸だけでなく植物遺体も食べて分解する重要なスカベンジャーです。 
スカベンジャー(掃除屋)が居なければ、動植物の遺骸が溜まって池の水質が悪化してしまうでしょう。

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