2025/06/19
山林の水溜りに佇み周囲を警戒するフクロウ【野鳥:トレイルカメラ:暗視映像】
2025/06/18
軒下の初期巣から飛び去るコガタスズメバチの創設女王
アナグマの旧営巣地で木揺すりディスプレイするニホンザル【トレイルカメラ】
2025/06/17
山道で何者かに威嚇のディスプレイを繰り返すヤマドリ♂【野鳥:トレイルカメラ】
(ヤマドリは)鳴くことはまれだが、繁殖期になると雄は翼を激しく羽ばたかせ、非常に大きな音を出す(ドラミング、母衣〈ほろ〉打ち)ことで縄張りを宣言するとともに、雌の気を引く[12]。また、ドラミング(ほろ打ち)の多くは近づくものに対する威嚇であるともされる[4]。(wikipediaより引用)
ヤマキヒゲナガ♂の群飛とレック形成【蛾:FHD動画&ハイスピード動画】
小型。♂の触角は前翅長の3倍以上と非常に長い。♀の触角は♂の半分以下と短く、基半部に黒い毛が生え太く見える種が多い。♂は昼間長い触角をたなびかせて競い合うように群飛する。 (p15より引用)『日本動物大百科9昆虫II』によれば、
ヒゲナガガ科には群飛する種と群飛しない種がいる。(中略)クロハネシロヒゲナガは、日中、草地を低くとびかうのが見られ、多数の♂が同じ場所で白い触角を目立たせて飛翔することもあるが、これらの♂は互いにまったく無関心で干渉がないように見える。 群飛をするホソオビヒゲナガでは、♂がからみあって上下するような飛翔をする。樹上のかなり高い位置で群飛することもあり、カ類の群飛と見まちがえることもある。(p71より引用)
ヒゲナガガ類の♂では極端に長くなっていて、前翅長の2〜3倍の長さがある。これは群飛のときバランスをとるのに役立つのかもしれない。(p25より引用)ヒゲナガガ科の♂は多数が集まって求愛のためのレックを形成し、群飛で♀を誘引して飛びながら交尾するのだそうです。
資源とは特に関係の無い場所に集まった雄が、そこで小さな縄張りを作り、求愛のディスプレイを行う。 このような行動をする雄たちをレック (lek) という。レックが求愛のディスプレイで自分をアピールし、雌を呼び寄せて交尾をするというのがレック型一夫多妻である。ヤマキヒゲナガ幼虫の食草が何なのか、解明されていないそうです。
ヤマキヒゲナガ♂の群飛行動と配偶システムに関する考察
Ⅰ. 観察概要
日時・場所:2024年5月下旬・山形県の里山(草木に覆われた山腹の急斜面)
気象条件:曇天・無風状態
行動特徴:
少なくとも4頭の♂が同一空間で緩やかな群飛
飛翔個体に加え、シダ植物と広葉樹幼木(推定:ニワトコ・オシダ?)に静止する♂が混在
オス同士の闘争行動は確認されず
メスおよび交尾行動は未観察
Ⅱ. 行動生態学的解釈
1. 群飛の機能仮説
レック型配偶システム:
オスが特定の微気象条件(風速・日照)下で集団飛翔し、メスの訪問を待機1
ヒロオビヒゲナガ(N. raddei)の日没前スウォーム行動との類似性
待機戦略の多様性:
飛翔個体:視覚的アピールによるメス誘引
静止個体:エネルギー節約型の待機戦略
2. 触角の形態と機能
オス触角の特徴:
体長の3倍に達する糸状触角(全長約15mm)
表面積は♀触角(毛密生)の1/5以下
機能仮説:
フェロモン検知:未検証(従来説の再考必要)
飛翔安定装置:長い触角が「生物学的スタビライザー」として機能6
視覚シグナル:光反射による個体間通信
3. フェロモンシステムの特殊性
従来説との矛盾:
ヒゲナガガ科では♀発信型フェロモンが主流とされる
本種では♂がフェロモンを放出している可能性
二重機能仮説:
オスフェロモンが同性を集合させ(集合フェロモン)、同時に♀を誘引
Ⅲ. 未解決問題と研究課題
1. 行動メカニズム
群飛形成の誘引要因(化学的/視覚的/地形的)
静止個体と飛翔個体の役割分業
メスの出現パターンと時間帯依存性
2. 生理学的課題
触角切除実験による飛翔安定性の定量評価
分泌物質のGC-MS分析によるフェロモン同定
触角感覚器の走査型電子顕微鏡観察
3. 進化的意義
小型化(体長5-7mm)と触角長大化の相関
レイノルズ数(慣性力と粘性力の比)低下環境(体長比Re≈100)での飛翔制御適応
種特異的フェロモンシステムの分子基盤
Ⅳ. 今後の観察指針
時間帯別行動記録:日出~日没まで1時間毎の個体数変動
環境要因記録:
気温・湿度・風速の連続測定
植物フェノロジー(開花・新芽展開)との関連
標識再捕法:
蛍光粉末による個体追跡
行動圏と移動距離の推定
総括
本観察はヒゲナガガ科の配偶システム解明において以下を示唆:
従来の「♀発信型フェロモン」モデルに当てはまらない可能性
触角の多機能性(感覚・飛翔制御・視覚信号)の共存
レック行動の多様性(闘争なき集団形成)
- https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9939265/
- https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenmin/ao-kendo/files/H24dmns-1.pdf
- https://www.city.hiroshima.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/011/855/45554.pdf
- https://hs-gakko.org/wp-content/uploads/2024/03/ikimono.pdf
- http://www.esj.ne.jp/meeting/51/pdf/book/jes51p2.pdf
- interests.insect_physiology
- http://www.jpmoth.org/Adelidae/Adelinae/Nemophora_japonica.html
- https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/assessment/document1408/kanagawa/_pdf/eis2_kanagawah14.pdf
- https://www.city.minokamo.lg.jp/uploaded/attachment/2441.pdf
- https://www.city.nobeoka.miyazaki.jp/uploaded/attachment/8659.pdf
- https://www.ars.usda.gov/ARSUserFiles/20200500/Pubs%202020/HullFonagy%202019.pdf
2025/06/16
旧営巣地に日中戻って仰向けで毛繕いするニホンアナグマ♀【トレイルカメラ】
水浴中のフクロウが近くに現れたニホンノウサギ2羽を狩らずに見逃す【野鳥:トレイルカメラ:暗視映像】
トレイルカメラによる水場でのフクロウとノウサギのニアミス観察とその解釈
1. 観察の概要
2024年6月上旬、山形県の山林内湿地帯(水場)に設置したトレイルカメラで深夜の動物行動を記録。
水場にフクロウ(Strix uralensis)が静かに佇み、周囲を見回している様子が撮影された。
その直後、2羽のニホンノウサギ(Lepus brachyurus)が続けて水場を横切ったが、フクロウは凝視するだけで狩りのアクションを起こさなかった。
2. 行動の生態学的解釈
フクロウの行動
通常、待ち伏せ型の狩りを行う際は樹上など高所から獲物を狙うことが多く、地上で静止している場合は狩り以外の目的(警戒、観察、水分補給など)の可能性が高い9。
水場に長居していたが、オタマジャクシなど水生小動物を狩る様子は記録されず、興味本位で観察していたと考えられる。
ノウサギの行動
ノウサギは夜行性で、行動範囲は寝床から半径約400mとされる3。
繁殖期(2~7月)にはオス同士やオス・メス間で激しい追いかけっこが見られることがあるが、今回の映像では穏やかな動きであり、繁殖行動以外の単なる移動や採食、親子・同性個体の可能性も考えられる。
ノウサギはタペータムの発達した目を持ち、夜間でも周囲の動物を認識できるが、フクロウが静止していたため気づかなかった、もしくは警戒しつつも水場を利用した可能性がある139。
3. 幼鳥・成鳥の識別と繁殖期のタイミング
6月上旬はフクロウの育雛期~巣立ち直後の時期であり、観察された個体が幼鳥である可能性もある10。
幼鳥は巣立ち直後は綿羽が残るが、換羽の進行や暗視映像の解像度によっては判別が難しい。綿羽が見えなくても幼鳥の可能性は排除できない。
巣立ったばかりの幼鳥は通常樹上で親の給餌を待つが、行動範囲が広がる過程で水場に現れることもまれにある。
4. 狩りが起こらなかった理由の考察
フクロウが満腹だった、あるいは幼鳥で狩り経験が浅かった可能性。
ノウサギが成体であれば、フクロウにとってリスクや負担が大きく、狩りの対象に選ばなかった可能性。
水場での静止は狩りのための待ち伏せではなく、警戒・観察・水分補給など他の目的だった可能性が高い。
ノウサギもフクロウの存在に気づいていたかもしれないが、警戒しつつも水場を利用した、あるいはフクロウが静止していたため危険と認識しなかった可能性がある。
5. まとめ
トレイルカメラ映像から、夜間の水場でフクロウとノウサギがニアミスしても、必ずしも狩りが発生するとは限らない。
両種の行動には、繁殖期のタイミング・個体の年齢・行動目的・警戒心など様々な要素が複雑に絡んでいる。
今回の観察は、野生動物の多様な行動戦略と、単純な「捕食―被食関係」だけでは説明できない現場のリアルな生態を示している910。
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/12/1/12_1_1_11/_pdf
- https://note.com/p_c_m22/n/nbcca18728e01
- http://sancyokohama.sakura.ne.jp/houkoku/19/YNSchousahoukoku19_1.pdf
- https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/assessment/prestatement/yamanashi/_pdf/yamanashiy08-04-03.pdf
- https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/001021259.pdf
- https://www.pref.nagano.lg.jp/kankyo/kurashi/kankyo/ekyohyoka/hyoka/tetsuzukichu/gomishori/documents/10doubutsu.pdf
- https://www.town.minakami.gunma.jp/minakamibr/nature/pdf/nature07.pdf
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/12/1/12_1_1_11/_pdf/-char/ja
- interests.animal_behavior
- interests.bird_biology
2025/06/15
山中の湿地帯を深夜に横切るニホンイノシシ【トレイルカメラ:暗視映像】
バラ(アンジェラ)の花粉を集めるスミゾメハキリバチ♀
CROWLEY, Liam M., et al. The genome sequence of Willughby’s leafcutter bee, Megachile willughbiella (Kirby, 1802). Wellcome Open Research, 2024, 9: 164.次にスミゾメハキリバチのゲノムも解読して比較すれば、亜種の違い(黒化した体色)がどのように進化したのか突き止められそうですね。
2025/06/14
ニホンカモシカの溜め糞で糞虫が見つからず分解も遅いのはなぜか?【フィールドサイン】
ニホンカモシカの溜め糞場における糞虫不在現象に関する考察
1. 背景と発端
筆者が調査を行っている山形県の低山・里山域において、ニホンカモシカ(Capricornis crispus)の溜め糞場では、排泄された糞粒が長期間分解されずに残存している現象が確認された。この糞は形状が崩れることなく保持され、キノコ類等の菌類も発生しにくい。加えて、フン虫(糞虫)類の活動痕跡が見られず、掘り起こし・埋設・球状運搬などの典型的なフン虫行動が全く確認されていない。
この状況は「野生哺乳類の排泄物には必ずそれを分解利用するフン虫類が存在する」という従来の昆虫生態学的通説と矛盾する可能性がある。筆者はこの疑問を基点に、以下のような仮説と解釈を考察した。
2. 既知情報と比較
2-1. 家畜ヤギ・野生シカの糞とフン虫
-
ヤギの団粒糞(ペレット型)は水分量が少なく、液状糞を好む大型コガネムシ(タマオシコガネ類やオオセンチコガネ)の誘引力が低いことが知られている。
-
奈良公園のシカ糞ではセンチコガネ類が活動するが、同じペレット型でも密度・利用頻度の高さが寄与していると推定される。
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カモシカは糞場への再訪頻度・個体密度ともにシカより低く、誘引力・検出確率がさらに下がる可能性。
2-2. ノウサギの糞
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ノウサギ糞もペレット型で、乾燥後は容易に崩壊・土壌化するため、糞虫による積極的な利用は報告例が少ない。
2-3. 捕食性動物(テン、キツネ等)の糞
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肉食獣の糞は乾燥しやすく、植物食獣糞ほど糞虫の利用例は少ないが、特定の腐食性昆虫(ハエ類、シデムシ類)が利用する場合あり。
3. 仮説
仮説1:「カモシカ糞には防虫・抗菌成分が含まれる」
-
カモシカの食餌植物由来の二次代謝物(苦味成分、精油成分など)が糞中に残り、フン虫を忌避させている可能性。
仮説2:「フン虫不在型糞リサイクル系の存在」
-
山地林内ではフン虫ギルド自体が貧弱であり、主に微生物・土壌動物(ダニ、トビムシ等)や物理風化で分解が進む「フン虫不在型系」が成立している可能性。
仮説3:「ボトルネック効果によるスペシャリスト絶滅」
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過去の狩猟圧でカモシカ個体群が激減した際、カモシカの糞に依存していたスペシャリストのフン虫類が絶滅した可能性。
仮説4:「カモシカ糞の低い誘引力と周辺フン虫相の組成」
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林内フン虫の種数・密度自体が低いため、偶発的にカモシカ糞に到達する個体が稀である可能性。しかし、同所性のタヌキやアナグマの溜め糞、ニホンザルやツキノワグマなどの糞には糞虫が来ていることが説明できない。
4. 思考実験とその考察
-
奈良公園のルリセンチコガネ(Geotrupes属)のようなペレット糞適応型フン虫を山形県の低山地に人為的に放虫した場合、カモシカ糞の分解促進が期待できるか?→理論的には可能だが、国内外来種問題や気候・繁殖条件の違いにより定着は難しいと考えられる。
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ノウサギ、カモシカ、ヤギなどペレット糞排泄動物の糞リサイクルは、フン虫が関与しない独自路線を取っている可能性。
5. 今後の調査方針
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カモシカ糞粒の化学成分分析(抗菌・防虫物質の検出)
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冬期雪解け後・春先の糞粒の分解状況調査
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林内フン虫相の再評価(マグソコガネ類等の存在確認)
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飼育下カモシカ糞への野外フン虫誘引実験(無菌下設置)
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他地域(中部、関西、九州)のカモシカ溜め糞場との比較調査
6. 結論
ニホンカモシカの溜め糞場におけるフン虫不在現象は、全国的・生態系的に普遍的な現象である可能性が高まった。ただし、化学的忌避・生息地的隔離・進化史的喪失など複数要因が複雑に絡む未解明分野であり、基礎生態学的価値は高い。
「日本山地林内におけるフン虫不在型糞リサイクル系の存在」という仮説は、今後の生態系モデルに新たな視座を提供する可能性がある。