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2025/06/19

山林の水溜りに佇み周囲を警戒するフクロウ【野鳥:トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年6月上旬 

シーン0:6/4・午後13:38・晴れ(@0:00〜) 
明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
山林内に広がる湿地帯や湧き水が溜まった泥水溜りを自動撮影カメラで見張っています。 
左右の水溜りを同時に監視してみたいという目論見で、広角で湿地帯を狙うように設置しました。 


シーン1:6/6・午後19:44(@0:04〜) 
晩に監視カメラが起動すると、レンズの至近距離にザトウムシの一種が覆いかぶさるように居座っていて、極細の長い歩脚が目障りです。 
トレイルカメラのお邪魔虫(ザトウムシ)問題については後々も悩まされ、対策を色々と試行錯誤することになります。 

また、画面の右上にはスギの枝葉が垂れ下がっていて、トレイルカメラの赤外線を眩しく反射しています。 
(杉の葉がギラギラと眩し過ぎすと肝心の被写体が見えにくくなるので、画面の右上部分を切り取りました。) 

よく見ると、奥の水溜まりにフクロウStrix uralensis)が来ていました。 
周囲をキョロキョロと見回す目が白く爛々と光っています。 
ときどきカメラ目線で警戒し、水浴行動をしてくれませんでした。
トレイルカメラの存在が気に入らないのでしょうか?
1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@1:06〜) 

その上空をコウモリが飛び回っています。 



つづく→

2025/06/18

軒下の初期巣から飛び去るコガタスズメバチの創設女王

 

2024年5月下旬・午後15:00頃

民家の軒下にコガタスズメバチVespa analis insularis)の初期巣を見つけました。 
毎年チェックしていたのですが、11年ぶりに営巣してくれました。
この日、女王蜂は不在でした。 

関連記事(まとめ)▶ 軒下に営巣したコガタスズメバチの定点観察(2013年)
ストロボなし
ストロボあり。六角形の育房内に白い卵?幼虫?
11年前に営巣した古巣の残骸の隣に営巣開始。

  
2024年5月下旬・午後15:50頃

3日後に定点観察しに来ると、軒下の初期巣は順調に大きくなり、外皮の開口部が塞がりつつあります。 
創設女王が巣の外皮を下向きに増設しているようでしたが、ストロボ写真を優先したら、動画をほとんど撮れずに女王が飛び去ってしまいました。 
女王様の飛び立ちを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 

北向きなので、夕方になるとかなり薄暗い映像になってしまいます。 
高所に作られた巣なので、地上から見上げてカメラの内蔵ストロボを焚いても、フラッシュ光があまり届きません。 

コガタスズメバチ創設女王が巣作りをする様子を微速度撮影できないか、方法を考えます。 

つづく→

アナグマの旧営巣地で木揺すりディスプレイするニホンザル【トレイルカメラ】

 



2024年6月上旬

シーン0:5/30・午前11:27・晴れ・気温30℃(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
平地の二次林で死んだニホンアナグマMeles anakuma)の旧営巣地(セット)を自動撮影カメラで見張っています。 

久しぶりに登場したニホンザルMacaca fuscata fuscata)のシーンを以下にまとめました。 


シーン1:6/8・午後12:20・晴れ・気温26℃(@0:04〜) 
昼過ぎに右から単独で遊動してきたニホンザルがアナグマの巣口Rの手前で座り込みました。 
周囲をキョロキョロ見渡す際に、巣口Rもちらっと見やりました。 
獣道を歩いて画面左下に立ち去りました。 


シーン2:6/8・午後13:04・晴れ・気温27℃(@0:25〜) 
約45分後に、サルが左から戻ってきたようです。 
同一個体なのかな? 
群れの仲間はどこにいるのか、単独行動している離れザルなのかもしれません。 

アナグマの巣口Rの手前で立ち止まると、右上の二次林の奥を凝視しています。 
その場に座り込んで、辺りをキョロキョロ見回します。 
やがてノソノソ歩くと、林縁から急に跳び上がってミズキの灌木に登りました。 
そのまま樹上で激しく木揺すりディスプレイを披露しました。 
このとき鳴き声を発してはいません。 
誰に対する威嚇なのか不明です。 

1/3倍速のスローモーションでリプレイすると(@1:32〜)、木揺すりの勢いで朽ちた枯木がボキッと折れていました。 
その長い落枝が1本、セットの真上に落ちかけて途中で引っかかりました。 

ニホンザルが乗っていた枝が折れても幸い手で別の枝を掴んでいたようで、「猿も木から落ちる」事故の決定的瞬間は撮れませんでした。 
樹上から地面へ安全に跳び降りると、猿は左上奥へと歩き去りました。 


シーン3:5/30・午前10:57・晴れ・気温29℃(@1:16〜) 
別アングルの監視カメラで、ニホンザルが来る前の現場の様子を示します。 
アナグマの巣口Lが写っています。 


シーン4:6/8・午後13:04・晴れ・気温27℃(@1:20〜) 
別アングルの監視カメラでもニホンザルの木揺すり誇示行動が撮れていました。 
ニホンザルがミズキの樹上に跳び乗った直後から始まります。 
カメラの画角よりも高い枝に登ったようで、木揺すりディスプレイしている姿は写っていないものの、激しく揺れています。 

その拍子に折れた細長い枝が上から落ちていて、ミズキ灌木の幹2本の間に水平に引っかかりました。 
これ以降、この細長い落枝が画角内で目障りなまま残されることになります。 
後日に私が現場入りしたときには、カラスの仕業(悪戯)かと思いつつ落枝を取り除いたのですが、ニホンザルによる所業の一部始終が記録されていました。 


※ 猿が立てる物音が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】 
股間の外性器で猿の性別が見分けられませんでした。 
トレイルカメラでニホンザルの木揺すり誇示が録画されていたのは今回が初めてです。
いつもは山林でサルの群れにうっかり近づきすぎた私に対して、一部の個体が木揺すりディスプレイをする様子を直接撮影していました。

ちなみに、この二次林に出入りするヒトは、私以外に誰もいません。

今回、ニホンザルが急に木揺すりディスプレイを披露した理由は何でしょうか? 
いくつか仮説を考えてみました。

(1)ミズキ灌木に固定してあるトレイルカメラの存在に気づいて、それが気に入らなかった。怒りや不満の表明。 
(2)離れザルだとしたら、群れの仲間に気づいてもらうために、わざと物音を立てた。 
(3)巣穴に隠れていそうな主(アナグマまたはタヌキ)が気になり、威嚇・挑発して巣外に出てくることを期待した。軽い嫌がらせ。
(4) 林内で見慣れない野生動物(ニホンカモシカ?)を見かけたので、木揺すりディスプレイで威嚇し、追い払った。 
(5)本人にとっては一種の遊び。いかにも折れそうな朽木・枯木の枝を見て、わざと折りたくなる衝動に駆られた。 

個人的には、(4)が有望かな?と勝手に思っています。
激しく揺すった枝がときには折れることも織り込み済みで、とにかく大きな物音を立てて脅かしたいのでしょう。

この巣穴に出入りするアナグマやタヌキは落枝を何本も巣口に置いたままにして、巣口を偽装したり不法侵入者が潜り込みにくくするための防犯装置として使っています。 
セットに落枝を供給していたのは、風雪だけではなくニホンザルの仕業でもありました。 


つづく→

2025/06/17

山道で何者かに威嚇のディスプレイを繰り返すヤマドリ♂【野鳥:トレイルカメラ】

 



2024年6月上旬・午前7:30・晴れ 

ホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が通う溜め糞場ltrがある山道を自動センサーカメラで見張っていると、ある朝にヤマドリ♂(亜種キタヤマドリ:Syrmaticus soemmerringii scintillans)がいきなりドラミングを披露していました。 
林道の中央を通って左から来たと思われる♂個体が、溜め糞ltrの手前で立ち止まると、鳩胸のように羽毛を膨らませ、大きく広げた翼をその場で激しく羽ばたいて、ドドドド♪と勇ましい音を立てました。 
キジ♂の母衣ほろ打ちとは異なり、ドラミングしながら鳴くことはありませんでした。 

林道を右へゆっくり歩き始めたものの、立ち止まって小声でクゥー♪と鳴きました。(@0:33〜) 
再び翼を大きく広げましたが、今度は羽ばたきませんでした。 
おそらく何者かと対峙していて、威嚇のために体を大きく見せているのでしょう。 
おそらくライバルのヤマドリ♂と縄張り争いをしているのではないかと想像したのですが、もしかすると相手は野生動物かもしれません。 

最後にヤマドリは右へ立ち去りました。 
この間、少し遠くでカケスやカラスがずっと鳴いているようです。 
やはり、何か野生動物が朝から山道を登ってきていて、それに気づいた野鳥が一斉に警戒しているのかもしれません。

1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:04〜) 
警戒心の強いヤマドリのドラミング行動は初見で、とても嬉しい収穫でした。 
私がこの山道を右から登ってきて、左へ更に進んでいくと、毎回のようにヤマドリ♂のドラミングを聞きますが、すぐに逃げてしまうので姿を目撃したことはほとんどありません。

今回ヤマドリ♂が対峙した相手の正体が監視カメラに写らなかったのが心残りです。 
トレイルカメラもちょっとは気を利かせて右を向いてくれよ!と無茶な要求をしたくなります。 

(ヤマドリは)鳴くことはまれだが、繁殖期になると雄は翼を激しく羽ばたかせ、非常に大きな音を出す(ドラミング、母衣〈ほろ〉打ち)ことで縄張りを宣言するとともに、雌の気を引く[12]。また、ドラミング(ほろ打ち)の多くは近づくものに対する威嚇であるともされる[4]。(wikipediaより引用)



※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


つづく→


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ヤマキヒゲナガ♂の群飛とレック形成【蛾:FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月下旬・午後13:20頃・くもり 

里山の急斜面をつづら折れの山道で登っていると、草むらの上を多数の小蛾がチラチラと飛び回っていました。 
この季節だと、てっきりオドリバエの群飛かと思いきや、下草に着陸した虫をよく見たらヤマキヒゲナガ♂(Nemophora japonica)でした。 
飛び疲れた個体なのか、近くのシダの葉や灌木の若葉に2頭ずつ並んで留まっていました。 
お気に入りの場所で交尾相手の♀を待ち伏せする作戦なのかもしれませんが、♂同士で止まり木を巡る争いにはなりませんでした。
(縄張り争いや占有行動はなし。)

飛翔シーンを高画質のFHD動画で撮影しても、体が小さい上にちらちらと羽ばたく動きが素早すぎてよく見えません。 
ヤマキヒゲナガ♂の群飛を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:51〜) 
少なくとも4頭以上の個体が激しく飛び回っています。 
最後まで飛んでいた個体が、シダの葉に着陸しました。 

同じレック型求愛でも、ユスリカの群飛(蚊柱)とは様子がまるで違いますね。 

関連記事(1、10年前の撮影)▶  


実は、今回撮影した動画素材の順番を入れ替えています。 
ハイスピード動画を一番初めに撮影していて、私が近づいたせいなのか群飛が次第に解消しました。 




【考察】 
ヒゲナガガ科の仲間は、♂が求愛のために群飛をすることで有名です。 
私が山道を通りかかったせいで、ヤマキヒゲナガ♂の群れが警戒して下草から飛び立った訳ではありません。 
群飛を見つけた私がそっと近づいて、動画で撮影したのです。 

くらべてわかる蛾1704種』という図鑑にヤマキヒゲナガは非掲載でしたが、ヒゲナガガ科についての解説を読むと、
小型。♂の触角は前翅長の3倍以上と非常に長い。♀の触角は♂の半分以下と短く、基半部に黒い毛が生え太く見える種が多い。♂は昼間長い触角をたなびかせて競い合うように群飛する。 (p15より引用)
日本動物大百科9昆虫II』によれば、
ヒゲナガガ科には群飛する種と群飛しない種がいる。(中略)クロハネシロヒゲナガは、日中、草地を低くとびかうのが見られ、多数の♂が同じ場所で白い触角を目立たせて飛翔することもあるが、これらの♂は互いにまったく無関心で干渉がないように見える。 群飛をするホソオビヒゲナガでは、♂がからみあって上下するような飛翔をする。樹上のかなり高い位置で群飛することもあり、カ類の群飛と見まちがえることもある。(p71より引用)
ヒゲナガガ類の♂では極端に長くなっていて、前翅長の2〜3倍の長さがある。これは群飛のときバランスをとるのに役立つのかもしれない。(p25より引用)
ヒゲナガガ科の♂は多数が集まって求愛のためのレックを形成し、群飛で♀を誘引して飛びながら交尾するのだそうです。
資源とは特に関係の無い場所に集まった雄が、そこで小さな縄張りを作り、求愛のディスプレイを行う。 このような行動をする雄たちをレック (lek) という。レックが求愛のディスプレイで自分をアピールし、雌を呼び寄せて交尾をするというのがレック型一夫多妻である。
ヤマキヒゲナガ幼虫の食草が何なのか、解明されていないそうです。 
産卵に来る♀を待ち伏せするために、食草の付近で♂がレックを形成している可能性もあります。 
今回ヤマキヒゲナガ♂が留まっていた植物(シダ植物や灌木)の種類をまじめに同定すべきでしたね。 
また、羽化した直後の♀と交尾する可能性もありますが、どこで羽化するかも分かっていないらしい。 

ヤマキヒゲナガの群飛(求愛レック)で性フェロモンを放出している個体は♀♂どちらなのか、という点がとても大切な問題になります。 
そして、性的二型の触角の機能とも関連してきます。 
ヤマキヒゲナガの性フェロモン分子の実態はまだ化学的に同定されていません。 
他の多くの蛾の仲間と同様に、♀が性フェロモンを放出していると仮定した上で、♂の長い触角は空気中の微量な性フェロモンを検知しやすくするための進化適応だというのが、ネット上に流布する定説になっているようです。 
しかし、この定説を誰が言い出したのか、一次ソース(出典)や科学的根拠を見つけられませんでした。 

私はこの定説にどうしても納得できません。 
ヒゲナガガ触角の性的二型が長短の違いだけなら、私も定説に文句をつけたりしないのですが、そうではありません。
ヒゲナガガ♂の触角はただただ異様に長いだけで、単純な形状(糸状)だからです。 
一方、♀の触角は♂よりも短いものの、基部に黒い短毛が密生していて、太くなっています。 
つまり触角の表面積は♀の方が圧倒的に大きくて、微量な性フェロモンを検知しやすくなっています。 
性フェロモン受容体の分布を直接調べることが出来たら、解決するはずです。 
ヤマキヒゲナガ♂は群飛しながら性フェロモンを放出し、♀が視覚的および化学的(嗅覚的)シグナルで誘引されて群飛に飛び込み、1頭の♂と交尾する、というのが私の仮説です。

また、ヤマキヒゲナガの♂は何を頼りにして求愛レックを形成するのでしょうか? 
♀が来そうだと思う場所(目立つ茂みの近くなど)を個々の♂が判断し、結果として複数の♂が集まってくるだけかもしれませんが、いかにも効率が悪そうです。 
遠くまで聞こえる鳴き声(聴覚的なシグナル) を発している訳でもありません。
白くて長い触角や翅の金属光沢など視覚的なシグナルを頼りにして、♂たちが集まってくると考えられているそうです。 
集合フェロモンを放出しているかもしれない、と私は思いつきました。(嗅覚的、化学的なシグナル) 
♂が放出する(と個人的に仮定している)性フェロモンと集合フェロモンは別個の分子かもしれませんし、同じ分子が受け手の性別によって異なる効果をもたらすのかもしれません。 

ヒゲナガガの群飛はなかなか面白そうな研究テーマですが、配偶行動の観察だけでなく、食草や飼育法を確立するところから始める必要がありそうです。 
長い触角を実験的に切除すると、飛翔や配偶行動のどの過程に支障を来すでしょうか?

木の葉の表面に居座って周囲を360°見回していた♂個体は、これからまさに他の♂と合流してレックを形成し始めるところだったのかもしれません。 


今回もPerplexity AIを相談相手に調べ物をしたり、観察結果の解釈についてしつこく問答を繰り返しました。
ブレインストーミングの結果を以下のレポートに要約してもらいました。 (文言の一部を手直し済み)
もっともらしい専門用語を駆使して、かなり背伸びをした「それっぽいこと」を生成AIが言ってるだけなので、ご注意ください。
AI自身が私の動画を視聴した上でヤマキヒゲナガ♂の行動を独自に解釈している訳でもありません。
今後の展望についても、素人には手に余ることばかりです。
いずれ誰かが解明してくれることを期待します。


ヤマキヒゲナガ♂の群飛行動と配偶システムに関する考察

Ⅰ. 観察概要

  • 日時・場所:2024年5月下旬・山形県の里山(草木に覆われた山腹の急斜面)

  • 気象条件:曇天・無風状態

  • 行動特徴

    • 少なくとも4頭の♂が同一空間で緩やかな群飛

    • 飛翔個体に加え、シダ植物と広葉樹幼木(推定:ニワトコ・オシダ?)に静止する♂が混在

    • オス同士の闘争行動は確認されず

    • メスおよび交尾行動は未観察

Ⅱ. 行動生態学的解釈

1. 群飛の機能仮説

  • レック型配偶システム

    • オスが特定の微気象条件(風速・日照)下で集団飛翔し、メスの訪問を待機1

    • ヒロオビヒゲナガ(N. raddei)の日没前スウォーム行動との類似性

  • 待機戦略の多様性

    • 飛翔個体:視覚的アピールによるメス誘引

    • 静止個体:エネルギー節約型の待機戦略

2. 触角の形態と機能

  • オス触角の特徴

    • 体長の3倍に達する糸状触角(全長約15mm)

    • 表面積は♀触角(毛密生)の1/5以下

  • 機能仮説

    • フェロモン検知:未検証(従来説の再考必要)

    • 飛翔安定装置:長い触角が「生物学的スタビライザー」として機能6

    • 視覚シグナル:光反射による個体間通信

3. フェロモンシステムの特殊性

  • 従来説との矛盾

    • ヒゲナガガ科では♀発信型フェロモンが主流とされる

    • 本種では♂がフェロモンを放出している可能性

  • 二重機能仮説

    • オスフェロモンが同性を集合させ(集合フェロモン)、同時に♀を誘引

Ⅲ. 未解決問題と研究課題

1. 行動メカニズム

  • 群飛形成の誘引要因(化学的/視覚的/地形的)

  • 静止個体と飛翔個体の役割分業

  • メスの出現パターンと時間帯依存性

2. 生理学的課題

  • 触角切除実験による飛翔安定性の定量評価

  • 分泌物質のGC-MS分析によるフェロモン同定

  • 触角感覚器の走査型電子顕微鏡観察

3. 進化的意義

  • 小型化(体長5-7mm)と触角長大化の相関

  • レイノルズ数(慣性力と粘性力の比)低下環境(体長比Re≈100)での飛翔制御適応

  • 種特異的フェロモンシステムの分子基盤

Ⅳ. 今後の観察指針

  1. 時間帯別行動記録:日出~日没まで1時間毎の個体数変動

  2. 環境要因記録

    • 気温・湿度・風速の連続測定

    • 植物フェノロジー(開花・新芽展開)との関連

  3. 標識再捕法

    • 蛍光粉末による個体追跡

    • 行動圏と移動距離の推定


総括

本観察はヒゲナガガ科の配偶システム解明において以下を示唆:

  • 従来の「♀発信型フェロモン」モデルに当てはまらない可能性

  • 触角の多機能性(感覚・飛翔制御・視覚信号)の共存

  • レック行動の多様性(闘争なき集団形成)

今後の詳細な行動観察と化学分析が、昆虫の微小環境適応戦略解明に貢献すると期待されます。216

  1. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9939265/
  2. https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenmin/ao-kendo/files/H24dmns-1.pdf
  3. https://www.city.hiroshima.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/011/855/45554.pdf
  4. https://hs-gakko.org/wp-content/uploads/2024/03/ikimono.pdf
  5. http://www.esj.ne.jp/meeting/51/pdf/book/jes51p2.pdf
  6. interests.insect_physiology
  7. http://www.jpmoth.org/Adelidae/Adelinae/Nemophora_japonica.html
  8. https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/assessment/document1408/kanagawa/_pdf/eis2_kanagawah14.pdf
  9. https://www.city.minokamo.lg.jp/uploaded/attachment/2441.pdf
  10. https://www.city.nobeoka.miyazaki.jp/uploaded/attachment/8659.pdf
  11. https://www.ars.usda.gov/ARSUserFiles/20200500/Pubs%202020/HullFonagy%202019.pdf

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2025/06/16

旧営巣地に日中戻って仰向けで毛繕いするニホンアナグマ♀【トレイルカメラ】

 



2024年6月上旬・午後12:15頃・晴れ・気温24℃ 

平地の二次林で、越冬中に死んだアナグマの旧営巣地(セット)を自動撮影カメラで監視し続けています。 

ある日の昼下がりに、ニホンアナグマMeles anakuma)が単独で来ていました。 
ミズキの下にリラックスして座り込み、仰向けになって毛繕いを始めました。
ときどき痒い体をボリボリ掻いています。 
昨年(2023年)ここで営巣していた個体で散々見慣れた行動ですが、今季は初見です。 

大股開きの股間に陰茎や睾丸が見えれば♂、腹面に乳首が見えれば♀と性別が分かります。 
ちょうど手前に生えた幼木の葉が邪魔で、肝心の股間がしっかり見えませんでした。 
顔つきからは♀だと思うのですが、どうですかね? 

今季産まれた幼獣を連れて、ここに転入(引っ越し)してくれないかと、密かに期待しています。

つづく→

水浴中のフクロウが近くに現れたニホンノウサギ2羽を狩らずに見逃す【野鳥:トレイルカメラ:暗視映像】





2024年6月上旬 

シーン0:6/7・午後13:14・くもり(@0:00〜) 
シーン0:6/7・午後13:40・くもり(@0:04〜) 
明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の状況です。 
山林内にある泥水溜りを2台の自動センサーカメラで見張っています。 
水溜りは浅いのですが、湧き水で一年中涸れることはありません。 
ジメジメとした湿地帯の全景を広角で撮ると、左側にあるメインの水溜りの他に、右にも少し小さな水溜りがあります(画面の右端に見切れています)。 
ここは野鳥や野生動物が通ってくる水場となっているようです。 


シーン1:6/10・午前1:49(@0:08〜) 
深夜に、左手前の泥水溜りにフクロウStrix uralensis)が水浴びに来ています。 
右上奥の草むらを野生動物の白く光る眼が手前に移動してきました。 
奥を左右に通っている林道から緩斜面を下って湿地帯に出てきたようです。 
ピョンピョン跳躍する動きから、ニホンノウサギLepus brachyurus angustidens)のようです。 



フクロウは暗闇でも獲物の接近に気づいていて、そちらを凝視しました。 
絶好のチャンスなのに、なぜかノウサギに襲いかかることはありませんでした。 
水溜りにただ佇み、周囲をキョロキョロと見回しています。 


シーン2:6/10・午前1:51(@0:30〜) 
タイムスタンプが少しずれていますが、別アングルの監視カメラでも同時に撮れていました。 
フクロウが浅い泥水溜りに入っていて、後ろ向きで足浴していました。 
対岸の奥の草むらでノウサギの白く光る眼が動いています。 
フクロウは獲物の存在に気づいていて、そちらを見つめています。 
果たして待ち伏せ猟をするでしょうか? 

 しばらくすると、左奥の草むらから別個体のノウサギが現れ、右へと横切りました。(@0:52〜) 
先行する個体を追いかけてきたようです。
先行個体が右へ逃げ出したものの、求愛や縄張り争いのような激しい追いかけっこにはなりませんでした。 
ノウサギの♀♂ペアが一緒に水を飲みに来たのかな? 
しかしノウサギは乱婚型で、♂は交尾した後に子育てに協力したり♀と一緒に暮らしたりすることはないはずです。 

2羽のノウサギを見送ったフクロウは、手前の岸辺からピョンと入水し、右上奥の草むらを油断なく凝視しています。 
フクロウが水場に来る獲物(野ネズミやノウサギなど)を待ち伏せして狩るつもりなら、近くの樹上など高所に隠れるはずです。 
地上に降りてしまうと、獲物を見つけても一旦飛び上がってから襲いかかる必要があり、タイムロスになりそうです(獲物に逃げられてしまう可能性が高い)。


シーン3:6/10・午前1:51(@1:34〜) 
広角で湿地帯を見張る別の監視カメラでも撮れていました。 
トレイルカメラ2台が同時に起動したことで、赤外線の光量も2倍になり、広い範囲を充分明るく照らしてくれました。 

ノウサギが右上奥の林道から手前の湿地帯に向かって緩斜面をゆっくり降りてきました。 
その動きを画面中央のフクロウが凝視しています。 
このアングルで見ると、フクロウからノウサギまで結構離れていることが分かります。 
ノウサギに襲いかかっても逃げられそうだとフクロウは冷静に判断して、狩りを行わなかっただけかもしれません。 
水浴に来ていたフクロウは羽根が濡れていて体が少し重く羽根の静音性も低下していますから、狩りを成功させる自信がなかったのかもしれません。 
しばらくすると、フクロウは右へピョンと飛んで水溜りの中に入りました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】
獲物を狩る絶好のチャンスだったのに、フクロウがノウサギを襲わなかったのが意外でした。 
たまたま満腹だから獲物を見逃したのかと思ったのですが、この時期(6月上旬)は育雛後期ですから、フクロウの親鳥はたとえ自分が満腹でも、獲物を狩って雛や幼鳥に給餌するはずです。
もしもこのフクロウが巣立ったばかりの幼鳥だとしたら、狩りの能力が未熟なのでノウサギとニアミスしても襲撃をためらったのは理解できます。 

私はフクロウの観察歴がまだ浅くて、成鳥と幼鳥を自信を持って見分けられません。
しかし、この時期(6月上旬)だと巣立ったばかりの幼鳥はフワフワの幼綿羽があるはずです。
トレイルカメラの暗視映像に写った個体は、ふわふわしてないので素人目には成鳥に見えます。

この水溜りにはアズマヒキガエルの幼生と思われるオタマジャクシが泳いでいます。
夜行性のフクロウは水溜りで長居しても、昼行性のクロツグミとは違って、オタマジャクシを狩りませんでした。
フクロウは興味津々で水中のオタマジャクシを観察しているだけかもしれません。

逆に、ノウサギはフクロウの存在に気づいていたのでしょうか? 
ノウサギも夜行性で、瞳にはタペータムが発達していますから、暗い夜でも目が見えるはずです。
ノウサギは長い耳が発達して聴覚は非常に優れていますが、このときフクロウはバシャバシャと音を立てて水浴中ではありませんでした。
ノウサギが天敵であるフクロウに気づいて、水場を回避したのかどうかが、映像ではよく分かりません。
ノウサギ同士の遭遇(追跡?)に気を取られて、水場で静かに佇んでいたフクロウに気づかなかったのかもしれません。




動画の解釈について、いつものようにPerplexity AIとブレインストーミングした後で、簡潔なレポートにまとめてもらいました。
注意点として、AIは動画そのものを見て行動を独自に解釈している訳ではありません。
あくまでも私が解釈した文字情報に対して、推論回答しているだけです。



トレイルカメラによる水場でのフクロウとノウサギのニアミス観察とその解釈


1. 観察の概要

  • 2024年6月上旬、山形県の山林内湿地帯(水場)に設置したトレイルカメラで深夜の動物行動を記録。

  • 水場にフクロウ(Strix uralensis)が静かに佇み、周囲を見回している様子が撮影された。

  • その直後、2羽のニホンノウサギ(Lepus brachyurus)が続けて水場を横切ったが、フクロウは凝視するだけで狩りのアクションを起こさなかった。


2. 行動の生態学的解釈

フクロウの行動

  • フクロウは主にネズミ類や小型哺乳類を捕食するが、ノウサギも捕食対象となり得る57

  • 通常、待ち伏せ型の狩りを行う際は樹上など高所から獲物を狙うことが多く、地上で静止している場合は狩り以外の目的(警戒、観察、水分補給など)の可能性が高い9

  • 水場に長居していたが、オタマジャクシなど水生小動物を狩る様子は記録されず、興味本位で観察していたと考えられる。

ノウサギの行動

  • ノウサギは夜行性で、行動範囲は寝床から半径約400mとされる3

  • 繁殖期(2~7月)にはオス同士やオス・メス間で激しい追いかけっこが見られることがあるが、今回の映像では穏やかな動きであり、繁殖行動以外の単なる移動や採食、親子・同性個体の可能性も考えられる。

  • ノウサギはタペータムの発達した目を持ち、夜間でも周囲の動物を認識できるが、フクロウが静止していたため気づかなかった、もしくは警戒しつつも水場を利用した可能性がある139


3. 幼鳥・成鳥の識別と繁殖期のタイミング

  • 6月上旬はフクロウの育雛期~巣立ち直後の時期であり、観察された個体が幼鳥である可能性もある10

  • 幼鳥は巣立ち直後は綿羽が残るが、換羽の進行や暗視映像の解像度によっては判別が難しい。綿羽が見えなくても幼鳥の可能性は排除できない。

  • 巣立ったばかりの幼鳥は通常樹上で親の給餌を待つが、行動範囲が広がる過程で水場に現れることもまれにある。


4. 狩りが起こらなかった理由の考察

  • フクロウが満腹だった、あるいは幼鳥で狩り経験が浅かった可能性。

  • ノウサギが成体であれば、フクロウにとってリスクや負担が大きく、狩りの対象に選ばなかった可能性。

  • 水場での静止は狩りのための待ち伏せではなく、警戒・観察・水分補給など他の目的だった可能性が高い。

  • ノウサギもフクロウの存在に気づいていたかもしれないが、警戒しつつも水場を利用した、あるいはフクロウが静止していたため危険と認識しなかった可能性がある。


5. まとめ

  • トレイルカメラ映像から、夜間の水場でフクロウとノウサギがニアミスしても、必ずしも狩りが発生するとは限らない。

  • 両種の行動には、繁殖期のタイミング・個体の年齢・行動目的・警戒心など様々な要素が複雑に絡んでいる。

  • 今回の観察は、野生動物の多様な行動戦略と、単純な「捕食―被食関係」だけでは説明できない現場のリアルな生態を示している910

  1. https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/12/1/12_1_1_11/_pdf
  2. https://note.com/p_c_m22/n/nbcca18728e01
  3. http://sancyokohama.sakura.ne.jp/houkoku/19/YNSchousahoukoku19_1.pdf
  4. https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/assessment/prestatement/yamanashi/_pdf/yamanashiy08-04-03.pdf
  5. https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/001021259.pdf
  6. https://www.pref.nagano.lg.jp/kankyo/kurashi/kankyo/ekyohyoka/hyoka/tetsuzukichu/gomishori/documents/10doubutsu.pdf
  7. https://www.town.minakami.gunma.jp/minakamibr/nature/pdf/nature07.pdf
  8. https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/12/1/12_1_1_11/_pdf/-char/ja
  9. interests.animal_behavior
  10. interests.bird_biology
 


2025/06/15

山中の湿地帯を深夜に横切るニホンイノシシ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2024年6月上旬・午後23:45頃 

山林で見つけた浅い泥水溜りを自動センサーカメラで見張ることに決めたのは、イノシシの泥浴びを撮影するのが一番の目的です。 
現場の泥濘に野生動物が歩いた蹄の跡がくっきりと残っていて(イノシシとは限らず、カモシカの足跡かも?)、しかも近くに自生するユキツバキ群落の葉には大量の泥が付着して白く乾いていました。(映像公開予定) 
きっと野生のイノシシが泥浴び(ヌタ打ち)に通ってくるヌタ場だろうと予想したのです。 
山形県の当地ではイノシシの生息密度がまだ低く、私が山中にトレイルカメラを設置してもイノシシは滅多に写りません。
イノシシの泥浴び行動を撮影するのが長年の悲願となり、私はヌタ場を探し求めて悪戦苦闘しています。 

ある日の深夜に、ようやくニホンイノシシSus scrofa leucomystax)が単独で現れました。 
監視カメラの起動が遅れ、泥水溜りの対岸を右へ立ち去るところでした。 
画面の奥にもう一つ別な(少し小さい)泥水溜りがあるのですが、そこでもイノシシは泥浴びをしてくれませんでした。 
イノシシは泥浴びが大好きなはずなのに、監視カメラの存在に気づいて警戒しているのでしょうか? 

目的のイノシシがなかなか写らなくても、フクロウやクロツグミなど予想外の収穫が色々と多くて面白い水場であることが判明しました。
このまま気長にトレイルカメラによる監視を続けることにします。

つづく→

バラ(アンジェラ)の花粉を集めるスミゾメハキリバチ♀

 

2024年5月下旬・午後14:05頃・晴れ 

民家の玄関先に植栽されたピンクの薔薇の花に真っ黒なムナカタハキリバチ(別名スミゾメハキリバチ)♀(Megachile willughbiella sumizome)が訪花していました。 

私は園芸植物にまるで疎いので、このバラを画像認識で調べてもらうと、おそらくアンジェラという半八重の品種だろうと教えてもらいました。 

スミゾメハキリバチ♀は小型の個体という印象です。 
吸蜜ではなく、集粉に専念しているようです。 
バラの花でときどき回転集粉を行いましたが、振動集粉の音は聞こえませんでした。 
腹面のスコパは茶色(赤褐色)の毛が密生しています。 
バラの花粉は黄色のはずですが、スコパに付着しているようには見えません。 
雄しべの葯を見ても、花粉が枯渇していて少なそうです。 
そもそも八重咲きの花は雄しべが花弁にホメオティック変異した品種なので、半八重では通常よりも雄しべの数が少なくなっています。 

スミゾメハキリバチ♀は羽音を立てて次のバラの花へ飛んで移動します。 
訪花中になぜか蜂が腹部を海老反りにすることがありました。 
腹面のスコパが雄しべに触れなくなるので、集粉するには逆効果のはずです。 
近くで撮影している私に対して威嚇・警戒しているのかな?  

※ 蜂の羽音が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。


バラハキリバチのように、スミゾメハキリバチも巣材としてバラの葉を切り抜くことがあるのでしょうか? 
動画を見直しても、ハキリバチに葉を丸くくり抜かれた跡は写っていません。 



Perplexity AIに質問しても、スミゾメハキリバチが利用する巣材の植物について報告がないらしい。 
ただし、スミゾメハキリバチの原亜種であるムナカタハキリバチ(Megachile willughbiella)だとヨーロッパでよく調べられていて、バラの葉を切り抜いて巣材にすることがあるそうです。 
(バラの葉だけを巣材にするのではなく、植物種をあまり選り好みしないらしい。)

ちなみに最近、ムナカタハキリバチの全ゲノムが解読されたそうです。
CROWLEY, Liam M., et al. The genome sequence of Willughby’s leafcutter bee, Megachile willughbiella (Kirby, 1802). Wellcome Open Research, 2024, 9: 164.
次にスミゾメハキリバチのゲノムも解読して比較すれば、亜種の違い(黒化した体色)がどのように進化したのか突き止められそうですね。 




2025/06/14

ニホンカモシカの溜め糞で糞虫が見つからず分解も遅いのはなぜか?【フィールドサイン】

 



2024年5月下旬

シーン1:5月下旬・午後14:10頃・晴れ(@0:00〜)
里山でスギと雑木の混交林に残されたニホンカモシカCapricornis crispusが残した溜め糞場sr2の定点観察にやって来ました。
ここにはカモシカが最近もよく排便に通っていることが、トレイルカメラによる監視で分かっています。

この溜め糞場sr2でハネカクシの仲間を見かけたのですが、撮り損ねてしまいました。
新鮮な糞粒は、まだ黒っぽく艶があります。
小枝を拾って溜め糞をほじくり返してみても、糞便臭は全く感じず、糞虫は1匹も見つかりません。
糞虫屋さんにしてみれば、こんな雑な探し方では駄目なのかもしれません。
ふるいにかけるなどして、もっと徹底的に探すべきですかね?
ここに生えていたキノコ(クズヒトヨタケ)は「一夜茸」の名前の通り、消失していました
ムネアカオオアリCamponotus obscuripes)のワーカー♀がうろついているだけでした。
古い糞粒の表面が点々と茶色い粉を吹いたようになっているのは、カビが生えてきたのでしょうか。



シーン2:5月下旬・午後13:00頃・晴れ(@1:39〜)
その前の週に、同じ里山で渓谷沿いのスギ植林地にニホンカモシカCapricornis crispus)が残した溜め糞場sr1の定点観察にやって来ました。
スギの林床に下草が伸びてきました。 
新鮮な糞粒はなくて、古い糞だけでした。
最近はカモシカが排便しに来ていないようです。

拾った小枝で古い糞粒をほじくり返しても、糞虫は全く来ていませんでした。 
糞便臭を全く感じません。 
糞粒の表面に粉を吹いているのは、カビが生えているのですかね?
キノコの子実体も生えていません。

関連記事(同時期に別の溜め糞場sr2で撮影)▶ ニホンカモシカの溜め糞場から生えてきたクズヒトヨタケ?【キノコ】




つづく→ 


【考察】 
私が定点観察しているカモシカの糞粒は、古くなっても形が崩れず、原型を留めたままです。 
カモシカの溜め糞にはキノコもあまり生えず糞虫にも人気がないのは、私のフィールドだけですか?
ある地域である生物を探しても見つからない、 というネガティブデータは、論文や報告書にもなりにくいですし、YouTuberも動画にしたがりません。
(日本各地にあるカモシカの溜め糞場でも同じだとすれば、話が変わってきます。)

糞虫に関する本を何冊か読んだことがあるのですけど、
どんな動物にもその糞を分解する糞虫がいるという話でした。
そのバランスが崩れると、例えば「有袋類しか生息していなかったオーストラリアで家畜を導入して外来種を放牧した結果、その糞が分解されずに地上に残り続けて大問題(糞害)を生じたものの、糞虫を海外から導入(放虫)したら解決した」という逸話が有名です。
その定説からすれば、カモシカの溜め糞がいつまで経っても分解されず、糞虫も来ていないのは異常事態だと感じてしまいます。
不思議なことに、同じ里山に生息する(同所性の)タヌキやアナグマ、ニホンザル、ツキノワグマなどの糞には糞虫が来ています。
したがって、当地ではカモシカの糞粒にだけ糞虫が寄り付かないと結論づけるしかありません。
それとも定説に問題(間違い)があるのでしょうか?
自分で調べたカモシカ溜め糞のサンプル数がまだ少ないので、一般論として語れる傾向なのかどうかもまだ分かりません。

私は他の地域のフィールドについては知らないので、私のフィールドだけが不健全な生態系なのかと心配でした。
ニホンカモシカはマタギ(猟師)による狩猟圧や開発のため、一時期は絶滅に瀕していましたが、天然記念物に指定されて保護された結果、個体数が回復しました。
そのようなボトルネックを経た結果、カモシカの糞を好んで利用するスペシャリストの糞虫が当地では知らぬ間に絶滅してしまったのかもしれません。
 
以上のような仮説をいくつか立ててChatGPTとブレインストーミングを行い、その結果をレポートにまとめてもらいました。
一部の細かい文言だけ推敲してあります。
結論部分は完全にChatGPTが生成した作文なのですが、あまりにも大言壮語で笑ってしまいます。

 


ニホンカモシカの溜め糞場における糞虫不在現象に関する考察

1. 背景と発端

筆者が調査を行っている山形県の低山・里山域において、ニホンカモシカ(Capricornis crispus)の溜め糞場では、排泄された糞粒が長期間分解されずに残存している現象が確認された。この糞は形状が崩れることなく保持され、キノコ類等の菌類も発生しにくい。加えて、フン虫(糞虫)類の活動痕跡が見られず、掘り起こし・埋設・球状運搬などの典型的なフン虫行動が全く確認されていない。

この状況は「野生哺乳類の排泄物には必ずそれを分解利用するフン虫類が存在する」という従来の昆虫生態学的通説と矛盾する可能性がある。筆者はこの疑問を基点に、以下のような仮説と解釈を考察した。

2. 既知情報と比較

2-1. 家畜ヤギ・野生シカの糞とフン虫

  • ヤギの団粒糞(ペレット型)は水分量が少なく、液状糞を好む大型コガネムシ(タマオシコガネ類やオオセンチコガネ)の誘引力が低いことが知られている。

  • 奈良公園のシカ糞ではセンチコガネ類が活動するが、同じペレット型でも密度・利用頻度の高さが寄与していると推定される。

  • カモシカは糞場への再訪頻度・個体密度ともにシカより低く、誘引力・検出確率がさらに下がる可能性。

2-2. ノウサギの糞

  • ノウサギ糞もペレット型で、乾燥後は容易に崩壊・土壌化するため、糞虫による積極的な利用は報告例が少ない。

2-3. 捕食性動物(テン、キツネ等)の糞

  • 肉食獣の糞は乾燥しやすく、植物食獣糞ほど糞虫の利用例は少ないが、特定の腐食性昆虫(ハエ類、シデムシ類)が利用する場合あり。

3. 仮説

仮説1:「カモシカ糞には防虫・抗菌成分が含まれる」

  • カモシカの食餌植物由来の二次代謝物(苦味成分、精油成分など)が糞中に残り、フン虫を忌避させている可能性。

仮説2:「フン虫不在型糞リサイクル系の存在」

  • 山地林内ではフン虫ギルド自体が貧弱であり、主に微生物・土壌動物(ダニ、トビムシ等)や物理風化で分解が進む「フン虫不在型系」が成立している可能性。

仮説3:「ボトルネック効果によるスペシャリスト絶滅」

  • 過去の狩猟圧でカモシカ個体群が激減した際、カモシカの糞に依存していたスペシャリストのフン虫類が絶滅した可能性。

仮説4:「カモシカ糞の低い誘引力と周辺フン虫相の組成」

  • 林内フン虫の種数・密度自体が低いため、偶発的にカモシカ糞に到達する個体が稀である可能性。しかし、同所性のタヌキやアナグマの溜め糞、ニホンザルやツキノワグマなどの糞には糞虫が来ていることが説明できない。

4. 思考実験とその考察

  • 奈良公園のルリセンチコガネ(Geotrupes属)のようなペレット糞適応型フン虫を山形県の低山地に人為的に放虫した場合、カモシカ糞の分解促進が期待できるか?→理論的には可能だが、国内外来種問題や気候・繁殖条件の違いにより定着は難しいと考えられる。

  • ノウサギ、カモシカ、ヤギなどペレット糞排泄動物の糞リサイクルは、フン虫が関与しない独自路線を取っている可能性。

5. 今後の調査方針

  1. カモシカ糞粒の化学成分分析(抗菌・防虫物質の検出)

  2. 冬期雪解け後・春先の糞粒の分解状況調査

  3. 林内フン虫相の再評価(マグソコガネ類等の存在確認)

  4. 飼育下カモシカ糞への野外フン虫誘引実験(無菌下設置)

  5. 他地域(中部、関西、九州)のカモシカ溜め糞場との比較調査

6. 結論

ニホンカモシカの溜め糞場におけるフン虫不在現象は、全国的・生態系的に普遍的な現象である可能性が高まった。ただし、化学的忌避・生息地的隔離・進化史的喪失など複数要因が複雑に絡む未解明分野であり、基礎生態学的価値は高い。

「日本山地林内におけるフン虫不在型糞リサイクル系の存在」という仮説は、今後の生態系モデルに新たな視座を提供する可能性がある。

水場付近の湿地で薄明薄暮に餌を探し歩くクロツグミ♂【野鳥:トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年5月下旬〜6月上旬

シーン0:5/24・午後12:40・晴れ(@0:00〜) 
明るい昼間にたまたまフルカラーで撮れた現場の状況です。 
山林で湧き水が溜まった浅い水場を自動撮影カメラで見張っています。 

真っ黒なクロツグミ♂(Turdus cardis)の探餌活動を以下にまとめます。 


シーン1:5/27・午前4:14(@0:07〜)日の出時刻は午前4:17。 
夜明け直前でまだ真っ暗なのに、早起きのクロツグミ♂が採餌活動を始めました。 
ピョンピョン跳んで泥濘をうろつき、餌を探しています。 
朝一番に水浴するかと期待したのですが、そのまま奥の湿地帯へとどんどん遠ざかります。 


シーン2:5/30・午前4:25(@0:48〜)日の出時刻は午前4:16。 
3日後は日の出直後にクロツグミ♂が登場しました。 
右へホッピングして立ち去る途中で、泥濘を啄みました。 


シーン3:5/30・午前18:07(@0:57〜) 
同じ日の夕方にもクロツグミ♂が現れました。 
今度は右奥から左へとピョンピョン跳んで(ホッピング)、湿地帯の草地を移動します。 


シーン4:5/30・午前18:53(@1:07〜)日の入り時刻は午後18:58。 
日没直前にもクロツグミ♂が再登場。 
ホッピングで左へ移動しながら、泥濘を啄んでいます。 


シーン5:6/1・午後18:25(@2:09〜) 
2日後も夕方にクロツグミ♂が餌を探しに来ました。 
水溜りの水際の泥濘を嘴でつつきました。 
少し飛んで水溜まりの対岸へ移動しました。 


シーン6:6/1・午後18:45(@3:11〜)日の入り時刻は午後18:59。 
20分後の日没前に、クロツグミ♂がまた同じ地点に現れました。 
さっきとほぼ同じルートで水場を巡回し、餌を探し歩きます。 


シーン7:6/2・午後18:24(@4:05〜) 
水場に来ていたクロツグミ♂が、手前の泥濘から右に飛び去りました。 

監視カメラのレンズがやや曇っています。 
水溜りの水面に波紋が広がっているので、雨がポツポツ降っているようです。 


シーン8:6/2・午後18:40(@4:12〜)日の入り時刻は午後19:00。 
約15分後の日没前にクロツグミ♂が水場にまた戻って来ました。 
水溜まりをチェックしてから、ホッピングで手前へ移動します。 


シーン9:6/3・午前5:19(@4:39〜)日の出時刻は午前4:14。 
翌日も早朝からクロツグミ♂が手前の泥濘に来ていました。 
両足を揃えたホッピングで右へ向かい、戻ってくると、奥の水溜まりの方へピョンピョン跳んで行きました。 


シーン10:6/3・午前5:25(@4:57〜) 
6分後にクロツグミ♂が左奥の湿地帯で草むらを横切り、餌を探しています。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。


【考察】
クロツグミ♂はなぜか薄明薄暮の時間帯にしか水場(湿地帯)で餌を探しに来ません。
育雛期の日中は、雛に給餌するために♂は休みなく餌を探しているはずですが、他の時間帯にはどこか別の餌場に行っているのでしょうか?
この水場は里山の山腹にあるので、公式な(天文学的な)日の入り時刻よりもずっと早く、太陽は山の陰に沈み、暗くなります。 
赤外線の暗視動画で薄明薄暮の探餌行動がしっかり撮れました。
旧機種のトレイルカメラは、暗視動画の方が、自然光よりもしっかり撮れるので助かります。  

2025/06/13

死んだアナグマの巣穴を内見するホンドタヌキ♀♂と上空を飛び回るコウモリ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年5月下旬・午前0:30頃・気温13℃ 

越冬に失敗して死んだニホンアナグマMeles anakuma)の旧営巣地(セット)がある二次林を自動センサーカメラで見張り続けています。
ホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が一緒に登場したシーンをまとめました。 


シーン1:5/27・午前0:31(@0:00〜) 
左から来た先行個体のタヌキが巣口Rへ回り込み、中に潜り込みました。 
すぐに頭から外に出てきて身震いすると、左へ戻りました。 
隣の巣口Lで、別個体のタヌキと合流しました。 

タヌキがちょうど出巣Rしたときに、コウモリの一種が飛来しました。 
コウモリの飛翔シーンを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。



シーン2:5/27・午前0:32(@0:57〜) 
別アングルの監視カメラでも撮れていました。 
先行個体のタヌキが左に向かい、巣口Rの内見をしている間に、コウモリが右から左へ高速でセットの上空を横切りました。 
コウモリの飛翔シーンを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。

さっきのタヌキが左から早足で巣口Lに戻ってきました。 
ちょうどそのタイミングで出巣Lした別個体と巣口Lで顔を見合わせます。
2頭のタヌキは一緒に獣道を右上奥へ立ち去りました。 


タヌキの♀♂ペアはセットの上空を飛び交うコウモリに対して全く無関心でした。 
コウモリが発する超音波がタヌキの耳に聞こえているのか、その行動から読み取ることは出来ません。
コウモリがパタパタと羽ばたく可聴域の羽音が聞こえない限り、タヌキは見上げたりしないようです。 
タヌキにとって飛んでいるコウモリは天敵でもありませんし、獲物にしても手が届きませんから、無関心になるのも当然でしょう。 

この地点でタヌキとコウモリのニアミスをトレイルカメラで録画できたのは、これが2回目です。 

新機種のトレイルカメラで監視するようになったから、素早く飛び回るコウモリを撮れるようになったのかな? 


つづく→

ツキノワグマの糞塊内に潜むセンチコガネ

 

2024年5月下旬・午前11:10頃・くもり 

山麓の小径を歩いていたら、かなり大きな糞塊を見つけました。 
ニホンザルの糞と迷ったのですが、ツキノワグマUrsus thibetanus)の落とし物でしょう。
道の中央で枯れた落ち葉(広葉樹)の上に残されていました。 
糞塊の表面は真っ黒で、半乾きの状態です。 


15cm定規を並べてみる。




小枝を拾って糞塊をほじくってみると、内部はまだ瑞々しい状態でした。
未消化物は緑色の植物繊維の塊でした。 
植物の若葉を大量に食べたことが分かります。 
この時期のツキノワグマはベジタリアン(植食性)です。 
糞塊をほじくってみても、糞便臭を全く感じませんでした。 
(同じ雑食性でもヒトの大便の方がはるかに臭いです。) 

クマの糞の中にセンチコガネPhelotrupes laevistriatus)が1匹だけ隠れていました。 
この路面は落ち葉の下が硬いコンクリートですから、糞虫たちはいくら頑張っても獣糞を地中に埋めることが出来ません。 
したがって、このセンチコガネはクマの糞を食べていただけでしょう。 
ほじくり出したセンチコガネは、擬死したまま動きません。 
ひっくり返すと、腹面も鈍い金属光沢(構造色)でしたが、オオセンチコガネほど綺麗な玉虫色ではありませんでした。 






クマの糞を見つける度に中をほじくって食性調査(糞内容物調査)の真似事をしてみるのですが、糞虫を見つけたのは今回が初めてで、嬉しい発見でした。 
糞の鮮度がちょうど良かったのでしょう。 
クマの専門家は糞を持ち帰って水洗いしながら網で濾し、小型の糞虫や未消化の種子などを丹念に探すのだそうです。 

関連記事(1、5、6年前の撮影)▶  


山中ならともかく、通い慣れた山麓の小径までクマが降りてきた証拠が残されていたのは衝撃です。 
「熊出没注意!」
熊よけスプレーと熊よけ鈴を携帯していることを改めて確認し、気を引き締めて先に進みます。 


【アフィリエイト】 

2025/06/12

山中の水溜り上空を夜な夜な飛び回るコウモリ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2024年5月下旬 

シーン0:5/24・午後12:40・晴れ(@0:00〜) 
たまたま明るい日中にフルカラーで撮れた現場の状況です。 
山林で水溜りを自動センサーカメラで見張っています。 
溜まっているのは浅い泥水ですが、湧き水のようで、辺りはちょっとした湿地帯になっています。 

水場にコウモリが夜な夜な飛来する様子をまとめてみました。 


シーン1:5/26・午後19:59(@0:04〜) 
風雨の悪天候をついて、コウモリが飛来しました。 
水溜りに着水する寸前で少しホバリング(停空飛翔)したようですが、飛びながら水を飲んだのでしょうか? 


シーン2:5/26・午後20:08(@0:15〜)
少なくとも2匹以上のコウモリが同時に飛び回っています。 
水溜まりの水面を掠めるように低空で飛んでいます。 
夜の湿地帯を飛び回る昆虫を捕食しているのかな? 
獲物となりそうな夜蛾やガガンボなども飛び回っています。 
それともコウモリは、水溜りの泥水を飲みに通っているのかな? 


シーン3:5/27・午後21:10(@1:15〜) 
翌日の晩にもコウモリが水溜りの周囲を低空で飛び回っていました。 
飛びながら一瞬だけ着水して飲水したようにも見えたのですが、水面に波紋が広がったかどうか、画質がイマイチではっきりしません。 


シーン4:5/27・午後19:59(@1:45〜) 
少し時間を遡りますが、フクロウStrix uralensis)が泥水溜りで行水しているときにも、その周囲をコウモリが飛び回ることがありました。 
フクロウに少し遠慮しているのか、コウモリは水溜まりに着水しなくなりました。 
フクロウがコウモリを狩ることもあるらしいのですが、水場周辺を飛び回るコウモリに対してフクロウは無反応・無関心です。 


コウモリの飛翔シーンを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@2:36〜) 

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→