2012/09/29

カザリバ(蛾)が踊る軌跡【5倍速映像】



2012年7月中旬

美しく小さなカザリバCosmopterix fulminella、またはそ
の近縁種)が単独で、葉っぱの上でくるくると踊っています。
動画で長撮りし、5倍速の早回し映像にしてみました。

カザリバはふしぎなおどりをおどった!

頭部を中心に右回り、左回りで旋回したり、千鳥足で葉の縁を歩き回ったり、思わせぶりな動きだと思いませんか?
幼虫の食草はイネ科の笹類らしいので、踊る舞台は明らかに♀の産卵場所とは無関係です。
(イネ科の草は近くに幾らでも生えていますけど。)
たまたま止まった葉なら何でもOKなのかな?
葉裏に隠れたりせず、必ず目立つ表側で踊ります。

異性を誘引するために、視覚的なディスプレーと同時に性フェロモンを放出したりしているのだろうか?
しかし、結構長時間眺めていても、同種の蛾が引き寄せられて飛来することはありませんでした。

カザリバの踊りにどんな目的や意図、規則性が隠されているのか不思議でなりません。
ランダムウォーク(酔歩、乱歩)にしては葉の縁に執着していると思うのですが、どうでしょう?
とりあえず、蛾の動いた軌跡を描いてみたくなりました。

パソコン画面にトレーシングペーパーを被せてなぞる、という原始的な方法しかないのかな?
監視カメラ用の動体検知ソフトウェアがあるくらいですから、動画から対象物の動きを自動的に検出して軌跡を描くことは可能な気がします。
しかし、具体的に何を使ってどうしたらよいのか分かりません。
どなたかご存じの方は教えて下さい。

【メモ】検索キーワードのヒント:object tracking motion-tracking movie ubuntu OpenTLD


【追記】
『動物行動の映像データベース』に「カザリバ のデイスプレー」と題する動画が登録されていました。
投稿者によるコメントです。
カザリバのダンスを野外で見る機会があった。通常このようなデスプレーダンスは交尾行動に関係するものと思われるが、この小蛾の行動はそのようなものには思われない。明るい葉の上で動くことはムシヒキアブなどの絶好の目標になる。このような危険を冒してまでするダンスにはどんな意味があるのだろうか

英語版wikipediaで蛾のCosmopterix属を検索すると、以下のように驚愕の解説がありました。
あの踊りが成虫の探餌行動に関係する可能性なんて、想像すらしませんでした!
翅の模様も派手で目立つので、てっきり求愛の誇示行動(ディスプレー)だとばかり思い込んでいました。

For Cosmopterix gomezpompai a twirling behaviour has been observed by the adult. In this case the moth runs on the upper side of a leaf and simultaneously makes very fast circling movements. As soon as it comes across something unusual on the surface, like a spot, the circling slows down and is concentrated on that spot. It appears that it is feeding mostly on the dark brown spots (most likely a part of a bird dropping) on the leaf. Probably the moth is looking for nutrition. The twirling behaviour, without the possible feeding, has also been observed with Cosmopterix pulchrimella in Greece. This behaviour is described for Cosmopterix victor and also for a species of the family Gelechiidae. 

【和訳】Cosmopterix gomezpompaiの成虫は旋回行動することが知られている。葉の表側を走り回りながら非常に素早い回転運動を行う。葉の表面に斑点など何か異常を認めるとすぐに蛾の回転は遅くなり、その斑点に集中する。葉の上の焦げ茶色の斑点(おそらくは鳥糞の一部)を主に摂食しているようだ。蛾は栄養分を求めているのだろう。摂食を伴わない旋回行動はギリシアのCosmopterix pulchrimellaでも観察されている。この行動はウスイロカザリバCosmopterix victor)およびキバガ科でも報告がある。

葉っぱの表面を効率的にスキャンして探餌するための動きかもしれない、という話でした。
ただし今回のカザリバが静止中に何か摂食していたのかどうか、全く気づきませんでした。
葉に鳥糞が付いていなかったことは確かです。





踊り疲れたカザリバはときどき動かなくなります。
休憩中も葉裏に隠れたりしません。
アリが葉上を徘徊して休憩中の蛾に触れ、驚いた蛾が近くの葉に飛んで逃げました。
ザトウムシに狩られそうになり、慌てて飛び去る姿も目撃しています(映像なし)。
食事も取らず、踊るか休むかの二択というシンプル・ライフ

休んでいる蛾を接写すると、触角をぐるぐる回していました。





行水後に羽繕いするクロツグミ♀幼鳥? 【野鳥】



2012年7月中旬

山中の池で水浴びする野鳥を観察するため、この日も朝から張り込みました。
梅雨なのに水量が減ってきているのが心配です。
お世辞にもきれいな水とは言えず、私の目には泥水に見えます。
それでも野鳥にとっては貴重な水場なのでしょう。


一羽の鳥が岸の茂みの下にこっそり隠れて羽繕いしています。
残念ながら行水シーンは撮り損ねました。
嘴が黄色っぽい他は全体が地味な色の鳥です。
何という鳥か全く分かりませんが、何かの幼鳥でしょうか?
最後は飛び立つ訳でもなく、跳んで茂みの奥に姿を消しました。


いつもお世話になっている「日本野鳥の会 宮城県支部・やまがた画像掲示板」にて質問したところ、httさんより「クロツグミ♀の幼鳥ではないか」とご教示頂きました。
クロツグミTurdus cardis)は初めて撮れたことになります。








歩道の縁石からスズバチの泥巣を発掘

2012年9月上旬

農村部の歩道縁石の側面に大きな膨らみがありました(標高300m地点)。
独特の形状からスズバチ♀(Oreumenes decoratus)の作った泥巣のようです。
車道の左右は水田、砂利の駐車場、原っぱ、家庭菜園、墓地といった環境です。

農薬散布の影響を懸念してしまいますが、立派に営巣したようです。
営巣基の縁石側面は北西を向いていて、午後になると西日を直接浴びるようになっていました。



右側面

上から見下ろす

左側面
採寸してから発掘開始。
七つ道具のマイナスドライバーで泥巣の縁から少しずつ削り取ります。
大量の泥で全体が覆われた巣はカチカチに乾いており、堅牢な要塞と化しています。

多少雨が降っても泥が溶けたりしないようです(防水加工?)。
雪国で蜂の子が厳しい冬を越すための断熱材なのか、あるいは厳重な寄生虫対策かもしれません。

(長い産卵管を有する寄生蜂と激烈な軍拡競争を繰り広げた結果かもしれません。)
関連記事→「キアシオナガトガリヒメバチ♀羽化直後の蛹便排泄
外皮は薄皮を何重にも塗り重ねたような感じで、土がポロポロと剥がれてきます。





かなり苦労しましたが、最後に深く差し込んだドライバーをこじって泥巣全体を剥がす際は、メリメリっと繊維を剥がすような触感がありました。
各育房が繭の絹糸で裏打ちされているためでしょうか。
育房7〜8室は横向き(水平)に配置され、縦に並んでいます。
昨年11月に発掘したスズバチ泥巣とは異なり、中に寄生バエ(ドロバチヤドリニクバエ)の囲蛹は見られず、丸々と太った黄色い蜂の子の姿が見えます。
貯食物(イモムシ)を食べ尽くした後で前蛹になっていました。

泥巣を発掘した跡



泥巣全体の重量は、90g(採集2日後に計量)。

一匹のスズバチ♀が単独で作ったと思うと、恐るべき重量の建造物です。
上記の数値は乾燥重量です。
蜂が巣材として集めてくる泥玉は水で湿っていますから、実際に運搬した総重量(巣材+獲物・貯食物)は90gよりも多いはずです。

丸ごとの泥巣を干からびないよう容器に密閉して飼育してみます。
年内にスズバチの成虫が羽化するかと期待したものの、どうやらこのまま前蛹の状態で越冬するようです。
雪国の当地でスズバチの発生は年1化ではないかという気がしてるんですけど(個人的な印象)、未だしっかりと調べた訳ではありません。(年2化かな?)

つづく→「スズバチ蛹が泥巣の育房内で蠕動




【追記】
新開孝『虫のしわざ探偵団』という本を読んでいたら、スズバチの泥巣を採集する際の独創的なノウハウが書いてありました。
泥団子全体は固いけれど、表面はポロポロはがれる。泥団子を壊さないように工夫してはがす。水で薄めた木工用ボンドを泥に吸わせるように塗り、一晩置く。(水1:ボンド1)ボンドが乾いて固まったら、下に網を添え、コテを使い、泥団子をはがす。 (p42より引用)
次に泥巣を採集する機会があれば試してみようと思います。
泥巣の表面を固めてしまったのでは成虫が泥巣を破って羽脱できないのではないかと一瞬心配になりました。
しかし、泥巣を剥がした断面から成虫が羽化してくるでしょうから、問題ないのでしょう。






2012/09/28

脱皮直後のクロアゲハ5齢幼虫が抜け殻を食べる



クロアゲハの飼育記録:その4

2012年7月中旬・室温26℃

4齢幼虫は食欲が落ちて眠の状態に入りました。

『カラー自然シリーズ28アゲハチョウ』p12によると

幼虫の成長は、気温に左右されますが、ふつう4齢になって5~6日たつと、幼虫が動かなくなります。餌も食べず、前足(胸脚)を浮かせてうずくまります。脱皮前の休眠です。休眠は、半日から1日続きます。頭の付け根や白い帯の部分が、緑色に見えてきたら脱皮は間近です。




ところが油断していたら脱皮の瞬間を見逃してしまいました。

それまで若齢幼虫は鳥の糞に擬態していましたが、一皮剥けると緑色の保護色に変身しました。
これで4齢から5齢に脱皮したと分かりました。
また、採集して以来ずっとナミアゲハの幼虫かと予想していたのですが、5齢になって初めてクロアゲハの幼虫と判明しました。

『イモムシ ハンドブック』p18によると、
クロアゲハ終齢幼虫の斜帯は茶褐色で淡色の網目模様があり、背面で切れない。




脱皮の過程を微速度撮影する計画だったので残念無念…。
本で調べるとクロアゲハの幼虫は終齢が5齢らしいので、これが最終脱皮となります。

仕方がないので悔し紛れに、脱皮直後の幼虫の様子を微速度撮影してみました(10倍速の早回し映像)。
新しい体が固まるまで、山椒の枝に掴まって休んでいるようです。
脱皮直後の5齢幼虫は緑色が未だ薄いです。
しばらくすると5齢幼虫はいつの間にか体の向きを変え、萎れかけたサンショウの葉裏に残った脱皮殻を食べていました。
これは本で予習していた通りの行動です。

カラー自然シリーズ28『アゲハチョウ』p15には脱皮殻を食べるアゲハ終齢幼虫の写真が掲載されています。
頭楯の脱皮殻は下に落ちてしまっています。
葉ごと食べるのではなく、抜け殻だけを刮げるように食しています。
たった数分で脱皮殻はきれいさっぱり無くなりました。

わずかに滓が残っている程度です。
食べ終わった幼虫はUターンして茎を登り始めました。
食草を食べる食欲は未だありません。

もし脱皮殻を取り上げて食べさせないようにすると、その後の発育にどう影響するのでしょう?

機会があれば調べてみたいものです。

  • 複数個体で対照実験が必要。
  • 抜け殻を取り上げて別個体の幼虫に与えたらどうなるか?

栄養を無駄にしないという目的の他に、天敵に存在を悟られないよう脱皮の痕跡を残さないようにしているのかもしれません。



【追記】
藤丸篤夫『アゲハチョウ観察事典』によれば、少なくともナミアゲハの場合は
ぬいだ皮は、脱皮するたびにたべてしまいますが、卵の殻のときとおなじように、たべさせないでそだててみてもちゃんと成長します。(p12より引用)





つづく→「クロアゲハ♀5齢幼虫の排便


2012/09/27

エントツドロバチ♀の集団採土場(蜂を個体標識してみる)



2012年7月中旬・気温25℃

神社の境内で赤土が露出した地面にエントツドロバチ(別名オオカバフスジドロバチ;Orancistrocerus drewseniが何匹も巣材集めに通って来ています。
軒下に固く締まった地面を大顎で削り取りながら、吐き戻した水とこねて泥玉を作り、泥巣を作る材料とするのです。
果たして何匹のエントツドロバチ♀が採土に通っているのか個体識別してみることにしました。
蜂をいちいち捕獲・麻酔・標識するのは面倒ですし、蜂にも負担(ストレス)がかかります。
地面で夢中になって泥玉を作っている蜂を狙って、腹背に素早く油性ペンでちょんと印を付けてみました。

大型の蜂だからこそできる芸当です。
体に触れられた蜂は驚いて飛び去りますが、この程度で反撃したり刺したりすることはありません。



水色と桃色の2色で一匹ずつマーキングに成功しました。
三脚に固定したカメラで動画撮影したのですが、標識作業はうまく撮れませんでした。(カメラのアングルを考える余裕がなく、肝心の手元が腕で死角になってしまった。)

マーキングされた蜂はしばらく姿を見せなくなり、心配になりました。
しばらく待つと採土を再開してくれたので一安心。
♀水色を個体標識する際に手元が狂ってインクがドバっと出てしまいました。
右翅も汚してしまったのですが、幸い飛翔には支障ないようです。

入れ替わり立ち替わり採土場に飛来し、泥玉を作って帰巣するエントツドロバチ達の様子をご覧下さい。

(無駄に長い動画なので、適当に飛ばしながらご覧下さい。)

観察で気づいた点を箇条書きに。

  • 少し離れた位置に着陸しても、結局お気に入りの採土場に歩いて到着。
  • 泥玉が完成すると、地上で羽ばたいたり身繕いしてから飛び立つ。
  • もう採土場に通い慣れて完全に記憶しているためか、泥玉を抱えて飛び去る際に定位飛行を披露する蜂はいない。
  • 採土場で♀同士が出会っても激しい干渉や喧嘩にはならない。一方、例えば採土しているスズバチ同士は出会い頭に激しく喧嘩します
  • 写っている採土場の中でも更に土質の優れた一等地があるような印象。順番待ちしてでもなるべくお気に入りの一等地から採土する傾向?
  • いかにも獲物となりそうな尺取虫が近くの地面を徘徊したときも、採土モードで頭がいっぱいのエントツドロバチは見向きもせず、狩りを行わず。


後半は採寸のため、採土場に一円玉を置いて動画に写し込みました。
映像を見る限り、蜂の体長は♀水色>♀桃色、♀無印とまちまちでした。
幼虫時代の栄養状態(育房内の貯食物の量)で成虫の体格が決まってしまうのでしょう。

♀水色が最も頻繁に採土に訪れています。
各泥巣の営巣段階に応じて巣材の需要が違うのかもしれません。

残念ながら、蜂がどこで営巣しているのか突き止められませんでした。

採土前に蜂がどこで水を飲んで来るのかも不明です。
♀桃色および♀水色の帰巣方向は二匹ともほぼ同じ北北東。

他の方角へ飛んで帰る蜂もいます。
ドロバチは原則として、単独で独立の場所に巣作りしているはずです。
しかしエントツドロバチの場合はそうとも言い切れません。
本種の営巣習性はドロバチにしてはきわめて特殊かつミステリアスです。
亜社会性を示し、羽化した娘バチは母巣にとどまって繁殖する傾向があるらしい。
エントツドロバチは一番身近に多いドロバチですが、個人的に営巣の全貌を観察するのが一番難しい蜂だという気がしています。図鑑に記述された習性を自分の目で一つ一つ実際に確認するだけでも強烈に難しいです。随時給餌を行うため営巣のペースがのんびりしていることも難しさの理由です。

残念ながら飛来する全個体をマーキングする前に夕刻となり時間切れ。
薄暗くなると蜂がぴたっと来なくなりました。
それでも、この日は少なくとも3匹のエントツドロバチ♀が同じ採土場に通っていたことが分かりました。

ただし、全てのエントツドロバチ♀が必ずしも同じ場所に通っている訳ではなく、4mほど離れた地面から採土する個体もいました。(一匹を白色で標識。映像なし)
2箇所の採土場を同時に監視することはできませんが、♀白が監視カメラに映ることはありませんでした。

実は去年も全く同じ場所でエントツドロバチの集団採土を目撃してます。(映像なし)
毎年繰り返されるのは不思議というか不気味ですらあります。
まさか前世の記憶?などと言い出すとオカルトになってしまうので、自分なりに考察してみました。
辺りには幾らでも土が露出しているのに、ここがよほど巣材に好適な土質なのだろうか?
あるいは同じ泥巣から羽化した姉妹の♀が行動圏で飛び回っている間に互いを意識して(真似して)自然と同じ採土場に集まってくるのだろうか?

エントツドロバチの乾燥標本を囮(デコイ)として何匹か適当な地面に置いておけば、仲間が採土に飛来するだろうか?
(蟻に見つかったらデコイの蜂はあっと言う間に持ち去られそうな気がします。)
母蜂がこしらえた独房で育った娘蜂は馴染みのある巣材を近所から匂いなどで探し当てる能力があるのかもしれません。

採土場に集まってくる♀がもし血縁関係にあるのなら、集合フェロモンを放出している可能性もあるかも?






【追記】
後日、何度か定点観察で通ってみたのですが、採土に来ているのは無印のエントツドロバチばかりでした。
5日後に一度だけ♀水色と再会しました。

インクに急性毒性が無いことも分かりました。





2012/09/26

走り去るホンドギツネ



2012年7月中旬

山際の集落で出会ったホンドギツネVulpes vulpes japonica)。
民家の裏をぐるっと回って逃げて行きました。
撮れたのはほんの一瞬の邂逅なので、1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみます。


るーるるるる♪とか声を掛ける暇もありませんでした。

↓手ブレ補正版(リプレイ無し)






2012/09/25

山椒の葉を貪り食うクロアゲハ♀4齢幼虫のマクロ動画



クロアゲハの飼育記録:その3

2012年7月中旬・室温28℃

幼虫は食欲旺盛で、サンショウの葉はみるみる丸坊主になってしまいます。
あちこちで食べ散らかしたりせずに、きわめてシステマチックに無駄無くもりもりと食べ尽くすので、見ていて惚れ惚れします。
食事の際は必ず枝の外向きに顔を向けて陣取り、退路を確保しながら蚕食します。
つまり、自分の乗っている小枝を齧ったせいで落下するようなヘマはしません。
新鮮な食草をせっせと採集してきては与え、ときどき葉に霧吹きしてやります。

幼虫が自分で新しい枝に移ったのを確認してから古い枝を取り除きます。

つづく→「脱皮直後のクロアゲハ5齢幼虫が抜け殻を食べる






2012/09/24

クロギンスジトガリホソガ:回転舞踊する蛾の謎



2012年7月中旬

雑木林の下草として生えていたヒヨドリバナ?の群落で一頭のミクロ蛾が萎れかけた葉の上でなぜかクルクル踊り続けていました。
いつもお世話になっている虫我像掲示板にて写真鑑定してもらったところ、蛾LOVEさんよりクロギンスジトガリホソガRessia quercidentella)と教えてもらいました。

私はフサヒゲトガリホソガと迷ったのですが、「フサヒゲとするなら前縁の白い斑紋が一つ多いです。(一番後ろの白い斑紋)」とのこと。
本種の♀はカシワ、コナラなどブナ科コナラ属の葉に産卵するらしく、踊りの舞台は幼虫の食草とは無関係でした。

葉上を歩きながら頭を中心にひたすらぐるぐる回ります。
旋回の向きは右回り、左回りを両方行います
蛾に三半規管はないので、目が回ることはありません。
葉縁から脚を踏み外して滑落したりしません。
尻を左右に振りジグザグに歩くことも(千鳥足)。
翅の銀紋が非常に目立ちます。
配偶者へのアピール(誇示行動)だと思いますが、ミクロ蛾は解剖しないと性別が分からないのでしょう。

似たように回ったり踊ったりする小蛾が何種類か知られています。
(私がこれまで観察した例:カザリバヒメハマキ
既知の全種類をリストアップしたいのですけど、調べた文献はないのかな?

蛾の踊り方は種類によってバリエーションがあるのだろうか?
原始的な系統の蛾は原始的なダンスを踊るのかな?
つまり、系統進化と共に次第に複雑な振り付けのダンスを踊るようになったのだろうか?
とりあえず私に出来ることは、蛾の踊りを一つずつ記録することだけです。




「蛾のダンスの進化」とかいう大風呂敷はともかく、素人ができる実験として幾つかアイデアを思いつきました。
  • この行動は飼育下で再現できるのだろうか?
  • 踊る様子の軌跡を描いたら一筆書きで何か暗号が浮かび上がったりして…。
  • 死んだ蛾の標本をクルクル回す装置を工作し、野外の葉上で動かすと同種の蛾が誘引されるだろうか? 
  • 蛾Xの標本で蛾Yの踊りをやらせたら、誘引されるのはどちらの蛾だろうか?
  • 野外にiPadなどを持参し、踊りの動画を再生すると異性が誘引されるだろうか? (もし可視光以外に紫外線の情報が重要ならば、標本を使う方が有利な気がします。)
  • 踊っている個体に鏡を見せるとどのような反応を示すのか?(鏡像反応) 鏡張りの部屋に閉じ込めて踊らせれば、万華鏡のような映像が撮れそうです。



カザリバガ科の複眼は赤い。

動画撮影後に採集した標本。死後は複眼の赤い色が褪せてしまう。




2012/09/23

桑の実を食すハイイロハネカクシ



おかげさまで、このブログで記念すべき2000本目の記事になります。

2012年7月中旬

林道横に生えたヤマグワの木に謎の甲虫が飛来しました。
桑の枝の手前でしばらくホバリングしてから着陸。

ハネカクシの一種でした。
(映像はここから。)


黒く熟した実を採食し始めたものの、風で揺れるし木陰で薄暗いし非常に撮りにくいです。
ハネカクシは熟した桑の実を口にすると、葉柄を少し登って枝上で身繕い。
桑の実をガードしているかのように、その場から離れようとしません。
(ガードするシーンは退屈なので大幅にカット。)
興味深いことに、すぐ隣にある白カビ病変?の実には興味を示しません。

別の新鮮な黒い実をもぎ取り、試しにハネカクシの目の前に差し出してやると喜んで乗り移ってきました。
そっと地面に置いて、ようやく落ち着いて接写できました。
噛む口器であることがよく分かります。
触角を舐めてお手入れ。

ところが地面を徘徊中の小さなクロアリ(種名不詳)が甘い桑の実を発見し、ハネカクシと争いになりました。
蟻に噛まれて逃げたハネカクシはうろうろするも、逆側から摂食再開。
しかしアリにまた襲われて退散。

ハネカクシ科のことは全然知りません。
ネット検索で少し調べた限りでは、ハイイロハネカクシ(Eucibdelus japonicus
)と似ている気がします。
(参考リンクはこれとかこれ。)

虫我像掲示板にて蛾LOVEさんに確認してもらいました。

余談ですが、最近は田舎の子供でも桑の実やキイチゴの味を知らないのか、通学路の横でも実がそのままに残っていて寂しく思います。
少子化のせいかもしれません。









ヤガタハエトリ♂(蜘蛛)の跳躍ハイスピード動画



2012年7月上旬

山中でスギの幹を徘徊する小さなハエトリグモを発見。
大きさの異なる二匹が少なくとも2匹以上います。
ヤガタハエトリPseudeuophrys erratica)またはイワテハエトリPseudeuophrys iwatensis)と思われます。
これまで私は人家の周囲でしか見つけたことがなく、山中で遭遇したのは初めて。※
触肢の状態から♂のようです。
ヤガタハエトリ♂同士の闘争誇示(喧嘩)を観察できるかと期待したものの、互いに出会うことはありませんでした。

杉の幹で跳躍するシーンをハイスピード動画(220 fps)に撮ってみました。
スローモーションでも速いジャンプですね。
必ず左右両方の第1歩脚を上げて(着地の準備?)から跳躍しています。
しおり糸(命綱)は残念ながら写っていません。



同一個体を撮ったHD動画はこちら




杉の樹液に興味を示す。


【追記】
※ YouTubeで欧州人のクモ屋さんから以前コメントを頂きまして、Pseudeuophrys属は生息環境を住み分けているかもしれないそうです。(wikipedia参照)


【原文】
Pseudeuophrys erratica is a species of jumping spider that is distributed throughout Europe, although it is not common. P. erratica is normally found under the bark of trees or under rocks on forest fringes. The very similar looking P. lanigera is much more abundant, and is almost only found in or near buildings.[1]

【超訳】
Pseudeuophrys erraticaはヨーロッパ全土に分布するハエトリグモの一種で珍品である。P. erraticaは通常、林縁で樹皮の下や石の下で見つかる。外見のよく似たP. lanigeraP. erraticaよりも個体数が多いが、ほとんど建物の内部またはその近くでしか見つからない。

日本産のPseudeuophrys spp.についてはまた事情が違うかもしれませんが、個人的にちょっと思い当たる節があって面白い(なるほど!)と思いました。
私が主に見つけるのは人家の周りがほとんどです。(ということはイワテ?)
ただ一度だけ、里山の杉の幹で見つけたことがあります。(こちらがヤガタ?)
採集して専門家に標本を鑑定してもらえば謎が解けることでしょう。

これに対して、いつもお世話になっている「クモ蟲画像掲示板」のきどばんさんから次のコメントを頂きました。
サイズが同等の近縁種はこうした棲み分けをすることが多いようですね。
私は埼玉の里山林縁のヒノキ樹皮下でイワテを見つけたことがあります。



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