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2025/09/15

池で単独連続打水産卵するオオシオカラトンボ♀と警護飛翔する♂【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年7月上旬・午前11:40頃・晴れ 

里山にあるモリアオガエルに繁殖池に来てみると、最近雨が降ってくれたおかげで池の水量が増していました。 
対岸付近の水面で打水産卵するトンボ♀を見つけました。 
体色が性的二型のトンボで、黄色の♀が単独で打水産卵する間に、水色の♂が近くをホバリング(停空飛翔)しながら♀を警護していました。 

同定用の写真を撮るよりも産卵行動を記録する動画を優先したのですが、動きが速くてしっかり合焦できませんでした。 
シオカラトンボ、シオヤトンボなどと迷ったのですが、打水産卵する♀の透明な翅の根元が黒かったので、オオシオカラトンボOrthetrum triangulare melania)の♀♂ペアと確定しました。 警護する♂は撮影アングルの問題で翅の根元が見えませんでした。
(シオヤトンボは成虫の出現時期と、腹部の色の違いから却下。) 

(オオシオカラトンボの)♀は単独で浅い水面を打水し、腹端ですくい上げた水と卵とを前方に飛ばす。♂は付近を飛んで警護することが多い。(ネイチャーガイド『日本のトンボ』p483より引用) 

関連記事(12年前の撮影)▶ オオシオカラトンボ♀ 


生物関連の本の中でも、たとえありふれた普通種でも一種類の生き物に絞って生活史や行動生態を徹底的に調べて渾身の一冊にまとめた本を私は好みます。 
そんな本の一つ『シオカラトンボ (カラーサイエンス 12)』によると、
・交尾のあとすぐに、めすは、水のなかに産卵します。このとき、おすはめすのまわりととんで見はります。 
・水草のはえた池や沼では、めすが卵を水てきといっしょに水草にむかって、腹のさきでとばして、産卵します。 (p30〜31より引用)
1985年に発行された40年前の古本ですが、交尾の連続写真(当時は高速連写できないので苦労して撮り貯めたカラー写真を再構成した組写真)なども掲載されていて、充実した内容です。 
最近はこうしたじっくり腰を据えた本を作る余裕がなくなっているのが残念です。 


動画の冒頭では、池の水面の上を水色のトンボと黄色のトンボが高速で飛び回っています。 
異種間の縄張り争いかと思って慌てて撮り始めたので、ズームインし過ぎてしまい、すぐに見失ってしまいました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイすると、産卵地点を探して飛び回るオオシオカラトンボ♀の後を同種の♂が追尾していました。 

黄色いトンボ♀が水面の上でホバリングしながら腹端を水面に叩きつける度に、水滴が斜め前方に飛んでいきます。 
単独で打水産卵に励む♀の近くを水色のトンボ♂が単独でホバリングしながら警護しています。 
オオシオカラトンボは、連結状態(尾繋がり)では産卵しないのです。

オオシオカラトンボ♀の連続打水産卵を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:58〜) 
♂の警護飛翔は写っていません。 

※ 晴れていてもスギ林に囲まれた池で遠くからズームインして撮影するとかなり暗い映像になったので、動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→産卵中のオオシオカラトンボ♀が捕食者に襲われると♂は守ってくれるのか? 


【考察】 
いつものようにPerplexity AIと問答を繰り返して、産卵行動についてブレインストーミングしました。 
トンボの種類をオオシオカラトンボと絞り込む手助けもしてくれました。 

オオシオカラトンボ♀の卵は、打水の度に前方に飛んでいく水滴の中に含まれているのか、それとも打水した瞬間に水中に沈むのか、どちらなのでしょうか?

打水産卵時の卵の挙動
オオシオカラトンボの打水産卵(飛水産卵)では、腹端を水面に打ち付けると同時に卵と水滴を一緒に前方へ飛ばす行動がみられます。

このとき腹端で水面をすくい上げた小さな水滴の中に卵が含まれていて、その水滴ごと水面の前方(浅瀬や水草の周辺)に飛ばされる、というのが標準的な解釈です。

連続して打水するので、水面には多数の小さな水滴が弧を描きながら飛び、卵もこれに含まれて飛ばされます。

詳細と補足
水滴は水面に再び落ちる際、その中に入った卵も一緒に着水し、そのまま水中に沈みます。

写真や動画の高精度な観察でも、「水滴の中に卵が混じって飛んでいる」様子が確認されており、水滴の色が微妙に濁る・色づく場合は卵塊が含まれているためとされています。

水滴の一部が透明、他がうっすら褐色の場合、褐色の水滴の方に卵や卵塊が多く含まれる状況が観察されています。

まとめ
オオシオカラトンボ♀の打水産卵では、卵は打水によってできた小さな水滴に包まれて飛び、水滴ごと前方へ飛ばされた後、水面に落ちてそのまま水中に沈みます。打水と同時に水中に直接沈むのではなく、「水滴の中に入って飛ぶ→水面に再落下して水中へ沈む」が基本の流れです。

この産卵様式は、卵をなるべく広範囲にばらまき、外敵からの(食卵)リスクを減らすためのものと考えられています。

今回私が観察した事例では、オオシオカラトンボ♀は池の浅いところから岸に向かって水滴を繰り返し飛ばしていました。
この時期は雨量が少なく池は干上がりつつあったので、卵の生存率を上げるには岸(陸上)ではなく池の中央に向かって水中に産むべきではないでしょうか?

オオシオカラトンボ♀が池の浅瀬から岸に向かって水滴を飛ばす産卵行動は、たしかにご指摘のように「池の干上がりが進む時期、水面から離れた場所では卵が孵化や発生に適さなくなる恐れ」があります。実際、トンボの打水産卵は卵を水滴と一緒に前方へ飛ばし、より広範囲かつ適した場所に分散する意味があると考えられていますが、どの程度「着水するか」は水位や池の地形、個体の打水角度など自然条件によって変動します。

トンボの産卵行動の研究では、

普段は卵を確実に水面に落下させることが繁殖戦略ですが、池が干上がりつつあるなどの極端な状況では、必ずしも全ての卵が生き残るわけではなく、生存率の低下は避けられません。

メスは本能的には「水面やその近く」で産卵しますが、水位が低くなっている場合、結果的に一部の卵が水際から外れるリスクも発生します(環境把握能力には限界があります)。

しかし、トンボは基本的に当日の池の状態(少なくとも「目で見て水がある範囲」)を選ぶ能力が備わっていると考えられており、一定の確率で着水しない場所にも卵が飛ぶことも想定内です。干上がりの進行など短期間の変動には柔軟に対応しきれないため、「池の縁」に産み落とされた卵は水位低下で生存率が下がる可能性が高いですが、これは自然環境下でトンボが常に抱えるリスクでもあります。

まとめると、「池の水位が極端に下がると卵の生存率が低下しうる」ことはその通りですが、オオシオカラトンボの産卵行動はあくまで通常状態の水辺環境を前提に進化しており、池が干上がる非常時に完全対応するものではありません。生存率の確保には、産卵タイミング・場所選択・環境変動すべてが影響します。

産卵時の水位が高ければほとんどが水面に着地し高い生存率となりますが、干上がりが進めば一部は陸地に落下し孵化できず死亡します。

トンボは水面に産みつけようとしますが、環境条件が変動する以上「最大多数を水辺に着地させる」戦略しかとれません。

したがって、今回ご覧になったような状況は、生態的にはごく普通に見られる現象であり、トンボの本能的な産卵行動が必ずしもその年の最適条件に対応できないという自然界の一断面ともいえます。

それなら、オオシオカラトンボの卵や幼虫(ヤゴ)は乾燥に対して強い(耐性がある)のでしょうか?
卵の乾燥耐性
トンボ類の卵は一般に産卵直後は乾燥に弱いですが、発生が進み眼点(発生初期の目のような構造)が現れるまではやや耐乾性が低い一方、発生が進むと乾燥耐性がかなり強くなります。

水田や池が一時的に干上がっても、多くの種で卵は土や泥の中でかなりの乾燥や低温に耐えて春になり、水が張られると孵化することが可能です。

オオシオカラトンボの卵もこの耐乾性を持ち、通常の内陸のため池などで冬期に水が抜かれて乾燥状態が続いても、生き残れるケースがあり、これは稲作地帯のシオカラトンボなどとほぼ同等の能力とみなされます。

ヤゴ(幼虫)の乾燥耐性
幼虫(ヤゴ)は卵ほどの乾燥耐性はありませんが、冬季の低温下では、ある程度の乾燥や池干しにも耐えられることが知られています。

泥の中に深く潜ったり、落ち葉の下に隠れるなどして、一時的な湿泥状態なら生存できる場合もあります。

ただし高温期(春~夏~初秋)に完全な乾燥に晒されると生き残れないことがほとんどで、特に羽化直前の終齢幼虫などは乾燥に極めて弱いです。冬季など休眠に近い低代謝の状態だとやや耐えやすいですが、卵期ほどの耐性はありません。

まとめ
卵期の乾燥耐性は高く、池や水田の“冬期干上げ”程度には十分に耐える能力がある。

ヤゴは卵ほど乾燥に強くないが、泥の中など湿り気がごくわずかに残る状況では冬季~早春に一時的な乾燥に耐えられる場合もある。

一方、完全な乾燥(土がカチカチに乾く状態)が長期間続くと、幼虫はほとんど死滅してしまう。

多くの日本のトンボ同様、オオシオカラトンボも水辺の環境変動にある程度耐える進化をしていますが、耐性の「強さ」は卵>幼虫の順です。

トンボの♂が産卵しているパートナー♀をライバル♂から守るためには、交尾後も尾繋がりの状態を保ってペアで産卵するのが最善であるはずです。
なぜオオシオカラトンボ♂は連結を解除した状態で♀の警護飛翔をするのでしょうか?
「尾繋がりの状態で連結打水産卵するのでは産卵しにくくて仕方がない」とオオシオカラトンボ♀がたとえ感じたとしても、首根っこを掴まれた♀は自分の意志では連結を解除することが出来ません。
つまり産卵中に連結するかしないかは、♂が選択した結果なのです。
むしろ、オオシオカラトンボ♂が連結しないのは♂が浮気性だからと考えられます。
たとえ警護飛翔中でも、産卵池に別個体の同種♀が飛来したら、♂はただちに新しい♀を捕獲して交尾を試みることが(私は未見ですが)報告されているそうです。
以下はPerplexityによる回答です。
オオシオカラトンボの単独産卵と♂の警護飛翔の進化・行動の実態については、実際の現場行動と繁殖戦略の両面からもっと複雑な説明が必要です。

連結解除の主導は♂
トンボ類の多くでは交尾後、♂が自発的に連結を解除して♀を離す行動が観察されています。

これは交尾後に♀が産卵に移る時点で、連結保持による直接監督より、効率的な交尾回数増加や他の♀探索への戦略を取るためです。

つまり、単独打水産卵への切り替えは、進化的には♂側の交尾戦略(浮気的=複数の♀との交尾へ)や他の♀に対する即応性の高さの副産物です。

警護飛翔中の♂の行動
産卵警護中でも、池に新たな♀が現れると、警護していた♂は即座に警護中の♀を見捨て、新到着♀にアタックし連結しようとする行動が頻繁に報告されています。

トンボ♂は「警護」と「新たな交尾相手獲得」を状況ごとにスイッチしやすく、どちらかといえば「新たな♀優先」になる傾向が強いです。

進化的意義
単独産卵を可能にしたのは**♀の進化的自由ではなく、♂の浮気行動(頻繁な交尾機会探索)や多数交尾戦略に由来**します。

産卵警護は「自分の精子で産ませたい」気持ちの表れですが、より生殖成功率を高めるためには、他の♀の出現時に即座に乗り換える「浮気性」が同じくらい重要です。

観察・実験例
産卵池では、同時に複数ペアが産卵行動をとり、♂が急に警護♀から新たな♀に乗り換える現象が容易に再現・観察できます。

男女双方の利害一致ではなく、主に♂の多回交尾・浮気性・交尾機会争取戦略によって形づくられていると考えられます。

要するに、オオシオカラトンボの警護産卵と連結解除の主因は「♂の浮気性や交尾回数の最大化欲求」と見る方が、生態的現象の実態により近いです。ご指摘の通り、産卵警護中でも♂は新規到着の♀に即反応して乗り換えるため、「本当に守っている」のは縄張りと交尾機会だけであり、♀自身や受精卵に対する献身的防衛ではありません。

トンボは種類によって産卵行動が多様です(打空産卵、打水産卵、連結産卵、単独産卵など)。 
比較行動学と分子系統分類学を組み合わせると、トンボの産卵行動がどのような順序で進化してきたか推測できるだろうか?  
それとも、産卵行動はトンボの系統とはあまり関係なくて、収斂進化の結果だろうか?

比較行動学と分子系統分類学を組み合わせることで、トンボの産卵行動の進化順序を「かなりの程度」推測することは可能ですが、産卵行動の多様性は必ずしも系統樹のパターンにきれいに一致せず、**収斂進化(独立進化)も非常に多い**ことが明らかになっています。[1][2][3]

### 行動形態と系統の対応

- トンボの産卵行動には「静止接触産卵」「静止非接触産卵」「飛翔接触産卵」「飛翔非接触産卵」など複数の基本タイプがあり、各グループごとに特徴的な行動パターンを示します。[1]
- たとえば、イトトンボ科やアオイトトンボ科は連結潜水産卵や組織内産卵が典型で、ヤンマ類やアカトンボ類は空中からの打空産卵・連結打水産卵、トンボ科は♀単独の打水産卵が多いなど、類縁ごとの偏りがあります。[2][3]

### 分子系統分類学との比較

- 最新の分子系統樹による分析では、こうした産卵行動パターンが「一度だけ進化し、系統的に保存されている」場合と、「複数回、異なる系統で独立進化した(収斂進化)」場合の両方が認められています。[1]
- 一部の行動(例:組織内産卵や連結打水産卵)は比較的原始的な形質とされ、複数の系統にわたって保存されている傾向がありますが、**打水産卵や打空産卵など「目立った派生行動」は、異なるグループ間で独立に進化したと推測されるものが多い**です。[3][1]

### 収斂進化の具体例

- たとえば「打空産卵」はアカトンボ類だけでなく他の科にも現れ、「単独打水産卵」も様々な系統で発達しており、同じ行動が系統的に遠いグループでも発現します。[2][1]
- これは生息環境や繁殖戦略、生存率向上など外部要因による適応が大きく関わっているためと考えられています。

### 結論

- 比較行動学と分子系統分類学を合わせれば「祖先形質」「系統保存された行動」「収斂的な適応」の判別が可能ですが、**産卵行動の多くは複数回・多系統で独立進化した例が多く、単純な祖先―派生の直線的な進化とは限りません**。[3][2][1]
- したがって、「産卵行動の進化順序は系統ごとに異なる分岐と収斂の複合」と解釈するのが現在の理解です。

 


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2025/09/09

ハラビロトンボ未成熟♂の飛び立ち【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年7月上旬・午前10:50頃・晴れ 

里山で山道を登っていると、見慣れない黒いトンボを見つけました。 
後でトンボの図鑑を調べてみると、ハラビロトンボLyriothemis pachygastra)の未成熟♂と判明。 

ススキの葉に留まり、翅を深く下げて休んでいます。 
巨大な複眼で覆われた頭部をグリグリ動かして、周囲を油断なく見張っています。 
口器をもぐもぐ動かすこともありました。 

顔面の額上部に青色の金属光沢がありました。 
腹部に副性器が見えたので、♂でした。 

飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。(@0:25〜) 
帽子を投げつけると、真上に飛び立ち、同じ葉には戻って来ませんでした。 

逃げたハラビロトンボ♂は、近くのヨモギの葉に留まり直していました。 
水平の止まり場で翅を深く下げて休んでいます。 
もう一度帽子を振って、飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画で撮りました。(@1:07〜) 
今度は左上へ飛び去りました。 


2025/05/30

止まり木で離着陸を繰り返し獲物を狩って捕食するムカシヤンマ♂【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月中旬・午後14:05頃・晴れ 

里山の入山口から少し登った地点で、林道横の枯木の幹に見慣れないヤンマが止まっていました。 
翅を広げたまま幹にぺたりと止まっています。 
顔の額が白いです。
撮れた写真からGoogleレンズ(画像検索)で調べてみると、ムカシヤンマ♂Tanypteryx pryeri)という珍しいトンボでした。 

ときどき止まり木から飛び立っても、同じ止まり木(または隣接する別の止まり木)にすぐ戻ってきます。 
口元をよく見ると何か獲物を咀嚼していたので、縄張りを張って(※ 追記参照)獲物を捕食しているのだと分かりました。 

関連記事(14年前の撮影)▶ ムカシヤンマ♂の食事 

ムカシヤンマ♂は次々に虫を捕食していたのですが、獲物の全身を私が確認する前にどんどん食べてしまうので、その正体を同定できませんでした。 
もし映像から獲物の種類を大まかにでも見分けられる方がいらっしゃいましたら、教えていただけると助かります。 
根元から食べられている獲物の黒くて細長い脚を見ると、なんとなくトンボのような気がしました。 
獲物の脚の次は、真っ黒で細長い腹部を前方からムシャムシャと食べ進みます。(@0:54〜4:50) 
そこだけ見ると、ツチバチを連想しました。
しかしツチバチなら大抵の種類は腹部に横縞模様があるはずですし、私は5月中旬にツチバチの成虫を見たことがほとんどありません。 

獲物の腹部の内部から白い泡状?の物質が出てきました。 
どうやらその白い泡はムカシヤンマにとって不味いらしく、獲物の腹部をほとんど食べ残して口から捨ててしまいました。
その食べ残しは止まり木の幹に付着したのですが、ムカシヤンマ♂が飛び立つ拍子に落下しました。 

次にムカシヤンマ♂が狩ってきた獲物も有翅の小さな昆虫でした。 
トンボを背側から撮ると、肝心の口元がよく見えません。 
獲物の正体を調べるには、横から狙って撮影する必要があります。 

ムカシヤンマ♂が止まり木から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@5:12〜5:50) 
すぐに舞い戻ってきて同じ止まり木に着陸するシーンも撮れていました。 
このときは狩りに失敗したようで、獲物を脚で抱えてもいなければ口に咥えてもいませんでした。 

最後にムカシヤンマ♂はお気に入りの枯木を離れて、少し離れたスギの幹に止まり直しました。(@5:50〜) 
止まり木で捕食中に左からクロアリ(種名不詳)が近寄ってきたものの、巨大なヤンマを襲って獲物を強奪することはありませんでした。 


※ 状況を分かりやすく伝えるために、動画素材の順番を少し入れ替えて編集しました。 


※【追記】 
トンボが特定の止まり木を中心として飛びながら空中で狩りを行い、元の止まり木に戻ってくる行動を繰り返していたとしても、他の侵入個体を追い払うなどの防衛行動(占有行動)を見ない限り、そのトンボが縄張りを張っていると厳密には言えないのだそうです。 
つまり、どうしても観察時間の長さやトンボの個体密度によって解釈が左右されてしまいます。 
止まり木のトンボ個体に食欲や性欲があるかどうか(未成熟かどうか)でも行動は変わってくるでしょう。


2025/05/26

ハラビロトンボ♀の飛び立ち【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年5月中旬・午後12:50頃・晴れ 

里山で下山していると、寸詰まりで黄色っぽい見慣れないトンボが山道の横のタニウツギ灌木に止まっていました。 
画像検索(Googleレンズ)で調べてみると、ハラビロトンボ♀(Lyriothemis pachygastra)と判明。 

翅を斜めに深く下ろした姿勢で休みながらも、周囲を油断なく見張っています。 
大きな複眼のある頭部がグリグリと動き、獲物が飛来するのを待ち伏せしているようです。 
飛び立っても大体同じ場所に舞い戻ってくるということは、縄張りがあるのでしょうか。 
止まり木に戻ってきた時にハラビロトンボ♀の口元を見ても、獲物を捕食してはいませんでした。 
どうやら狩りは失敗だったようです。 

飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:27、1:48〜) 
最後は物を投げつけて強制的に飛び立たせました。



2025/02/26

繁殖池でショウジョウトンボ♂による縄張り防衛飛翔

 

2023年7月中旬・午前10:55頃・くもり 

山麓で沢の水が溜まった池の上空で2匹の赤トンボが飛び回っていました。 
高速で往復すると、2匹とも山側の方へ飛び去り、見失ってしまいました。 
何が起きたのか分からなかったので、1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみましょう。(@0:16〜) 

新井裕『トンボ入門』によると、
真夏の池を飛び回っている真っ赤なトンボを見たらショウジョウトンボと思ってほぼ間違いない。(p143より引用)
どうやら、この池で縄張りを張って♀を待ち構えているショウジョウトンボ♂(Crocothemis servilia mariannae)が、侵入したライバル♂を追い払おうとしているようです。 
実は翌年の同時期に同じ池の岸辺で休んでいるショウジョウトンボ♂の写真が撮れました。(写真を公開予定) 


井上清、谷幸三『赤トンボのすべて』でショウジョウトンボについて調べると、まさに私が観察した通りの記載でした。
♂は成熟すると全身が真っ赤になり、夏中池の上を忙しく飛び回ったり草の上に止まったりして♀を待ち受けています。(中略)抽水植物と沈水植物が多く水面の開けた平地の池を好み、成熟♂は抽水植物の葉などに止まって♀を待ち受けていますが、他の♂が近づくと執拗に追い回します。(p132より引用)
wikipediaでショウジョウトンボの生態を調べると、なかなか充実した記述がありました。
オスは単独で池の縁に強い縄張りを持ち、縄張りの縁に沿って力強く哨戒飛行をする。他のオスが飛来すると斜め20cm弱の距離に位置関係を保ち、地形に合わせて低空編隊(にらみ合い)飛行を見せる。やや下側を飛ぶのが地主である。時に激しく羽音を立てて格闘するが、メスの飛来にはおおらかである。 雄の飛翔は速くてパワフルであり、風に乗ってゆっくり飛ぶことはなく、哨戒飛行の後はすぐに縄張り内のお気に入りの基点に止まり警戒を続ける。(中略)オスが定着すると一日に数度の格闘を目撃でき、負け去るオスは直線的に稲田上を高速で視界から消える

ショウジョウトンボ♀♂の交尾行動がまた独特で面白いらしいのですが、私はまだ観察できておらず、今後の課題です。
ショウジョウトンボは体色の性的二型が顕著ですから、野外で配偶行動を観察するのに適していそうです。
その前に私はまず、ショウジョウトンボの♀を見つけられるようにしないといけません。

ところで、周囲に聞こえる鳥の鳴き声はホトトギス♂(Cuculus poliocephalus)でしょうか。 
囀りさえずり)の節回しが独特の方言になっています。 


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2025/02/14

網にかかったトンボを捕食中のジョロウグモ♀と交接しようと何度も試みる臆病な♂(蜘蛛)

 

2023年9月下旬・午後12:10頃・晴れ 

里山の急斜面をつづら折れで登る山道の曲がり角(ヘアピンカーブ)で、ジョロウグモ♀♂(Nephila clavata)が同居する馬蹄形円網を見つけました。 
小型の♂は2匹います。 
♀は網に掛かったトンボ(種名不詳)を捕食中でした(獲物を噛んで体外消化)。 

♀の食事中に1匹の♂が網の上から(逆さまにぶら下がった♀の下から)忍び寄って♀の体に触れるものの、交接できずに慌てて逃げてしまいます。 
特に1回目の求愛が最も惜しくて、♂αが膨らんだ触肢を♀の外雌器になかなか挿入できずにもたついている間に、もう1匹の♂βが接近しました。 
♂αはライバル♂βを追い払うのかと思いきや、なぜか諦めて♀の元から立ち去りました。 
♂βに交接権を譲った訳ではなく、♂βも元の位置に戻りました。 
「色気より食い気」の♀は網上でほとんど静止しており、素人目には♀が嫌がって交尾(交接)拒否したようには見えません。 

同一個体の♂αが何度も♀に挑みますが、非常に慎重というか臆病で、なかなか交接してくれません。 
♂は必ず、網で下向きに占座した♀の後方から近づき、♂が逃げるときも必ず上に退散します。 
♂αは♀に共食いされるのをひどく恐れているようです。 
関連記事(15年前の撮影)▶ ジョロウグモの交接と性的共食い 
にもかかわらず、♂が♀に近づく前に網の糸を弾くなど、♀の攻撃性を宥める儀式的な求愛行動は何も見られませんでした。 

クモの種類によっては、♀と交尾(交接)できた♂は自分の触肢を自切して外雌器に残し、♀が次のライバル♂と交接(浮気)できないように物理的にブロックしてしまう者がいます。 
しかし、私が慎重に回り込んでこのジョロウグモ♀の外雌器にズームインしてみても、そのような貞操帯を付けてはいませんでした。 

同じ円網で2匹の成体♂が同居しているのに、交接相手の♀を巡る闘争にならないのが不思議でした。 
この2匹の♂の間では既に順位付けができていて、劣位の♂はライバル♂αが♀に共食いされるまで交接の順番を待っているのでしょう。 
♂αが♀と交尾できそうになったら邪魔して♀を挑発して共食いするようにしむける作戦なのかな?
もしも♂同士が激しく争う動物種なら、♂の方が♀よりも体格が大きくなるという、ジョロウグモとは逆の性的二型になるはずです。
非力なジョロウグモ♂は直接戦わなくても、ライバル♂を♀に早く殺してもらうように交尾を邪魔したり♀を苛立たせたりする作戦を進化させても不思議ではありません。
劣位の♂をよく見ると、触肢が未だあまり発達していないので、少し若いのかもしれません。 
平凡社『日本動物大百科8昆虫Ⅰ』によると、
ジョロウグモの♀の網には複数の♂がいることが多い。網をはさんで♀と向き合う位置にいる♂がふつういちばん大きく、交尾の優先権をもっている。網の周辺部にいる♂はまったく交尾できないわけではないが、確率は低い。(p18より引用)


関連記事(8年前の撮影)▶  


トンボの他には、1匹のオオハナアブPhytomia zonata)がジョロウグモ♀の円網に掛かって、弱々しく暴れていました(虫の息状態?)。 
多数の真っ黒い食べ滓が網上に残されたままになっています。 
ジョロウグモ♀の網にイソウロウグモの仲間を今回も見つけられませんでした。 

三脚を持参していれば、ジョロウグモ♀♂が交接に成功するまでじっくり長撮り・監視できたのですが、残念です。 
この日の山行でジョロウグモ♀の網を次々に見て回ると、♂が♀の網に同居している例はいくつも見つけたのですが、交接中の♀♂ペアは見つけられませんでした。 


小田英智、難波由城雄『網をはるクモ観察事典 (自然の観察事典 21)』によれば、
ジョロウグモの♂の80%近くが、♀の脱皮の時に、結婚のための交接を行います。のこりの20%は、♀がえさをたべて油断しているときをねらって交接します。こうしたときをえらぶのは、不用意に♀に近づくと、♂だって捕らえられ、たべられてしまうからです。そのために♂はしばらく巣にとどまり交接後ガードを行う。(p22より引用)
ジョロウグモの♂は一生に一回しか交接しません。でも♀は、ほかの♂と、2回目の交接を行うことがあります。(p23より引用)


ところで、この動画を撮影中に周囲の茂みでひっそり鳴いていた虫(直翅目)が気になります。 
コオロギの仲間だと思うのですが、名前が分かりません。 
どなたか教えてもらえると助かります。 


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2024/07/09

池で溺れたノシメトンボ♂を捕食するクロゲンゴロウの群れ

 

2023年10月上旬・午後14:20頃・くもり時々晴れ(小雨)

山麓にある小さな池に久しぶりに来てみると、ガマなどの抽水植物が生えていて、水面で何かが暴れていました。 
よく見ると、溺れかけたノシメトンボ♂(Sympetrum infuscatum)の胸背に水面下でクロゲンゴロウCybister brevis)が食いついていました。 

すぐ隣りにあるもう一つの池で早春にクロゲンゴロウを見たのが生まれて初めてで、今回が二度目の出会いでした。 
捕食行動はもちろん初見で、興奮しながら長々と撮影しました。

そもそもノシメトンボ♂がなぜ池で溺れたのか謎です。 
寿命で弱っていたのか、それとも羽化直後なのかな? 
ノシメトンボ♀は水のある場所には産卵しないはずなのに、♂は水辺で交尾相手の♀を待ち伏せするとは思えません。

関連記事(3、4、7、9年前の撮影)▶  


見つけたときにはノシメトンボ♂はまだ生きていて、脚を動かしたり翅を力なく羽ばたかせたりして暴れていました。 
しかし、水中から空に飛び立つことは不可能で、もはや逃れることはできません。 

撮影中は気づかなかったのですけど、水面下に沈んだガマ(?)の枯れ葉にヤゴ(種名不詳)が捕まっていました。 
断末魔のノシメトンボ♂が水面で激しく羽ばたいて波紋が広がったので、ヤゴは水中に潜って逃げてしまいました。 
ヤゴも肉食性なのに、獲物の争奪戦に参戦しませんでした。 
丈夫な装甲に守られたクロゲンゴロウには勝ち目がないのでしょうか。 

しばらくすると、クロゲンゴロウaはトンボの右後翅を根元から食い千切りました。 
獲物から取り外した翅だけ抱えて持ち去ろうとしても、トンボの翅は浮力があるので、クロゲンゴロウは潜水できません。 
切除した翅の根元に付いた肉片を齧ってから手放しました。 
獲物の本体を見失ったようで、しばらく水中をうろうろと泳ぎ回っています。 

その間に別個体bのクロゲンゴロウが左から泳いで登場し、獲物に食いつきました。 
やはり獲物の胸背に背後から噛み付いています。 
細長い口吻を獲物に突き刺して体外消化するカメムシ目の水生昆虫と違って、ゲンゴロウの仲間は獲物を本当に齧って咀嚼して食べてしまいます。 

クロゲンゴロウbの背後から先客の個体aが戻ってきました。 
獲物をめぐる争奪戦が始まり、ぐるぐると水中を追い回しました。 
後脚を広げて互いに相手を蹴ろうとしても、流線型の体なので滑って打撃の効果はなく、獲物を独り占めするのは無理なようです。 
ようやく折り合いをつけると、仲良く並んで獲物の腹背の上部を齧り始めました。 
よく見ると、2匹が後脚を伸ばして互いに牽制しながら獲物の別々の部位を捕食しています。 

池に日光が射すと、クロゲンゴロウの鞘翅が光沢のある深緑色と判明しました。 
腹端(鞘翅の下)からときどき泡が出ているのは、呼吸のための気泡なのでしょう。 

餌食となったトンボは絶命したのか、暴れなくなりました。 
2匹のクロゲンゴロウが互いに逆方向から獲物に食いついています。 
1匹が獲物から一旦離れ、泳いで戻ってこようとすると、ライバルと争奪戦になりました。 
互いに干渉しないように位置取りする必要があります。 

クロゲンゴロウがノシメトンボ♂の胸部を食べ進んだ結果、その頭部が切り離されました。 
(断頭の瞬間を撮り損ねてしまいました。 )
強い風が吹くと、水面にぷかぷか浮いているノシメトンボ頭部が流されていきます。 
クロゲンゴロウは獲物の生首には見向きもしないで胴体にかじりついています。 
ノシメトンボの脚も胸部から食いちぎられて外れ、水中のガマ?枯れ葉の上に落ちていました。 

後半になって、3匹目のクロゲンゴロウcが獲物に集まっていたことに気づきました。 
ときどき三つ巴の争奪戦になります。 
1匹のクロゲンゴロウがライバルを出し抜いて獲物を持ち去ろうとしても、獲物の傷口から体液が水中に滲み出るので、その匂いをライバルが嗅ぎつけてしまうようです。 

水生昆虫に詳しい人なら、クロゲンゴロウの性別を外見で見分けられるのですかね? (教えて欲しいです。)
今回は捕食行動のみで、求愛や交尾などの配偶行動は全く見られませんでした。 

獲物が食べ尽くされるまで一部始終を微速度撮影したかったのですが、この日は三脚を持参していなくて残念でした。 
おまけに小雨がぱらつき始めてカメラが濡れそうになり、気が気ではありませんでした。
 
次回はトンボなどの生き餌を池に投入して溺れさせれば、暴れる動きに反応してゲンゴロウなどの捕食者が集まってくる様子を観察できるかもしれません。 
撮影後にクロゲンゴロウを捕獲しようか迷ったのですが、採集用の網も持ってきていませんでした。 
被っていた帽子で掬えば採れたかな?
レッドデータブックによれば、クロゲンゴロウは山形県で絶滅危惧種Ⅱ類(VU) に分類されているらしいので、採集禁止かもしれません。

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2024/05/29

林道で採食する2羽のヤマドリと山中の泉で間欠打水産卵する謎のトンボ♀【トレイルカメラ】

 

2022年8月下旬・午後16:10頃・晴れ 


シーン1:8/19・午後13:32・晴れ(@0:00〜) 
明るい時間帯にたまたまフルカラーで撮れた現場の状況です。 
里山から湧き出る地下水が溜まって、浅い池になっています。 
池の奥には林道が左右に通っていますが、往来するヒトはほとんど居なくて、雑草が生い茂る獣道と化しています。 

泉から画面の奥に向かって流れ出た水は、林道を渡って(洗い越し)から山の斜面を流れ下り、沢の源流となります。 


シーン2:8/22・午後16:06・晴れ(@0:04〜) 
雑草が生い茂る奥の林道を2羽のヤマドリ(亜種キタヤマドリ:Syrmaticus soemmerringii scintillans)が前後して右から左へゆっくり歩いていました。 
ときどき地面を啄んだり、目の前の植物の葉をつついたりしています。 
雑草が邪魔で尾羽の長さが確認できず、性別不明です。 
(なんとなく♀のような気がするのですけど、どうでしょうか?) 


一方その間、手前にある池の上をトンボが単独で飛び回っていました。 
てっきりいつものように、オニヤンマ♂の縄張り巡回飛翔かと初めは見過ごしそうになりました。 

関連記事(同所で17日前の撮影)▶ 縄張りの池を守り争うオニヤンマ♂【トレイルカメラ】 


1.5倍に拡大した上で1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみると、水面に産卵を繰り返すトンボ♀と分かりました。 
トンボ♀が飛びながら池の水面に腹端を叩きつける度に、波紋が広がります。 
もしもオニヤンマ♀なら、ホバリング(停空飛翔)しながら何度も連続して打水産卵するはずです。 

関連記事(1ヶ月、11年、13年前の撮影)▶  


ところが今回のトンボ♀個体は、1個ずつ単発的(間欠的)に繰り返し産卵していました。 
この産卵様式は「間欠打水産卵」と呼ばれ、オニヤンマ♀以外の別種のトンボである可能性を示唆しています。 
♀♂ペアの尾繋がり状態ではなく、単独で産卵する♀を警護する♂の姿はありませんでした。 
 
連続打水産卵は,連続的に水面上に降下して水面を一定のリズムでたたいて産卵する方式,間欠打水産卵は,しばらくホバリング飛翔をしてその間に産卵弁と第9節腹板の間に卵塊をつくり,ある程度それが大きくなったら打水して放卵,それを繰り返す方式,といった具合です.だいたいは名称を見ればその動きに見当がつきます.状態的基準についても,同じトンボが異なる動きで産卵することがあり,つけられる名称も複数ある場合があります. (神戸のトンボサイトの「トンボの生態学 3.産卵とその行動」から一部引用)

 
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
今回、謎のトンボ♀の産卵行動をフルカラーで録画できなかったことが残念です。
旧機種のトレイルカメラは動画のフレームレートが15fpsしかないので、素早く飛び回るトンボの動きが少しカクカクしています。


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2024/05/14

縄張りの池を守り争うオニヤンマ♂【トレイルカメラ】

 



2022年8月上旬・午後14:35〜17:10 

山中の湧き水が溜まった泉が野鳥や野生動物の水場となっているので、トレイルカメラで監視しています。 
細長い形の浅い池の水は画面の奥に向かって流れ出し、沢の源流になっています。 

昼間はオニヤンマ♂(Anotogaster sieboldii)がこの池の上空を何度も往復し、縄張りを張っています。 
池に来なくなる時間帯は、どこか近くの草木に止まって翅を休めながら、縄張りを油断なく見張り、♀を待ち伏せしているのでしょう。 
たまに別個体が池に飛来すると、2匹の激しい空中戦になります。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:09〜2:30、4:06〜5:19) 
♀が産卵にやって来ると交尾を挑み、ライバル♂が飛来すると追い払うのですが、私には映像から2匹目の性別を見分けられませんでした。 
(動画のフレームレートが15fpsと低いのが問題です。)
目の肥えたトンボ・マニアは、2匹の飛び方を見ただけで闘争なのか求愛なのか、見分けられるのでしょうか。 

水場に来るオニヤンマ♂を片っ端から一時捕獲して油性ペンなどで分かりやすい色を塗れば(個体標識)、何か面白いことが分かるかもしれません。 
例えば、それまで右岸の止まり木で休んでいたオニヤンマ♂がいつの間にかお気に入りの止まり木を変え、飛行巡回ルートも微妙に変わったときには、縄張り占有♂個体が入れ替わった可能性があります。 
縄張りを占有する♂個体を捕獲して取り除くと、すぐにライバル♂が侵入して来るでしょうか? 


※ 昼間の挙動が不安定な旧機種のトレイルカメラなのに、珍しくフルカラーで録画されていました。 
ところで、そもそも自動センサーカメラでオニヤンマ♂が繰り返し撮影できることが不思議でなりません。 
変温動物がいくら激しく動き回っても、トレイルカメラのセンサーは反応しないはずだからです。 
例えば、この池で早春にやって来るカエルの配偶行動(カエル合戦)をトレイルカメラで撮影しようと試みても、何も写らず失敗に終わりました。 
(両生類も昆虫も変温動物です。)
パトロール飛行中のオニヤンマ♂の体温は、意外に気温よりも高いのかもしれません。 
サーモグラフィカメラで撮ってトンボが発熱しているかどうか確かめたいのですけど、高価で手が出ません。 
それとも、トレイルカメラの設定でセンサー感度を最高に上げた場合には、温度に関わらず単なる動体検知になっているのかな?


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2024/04/16

ネジバナの花から飛び立ち獲物を捕食するナツアカネの未成熟♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年7月下旬・午後14:30頃・曇りときどき晴れ 

山麓の水路沿いの小径に咲いたネジバナ花序の天辺に未成熟のナツアカネ♀(Sympetrum darwinianum)が止まっていました。 
翅を深く下げて休んでいます。 
右中脚の先(跗節)が欠損している個体でした。 
狩った獲物に必死で反撃されて足先を噛み千切られたのかもしれません。
今回初めて知ったのですが、図鑑『日本のトンボ』によると、ナツアカネ♀は翅の基部に橙色斑が現れる個体もいるとのこと。 

頭部をグリグリ動かして大きな複眼で上空を油断なく見張り、何か他の昆虫が飛来すると直ちに飛び立ちます。 
獲物を待ち伏せする上でこのネジバナはお気に入りの止まり場らしく、飛び立ってもすぐに同じ花序に戻って来ます。 
ネジバナに訪花すると言っても、花蜜や花粉が目当てではありません。
花に止まる向きにはこだわらないようです。 
ちなみに、この株は右回りにねじれて咲く螺旋花序でした。 (野生のネジバナで螺旋の向きは、右回りと左回りの株が1:1で見つかるらしい。) 

この個体がネジバナの花序に離着陸する瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:17〜1:13) 
ナツアカネ未成熟♀は、左上を見上げてから飛び立ちました。 
離陸直前にフェイントをかけるように、スクランブル発進の角度を変えたのが興味深く思いました。 
上空を高速で通り過ぎる獲物に対応して、軌道を先読み(高速軌道計算)したのでしょう。 
すぐに同じネジバナに戻ってきて着陸。 
前回とほぼ同じ方向に止まりました。 
しっかり横を向いてくれたときにトンボの口元に注目すると、獲物を咥えてなかったので、狩りには失敗したようです。 

狩りに成功したシーンは高画質のFHD動画で撮れていました。 
ネジバナの天辺から飛び立って戻ってきたナツアカネ♀は、口に何か小さな黒っぽい昆虫を咥えていました。 
その場でムシャムシャと獲物を咀嚼して捕食します。 
食事に脚を使うことは全くありません。 
この獲物を食べ終える前に、ナツアカネ♀が再び飛び立ちました。 
今回の狩りは失敗したようです。 (獲物に逃げられた)
食べかけの獲物を咀嚼し続けて、完食しました。 
捕食中に、手足を使わずに口の動きだけで、獲物の食べられない翅を落としました。 
この食べ残しを拾ってじっくり調べたら、獲物の正体が大まかにでも突き止められたかもしれませんね。 
後半は、狩りの成功シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@2:19〜) 

このナツアカネ♀個体は観察の後半になると、ネジバナの花から移動して近くの下草(イネ科)に止まり直しました。 
後ろ向きでは口元が見えず、狩りの成否が不明です。 
それでも背側から撮れたので、順番を入れ替えて冒頭シーンに採用しました。 
周囲の林からミンミンゼミ♂(Hyalessa maculaticollis)♂の鳴く声♪が聞こえます。 


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2023/08/20

跳んで逃げるオオカマキリの幼虫

 

2022年7月下旬・午後12:45頃・晴れ 

低山の細い山道を登っていると、ススキの葉の上にオオカマキリTenodera sinensis)の幼虫が乗っていました。 
左右の鎌を揃えて前に構え、獲物を待ち伏せしているようです。 
武器となる鎌をときどき口で舐め、手入れを怠りません。

横を向いたオオカマキリ幼虫の目線の先を追うと、左隣のススキの葉にいつの間にかトンボが止まっていました。 
アキアカネSympetrum frequens)の未熟♀のようです。 
急に飛び立つと、すぐにまた同じススキの葉に舞い戻りました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、アキアカネ♀は急に上空を見上げてから飛び立っていました。 
上空を飛来した昆虫を狩ろうと緊急発進したようです。 
しかし、着陸したアキアカネ♀は口に獲物を咥えておらず、狩りは失敗だったようです。 
オオカマキリの幼虫はトンボが離着陸する動きに無反応でした。 
獲物としては大き過ぎますし、遠くて鎌が届く射程距離ではありません。 

私がカメラをマクロモードに切り替えてレンズを近づけると、オオカマキリ幼虫は慌ててススキの葉を伝って逃げ、隣の葉へピョンと跳び移りました。 
ススキの葉身をどんどん登り、逃げる場所がなくなりました。 
指でそっと腹端に触れると、驚いたオオカマキリ幼虫は躊躇なく地面に跳び下りました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
カマキリの成虫ならジャンプしながら羽ばたいて、遠くまで飛び去ることが可能です。 
不完全変態のカマキリ幼虫は成虫に体型がそっくりでも翅が未だありません(無翅)。 
カマキリの幼虫は体重が軽いので、高所から落ちても平気です(体にダメージが無い)。 
地上で見失ってしまい、カマキリ幼虫の逃避行動は成功です。 

関連記事(13年前の撮影)▶ オオカマキリ幼虫

2023/08/06

山中の池でトレイルカメラが捉えたオニヤンマ♀の産卵(その2)

 


2022年8月上旬・午後13:40頃・晴れ 

里山で湧水が溜まった泉を自動センサーカメラで見張っていると、オニヤンマ♀(Anotogaster sieboldii)が単独で飛来しました。 
日陰になっている左岸でホバリング(停空飛翔)しながら、岸辺の浅瀬に腹端をチョンチョンと付けて産卵しています。 
池の浅瀬に沿って移動しながらあちこちで産卵を繰り返し、飛び去りました。 
オニヤンマ♀の産卵行動を1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:22~) 

この時期はずっとオニヤンマ♂がこの水場で縄張りを張って交尾相手の♀を待ち伏せしていたのに、♂の留守中を狙ったかのように♀が産卵に来たことになります。 
これは前回も同じでした。 


交尾済みのオニヤンマ♀は♂のしつこいセクハラで産卵行動が邪魔されるのが嫌で、意図的に♂を避けているのかもしれません。 
それとも監視カメラに写っていないだけで、実は首尾よく交尾できた♂が近くで♀の産卵を見守っているのでしょうか? 

水場に飛来したオニヤンマ♀を♂が捕捉して交尾に至る瞬間をトレイルカメラで記録するのは、よほどの幸運に恵まれないと難しそうです。 


※ 癖のある旧機種のトレイルカメラを騙し騙し使い続けています。 
明るい昼間の動画撮影に難があり、なぜか画面全体がピンク色に点滅するのです。 
あまりにも不自然で見づらいので、動画編集時に自動色調補正を施してモノクロに加工しました。


2023/06/27

山中の水路に沿って縄張りを張りパトロールするオニヤンマ♂

 

2022年8月上旬・午後15:00頃・晴れ 

湧き水が流れ出る山中の泉が、渓流の源流となっています。 
山道を横切る細い水路の上をオニヤンマ♂(Anotogaster sieboldii)が低くホバリング(停空飛行)しながらゆっくりパトロールしていました。 
この水路に沿って縄張りを張り、産卵に来る♀を待ち伏せしているのでしょう。 
水場(池)へ行くかと思いきや、逆に細い沢が流れ下る斜面の方へ飛び去ってしまい、見失いました。 



2023/06/22

溜池で単独打水産卵するシオカラトンボ♀?

 



2022年8月上旬・午前10:30頃・晴れ  

大雨が降った後で満水になった溜池でカワウPhalacrocorax carbo hanedae)を撮影していると、右から白っぽいトンボが飛来しました。 
水面スレスレの低空飛行でやって来たトンボが水面に浮く草に腹端をチョンと付けて飛び去りました。 
産卵行動のようです。 
すぐにまた戻って来て、同様の産卵をあちこちで繰り返します。 
水面そのものではなく、水面に浮く植物に狙いをつけて卵を産み付けていることから、正確には単独打水産卵とは呼べなさそうです。  

このトンボ♀の名前は何でしょう?
やや遠くてしっかり見えなかったのですが、腹部が白いトンボと言えばシオカラトンボOrthetrum albistylum speciosum)ですかね? 
しかし、シオカラトンボ♀の腹部は茶色い麦わら模様のはずです。 
 図鑑『日本のトンボ』でシオカラトンボの産卵様式について調べると、一応合致します。

・♀は単独で、腹端で水をかき、卵とともに前方に飛ばす。♂はその間、付近を飛んで警護することが多い。 
・時おり♂型の♀が出現する。通常の♀も老熟すると薄く白粉を吹くが、それとはまったく異質のもの。 (p471より引用)

我田引水ですが、今回の産卵個体は♂型の腹部全体が白いシオカラトンボ♀だとすれば説明できそうです。 
ただし、産卵する♀の周囲で警護する♂の姿は見当たりませんでした。

池の水面をのんびり遊泳するカワウは、単独打水産卵するトンボには目もくれませんでした。 
魚食性のカワウがトンボを獲物として認識しないのは、当然でしょう。 

2022/11/14

山中の池でトレイルカメラが捉えたオニヤンマ♀の産卵

 

2022年7月下旬・午後14:35頃・晴れ
前回の記事:▶ 山中の池でトレイルカメラが捉えたオニヤンマ♂の縄張り巡回飛翔

山中の泉をトレイルカメラ(無人センサーカメラ)で監視していると、オニヤンマAnotogaster sieboldii)が飛来しました。 
池の上空を低く飛んでから、池の奥の端でホバリングしながら腹端を水面にチョンチョンと2回ひたしました。 
てっきりいつもの♂による縄張り占有飛翔かと思いきや、今回は♀の単独打泥産卵でした。
その後は奥に見える林道を左へ飛び去りました。 

オニヤンマ♀が産卵した地点は、湧き水が溜まった池から流れ出る水路になっています(沢の源流)。 
その浅い水底に卵を産み付けたようです。
▼関連記事(11、13年前の撮影) 
オニヤンマ♀の挿泥飛翔産卵 
オニヤンマ♀の連続打水産卵
せっかくオニヤンマ♀が珍しく水場に飛来したのに、いつもは縄張りをパトロールしている♂が肝心なときに不在でした。 
オニヤンマ♂が♀に飛びかかって交尾を始める決定的瞬間が撮れるチャンスだったのに、残念です。 
オニヤンマ♀♂は交尾後に尾繋がりにならない(連結飛翔しない)ので、♀は単独で産卵しないといけません。 
そのとき♂に見つかると再び交尾を迫られて、貴重な産卵時間を無駄にしてしまいます。 
しつこい♂のハラスメントを回避するために、オニヤンマ♀は♂が居ない隙を狙って素早く産卵するようになったのでしょう。



2022/11/05

山中の池でトレイルカメラが捉えたオニヤンマ♂の縄張り巡回飛翔

 

2022年7月下旬 

山中の泉をトレイルカメラ(自動撮影カメラ)で監視していると、日中に飛び回る大型のトンボが頻繁に写るようになりました。 
トレイルカメラの映像だけではトンボの種類を見分けられませんが、後日現場入りしたときに改めて自分でも動画を撮り、オニヤンマ♂(Anotogaster sieboldii)と判明しました。(映像公開予定) 
昆虫は変温動物なので、トンボが横切ってもトレイルカメラのセンサーは反応しないはずなのに、不思議です。 
野鳥など昼行性の恒温動物が飛来したついでに、たまたまオニヤンマ♂が写った訳ではありません。 
もしかすると、巡回飛翔を長時間続けるオニヤンマの飛翔筋は激しい運動で発熱しているのでしょうか? 
サーモグラフィカメラで撮影してみたいのですが、高嶺の花です。 
一方、水場の水面を遊泳するアメンボにはトレイルカメラのセンサーが反応することはありません。 
アメンボは小さいですし、代謝も低くて体温が気温以上に上がらないからでしょう。 


シーン1:7/26 
トレイルカメラが癖のある古い機種なので、昼間の映像は設置直後しか総天然色で記録されません。 
オニヤンマ♂は池から流れ出る水路の上空でホバリング(停空飛翔)してから林道の方へ飛び去りました。 
しばらくすると戻って来て、池の上空を往復します。 
オニヤンマ♂は朝から夕方までひたすら縄張り巡回を繰り返しています。 
産卵のために水場に飛来する♀を待ち伏せして、交尾するのが♂の目的です。 

池から流れ出た湧き水は、奥にある林道を横切って斜面を下り、沢になります。 
オニヤンマ♂はその水路を辿って往復巡回飛翔しているようです。 
そのコースだけでなく、水場の奥を通る林道に沿って左右に往復することもあります。 

シーン2:7/28 (@0:31〜) 

シーン3:7/29 (@0:47〜) 
オニヤンマ♂が疲れて休む際には、水面の落枝には止まらず、必ず池畔の灌木から水面に張り出した枝にぶら下がります。 
どうやらお気に入りの止まり木が何箇所かあるようです。 
止まり木にぶら下がって長時間休んでいるシーンは退屈なので、10倍速の早回し映像に加工しました。 

小雨が降り始めると、池の上を飛んで奥の林道の右奥に姿を消し、しばらく戻って来ませんでした。 どこかで雨宿りしているのでしょうか。 
戻って来たオニヤンマ♂が池をパトロールしてから、いつもの右岸の止まり木にぶら下がりました。 
小雨が降り続いています。 


シーン4:7/30 (@2:57〜) 
前日と同じ縄張り占有行動を繰り返しています。 

空腹になると池の上を飛び、空中で獲物を狩って捕食してるのかもしれませんが、狩りのシーンは一度も撮れていません。 
止まり木で休憩中に落ち葉がヒラヒラと舞い落ちると、反応して飛び立ちました。 
右岸の灌木に一瞬だけ着陸してすぐにまた離陸したのは、枯葉を獲物と誤認して狩ろうとしたのかな? 


同一個体の♂が水場を中心とした縄張りを占有していると思われます。 
しかし♂同士の縄張り争いは一度も撮れていません。 

関連記事(同所同時期の撮影)▶ 山中の水路に沿って縄張りを張りパトロールするオニヤンマ♂



雨が本降りになるとパトロール飛翔を止めて雨宿りしているようです。 
雨上がりにオニヤンマ♂は活動を再開するのですが、カメラのレンズに水滴が付着してまともな動画が撮れなくなるので、割愛しました。 
レンズの水滴が自然乾燥するまで待たないといけません。 
ワイパー機能があると便利なのになー。 

昼間はオニヤンマ、夜はコウモリが頻繁に飛来するため、この水場に設置したトレイルカメラの電池があっという間に消耗してしまいます。 
無駄撮りとは言いませんが、他の野生動物や野鳥が記録できなくなるのは困ります。 
(まるで迎撃システムに対するドローンの飽和攻撃みたいです。 )
乾電池ではなくソーラーパネルをトレイルカメラの電源とするオプションもあるのですけど、鬱蒼とした雑木林の山中では十分な日照を確保できない気がします。 
高い木に登って樹冠に太陽電池を設置しないといけないでしょう。
沢に小さな水車を設置して水力発電できるかな?



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