ラベル 甲虫(鞘翅目) の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 甲虫(鞘翅目) の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025/06/13

ツキノワグマの糞塊内に潜むセンチコガネ

 

2024年5月下旬・午前11:10頃・くもり 

山麓の小径を歩いていたら、かなり大きな糞塊を見つけました。 
ニホンザルの糞と迷ったのですが、ツキノワグマUrsus thibetanus)の落とし物でしょう。
道の中央で枯れた落ち葉(広葉樹)の上に残されていました。 
糞塊の表面は真っ黒で、半乾きの状態です。 


15cm定規を並べてみる。




小枝を拾って糞塊をほじくってみると、内部はまだ瑞々しい状態でした。
未消化物は緑色の植物繊維の塊でした。 
植物の若葉を大量に食べたことが分かります。 
この時期のツキノワグマはベジタリアン(植食性)です。 
糞塊をほじくってみても、糞便臭を全く感じませんでした。 
(同じ雑食性でもヒトの大便の方がはるかに臭いです。) 

クマの糞の中にセンチコガネPhelotrupes laevistriatus)が1匹だけ隠れていました。 
この路面は落ち葉の下が硬いコンクリートですから、糞虫たちはいくら頑張っても獣糞を地中に埋めることが出来ません。 
したがって、このセンチコガネはクマの糞を食べていただけでしょう。 
ほじくり出したセンチコガネは、擬死したまま動きません。 
ひっくり返すと、腹面も鈍い金属光沢(構造色)でしたが、オオセンチコガネほど綺麗な玉虫色ではありませんでした。 






クマの糞を見つける度に中をほじくって食性調査(糞内容物調査)の真似事をしてみるのですが、糞虫を見つけたのは今回が初めてで、嬉しい発見でした。 
糞の鮮度がちょうど良かったのでしょう。 
クマの専門家は糞を持ち帰って水洗いしながら網で濾し、小型の糞虫や未消化の種子などを丹念に探すのだそうです。 

関連記事(1、5、6年前の撮影)▶  


山中ならともかく、通い慣れた山麓の小径までクマが降りてきた証拠が残されていたのは衝撃です。 
「熊出没注意!」
熊よけスプレーと熊よけ鈴を携帯していることを改めて確認し、気を引き締めて先に進みます。 


【アフィリエイト】 

2025/05/08

右脚の跗節が欠損した越冬明けのオオセンチコガネ♀

 

2024年5月上旬・午後12:30頃・くもり 

里山の中腹をトラバースする細い山道を歩いているオオセンチコガネ♀(Phelotrupes (Chromogeotrupes) auratus auratus)を見つけました。 
曇っていても、構造色で赤い金属光沢(メタリック)に輝いています。 
頭部や頭楯に金属光沢がなくて黒いことから、♀と判断しました。
参考:舘野鴻『うんこ虫を追え』p10 

前脚の腿節前面に橙色の毛束が密生している部分が目立ちます。 
これはセンチコガネ科およびクワガタムシ科に性別を問わず見られ、フェロモンを分泌するらしい。 

少し太い木の根っこ(落枝?)をなかなか乗り越えられずに苦労しています。 
平べったい石の上に乗ったときによく見ると、右側だけ前脚、中脚、後脚すべての跗節が欠損していました。 
歩行がぎこちなくて跛行しているように見える理由が、地面とのグリップが左右非対称になるためだと分かりました。

最後は石の隙間の地中に潜り込んで隠れてしまいました。 
餌となる獣糞を目指して歩いていた訳ではなかったようです。 
もしかすると、私がすぐ横に立っていたので警戒して隠れたのかもしれません。 


【考察】 
今季初見のオオセンチコガネ成虫です。 
この個体で右側だけ全ての脚の跗節が欠損している理由を考えてみました。 

まず、先天的な異常(奇形)である可能性はどうでしょうか。 
エボデボ(進化発生生物学)の研究によって昆虫の形態形成に関わる遺伝子群が次々と解明されています。
聞きかじりですが、跗節の形態形成にはDistal-less(Dll)などの転写因子が重要な役割を果たしているそうです。 
しかし、左右非対称な異常を説明するのが難しいです。 
例えば脚原基の遠位端の形成を制御するDistal-less(Dll)遺伝子が体の右側だけ異常になったということは、発生初期に体の右側の細胞だけモザイク状に遺伝子が体細胞突然変異した結果というシナリオも理論的には考えられます。 
しかしその発生確率はきわめて低い上に、幼虫の形態形成にも重篤な悪影響を及ぼすはずなので、成虫まで無事に育って羽化できるとは思えません。 

したがって、後天的な欠損だと考えたほうが良さそうです。  
捕食者に襲われかけたにしても、左右非対称に跗節だけ欠損するとは考えにくいです。 
穴掘りで脚の爪先(跗節)が摩耗したにしても、左右非対称になる理由が分かりません。 
調べてみると、オオセンチコガネは成虫で越冬するらしい。 
地中で越冬中に、脚の跗節がたまたま右側だけ凍傷で欠損した、という可能性が一番あり得そうです。 

この考察をする上で、Perplexity AIにかなり助けてもらいました。
 (AIチャットとのブレインストーミングを、かなり省略して書きました。) 


【アフィリエイト】 

2025/04/30

セイヨウタンポポの花に集まるコアオハナムグリ

 

2024年4月下旬・午後12:30頃・くもり 

山麓の田園地帯の農道に咲いたセイヨウタンポポの群落でコアオハナムグリGametis jucunda)が訪花していました。 
共にごくありふれた普通種ですけど、驚いたことに、この組み合わせは初見でした。 
別々の頭花で3匹のコアオハナムグリが見つかりました。 

タンポポの花の上を歩き回って花粉や花蜜を食べるコアオハナムグリの体は、黄色い花粉で汚れています。 
別の花に移動すればタンポポの授粉を助けていることになりますが、忙しなく飛び回って採餌するハナバチ類ほど移動性は高くないので、送粉者としてあまり当てにはできません。 

調べてみると、コアオハナムグリは成虫で♀も♂も地中で越冬するそうです。
(新成虫が秋に羽化する年一化の生活史。) 
越冬明けの個体が、春にいち早く咲いたセイヨウタンポポの花で栄養補給し、交尾に備えるのでしょう。 
ここ雪国でコアオハナムグリの成虫を4月に撮れたのも初めてで、もしかすると暖冬の影響で例年よりも早く活動を始めたのかもしれません。

早くも花が咲き終わったセイヨウタンポポの株で、綿毛の上半分が無くなっていました。 
綿毛が実際に飛散するシーン(種子の風散布)を撮りたかったのですが、風が弱くて残念。 

2025/04/23

ニワハンミョウ♂の求愛と♀による交尾拒否

 



2024年4月下旬・午後14:55・くもり 

田園地帯の舗装された農道で交尾を始めたばかりのニワハンミョウ♂♀(Cicindela japana)を見つけました。 
♀に背後からマウントした♂は、♀の胸部と腹部の間を大顎で咥えてしっかり掴まえ、腹端から茶色くて細長い交尾器(陰茎)を伸ばして♀の交尾嚢に挿入しようとしています。 

しかし、♀は激しく暴れて♂を振り落とそうとしています。 
この♀個体は、明らかに交尾拒否の行動をしています。 
前回の記事で観察した、♀が交尾を終了しようと暴れる行動(post-copulation struggle)よりも激しくて、横に転げ回る動き(ローリング)もしました。 
♂はじゃじゃ馬に振り落とされないように必死にしがみつき、まるで激しいロデオを見ているようです。 
♀も茶色の腹端を伸ばしながら下に屈曲しているのは、♂の交尾器が届かないようにしているのでしょう。 
普段は鞘翅の下に隠れている腹背が♀♂ともにメタリック・グリーンに美しく輝いて見えました。 
うまく交尾できた♀♂ペアの場合、♀は腹端を伸ばしていませんでした。 

激しく暴れている♀♂ペアに、左から別個体が登場しました。 
スロー再生すると(@2:49〜)あぶれ♂のようですが、♀の争奪戦にはならず、すぐに離れて行きました。 
獲物と誤認して近寄ってきたのかもしれません。 

♀に激しく抵抗された♂は結局交尾を諦めて、♀から離れて行きました。 
正面から見ると、♂の上唇および大顎は白いので容易に見分けられます。 
まるでホワイトニングした歯のように見えます。 
一方、♀は♂よりも体格が少し大きく、上唇と大顎が少し黄ばんで見えます。 
ハンミョウは肉食性ですが、怒った♀による性的共食いは起こりませんでした。 

♂から解放された♀が路上をうろつく様子をしばらく撮り続けていたのですが、しばらくするとさっきの♂(それとも別個体?)が別の♀個体の背中に挑みかかっていました。 
交尾する気満々の♂は腹端の交尾器を伸ばしていますが、この♀も激しく抵抗しています。 
今回の♀は、獲物(おそらくアリの一種)を咀嚼中でした。 
このペアも体格に明確な性差ありました(♀>♂)。 
交尾拒否されて一旦振りほどかれた♂が再び♀の斜め背後から近づこうとしたら、嫌がる♀は走って逃げました。 

ニワハンミョウの♀をひたすら動画に撮り続ければ、♂が駆け寄って交尾を挑むはずだ(効率よく撮れる)と気づきました。 
そこで、路上に立ち止まって身繕いしている個体を背側から撮り始めました。(@0:52〜) 
上から背側を見下ろすアングルでは顔色が見えにくくて撮影中は気づかなかったのですが、この個体は♂でした。 
さて、この♂はこれから獲物を狩りに行くのか、それとも♀を探すのでしょうか? 
ところが、背後から別個体(驚いたことに♀でした)がすばやく駆け寄りました。 
マウントしたかと思いきや、すぐに一旦離れました。 (背中を通り過ぎただけ) 
ところが直後に攻守交代で♂が♀に素早く駆け寄り、背後からマウントしました。
マウントされた♀が腹端を伸ばしてすのが交尾拒否の意思表示のようです。 
今回は♀が♂を振り落とそうと激しく暴れることなく、♂はあっさり諦めて離れて行きました。 

♂に解放された♀を撮り続けます。 
この♀個体の背中の中央付近に一対の黒い丸の斑紋があって(●●)、個体識別ができそうです。 
さっきの♂にはなかった目立つ模様です。 
♀は立ち止まって触角を前脚で拭い、化粧しました。 
同側の前脚と中脚を互いに擦り合わせる身繕いもしています。 
♀は再び路上徘徊。 

ところが私は途中で目移りしてしまい、少し離れた位置に佇んでいた♂に被写体を切り替えてしまいました。(@2:04〜) 
どんどん遠ざかる個体よりも、近くに来た個体をなるべく撮りたい、という理由もあります。 
この♂個体は大顎を大きく開閉し、クチャクチャと噛みほぐしていた獲物(クロアリ?)の残渣を吐き出して捨ててから、農道をうろつき始めました。 

ここまでのニワハンミョウ♀♂の行動を、1/5倍速のスローモーションでリプレイするので、じっくりご覧ください。(@2:16〜) 


【考察】 
ニワハンミョウの♂が出会った♀と交尾を始める瞬間をいつも見逃してしまいます。 
どうやら、ニワハンミョウには交尾前の儀式化された求愛行動というのはないようです。 
♀の背後から♂が隙を見て挑みかかり、いきなり交尾を試みるのでしょう。 
しかし交尾成否の決定権は♀にあり、♀が交尾拒否すれば♂はやがて諦めて離してくれます。 
♀が♂との交尾を受け入れる瞬間の撮影は、今後の課題です。 

ニワハンミョウの♀は、羽化後に一度交尾をするだけで、その後は♂に迫られてもひたすら拒否するのでしょうか? 
交尾後の♀は獲物(アリ)の捕食に努め、産卵に備えて栄養を蓄えるのでしょう。 
獲物を探し歩いている既交尾♀にとって、次々に交尾を挑んでくる♂の存在は煩わしいだけでしょう(セクハラ)。 
ここで問題になるのは、ニワハンミョウ♀の交尾回数です。
Perplexity AIに質問してみると、
ニワハンミョウ(Cicindela japana)の交尾回数に関する直接的なデータは限られていますが、ハンミョウ類全般の生態から推察すると、♀は複数回交尾する可能性が高いと考えられます。(後略)

日本のナミハンミョウでは、交尾後に再び同じ個体と交尾する事例が報告されています。 (参考ブログ記事 by 年金暮し団塊世代さん)

また、Perplexityが教えてくれた次の論文(Pseudoxycheila属の同所性ハンミョウ2種の交尾行動について)も面白そうなので、これからPDFをダウンロードして読んでみます。

TIGREROS, Natasha; KATTAN, Gustavo H. Mating behavior in two sympatric species of Andean tiger beetles (Cicindelidae). Bol Mus Entomol Univ Valle, 2008, 9: 22-28.

もしも♀が卵の遺伝的多様性を確保するために複数♂と何度も交尾するとしたら、今回見られたような交尾拒否行動は、交尾相手の♂を♀が厳しく選り好みしていることを示唆しています。 
その選別基準を知りたいものです。 
少し考えてみると、♂の体格でふるいにかけることは可能そうです。 
まず、大顎で♀の体をしっかり保定できない♂は論外でしょう。
体格があまりにもミスマッチ(♀>>♂)のカップルは、マウントした♂の交尾器が♀の交尾嚢に届きません。 
♀はちょっと交尾拒否してみて(precopulation struggle)、なるべく体格の大きな♂とだけ交尾するのかもしれません。 
交尾してもらえるように、小柄な♂が求愛給餌行動を進化させたら面白いのになー。 

♀を巡る♂同士の争いは、一度も見られませんでした。 

 一度だけ♂の背後から♀が駆け寄って一瞬マウントした(ように見えた)のが興味深く思いました。 
意中の♂を見つけて♀の方からモーションをかけた(ナンパした)のなら面白いのですが、その気になった♂が交尾を挑んでも♀は断固拒否して別れました。 
♀の尻を追いかけ回す探雌モードの♂と違って、狩りモードの♀は、動くものは全て獲物に見えてしまう(誤認)のかもしれません。 

今後は野外で片っ端から一時捕獲したニワハンミョウを個体標識(マーキング)した上で、配偶行動を観察すれば、もっと面白くなりそうです。 
しかし飼育下で♀♂ペアを交尾させる方が楽かもしれません。


2025/04/17

ニワハンミョウ♀♂の交尾行動:早く終わらせて別れたい♀と続けたい♂の性的対立

 

2024年4月下旬・午後13:15頃・晴れ 

田園地帯の舗装された農道で、交尾中のニワハンミョウCicindela japana)♀♂ペアを見つけました。 
♀に背後からマウントするために、♂は白い大顎を大きく開き、♀の胸部と腹部の間を挟んでしっかり保定しています。 
♀の背中に乗った♂の腹端をよく見ると、細長くて明るい茶色の交尾器を伸ばして、♀と結合していました。 
♂は腹部を少し前方に曲げているため、鞘翅に隠れていたメタリック・グリーンの腹背が覗いて見えます。 

一方で♂を背負った♀は、大顎を開閉しながら路上を走り回り、獲物を探しているようです。 
ときどき♂を振り落とそうとするものの、マウントした♂は♀に必死にしがみついたまま離れようとしません。 
求愛行動を見ていませんが、♂が♀にいきなりマウントして交尾を始めるのだろう。 


この機会に、ニワハンミョウの性差がある形質を探してみましょう。 
体格はやや♀>♂で、♂の前脚および中脚の腿節に白い剛毛が密生している気がするのですが、いずれも微妙な差で、これだけで単独個体の性別を見分けられる気がしません。 
鞘翅の鈍い金属光沢の色が♂は緑っぽく、♀が赤っぽいのですが、これは偶然の個体差かもしれません。 
比較的分かりやすいのは、大顎および上唇の色で、♂は白っぽく♀は黄ばんでいます。
(訂正:頭楯ではなく上唇の間違いでした。)

交尾中のペアが路上で佇んでいると、右から風に飛ばされてきた小さなゴミが♀の眼の前を横切りました。
それを♀が反射的に咥えました。 
獲物のアリではないと気づくとすぐに吐き出し、ゴミはそのまま風に吹き飛ばされました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:22〜) 
ニワハンミョウの優れた動体視力と反射神経に驚かされます。 
もしかするとニワハンミョウが食べ残したアリの捕食残渣かと思ったのですが、そうではなく植物質のゴミだったようです。 

やがて、♀は♂を背負ったまま方向転換し農道をうろつき始めたのですが、その前に♀がクチャクチャ噛んでいた獲物の食べ滓を路上に吐き捨てました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:04〜) 
捨てた物体は黒いので、おそらくアリのクチクラ(捕食残渣)のようです。 

♀は食後の身繕いを始めました。 
左右の触角を同時に足で拭ったり、同側の脚を互いに擦り合わせたりしています。 
残念ながら、後ろ姿では化粧シーンがよく見えません。 

次に、♀は立ち止まると、マウントした♂を後脚を使って払い落とそうと暴れ始めました。(@1:57〜) 
♂はじゃじゃ馬に乗ったロデオのように、♀から振り落とされまいと必死にしがみついたままで、交尾を続けます。(♂交尾器を挿入したまま。) 
農道を断続的に走り回った後で、再び♀が暴れ始めました。 
♀が激しく暴れても、♂の細い陰茎が折れたり外れたりすることはありませんでした。

ニワハンミョウ♀の大顎の先端が黒いので、獲物のアリをまだ咥えたままのように誤解しがちですが、正面からしっかり見ると何も食べていないことが分かります。 


また交尾中の♀♂ペアを見つけて新たに動画を撮り始めました。(@2:45〜) 
同一ペアの続きなのか、覚えていません。 
鞘翅の白紋を見る限り、同一ペアに見えます。 
しかし鞘翅の色が♀♂共に赤系なので、さっきとは別のペアのような気もするのですけど、光の当たる角度によって構造色の見え方が変わってくるのかもしれません。 

♀が♂との交尾を早く打ち切ろうと暴れているときに、左から別個体が乱入しました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@4:13〜) 
新参者のニワハンミョウは、鞘翅が緑色っぽくて、上唇や大顎が白っぽいので、どうやら♂のようです。 
てっきり「あぶれ♂」が乱入して♀の争奪戦が始まるかと期待したのですが、ニアミスしても何事もなく離れて行きました。 
交尾していること自体が、最強の配偶者ガードになっているのかもしれません。(あぶれ♂に勝ち目なし) 

♂を振り落とそうと暴れながら歩き続ける♀は、次に路上に落ちていたゴミを咥えたものの、数口咀嚼しただけですぐに吐き出して捨てました。(@5:53〜) 
アリのように素早く逃げる獲物が相手ですから、たとえゴミであっても、餌らしい物体を見つけたら、反射的に噛み付いて口に入れてしまうのでしょう(誤認捕食)。 
このゴミはもしかすると、別個体のニワハンミョウが吐き捨てた食べ残し(残渣)かもしれません。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@5:58〜) 

路上を徘徊する交尾ペアと別の単独個体がまたすれ違いました。 
ニアミスしても小競り合いにはなりませんでした。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@6:47〜) 
あまりにも一瞬のすれ違いで、相手の性別を見分けられませんでした。 
交尾中の♀♂ペアは、路肩の土壌がある地点に辿り着いてから、舗装路に引き返しました。 


【考察】
ニワハンミョウ♀♂の交尾行動は初見です。
交尾を早く打ち切りたい♀の行動と、必死で交尾を続ける♂が、ロデオを見ているようで面白かったです。
重い♂を背負ったままでは敏捷なアリを狩るのに邪魔(足枷)になりますし、鳥などの天敵(捕食者)に襲われたときも逃げ足が遅くなってしまいます。 
つまり♀にとって、いつまでも交尾を続ける♂は大迷惑です。

一方♂としては、たとえ♀と交尾できても自分の精子が確実に次世代に受け継がれるとは限りません。 
♀が産卵するまでライバル♂との浮気を防ぐ必要があり、交尾時間が長くなるのでしょう。 
昆虫の種類によっては、♂が前回に交尾したライバル♂の精子を♀の体内から陰茎を使って掻き出したり、自分の精子を大量に送り込んで精子置換したりしてする例が知られています。(ハンミョウも同じなのかどうかは、知りません。) 
つまり雌雄で繁殖戦略の思惑が異なるために、典型的な性的対立が生じます。

ニワハンミョウの♀♂ペアが交尾を解消して離れる瞬間まで見届けられませんでした。 
♀が獲物を咀嚼している間はおとなしく交尾を受け入れてくれるなら、♂が♀に求愛給餌する行動が進化してもよさそうな気がします。 
しかし、ハンミョウが狩ったばかりの新鮮な獲物しか捕食しないのだとしたら、無理ですね。 

次は求愛から交尾に至る過程を観察したいものです。



【アフィリエイト】 

2025/04/14

ニワハンミョウの道教え:飛翔逃避行動【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2024年4月下旬・午後15:00頃・晴れ 

田園地帯の舗装された農道で多数のニワハンミョウ♀♂(Cicindela japana)が走り回っていたので、最後に路上から飛んで逃げる「道教え」行動を撮影してみました。 
引きの絵(広角)で動画を撮りながら農道を歩くと、路上に佇んでいたニワハンミョウが走って逃げ、次々に飛び立ちます。 
ハンミョウ類は低空で短距離を飛ぶだけなので、歩行者の前方で連続して飛ぶことになります。 
擬人化すると、まるで道案内をしてくれているように見えます。 
ハンミョウの仲間が俗名で「ミチオシエ(道教え)」と呼ばれる所以です。 

ニワハンミョウが飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画(1/8倍速)でも撮ってみました。(@0:36〜) 
同行者や助手が居なければ、どうしても三脚が必要になります。 
本格的な三脚は重いのでこの日は持参しなかったのですが、ミニ三脚をカメラバッグの底に入れっぱなしだったことを思い出しました。 
少し離れた位置から路上に腹這いになってバックモニターを見ながら素早く画角を決め、録画開始してから被写体のニワハンミョウに歩み寄ると、すぐに飛び去ります。 
カメラのバックモニターがバリアングルでないのが、こういうときに不便でなりません。 
複数個体を次々に撮影。 
横長の画角で飛び去るニワハンミョウの後ろ姿を撮ると、画面の縦方向に逃げる動きを長く撮れません。 
縦向き動画で撮るべきだったかもしれません。 
それでも引きの絵で横から撮れば、対角線状に飛ぶシーンを長く撮れます。 

私が歩いて近づくと、警戒したニワハンミョウはくるっと素早く方向転換してから、遠ざかるように飛び立ちます。 
大回りしてからハンミョウに背後から近づけば、カメラに向かって飛んでくれたかもしれませんね。 
(今回の幅が狭い農道では無理でした。) 

ニワハンミョウが地味な色の鞘翅(前翅)を広げると、腹背の色は目の覚めるほど美しいメタリック・グリーンでした。 
これはナミハンミョウでも同じでした。
スーパースローでも羽ばたきがあまりにも早かったので、動画編集で更に遅くした1/40倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:21〜) 


2025/04/11

路上でアリを次々と狩り、捕食後に残渣を吐き捨てるニワハンミョウ

 

2024年4月下旬・午後13:05頃・くもり 

山間部の田園地帯で舗装された農道をニワハンミョウCicindela japana)が何匹も走り回っていました。 
どの個体を観察すべきか目移りしてしまうのですが、とりあえず選んだ個体を動画に撮り続けると、複数個体の捕食シーンが撮れました。 

頭楯と大顎の色から、おそらく♀だと思います。(♂なら白いはず)
大顎を開閉しながら路上に佇んでいたニワハンミョウ♀が急に方向転換したり走り出したりするので、見失いそうになります。 
歩く方向はまちまち(ランダム・ウォーク)で、♀の場合は獲物を探し歩いているようです(探餌行動)。 

路肩に駆け込むと、逃げる獲物を素早く狩りました。 
枯草の茂みが邪魔でよく見えなかったのですが、狩った獲物の正体は黒いアリのワーカー♀だったようです。 
種名は不詳ですが、ごく普通種のクロヤマアリまたはクロオオアリと思われます。 
アリジゴクのように獲物を待ち伏せするのではなく、敏捷に逃げるアリを積極的に追いかけて狩るとは驚きです。
参考サイト:アリを捕らえたニワハンミョウ@海野和男デジタル昆虫記 

ニワハンミョウが鋭い鋸歯のある大顎を左右に大きく開閉して獲物を咀嚼している間にも、あちこち忙しなく動き回ります。 
獲物を噛み砕いて固形物として飲み込むのではなく、獲物の体液を吸汁しているだけでした。 
ハンミョウの場合、この食事法を体外消化と呼んで良いのかどうか、AIで調べても分かりませんでした。 
獲物を咥えたまま、ときどき硬い路面に打ち付けているのは、獲物を噛んで丸めながら咥え直しているのか、それともアリを押し潰して殺し、滲み出る体液を吸汁しているのかもしれません(広い意味で咀嚼行動、道具使用)。 

餌食となったアリはニワハンミョウの牙に噛まれたまま暴れていますが、蟻酸による反撃がハンミョウに全く効かないのは不思議です。 
ニワハンミョウに襲われてもアリはしばらく生きていて、必死に暴れています。 
つまりニワハンミョウは、蟻酸による反撃を封じるために仕留めたアリを即死させている訳ではありません。 
ニワハンミョウが噛みついているのはアリの急所の頭部ではなく胸部?でした。 
アリが大顎で反撃したくても届きません。 

狩りおよび捕食シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@3:15〜)
狩ったアリをしばらく噛みしめて体液を吸い尽くすと、消化できないクチクラの残渣を吐き捨てました。(@8:15〜) 
そして次の獲物を探しに行きます。 

路上でアリをくちゃくちゃ噛みながら佇んでいる個体♀a(鞘翅が赤色っぽい)に対して、同種の別個体♂b(鞘翅が緑色っぽい)が交尾しようと襲いかかることがありました。 
鞘翅の色が違いますけど、同種のニワハンミョウです。 
スロー再生すると、♀aは急いで羽ばたいて飛び去っていました。(@2:44〜) 
私はニワハンミョウの性別判定がいまいち覚束ないのですが、ハンミョウの成虫同士で獲物を強奪する行動があるとは思えないので、♀♂の求愛および交尾拒否だと解釈しました。 

その後もかなり粘ったのですが、なぜかアリ狩りの動画が撮れなくなりました。 
いきなり最初に撮れたビギナーズラックの動画のクォリティーを越えることができません。 
ニワハンミョウがこの農道で獲物のアリを狩り尽くしてしまったのでしょうか? 
満腹したらもう狩りはしなくなり、配偶行動に切り替えるのかな? 
もしかすると、アリを狩るのに適した時間帯があって、それを過ぎると獲物のアリが巣外で活動しなくなるのかもしれません。 

次はニワハンミョウ♀♂の配偶行動に注目します。 
つづく→ 


【アフィリエイト】 

2025/03/21

早春のミズキから滴るオレンジ色の樹液に集まり吸汁するケシキスイの仲間

 

2024年4月上旬・午後13:30頃・晴れ 

細い用水路沿いにそびえ立つ落葉性高木の幹から鮮やかなオレンジ色の樹液が大量に滲み出していて、早春の二次林で非常に目立っていました。 
幹の数カ所の傷口から樹液が垂れ落ちながら、発酵してブクブクと泡立っています。 
樹冠を見上げると、枝先の冬芽から少しだけ若葉が芽吹き始めていました。 
樹種はおそらくミズキと思われます。 

カメラを上から下にパンしながらゲル状になった橙色の樹液を動画に撮っていると、ケシキスイの仲間(ケシキスイムシ科)と思われる微小な甲虫が計3匹写っていました。 
同定のために採集したかったのですけど、幹の高い位置だったので、手が届きませんでした。
図鑑『くらべてわかる甲虫1062種』に掲載された写真p80と見比べると、素人目にはホソコゲチャセマルケシキスイ(Amphicrossus hisamatsui)またはナガコゲチャケシキスイ(Amphicrossus lewisi)が似ていると思うのですが、どうでしょうか?
例えばホソコゲチャセマルケシキスイは、「6〜8月クヌギやコナラの樹液に集まる。いつも樹液に浸かっている」と記されていました。

余談ですが、昆虫分類学でNitidulidaeに対応する和訳としてケシキスイ科とケシキスイムシ科の両方が使われているらしく、依然として統一されていないようです。
和名ならともかく科レベルで表記の揺れがあるのでは、情報の検索や比較に支障をきたして困りますね。

ケシキスイの他には薄い翅を持つ黒っぽいハチ?ハエ?の仲間も動画にチラッと写っていたのですが、撮影中の私はまったく気づかずにスルーしてしまいました。 

「オレンジ色の樹液」でネット検索すると、ミズキの樹液がヒットしました。 
もともとミズキの樹液は無色透明でさらさらした液体なのですが、早春の時期にはよくオレンジ色になるそうです。
Perplexity AIに解説してもらいました。(細かい点で間違いがあるかもしれませんので、お気づきの方はご指摘ください。)

ミズキの樹液が透明からオレンジ色に変化する現象は、微生物の活動と環境条件の相互作用によって起こります。主な要因を以下のように整理できます:

色変化のメカニズム

  1. 酵母菌の初期繁殖
    ミズキの樹液は春先に糖分を多く含み、透明でサラサラした状態で分泌されます。これにファフィア酵母(Phaffia rhodozyma)が付着し、オレンジ色の色素(アスタキサンチン)を生成します。この段階で樹液は白濁し始めます57

  2. カビの二次繁殖
    酵母が樹液の糖分を消費すると、フザリウム属のカビ(Fusarium aquaeductuumなど)が優占種に変化。このカビは赤~オレンジ色の色素を産生し、樹液を濃いオレンジ色に変えます14

  3. 微生物の共生関係
    酵母とカビは樹液内で「スライム・フラックス」と呼ばれるコロニーを形成。触るとプニプニしたゲル状になり、表面にヒダ状の構造が発達します23

色変化の条件

条件影響
糖分濃度ミズキの樹液は糖分が多く(特に春)、微生物の繁殖に最適
温度15-25℃の温暖な気候で活発に繁殖(春先に多く観察)24
酸素量樹液が滴り落ちる際に空気に触れ、好気性微生物が活性化
時間経過分泌後2-3日で酵母が繁殖→1週間程度でカビが優占種に16
物理的損傷剪定や虫食いによる傷口から樹液が持続的に分泌される必要あり38

色の持続性

オレンジ色は一時的な現象で、樹液の分泌が止まると干からびて黒っぽく変化します1。また、湿度が低い環境では色素生成が抑制され、色変化が起こりにくくなります4

生物学的意義

この現象は、樹木の傷口を微生物で覆うことで病原菌の侵入を防ぐ「生物学的防御機構」と推測されています8。オレンジ色の樹液はケシキスイなどの昆虫を誘引し、彼らが樹液に集まることで微生物の拡散を助ける共生関係も存在します24



【アフィリエイト】 

2025/02/18

山地の路上を歩くオオセンチコガネ

 

2023年10月上旬・午後13:15・くもり 

つづら折れの峠道でオオセンチコガネPhelotrupes (Chromogeotrupes) auratus auratus)が舗装路をゆっくり歩いて横断していました。 
金属光沢(メタリック)に輝く赤紫色がいつ見てもきれいですね。 
近くを探しても、獣糞は見つかりませんでした。 

最後にクロヤマアリFormica japonica)のワーカー♀とニアミス。 


【アフィリエイト】 

2025/02/02

スギ倒木横のタヌキ溜め糞場に集まる虫たち:オカダンゴムシ♂、ワラジムシ、クロボシヒラタシデムシの幼虫および成虫、サビハネカクシ、糞虫など

 

2023年6月下旬・午後14:55頃・晴れ 

ホンドタヌキ♀♂(Nyctereutes viverrinus)が平地のスギ防風林に残した溜め糞場phを定点観察しています。 
すぐ横に風倒木が転がっているのが目印です。 
新鮮な糞が追加されていて、
糞の一部には未消化の獣毛が混じっています。 
換毛期に毛繕いしたタヌキが自分の体毛を飲み込んでしまったのか、それとも動物の死骸を食べた(腐肉食)のか、野ネズミなど小型哺乳類を捕食したのでしょうか? 
糞をDNA解析すれば、たちどころに分かるはずです。 

糞食性の様々な虫が集まっていました。 
動画に登場した虫たちを列挙してみます。 

1匹のオカダンゴムシ♂(Armadillidium vulgare)が溜め糞の匂いに誘引されて来ました。 
背中に斑点が無くて真っ黒(黒光り)なので、♂と判明。 

ワラジムシPorcellio scaber)も何匹かいました。 

クロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)の成虫だけでなく幼虫もいました。 
写真にはオオヒラタシデムシNecrophila japonica)の成虫も写っていました。 

小型の糞虫が糞塊に潜りかけていたのですが、全身を見せてくれず、種類を見分けられませんでした。(センチコガネではない) 

サビハネカクシOntholestes gracilis)と、別種のハネカクシ(種名不詳)もいました。 
肉食性のハネカクシ類がダンゴムシやワラジムシを襲って捕食することはありませんでした。 
もっぱらハエの幼虫(蛆虫)を捕食するのでしょう。 

ショウジョウバエのような微小なハエも来ていたのですが、真面目に同定していません。

2025/01/17

ホンドタヌキの溜め糞に群がる虫たちの活動【10倍速映像】

 



2023年5月下旬・午前11:30〜午後13:10頃・ 

平地のスギ防風林に残されたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の大きな溜め糞場wbc1を定点観察しています。 
実際ここに複数個体のタヌキが代わる代わる通って排便していることをトレイルカメラで確認済みです。 

多種多様な食糞性の昆虫(および捕食者)が糞塊に群がっています。 
私が横に立っている間は警戒して隠れてしまう虫もいるので、三脚を立てて微速度撮影で長撮りしてみました。 
(その間、私は現場を離れていました。) 
鬱蒼としたスギ林の林床は、晴れた昼間でもかなり薄暗いので、予めカメラの設定でゲインを上げてから撮影します。 
「うんちレストラン」に集まる魑魅魍魎が正午前後(1時間40分間)に活動する様子を10倍速の早送り映像でご覧ください。 

最も目についたのは、クロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)の成虫および幼虫です。 
多数の成虫が溜め糞上で活発に徘徊し、配偶行動(求愛および交尾)を繰り広げていました。 
その恋愛ドラマだけ注目しても、交尾(マウント)中の♀♂ペアにあぶれ♂がしつこく横恋慕したりして、なかなか面白いです。 
♂は♀の産卵まで交尾後ガード(配偶者ガード)しているのかもしれません。 
クロボシヒラタシデムシの幼虫は三葉虫のような形ですが、幼虫よりも成虫の方が動きが素早い(歩行速度が早い)です。 


途中から1匹のヨツボシモンシデムシNicrophorus quadripunctatus)が糞塊の中央部から表面に現れて徘徊を始めました。(@6:03〜) 
最後はタヌキの溜め糞場wbcから離れて行きました。 
もしかして産卵を済ませた♀なのかな? 


糞塊を時計盤と見立てたときに、3時の位置から青紫色の金属光沢があるセンチコガネPhelotrupes laevistriatus)が1匹、溜め糞の表面に顔を出てました。(@1:51〜) 
幼虫の餌として自分の巣穴にタヌキの糞を搬入するかと思いきや、すぐに奥へ引っ込んでしまいました。 
その後もときどき巣口に出入りしているものの、頭隠して尻隠さずの状態です。 
どうやら巣穴を奥に掘り広げているようです。 
周囲を徘徊する他の虫たちも、隙あらばセンチコガネの巣穴に潜り込もうとしています。(穴があったら入りたい) 


ハネカクシ類の成虫も溜め糞上をうろついていますが、肉食性で動きが素早いために、早回し映像では分かりにくいです。 
アカバトガリオオズハネカクシ(旧名アカバハネカクシPlatydracus brevicornis)かな? 


食糞性のハエ類は、メタリックな青色や緑色に輝くキンバエ類が少数ながらも来ていました。 
地味なハエ(ニクバエの仲間?)は種類を見分けられませんでした。 
他には微小なハエが多数、溜め糞上で翅を開閉誇示しています。 
溜め糞に産み付けられたハエの卵から孵化した幼虫(蛆虫)が多数、蠢いているはずですが、この映像では小さくてよく見えません。 
ウジ虫は油断していると、ハネカクシの成虫に捕食されてしまいます。 

ときどき黄色のハエが溜め糞の上を低空で飛び回っていますが、糞塊に着陸することはありません。 
ベッコウバエかもしれませんが、おそらくキイロコウカアブPtecticus aurifer)でしょう。 


微小なアリ(種名不詳)も集まっていました。 


【アフィリエイト】

2024/09/05

ヤブガラシの花蜜を吸うコアオハナムグリとセグロアシナガバチ♀

 

2023年9月上旬・午後14:15頃・晴れ 

道端に蔓延るヤブガラシのマント群落でセグロアシナガバチPolistes jokahamae)のワーカー♀およびコアオハナムグリGametis jucunda)が訪花していました。 
意外にも、コアオハナムグリとヤブガラシの組み合わせは初見です。 



採寸していませんが、このセグロアシナガバチはとても小型のワーカー♀でした。 
連日の酷暑で獲物が取れず(獲物となるイモムシが少ない)、小型のまま成虫が羽化したのだろうと推測しました。 

ヤブガラシの花から花へ忙しなく歩き回るセグロアシナガバチ♀が、じっとしているコアオハナムグリの背中に乗って踏みつけたのですが、コアオハナムグリは特に気にする様子もありません。 
セグロアシナガバチはコアオハナムグリを獲物として認識してませんし、コアオハナムグリは脚を高々と持ち上げる威嚇姿勢になりませんでした。 

少し飛んで隣の花に移動したセグロアシナガバチ♀は、蜜量が多い花を見つけると、じっくり吸蜜を始めました。 


【アフィリエイト】 




2024/07/09

池で溺れたノシメトンボ♂を捕食するクロゲンゴロウの群れ

 

2023年10月上旬・午後14:20頃・くもり時々晴れ(小雨)

山麓にある小さな池に久しぶりに来てみると、ガマなどの抽水植物が生えていて、水面で何かが暴れていました。 
よく見ると、溺れかけたノシメトンボ♂(Sympetrum infuscatum)の胸背に水面下でクロゲンゴロウCybister brevis)が食いついていました。 

すぐ隣りにあるもう一つの池で早春にクロゲンゴロウを見たのが生まれて初めてで、今回が二度目の出会いでした。 
捕食行動はもちろん初見で、興奮しながら長々と撮影しました。

そもそもノシメトンボ♂がなぜ池で溺れたのか謎です。 
寿命で弱っていたのか、それとも羽化直後なのかな? 
ノシメトンボ♀は水のある場所には産卵しないはずなのに、♂は水辺で交尾相手の♀を待ち伏せするとは思えません。

関連記事(3、4、7、9年前の撮影)▶  


見つけたときにはノシメトンボ♂はまだ生きていて、脚を動かしたり翅を力なく羽ばたかせたりして暴れていました。 
しかし、水中から空に飛び立つことは不可能で、もはや逃れることはできません。 

撮影中は気づかなかったのですけど、水面下に沈んだガマ(?)の枯れ葉にヤゴ(種名不詳)が捕まっていました。 
断末魔のノシメトンボ♂が水面で激しく羽ばたいて波紋が広がったので、ヤゴは水中に潜って逃げてしまいました。 
ヤゴも肉食性なのに、獲物の争奪戦に参戦しませんでした。 
丈夫な装甲に守られたクロゲンゴロウには勝ち目がないのでしょうか。 

しばらくすると、クロゲンゴロウaはトンボの右後翅を根元から食い千切りました。 
獲物から取り外した翅だけ抱えて持ち去ろうとしても、トンボの翅は浮力があるので、クロゲンゴロウは潜水できません。 
切除した翅の根元に付いた肉片を齧ってから手放しました。 
獲物の本体を見失ったようで、しばらく水中をうろうろと泳ぎ回っています。 

その間に別個体bのクロゲンゴロウが左から泳いで登場し、獲物に食いつきました。 
やはり獲物の胸背に背後から噛み付いています。 
細長い口吻を獲物に突き刺して体外消化するカメムシ目の水生昆虫と違って、ゲンゴロウの仲間は獲物を本当に齧って咀嚼して食べてしまいます。 

クロゲンゴロウbの背後から先客の個体aが戻ってきました。 
獲物をめぐる争奪戦が始まり、ぐるぐると水中を追い回しました。 
後脚を広げて互いに相手を蹴ろうとしても、流線型の体なので滑って打撃の効果はなく、獲物を独り占めするのは無理なようです。 
ようやく折り合いをつけると、仲良く並んで獲物の腹背の上部を齧り始めました。 
よく見ると、2匹が後脚を伸ばして互いに牽制しながら獲物の別々の部位を捕食しています。 

池に日光が射すと、クロゲンゴロウの鞘翅が光沢のある深緑色と判明しました。 
腹端(鞘翅の下)からときどき泡が出ているのは、呼吸のための気泡なのでしょう。 

餌食となったトンボは絶命したのか、暴れなくなりました。 
2匹のクロゲンゴロウが互いに逆方向から獲物に食いついています。 
1匹が獲物から一旦離れ、泳いで戻ってこようとすると、ライバルと争奪戦になりました。 
互いに干渉しないように位置取りする必要があります。 

クロゲンゴロウがノシメトンボ♂の胸部を食べ進んだ結果、その頭部が切り離されました。 
(断頭の瞬間を撮り損ねてしまいました。 )
強い風が吹くと、水面にぷかぷか浮いているノシメトンボ頭部が流されていきます。 
クロゲンゴロウは獲物の生首には見向きもしないで胴体にかじりついています。 
ノシメトンボの脚も胸部から食いちぎられて外れ、水中のガマ?枯れ葉の上に落ちていました。 

後半になって、3匹目のクロゲンゴロウcが獲物に集まっていたことに気づきました。 
ときどき三つ巴の争奪戦になります。 
1匹のクロゲンゴロウがライバルを出し抜いて獲物を持ち去ろうとしても、獲物の傷口から体液が水中に滲み出るので、その匂いをライバルが嗅ぎつけてしまうようです。 

水生昆虫に詳しい人なら、クロゲンゴロウの性別を外見で見分けられるのですかね? (教えて欲しいです。)
今回は捕食行動のみで、求愛や交尾などの配偶行動は全く見られませんでした。 

獲物が食べ尽くされるまで一部始終を微速度撮影したかったのですが、この日は三脚を持参していなくて残念でした。 
おまけに小雨がぱらつき始めてカメラが濡れそうになり、気が気ではありませんでした。
 
次回はトンボなどの生き餌を池に投入して溺れさせれば、暴れる動きに反応してゲンゴロウなどの捕食者が集まってくる様子を観察できるかもしれません。 
撮影後にクロゲンゴロウを捕獲しようか迷ったのですが、採集用の網も持ってきていませんでした。 
被っていた帽子で掬えば採れたかな?
レッドデータブックによれば、クロゲンゴロウは山形県で絶滅危惧種Ⅱ類(VU) に分類されているらしいので、採集禁止かもしれません。

【アフィリエイト】
 

2024/07/07

真っ二つに切断されたヒラタクワガタ♀変死体の謎

2023年9月下旬 

里山で急斜面の細い山道を登っていたら、クワガタの死骸が転がっていました。 
周囲は雑木林です。 
腹部から分離した頭胸部がすぐ隣に落ちていました。 
鳥に捕食されかけたのかな? 
体を真っ二つに切り離されて死んだのか、それとも死後に分解されたのか、不明です。
クワガタの死骸にアリも群がっていないのは不自然ですけど、死後間もない新鮮な死骸なのかもしれません。 

クワガタ類に疎い私は、てっきり普通種のコクワガタ♀だと初め思ったのですが、どうやらヒラタクワガタ♀(Dorcus titanus)のようです。 

参考サイト:クワガタ メスの見分け方
・頭部と胸部の縁が丸く連続。 胸部は真ん中付近が一番幅が広い。 
・前肢脛節のふくらみが大きくバチ状に広がり外縁が丸まったラインを描く。
ヒラタクワガタだとしたら、私にとって嬉しい初見になります。(♂も見つけたことがありません) 
山形県の2015年レッドリストでは「情報不足」とされています。
分布の北限は日本海側は山形県酒田市らしいのですが、雪国では住みにくくて個体数が少ないのかな?
熱帯地方出身のため幼虫が冬期零度以下の温度に耐える耐寒越冬状態になれない (wikipediaより引用)

近年の地球温暖化や暖冬で分布を北に広げているのかもしれません。

wikipediaでヒラタクワガタの生態に関する記述を読むと、
気性は大変荒く、大顎で挟む力は強烈であり、この大顎が凶器となってオスがメスを殺すことも多い。 
とありますが、ストレスの多い飼育下ならともかく野生状態でも同種の♀殺しがあるのでしょうか?
そんな野蛮な形質が進化の過程で淘汰されずに残っている理由が気になります。
求愛しても交尾拒否した♀を殺してしまうのですかね?


【アフィリエイト】 
カブトムシとクワガタの最新科学 (メディアファクトリー新書)
大顎の内歯を見るため、挟まっていた枯葉の欠片を取り除いた。
発見時の状況。採寸し忘れました。裏返して腹面の写真も撮るべきでしたね。

ランダムに記事を読む