2023年10月上旬・午後14:20頃・くもり時々晴れ(小雨)
山麓にある小さな池に久しぶりに来てみると、ガマなどの抽水植物が生えていて、水面で何かが暴れていました。 よく見ると、溺れかけたノシメトンボ♂(Sympetrum infuscatum)の胸背に水面下でクロゲンゴロウ(Cybister brevis)が食いついていました。
すぐ隣りにあるもう一つの池で早春にクロゲンゴロウを見たのが生まれて初めてで、今回が二度目の出会いでした。
捕食行動はもちろん初見で、興奮しながら長々と撮影しました。
そもそもノシメトンボ♂がなぜ池で溺れたのか謎です。
寿命で弱っていたのか、それとも羽化直後なのかな?
ノシメトンボ♀は水のある場所には産卵しないはずなのに、♂は水辺で交尾相手の♀を待ち伏せするとは思えません。
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見つけたときにはノシメトンボ♂はまだ生きていて、脚を動かしたり翅を力なく羽ばたかせたりして暴れていました。
しかし、水中から空に飛び立つことは不可能で、もはや逃れることはできません。
撮影中は気づかなかったのですけど、水面下に沈んだガマ(?)の枯れ葉にヤゴ(種名不詳)が捕まっていました。
断末魔のノシメトンボ♂が水面で激しく羽ばたいて波紋が広がったので、ヤゴは水中に潜って逃げてしまいました。
ヤゴも肉食性なのに、獲物の争奪戦に参戦しませんでした。
丈夫な装甲に守られたクロゲンゴロウには勝ち目がないのでしょうか。
しばらくすると、クロゲンゴロウaはトンボの右後翅を根元から食い千切りました。
獲物から取り外した翅だけ抱えて持ち去ろうとしても、トンボの翅は浮力があるので、クロゲンゴロウは潜水できません。
切除した翅の根元に付いた肉片を齧ってから手放しました。
獲物の本体を見失ったようで、しばらく水中をうろうろと泳ぎ回っています。
その間に別個体bのクロゲンゴロウが左から泳いで登場し、獲物に食いつきました。
やはり獲物の胸背に背後から噛み付いています。
細長い口吻を獲物に突き刺して体外消化するカメムシ目の水生昆虫と違って、ゲンゴロウの仲間は獲物を本当に齧って咀嚼して食べてしまいます。
クロゲンゴロウbの背後から先客の個体aが戻ってきました。
獲物をめぐる争奪戦が始まり、ぐるぐると水中を追い回しました。
後脚を広げて互いに相手を蹴ろうとしても、流線型の体なので滑って打撃の効果はなく、獲物を独り占めするのは無理なようです。
ようやく折り合いをつけると、仲良く並んで獲物の腹背の上部を齧り始めました。
よく見ると、2匹が後脚を伸ばして互いに牽制しながら獲物の別々の部位を捕食しています。
池に日光が射すと、クロゲンゴロウの鞘翅が光沢のある深緑色と判明しました。
腹端(鞘翅の下)からときどき泡が出ているのは、呼吸のための気泡なのでしょう。
餌食となったトンボは絶命したのか、暴れなくなりました。
2匹のクロゲンゴロウが互いに逆方向から獲物に食いついています。
1匹が獲物から一旦離れ、泳いで戻ってこようとすると、ライバルと争奪戦になりました。
互いに干渉しないように位置取りする必要があります。
クロゲンゴロウがノシメトンボ♂の胸部を食べ進んだ結果、その頭部が切り離されました。
(断頭の瞬間を撮り損ねてしまいました。 )
強い風が吹くと、水面にぷかぷか浮いているノシメトンボ頭部が流されていきます。
クロゲンゴロウは獲物の生首には見向きもしないで胴体にかじりついています。
ノシメトンボの脚も胸部から食いちぎられて外れ、水中のガマ?枯れ葉の上に落ちていました。
後半になって、3匹目のクロゲンゴロウcが獲物に集まっていたことに気づきました。
ときどき三つ巴の争奪戦になります。
1匹のクロゲンゴロウがライバルを出し抜いて獲物を持ち去ろうとしても、獲物の傷口から体液が水中に滲み出るので、その匂いをライバルが嗅ぎつけてしまうようです。
水生昆虫に詳しい人なら、クロゲンゴロウの性別を外見で見分けられるのですかね? (教えて欲しいです。)
今回は捕食行動のみで、求愛や交尾などの配偶行動は全く見られませんでした。
獲物が食べ尽くされるまで一部始終を微速度撮影したかったのですが、この日は三脚を持参していなくて残念でした。
おまけに小雨がぱらつき始めてカメラが濡れそうになり、気が気ではありませんでした。
次回はトンボなどの生き餌を池に投入して溺れさせれば、暴れる動きに反応してゲンゴロウなどの捕食者が集まってくる様子を観察できるかもしれません。
撮影後にクロゲンゴロウを捕獲しようか迷ったのですが、採集用の網も持ってきていませんでした。
被っていた帽子で掬えば採れたかな?
レッドデータブックによれば、クロゲンゴロウは山形県で絶滅危惧種Ⅱ類(VU) に分類されているらしいので、採集禁止かもしれません。
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