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2024/10/14

ワタ(綿花)の種子散布を考える

2023年10月上旬・午後 

民家の庭に置かれた植木鉢にフワフワの白い綿が実っていました。 
ワタの綿花を実際に見るのは初めてです。 
綿花と言っても花ではなく、熟して裂けた果実(蒴果)から出てきた綿毛です。 
天然コットンの手触りや中に含まれる種子を調べてみたかったのですが、他人様の庭に勝手に入れないので、公道から写真に撮るだけにしました。 
夏に咲くワタの花(アオイ科)を見逃したのが残念です。 

綿花で思い出すのは、幼少期に図書室で読んだ『アンクル・トムの小屋』というストウ夫人の小説です。
米国南部の大規模なプランテーションで黒人奴隷に綿摘み(綿花の収穫)をさせたという知識をこの本から得たので、てっきりワタは南国の植物だと思い込んでました。
日本のこんな北国(雪国)でもワタが育つとは知りませんでした。
現状では日本で使われる綿(コットン)の国内自給率はほぼ0%で、全て輸入に頼っているのだそうです。
国産のワタを栽培しようという試みが少しずつ広がっているらしい。

さて、ワタの種子散布について考えてみましょう。 
植物の白い綿毛と言えば、てっきり風散布されるための適応進化なのかと初めは思いました。 
しかし念のためにネット検索で調べてみると、綿花の種子は比較的重く、風に乗って遠くまで飛ぶことができないのだそうです。 
むしろヤナギの綿毛(柳絮りゅうじょ)のように、水に浮いて水流散布されるためのものと考えられているそうです。 
もしかすると、「ひっつき虫」のように、通りかかった動物の毛皮に綿毛ごと絡みついて種子が遠くに運ばれる可能性もありそうです。(動物付着散布)
誰か実験してみて下さい。

2024/10/07

ナツメの落果を拾って種子を採集

前回の記事:▶ ナツメの種子散布者としてのホンドタヌキ 


2023年12月上旬 

民家の庭に植栽されたナツメの木を新たに見つけました。 
樹高が高くなり過ぎないように上部が伐採されていて、痛々しい樹形です。 
完全に落葉し終わった枝先に、茶色に熟した核果が鈴なりに実っています。 
木の下には多数の落果が散乱していました。 

撮れた写真を見ると、クロヤマアリFormica japonica)のワーカー♀が1匹、ナツメの落果に乗っていました。 
撮影したときには気づかず、ナツメの果汁を吸汁しに来ていたのかどうか、不明です。 

スギ防風林にあるタヌキの溜め糞場wbcに未消化のまま排泄されたナツメの果皮および種子がまとまって見つかったことから、ホンドタヌキがこの庭まで遠征してきてナツメの落果を食べ漁った可能性があります。 
2点間の直線距離は約550mでした。
もっと遠い地点(約800m)にもナツメの庭木がありました。
トレイルカメラを設置して、秋の夜長にナツメの落果を食べに来る野生動物を撮影できたら面白そうです。 

クロヤマアリ♀が1匹、ナツメの落果に乗っていました。

公道に転がっていたナツメの落果を3個だけ拾って持ち帰りました。 
果肉を水で洗い流して細長い種子を取り出し、よく乾燥させました。 
ナツメの種子の標本として保存します。 
今後、野生動物の糞分析や胃内容物調査で種子散布を調べる際に比較対照となります。 

山渓ハンディ図鑑4『樹に咲く花:離弁花2』でナツメを調べると、
果実/核果。長さ1.5〜2.5cmの楕円形で、10〜11月に暗紅色に熟す。核は卵形〜長楕円形で両端が鋭くとがり、不規則な縦の溝がある。核は長さ1〜1.2cm(p511より引用)

私が採取した種子は、図鑑の記述よりも少し大きい(長い)ようです。



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2024/09/27

晩秋に咲いたノジスミレの花(狂い咲き・返り咲き)

2023年11月上旬

晩秋の殺風景な田んぼの畦道で、季節外れに咲いたスミレの花をあちこちに見つけました。 
「山形県の平地に咲くスミレの仲間で、花が紫色で葉が細長い種類」という条件で調べると、どうやらノジスミレのようです。 
ノジスミレの分布の北限は秋田県で、本来の花期は春(3月~5月)らしいのですが、これは狂い咲きなのでしょうか。 












ネット検索すると、森林インストラクター東京会による「晩秋のスミレ…」と題した記事がヒットしました。
 御存知のようにスミレの種類は春に咲く花の代表です。其れが11月という、秋も終わりの此の時期に咲いていました。   
此の現象は俗に言う”狂い咲き”ではありません。”返り咲き”と言います。   
返り咲きは夏に干ばつが続く等の環境の悪化、あるいは温暖な天候が続くと咲きやすくなります。今回のスミレ達は何れも陽当りは良い環境でした。しかも、今年の夏は猛暑、返り咲きが起こり易い条件が揃っていたのかもしれません。(2002年11月13日)
確かに2023年の夏は記録的な酷暑で降水量も少なかったです。 


関連記事(7年前の撮影)▶ 農道の枯草に産卵するウラギンヒョウモン♀ 

実はこの農道で以前、ヒョウモンチョウの仲間♀が秋の枯草に産卵していました。 
ヒョウモンチョウ幼虫の食草はスミレなので、この農道には必ずスミレが自生しているはずです。 
当時(9月下旬)は農道や畦道にスミレの花が咲いておらず、食草の有無を確認できませんでした。 
7年ぶりに謎がようやく解けて、すっきりしました。 

個人的なフィールドノートを遡ってみると、2021年の11月上旬にも返り咲きのスミレの花を一輪だけ見つけていました。 
このときはスミレの葉が泥で埋もれていたせいで、スミレの種類を同定できませんでした。
スミレの返り咲きが毎年のように見られるということは、「地球温暖化は一時的な異常気象ではなく、常態化しつつある」ということの傍証になるかもしれません。 
まだ観察例数が少ない(n=2)ので、これから地道に増やしていく必要があります。 


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2024/09/25

イチョウの種子(銀杏)を拾い集める

野生動物の糞に含まれる未消化の内容物を丹念に調べて食性を調べるのを糞分析といいます。 
種子散布、特に動物によって被食散布(周食散布)される植物の戦略に興味を持ち始めると、糞分析を避けて通ることはできません。 
手法としては単純で、糞塊を水で洗い流しながらザルで濾せば、消化されなかった種子や虫のクチクラ断片や小動物の骨などが得られます。 
次に、得られた種子の種類をひとつずつ同定するのが大変です。 
そのために実体顕微鏡を買う必要があります。
種子の図鑑も出版されているのですが、参照用として種子の標本を自前で用意する必要があります。 
予め、生息地の環境に自生する植物の種子を片っ端から集めなくてはいけません。 

タヌキは複数個体で溜め糞場を共有するので、大量の糞を一気に調べることができて好都合です。 
溜め糞場に通うタヌキの行動をこれまでトレイルカメラで監視してきたのですが、やはり糞分析も自分でやってみたくなります。 
動画の撮影と整理で手一杯の私はなかなか余力がなくて、糞分析は後回しになっています。 
それでも片手間で、身近な植物の種子を少しずつ集めることにしました。 



まず手始めに、イチョウの種子(銀杏)を拾い集めることにしました。 
子供の頃はそこら中にイチョウの木があり、秋になれば落果(銀杏)が取り放題でした。 
ところが銀杏の果肉が悪臭(糞便臭)を放つために人々から嫌われ、街路樹のイチョウ雌株は次々に伐採され、気づけば実をつけない雄株ばかりになりました。 


2024年1月中旬 
あちこち探し歩いて、銀杏が落ちているイチョウの街路樹をようやく見つけたのは、年が明けてからでした。 
歩道に植栽されたイチョウは完全に落葉しています。 
今年は暖冬で雪が積もらず、誰かがうっかり踏み潰したイチョウ落果は、例の異臭を放っています。 
昨今では、銀杏を拾う物好きが誰もいないのですね。

銀杏の匂いについて、昔から気になっていることがあります。
もしも銀杏の悪臭が糞便に化学擬態しているのだとしたら、食糞性のハエ類や糞虫などが集まってくるのではないか?と予想できます。
イチョウの落果を舐めたり産卵したりするハエ♀がいるでしょうか?
ところが、銀杏に集まるハエを私は今まで見たことがありません。
鋭い嗅覚をもつハエにとって、銀杏の匂いと糞便臭はまったく別物なのでしょうか?
それとも、銀杏に含まれる毒を虫が忌避しているのでしょうか? (※ 追記参照)
気温が下がって虫が活動を止める前の暖かな秋の日にイチョウの落果を重点的に見て回りたいのですが、前述のように銀杏を見つけるだけでも一苦労です。(絶滅危惧?)

閑話休題。
銀杏の果肉(正しくは外種皮)に素手で触れるとかぶれるので、注意が必要です。
手袋の代わりとして、持参したビニール袋を手に被せてから落果を掴み、袋を裏返しながら採集しました。 
持ち帰ってから果肉を洗い落とし、よく乾燥させました。 
イチョウ種子の標本として保管します。


山渓ハンディ図鑑5『樹に咲く花:合弁花・単子葉・裸子植物』でイチョウの種子について調べると、 
銀杏と呼ばれる。10〜11月に熟すと外種皮は黄色くなり、悪臭がする。中種皮は白くてかたく、2〜3稜がある。(p553より引用)


野ネズミやリスにイチョウの堅果を給餌してみて、殻を割って中身を食べたり貯食したりするのかどうか調べるのも面白そうです。 
野ネズミがイチョウの種子捕食者だとしたら、銀杏に含まれる毒に対する耐性があるのでしょうか?


イチョウの果実(堅果)が枝に実った状態の写真も過去に撮っていたので、ついでに掲載しておきます。
2018年11月中旬
 





















※【追記】
Copilotに質問してみたところ、以下の回答を得ました。 

銀杏(イチョウの種子)が臭いのは、進化的にいくつかの理由があります。 
 1. **外敵からの防御**: 銀杏の強烈な臭いは、他の動物に食べられないようにするための自衛手段です。この臭いは「酪酸」と「エナント酸」という物質によって引き起こされ、腐ったバターや足の臭いに似ています¹²。 
 2. **種子の拡散**: 一方で、臭いに惹かれる動物も存在し、その動物たちが銀杏を食べることで種子を遠くに運び、拡散する役割を果たします¹。 
 3. **恐竜との関係**: 銀杏の臭いは、かつて恐竜が食べていた時代からの名残とも言われています。恐竜が銀杏を食べ、そのフンを通じて種子を広げていたと考えられています²。 

このように、銀杏の臭いは進化の過程で生き残るための重要な役割を果たしてきたのです。 

ソース: Copilot との会話、 2024/10/2 
(1) 銀杏が臭いのはなぜ?イチョウ並木のにおいの原因と理由とは?. https://neirof.com/5083.html. 
(2) 銀杏が臭い理由は?恐竜と人間のおかげで生き延びた?チコちゃん. https://tmbi-joho.com/2023/10/13/chiko229-gin/. 
(3) 素朴な疑問 銀杏はなぜ臭い?強烈な香りの成分は? - ハルメク365. https://bing.com/search?q=%e9%8a%80%e6%9d%8f%ef%bc%88%e3%82%a4%e3%83%81%e3%83%a7%e3%82%a6%e3%81%ae%e7%a8%ae%e5%ad%90%ef%bc%89%e3%81%8c%e8%87%ad%e3%81%84%e3%81%ae%e3%81%af%e9%80%b2%e5%8c%96%e7%9a%84%e3%81%ab%e3%81%a9%e3%82%93%e3%81%aa%e6%84%8f%e5%91%b3%e3%82%84%e7%9b%ae%e7%9a%84%e3%81%8c%e3%81%82%e3%82%8b%e3%81%ae%e3%81%8b%ef%bc%9f. 
(4) 素朴な疑問 銀杏はなぜ臭い?強烈な香りの成分は? - ハルメク365. https://halmek.co.jp/qa/1444. 
(5) 銀杏(ぎんなん)の栄養や効果効能、食べ過ぎの中毒、殻の処理 .... https://horti.jp/7756.

2024/08/04

ベニシタンの赤く熟した果実

2023年10月下旬 

民家の前庭に植栽された低灌木に赤く熟した果実が多数ついていました。 
葉も実も小さくて柄が無く、枝に直接ついて並んでいます。
見慣れない植物で気になったので、Googleレンズで画像検索してみると、中国原産でバラ科のベニシタンと名前が分かりました。 
(図鑑で名前を調べるのが苦手な私にとっては非常にありがたく、便利な時代になったものです。)

いかにも鳥が食べに来そうな目立つ熟果で、つまりベニシタンは鳥による種子散布型の植物なのだろうと予想しました。
ところが、叶内拓哉『野鳥と木の実ハンドブック』を紐解いてみると、
赤く熟しても、鳥が食べることはほとんどないようで、私は鳥が食べているところを見たことはない。(p15より引用)
と書いてありました。
日本でベニシタンは外来植物ですから、原産国の中国にしかいない鳥が種子散布者なのでしょうか?
機会があれば、監視カメラを設置して調べてみたいものです。


春に咲く赤い花も花弁がほとんど開かず、丸い蕾のままのように見えるらしいので、忘れず定点観察に来ようと思います。
ひょっとして鳥媒花なのかな?
 

2024/06/08

フタリシズカの花

2024年5月下旬・午後13:30頃 

里山のスギ植林地で廃道状態になった林道を登っていたら、見慣れない白い花が林床にぽつんと2株だけ咲いていました。 
調べてみると、名前だけは知っていたフタリシズカでした。 
白い花穂が2本ずつ並んでいます。 

今回はフタリシズカで訪花昆虫を見かけなかったのですが、送粉者を調べるのが来季の課題です。 
薄暗いスギ林の林床に飛来する昆虫がいるのでしょうか? 
もっと大きな群落を探さないといけません。 

ちなみにこの春、ヒトリシズカでは訪花昆虫の動画を撮ることが出来ました。(映像公開予定) 
ヒトリシズカもフタリシズカも共にセンリョウ科チャラン属らしいのですが、素人目にはとても同属の植物とは思えません。

2024/03/24

山道で死んでいたオオスズメバチ♀の謎

2023年7月上旬 

里山の急峻な山道でオオスズメバチ♀(Vespa mandarinia japonica)の死骸を見つけました。 
複眼が白く変色しています。 
足先以外は目立った外傷や破損がありませんし、おそらく昆虫病原菌や虫カビに感染して斃死したのでしょう。 
いつ死んだのか、死亡時期が私には分かりません。 
昨シーズンのワーカー♀が死んで雪の下に埋もれていたとしたら、夏までに死骸がここまできれいに残らず分解されてしまう気がします。 
例えば、なぜアリが群がってオオスズメバチ♀の死骸を解体し巣に持ち去らなかったのか不思議です。
それとも越冬明けの創設女王が感染してしまったのでしょうか。 
心臓破りの急坂を登る途中だったため、体長を採寸するなどじっくり調べる余力がありませんでした。 

素人目には、これから冬虫夏草の一種ハチタケが育ちそうな予感がしたのですけど、定点観察に通えばよかったですね。 
しかし山道の真ん中に転がっていたので、たまに往来する登山客やタヌキなどの野生動物に踏まれてしまいそうです。 
かと言って、もしオオスズメバチの死骸を採集して持ち帰ったとしても、室内でハチタケが成長できる最適の培養条件(温度、湿度)が分かりません。

2024/02/25

蔓植物クマヤナギの果実

2023年6月中旬・午前 

里山で廃道状態の荒れた山道を登っていたら、下草の蔓植物にブドウのような色鮮やかな果実が房状に実っていました。 
赤く色づき始めてから紫になり、熟すと黒くなるようです。 
見た目は美味しそうですが、有毒植物かどうか分からず、味見する勇気はありませんでした。 (生食可能らしい。)

こんな蔓植物を知らなかったので写真をそのまま画像検索すると、どうやらクロウメモドキ科のクマヤナギらしいと分かりました。 
野鳥によって種子散布されるらしいので、将来やる予定の糞分析に備えて果実ごと種子を採取すべきでした。

2024/01/28

サイハイランの花

2023年6月上旬・午後13:15頃・くもり 

平地の雑木林の昼なお薄暗い林床に見慣れない花が咲いていました。 
ミョウガを連想させるような薄いピンク色の花が、直立した茎の上部にびっしりと並んで咲いています。 
Google画像検索してみたら、一発でサイハイランと判明しました。 
近縁種のモイワランも検討しましたが、花の色が薄くて葉があるのでサイハイランのようです。
多くのラン科植物で知られているように、サイハイランは部分的菌従属栄養植物(潜在的な腐生植物)なのだとか。
葉が黄変しているのは、日照不足で枯れそうなのか、それともスプリング・エフェメラルなのかな? 
図鑑によれば、サイハイランの葉は常緑らしい。

現場では気づかなかったのですが、撮れた写真を確認すると、サイハイランに小さなハエが訪花していました。 
送粉者をじっくり調べるのが来季の宿題です。 

現場の二次林はニホンアナグマの営巣地で、他の野生動物も多く暮らしています。 
この森がもし伐採されそうになったら微力ながら保護活動したいのですが、希少種の生き物がいるという事実が必要です。 
フィールドでネジバナ以外の野生ランを見つけたのは初めてで嬉しかったのですけど、山形県でサイハイランは絶滅危惧種というほどレアではないようです。

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