ラベル 両生類 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 両生類 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025/08/17

池畔のハルニレ枝先に産み付けられたモリアオガエルの泡巣が雨で溶け落ちるまで【微速度撮影#6】

 



2024年6月下旬〜7月上旬

モリアオガエルRhacophorus arboreus)の繁殖池で、岸辺に自生する灌木に白い泡巣産み付けられる様子を長期間観察しています。 
タイムラプス専用カメラを使い、午前5:30〜午後18:00のタイマー設定で1分間隔のインターバル撮影を行いました。 
 丸1週間分(7日間)の記録です(6/28〜7/5)。 
梅雨の雨で池の水量がだいぶ増えました。

トレイルカメラと同じく、タイムラプス撮影は、初めに画角をどう決めるかが全てです。 
ハルニレの灌木に産み付けられた新鮮な白い泡巣が画面の右手前に写るように画角を決めました。 
(画角をもっと右に向けるべきだしたね。) 
画面の中央には対岸のマユミ灌木の枝葉に古い泡巣が写っているのですが、少し遠いです。 

撮れたタイムラプス動画を見ると、モリアオガエルの繁殖期はもう終わったのか、この期間に新たに泡巣は追加されませんでした。 
(カメラの画角内に作られなかっただけで、現場検証すると泡巣は別な場所に増えていました。)

曇ったり雨が降ったりする度に、ハルニレの枝葉が池の水面に向かってしなりながら垂れ下がります。 
晴れると枝に張りが戻ります。 
日照が少なくて植物の光合成が低下すると、細胞の膨圧が低下して垂れ下がるのでしょうか。 
それにしては変形運動(萎凋?)の度合いが大き過ぎる気がします。 
細い葉柄が膨圧の低下で垂れ下がるのは理解できるのですが、剛性があるはずの木質の枝まで垂れ下がるのが不思議でした。 
よくよく考えてみると、枝が垂れ下がる理由はもっと単純ですね。
雨が降るとハルニレの葉やスポンジ状のモリアオガエル泡巣が濡れてたっぷり吸水し、重くなった結果、枝が大きくしなるのでしょう。 
晴れると濡れた泡巣が乾燥して軽くなり、枝の弾性で元に戻ります。 

7/3〜4に大雨が降っている間に、ハルニレの枝が大きく垂れ下がり、モリアオガエルの泡巣が見えなくなりました。 
雨が上がってハルニレの枝葉が起き上がると、産み付けられていたモリアオガエルの泡巣は、ほとんど溶け落ちていました。 
このときにモリアオガエルの幼生(オタマジャクシ)は水中に脱出したようです。 
モリアオガエルの泡巣が雨で溶け落ちる一部始終をタイムラプス動画で記録したかったのですが、枝が大きくしなることも予想して画角を決める必要があり、難しいです。

対岸のマユミ灌木に産み付けられた古い泡巣も、この期間に溶けたようです。

干上がりかけた池の対岸を左から右へ歩いて移動した鳥はキジバトかな?(@5:55〜) 


※ 雨がよく降る野外でタイムラプス専用カメラを設置する際には、透明プラスチックの防水ケースに収納しています。 
レンズの部分には眼鏡の曇り止めをスプレーしたら、雨の水滴をよく弾き、すぐに乾くようになりました。 
(レンズの表面に直接スプレーしたのではなく、防水ケースの表面にスプレーしました。) 
さらに、カメラの天井部に雨よけのひさしを取り付けたら、梅雨の大雨でもレンズはあまり濡れませんでした。 
下敷きのような薄いプラスチックをハサミで適当に切って、庇を自作しました。 


余談ですが、画面左奥のスギ林床や対岸の水際で蔓植物の先端の成長点がぐるぐると時計回り(上から見下ろしたときの回転の向き)で回旋運動していました。 
タイムラプス動画を4倍速で再生するとよく分かるのですが、YouTubeでは2倍速までしか早回しできません。 
現場に自生する蔓植物として、クズ、ツルウメモドキ、サルトリイバラ、フジ、ツルマサキなどが候補として考えられます。
しかし、回旋運動が時計回りというだけでは蔓植物の種類を全く絞り込めません。 
成長する蔓植物の運動も面白そうなテーマなので、いずれ改めてじっくり微速度撮影してみるつもりです。 


※ いつものように、Perplexity AIと相談しながら記事を書きました。 


つづく→

2025/08/07

池畔のミヤマガマズミの枝先に産み付けたモリアオガエル♀♂の泡巣【微速度撮影#5】

 



2024年6月下旬 

モリアオガエルRhacophorus arboreus)の繁殖池で、泡巣が樹上に産み付けられる様子をタイムラプス動画で記録しています。 
池畔でマユミの枝先に産み付けられる泡巣が減ったので、カメラの設置場所を変更することにしました。 

今度はミヤマガマズミの枝先に産み付けられた泡巣4個を対岸から引きの絵で狙います。 
タイムラプス専用カメラを使い、午前5:30〜午後18:00のタイマー設定で1分間隔のインターバル撮影を行いました。 
丸1週間分(7日間)の記録です(6/21〜6/28)。 
先に言っておくと、今回の動画は失敗で、面白いことは何も写っていません。
この動画はブログ限定で公開しておきます。
個人的な試行錯誤を忘れないように、ブログに記録しておくだけです。

6/23日に山形県を含む東北地方南部が梅雨入りしたと気象庁が宣言しました。 
平年より11日遅く、前年よりも14日遅い入梅です。 
待ちわびた梅雨になったのに、この1週間で雨は1回しか降りませんでした。 
それでも池の水位が少しだけ回復していました。 

対岸で新たに産み付けられたモリアオガエルの泡巣は、画角の右外でした。 
対岸で水面に張り出したミヤマガマズミの群落はやや遠く、モリアオガエルの古い泡巣が次第に溶け落ちる様子がよく見えませんでした。 
4Kなど高画質で撮れる最新のタイムラプス・カメラなら、まだましだったかもしれません。
カメラの画角をもっと下に向けるべきでしたね。 

余談ですが、 4倍速の早回し映像で見ると、画面の左で林床下草の蔓植物(種名不詳)の回旋運動が記録されていて、興味深く思いました。 

また、ニホンカモシカCapricornis crispus)が何度か出没していました。 
6/25の午後17:00頃、左上奥のスギ林内をカモシカが単独でうろついていました。 
残念ながら池には来てくれませんでした。 
3日後の6/28の午前11:00過ぎにも、左上奥のスギ林内をカモシカがちらっと写りました。 


この画角での微速度撮影は失敗に終わったので、カメラの設置場所を変更します。 


2025/08/01

池畔のマユミとハルニレの枝先に集まって次々と泡巣を作り産卵するモリアオガエル♀♂【微速度撮影#4】

 



2024年6月中旬〜下旬 

山形県内はまだ梅雨入りしていません。 
降雨量が少なく、かつてないほど深刻な水不足です。 
山中にあるモリアオガエルRhacophorus arboreus)の繁殖池はどんどん縮小し、干上がりつつあります。 

タイムラプス専用カメラを使い、午前5:30〜午後18:00のタイマー設定で1分間隔のインターバル撮影を行いました。 
丸一週間分(7日間)の記録です(6/14〜6/21)。 

8GBのSDカードのうち、40%しか使われていませんでした。 
普段はトレイルカメラで動画撮影している私にとって、インターバル撮影でも昼間の静止画では電池がほとんど消費しないことに驚きます。 

池畔に自生するマユミ灌木の水面に張り出した枝にモリアオガエル♀♂がときどき集まってきます。
集団抱接および産卵のシーンが新たに記録されていました。 
画面左の手前に自生するハルニレの灌木でも産卵するようになりました。(@5:00〜) 
抱接しながら分泌液を後脚で泡立てて白い泡巣を作り、その中に産卵、放精するのです。


2025/07/25

池の水面に溶け落ちたモリアオガエルの泡巣に集まり吸汁・交尾するアメンボ♀♂

 

2024年6月中旬・午後12:40頃・晴れ 

モリアオガエルRhacophorus arboreus)の繁殖池で定点観察しています。 
岸辺に自生する マユミ灌木の枝葉に毎年、白い泡巣がたくさん産み付けられています。 

昼間からマユミの樹上でじっとしているモリアオガエル成体は、産卵のために木登りしてくる♀を待ち伏せしている♂なのでしょう。 
(私にはモリアオガエルの性別を外見から自信を持って見分けられません。) 
泡巣の近くに先乗りしている個体と、少し下部の枝に留まっている個体と2匹の成体を見つけました。 

白い泡巣の一部が溶けて崩れ、下の水面に浮いていました。 
産み付けられてから約1週間で泡巣内の卵から幼生(オタマジャクシ)が孵化し、雨で溶け落ちた泡巣と一緒に幼生が池の水中に脱出するのです。 
しかし、今回は自然な融解ではありません。 
ニホンザルがモリアオガエルの泡巣を捕食に来ているシーンがタイムラプス動画で記録されていたのです。 
猿がマユミの枝を掴んで乱暴に引き寄せた際に、一部の泡巣は水中に没して崩れてしまったようです。



池の水面に溶け落ちた白い泡巣の上に、アメンボの一種が群がっていました。 
交尾中のペア♀♂と単独個体、それからアメンボの幼虫と思われる小型の個体もいました。 
アメンボの交尾ペア♀♂が白い泡の表面を歩いて少しずつ移動しています。 
泡の縁に到達するとしばらく静止し、交尾中の♀が左右の前脚を擦り合わせて身繕い。 

交尾中のアメンボ♀は細い口吻を伸ばして、融解した泡巣から吸汁しているように見えました。 
タンパク質が豊富な餌なのでしょう。 
一方、単独個体のアメンボは、泡巣の表面に付着した虫の死骸?から吸汁しているようです。 
しかしPerplexity AIに相談してみると、融解したモリアオガエルの泡巣には栄養がほとんどなく、アメンボは水面に浮かぶ筏としてたまたま乗っていただけだろう、という見解でした。 
確かに、水面に浮いているどの泡にもアメンボが群がっているという訳ではありませんでした。 
私としては納得できないので、次に機会があれば、アメンボの口吻を横からじっくり接写して、決着を付けるつもりです。 

日向の強い日差しで水面に浮かぶ白い泡が白飛びしてしまい、日陰と入り混じって、コントラストの差が大きくなっています。 
見えにくい被写体を動画編集時でHDR風に加工したら、だいぶ改善されました。 
(具体的な方法はChatGPTに指南してもらいました。) 


【追記】 
動画を撮影した時の私は、水面に浮かぶ白い泡はてっきりモリアオガエルの泡巣がマユミ樹上から溶け落ちたのだろうと思い込んでいました。 
ところが、同じ池の岸辺の水際にはシュレーゲルアオガエルRhacophorus schlegelii)の泡巣も同時期に産み付けられていました。 
1週間前に撮った写真を載せます。






シュレーゲルアオガエルの幼生(オタマジャクシ)も既に卵から孵化して水中に脱出したらしく、白い泡巣が溶けていました。 
もしかすると、アメンボが乗っていたのはシュレーゲルアオガエルの融解した泡巣だったのかもしれません。
以下の写真は、動画を撮った同じ日の記録です。



2025/07/24

カジカガエル♂の鳴き声♪(昼と夜)

 

2024年6月上旬〜中旬

シーン1:6/8・午後14:40・晴れ(@0:00〜) 
河原からフィリリリリ…♪という鈴の音のような高音の優しい鳴き声が聞こえてきました。 
まさかとは思いますが、カジカガエル♂(Buergeria buergeri)の鳴き声でしょうか。 
少なくとも2匹の♂が鳴き交わしている印象です。 
♂が縄張りを宣言し、交尾のため♀を呼び寄せる求愛の鳴き声なのだそうです。 
この辺りは川の上流域の後半で、流れは落ち着き、岸は丸みを帯びた石だらけです。 

オスは水辺にある石の上などに縄張りを形成し、繁殖音をあげる[2]。鳴くのは、繁殖期の4月から7月の夕方から明け方までである。和名の「河鹿」はこの鳴き声が雄鹿に似ていることが由来[3]。(wikipedia:カジカガエルより引用) 

姿を確認できていませんが、こんな街なかを流れる川にカジカガエルが生息しているとは予想外で驚きました。 
カジカガエルは、もっと上流域の渓流に住んでいるとばかり思い込んでいました。 
もしかすると、最近降った大雨のせいで増水した渓流のカジカガエルが流され、この地点に漂着したのでしょうか? 

しかも、カジカガエル♂が鳴くのは夜(夕方から明け方まで)とされているのに、今回は真っ昼間から鳴いていて、異例なことばかりです。 

慌てて動画で鳴き声を録音してみたのですが、周囲のノイズ(※)が耳障りです。 
(※ 風切り音、手前のヨシ原が風でざわざわ揺れる音と、土木工事する重機の騒音など) 

シーン2:6/16・午前2:45(@0:35〜) 
静かな深夜に現場を再訪して、美しい鳴き声を録音し直すべきだと思い立ちました。 
1週間も間隔が開いてしまうと、カジカガエルの繁殖期は下火になったのか、期待したほど鳴き声は聞こえませんでした。 
しかも、しばらくすると鳴き止んでしまいました。 
私が来た時間帯が遅過ぎたのかもしれません。 

深夜は深夜で、別のノイズが賑やかでした。 
街なかの川は、どうしても騒音だらけです。
(※ カルガモの鳴き声♪、オオヨシキリ♂の囀りさえずり♪、川のせせらぎ♪、空調エアコンの巨大な室外機のノイズ♪など )

赤外線でナイトビジョン(暗視動画)が撮れるハンディカムを持参したのですが、今回も石だらけの河原に降りてのカジカガエル探索はできませんでした。 
私が耳を澄ませて川沿いの遊歩道を歩いていたら(鳴き声によるラインセンサス)、野生動物が河川敷から草むらに慌てて逃げ込む物音がしました。 
タヌキなら良いのですが、ツキノワグマとニアミスする可能性もあり、私は怖気づいてしまいました。 

念のために護身用の熊よけスプレーを携帯していたのですが、無理せずに撤退しました。 

川沿いをラインセンサスしてみた結果、カジカガエル♂が鳴いているのはごく一部の区間だけのようです。 


【考察】 
カジカガエル♂が鳴いていない退屈な部分を動画編集でカットするべきか迷いました。 
ChatGPTに質問してみると、時間的に間隔を開けて鳴くという点が生態学的に重要な意味があるらしいので、そのまま公開することにしました。
実は**「間隔を開けて鳴く」という特徴そのものに意味がある**と考えられています。理由は以下の通り: 
🔍 生態学的な意味 縄張りアピール:  他のオスとの競合を避けるため、間を空けて鳴き、自分の存在を静かに示す。休まず連続して鳴くと疲労し捕食リスクも増すため、間隔をあけて持続する戦略と考えられています。 
メスへのアピールの工夫:  間隔を空けて鳴くことで「長時間、安定して鳴ける=体力があるオス」だと示せる場合があります(これを「スタミナのシグナル」と呼ぶ場合も)。 
渓流環境への適応:  水音のある場所で連続音だと埋もれてしまうため、「間を空けて、目立つように」鳴くとも考えられています。

今季はまるで中途半端な結果に終わりましたが、憧れだったカジカガエルを調べる糸口が得られたので、来年以降の宿題として持ち越します。 


【アフィリエイト】 

2025/07/18

山中の水溜りで暮らすカエル【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2024年6月中旬〜下旬 

シーン0:6/17・午後12:50・晴れ(@0:00〜) 
明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
山林の中に少し開けた湿地帯があります。 
湧き水や雨水が溜まった水溜りを野生動物や野鳥が来て水場として利用しているので、自動センサーカメラ(旧機種)で見張っています。 


シーン1:6/19・午前9:00(@0:04〜) 
右手前の水溜まりの中に居たカエルが左の岸にピョンピョン跳んで素早く上陸しました。 
1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@0:15〜) 


シーン2:6/19・午後13:19・晴れ(@0:26〜) 
挙動が不安定な旧機種のトレイルカメラが、珍しくフルカラー録画に戻っていました。 

右手前の水溜まりの右岸からカエルが左に跳んで入水しました。 
泥水の中を少し泳ぐと、此岸に到達しました。 
1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@0:35〜) 


シーン3:6/22・午後23:20(@0:46〜) 
左手前の水溜りの此岸でカエルの白く光る眼が開きました。 
左に少し動いてから静止。 
1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@0:58〜) 


シーン4:6/22・午後23:35(@1:11〜)
左の水溜りの対岸のやや左で、カエルの白く光る眼が開きました。 
しかし、その後は動きません。 
1.5倍に拡大した上でリプレイ。(@1:25〜) 


シーン5:6/22・午後23:44(@1:37〜) 
左の水溜りの対岸のやや左で、カエルの白く光る眼がじっとしています。 
後半になると、瞬きしながら右にゆっくり移動しました。 
1.5倍に拡大した5倍速でリプレイ。(@2:08〜) 


【考察】 
両生類のカエルは変温動物ですから、本来ならいくら活発に動いてもトレイルカメラには録画されないはずです。
今回の監視映像はいずれも、風揺れや夜蛾の飛来などでトレイルカメラが誤作動した結果と思われます。 

やや遠い上に白黒の暗視動画ですから、カエルの種類を見分けられません。 
ごく普通のニホンアマガエルHyla japonica)かもしれませんし、水溜りで育ったアズマヒキガエルBufo japonicus formosus)の幼生が変態し、上陸したばかりの幼体かもしれません。 

関連記事(同じ湿地帯にある隣の水溜りで2週間前に撮影)▶ 山中の浅い泥水溜りで泳ぐアズマヒキガエル幼生の群れ 


山中の湿地帯でこうしたカエルを夜行性の野生動物やフクロウが狩りに来るのではないかと期待しているのですが、トレイルカメラでカエル狩りを一度も撮れたことがありません。 
フクロウが夜に水浴や飲水にくる水溜りはなぜか決まっていて、今回の映像では奥に少し写っています。

今回の記事を書くために調べ物をしていてChatGPTに指摘されたのですが、カエルの目が夜に光を反射して見えてもタペータムがあるとは言えないのだそうです。
カエルは発生の各段階(幼生→幼体→成体)でタペータムがないどころか、両生類はタペータムという組織が進化しなかった系統なのだそうです。

タペータムは収斂進化の好例であり、分類群ごとに組織構造・起源・反射特性が大きく異なるらしい。

 タペータム(tapetum lucidum)の定義:
網膜の後方(脈絡膜や色素上皮の深部)に存在する反射層

光が一度網膜を通過し、タペータムで反射されて再び網膜に戻る

これによって視細胞(特に桿体細胞)の光感度が増強される

これは夜行性動物の典型的な適応機構であり、暗所視力を大きく向上させます。

■ 両生類における反射構造の位置と性質
● 両生類の目では:
網膜より後方にあるタペータム様構造は存在しない(通説)

代わりに、網膜の前面側や網膜自体の中にある色素細胞やグリア細胞の配列が、光を乱反射・反射することで、目が「光って見える」ことがあります

しかしこれは、光を“増強して戻す”機構ではなく、あくまで副次的な反射

つまり、構造の位置と機能が異なるため、「タペータム」とは呼べないのです。

■ 例外的な報告の位置づけ
一部の研究(例:樹上性カエルの一部種)では、「タペータム様」構造の存在が示唆されたこともありますが、それらも:

組織的には網膜の後ろではないか、

機能的に反射増幅に寄与している証拠が乏しい

ため、正式な意味での「タペータム」とは区別されています。

なぜカエルはタペータムを持たず、暗視性能を犠牲にするような進化(網膜の手前の層で光を反射する)をしたのでしょうか? 

ChatGPTの回答は、

■ カエルにタペータムがない理由(仮説)

1. 水中生活に適応した視覚系の名残

オタマジャクシ期、カエルの多くは水中生活を送り、そこでは:


光の散乱が強く、タペータムによる再反射は逆に像の解像度を落とす可能性


反射光によって**水中の微細な粒子によるグレア(かすみ)**が生じやすい


➡ 水中視覚においては、むしろタペータムが邪魔になる可能性がある。


また、両生類の祖先は水中生活者であり、視細胞の高感度化よりも、像の明瞭性の維持を優先する視覚設計が選択されてきた可能性があります。


2. 桿体細胞(暗所視用視細胞)の高密度配置で補っている

両生類の網膜には、桿体細胞が非常に多く、高感度です。


タペータムの助けなしでも、十分な暗所視能力を備えている種もいます。


たとえば:


アカガエル属(Rana)などでは、夜間活動をしながらもタペータムなしで獲物を視認できるという実験報告があります。


タペータムによる「光の二重通過」よりも、ノイズの少ない一次通過の方が精度の高い視覚情報を得られるという観点もあります。


3. 夜行性だが夜目はそれほど必要でなかった

一部のカエルは夜間に活動しますが、完全な暗闇ではなく、薄明かりや月明かりがある環境(湿地、林縁など)を選んでいます。


そのような環境下では、タペータムを必要とするほどの光量不足ではないこともあり得ます。


4. 反射による自己露出リスク

タペータムの存在は、目が光る=捕食者に目立つというリスクを伴います。


両生類の多くは小型で捕食されやすく、夜間の視覚よりも被視認性の低下を優先する選択圧が働いた可能性があります。


5. タペータムを進化させる系統的な基盤を欠いていた可能性

タペータムは、哺乳類・爬虫類・魚類の中でも複数系統で独立に進化しています。


両生類(特にカエル)はそのような器官を形成するための細胞系・発生遺伝的基盤を持たなかった可能性があります。


いままで私が書いたカエルの記事を確認して、「カエルのタペータム」という記述があれば訂正しないといけません。 

2025/07/14

池畔のマユミ枝先に集まって次々と泡巣を作り産卵するモリアオガエル♀♂【微速度撮影#3】ニホンザルが泡巣を捕食?

 



2024年6月上旬〜中旬 

繁殖池で、岸辺に自生するマユミの枝葉にモリアオガエル♀♂(Rhacophorus arboreus)が集まって白い泡巣を次々に作り、産卵する様子をタイムラプス動画で記録しています。 
夏至(6/21)が近づき日が長くなったので、タイムラプス専用カメラのタイマー設定を午前5:30〜午後18:00に前後30分ずつ延長しました。 
1分間隔のインターバル撮影で、ちょうど一週間分(7日間)の記録です(6/7〜6/14)。 
最近は雨不足のようで、池の水量が減り、岸辺は干上がりつつあります。 
当分は雨が降らないとの週間天気予報で、心配です。 

それでは早速、撮れたタイムラプス映像を見てみましょう。 
撮影を延長した薄明薄暮の時間帯も充分明るく撮れていました。 
モリアオガエルの産卵は主に夜行われるようですが、昼間でも新しい泡巣が作られていました。 
例えば6/13午前8:00〜午後13:00の映像が分かりやすく撮れています。 

この時期、面白い事件がいくつか起きていました。 

(1)ニホンザルによるモリアオガエル泡巣の捕食?
カメラが狙っていたマユミ樹上の比較的新しい泡巣のいくつかが、動画の冒頭で突然、しかもほぼ同時に溶け落ちました。 
泡巣の内部でモリアオガエルの幼生(オタマジャクシ)が孵化してある程度育つと、雨が降る日に自然と泡巣が溶け落ち、オタマジャクシは下の池に脱出します。 
しかし、今回の泡巣が自然に溶けたにしては時期が早すぎます。 
つまり、あまりにも不自然な溶解です。 
タイムラプス動画をコマ送りでじっくり見直すと、泡巣消失の謎が解けました。 
事件が起きたのは、6/7の午後15:44〜15:57です。 
何者かがマユミの灌木を激しく揺すったりしならせたりしたせいで、泡巣が何度も水中に没していました。 
そのせいで泡巣が早く溶けてしまったようです。 

このとき、池の対岸を遊動するニホンザルMacaca fuscata fuscata)が写っていました。
山林を遊動してきた群れが池を訪れ、一部の個体が狼藉を働いたようです。
猿が木から木へと伝い歩く際に、細いマユミ灌木上の泡巣が激しく揺すられて、泡巣が壊れたり溶け落ちたりしてしまったのでしょうか?
好奇心旺盛な子ザルがモリアオガエルの泡巣を果物と誤認して興味を持ち、調べに来たのかな? 

夏の暑い日にニホンザルは池に飛び込んで水遊びをすることが知られています。
関連記事(10年前の撮影)▶ 湖で泳ぐ野生ニホンザルの群れ
今回も池畔のマユミ灌木から無邪気に池へ飛び込もうとして、泡巣を意図せずに破壊・融解してしまったのでしょうか?
しかし、干上がりかけた浅い泥沼にニホンザルが入水するとは思えません。

実は、対岸(画面左端)に自生するミヤマガマズミの灌木にもモリアオガエルの白い泡巣が産み付けられています。 





下の連続写真で示すように、別個体のニホンザルがこのミヤマガマズミ群落を訪れて、しばらく座り込んでいました。
どうやらモリアオガエル泡巣に含まれる卵やオタマジャクシを捕食したようです。
ニホンザルにとって、貴重なタンパク源になるでしょう。

ちなみに、翌日6/8には、このミヤマガマズミの枝先にモリアオガエルの新しい泡巣が産み付けられていました。 
ニホンザルが来る前の泡巣の様子。まるで白い果実のように泡巣がたわわになっている。
対岸左のミヤマガマズミにニホンザル登場。右手前のマユミ枝葉が何者かによって大きくしなり、泡巣が写ってない。

ニホンザルが対岸左のミヤマガマズミでモリアオガエルの泡巣を捕食中?

別個体のニホンザルが対岸のスギ林縁を右から左へ遊動。右手前のマユミ枝葉が何者かによって大きくしなり、泡巣が写ってない。
対岸左のミヤマガマズミからニホンザルが去る。

右手前のマユミ枝葉を何者かが激しく揺する。
ニホンザルが居なくなると、マユミ樹上の泡巣は短時間ですっかり溶け落ちていた。

その後はマユミ灌木の真下だけでなく、水面のあちこちにモリアオガエルの溶けた泡巣が浮いていました。 
風に吹かれて水面を移動したのかと思ったのですが、ニホンザルが枝を激しく揺すって泡巣を水面に浸けたことで説明できそうです。 

1分間隔のインターバル撮影では、断片的な情報しか得られません。
もし今後もニホンザルがモリアオガエルの繁殖池に来て泡巣の採食を繰り返すようなら、池畔にトレイルカメラを追加して、動画による証拠映像を撮るしかありません。





【参考文献】
ニホンザルがモリアオガエルの泡巣を捕食するなんて、私にとっては全く予想外の事件で興奮しました。
GoogleScholarで文献検索してみると、残念ながら新発見ではなく、すでに論文になっていました。
井上光興; 辻大和. 野生ニホンザル Macaca fuscata によるモリアオガエル Rhacophorus arboreus 泡巣の採食事例. 霊長類研究, 2016, 32.1: 27-30.(全文PDFをダウンロード可)

ブログで報告している人もいます。
サルが食べていたのは・・・ @秋田・青森県


外来種のアライグマがモリアオガエルの泡巣と成体を捕食した事例も別に報告されていて、この論文は要旨だけ読めました。
ICHIOKA, Yukio; HIJII, Naoki. Raccoon Predation on Foam Nests and Adults of the Forest Green Tree Frog (Zhangixalus arboreus: Rhacophoridae) in Central Japan. Current herpetology, 2021, 40.2: 129-136.
外来種のアライグマが当地で生息しているという確かな証拠映像はまだ撮れていません。

野生動物による捕食圧が高まれば、モリアオガエルも対抗策を進化させる可能性があります。
今の泡巣は白っぽくて樹上でよく目立つので、緑の色素を混ぜ込んで迷彩を施せば、保護色になりそうです。

もしかすると逆に、モリアオガエルはニホンザルに泡巣を見つけてもらいたいのかもしれません。
樹上の果実に擬態してニホンザルの気を惹いているという大胆な仮説です。
泡巣が産み付けられた木にニホンザルがよじ登ろうとしても、細い灌木のことが多いので、猿の体重を支えきれずに大きくしなり、泡巣は水没してしまいます。
泡巣の一部はニホンザルに捕食(食卵)されてしまうかもしれませんが、泡巣が溶けてオタマジャクシが水中に脱出するのをニホンザルが助けているのかもしれません。



(2)6/9午後12:20に対岸の水際をホンドタヌキNyctereutes viverrinus)らしき野生動物がうろついていました。
(3)6/12午前7:49にコガラPoecile montanus)がマユミ樹上に来ていました。 
モリアオガエルの泡巣に集まる昆虫(ハエやシリアゲムシなど)を捕食しに来たのかな? 

他にも私が見落としている事件がまだまだありそうなので、皆さんもタイムラプス動画をスロー再生して見つけたら教えてください。


2025/07/07

モリアオガエル泡巣の表面で交尾するヤマトシリアゲ春型♀♂

 



2024年6月上旬・午後14:25頃・晴れ 

山中の池畔に自生するマユミの枝葉にモリアオガエル♀♂(Rhacophorus arboreus)が産み付けた泡巣にヤマトシリアゲ♀♂(Panorpa japonica)が集まり、交尾が始まりました。 
交尾中の♀♂ペアに注目しましょう。 
♀の体表に赤いタカラダニ幼虫が2個付着しています。 
♀♂ペアは腹端の交尾器を連結したまま、歩いて泡巣の影に隠れてしまいました。 
口吻を泡巣に突き刺して食卵していた単独の♀は交尾ペア♀♂に追い払われ、慌てたように歩いて逃げました。 
交尾姿勢は反向型ではなく、斜めに重なり互いに別方向を向いています。 
左が♂で右が♀のようで、♀の腹部は明らかに太いです。 
このペアには赤いタカラダニは寄生していません。 

背側からしか撮れなかったので、交尾しながらヤマトシリアゲ♀♂が食卵しているかどうか、口器を泡巣に突き刺しているかどうか不明です。 

右の♀が交尾しながら翅を小刻みに開閉して黒い翅紋を誇示しています。 
徘徊性クモやモリアオガエルなどの天敵(捕食者)に対して威嚇・牽制するディスプレイではないかと、個人的には推測しています。 




【考察】 
シリアゲムシは求愛給餌(婚姻給餌)行動で有名で、♂は交尾する前に獲物を狩って♀にプレゼントする必要があります。 
残念ながら今回は手前の葉が邪魔で、交尾直前の求愛行動をしっかり観察できませんでした。 
今回の♂は♀にプレゼントする餌(虫の死骸など)を別途用意する必要がなかったのではないかと推測しています。 
なぜなら、モリアオガエルの卵が大量に詰まった泡巣という巨大な餌がありますから、そこで♀と出逢えばすぐに交尾させてもらえるからです。 
モリアオガエルの泡巣はタンパク質に富む巨大な栄養源ですから、♂は求愛給餌の餌を別に用意する必要がないのでしょう。 
♀にしてみれば、持ち運びできる餌よりも巨大な不動産物件をプレゼントしてくれる優秀な♂を交尾相手に選べることになります。
今回の求愛餌はあまりにも巨大すぎるので、♀を待ち伏せする間にヤマトシリアゲ♂同士で争奪戦(占有行動)になることもありませんでした。 

関連記事(12年前の撮影)▶ ヤマトシリアゲ♂同士の喧嘩(獲物の争奪戦) 

つまり、モリアオガエルの泡巣に集まったヤマトシリアゲの群れはレック(集団お見合い会場)と言えるかもしれません。
池の水面に張り出した木の枝先にモリアオガエルの泡巣がいくつも産み付けられていたのですが、その全てにヤマトシリアゲが群がっている訳ではありませんでした。
鮮度が新しい泡巣を選んでいたようです。


【アフィリエイト】 

2025/07/06

涸れ沢で聞こえるタゴガエル♂の鳴き声♪

 

2024年5月下旬・午前11:30頃・くもり 

里山で林道を静かに歩いていたら、タゴガエル♂(Rana tagoiがひっそりと鳴いている声に気づきました。 
林道脇の沢は涸れていて、水は流れていません。 
涸れ沢のどこかにタゴガエル♂が潜んでいるようです。 
涸れてはいるものの、急斜面の沢は大量のスギ落ち葉で覆われ、シダ植物やアカソ?などの下草が生えています。 
一部の岩は苔むしていて、湿り気がある環境であることを物語っています。 

鳴き声を頼りに忍び足で近寄っても、タゴガエルは鳴き止みませんでした。 
おそらく1匹の♂が断続的に鳴いているようです。 
しかし、居場所を突き止めて姿を撮影するのはとても難しそうです。 
後半は風が吹いて木の葉がザワザワと音を立てて揺れ、タゴガエル♂の鳴き声がかき消されてしまいました。 

関連記事(1ヶ月前の撮影)▶ 山中の沢で春に鳴くタゴガエル♂♪ 


2025/06/29

モリアオガエルの泡巣に集まり食卵するヤマトシリアゲ春型♀♂

 

2024年6月上旬・午後14:10頃・晴れ 

山中にあるモリアオガエル♀♂(Rhacophorus arboreus)の繁殖池で、岸辺のマユミの枝葉にいくつも産み付けられた泡巣を調べていると、その一つに春型のヤマトシリアゲ♀♂(Panorpa japonica)が何匹も集まっていました。 
腹端の形状に注目すると、ヤマトシリアゲは♀♂両方来ていることが分かります。 
モリアオガエルの泡巣の表面はすでに乾いていて、ヤマトシリアゲが自由に歩き回ることが出来ます。 

ヤマトシリアゲは細長い口吻を泡巣に突き刺しているので、一見すると吸汁しているようです。 
しかしシリアゲムシ成虫の口器は咀嚼のための構造ですから、単に水分摂取しているのではなくて、泡巣の内部に産み付けられたモリアオガエルの受精卵を捕食しているのでしょう。(食卵) 
カエルの卵は捕食者に対して無防備です。 
モリアオガエルは水中の捕食者を避けるために樹上に泡巣を作ってそこに産卵するように進化したのに、樹上にはまた別の捕食者が進化してきたのです。 

モリアオガエルの卵を食べるシリアゲムシ」と題したH72031610さんの動画を2012年に視聴して以来、私も自分の目で観察したいと思い、ずっと探し続けていたので、ようやく念願が叶いました。 




ヤマトシリアゲ♂の反り返った腹部の先端にはハサミ状の把握器があり、開いた状態でした。 





泡巣の右端には、腹端が先細りに尖っているヤマトシリアゲ♀が来ていました。 
側面から見ると、♀は細長い口器を泡巣に突き刺して咀嚼しています。 
泡巣の表面で翅紋を誇示しているヤマトシリアゲの個体(ディスプレイ行動)や、交尾している♀♂ペアもいました。

ヤマトシリアゲの中には、体表に赤いタカラダニ科の幼虫(種名不詳)が付着した個体がいました。 
タカラダニの幼虫はただの便乗(ヒッチハイカー)ではなく、宿主から体液を吸う吸血性の体外寄生虫なのだそうです。 
タカラダニに宿主特異性はなく、広範な宿主範囲を持つ広食性(generalist)の寄生者らしい。 

近くの木の葉にはキンバエが留まって身繕いしてから飛び去りました。 
周囲でモリアオガエルの鳴く声が聞こえます。 
産卵した後のモリアオガエル♀♂は、泡巣の卵を捕食者から守ったりしないのでしょうか?
泡巣の近くに居座って、集まってくるハエ類やシリアゲムシを次々と捕食すれば一石二鳥だと思うのですが。


この記事を書くために、Perplexity AIとのブレインストーミングが役立ちました。 



2025/06/26

山中の浅い泥水溜りで泳ぐアズマヒキガエル幼生の群れ

 

2024年6月上旬・午後13:25頃・くもり 

山林の湿地帯にある泥水溜りが野生動物や野鳥の通う水場になっているので、トレイルカメラで監視しています。 

浅い水溜りの中で、多数の黒いオタマジャクシが蠢いていました。 
アズマヒキガエルBufo japonicus formosus)の幼生でしょう。 
水溜りが干上がりかけていてオタマジャクシには絶体絶命のピンチのように見えます。
しかし、これから梅雨の時期ですし、山からの湧き水が出る地形らしくて、浅い水溜りながらも年間を通して干上がることはありません。 

水場に来る捕食者にしてみれば獲物を食べ放題のはずですけど、ヒキガエルの幼生はブフォトキシンという強力な毒で身を守っているのだそうです。 

しかし意外なことに(定説に反して)、一部の鳥は平気で捕食しています。
それらの(例外的な)鳥はブフォトキシンに対して耐性があるのか、それともヒキガエル幼生の毒が実はそれほど強くないのでしょうか?





2025/06/20

池畔のマユミ枝先に集まって次々と泡巣を作り産卵するモリアオガエル♀♂【微速度撮影#2】

 



2024年6月上旬 

モリアオガエル♀♂(Rhacophorus arboreus)の繁殖池で岸辺に自生するマユミの枝葉に集まって白い泡巣を次々に作り、産卵する様子をタイムラプス動画で記録しています。 
インターバル撮影の設定は前回と同じで、明るい昼間だけ(午前6:00〜午後17:30)1分間隔、4日間の記録です(6/4〜6/7)。 

カメラ全体を透明プラスチックの防水ケースにすっぽり格納してあるのですけど、今回はその上に雨よけの庇を取り付けました。 
持参した薄いプラスチック板をハサミで適当な大きさの長方形に切り、カメラの上部を覆うように屋根のように固定しました。 
これだけでも効果は絶大で、雨の多い季節でもレンズに水滴が付くことが減りました。 
設置した雨よけの庇が画面の上に写り込まないように、注意が必要です。 

泡巣が溶けてモリアオガエル幼生(オタマジャクシ)が下の池に脱出するまでの経過も、できれば微速度撮影で記録したいのです。 


肝心の泡巣作り(配偶行動)は主に夜間行われているようですが、残念ながらこのカメラには暗視モードがありません。
夕方から翌朝へと時間が飛ぶと、急に新しく泡巣が増えています。

撮れたタイムラプス動画をよく見ると、表面がまだ乾いていない新しい泡巣にシリアゲムシの仲間♀♂が何匹も群がっていました。 
泡巣に口吻を突き刺して吸汁(食卵?)しながら、翅紋を誇示しているようです。 
現場入りした際にその様子を実際に撮影したので、映像公開予定。 


タイムラプス動画をスロー再生してじっくり見直すと、ちょっと面白い瞬間もいくつか撮れていたので、皆さんも探してみたください。 

ニホンカモシカCapricornis crispus)が池の岸辺(泥濘)を歩いて左から右へと横切る姿が写っていました。(@0:12〜) 
池の水を飲みに来たのかもしれません。 
カモシカも水浴するらしいのですが、私は観察したことがありません。 

・モリアオガエルがレンズに跳びついた瞬間も撮れていました。(@2:24〜) 

・池の水面ではカルガモAnas zonorhyncha)の群れが泳ぎ回っています。 


2025/06/10

池畔のマユミ枝先に集まって次々と泡巣を作り産卵するモリアオガエル♀♂【微速度撮影#1】

 

2024年5月下旬〜6月上旬

モリアオガエル♀♂(Rhacophorus arboreus)が繁殖期に樹上で次々と産卵する様子を長期間の微速度撮影してみました。 
里山にある繁殖池に行ってみると、前年と全く同じ場所に白い泡巣が早くも作られていました。 
池畔に自生するマユミ灌木の葉に白い泡状の塊が付着しています。 

BrinnoタイムラプスカメラTLC200を専用の防水ケースに格納し、水際のマユミを狙って設置しました。 
この機種TLC200の最短撮影距離は約75cmで、接写にはあまり向いていません。 
しかし、モリアオガエルがマユミの枝葉のどこに次の泡巣を作るか予想できませんから、広角で狙う方が好都合です。 
明るい昼間だけ(午前6:00〜午後17:30)1分間隔でインターバル撮影するように設定しました。 
モリアオガエルの繁殖行動は夜通し行われるのですが、残念ながらこのカメラ機種には暗視機能がないため、明るい日中のみの撮影になります。 
トレイルカメラを使えば昼も夜も連続してインターバル撮影が可能になるのですが、手持ちのトレイルカメラは全て他のプロジェクトで使っているので仕方がないのです。 
天気予報通り、夕方から雨が降り出しました。 

さて、6日間(5/30〜6/4)インターバル撮影してみたタイムラプス動画を見てみましょう。 
マユミの樹上でモリアオガエルが作る泡巣の数が増えていました。
マユミの左隣のハルニレ?灌木にも産卵していました。 
その重みで枝葉が垂れ下がり、撮影後半にはカメラの視界を遮ってしまいました。 
被写体(泡巣)までの距離が近過ぎてピンぼけになるかと心配でしたが、大丈夫でした。 
モリアオガエル♀♂がマユミの木に登って集まり、抱接しながら白い粘液を泡立てて泡巣を作り、その中に産卵・受精します。 
しばらくすると泡巣の表面は乾いて固くなり、内部の受精卵を乾燥や捕食者から守ります。 
やがて卵から幼生が孵化すると泡巣の耐水性は次第に失われ、雨で溶けた泡巣からオタマジャクシが脱出して下の池に落ちます。 
晴れたに日は、溶けかけた古い泡巣にハエなどの虫が集まっていました。 

昼間の池には、カルガモAnas zonorhyncha)の♀♂つがいが水面を泳ぎ回っていました。 

曇ったり雨が降ったり夕方になったりすると、マユミの横枝が垂れ下がることが分かりました。 
晴れると光合成が活発になり、横枝もピンと持ち上がります。 
生きた植物はゆっくりながらも活発に動いていることが、タイムラプス動画にすると一目瞭然です。 
池を取り囲むスギ林の影が日時計のように刻々と移動します。 

モリアオガエルの繁殖期は、梅雨の初め(雨季)と重なっています。 
カメラの設置場所が水際なので、湿度が高くて気温が下がる朝晩にはレンズに結露したり霧が発生するかと心配でしたが、それは大丈夫でした。 
激しい雨が降るとレンズの表面に水滴が付着します。 
しかし晴れると水滴が自然に蒸発して、きれいに乾きました。 
Brinno専用の防水ケースの撥水性はかなり優秀でした。 
防水ハウジングの内部に雨が浸水することもなく、結露もしていませんでした。 
それでもレンズの水滴対策が必要だと分かったので、次回からは雨よけの庇を取り付け、防水ケースのレンズの部分には曇り止めの撥水スプレーを噴霧した方が良さそうです。 


つづく→#2


【アフィリエイト】

2025/06/04

山中の水溜りでヒキガエルの幼生を狩って雛に給餌するクロツグミ♀【野鳥:トレイルカメラ】



2024年5月下旬・午後18:35頃・日の入り時刻は午後18:55。

シーン0:5/24・午後12:40・晴れ(@0:00〜)
明るい昼間にたまたまフルカラーで撮れた現場の状況です。
山林で湧き水が溜まった水場を自動撮影カメラで見張っています。
浅い泥水の水溜りには、アズマヒキガエルBufo japonicus formosus)の幼生と思われる黒いオタマジャクシの群れが泳いでいます。
1.5倍に拡大した上でリプレイ。
翌年の春には、同じ水溜りではありませんが、そこから連続した湿地帯を流れる雪解け水の沢でアズマヒキガエルの配偶行動を観察しています。(映像公開予定)


シーン1:5/25・午後18:33(@0:18〜)
日没前でまだなんとか明るい時間帯に、クロツグミTurdus cardis)の♀♂ペアが互いに離れて水溜りの水を飲んでいました。

手前の茶色い♀個体が何か黒っぽい獲物を捕らえました!
水溜りでオタマジャクシを狩ったのかな?
獲物をその場では食べず、嘴に咥えたまま次の獲物を探しています。
したがって、近くの巣で待つ雛鳥に給餌するのでしょう。
左へ飛び去りました。

一方、奥に居た黒い♂個体は、水を飲み終えると、更に奥の湿地に移動して餌を探し歩いています。


シーン2:5/25・午後18:36(@1:20〜)
2分後にクロツグミ♀が単独で水場に戻って来ていました。
水溜りの岸の泥濘を繰り返しつついているのですけど、手前に生えたシダの葉が邪魔でよく見えません。
やがて嘴に何か黒っぽい獲物を咥えていました。
オタマジャクシなのかミミズなのか、獲物の正体がよく分かりません。
クロツグミ♀は、その場で脱糞した直後に黒い獲物を咥えたまま左上へと飛び立ちました。

クロツグミ♀による狩りのシーンを1.5倍に拡大した上で自動色調補正を施してリプレイ。(@1:54〜)
画質が粗いのは薄暗いせいなので、仕方がありません。



【考察】
山渓カラー名鑑『日本の野鳥』という図鑑を紐解いてクロツグミについて調べると、
つがいで縄張りを持ち、♂は木の梢で大きな声でさえずる。主に地上をはね歩きながら採餌する。数歩はねて立ちどまり、ゴミムシなどの昆虫やミミズを捕える。(p445より引用)
確かにクロツグミの♀♂つがいが見事に縄張りを防衛しているようで、昼間この水場には他種の鳥がやって来ません。
夜行性のフクロウとは同じ水場というニッチを時間的に分割・共有しています。


今回クロツグミ♀が山中の水溜りで狩った獲物がもしもミミズではなく、アズマヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)だとすると、重大な観察事例となります。
ヒキガエルのオタマジャクシには、ブフォトキシンという強力な心臓毒(強心配糖体)が含まれているからです。
親鳥が自分では食べずに雛鳥に給餌したので、雛は中毒死した可能性が高いです。
ヒキガエルの成体なら耳腺という特定の部位に毒腺が局在していますが、幼生の時期には皮膚全体に分布しているのだそうです。
親鳥がオタマジャクシのぬるぬるした皮膚をわざわざ全て剥いでから肉だけを雛に給餌したとは考えにくいです。
少量の餌なら致死量ではないかもしれませんが、体重の軽い雛鳥は毒への感受性が高いはずです。
クロツグミの雛鳥がヒキガエルのオタマジャクシを1匹摂取した場合、含有毒素量が致死量に達するかどうかは、雛の体重や種によって異なります。
致死に至らない場合でも、消化器症状(嘔吐、下痢)や神経症状(痙攣、運動失調)などが現れる可能性があります 。
ヒキガエルを獲物として常食している捕食者なら、ブフォトキシンへの耐性を獲得するように進化した可能性があります。(※ 追記2参照)

ヒキガエルの毒は苦味を伴うらしいのですが、そのような苦味による警告があるにも関わらず、オタマジャクシを捕食したということは、親鳥は過去にオタマジャクシの毒性を学習していない(ヒキガエルやオタマジャクシを味見した上で、その毒で痛い目に遭っていない)ことになります。


クロツグミの親鳥♀は数匹のオタマジャクシを水場で狩ってから、獲物をまとめて巣に持ち帰り、雛に給餌したようです。
このとき、最も激しく餌乞いした1匹の雛に全ての餌を与えるのか、それとも複数の雛に少しずつ餌を与えるのか、2つのシナリオが考えられます。 
後者なら、雛1羽当たりの毒の影響は少ないかもしれませんが、致死量を超えていれば巣内の雛が全滅した可能性もあります。

前回の記事で紹介したように、この時期(育雛期)クロツグミの親鳥は、水場付近でオタマジャクシの他にミミズも獲物として捕らえることがあり、巣に持ち帰っていました。
湿地帯の泥濘でミミズを探していた親鳥が、動きの似ている(身をくねらせて移動する)オタマジャクシを浅い水溜りで見つけて狩るようになったのでしょう。
ミミズには毒がないため、雛に対して毒性の希釈効果が期待できます。

もしも巣内の雛が死んだり体調を崩した場合、親鳥はオタマジャクシの毒のせいだと因果関係を正しく推論して、その後の給餌行動(獲物の選択)を変えることが果たしてできるでしょうか? 
自分で食べたのなら自身の体調の悪化と結びつけて学習することは容易ですけど、雛に給餌する場合は学習の成立は難しそうです。
ヒキガエルの幼生は黒一色で地味な体色をしており、派手な警告色を持たないため、視覚的に毒性を予測しにくくなっています。
これは、捕食者に対する隠蔽戦略を主とする進化的適応なのでしょう。
親鳥はたとえ因果関係を頭脳で正しく推論・学習できなくても、ヒキガエルのオタマジャクシを忌避するような行動がたまたま進化するかもしれません(育雛中は水辺で狩りをしないようにするなど)。
つまり、ヒキガエルの有毒なオタマジャクシを雛に給餌するような愚かな親鳥は繁殖に失敗し、子孫を残せません。
雛が毒によって自然淘汰される結果として、クロツグミの多くはヒキガエルのオタマジャクシを何らかの理由で忌避するように進化するはずです。






ChatGPTとの問答から、以上の考察を分かりやすいレポートにまとめてもらいました。

クロツグミとヒキガエル幼生に関する観察記録と考察レポート

1. 観察の概要

2024年5月下旬〜6月上旬、山形県の里山における水場に設置したトレイルカメラにより、クロツグミ(Turdus cardis)の成鳥が水溜まりで採餌している様子が複数回記録された。観察映像から、以下の行動が確認された:

  • クロツグミの雌雄ペアが黒色のオタマジャクシを捕獲し、巣に持ち帰る様子

  • ミミズなど他の餌も同時に採餌し、巣に持ち帰っている

特に注目すべきは、捕獲されたオタマジャクシがヒキガエル(Bufo japonicus, アズマヒキガエル)と推定される種であったことである。

2. ヒキガエル幼生の毒性と鳥類による捕食

ヒキガエル類は成体だけでなく、幼生(オタマジャクシ)の段階から心臓毒であるブフォトキシン(bufotoxin)を含むことで知られている。一般にこの毒素は魚類や一部の昆虫捕食者に対する忌避効果を持つとされるが、鳥類による捕食例も報告されている。

ヒキガエルの幼生は黒一色で地味な体色をしており、警告色(アポセマティズム)を持たないため、視覚的に毒を予測しにくい可能性がある。これは、捕食者に対する隠蔽戦略を主とする進化的適応と解釈できる。

3. クロツグミの給餌行動と雛への影響

今回の記録では、親鳥が複数のオタマジャクシを捕食・運搬しており、巣にいる雛に給餌したと考えられる。毒性のあるオタマジャクシを雛が摂取した場合、以下のような影響が懸念される:

  • ブフォトキシンは神経・心臓に作用する強い毒性を持ち、哺乳類や鳥類にも有害

  • 雛は成鳥に比べて体重が軽く、1匹でも中毒死するリスクがある

  • ただし、実際の給餌では、親鳥が複数の雛に分散して餌を与えることが多く、個体ごとの摂取量は限られる可能性がある

  • トレイルカメラの映像からは巣内の雛の生存状況や健康状態は不明

4. 因果関係の認知と学習可能性

親鳥が自らオタマジャクシを食べて中毒を経験すれば、忌避学習が成立する可能性は高い。しかし、給餌対象が雛であり、かつ雛が体調を崩したとしても、その原因を特定の餌と因果づけて推論することは難しい。これは多くの鳥類において制限されている認知能力の範囲と一致する。

とはいえ、種全体としては、毒を持つオタマジャクシの忌避行動が自然選択的に強化される可能性はある。すなわち、雛に毒を与えてしまう親鳥の子孫は減り、毒餌を避ける親の行動が有利に働く。

5. 警告色を持たない毒幼生の戦略的意味

アカハライモリのように腹部の赤色を見せる"unken reflex"を持つ両生類とは対照的に、ヒキガエル幼生は視覚的警告を欠く。これは、警告色の進化には色素細胞の前適応や環境要因が必要であること、また水中での視覚信号の有効性が限定的であることが理由と考えられる。

6. 結論と今後の展望

今回の事例は、毒性のあるヒキガエル幼生がクロツグミに捕食され、給餌対象として利用されるという興味深い生態的相互作用を示している。親鳥および雛への毒の影響は、摂取量や個体差によって異なると考えられるが、今後さらなる観察や給餌後の巣の状況(生存率など)を追跡することで、鳥類と毒動物の相互作用についてより深い理解が得られるだろう。


素人があれこれと妄想してきましたが、実はその後、クロツグミ♀♂つがいの雛は、幼鳥として無事に巣立ったようです。(映像公開予定)
つまり親から毒餌を与えられても、雛の巣立ち数に影響はありませんでした。
たまたま急性毒性が少ないオタマジャクシだったのか、あるいはクロツグミの雛にブフォトキシンへの耐性があったのかもしれません。(※ 追記2参照)


【追記】
別の水場(池)でアカショウビンがアズマヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)を繰り返し捕食していたのを思い出しました。
一部の鳥はブフォトキシンに耐性があるのか、あるいは当地のヒキガエル幼生は毒性が弱いのかもしれません。



【追記2】
最近になって興味深い論文が発表されました。
沖縄県の西表島と石垣島のみに生息するカンムリワシは、外来種である毒を持つオオヒキガエルを頻繁に捕食します。
しかし、カンムリワシが中毒症状を起こしたという報告例はありません。
なぜカンムリワシはオオヒキガエルを食べることができるのでしょうか。
DNA解析で、毒耐性に関与するとされる遺伝子を調べた結果、カンムリワシは強⼼配糖体の毒ブフォトキシンへの耐性があるとされるヤマカガシというヘビと同一の配列をこの遺伝子に持つことが明らかになりました。
また、この配列を一部の猛禽類の間で比較したところ、ヤマカガシと同一の配列はカンムリワシのみにみられることが判明しました。

カンムリワシはなぜ有毒外来種を捕⾷できるのか
―毒耐性遺伝⼦の進化的背景―(プレスリリースのPDF

TOBE, Alisa, et al. Evolutionary insights into Na+/K+-ATPase-mediated toxin resistance in the Crested Serpent-eagle preying on introduced cane toads in Okinawa, Japan. BMC Ecology and Evolution, 2025, 25.1: 70. (全文のPDFが無料でダウンロード可能)
私のフィールドでも、クロツグミやアカショウビンのDNAを調べたら、ブフォトキシンへの耐性を獲得していることが証明できるかもしれません。


ランダムに記事を読む