2023年12月上旬
山中の湧き水が溜まった泉を自動撮影カメラで見張っていると、旧機種のために風揺れや落ち葉の動きに動体検知センサーが反応して頻繁に誤作動してしまいます。
膨大な無駄撮り映像を丹念に確認すると、本来は写らないはずなのに変温動物(両生類など)の興味深い活動がたまたま録画されていることがあります。
今回も意外な発見がありました。
シーン0:12/6・午後12:13・晴れ(@0:00〜)
明るい時間帯にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。
細長い池の左岸を狙って監視しています。
画面の左から流入した湧き水が右に向かって流れ、斜面を下る沢の源流になっています。
周囲の雑木林から散った大量の落ち葉が浅い池の中にも溜まってます。
池の周囲は三方が崖のように取り囲まれています。
池畔に育ったミズナラ大木の根元が画面の左上隅に写っています。
シーン1:12/7・午後18:14(@0:03〜)日の入り時刻は午後16:23。
冷たい雨が降りしきる晩にトレイルカメラがなぜか起動しました。
水面に浮いているカエル(種名不詳)の目が赤外線を反射して白く光って見えます。(赤丸に注目)
5倍速の早回し映像にすると、そのカエルがときどき瞬きしていることが分かります。
さて、左岸の急斜面(崖)の途中に示した赤丸に注目して下さい。(@0:10〜)
謎の黒い物体がズルズルと力なく崖をずり落ちました。
私は初め、寒さで死にかけた野ネズミ(低体温で仮死状態?)が滑落したのかと思いました。
1.5倍に拡大した上でリプレイしてみると(@0:24〜)、黒っぽくて細長いのでサンショウウオの仲間かもしれないと思いつきました。
この池にはトウホクサンショウウオ(Hynobius lichenatus)の幼生が生息していることを夏に観察しています。
繁殖池から上陸して山林で育ったサンショウウオの成体が越冬のために水場へ戻ってきたという可能性はどうでしょうか?
トウホクサンショウウオは冷涼な渓流や湖沼の水中で♀♂が冬眠し、早春に目覚めるとそのまま繁殖行動(産卵)をするらしいのですが、私はまだ実際に観察できていません。
だとすると、初冬に池畔の崖をずり落ちたのは瀕死の滑落事故ではなく、積極的に池を目指して移動してきたことになります。
シーン2:12/7・午後18:15(@0:37〜)
続きの映像を5倍速で見ると、崖の途中で引っかかった謎の生物の白く光る目がときどき瞬きしていました。
落ち葉やゴミなどの無生物が風雨に吹かれて崖を滑り落ちたのではなく、何か生物であることは間違いなさそうです。
シーン3:12/7・午後18:18(@0:47〜)
しばらくすると、左岸で静止していたサンショウウオ?が再び崖をずり落ちて、水際に溜まった落ち葉の上に落ちました。
1.5倍に拡大した上でリプレイ(@1:08〜)。
重力を利用しつつも自力で這って池に到達したと思うのですが、小さいので手足の動きは見えませんでした。
次に自力で這って入水したのかどうか、これ以降の記録はありません。
シーン4:12/7・午後22:03(@1:16〜)
画面の手前に示した赤丸に注目して下さい。
池の水面に浮いた大量の落ち葉をかき分けるように、何か細長い生き物が左に這って移動しています。
1.5倍に拡大した上でリプレイしてみると(@1:21〜)、体表がテラテラした質感なので両生類でしょう。
トウホクサンショウウオではないかと推測しています。
アカハライモリの可能性も考えたのですが、一般的に地中や石の下などで冬眠するらしく、除外しました。
このサンショウウオの行方が気になります。
残念ながらカメラの電池が切れそうで、わずか3秒間しか録画されていませんでした。
赤外線LEDを照射する暗視動画は特に電力消費が激しいので、夜に誤作動を繰り返すとあっという間に電池が消耗してしまうのです。
膨大な数の無駄撮り動画のチェックは苦行でしかありません。
途中で飽きた私はランダムに見直していたので、前後の映像をうっかり削除してしまったのが一生の不覚です。
シーン5:12/8・午前1:29(@1:26〜)
日付が変わった深夜に監視カメラが健気に2秒間だけ起動すると、依然として小雨がぱらついていました。
野ネズミ(ノネズミ)が池の左岸を左に駆け抜け、ミズナラ根際の穴に潜り込んだようです。
寒さで死にかけて池畔の崖を滑落した野ネズミが蘇生して巣穴に戻ったのかと初めは思ったのですが、体型や大きさ、色などを大画面で見比べると全く違います。
つまり、崖を滑り落ちた謎の生物は野ネズミではありません。
【考察】
この時期、水場にイタチが繰り返し通って狩りをしていたので、獲物の正体が気になっていました。
そのために、無駄撮り映像をじっくり見直してみたのです。
関連記事(同所で同時期の撮影)▶
やはり、巣穴に潜む野ネズミや、冬眠中(冬眠前)の両生類(カエルやサンショウウオ)を狙ってイタチは捕食していたようです。
気温や水温が下がる初冬にも一部の両生類が水辺で元気に暮らしていたのは、ささやかながら私にとって意外な発見でした。
変温動物の両生類はとっくに冬眠しているものだとばかり思い込んでいました。
(もしかすると暖冬の影響かもしれません。)
旧機種のトレイルカメラは、動画撮影時の気温データを取得できないのが残念です。
新機種のトレイルカメラではセンサーの性能が向上して誤作動が減ったのは嬉しいのですけど、このような副産物の発見はあまりなくなりました。(一長一短)
もしも初冬の池に集まってくるサンショウウオの行動観察を本格的にするのであれば、熱源動体検知で録画するトレイルカメラには頼らず、ライブカメラで池の様子を愚直にひたすら全録するしかなさそうです。
膨大な動画を目を凝らしてひたすら見る確認作業を想像するだけでも大変そうで、AIに任せられないかな?と夢想しています。
まずはタイムラプス撮影して傾向を掴むのが現実的かもしれません。
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フィールドワークに心血を注ぐとはどういうことか、教えてくれる素晴らしい名著です。
何も知らない素人だった筆者がサンショウウオに興味をもち、地道な野外観察や飼育を愚直に繰り返して、見事な業績を上げておられます。