前回の記事:▶ 成長するスッポンタケのグレバに群がり吸汁するハエ類【キノコ:微速度撮影】
2024年11月上旬・午後14:00頃・晴れ後くもり
平地の二次林の林床で成長中のスッポンタケを見つけました。
白い柄の上部にある黒っぽいグレバに多種多様なハエが多数群がり、口吻を伸縮させてグレバの粘液を吸汁しています。
私の鼻が詰まっていたのか、特に悪臭は感じれませんでした。
せっかくの機会なので、鼻を近づけてグレバをしっかり嗅ぐべきでしたね。
ときどき足先を擦り合わせて身繕いしているハエもいました。
スッポンタケの白い柄を歩き回るハエはほとんどおらず、グレバの方が圧倒的に魅力的なようです。
スッポンタケの横を私が歩いたり近づいたりすると、ハエの群れは一斉に飛んで逃げるものの、すぐに舞い戻って来ます。
近くの下草の葉や落ち葉に留まって順番待ちをしているハエも居ました。
交尾相手を待ち伏せする♂なのかな?
来ていたハエの中で、私にちゃんと名前が分かるのは、ベッコウバエ♀♂(Dryomyza formosa)ぐらいです。
他にはキンバエの仲間、ニクバエの仲間などが来ていました。
ベッコウバエ♀の黒い腹部を横から見ると膨満しているのは、卵巣が発達しているのでしょう。
この映像で見る限り、ベッコウバエの♂は近くに居る♀に交尾を挑もうとしませんでした。
ベッコウバエをよく見かけるタヌキの溜め糞場では翅を素早く開閉して斑点の翅紋を誇示するのですが、スッポンタケの上ではそれもしていません。
ここではベッコウバエが最大の種です。
ベッコウバエが歩き回ると、他種のハエは遠慮して場所を譲りました。
樹液酒場に集まる昆虫の間で力関係があるように、スッポンタケに集まるハエの間にも微妙な力関係があるのかもしれません。
吸汁中に隣のハエが近づきすぎないように、脚を伸ばして互いに牽制しているのが興味深く思いました。
集まったハエの個体間でさり気ない占有行動があるようです。
余談ですが、動画の後半で甲高くヒッヒッ♪と聞こえるのは、冬鳥ジョウビタキ(Phoenicurus auroreus)の鳴き声かな?
【考察】
ChatGPTに質問を繰り返して、スッポンタケとハエの関係について理解が深まりました。
・グレバに誘引されて吸汁したハエ類の♀は、スッポンタケに産卵することはほとんどない。スッポンタケを主食として育つ“専食的な蛆虫(ハエの幼虫)”は、少なくとも確立した例は知られていません。・スッポンタケのグレバは、ハエにとって魅力的な匂いを放つが、繁殖に寄与するほどの栄養価はなく、最低限の報酬だけを与えて胞子分散に利用する、強く非対称な関係である。(相利共生ではない)・腐肉に擬態する悪臭グレバをもつスッポンタケ類は、形態進化としては単系統だが、ハエを利用するという生態的戦略自体は、菌類進化史の中で収斂的に繰り返し現れている。
進化的に見ると、この戦略はかなり「おいしい」条件が揃っています。
ハエ側の条件
腐敗臭に対する感度が極めて高い
行動範囲が広い
摂食と移動が強く結びついている
菌側の条件
腐敗臭の化学物質は、代謝的に作りやすい
子実体を栄養源として守る必要がない
幼虫を育てる必要がない(=一方通行)
そのため、「腐った匂いを出すだけで、勝手に運んでくれる」という設計は、進化的に再発明されやすい。
つづく→