2023年9月下旬・午前10:55頃・晴れ
里山のスギ植林地を抜ける林道にニホンアナグマ(Meles anakuma)とホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)が共有する溜め糞場sがあります。 この日はタヌキの新鮮な溜め糞は見当たらず、アナグマが排泄したと思われる新鮮な軟便が林床の下草の上に残されていました。
ちなみに、この下草はツワブキのような丸い葉の植物ですが、ツワブキにしては葉の緑色に照り(光沢)がありません。
フキではないことは私にも分かるのですが、山中でよく見かけるこの植物の名前が分からず、長年気になっています。
どなたかご存知の方がいらっしゃいましたら、教えてくださると助かります。
前年(2022年)にトレイルカメラを設置して長期観察したところ、この溜め糞場sに通ってくるタヌキとアナグマは少し離れた別々の地点に排便していること、アナグマは下痢便になりがちということ、などが分かりました。
アナグマの新鮮な糞は「黄土色の絵の具の匂い」がするらしいと本で読んだのですけど、今回の軟便を小枝の先端でつつき(検便)、匂いを嗅いでみても意外なことに無臭でした。
溜め糞場に集まって来ている昆虫でまず目についたのは、ピンクの金属光沢に輝くオオセンチコガネ(Phelotrupes (Chromogeotrupes) auratus auratus)です。 アナグマ下痢便のすぐ横でスギ落ち葉の上にじっとしていました。
しばらくすると、逃げていたキンバエ(Lucilia caesar)の仲間♂とニクバエの一種♀が獣糞に戻ってきました。 いつものように獣糞の上を歩き回って口吻で表面を舐めています。
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ニクバエ♀が未受精卵を産む瞬間 |
やがてニクバエが立ち止まると、獣糞の縁に腹端から真っ白い物体を2回続けて産み付けました。
1個目はバナナのように湾曲した白くて巨大な卵でした。
続けて産み落としたのは、それよりも小さな白い蛆虫でした。
産卵・産仔したことから、このニクバエは♀と判明しました。
たまたま『昆虫考古学』という本を読んでいる最中だったので、ニクバエ♀が産仔する瞬間を初めて目の当たりにして感動しました。
ニクバエ科(flesh fly)腐肉食性
他のハエと異なり、卵を産まない。卵は生殖器官内にとどまり、幼齢1期の幼虫として産み出される。幼虫の大きさは3〜19mm。(V章:ハエが見ていた人の死ー葬送昆虫考古学の世界p114より引用)
スギ林の林床は晴れた昼間でもかなり薄暗く、少し離れた位置から望遠マクロで撮影中の私は、産仔されたニクバエの初齢幼虫がどこに行ったのか見失ってしまいました。
私が目を離した隙にハネカクシやアリなど肉食性の昆虫にすぐ捕食されてしまったのかと思ったのですけど、撮れた動画を見返すと、ウジ虫は産仔直後に蠕動徘徊して軟便の中に自力で潜り込んでいました。
その様子をじっくり撮影すべきだったのですが、巨大な卵に目が釘付けになっていた私は、現場でニクバエ初齢幼虫の動向に気づいていません。
アナグマ軟便上を徘徊していたニクバエ♀が初回とは少し離れた地点に再び蛆虫(初齢幼虫)を産仔しました。(@0:40〜)
2匹目のウジ虫も産仔直後に蠕動徘徊して獣糞の中に潜り込みました。
産仔シーンを1.5倍に拡大してリプレイ。(@1:00〜)
次に私はカメラにマクロレンズを装着し、巨大な白い卵を接写してみました。
この卵からニクバエの1齢幼虫がすぐに孵化してくると予想してその瞬間を待ち構えたのですけど、待てど暮せど変化がありません。
どうやら、未受精卵だったようです。
未受精卵に付着している白い膜のような物は、初齢幼虫が孵化した後の卵膜なのかな?
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